特許第6842352号(P6842352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842352
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】バーコードシールの保護方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20210308BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   H01L21/78 W
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-86128(P2017-86128)
(22)【出願日】2017年4月25日
(65)【公開番号】特開2018-186156(P2018-186156A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 晃司
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−324516(JP,A)
【文献】 特開2017−076686(JP,A)
【文献】 特開2008−068888(JP,A)
【文献】 実開平03−127899(JP,U)
【文献】 特開2017−033972(JP,A)
【文献】 特開2008−293508(JP,A)
【文献】 実開平06−069969(JP,U)
【文献】 特開平10−143073(JP,A)
【文献】 特開2011−029412(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/078808(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着テープに貼着され環状のフレームに装着されたウエーハに対して、ウエーハの情報を管理するために該粘着テープまたは該フレーム上に貼られたバーコードシールの保護方法であって、
該バーコードシールの上に加工時の熱で変形しない耐熱性を有する透明のカバーをかぶせるカバー工程を備えることを特徴とするバーコードシールの保護方法。
【請求項2】
前記カバーの素材は、ガラスまたはポリエステルであることを特徴とする請求項1記載のバーコードシールの保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの情報を管理するためのバーコードシールの保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、分割予定ラインに沿って個々のチップに分割された後、携帯電話、パソコン等の各種電気機器に利用されている。加工が施されるウエーハの情報を管理するために、ウエーハを保護するテープやテープを支持するフレームにバーコードシールを貼ることがある。
【0003】
ウエーハを個々のチップに分割する方法としては、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザビームを照射してウエーハの内部に改質層を形成し、その後ウエーハに外力を付与してウエーハを分割する方法がある(例えば、下記の特許文献1を参照)。この方法においては、テープを介して環状のフレームに支持されたウエーハを放射方向に拡張することにより改質層を起点にウエーハを個々のチップに分割した後、隣り合うチップ間の距離を維持するために、テープの余剰部分を加熱して熱収縮させる工程を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−204362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記した方法においては、テープの余剰部分を加熱するため、テープまたはフレームの上に貼られたバーコードシールが熱により変形してしまい、バーコードを読み取れないという問題が生じている。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、ウエーハを加工する際の熱でバーコードシールが変形しないように保護できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、粘着テープに貼着され環状のフレームに装着されたウエーハに対して、ウエーハの情報を管理するために該粘着テープまたは該フレーム上に貼られたバーコードシールの保護方法であって、該バーコードシールの上に加工時の熱で変形しない耐熱性を有する透明のカバーをかぶせるカバー工程を備えることを特徴とする。
【0008】
上記カバーの素材は、ガラスまたはポリエステルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るバーコードシールの保護方法は、粘着テープに貼着され環状のフレームに装着されたウエーハに対して、ウエーハの情報を管理するために該粘着テープまたは該フレーム上に貼られたバーコードシールの保護方法であって、該バーコードシールの上に加工時の熱で変形しない耐熱性を有する透明のカバーをかぶせるカバー工程を備えたため、ウエーハを加工する際に、あらかじめカバーをバーコードの上にかぶせておくことにより、例えば、粘着テープを拡張させてウエーハを個々のチップに分割した後、拡張されて弛んだ粘着テープの部分を加熱して熱収縮させる際に、加熱した付近に発生する熱でバーコードシールが変形しないようにカバーによって良好に保護することができる。
【0010】
上記カバーの素材は、ガラスまたはポリエステルであることから、より耐熱性に優れており、バーコードシールの熱による変形を確実に防止でき、バーコードを正確に読み取ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】粘着テープを介して環状のフレームに装着されたウエーハの一例の構成を示す斜視図である。
図2】カバー工程を示す斜視図である。
図3】保持工程を示す断面図である。
図4】チップ間隔拡張工程を示す断面図である。
図5】吸引保持工程を示す断面図である。
図6】チップ間隔固定工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すウエーハWは、被加工物の一例であって、円形板状の基板を有しており、その表面Waには、格子状の分割予定ラインSによって区画された領域のそれぞれにIC、LSI等のデバイスDが形成されている。一方、表面Waと反対側の裏面Wbは、例えば粘着テープ1に貼着される。ウエーハWを構成する基板の材質は、特に限られず、例えばシリコン、サファイア等である。
【0013】
ウエーハWを個々のチップに分割する際には、ウエーハWは粘着テープ1を介して環状のフレーム2に装着される。具体的には、中央部が開口した環状のフレーム2の下面に伸張可能な粘着テープ1を貼着し、フレーム2の中央部から露出した粘着テープ1にウエーハWの裏面Wb側を貼着して表面Waを上向きに露出させる。このようにして粘着テープ1を介してフレーム2の開口にウエーハWが支持されたウエーハユニットを形成する。粘着テープ1のうち、ウエーハWの外周縁とフレーム2の内周との間にリング状に露出した部分は露出部1aとなっている。粘着テープ1は、例えば、ポリオレフィン等からなる基材層に粘着層が積層された2層構造のエキスパンドテープであり、エキスパンド性を有している。
【0014】
フレーム2の上面には、ウエーハWの情報を管理するためのバーコードシール3が貼られている。バーコードシール3は、ウエーハWの識別情報をコード化したバーコードが印字された粘着性のシールである。識別情報には、例えば、ウエーハID、ロット番号等が含まれる。図示の例では、フレーム2の上面にバーコードシール3を貼っているが、粘着テープ1にバーコードシール3を貼ってもよく、例えば粘着テープ1の露出部1aにバーコードシール3を貼ってもよい。以下では、粘着テープ1に貼着されフレーム2に装着されたウエーハWに対して、粘着テープ1またはフレーム2上に貼られたバーコードシール3の保護方法について説明する。
【0015】
(1)カバー工程
図2に示すように、バーコードシール3の上に加工時の熱で変形しない耐熱性を有する透明のカバー4をかぶせる。ここで、本実施形態における加工時の熱とは、粘着テープ1を拡張させてウエーハWを個々のチップに分割した後、拡張された粘着テープ1に発生した弛みを除去するために、弛んだ部分を加熱し熱収縮(ヒートシュリンク)させるときに発生する熱を意味する。カバー4は、熱の影響を受けてバーコードシール3が皺にならないようにバーコードシール3を保護する保護部材である。本実施形態に示すカバー4は、少なくともバーコードシール3の全域を覆う大きさを有している。このカバー4をバーコードシール3にかぶせるときは、例えば作業者によって手動で行ってもよいし、図示しない貼着機構によってカバー4をバーコードシール3にかぶせてもよい。
【0016】
カバー4の素材としては、ガラスまたはポリエステルにより構成されることが好ましい。ポリエステルは、特に限定されないが、例えばPET樹脂を用いることができる。ガラスについても、特に限定されない。このように、カバー4は、耐熱性に優れた素材で構成されているため、バーコードシール3の熱による変形を確実に防止でき、バーコードを正確に読み取ることができる。カバー工程は、少なくとも後述するチップ間隔固定工程において粘着テープ1を加熱する前までに実施すればよい。
【0017】
(2)保持工程
図3に示すように、フレーム2と一体となったウエーハWを例えばチップ間隔維持装置10に搬送する。本実施形態に示すウエーハWは、例えば、ウエーハWに対して透過性を有する波長のレーザビームを図2に示す分割予定ラインSに沿って照射することによって、ウエーハWの内部に改質層Mが形成されているものとする。改質層Mは、ウエーハWを、個々のチップに分割するための分割起点となる。分割起点は、改質層Mに限られない。したがって、例えば切削加工によってウエーハWを完全切断した切削溝やレーザ加工によってウエーハWを完全切断したレーザ加工溝を分割起点としてもよい。
【0018】
チップ間隔維持装置10は、ウエーハWを吸引保持する保持手段20と、保持手段20の周囲に配設されフレーム2を保持するフレーム保持手段30と、フレーム保持手段30を上下方向(Z軸方向)に昇降させる昇降手段40と、粘着テープ1の露出部1aの上方側に配設された加熱手段50とを備えている。保持手段20は、ドラム状の外壁部21と、外壁部21の中央上部に配設された支持プレート22と、支持プレート22に支持されウエーハWを吸引保持する保持面24aを有するポーラス板24とを備えている。
【0019】
ポーラス板24は、例えば円盤状に形成され、ポーラスセラミックス等の多孔質部材によって構成されている。ポーラス板24の下方には、開閉バルブ11を介して吸引源12に連通する流路23が形成されている。開閉バルブ11を開いて吸引源12とポーラス板24とを連通させることにより、保持面24aに吸引力を作用させウエーハWを吸引保持することができる。一方、開閉バルブ11を閉じて吸引源12とポーラス板24との連通を遮断することで保持面24aにおけるウエーハWの吸引保持を解除することができる。外壁部21の上端、かつ、ポーラス板24の周縁に沿って複数のローラ部25が配設されており、保持手段20に吸引保持されたウエーハWの外周縁の粘着テープ1の下面に複数のローラ部25が接触する構成となっている。
【0020】
フレーム保持手段30は、保持手段20の外周側に配設されフレーム2が載置されるフレーム載置台31と、フレーム載置台31に載置されたフレーム2をクランプするクランプ部32とを備えている。フレーム載置台31の下部には、昇降手段40が接続されている。昇降手段40は、シリンダ41と、シリンダ41により昇降駆動されるピストン42とにより構成され、ピストン42が上下に移動することにより、フレーム保持手段30を昇降させることができる。
【0021】
加熱手段50は、例えば、赤外線ヒータによって構成されており、図示しない昇降機構によって上下方向(Z軸方向)に昇降可能となっている。加熱手段50は、所定のピーク波形の赤外線を粘着テープ1の露出部1aに向けて照射することができ、露出部1aを加熱させて熱収縮させることができる。加熱手段50は、露出部1aを加熱させて熱収縮させることができればよく、上記赤外線ヒータに限られず、所定の温風を吹き出すヒータで構成してもよい。
【0022】
チップ間隔維持装置10を用いてウエーハWを分割する際、粘着テープ1を介してウエーハWの裏面Wb側をポーラス板24の保持面24aに載置するとともに、フレーム2側をフレーム載置台31に載置する。このとき、粘着テープ1の露出部1aの下側に複数のローラ部25が接触した状態となる。その後、クランプ部32によりフレーム2の上部を押さえて動かないように固定することにより、ウエーハWを保持手段20において保持する。
【0023】
(3)チップ間隔拡張工程
図4に示すように、ピストン42が下方に移動し、保持手段20に対して相対的にフレーム保持手段30を下降させて、粘着テープ1を放射状に拡張させる。粘着テープ1が放射状に拡張されると、粘着テープ1を介してウエーハWに対して放射方向の外力が付与されるため、ウエーハWが図3に示した改質層Mを分割起点にして個々のチップCに分割される。粘着テープ1は、隣り合うチップCの間に隙間5が形成されるまで拡張させるとよい。このとき、粘着テープ1の露出部1aの下側にローラ部25が接触していることから、粘着テープ1の拡張にともなって、ポーラス板24の周縁において摩擦等が発生するのを防止している。なお、本実施形態では、保持手段20に対してフレーム保持手段30が昇降することにより粘着テープ1を拡張するように構成したが、この構成に限られず、保持手段20とフレーム保持手段30とが上下方向に相対的に移動することで、粘着テープ1が放射状に拡張される構成であればよい。
【0024】
(4)吸引保持工程
チップ間隔拡張工程を実施した後、図5に示すように、開閉バルブ11を開いて流路23を通じて吸引源12とポーラス板24とを連通させ、保持面24aに吸引力を作用させる。これにより、ポーラス板24の保持面24aで粘着テープ1を介してウエーハWを吸引保持する。このとき、粘着テープ1は、放射方向に引き伸ばされているため、隣り合うチップC間の隙間5の間隔が維持される。
【0025】
(5)チップ間隔固定工程
次いで、図6に示すように、ピストン42が上昇して、保持手段20に対してフレーム保持手段30を上昇させる。このとき、チップ間隔拡張工程で拡張された粘着テープ1は伸びきっており、フレーム載置台31が上昇するにつれて粘着テープ1のテンションが緩んでいき、粘着テープ1の露出部1a(点線で図示)に僅かな弛みが生じる。加熱手段50は、粘着テープ1の露出部1aに接近して、例えば赤外線を露出部1aの全域に向けて照射して加熱して熱収縮させる。赤外線が照射された部分が縮むと、粘着テープ1の全体が弛みなく張った状態に戻るため、隣り合うチップC間の隙間5の間隔が固定される。
【0026】
このとき、加熱された露出部1aの付近も温度が上昇して、フレーム2も熱くなっているが、図2に示したカバー4によってバーコードシール3の全域が保護されているため、バーコードシール3が熱によって変形することがない。つまり、バーコードシール3が皺にならずに、上記カバー工程で示したバーコードシール3の形態を維持している。これにより、例えばバーコードリーダを使用してバーコードシール3を正確に読み取ることが可能となる。
【0027】
以上のとおり、本発明に係るバーコードシールの保護方法は、粘着テープ1またはフレーム2上に貼られたバーコードシール3の上に加工時の熱で変形しない耐熱性を有する透明のカバー4をかぶせるカバー工程を備えたため、ウエーハWを加工する際に、あらかじめカバー4をバーコード3の上にかぶせておくことにより、例えば、粘着テープ1を拡張させてウエーハWを個々のチップCに分割したのち、拡張されて弛んだ粘着テープ1の露出部1aを加熱して熱収縮させるときの熱でバーコードシール3が変形しないようにカバー4で良好に保護することができる。
【符号の説明】
【0028】
1:粘着テープ 1a:露出部 2:フレーム 3:バーコードシール
4:カバー 5:隙間
10:チップ間隔維持装置 11:開閉バルブ 12:吸引源
20:保持手段 21:外壁部 22:支持プレート 23:吸引路
24:ポーラス板 25:ローラ部
30:フレーム保持手段 31:フレーム載置台 32:クランプ部
40:昇降手段 41:シリンダ 42:ピストン
50:加熱手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6