特許第6842404号(P6842404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842404
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】粘着性基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/20 20180101AFI20210308BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20210308BHJP
【FI】
   C09J7/20
   H01L33/00 H
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-236434(P2017-236434)
(22)【出願日】2017年12月8日
(65)【公開番号】特開2019-104785(P2019-104785A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2019年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】井口 洋之
(72)【発明者】
【氏名】塩原 利夫
(72)【発明者】
【氏名】柏木 努
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−054628(JP,A)
【文献】 特開2013−206961(JP,A)
【文献】 特表2015−500562(JP,A)
【文献】 特開2017−175087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00− 7/50
H01L 33/00−33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材と、該支持基材に設けられた粘着層とを有する粘着性基材の製造方法であって、
前記支持基材は、片面又は両面に2個以上の凸部を有する凹凸パターンを有し、
前記粘着層は、少なくとも、前記支持基材の前記凹凸パターンの前記凸部の上面に設けられ、前記凸部の上面の前記粘着層表面が曲面を有する粘着性基材の製造方法であり、静電気力でノズルから粘着剤を塗布することによって、前記支持基材の、少なくとも前記凸部の上面に、表面に曲面を有する粘着層を形成することを特徴とする粘着性基材の製造方法
【請求項2】
前記粘着層は、前記支持基材の前記凹凸パターンの前記凸部の上面のみに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の粘着性基材の製造方法
【請求項3】
前記粘着層は、前記支持基材の前記凹凸パターンの凹部にも設けられており、かつ、前記凹凸パターンの凹部に設けられた前記粘着層の表面高さが、前記凸部の上面に設けられた前記粘着層の表面高さよりも低い位置となるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の粘着性基材の製造方法
【請求項4】
前記支持基材の前記凸部の上面に設けられた前記粘着層の表面のみが、曲面を有していることを特徴とする請求項3に記載の粘着性基材の製造方法
【請求項5】
前記支持基材の前記凸部の上面に設けられた前記粘着層の表面高さと、前記支持基材の前記凹凸パターンの凹部の表面高さとの差最長1μm〜100μmとすることを特徴とする請求項2に記載の粘着性基材の製造方法
【請求項6】
前記支持基材の前記凸部の上面に設けられた前記粘着層の表面高さと、前記支持基材の前記凹部に設けられた粘着層の表面高さとの差最長1μm〜100μmとすることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の粘着性基材の製造方法
【請求項7】
前記粘着層の最大厚み0.01μm〜100μmとすることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の粘着性基材の製造方法
【請求項8】
前記支持基材の前記凹凸パターンの隣接する前記凸部の間隔1μm〜100μmとすることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の粘着性基材の製造方法
【請求項9】
前記支持基材の前記凹凸パターンの前記凸部の幅1μm〜100μmとすることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の粘着性基材の製造方法
【請求項10】
前記粘着層の粘着力、JIS Z 0237:2009に準拠した、23℃、引きはがし角度180°、及び剥離速度300mm/min.の条件での剥離時の粘着力、0.05〜50(N/25mm幅)とすることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の粘着性基材の製造方法
【請求項11】
前記粘着性基材、マイクロLED転写に用いることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の粘着性基材の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性基材及び粘着性基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、時計や携帯電話などの携帯機器を中心に、電子機器の小型軽量化が進んでいる。これに伴い、これら電子機器に内蔵される半導体チップに関しても小型化が一層進んでいる。
【0003】
半導体チップの電極にリード線を繋げる方法として、従来からワイヤボンディングが知られているが、ワイヤーの占めるスペースが大きいため、半導体チップの小型化には不向きである。
【0004】
そこで、電極がある上面を反転して直接電極基板と接続するフリップチップボンディングが行われている(特許文献1,2)。この方法ではワイヤーがないぶん、小型化が可能となる。しかし従来の方法ではチップを1つ1つピックアップするので、マイクロLEDなど非常に小さなチップを大量にダイボンドする際には非常に時間がかかってしまう。
【0005】
特許文献3に記載されている転写用の部材では、凹凸パターンの凸部に粘着層が平面に付着しているが、このような転写用の部材は、チップと接触させた際に、平面粘着層とチップの接している面積が大きいため、チップをピックアップして別の粘着性基板に配置する際、全てのチップがきちんと別の粘着性基板に移行することが困難であった。また、平面粘着層とチップの接している面積が大きいために、チップのピックアップ速度と別の粘着性基板へ転写する速度が異なるなど、工程が煩雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−001752号公報
【特許文献2】国際公開WO2014/098174号公報
【特許文献3】国際公開WO2016/012409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、大量の微細なチップを短時間でダイボンドすることが可能な粘着性基材及び粘着性基材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明によれば、支持基材と、該支持基材に設けられた粘着層とを有する粘着性基材であって、前記支持基材は、片面又は両面に2個以上の凸部を有する凹凸パターンを有し、前記粘着層は、少なくとも、前記支持基材の前記凹凸パターンの前記凸部の上面に設けられ、前記凸部の上面の前記粘着層表面が曲面を有するものであることを特徴とする粘着性基材を提供する。
【0009】
本発明の粘着性基材によれば、微細なチップを大量に短時間でダイボンドすることが可能となる。
【0010】
またこの場合、前記粘着層は、前記支持基材の前記凹凸パターンの前記凸部の上面のみに設けられたものすることが好ましい。
【0011】
また、前記粘着層は、前記支持基材の前記凹凸パターンの凹部にも設けられたものであり、かつ、前記凹凸パターンの凹部に設けられた前記粘着層の表面高さが、前記凸部の上面に設けられた前記粘着層の表面高さよりも低い位置となるように設けられたものとすることが好ましい。
【0012】
本発明の粘着性基材としては、これらの具体的態様が挙げられる。このような粘着性基材であれは、微細なチップを大量に選択的にピックアップすることができ、短時間で大量のチップをダイボンドすることができる。
【0013】
またこの場合、前記支持基材の前記凸部の上面に設けられた前記粘着層の表面のみが、曲面を有するものとすることが好ましい。
【0014】
このような粘着性基材であれば、より確実に、微細なチップを大量に選択的にピックアップでき、短時間で大量のチップをダイボンドすることができるものとなる。
【0015】
また、前記支持基材の前記凸部の上面に設けられた前記粘着層の表面高さと、前記支持基材の前記凹凸パターンの凹部の表面高さとの差が最長1μm〜100μmであることが好ましい。
【0016】
また、前記支持基材の前記凸部の上面に設けられた粘着層の表面高さと、前記支持基材の前記凹部に設けられた粘着層の表面高さとの差が最長1μm〜100μmであることが好ましい。
【0017】
このような支持基材の凸部の上面に設けられた粘着層の表面と、支持基材の凹部の表面又は凹部に設けられた粘着層の表面との距離であれば、より確実に、微細なチップを大量に選択的にピックアップでき、短時間で大量のチップをダイボンドすることができるものとなる。
【0018】
また、前記粘着層の最大厚みが0.01μm〜100μmであることが好ましい。
【0019】
このような最大厚み(高さ)を有する粘着層であれば、粘着性基材をチップに押し付けた際に、変形量が小さくすむために好ましい。
【0020】
また、前記支持基材の前記凹凸パターンの隣接する前記凸部の間隔が1μm〜100μmであることが好ましい。
【0021】
また、前記支持基材の前記凹凸パターンの前記凸部の幅が1μm〜100μmであることが好ましい。
【0022】
このような支持基材の隣接する凸部の間隔や凸部の幅であれば、確実に、微細なチップをピックアップすることができるために好ましい。
【0023】
また、前記粘着層の粘着力が、JIS Z 0237:2009に準拠した、23℃、引きはがし角度180°、及び剥離速度300mm/min.の条件での剥離時の粘着力が、0.05〜50(N/25mm幅)であることが好ましい。
【0024】
本発明における粘着層の粘着力がこの範囲であれば、マイクロチップをピックアップするのに十分な粘着性を有するために好ましい。
【0025】
また、前記粘着性基材が、マイクロLED転写用であることが好ましい。
【0026】
本発明の粘着性基材は、微細なチップを大量に選択的にピックアップでき、短時間で大量のチップをダイボンドすることが可能であるため、マイクロLED転写用として有用である。
【0027】
また、本発明では、前記粘着性基材の製造方法であって、静電気力でノズルから粘着剤を塗布することによって、前記支持基材の、少なくとも前記凸部の上面に、表面に曲面を有する粘着層を形成することを特徴とする粘着性基材の製造方法を提供する。
【0028】
このように静電気力で粘着剤を塗布することにより、支持基材の凸部の上面に、表面に曲面を有する粘着層が設けられた本発明の粘着性基材を短時間で製造することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の粘着性基材は、支持基材の表面に凹凸パターンが配列されており、少なくとも、支持基材の凹凸パターンの凸部の上面に粘着層が設けられ、この凸部の上面の粘着層表面が曲面を有するものであることにより、微細なチップを大量に選択的にピックアップでき、短時間で大量のチップをダイボンドすることができる。そのため、チップトランスファー用基材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の粘着性基材の一実施形態を示す概略断面図(A)、本発明の粘着性基材の別の一実施形態を示す概略断面図(B)である。
図2】リソグラフィーによる凹凸パターンを有する支持基材の作製工程を説明するフロー図である。
図3】凸部の幅10μm、高さ10μm、間隔10μmである支持基材の写真である。
図4図3の支持基材に粘着層を形成した、実施例1の粘着性基材の写真である。
図5】凸部の幅5μm、高さ10μm、間隔5μmである支持基材の写真である。
図6図5の支持基材に粘着層を形成した、実施例2の粘着性基材の写真である。
図7】凸部の幅30μm、高さ50μm、間隔30μmである支持基材の写真である。
図8図7の支持基材に粘着層を形成した、実施例3の粘着性基材の写真である。
図9】比較例1の粘着性基材の概略断面図である。
図10】比較例2の粘着性基材の概略断面図である。
図11】比較例3の粘着性基材の概略断面図である。
図12】実施例及び比較例の粘着試験において、赤、緑、青のマイクロLEDを選択的にピックアンドプレイスする工程のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、支持基材と、該支持基材に設けられた粘着層とを有する粘着性基材であって、前記支持基材は、片面又は両面に2個以上の凸部を有する凹凸パターンを有し、前記粘着層は、少なくとも、前記支持基材の前記凹凸パターンの前記凸部の上面に設けられ、前記凸部の上面の前記粘着層表面が曲面を有するものである粘着性基材であれば、微細なチップを大量に選択的にピックアップすることができ、基板の回路電極にプレスすることにより、短時間で大量のチップを電気的に接続することができることを見出し、本発明を成すに至った。以下、本発明の粘着性基材、及び粘着性基材の製造方法について詳細に説明する。
【0032】
即ち、本発明は、支持基材と、該支持基材に設けられた粘着層とを有する粘着性基材であって、前記支持基材は、片面又は両面に2個以上の凸部を有する凹凸パターンを有し、前記粘着層は、少なくとも、前記支持基材の前記凹凸パターンの前記凸部の上面に設けられ、前記凸部の上面の前記粘着層表面が曲面を有するものであることを特徴とする粘着性基材を提供する。
【0033】
このような本発明の粘着性基材の具体的態様としては、図1(A)に示されるような、片面又は両面に2個以上の凸部を有する凹凸パターンを有する支持基材1の凸部の上面1’のみに粘着層2aが設けられ、この凸部の上面1’の粘着層2aの表面が曲面を有する粘着性基材100Aが挙げられる。また、別の態様としては、図1(B)に示されるような、支持基材1の凸部の上面1’に粘着層2aが設けられ、粘着層2a以外に、支持基材1の凹凸パターンの凹部にも粘着層2bが設けられたものであり、かつ、凹凸パターンの凹部に設けられた粘着層2bの表面高さが、凸部の上面1’に設けられた粘着層2aの表面高さよりも低い位置となるように設けられた粘着性基材100Bが挙げられる。以下、本発明における支持基材、粘着層について詳述する。
【0034】
[支持基材]
本発明に使用される支持基材1としては、片面又は両面に2個以上の凸部を有する凹凸パターン、特には、規則的な凹凸パターンを有しているものであれば、特に制限はない。このような支持基材1は、例えば、ガラス、セラミックス基板、シリコンウエハー、ガラスエポキシ積層基板、ポリイミド積層基板、紙フェノール基板、シリコーン樹脂基板、フッ素樹脂基板、ポリエステル基板などを用いて作製することができる。
【0035】
凹凸パターンの設け方は特に制限はないが、例えば、フォトリソグラフィーにより被加工体に直接凹凸パターンを形成したものを支持基材1とすることができる。
【0036】
フォトリソグラフィーにより凹凸パターンを有する支持基材1を作製する方法は、従来公知の方法に従えばよく、図2に示されるように、被加工体3にフォトレジスト4を塗布し、次いで露光、次いで現像、次いでエッチング、その後余ったレジストを洗浄することで、凹凸パターンを有する支持基材1を得ることができる。
【0037】
更には、このような方法で作製した凹凸パターンに型取り材料を押し当てて型取りし、その型に熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを流し込んで、凹凸パターンを有する支持基材1としても良い。
【0038】
また、本発明における凹凸パターンを有する支持基材1は、他の基板の上に粘着剤を塗布し、その上に配置しても良い。この場合の粘着剤は、本発明において支持基材1の凸部の上面に設ける粘着層を形成するための粘着剤と同じであっても良いし、異なっても良い。他の基板としては、上記支持基材の作製に用いられる基板と同様の基板が挙げられる。
【0039】
支持基材1の凹凸パターンの大きさ、間隔としては特に制限はなく、ピックアップしようとするチップサイズに合わせて適宜選択することができるが、微細なチップをピックアップするためには、図1に示される凸部の幅101は1μm〜100μmとすることができ、好ましくは1μm〜20μm、より好ましくは1μm〜10μmである。
【0040】
さらに幅101に合わせて、高さ103a、103bが1μm〜100μm、好ましくは1μm〜20μm、より好ましくは1μm〜10μmであると良い。ここでいう高さ103aとは、図1(A)に示されるように、支持基材の凸部の上面に設けられた粘着層2aの表面高さと、支持基材の凹部の表面高さとの差の最長距離であり、また、高さ103bとは、図1(B)に示されるように、支持基材の凸部の上面に設けられた粘着層の表面高さと、支持基材の凹部に設けられた粘着層の表面高さとの差の最長距離である。
【0041】
また、隣接する凸部の間隔102としては1μm〜100μm、好ましくは1μm〜50μm、より好ましくは1μm〜20μmであると良い。なお、本発明において凸部の幅、高さ、間隔とは走査型電子顕微鏡によって測定された値を指す。
【0042】
[粘着層]
本発明の粘着性基材100A、100Bは、少なくとも、支持基材1の凹凸パターンの凸部の上面1’に粘着層2aが設けられ、この粘着層2a表面が曲面を有することを特徴とする。このような形状の粘着層2aを有する粘着性基材であれば、マイクロチップピックアップ時の押し付け圧力を分散させチップに掛かる圧力を低減することができ、また密着面積の低減により低応力で剥離することができる。そのため、微細なチップを大量に短時間でダイボンドすることが可能となる。また、本発明における粘着層は、支持基材1の凹凸パターンの凹部にも形成されていても良いが、支持基材の凸部上面の粘着層2aの表面のみが曲面を有することが好ましい。
【0043】
粘着層の粘着力としては特に制限はないが、180度剥離強度が0.05〜50(N/25mm幅)が好ましく、0.1〜40(N/25mm幅)がより好ましく、0.15〜30(N/25mm幅)が更に好ましい。この範囲であればマイクロチップをピックアップするのに十分な粘着性を有する。
【0044】
なお、本発明における粘着力とは、JIS Z 0237:2009記載の方法で測定した、温度:23℃、剥離速度:300mm/min.、引きはがし角度:180°の条件で剥離した際の剥離強度を指す。
【0045】
粘着層の最大厚さ(高さ)としては特に制限はないが、チップトランスファー用基材をチップに押し付けた際に、変形量が小さい方がよく、0.01μm〜100μm、好ましくは0.01μm〜50μm、より好ましくは0.05μm〜30μmが良い。
【0046】
本発明における粘着層を形成する粘着剤としては、特に制限はなく、塗布後に硬化するもの、例えばアクリル粘着剤、シリコーン粘着剤、ウレタン粘着剤、ラテックス粘着剤、エポキシ粘着剤等が挙げられる。
【0047】
粘着層の形成方法は特に制限はないが、支持基材の凸部の上面の粘着層表面が曲面を有するものとなる必要がある。特には、図1(A)のように、支持基材1の凸部の上面のみに表面が曲面を有する粘着層2aを形成することが好ましい。または、図1(B)のように、支持基材1の凸部の上面1’に表面が曲面を有する粘着層2aを、支持基材1の凹凸パターンの凹部にも粘着層2bを、凹凸パターンの凹部に設けられた粘着層2bの表面高さが、凸部の上面に設けられた粘着層2aの表面高さよりも低い位置となるように形成することが好ましい。
【0048】
そのため、スピンコーターや通常の加圧スプレーで接着剤を塗布するだけでは、支持基材の凸部に塗布された粘着剤が流れてしまい、凸部上面に粘着層が形成されない、または凹部の粘着層の高さと凸部の粘着層の高さが同じになってしまい、微細なフリップチップを選択的にピックアップすることができなくなってしまう。
【0049】
支持基材1の凸部の上面1’のみに表面が曲面を有する粘着層2aを形成する(図1(A))、または、支持基材1の凹凸パターンの凹部にも粘着層2bが形成されており、凹凸パターンの凹部に設けられた粘着層2bの表面高さが、凸部の上面に設けられた表面が曲面を有する粘着層2aの表面高さよりも低い位置となるように形成する(図1(B))ための具体的方法としては、例えば微細なノズルを用いて凸部の上から粘着剤を塗布する、または静電塗布(エレクトロスプレー)などが挙げられる。
【0050】
特に、静電塗布は、正または負に帯電した粘着剤が、静電気の引力によって基材に塗布されるため、ノズルと基材の距離が近い箇所に多く塗布され、細かく制御しなくとも短時間で、支持基材1の凸部の上面1’のみに表面が曲面を有する粘着層2aを形成するように、または、凹凸パターンの凹部に設けられた粘着層2bの表面高さが、凸部の上面に設けられた表面が曲面を有する粘着層2aの表面高さよりも低い位置となるような粘着層2a,2bを形成するように、粘着剤を塗布することが可能であるため好ましい。
【0051】
ノズルの形状としては、特に制限はないが、分散液に均一に電圧を印加するために円形状が望ましい。ノズルの径としては、特に制限はなく、パターンの幅、間隔に合わせて適宜選択することができるが、例えば幅10μm、高さ10μm、間隔10μmの凸パターンに粘着層を形成するためには、5μm〜500μm、好ましくは10μm〜300μm、より好ましくは20μm〜100μmが良い。
【0052】
この範囲であれば、支持基材1の凸部の上面のみに表面が曲面を有する粘着層2aが形成され、または、支持基材1の凹部に設けられた粘着層2bの表面高さが、凸部の上面に設けられた表面が曲面を有する粘着層2aの表面高さよりも低い位置となるよう粘着層2a、2bが形成されるように、粘着剤を塗布することが可能である。
【0053】
印加する電圧は、特に制限はないが、例えば1,000V〜10,000V、好ましくは1,000V〜8,000V、より好ましくは1,000V〜5,000Vである。またノズルの先端部と支持基材との距離は例えば10μm〜3,000μm、好ましくは10μm〜2,000μmである。
【0054】
粘着層の硬化方法は、樹脂の種類によって異なるが、特に限定はなく、例えば熱硬化、光硬化、湿気硬化などが挙げられる。
【0055】
本発明における粘着性基材は、微細なチップを大量に選択的にピックアップでき、短時間で大量のチップをダイボンドすることが可能であるため、マイクロLED転写用として、ボンディングヘッドに好適に利用される。
【実施例】
【0056】
以下、実施例、比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0057】
(実施例1)
酸化膜が形成されたシリコンウエハー(被加工体3)に、フォトレジスト膜4を形成し、公知のフォトリソグラフィー法を用いて凸部の幅10μm、高さ10μm、間隔10μmの凹凸パターンを形成し、凹凸パターンを有する支持基材を作製した(図2図3)。次いで、メチルエチルケトン(MEK)を用いて、付加硬化型シリコーン粘着剤KR−3700(信越化学工業(株)社製、粘着力:8.7N/25mm)を固形分濃度1.25質量%に希釈し、前記粘着剤を静電噴霧/塗布実験機(アピックヤマダ(株)社製)を用いて前記凹凸パターンの凸部上面に塗布し、曲面を有する粘着層を凸部にのみ有する粘着性基材を製造した(図4)。
【0058】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、酸化膜が形成されたシリコンウエハー(被加工体3)に、凸部の幅5μm、高さ10μm、間隔5μmの凹凸パターンを形成し、凹凸パターンを有する支持基材を作製した(図5)。次いで、メチルエチルケトン(MEK)を用いて、付加硬化型シリコーン粘着剤X−40−3270−1(信越化学工業(株)社製、粘着力:0.15N/25mm)を固形分濃度1.25質量%に希釈し、前記粘着剤を静電噴霧/塗布実験機(アピックヤマダ(株)社製)を用いて前記凹凸パターンの凸部上面に塗布し、曲面を有する粘着層を凸部にのみ有する粘着性基材を製造した(図6)。
【0059】
(実施例3)
実施例1と同様の方法で、酸化膜が形成されたシリコンウエハー(被加工体3)に、凸部の幅30μm、高さ50μm、間隔30μmの凹凸パターンを形成して型を作製した。その型に付加硬化型ジメチルシリコーン樹脂を流し込み、150℃×4時間加熱して硬化させ、剥がすことで凹凸パターンがシリコンウエハーの逆になったシリコーン樹脂型を作製した。作製した型に付加硬化型メチルフェニルシリコーン樹脂を流し込み、150℃×4時間加熱して硬化させ、剥がすことで凹凸パターンを有するシリコーン樹脂製支持基材を作製した(図7)。次いで粘着層として、メチルエチルケトン(MEK)を用いて、アクリル樹脂系粘着剤オリバインBPW6570(トーヨーケム(株)社製、粘着力:25.6N/25mm)を固形分濃度10質量%に希釈し、前記粘着剤を静電噴霧/塗布実験機(アピックヤマダ(株)社製)を用いて前記凹凸パターンの凸部上面に塗布し、曲面を有する粘着層を凸部にのみ有する粘着性基材を製造した(図8)。
【0060】
(比較例1)
実施例1と同様の方法で、酸化膜が形成されたシリコンウエハー(被加工体3)に、凸部の幅10μm、高さ10μm、間隔10μmの凹凸パターンを形成し、凹凸パターンを有する支持基材を作製した。次いで粘着層として、メチルエチルケトン(MEK)を用いて、付加硬化型シリコーン粘着剤KR−3700(信越化学工業(株)社製、粘着力:8.7N/25mm)を固形分濃度1.25質量%に希釈し、前記粘着剤をスピンコーター(株式会社アクティブ社製)を用いて前記凹凸パターンに塗布し、図9に示されるような、支持基材10の凹部にのみ粘着層20を持ち、凸部に粘着層を持たない粘着性基材を作製した。
【0061】
(比較例2)
凸部の幅10μm、高さ10μm、間隔10μmに変更した以外は、実施例3と同様の方法で凹凸パターンを有するシリコーン樹脂製支持基材を作製した。次いで粘着層として、メチルエチルケトン(MEK)を用いて、付加硬化型シリコーン粘着剤KR−3700(信越化学工業(株)社製、粘着力:8.7N/25mm)を固形分濃度1.25質量%に希釈し、前記粘着剤をハンドスプレーガンを用いて前記凹凸パターンに塗布し、図10に示されるような、支持基材10の凹部が粘着層20で埋まり、凹凸パターンを持たない、即ち、凸部の上面及び凹部に形成された粘着層20の表面が平坦である粘着性基材を作製した。
【0062】
(比較例3)
凸部の幅20μm、高さ50μm、間隔20μmに変更した以外は、実施例3と同様の方法で凹凸パターンを有するシリコーン樹脂製支持基材を作製した。次いで粘着層として、付加硬化型シリコーン粘着剤KR−3700(信越化学工業(株)社製、粘着力:8.7N/25mm)をスクリーン印刷し、図11に示されるような、支持基材10の凸部に矩形の粘着層20を持つ粘着性基材を作製した。
【0063】
[粘着試験]
実施例1〜3、比較例1〜3で得られた粘着性基材を用いて、図12のように並べられた赤、緑、青のマイクロLEDを選択的にピックアンドプレイスで転写した。選択的に転写したものを○、転写できなかったものを×とした。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示す通り、本発明の粘着性基材(実施例1〜3)を用いれば、一度に多くのマイクロLEDを選択的にピックアンドプレイスできるため、マイクロLEDの転写用として好適に用いることができる。
【0066】
一方、比較例1では、実施例のように支持基材の凸部に粘着層を有していなかったため、LEDをピックアップすることができなかった。また、比較例2では、凹部と凸部の全てに粘着層を有していたため、選択的にLEDをピックアップできなかった。また、ピックアップしたLEDも転写することができなかった。比較例3では選択的にLEDをピックアップできたが、チップと粘着層の密着面積が大きいため、別の粘着性基板に転写できなかった。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。
【符号の説明】
【0068】
1、10…支持基材、 1’ …支持基材の凸部の上面、 2a、2b、20…粘着層、 3…被加工体、 4…フォトレジスト、 100A、100B…粘着性基材、 101…凸部の幅、 102…隣接する凸部の間隔、 103a、103b…高さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12