【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究事業「多様な水源に対応できるロバストRO/NF膜の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
野呂 純二, 加藤 淳,“比表面積,細孔分布,粒度分布測定”,ぶんせき,日本分析化学会,2009年 7月 5日,第7号,pp.349-355
【文献】
青木 淑恵,“メソポーラスシリカのナノ細孔特性と応用”,学位論文,国立大学法人名古屋大学[online],2015年 3月25日,pp.22-34,[令和2年1月30日検索], インターネット,URL,http://hdl.handle.net/2237/22435
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
N
2吸着法による細孔測定には、多量の粉体試料が必要になるとともに、薄膜材料の細孔測定が困難である。
【0010】
また、ナノパームポロメトリー法では、多孔性支持基材上に成膜して混合ガス等の分離に使用可能な状態の多孔膜でなければ測定できないという難点がある。
【0011】
また、エリプソメトリー法では、装置が非常に高価であるとともに、多孔性試料が平滑な膜でなければ測定できないという難点がある。
【0012】
本発明は上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易性、汎用性を有する多孔性試料に吸着或いは凝縮した物質量及び多孔性試料の細孔径分布を導出可能な物質量測定方法、細孔径分布導出方法、物質量測定装置及び細孔径分布導出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の観点に係る物質量測定方法は、
非凝縮性ガスと凝縮性ガスとの混合ガスを前記凝縮性ガスの相対圧をステップ状に0.8まで変化させながら膜状又は粉粒状の多孔性試料に供給し、
前記相対圧をステップ状に変化させる都度、前記凝縮性ガスが前記多孔性試料の細孔に吸着或いは凝縮した物質量をFT−IR測定する、
ことを特徴とする。
【0014】
また、前記多孔性試料を配置する赤外測定セルを2つ用い、
前記赤外測定セルの一方のみに前記多孔性試料を配置して、2つの前記赤外測定セルに対して交互にFT−IR測定を行ってもよい。
【0015】
本発明の第2の観点に係る細孔径分布導出方法は、
本発明の第1の観点に係る物質量測定方法により凝縮性ガスが多孔性試料に吸着或いは凝縮した物質量を測定し、
相対圧、物質量及び細孔径の関係に基づいて、それぞれの相対圧に対する細孔径を求めて前記多孔性試料の細孔径分布を導出する、
ことを特徴とする。
【0016】
また、式1を用いて細孔径を求めてもよい。
【数1】
(式1中、Rは気体定数、Tは温度、Pは凝縮性ガスの分圧、P
sは温度Tにおける凝縮性ガスの飽和蒸気圧、vは凝縮物のモル体積、σは凝縮物の表面張力、θは凝縮物の接触角、r
pは多孔性試料の細孔半径を表す。)
【0017】
本発明の第3の観点に係る物質量測定装置は、
非凝縮性ガスと凝縮性ガスとの混合ガスを供給するガス供給手段と、
前記混合ガス中における前記凝縮性ガスの分圧
を調整
し、前記凝縮性ガスの相対圧をステップ状に0.8まで変化させる分圧調整手段と、
膜状又は粉粒状の多孔性試料が配置される赤外測定セルを有し、
前記相対圧がステップ状に変化され、その都度前記赤外測定セルに赤外線を照射して前記凝縮性ガスが前記多孔性試料の細孔に吸着或いは凝縮した物質量を測定するFT−IR装置と、を備える、
ことを特徴とする。
【0018】
また、前記FT−IR装置が2つの前記赤外測定セルを備え、
前記赤外測定セルの一方のみに前記多孔性試料が配置され、2つの前記赤外測定セルに対して交互に赤外線を照射してもよい。
【0019】
本発明の第4の観点に係る細孔径分布導出装置は、
本発明の第3の観点に係る物質量測定装置と、
相対圧、物質量及び細孔径の関係に基づいて、それぞれの相対圧に対する細孔径を求めて前記多孔性試料の細孔径分布を導出する演算装置と、を備える、
ことを特徴とする。
【0020】
また、前記演算装置は式1を用いて細孔径を求めてもよい。
【数2】
(式1中、Rは気体定数、Tは温度、Pは凝縮性ガスの分圧、P
sは温度Tにおける凝縮性ガスの飽和蒸気圧、vは凝縮物のモル体積、σは凝縮物の表面張力、θは凝縮物の接触角、r
pは多孔性試料の細孔半径を表す。)
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る物質量測定方法では、多孔性試料に吸着或いは凝縮した物質量を測定でき、簡易性、汎用性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
物質量測定方法、及び、細孔径分布導出方法は、多孔性試料の細孔内にて吸着、凝縮した凝縮物の量、及び、多孔性試料の細孔径分布を導出する方法である。物質量測定方法、及び、細孔径分布導出方法は、例えば、
図1に示す細孔径分布導出装置1を利用して行うことができる。
【0024】
細孔径分布導出装置1は、非凝縮性ガスボンベ10、バブラー13、FT−IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)装置15、演算装置18を備える。この細孔径分布導出装置1は、赤外測定セルを一つ使用した測定(以下、シングル測定)に利用される。なお、細孔径分布導出装置1が演算装置18を備えていない場合では、物質量測定装置として機能する。
【0025】
非凝縮性ガスボンベ10には、非凝縮性ガスが充填されている。非凝縮性ガスとして、例えば、窒素やアルゴンなどの不活性ガスのほか、メタンなど凝縮し難いガスが用いられる。
【0026】
非凝縮性ガスは、非凝縮性ガスボンベ10からガス流路MFを通じてFT−IR装置15へと供給される。また、バブラー流路BFがガス流路MFから分岐し、バブラー13を通じてガス流路MFへ再度合流する。ガス流路MF、バブラー流路BFを流れる非凝縮性ガスの流量は、流量コントローラ11、12により調整される。
【0027】
バブラー流路BFに設置されているバブラー13には、気化することで凝縮性ガスになる液体が入れられている。このような液体として、例えば、水やヘキサンなど種々の液体が用いられ得る。バブラー13に供給された非凝縮性ガスによるバブリングによって、バブラー13内の液体が気化し、バブラー13から湿気を帯びた非凝縮性ガスと凝縮性ガスの混合ガスが排気される。また、バブラー13は恒温槽14に収容されており、バブラー13内の液体は細孔径分布導出装置1が配置される雰囲気温度以下に保たれる。これにより、気化した凝縮性ガスがバブラー流路BF、ガス流路MF内で凝縮することが抑えられる。
【0028】
バブラー流路BFを流れてきた湿気を帯びた非凝縮性ガスがガス流路MFに合流し、非凝縮性ガスと凝縮性ガスが混合した混合ガスとして流れ、FT−IR装置15へと供給される。FT−IR装置15は、赤外測定セル16及び赤外線照射部(不図示)を備えている。赤外測定セル16は、
図2(A)〜(C)に示すように、2つの測定窓17に挟まれる内部空間に多孔性試料Sを配置することが可能なセルである。そして、赤外線照射部が赤外線を照射し、測定窓17を通じて多孔性試料Sに吸着或いは凝縮した物質の吸収スペクトルが得られる。なお、測定窓17として、例えば、ZnSeなどが用いられる。FT−IR装置15は、多孔性試料Sの細孔に凝縮性ガスが吸着或いは凝縮した物質の吸収スペクトルに基づいて、物質量を算出する。
【0029】
演算装置18は、FT−IR装置15で得られる多孔性試料Sに吸着或いは凝縮した物質量に基づいて、後述の式1から多孔性試料の細孔径を算出し、細孔径分布を導出する。
【0030】
続いて、細孔径分布導出装置1を用いた物質量測定方法、細孔径分布導出方法について説明する。まず、赤外測定セル16に多孔性試料Sを配置する。多孔性試料Sは膜状、粉粒状など様々な形態で用いられ得る。例えば、多孔性試料Sの配置は、
図2(A)に示すように、シリコンウエハなどの保持材Wの上に多孔性試料Sを製膜した形態にして配置することができる。
【0031】
そして、バックグラウンド測定として、
図2(A)に示すように、流量コントローラ11、12を調整し、バブラー流路BFを通らない非凝縮性ガスを赤外測定セル16に供給し、FT−IR測定する。この状態では、凝縮性ガスは赤外測定セル16に供給されないので、この状態で測定される吸収スペクトルをバックグランドデータとして利用する。
【0032】
次いで、非凝縮性ガスの相対圧を所定の相対圧に調節し、凝縮性ガスと非凝縮性ガスの混合ガスを赤外測定セル16に供給する。ここで相対圧は、測定温度における凝縮性ガスの飽和蒸気圧(P
s)と混合ガス中の凝縮性ガスの分圧(P)との比(P/P
s)である。したがって、バブラー流路BFを流れるガス流量を相対的に大きくしていくことで、混合ガス中の凝縮性ガスの分圧を高め、相対圧を上げることができる。
【0033】
非凝縮性ガスと凝縮性ガスからなる混合ガスを赤外測定セル16に供給すると、混合ガスと細孔内の細孔壁には引力が働き、まず、細孔表面で吸着が起きる。更に、相対圧を増加させると、気相中では蒸気として存在するにも関わらず、細孔内では凝縮(毛管凝縮)が始まる。以上のことから、
図2(B)に示すように、混合ガスに含まれる凝縮性ガスが多孔性試料Sの細孔に吸着、毛管凝縮が起こり、細孔内に凝縮物Cが生じる。
【0034】
一定時間混合ガスを所定の相対圧で流した後、この状態でFT−IR測定する。そして、測定された吸収スペクトルから先のバックグラウンドデータを差し引いたスペクトルに基づいて、凝縮物Cの吸光度から凝縮物量が測定できる。具体的には、吸収スペクトルにおいて凝縮物による吸収ピーク強度、或いは吸収波長で積分することで細孔に吸着或いは凝縮した物質の物質量が得られる。
【0035】
更に、凝縮性ガスの相対圧を高くして、上記と同様にしてFT−IR測定を行い、凝縮性ガスが多孔性試料Sに吸着、凝縮した物質量を測定する。
【0036】
このようにして、相対圧が1に近づくまでステップ状に上げてゆくことで、
図2(C)に示すように、ほぼ全ての細孔に凝縮性ガスが吸着、凝縮することになる。なお、飽和蒸気圧近傍では、多孔性試料Sの細孔以外の箇所でも凝縮性ガスの凝縮が進行してしまうことから、相対圧が0.6〜0.8程度まで行うようにしてもよい。
【0037】
そして、演算装置18では、相対圧、物質量及び細孔径の関係に基づいて、それぞれの相対圧に対する多孔性試料Sの細孔径を求める。相対圧、物質量及び細孔径の関係に基づいて細孔径が求められれば、ケルビン法、吸着層厚みを考慮したケルビン法、BJH法、tプロット法、MP法、DFT法などを用いることができ、例えば、式1の関係式が用いられる。式1中、Rは気体定数、Tは温度、Pは凝縮性ガスの分圧、P
sは温度Tにおける凝縮性ガスの飽和蒸気圧、vは凝縮物のモル体積、σは凝縮物の表面張力、θは凝縮物の接触角、r
pは多孔性試料の細孔半径を表す。
【0039】
このように、相対圧と細孔径とは相対関係にあることから、各相対圧に対する細孔径を導くことにより、多孔性試料Sの細孔径分布が得られる。
【0040】
上記の物質量測定方法では、凝縮性ガスが吸着或いは凝縮した物質量をFT−IR測定により測定するものであるため、N
2吸着法のように多量の多孔性試料を要しないとともに、多孔性試料が多孔質支持体に成膜された、混合ガス等の分離に使用可能な状態の分離膜でなくても測定でき、また、FT−IR装置は、エリプソメトリー装置に比べて安価であるため、簡便かつ汎用性に優れた測定方法とも言える。
【0041】
上記では、赤外測定セル16を一つ使用した測定について説明したが、
図3に示す細孔径分布導出装置2のように、二つ使用した測定(以下、シャトル測定)であってもよい。
図3に示す細孔径分布導出装置2では、FT−IR装置15が2つの赤外測定セル16a、16bを備えている。赤外測定セル16a、16bはいずれも上記と同様の仕様である。そして、不図示の赤外線照射部が2つの赤外測定セル16a、16bの間を移動して赤外測定セル16a、16bに交互に赤外線を照射することにより、FT−IR測定可能な構成である。
【0042】
図4(A)、(B)に示すように、赤外測定セル16aには保持材Wのみが配置され、赤外測定セル16bには多孔性試料Sが保持された保持材Wが配置される。赤外測定セル16a、16bは直列に配置されており、混合ガスが赤外測定セル16a、16bを順に経由して流れる。なお、赤外測定セル16aに多孔性試料Sが保持された保持材Wが配置され、赤外測定セル16bに保持材Wのみが配置されてもよい。
【0043】
まず、
図4(A)に示すように、赤外線照射部が赤外測定セル16aに対して赤外線を照射し、次いで、
図4(B)に示すように、赤外測定セル16bに対して赤外線を照射し、それぞれについてFT−IR測定を行う。
【0044】
上記のように、相対圧をステップ状に変化させ、その都度赤外測定セル16a、16bに対してFT−IR測定を行い、赤外測定セル16aで測定された吸収スペクトルをバックグランドデータとして、赤外測定セル16bで測定された吸収スペクトルから差し引くことにより、気相成分の非凝縮性ガス(測定時に赤外測定セル16b内を流れている非凝縮性ガス)の吸収スペクトルを差し引くことが可能なる。これにより、明瞭な吸収スペクトルが得られることから、より高い精度での吸着物、凝縮物の物質量の測定、細孔径分布の導出が可能になる。
【0045】
なお、一つの赤外線照射部が赤外測定セル16a、16bの間を移動し、交互に赤外線を照射する形態について説明したが、2つの赤外線照射部を備えた形態であってもよい。
【0046】
(実施例)
(SiO
2−ZrO
2コロイドゾルの調製、SiO
2−ZrO
2コロイドゾルで製膜したサンプルの作製)
500mL三角フラスコに溶液A(Si(OC
2H
5)
4(3.56g)、H
2O(0.304g)、HCl(0.05g)、C
2H
5OH(50g))を入れて10分間攪拌した。
その後、攪拌しながら溶液B(Zr(OC
4H
6)
4(8.10g)、C
2H
5OH(20g))、及び、溶液C(H
2O(0.034g)、35wt%HCl(0.05g)、C
2H
5OH(20g))を1滴ずつゆっくり滴下し、12時間攪拌した。
その後、溶液D(H
2O(0.304g)、35wt%HCl(0.05g)、C
2H
5OH(20g))を1滴ずつ滴下し、10分間攪拌した。
その後、溶液E(35wt%HCl(1.0〜3.0g)、H
2O(三角フラスコの500mLの標線まで))を加え、8時間煮沸することにより、SiO
2−ZrO
2コロイドゾルを調製した。
【0047】
Siウエハを500℃、30分間焼成して表面を親水的にした。このSiウエハ上に、SiO
2−ZrO
2コロイドゾルを数滴垂らし、スピンコーティング法(5000rpm、25秒)により、製膜した。なお、SiO
2−ZrO
2コロイドゾルの滴下、スピンコーティングは50回行った。このようにしてSiウエハ上にSiO
2−ZrO
2多孔性試料を製膜したサンプルを作製した。このサンプルをSiZr/Siと記す。
【0048】
(TiO
2コロイドゾルの調製、TiO
2コロイドゾルで製膜したサンプルの作製)
500mL三角フラスコにイオン交換水(273.15g)を入れて60℃の湯浴で攪拌しながら保温しておいた。
これに混合溶液((CH3)
2CHOH(18.50g)、Ti(OC
3H
7)
4(4.32g))を1滴ずつ滴下し、30分間攪拌した。
更に、61wt%HNO
3(4.04g)を加え、3時間煮沸することで、TiO
2コロイドゾルを調製した。
【0049】
Siウエハを500℃、30分間焼成して表面を親水的にした。このSiウエハ上に、50℃に加温しておいたTiO
2コロイドゾルを数滴垂らし、スピンコーティング法(2000rpm、60秒)により、製膜した。なお、TiO
2コロイドゾルの滴下、スピンコーティングは50回行った。このようにしてSiウエハ上にTiO
2多孔性試料を製膜したサンプルを作製した。このサンプルをTi/Siと記す。
【0050】
(実施例1:シングル測定でのサンプルの物質量測定、細孔径分布の導出)
図1に示す細孔径分布導出装置を構築し、作製したSiZr/Siについて、物質量の測定、細孔径分布の導出を行った。非凝縮性ガスとしてN
2ガスを用い、バブラーに水を入れ凝縮性ガスとして水蒸気を用いた。
【0051】
赤外測定セルにSiZr/Siをセットし、バックグラウンド測定を行った。バックグラウンド測定は、まず、水蒸気の相対圧(P/P
s)を0、即ち、N
2ガスのみを赤外測定セルに供給してFT−IR測定を行った。
【0052】
次いで、水蒸気の相対圧をステップ状に変化させながら窒素ガス及び水蒸気の混合ガスを赤外測定セルに供給し、経時的にFT−IR測定を行った。そして、それぞれについてバックグラウンド測定を差し引いた吸収スペクトルを得た。
【0053】
なお、室温を25℃、FT−IR装置内温度を20℃〜40℃、バブラーの温度を20℃に保つようにして行った。また、非凝縮性ガスの流量を0〜10mL/min、バブラーを通過させる非凝縮性ガスの流量を0〜10mL/minに制御して凝縮性ガスの相対圧を変化させ、赤外測定セルを流れる混合ガスの総流量が10mL/minになるようにした。
【0054】
図5に、SiZr/Siついて、各相対圧で測定したFT−IRスペクトルを示す。なお、
図5中の0.03、0.06、0.12、0.18、0.24、0.40、0.57は相対圧を示している。3000〜3500cm
−1に液相状の水のピークが見られ、SiZr/Siへ吸着、凝縮した水を確認できる。そして、相対圧の増加とともに液相状の水のピークも増大していることが確認できる。また、3500〜4000cm
−1と1400〜2000cm
−1には、気相状の水のピークが見られる。このため、SiZr/Siに吸着している液相状の水のピークのみを考慮すべく、気相状の水のピークの範囲と被らない3000〜3500cm
−1の範囲を吸着した水のピークと考えることができる。なお、2400cm
−1付近に見られるピークは、CO
2によるものである。
【0055】
図5のFT−IRスペクトルから吸着した液相状の水(3000〜3500cm
−1)のピークにベースラインを引き、それより上を積分することでピーク面積を得た。
図6にそのピーク面積の経時変化を示す。
【0056】
図6を見ると、相対圧の増加とともにピーク面積が増大したことがわかる。相対圧を上げると、より大きな細孔においても水蒸気の吸着、毛管凝縮が起こるためだと考えられる。また、相対圧を切り替えると短時間でピーク面積が定常になっていることから、短時間で物質量の測定が可能なことがわかる。
【0057】
また、
図7(A)に、ピーク面積を縦軸にとり、横軸にケルビン径(下軸)、相対圧(上軸)をとったグラフを示す。なお、ケルビン径と相対圧とは相対関係にあり、一意に定まるものである。また、
図7(B)に、ピーク面積で規格化、即ち、相対圧0におけるピーク面積を0とし、相対圧0.57におけるピーク面積を1として規格化したグラフを示す。
【0058】
また、Ti/Siのサンプルについても、上記と同様にして、FT−IR測定、吸収スペクトルからのピーク面積の導出を行った。Ti/Siについても、
図7(A)にピーク面積を縦軸にとり、横軸にケルビン径(下軸)、相対圧(上軸)をとったグラフ、
図7(B)にピーク面積で規格化したグラフを示す。
【0059】
図7(A)、(B)をみると、SiZr/Si、Ti/Siいずれについても、相対圧の増加とともに水の吸着量が増加し、吸着量が飽和に近づくことがわかる。また、SiZr/Si、Ti/Siでの違いが確認でき、Ti/SiはSiZr/Siに比べて大きな細孔径を有していることがわかる。
【0060】
(実施例2:シャトル測定でのサンプルの物質量測定、細孔径分布の導出)
続いて、
図3に示す細孔径分布導出装置を用い、シャトル測定にて、サンプルの物質量の測定、細孔径分布を導出した。
【0061】
一方の赤外測定セルに実施例1と同様にサンプル(SiZr/Si)をセットし、他方の赤外測定セルにSiウエハのみをセットした。そして、実施例1と同様に相対圧をステップ状に上げながら、赤外測定セルに混合ガス(相対圧0.00ではN
2ガスのみ)を供給した。
【0062】
それぞれの相対圧において、Siウエハをセットした赤外測定セル、SiZr/Siをセットした赤外測定セルに対してFT−IR測定を行った。
【0063】
測定により得られたSiウエハの吸収スペクトルを
図8(A)に示す。また、Siウエハの吸収を差し引いたSiZr/Siの吸収スペクトルを
図8(B)に、
図8(B)2800〜3800cm
−1の範囲を拡大した図を
図8(C)に示す。なお、
図8(C)中の0.00、0.16、0.22、0.36、0.50は相対圧を示している。
【0064】
凝縮成分である液相状の水のピーク(3000〜3500cm
−1)を見ると、相対圧が高くなっても、Siウエハのみの方では、スペクトルに変化はみられなかった。一方、サンプルの方では、水の吸着が確認できた。シャトル測定では、気相成分の吸収を差し引くことにより、実施例1のシングル測定と比較して吸収スペクトルが明瞭に得られることがわかる。
【0065】
また、1000cm
−1付近にSi−O−Siのピークが見られ、これにより、SiO
2−ZrO
2のコーティング量を確認することもできる。なお、全体的に緩やかな干渉が見られるが、これは2つの赤外測定セル間の差により発生したものと考えられる。