(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長手方向、幅方向及び厚さ方向を有し、前記厚さ方向の一方の面である第1面と他方の面である第2面とを有する不織布を加熱し、嵩回復させることで、嵩回復した前記不織布を製造する製造方法であって、
前記長手方向に沿う搬送方向に搬送されつつ、加熱ロールの外周面に前記第1面が当接するように巻き付けられた前記不織布の前記第1面を、前記外周面に当接した前記不織布を加熱するための前記外周面の領域である加熱領域内の第1領域において、前記加熱ロールのみで加熱する加熱工程と、
前記加熱領域内における前記第1領域の下流側の第2領域において、熱風吹き出し部で前記第2面に熱風を吹き付けて加熱する吹き付け工程と、
を備え、
前記外周面は、前記熱風を反射するように構成されており、
前記吹き付け工程が、
前記第2領域における所定領域において、前記加熱ロールの加熱に加え、前記熱風吹き出し部の前記熱風で、前記不織布を加熱する工程と、
前記第2領域における前記所定領域よりも下流側の領域において、前記熱風吹き出し部から前記熱風が吹き付けられないが、前記加熱ロールの加熱に加え、前記外周面で反射された前記熱風で前記不織布を加熱する工程と、
を含む、
製造方法。
前記搬送方向における前記加熱ロールの下流側に位置する他の加熱ロールの外周面に前記第2面が当接するように巻き付けられた前記不織布において、前記加熱ロールで加熱された領域内の前記第2面を、前記他の加熱ロールで加熱する他の加熱工程を更に備え、
前記他の吹き付け工程は、
前記不織布のうち、前記他の加熱ロールの外周面に前記第2面が当接して加熱されている領域内において、前記他の熱風吹き出し部で、前記第1面に熱風を吹き付けて加熱する工程を含む、
請求項6に記載の製造方法。
長手方向、幅方向及び厚さ方向を有し、前記厚さ方向の一方の面である第1面と他方の面である第2面とを有する不織布を加熱することで、嵩回復した前記不織布を製造する製造装置であって、
外周面を有し、前記外周面に巻き付けられた前記不織布を前記長手方向に沿う搬送方向に搬送しつつ、前記外周面の領域である加熱領域に当接した前記第1面を加熱する加熱ロールと、
前記外周面に対向して設けられ、前記第2面に熱風を吹き付けて加熱する熱風吹き出し部と、
を備え、
前記外周面は、前記熱風を反射するように構成されており、
前記加熱ロールと前記熱風吹き出し部は、
前記加熱領域内の第1領域において、前記加熱ロールのみで前記不織布を加熱し、
前記加熱領域内における前記第1領域の下流側の第2領域において、前記熱風吹き出し部で前記第2面に熱風を吹き付けて前記不織布を加熱し、
前記第2領域における所定領域において、前記加熱ロールの加熱に加え、前記熱風吹き出し部の前記熱風で、前記不織布を加熱し、
前記第2領域における前記所定領域よりも下流側の領域において、前記熱風吹き出し部から前記熱風が吹き付けられないが、前記加熱ロールの加熱に加え、前記外周面で反射された前記熱風で前記不織布を加熱する、
ように構成されている、
製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、熱風は、不織布を厚さ方向に一方の面から他方の面に貫通するため、不織布を加熱して嵩回復させる、すなわち膨らませる一方、不織布をコンベアベルトに押し付け、押し潰して、嵩の回復を妨げている。そして、熱風が搬送方向に継続的に不織布に吹き付けられるので、不織布の表面や内部で、厚さ方向に膨らむ力と潰す力とが打消し合って嵩が十分に回復し難く、それらの力が不織布の内部で複雑に衝突して厚さ方向に略均一に嵩回復し難くなるおそれがある。特許文献2では、熱風のように熱媒体が不織布の内部に入り込むのではなく、不織布のうちの加熱ロールに接触した面が加熱され、その熱が繊維を介して伝導する。そのため、加熱ロールに近い部分が嵩回復し易く、遠い部分が嵩回復し難く、厚さ方向に略均一に嵩回復し難くなるおそれがある。特許文献3、4では、熱風のために、常時多量の空気を加熱して供給する必要があるほか、設備も大きくなるため、省エネルギー、省スペースの観点で課題がある。不織布の製造において、省エネルギー、省スペースであり、かつ厚さ方向に略均一に嵩回復された不織布を製造することが可能な技術が望まれる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、不織布の製造において、省エネルギー、省スペースであり、かつ厚さ方向に略均一に嵩回復された不織布を製造することが可能な不織布の製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の製造方法は、以下のとおりである。(1)長手方向、幅方向及び厚さ方向を有し、前記厚さ方向の一方の面である第1面と他方の面である第2面とを有する不織布を加熱し、嵩回復させることで、嵩回復した前記不織布を製造する製造方法であって、前記長手方向に沿う搬送方向に搬送されつつ、加熱ロールの外周面に前記第1面が当接するように巻き付けられた前記不織布の前記第1面を、前記加熱ロールで加熱する加熱工程と、前記不織布のうち、前記加熱ロールの外周面に前記第1面が当接して加熱されている領域内において、熱風吹き出し部で前記第2面に熱風を吹き付けて加熱する吹き付け工程と、を備える、製造方法。
【0008】
本製造方法では、加熱ロールの外周面上に巻き付けられた不織布を、不織布の厚さ方向の第1面側(下側)から加熱ロールにより加熱しつつ、不織布の厚さ方向の第2面側(上側)から熱風吹き出し部の熱風により加熱する。すなわち、加熱ロールが少なくとも不織布の下側の部分を加熱し、熱風が不織布の内部に進入して上側から下側までの部分を加熱するので、不織布の厚さ方向の全体に、嵩回復に必要な熱量を十分に供給できる。
ここで、熱風は、不織布の上側の表面(第2面)から内部へ進入し、下側の表面(第1面)に達した後に、下側の表面に接する加熱ロールの外周面で反射され、不織布の内部に留まると考えられる。したがって、熱風(空気)が不織布を貫通しないため、不織布の嵩回復が熱風で妨げられ難く、不織布を厚さ方向に略均一に嵩回復し易くなる。また、熱風が不織布の下側の表面に達するまでに、その熱が不織布の繊維に移動していくので、熱風は相対的に低い温度になり得る。しかし、その熱風は、加熱ロールの表面で反射されるとき、加熱ロールによって加熱されるため、ある程度高い温度で、不織布の内部に留まることができる。その結果、不織布における熱風が直接進入する領域に加えて、熱風が進入しなくなったが熱風の空気の熱が残存する領域にて、温度の比較的高い状態を維持できる。
このように、不織布1において、熱風が吹き付けられる領域だけでなく、熱風が吹き付けられない領域(吹き付けが終了した領域)でも、厚さ方向の広い範囲で温度の高い状態を維持できる。このような状態は、加熱ロールで加熱されている領域内で概ね維持されるから、不織布において、厚さ方向に全体的に温度が高い状態を、長手方向(搬送方向)に比較的長い領域で維持できる。それにより厚さ方向に略均一に嵩回復することができる。
ただし、加熱プレートではなく加熱ロールで不織布を加熱する理由は、次に説明するとおりである。不織布を加熱ロールに巻き付けると、加熱ロールに接する部分(第1面)は相対的に高繊維密度になるように変形し、加熱ロールの熱を不織布に伝達させ易くなり、加熱ロールに接しない部分(第2面)は相対的に低繊維密度になるように変形し、熱風を不織布に取込み易くなるからである。
そして、本製造方法では、不織布を嵩回復することにより、十分な嵩を有する不織布を製造することができる。このとき、本製造方法は、少なくとも一つの加熱ロールによる加熱工程と、少なくとも一つの熱風吹き出し部による吹き付け工程と、を備えていればよいので、省エネルギー及び省スペースで実現できる。
すなわち、本製造方法により、省エネルギー、省スペースで、厚さ方向に略均一に嵩回復された不織布を製造することが可能となる。
【0009】
本発明は、(2)前記吹き付け工程は、前記熱風吹き出し部よりも前記搬送方向の下流側に配置されたカバー部材により、前記不織布のうちの前記加熱ロールで加熱されている領域の少なくとも一部を覆う被覆工程を含む、上記(1)に記載の製造方法、でもよい。
本製造方法では、上記のカバー部材を備えることで、不織布の上側の表面に接する空気の散逸をカバー部材で抑えることができ、空気の対流により不織布から逃げようとする熱を、不織布の上側の表面の近傍の空気内に留めることができる。その結果、不織布の上側の部分が近傍の空気で保温されて冷め難くなるので、不織布の上側の部分を比較的高い温度に保持できる。したがって、不織布のうちの加熱ロールで下側の部分が加熱されている領域内であれば、熱風が吹き付けられていない領域(吹き付けが終了した領域)でも、不織布の上側から下側の部分も比較的高い温度を保持でき、不織布の嵩回復をより効果的に進めることができる。それにより、不織布を厚さ方向により略均一に嵩回復できる。
【0010】
本発明は、(3)前記吹き付け工程は、前記不織布のうちの前記加熱ロールで加熱されている領域内における前記第2面に、前記搬送方向に沿って並んだ、複数の熱風吹き出し部で熱風を吹き付ける工程を含む、上記(1)に記載の製造方法、であってもよい。
本製造方法では、不織布の第2面に複数の熱風吹き出し部で熱風を吹き付ける。そのため、温度が低下し易い不織布の上側の部分の複数の領域を熱風で高い温度できる。したがって、不織布のうちの加熱ロールで下側の部分が加熱されている領域内において、不織布の上側の部分も高い温度を少なくとも複数の領域で保持できるため、不織布の厚さ方向の両側の部分において嵩回復をより効果的に進めることができる。それにより、不織布を厚さ方向により略均一に嵩回復させることができる。
【0011】
本発明は、(4)前記複数の熱風吹き出し部は、吹き付ける熱風の特性が互いに異なる、上記(3)に記載の製造方法、であってもよい。
本製造方法では、複数の熱風吹き出し部の熱風の特性が互いに相違する。熱風の特性としては、例えば熱風の温度、熱風の流量、熱風の不織布に対する角度、熱風のオン・オフのタイミングなどが挙げられる。そのため、不織布の搬送速度や、不織布の特性(繊維密度、繊維径、材質など)などに応じ、不織布が適切に嵩回復できるよう、不織布に熱風を吹き付けることができ、それにより、不織布を厚さ方向により略均一に嵩回復できる。
【0012】
本発明は、(5)前記吹き付け工程は、前記複数の熱風吹き出し部の各々における前記搬送方向の下流側に配置された複数のカバー部材により、前記不織布のうちの前記加熱ロールで加熱されている領域の少なくとも一部を覆う他の被覆工程を含む、上記(3)又は(4)に記載の製造方法、であってもよい。
本製造方法では、複数の熱風吹き出し部の各々の下流側にカバー部材を備えている。そのため、複数の熱風吹き出し部の各々からの熱風が吹き付けられない領域(吹き付けが終了した領域)において、不織布の上側の表面に接する空気の散逸をカバー部材で抑えることができる。それにより、より広い範囲において、空気の対流により不織布から逃げようとする熱を、不織布の上側の表面の近傍の空気内に留めることができるので、より広い範囲において、不織布の上側の部分を比較的高い温度に保持できる。したがって、不織布のうちの加熱ロールで下側の部分が加熱されている領域内において、上側の部分も比較的高い温度を保持できるため、不織布を厚さ方向により略均一に嵩回復できる。
【0013】
本発明は、(6)前記吹き付け工程の後に、前記不織布における前記加熱ロールで加熱された領域内の前記第1面に他の熱風吹き出し部で熱風を吹き付ける他の吹き付け工程を備える、上記(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の製造方法、であってもよい。
加熱ロールによる嵩回復と熱風による嵩回復とでは、嵩回復方法が同じとはいえない。そのため、不織布の第1面を加熱ロールで加熱し、第2面を熱風で加熱した状態では、不織布の嵩回復の厚さ方向の均一性は高いが、改良の余地があり得る。そこで、本製造方法では、不織布の第2面及び第1面の両面に熱風を吹き付けて、嵩回復させる。それにより、不織布を厚さ方向により略均一に嵩回復させることができる。
【0014】
本発明は、(7)前記搬送方向における前記加熱ロールの下流側に位置する他の加熱ロールの外周面に前記第2面が当接するように巻き付けられた前記不織布において、前記加熱ロールで加熱された領域内の前記第2面を、前記他の加熱ロールで加熱する他の加熱工程を更に備え、前記他の吹き付け工程は、前記不織布のうち、前記他の加熱ロールの外周面に前記第2面が当接して加熱されている領域内において、前記他の熱風吹き出し部で、前記第1面に熱風を吹き付ける工程を含む、上記(6)に記載の製造方法、でもよい。
本製造方法では、不織布が、加熱ロールと他の加熱ロールとに実質的にS字状に巻き付けられている。そして、その不織布は、最初の加熱ロール側において、第1面を加熱ロールで加熱され、第2面を熱風で加熱され、次の他の加熱ロール側において、第2面を加熱ロールで加熱され、第1面を熱風で加熱されている。このように、不織布の両面を、いずれも加熱ロールと熱風とを用いて嵩回復させているので、不織布の第1面側の部分と第2面側の部分とで、嵩回復の状態をほぼ同じにできる。それにより、不織布を厚さ方向に更により略均一に嵩回復させることができる。
【0015】
本発明は、(8)前記他の吹き付け工程は、前記他の熱風吹き出し部よりも前記搬送方向の下流側に配置された他のカバー部材により、前記不織布のうちの前記他の加熱ロールで加熱されている領域の少なくとも一部を覆う他の被覆工程を含む、上記(7)に記載の製造方法、であってもよい。
本製造方法では、上記の他のカバー部材を備えている。そのため、不織布の上側の表面に接する空気の散逸を他のカバー部材で抑えることができ、それにより、空気の対流により不織布から逃げようとする熱を、不織布の上側の表面の近傍の空気内に留めることができる。その結果、不織布の上側の部分が近傍の空気で保温されて冷め難くなるので、不織布の上側の部分を比較的高い温度に保持できる。したがって、不織布の嵩回復をより効果的に進めることができ、不織布を厚さ方向により略均一に嵩回復させることができる。
【0016】
本発明は、(9)前記吹き付け工程は、前記不織布のうちの前記他の加熱ロールで加熱されている領域内における前記第1面に、前記搬送方向に沿って並んだ、前記他の熱風吹き出し部を含む複数の他の熱風吹き出し部で、熱風を吹き付ける工程と、前記複数の他の熱風吹き出し部の各々における前記搬送方向の下流側に配置された他の複数のカバー部材により、前記不織布のうちの前記他の加熱ロールで加熱されている領域の少なくとも一部を覆う工程を含む、上記(7)に記載の製造方法、であってもよい。
本製造方法では、不織布の第1面に複数の他の熱風吹き出し部で熱風を吹き付ける。そのため、温度が低下し易い不織布の上側の部分の複数の領域を熱風で高い温度にすることができる。したがって、不織布の第1面の上側の部分についても、少なくとも複数の領域で高い温度を保持できる。更に、複数の他の熱風吹き出し部の各々の下流側に他のカバー部材を備えている。そのため、複数の他の熱風吹き出し部の各々からの熱風の吹きかけが終わった領域(熱風が吹き付けられない領域)において、不織布の第1面の上側の表面に接する空気の散逸をカバー部材で抑えることができる。それにより、より広い範囲において、空気の対流により不織布から逃げようとする熱を、不織布の上側の表面の近傍の空気内に留めることができる。これらにより、より広い範囲において、不織布の第1面の上側の部分を比較的高い温度に保持できる。したがって、不織布のうちの加熱されている領域内であれば、不織布の下側の部分だけでなく、上側の部分も比較的高い温度を保持することができ、不織布の嵩回復をより効果的に進めることができる。それにより、不織布を厚さ方向により略均一に嵩回復させることができる。
【0017】
本発明は、(10)前記不織布に熱風吹き出し部で熱風を吹き付けるとき、前記不織布と加熱ロールとが接触し始める位置よりも下流側の位置に熱風を吹き付ける、上記(1)乃至(9)のいずれか一項に記載の製造方法、であってもよい。
本製造方法では、加熱ロール(他の加熱ロールを含む)で不織布を加熱し始める位置(加熱されている領域における搬送方向の最も上流側の位置)よりも下流側の位置に、熱風吹き出し部(他の熱風吹き出し部を含む)で不織布に熱風を吹き付ける。そのため、不織布の下側(加熱ロール側)の部分の温度が高くなった状態で、不織布の上側から熱風を供給できる。それにより、不織布内の熱風の温度低下を抑制できるので、不織布を厚さ方向に更により略均一に嵩回復させることができる。
【0018】
本発明の製造装置は、(11)長手方向、幅方向及び厚さ方向を有し、前記厚さ方向の一方の面である第1面と他方の面である第2面とを有する不織布を加熱することで、嵩回復した前記不織布を製造する製造装置であって、加熱ロールと、前記加熱ロールの外周面に対向して設けられた熱風吹き出し部と、を備え、前記不織布の嵩を回復させるとき、前記加熱ロールは、前記長手方向に沿う搬送方向に搬送されつつ、前記加熱ロールの外周面に前記第1面が当接されるように巻き付けられた前記不織布の前記第1面を加熱し、前記熱風吹き出し部は、前記不織布のうち、前記加熱ロールの外周面に前記第1面が当接して加熱されている領域内において、前記第2面に熱風を吹き付けて加熱する、製造装置。
本製造装置は、上記(1)に記載の製造方法を実行できるので、その製造方法と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、不織布の製造において、省エネルギー、省スペースであり、かつ厚さ方向に略均一に嵩回復された不織布を製造することが可能な不織布の製造方法を及び製造装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
嵩回復した不織布を製造する製造装置及び製造方法について説明する。その嵩回復した不織布は、使い捨ておむつ、失禁パッド及び生理用ナプキンのような吸収性物品、マスクのような医療用品並びにワイパーのような清掃用品などで使用し得る。
【0022】
ただし、嵩回復させる不織布としては、加熱により嵩が回復する嵩回復性の不織布であれば特に制限はない。嵩回復性の不織布としては、例えばエアスルー不織布、エアレイド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布が挙げられる。不織布は、一種類の不織布で構成されていてもよいし、一種類又は複数種類の不織布が積層された積層体で構成されていてもよい。また、不織布の繊維としては、特に制限は無いが、例えばポリオレフィン系やポリエステル系の繊維、又はそれらの複合繊維が挙げられる。ポリオレフィン系の繊維としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン(PB)、及び、これらを主体とした共重合体等の繊維が挙げられる。ポリエステル系の繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及び、これらを主体とした共重合体等の繊維が挙げられる。複合繊維としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)/ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)等の芯/鞘構造の繊維が挙げられる。
【0023】
不織布の坪量、繊維の繊維長、幅及び厚さ(嵩回復前)としては、嵩回復が可能であれば特に制限はない。不織布の坪量としては例えば5〜200g/m
2が挙げられ、繊維の繊維長としては例えば1〜100mmが挙げられ、幅としては例えば100mm〜1000mmが挙げられる。不織布の嵩回復前の厚さとしては例えば0.2mm〜20mmが挙げられ、嵩回復後の厚さとしては例えば0.5mm〜50mmが挙げられる。
【0024】
以下、実施形態に係る製造装置及び製造方法について具体的に説明する。
【0025】
(第1実施形態)
まず、嵩回復した不織布を製造する製造装置の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る製造装置10の構成例を模式的に示す図である。製造装置10は、厚さ方向に荷重を受ける等により嵩が低下した不織布1を供給され、その不織布1を加熱し、嵩回復させることにより嵩回復した不織布2を製造する。その不織布1は、長手方向、幅方向及び厚さ方向を有し、厚さ方向の一方の面である第1面1aと他方の面である第2面1bとを有する。不織布1は、例えばロール状に巻き取られた不織布原反NRから、駆動用ロールDR1や搬送用ロール(図示されず)により繰り出される。そして、不織布1は、他の搬送ロール(図示されず)や方向転換用ロールFR1により不織布1の長手方向に沿った搬送方向MDに搬送され、製造装置10に供給される。
【0026】
製造装置10は、加熱ロール11と、熱風吹き出し部21と、を備えている。加熱ロール11は、不織布1の嵩を回復させるとき、加熱ロール11の外周面11aに第1面1aが当接されるように巻き付けられた不織布1を搬送方向MDに搬送しつつ、その不織布1の第1面1aを加熱する。熱風吹き出し部21は、加熱ロール11の外周面11aに対向して設けられている。熱風吹き出し部21は、不織布1の嵩を回復させるとき、不織布1のうち、加熱ロール11の外周面11aに第1面1aが当接して加熱されている領域内において、第2面1bに熱風を吹き付けて加熱する。具体的には、以下のとおりである。
【0027】
加熱ロール11は、内部に電熱ヒーターのような加熱手段(図示されず)を備え、その加熱手段により外周面11aを所定の温度に加熱する。不織布1の嵩を回復させるとき、加熱ロール11は、回転軸Aの周りを回転することにより、外周面11aに巻き付けられた不織布1を、加熱ロール11の周方向に沿った搬送方向MDに搬送する。ここで、加熱ロール11の外周面11aと不織布1とが接する外周面11aの領域を加熱領域12とする。加熱領域12は、外周面11aと不織布1とが接する領域の上流側の端部、すなわち加熱開始点を位置13とし、外周面11aと不織布1とが接する領域の下流側の端部、すなわち加熱終了点を位置14とする領域である。そして、加熱ロール11は、加熱領域12において、不織布1の第1面1aを加熱して、嵩回復させる。
【0028】
外周面11aの温度は、嵩回復させ易さの観点から、不織布1の繊維の融点よりも低く、かつ、できるだけ高い温度であることが好ましく、例えば、融点の60%以上、95%以下である。外周面11aの温度としては、繊維の種類にも依るが、例えば110℃〜125℃が挙げられる。また、加熱ロール11の外径及び幅としては、不織布1の用途や必要とする幅などに応じて任意の大きさとすることができ、例えば外径200〜1000mm、幅200mm〜2000mmが挙げられる。加熱ロール11の周速度については、加熱ロール11の外周径や不織布1の搬送速度などに応じて任意の速さに設定することができ、例えば50m/min.〜500m/min.が挙げられる。周速度は、嵩回復後の不織布2の搬送速度と同じか少し速い(例示:速度の差5%以内)ことが好ましい。
【0029】
熱風吹き出し部21は、加熱ロール11の外周面11aに対向して設けられている。熱風吹き出し部21は、加熱された空気を供給され、又は、供給された空気を加熱し、加熱された空気である熱風を、加熱ロール11の外周面11aにおける加熱領域12内の所定領域15に向って吹き出す。ただし、加熱領域12のうち、所定領域15の搬送方向MDの上流側の端部を境界として、上流側の部分を第1領域12aとし、下流側の部分を第2領域12bとする。すなわち、第2領域12bは所定領域15を含む。よって、第1領域12aは、加熱ロール11のみで加熱される領域である。第2領域12bのうちの所定領域15は、加熱ロール11の加熱に加え、熱風吹き出し部21の熱風で加熱される領域である。第2領域12bのうちの所定領域15以外の領域は、加熱ロール11の加熱に加え、熱風で直接加熱されないが、熱風の影響を受ける領域である。不織布1の嵩を回復させるとき、熱風吹き出し部21は、加熱ロール11の加熱領域12内において、所定領域15上に位置する不織布1の第2面1bに熱風を吹き付けて加熱して、嵩回復させる。
【0030】
熱風吹き出し部21が熱風を吹き付ける所定領域15は、加熱領域12内であれば位置や大きさに制限はない。所定領域15は、例えば、搬送方向MD、すなわち加熱ロール11の周方向においては、加熱領域12内の任意の長さの領域である。
図1の例では、所定領域15は、加熱領域12の中央における所定幅の領域である。所定幅は、熱風吹き出し部21の吹き出し口の幅、あるいは吹き出し口の幅の2倍程度の幅が例示される。一方、所定領域15は、例えば、搬送方向MDに垂直な横断方向CDにおいては、加熱ロール11の回転軸A方向に沿った、不織布1の幅よりも長く、加熱ロール11の幅よりも狭い又は同じ幅の領域である。所定領域15は、不織布1の幅方向において、不織布1全体に熱風が行き渡れば、その形状には特に制限はなく、連続的でも断続的でもよい。
図1の例では、横断方向CDに細長い矩形を加熱ロール11の表面に沿って曲げた領域である。
【0031】
熱風吹き出し部21としては、熱風を吹き出すことが可能であれば特に制限はないが、例えば熱風を吹き出すことが可能な熱風ノズル(図示されず)が挙げられる。熱風ノズルとしては、例えば、横断方向CDに不織布1よりも長く延びる略直方体形状のマニホールドを有し、マニホールドにおける加熱ロール11の外周面11aに対向する面に、熱風吹き出し用の複数のノズル穴(図示されず)が開口した構成が挙げられる。複数のノズル穴としては、例えば、横断方向CDに沿って直線的且つ一定のピッチで一列に配置された構成が挙げられ、ノズル穴の列は、搬送方向MDに間隔を空けて並んだ二列以上の複数列であってもよい。ノズル穴の形状は、特に制限はないが、例えば円形が挙げられ、楕円や(角丸)四角形であってもよい。ノズル穴の大きさ(横断面積)やノズル穴の数は、要求される熱風の流量や加熱ロール11の幅や不織布1の幅などにより適宜選択される。例えばノズル穴が円形の場合、ノズル穴の直径として、例えば1〜20mmが挙げられ、ノズル穴のピッチ(横断方向CDに隣接するノズル穴中心間の距離)として、例えば2〜40mmが挙げられ、ノズル穴の数として、横断方向CDに2〜40個が挙げられる。例えばノズル穴が複数列の場合、列間のピッチ(搬送方向MDに隣接するノズル穴中心間の距離)として、例えば2〜40mmが挙げられる。熱風吹き出し部21の熱風の吹き出し角度は、特に制限はないが、例えば熱風の大部分(例示:90%以上)を不織布1へ進入させる観点から、加熱ロール11の外周面11aに対して入射角90°±20°が好ましい。
【0032】
不織布1に到達した時点での熱風の温度は、嵩回復させ易さの観点から、不織布1の繊維の融点よりも低く、かつ、できるだけ高い温度であることが好ましく、例えば、融点の60%以上、95%以下である。よって、熱風吹き出し部21内での熱風の温度は、前述の好ましい温度の範囲よりも、熱風吹き出し部21から不織布1に達するまでの間に熱風が低下する温度分だけ高いことが好ましい。不織布1に到達した時点での熱風の温度としては、繊維の種類にも依るが、例えば110℃〜125℃が挙げられる。熱風吹き出し部21内での熱風の温度としては、熱風吹き出し部21の構成や繊維の種類にも依るが、例えば140℃〜160℃が挙げられる。熱風を吹き出す流量としては、不織布1の幅や坪量などにも依るが、例えば50L/min.〜2000L/min.が挙げられる。
【0033】
嵩回復した不織布1、すなわち不織布2は、方向転換用ロールFR2や駆動用ロールDR2や他の搬送ロール(図示されず)により搬送方向MDに搬送される。
【0034】
次に、嵩回復した不織布を製造する製造方法の第1実施形態につき、
図1を参照して説明する。製造方法は、加熱工程と吹き付け工程とを備える。加熱工程は、搬送方向MDに搬送されつつ、加熱ロール11の外周面11aに第1面1aが当接するように巻き付けられた不織布1の第1面1aを、加熱ロール11で加熱する。吹き付け工程は、不織布1のうち、加熱ロール11の外周面11aに第1面1aが当接して加熱されている領域内にて、第2面1bに熱風吹き出し部21で熱風を吹き付けて加熱する。以下、具体的に示す。
【0035】
不織布1は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)/ポリエチレン(PE)の芯/鞘構造の繊維を用いたエアスルー不織布であり、ロール状に巻き取られ、不織布原反NRとして準備される。このとき不織布1は、厚さ方向に荷重を受けて、その不織布の嵩が低下した状態にある。不織布1は、駆動用ロールDR1や搬送用ロールにより繰り出され、他の搬送ロールや方向転換用ロールFR1により不織布1の長手方向に沿う搬送方向MDに搬送され、製造装置10に供給される。不織布1は、搬送方向MDに連続搬送されるので、以下では不織布1のうちの任意部分での処理を不織布1の処理として説明する。
【0036】
本実施形態の加熱工程では、不織布1(の部分)が搬送されて、加熱ロール11の加熱領域12における上流側の端部である位置13に到達する。それにより、不織布1の第1面1aが加熱ロール11の外周面11aに接触し始めることで、不織布1の第1面1a側の部分が加熱ロール11により加熱され始める。その後、不織布1が加熱ロール11の第1領域12a上を更に搬送されつつ、不織布1の第1面1aが第1領域12aに接触し続ける。したがって、不織布1は、第1領域12aでは、加熱ロール11のみで厚さ方向の第1面1a側(下側)の部分を加熱されて、その部分から嵩が回復してゆく。
【0037】
次いで、本実施形態の吹き付け工程では、不織布1が更に搬送されて、加熱領域12の第2領域12bにおける所定領域15に達する。それにより、熱風吹き出し部21から吹き出された熱風が不織布1の第2面1bに供給され、不織布1の内部に進入することで、不織布1の第2面1b側の部分は熱風により加熱される。したがって、不織布1は、所定領域15では、熱風吹き出し部21の熱風で厚さ方向の第2面1b側(上側)及びその内側の部分を熱風で加熱され、加熱ロール11で厚さ方向の第1面1a側(下側)の部分を加熱され、それらの部分から更に嵩が回復してゆく。
【0038】
そして、不織布1が更に搬送されて、加熱領域12の第2領域12bにおける所定領域15を通り過ぎると、熱風吹き出し部21の熱風が不織布1の第2面1bに供給されなくなる。しかし、所定領域15で不織布1に供給された熱風は、第2面1bから不織布1の内部へ進入し、放熱しつつ、第1面1aに達した後に、加熱ロール11の外周面11aで加熱されつつ、反射されて、ある程度高い温度の空気として不織布1内に残存する。そのため、不織布1は、第2領域12bでは、不織布1の内部の空気で厚さ方向の第2面1b側(上側)よりも内側の部分を加熱され、加熱ロール11で厚さ方向の第1面1a側(下側)の部分を加熱され、それらの部分から更に嵩が回復してゆく。
【0039】
次いで、不織布1が搬送されて、加熱ロール11の加熱領域12における下流側の端部である位置14に達する。それにより、不織布1の第1面1aが加熱ロール11の外周面11aから離間することで、不織布1の第1面1a側の部分は加熱ロール11により加熱されなくなる。この段階までに、不織布1では、概ね十分な嵩回復がなされる。その後は、不織布1の内部に残存する余熱により、より嵩が回復する場合がある。
【0040】
以上のようにして、不織布1の嵩が回復することにより嵩回復した不織布1、すなわち不織布2が製造される。製造された不織布2は、方向転換用ロールFR2や駆動用ロールDR2や他の搬送ロール(図示されず)により搬送方向MDに搬送され、その後の物品の製造工程にて処理される。
【0041】
上記の製造装置10及びそれを用いた製造方法の作用効果を説明する。
図2は、本実施形態の作用効果を模式的に説明する図である。
図2(a)は本実施形態の場合を示し、
図2(b)は熱風で加熱するが、ロールで加熱しない場合を示し、
図2(c)はロールで加熱するが、熱風で加熱しない場合を示す。
図2(a)に示すように製造装置10及び製造方法は、加熱ロール11の外周面11a上に巻き付けられた不織布1を、厚さ方向の第1面1a側から加熱ロール11により加熱しつつ、厚さ方向の第2面1b側から熱風吹き出し部21の熱風により加熱する。すなわち、加熱ロール11が少なくとも不織布1の下側の部分を加熱し、熱風が不織布1の内部に進入して上側から下側までの部分を加熱するので、不織布1の厚さ方向の全体に、嵩回復に必要な熱量を十分に供給することができる。
それゆえ、加熱ロール11の加熱により、少なくとも不織布1の下側の領域(例示:図の「領域RHA」)にて、温度の高い状態を維持できる。一方、熱風は、不織布1の上側の表面(第2面1b)から内部へ進入し、下側の表面(第1面1a)に達した後に、下側の表面に接する加熱ロール11の表面(外周面11a)で反射されて、不織布1の内部に留まると考えられる。したがって、熱風(空気)が不織布1を貫通しないため、不織布1の嵩回復が熱風の押圧で妨げられる事態を抑制できる。更に、熱風は、不織布1の下側の表面に達するまでに、不織布の繊維との熱交換で温度を下げるが、加熱ロール11の表面で反射されつつ、加熱されるため、ある程度高い温度で、不織布1の内部に留まることができる。その結果、不織布1における熱風が直接進入する領域及び熱風が進入しなくなったが熱風の空気の熱が残存する領域(例示:図の「領域JHA」)にて、温度の比較的高い状態を維持できる。
このように、不織布1において、熱風が吹き付けられる領域だけでなく、熱風が吹き付けられない領域(吹き付けが終了した領域)でも、厚さ方向の広い範囲で温度の高い状態を維持できる。そして、このような状態は、加熱ロール11で加熱されている領域内で概ね維持されることから、不織布1において、厚さ方向に全体的に温度が高い状態を、長手方向(搬送方向MD)に比較的長い領域で維持できる。それにより、厚さ方向に略均一に嵩回復することができる。
ここで、加熱プレートではなく加熱ロールで不織布1を加熱する理由は、次に説明するとおりである。不織布1を加熱ロールに巻き付けると、加熱ロールに接する部分(第1面)は相対的に高繊維密度になるように変形し、加熱ロールの熱を不織布に伝達させ易くなる。一方、加熱ロールに接しない部分(第2面)は相対的に低繊維密度になるように変形し、熱風を不織布に取込み易くなる。そのため、加熱プレートではなく加熱ロールで不織布1を加熱すると、加熱ロールによる加熱と熱風による加熱とがより効果的に作用する。
そして、本製造装置及び製造方法では、不織布を嵩回復することにより、十分な嵩を有する不織布を製造することができる。このとき、本製造装置及び製造方法は、少なくとも一つの加熱ロールによる加熱工程と、少なくとも一つの熱風吹き出し部による吹き付け工程と、を備えていればよいので、省エネルギー及び省スペースで実現できる。
すなわち、本製造方法により、省エネルギー、省スペースで、厚さ方向に略均一に嵩回復された不織布を製造することが可能となる。
【0042】
一方、
図2(b)に示すように、熱風吹き出し部121の熱風で加熱するが、ロール111で加熱しない場合には、不織布101の加熱は熱風のみとなる。そのため、不織布101の第1面101a側の部分は温度が低いため、熱風が第2面101b側から供給されても、ロール111の外周面111aで反射されるときに冷却されることになる。その結果、不織布101内の熱風の熱による温度が比較的高い領域(例えば図のJHAcで示す領域)は、
図2(a)の場合と比較して、厚さ方向及び長手方向(搬送方向MD)共に小さくなってしまう。したがって、厚さ方向の温度分布が大きくなってしまい、厚さ方向に略均一に嵩回復することが困難になるおそれがある。
【0043】
また、
図2(c)に示すように、ロール111で加熱するが、熱風吹き出し部の熱風で加熱しない場合には、不織布101の加熱はロール111のみとなる。そのため、不織布101の第1面101a側の部分では温度が高くなり、温度が比較的高い領域(例えば図のJHAcで示す領域)が維持されるが、第2面101b側の部分では温度があまり高くならない。したがって、厚さ方向の温度分布が大きくなってしまい、厚さ方向に略均一に嵩回復することが困難になるおそれがある。
【0044】
本製造装置及び製造方法によれば、不織布の製造において、省エネルギー、省スペースであり、かつ厚さ方向に略均一に嵩回復された不織布を製造することが可能となる。
【0045】
(第2実施形態)
嵩回復した不織布を製造する製造装置の第2実施形態について説明する。
図3は、第2実施形態に係る製造装置10aの構成例を模式的に示す図である。本製造装置10aは、第1実施形態に係る製造装置10と比較して、加熱領域12の少なくとも一部を覆うようにカバー部材22を備えている点で相違する。以下では、主に相違点について説明する。
【0046】
カバー部材22は、加熱ロール11(円柱状)の外周面11aから離間しつつ、当該外周面11aに沿うように、熱風吹き出し部21よりも搬送方向MDの下流側に配置されている。カバー部材22は、横断方向CD方向に見ると円弧状であり、全体としては、円筒の側面の一部分と見ることができる。カバー部材22は、加熱領域12の第2領域12bの少なくとも一部を覆うように設けられているが、第2領域12bの全体を覆うように設けられていてもよく、加熱領域12の第1領域12aの少なくとも一部を覆うように設けられていてもよい。覆う面積が広いほど、カバー部材22の作用効果(保温効果など、後述)をより高めることができる。また、図に示す例では、カバー部材22は、熱風吹き出し部21との間に隙間を有しているが、隙間を有していなくてもよい。隙間を有さない場合、カバー部材22の作用効果をより高めることができる。
【0047】
次に、嵩回復した不織布を製造する製造方法の第2実施形態について、
図3を参照しながら説明する。本実施形態の製造方法は、第1実施形態に係る製造方法と比較して、カバー部材22で、不織布1のうちの加熱領域12で加熱されている領域の少なくとも一部を覆う被覆工程を備えている点で相違する。以下では、主に相違点について説明する。
【0048】
被覆工程は、熱風吹き出し工程の後に行われ、カバー部材22により、熱風が進入した後の不織布1における加熱ロール11で加熱されている領域(所定領域15を除く第2領域12b上の不織布1)の少なくとも一部を覆う工程である。この被覆工程は、加熱領域12にカバー部材22が予め設けられていて、不織布1が、そのカバー部材22を備える加熱領域12に搬送され、通過する場合を含んでいる。
【0049】
上記の製造装置10a及びそれを用いた製造方法の作用効果を説明する。上記の製造装置10a及び製造方法は、第1実施形態の製造装置10及び製造方法と同様の作用効果を奏することができるが、更に以下の作用効果を奏する。
図4は、本実施形態の作用効果を模式的に説明する図である。本製造装置10a及び製造方法は、加熱ロール11の第2領域12bにおける、熱風が直接吹き付けられない領域(所定領域15を除いた領域)に、当該領域の一部又は全部を覆うカバー部材22を備えている。言い換えると、本製造装置10a及び製造方法は、不織布1のうちの、加熱ロール11で加熱されている領域であって、熱風が直接吹き付けられていない領域をカバー部材22で覆う工程を備える。そのため、不織布1の上側の表面に接する空気の散逸をカバー部材22で抑えることができ、空気の対流により不織布1から逃げようとする熱を、不織布1の上側の表面の近傍の空気内に留めることができる。それゆえ、不織布1の上側の部分が近傍の空気で保温されて冷め難くなるので、不織布1の上側の部分を比較的高い温度に保持できる。その結果、熱風又はその空気により温度が高い部分(例示:領域JHA)を厚み方向に大きくでき、それに伴って領域JHAを搬送方向MDに大きくできる。したがって、不織布1の加熱されている領域内であれば、熱風が吹き付けられない領域でも、不織布1の下側の部分(例示:領域RHA)が加熱ロール11で高い温度であり、かつ、不織布の上側から下側の部分も比較的高い温度を保持できる。それにより、搬送方向MDにより長い領域で不織布の嵩回復をより効果的に進めることができ、不織布を厚さ方向により略均一に嵩回復できる。
【0050】
(第3実施形態)
嵩回復した不織布を製造する製造装置の第3実施形態について説明する。
図5は、第3実施形態に係る製造装置10bの構成例を模式的に示す図である。本製造装置10bは、第2実施形態に係る製造装置10aと比較して、複数の熱風吹き出し部21を備え、更に複数のカバー部材22を備える点で相違する。以下では、主に相違点について説明する。
【0051】
製造装置10bは、加熱ロール11の外周面に対向して設けられ、搬送方向MDに沿って間隔を空けて並んだ、複数の熱風吹き出し部21を更に備えている。
図5の例では、加熱領域12のうちの上流側に熱風吹き出し部21−1が配置され、下流側に熱風吹き出し部21−2が配置されている。これら熱風吹き出し部21−1、21−2は、いずれも不織布1のうちの加熱ロール11で加熱されている領域内における第2面1bに熱風を吹き付ける。具体的には、熱風吹き出し部21−1は、不織布1のうち、第2領域12b内の所定領域15−1上に位置する部分へ熱風を吹き付ける。熱風吹き出し部21−2は、不織布1のうち、第3領域12c内の所定領域15−2上に位置する部分へ熱風を吹き付ける。ただし、第3領域12cは、加熱領域12における第2領域12bの下流側に隣接する領域である。所定領域15−1、15−2は、それぞれ第2領域12b、第3領域12cの上流側の端部の領域である。
【0052】
複数の熱風吹き出し部21は、互いに吹き付ける熱風の特性を異なるようにすることができる。ただし、熱風の特性としては、例えば熱風の温度、熱風の流量、熱風の不織布1に対する角度、熱風のオン・オフのタイミングなどが挙げられる。そのため、不織布1の搬送速度や、不織布1の特性(繊維密度、繊維径、材質など)などに応じて、不織布1が適切に嵩回復できるように、不織布1に熱風を吹き付けることができる。それにより、不織布1を厚さ方向により略均一に嵩回復させることができる。なお、本実施形態では、熱風吹き出し部21−1、21−2は、熱風の特性を同じにしている。
【0053】
更に、製造装置10bは、これら複数の熱風吹き出し部21の各々の搬送方向MDの下流側に複数のカバー部材22を更に備えている。
図5の例では、熱風吹き出し部21−1の下流側にカバー部材22−1が配置され、熱風吹き出し部21−2の下流側にカバー部材22−2が配置されている。これらカバー部材22−1、22−2は、いずれも不織布1における加熱されている領域の少なくとも一部、特に熱風が直接吹き出されていない領域を覆う。特に、カバー部材22−1は、熱風吹き出し部21−1と熱風吹き出し部21−2との間の領域を覆うように配置されており、それにより不織布1が途中で冷めることなく嵩回復が継続的に生じるように構成されている。
【0054】
次に、嵩回復した不織布を製造する製造方法の第3実施形態について、
図5を参照しながら説明する。本実施形態の製造方法は、第2実施形態に係る製造方法と比較して、複数の熱風吹き出し部21で不織布1に熱風を吹き付ける工程を備え、かつ、熱風を吹き付けられた後の不織布1を複数のカバー部材22で覆う工程を有する点で相違する。以下では、主に相違点について説明する。
【0055】
吹き付け工程では、加熱領域12の第1領域12aで加熱されている不織布1が更に搬送されて、加熱領域12の第2領域12bにおける所定領域15−1に達する。それにより、熱風吹き出し部21−1から吹き出された熱風が不織布1の第2面1bに供給され、不織布1の内部に進入して、不織布1の第2面1b側の部分から内部を加熱する。したがって、不織布1は、所定領域15−1では、熱風吹き出し部21−1の熱風と加熱ロール11とで厚さ方向の両側から加熱されて、嵩が回復してゆく。
その後、不織布1が更に搬送され、加熱領域12の第2領域12bの所定領域15−1を通り過ぎて、熱風吹き出し部21−1からの熱風が不織布1の第2面1bに供給されなくなる。しかし、所定領域15−1において不織布1に供給された熱風の空気が加熱ロール11に加熱され反射されて不織布1内に残存しているので、不織布1は、第2領域12bでは、不織布1の内部の空気と加熱ロール11とで加熱され、より嵩が回復してゆく。
【0056】
次いで、不織布1が更に搬送されて、加熱領域12の第3領域12cにおける所定領域15−2に達する。それにより、熱風吹き出し部21−2から吹き出された熱風が不織布1の第2面1bに供給され、不織布1の内部に進入して、不織布1の第2面1b側の部分から内部を加熱する。したがって、不織布1は、所定領域15−2では、熱風吹き出し部21−2と加熱ロール11とで厚さ方向の両側から加熱されて、より嵩が回復してゆく。
その後、不織布1が更に搬送され、加熱領域12の第3領域12cの所定領域15−2を通り過ぎて、熱風吹き出し部21−2からの熱風が不織布1の第2面1bに供給されなくなる。しかし、所定領域15−2において不織布1に供給された熱風の空気が加熱ロール11に加熱され反射されて不織布1内に残存しているので、不織布1は、第3領域12cでは、不織布1の内部の空気と加熱ロール11とで加熱され、より嵩が回復してゆく。
【0057】
次いで、不織布1が搬送されて、加熱ロール11の加熱領域12における搬送方向MDの下流側の端部である位置14に達して、加熱ロール11の外周面11aから離間する。それにより、不織布1は加熱ロール11により加熱されなくなるが、この段階までに不織布1では概ね十分な嵩回復がなされる。
【0058】
本製造装置10b及び製造方法では、不織布1の第2面1bに、搬送方向MDに沿って並んだ複数の熱風吹き出し部21で熱風を吹き付ける。そのため、温度が低下し易い不織布1の上側の部分の複数の領域を熱風で高い温度にすることができる。したがって、不織布1のうちの加熱ロール11で加熱されている領域内において、不織布1の下側の部分が加熱ロール11により高い温度であり、かつ、不織布1の内部も高い温度である、という状態を少なくとも搬送方向MDに沿った複数の領域で保持できる。そのため、不織布1の厚さ方向における概ね全体の部分において嵩回復をより効果的に進めることができる。それにより、不織布1を厚さ方向により略均一に嵩回復させることができる。
【0059】
更に、製造装置10及び製造方法では、複数の熱風吹き出し部21の各々の下流側にカバー部材22を備えている。そのため、複数の熱風吹き出し部21の各々からの熱風の吹きかけが終わった領域(熱風が吹き付けられない領域)において、不織布1の上側の表面に接する空気の散逸を複数のカバー部材22で抑えることができる。それにより、空気の対流により不織布1から逃げようとする熱を、不織布1の上側の表面の近傍の空気内に留めることができ、搬送方向MDのより広い範囲において、不織布1の上側の部分を比較的高い温度に保持できる。したがって、搬送方向MDのより広い範囲において、不織布1を高い温度に保持することができ、不織布1の嵩回復をより効果的に進めて、不織布1を厚さ方向により略均一に嵩回復させることができる。
【0060】
(第4実施形態)
嵩回復した不織布を製造する製造装置の第4実施形態につき説明する。
図6は、第4実施形態に係る製造装置10cの構成例を模式的に示す図である。本製造装置10cは、第2実施形態に係る製造装置10aと比較して、加熱ロール、熱風吹き出し部及びカバー部材の組が複数組、直列に配置される点で相違する。製造装置10cは、2台の製造装置10aが直列に配置されると見ることができる。以下では、主に相違点について説明する。
【0061】
製造装置10cは、加熱ロール11、熱風吹き出し部21及びカバー部材22の他、加熱ロール11の下流側に位置する他の加熱ロール31、加熱ロール31に対して熱風を吹き出す他の熱風吹き出し部41及び加熱ロール31を覆う他のカバー部材42を備える。加熱ロール11、熱風吹き出し部41及びカバー部材42の構成は、加熱ロール11、熱風吹き出し部21及びカバー部材22の構成と同様である。
【0062】
加熱ロール11及び加熱ロール31は、互いに非接触の状態であり、不織布1を、加熱ロール11の外周面11aと加熱ロール31の外周面31aとの間に挟んで圧縮することなく搬送する。加熱ロール11及び加熱ロール31は、所定の間隔を空け、それぞれの回転軸A1、A2が互いに平行となるように配設されている。よって、加熱ロール11、31を、それぞれの回転軸A1、A2周りに互いに逆向きに回転させ、加熱ロール11が保持していた不織布1を、搬送方向MDに適度に緊張させた状態で加熱ロール31に受け渡し、搬送方向MDの上流側から下流側に向け搬送できる。このとき、不織布1は加熱ロール11、31にS字掛けされていると見ることができる。
本実施形態では、加熱ロール11及び加熱ロール31は同形同大に形成され、したがって加熱ロール11の外径と加熱ロール31の外径とは相互に同径である。さらに、加熱ロール11及び加熱ロール31の各回転速度(又は周速度)の関係については、不織布1の搬送速度や繊維の種類、また加熱ロール11及び加熱ロール31の位置関係等によって任意に設定される。例えば、加熱ロール31の回転速度が加熱ロール11の回転速度の1〜1.1倍程度の回転速度とすることができる。また、加熱ロール31は、加熱ロール31の回転軸A2が加熱ロール11の回転軸A1よりも鉛直方向の上方に位置するように配置される。それにより、鉛直方向のスペースを有効に利用して、製造装置10cが水平方向に占有するスペースを削減できる。それに加え、加熱ロール11から散逸した熱(高温の空気)が、加熱ロール31に到達して、加熱ロール31の温度低下を抑制できる。
【0063】
次に、嵩回復した不織布を製造する製造方法の第4実施形態について、
図6を参照しながら説明する。本実施形態の製造方法は、第2実施形態に係る製造方法と比較して、不織布の第2面1b側から吹き付け工程を行った後に、更に、不織布の第1面1a側からも吹き付け工程を行う点で相違する。以下では、主に相違点について説明する。
【0064】
最初の加熱工程及び吹き付け工程(第2実施形態と同様)により、不織布1の第2面1bが熱風吹き出し部21の熱風で吹き付けられつつ、不織布1の第1面1aがカバー部材22で覆われた加熱ロール11で加熱されて、不織布1の嵩が回復する。その後、不織布1が更に搬送され、カバー部材22で覆われていない、加熱領域12における第2領域12bの下流側に隣接する第4領域12dを経て、加熱領域12の下流側の端部の位置14に達し、加熱ロール31に受け渡される。そして、不織布1における加熱ロール31の外周面31aに当接する面が第1面1aから第2面1bに変わり、第1面1aが露出する。
【0065】
続いて、加熱ロール31及び熱風吹き出し部41により、次の加熱工程及び吹き付け工程が実施される。加熱ロール31における加熱領域32(位置33から位置34までの領域、第1領域32a、第2領域32b、所定領域35を含む)における加熱工程及び吹き付け工程は、上記の最初の加熱工程及び吹き付け工程(第2実施形態)と同様である。
次いで、不織布1が搬送されて、加熱領域32における下流側の端部である位置34に達して、加熱ロール31の外周面31aから離間する。それにより、不織布1は加熱ロール31により加熱されなくなるが、この段階までに不織布1は第1面1aからも熱風を吹き付けられるので、不織布1では概ね十分な嵩回復がなされる。
【0066】
加熱ロールによる嵩回復と熱風による嵩回復とでは、嵩回復方法が同じではない。そのため、不織布1の第1面1aを加熱ロール11で加熱し、第2面1bを熱風吹き出し部21の熱風で加熱した状態では、不織布1の嵩回復の厚さ方向の均一性は高いが、改良の余地がある可能性もある。そこで、本製造装置10c及び製造方法では、不織布1を、加熱ロール11と加熱ロール31とにS字状に巻き付ける(S字掛け)。そして、不織布1の第1面1aを加熱ロール11で加熱し、第2面1bを熱風吹き出し部21の熱風で加熱した後、更に、不織布1の第2面1bを加熱ロール31で加熱し、第1面1aを熱風吹き出し部41の熱風で加熱する。すなわち、不織布1の両面をいずれも加熱ロールで加熱し、熱風吹き出し部による熱風で加熱して、不織布1を嵩回復させる。それゆえ、不織布1の第1面1a側の部分及び第2面1b側の部分とで、嵩回復の状態をほぼ同じにすることができる。それにより、不織布を厚さ方向により略均一に嵩回復させることができる。
【0067】
製造装置10c及び製造方法では、更にカバー部材42が設けられている。そのため、不織布1の上側の表面に接する空気の散逸を他のカバー部材42で抑えることができ、それにより、空気の対流により不織布から逃げようとする熱を、不織布の上側の表面の近傍の空気内に留めることができる。その結果、不織布1の上側の部分を比較的高い温度に保持できる。したがって、不織布1の嵩回復をより効果的に進めることができ、不織布1を厚さ方向により略均一に嵩回復させることができる。
【0068】
製造装置10cは、図示しないが、熱風吹き出し部21及び/又は熱風吹き出し部41の下流側に沿って並んだ一つ又は複数の熱風吹き出し部(図示されず)を更に備えてもよい。したがって、製造方法は、加熱ロール11の外周面11a上の不織布1の第2面1bに、及び/又は、加熱ロール31の外周面31a上の不織布1の第1面1aに、それら複数の熱風吹き出し部で熱風を吹き付ける工程を備えていてもよい。
その場合、温度が低下し易い不織布1の上側の部分の複数の領域を熱風で高い温度にすることができる。したがって、不織布1の第2面1bの上側の部分及び/又は第1面1aの上側の部分について、少なくとも複数の領域で高い温度を保持できる。
【0069】
製造装置10cは、図示しないが、カバー部材22及び/又はカバー部材42の他に、上記の一つ又は複数の熱風吹き出し部の各々の下流側に他のカバー部材を備えてもよい。したがって、製造方法は、それら複数のカバー部材で不織布1における加熱されている領域の少なくとも一部を覆う工程を備えてもよい。
その場合、複数の他の熱風吹き出し部の各々からの熱風の吹きかけが終わった領域(熱風が吹き付けられない領域)において、不織布1の第2面1b及び/又は第1面1aからの放熱をより広い範囲で抑制できる。それにより、不織布の第2面1b及び/又は第1面1aの上側の部分を比較的高い温度に保持して、不織布1の嵩回復をより効果的に進めることができ、それにより不織布1を厚さ方向により略均一に嵩回復させることができる。
【0070】
なお、上記実施の形態では、不織布1の第1面1aに熱風吹き出し部41の熱風を吹き付けるときに、不織布1を加熱ロール31に巻き取らせた状態で行っている。しかし、不織布1を加熱ロール31に巻き取らせた状態にせずに、不織布1の第1面1aに熱風吹き出し部41の熱風を吹き付けてもよい。その方法としては、例えば、不織布1が加熱ロール11から離脱して不織布1の第1面1aが露出したときに、不織布1の第2面1bを何らかの治具で支持しつつ、不織布1の第1面1aに熱風吹き出し部で熱風を吹き付ける方法が挙げられる。
この場合にも、本製造装置及び製造方法では、不織布1の第2面1bだけでなく、第1面1aにも熱風を吹き付けているので、不織布1を厚さ方向により略均一に嵩回復させることができる。
【0071】
上記各実施形態の好ましい態様として、熱風吹き出し部(21/41)は、不織布1の一方の面(第2面1b/第1面1a)に熱風吹き出し部(21/41)で熱風を吹き付けて加熱するとき、不織布1のうち、不織布1の他方の面(第1面1a/第2面1b)を加熱ロール(11/31)で加熱し始める位置(13/33)よりも所定距離だけ下流側の位置に熱風を吹き付けて加熱する。
そのため、不織布1の下側(加熱ロール(11/31)側)の部分の温度が高くなった状態で、不織布1の上側から熱風を供給できる。それにより不織布1内の熱風の温度低下を抑制できるので、不織布1を厚さ方向に更により略均一に嵩回復させることができる。
【0072】
なお、各実施形態に記載の構成又は技術については、技術的な矛盾が生じない限り、互いに組み合わせることが可能である。例えば、熱風吹き出し部を追加したり、カバー部材を追加したり、製造装置10、10a、10b、10cのうちの一種類又は複数種類の製造装置を複数台、直列に配置したり、してもよい。これら熱風吹き出し部、カバー部材、及び製造装置を増やすほど、不織布の嵩回復は進み、不織布を厚さ方向に更により略均一に嵩回復させることができる。
【0073】
例えば、二つの第2実施形態の製造装置10a(
図3)を、不織布を反転させるように直列的に並べて、第4実施形態の製造装置10c(
図6)とすることができる。同様にして、二つの第3実施形態の製造装置10b(
図5)の構成を、不織布を反転させるように直列的に並べて、本発明の他の実施形態の製造装置(以下、「製造装置10d」ともいう。図示されず)としてもよい。製造装置10dは、第4実施形態の製造装置10c(
図6)に、2台の熱風吹き出し部を追加した装置と見ることもできる。あるいは、同様にして、第2実施形態の製造装置10a(
図3)の構成と第3実施形態の製造装置10b(
図5)の構成とを、不織布を反転させるように直列的に並べて、本発明の他の実施形態の製造装置(以下、「製造装置10e」ともいう。図示されず)としてもよい。製造装置10eは、第4実施形態の製造装置10c(
図6)に、1台の熱風吹き出し部及び1台のカバー部材を追加した装置と見ることもできる。
【0074】
なお、上記の各実施形態並びに下記の各実施例及び各比較例において、不織布の坪量、厚さは以下の方法で測定又は算出している。
(不織布の坪量)
不織布を、それぞれ30cm×30cmの大きさに切り出して試料として、質量を測定する。そして、測定した質量を試料の面積で割り算して試料の坪量を算出する。ここでは、10個の試料の坪量を平均した値を実施例又は比較例の坪量とする。なお、測定の前に、100℃以上の雰囲気での乾燥処理を行う。
(不織布の厚さ)
15cm
2の測定子を備えた厚さ計((株)大栄化学精器製作所製:型式FS−60DS)を使用し、3g/cm
2の測定荷重の測定条件で、嵩回復前後の不織布の厚みを測定する。ここでは、1つの測定用試料について3か所の厚みを測定し、それら3か所の厚みの平均値を実施例又は比較例の厚みとする。
(不織布の密度)
嵩回復前後の不織布の繊維密度は、上記方法で求めた不織布の秤量を、上記方法で求めた不織布の厚みで割り算して算出する。
【実施例】
【0075】
本発明に係る嵩回復した不織布の製造装置及び製造方法による効果を確認するため、本発明に係る製造装置及び製造方法を用いて嵩回復させた不織布(実施例)と、用いずに嵩回復させた不織布(比較例)とについて、嵩回復の程度を比較する比較実験を行った。
【0076】
(1)試料
嵩回復前の不織布としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)/ポリエチレン(PE)の芯/鞘構造の繊維を用いたエアスルー不織布であって、坪量27gsm、厚さ0.37mmのものを使用した。
(1−1)実施例1
二つの第3実施形態の製造装置10b(
図5)の構成を、不織布を反転させるように直列的に配置した製造装置10dを用い、嵩回復前の不織布を処理して、実施例1の試料とした。ただし、加熱ロールの温度:110℃、熱風吹き出し部での熱風の温度:160℃、各熱風吹き出し部の熱風の流量:250L/min、熱風の総供給量:1000L/min(250L/min×4台)、不織布の搬送速度:300m/min、とした。
(1−2)実施例2
第4実施形態の製造装置10c(
図6)を用い、嵩回復前の不織布を処理して、実施例2の試料とした。ただし、加熱ロールの温度、熱風吹き出し部での熱風の温度、各熱風吹き出し部の熱風の流量、不織布の搬送速度は実施例1と同様とし、熱風の総供給量は500L/min(250L/min×2台)とした。
(1−3)実施例3
不織布の搬送速度を100m/minとした以外は、実施例1と同様とした。
(1−4)実施例4
不織布の搬送速度を100m/minとした以外は、実施例2と同様とした。
(1−5)比較例1
嵩回復前の不織布を比較例1の試料とした。
(1−6)比較例2
カバー部材を全て取り外した状態の製造装置10dを用い、嵩回復前の不織布を処理して、比較例2の試料とした。ただし、熱風吹き出し部での熱風の温度、各熱風吹き出し部の熱風の流量、熱風の総供給量、不織布の搬送速度は実施例1と同様とし、加熱ロールの温度は20℃とした。
(1−7)比較例3
製造装置10dを用い、嵩回復前の不織布を処理して、比較例3の試料とした。ただし、熱風吹き出し部での熱風の温度、各熱風吹き出し部の熱風の流量、熱風の総供給量、不織布の搬送速度は実施例1と同様とし、加熱ロールの温度は20℃とした。
(1−8)比較例4
製造装置10cを用い、嵩回復前の不織布を処理して、比較例4の試料とした。ただし、熱風吹き出し部での熱風の温度、各熱風吹き出し部の熱風の流量、不織布の搬送速度は実施例1と同様とし、加熱ロールの温度は20℃、熱風の総供給量は500L/min(250L/min×2台)とした。
(1−9)比較例5
製造装置10dを用い、嵩回復前の不織布を処理して、比較例4の試料とした。ただし、加熱ロールの温度、不織布の搬送速度は実施例1と同様とし、各熱風吹き出し部の熱風の流量を0L/min(熱風なし)とした。
【0077】
(2)嵩回復の評価
(2−1)評価方法
嵩回復前の不織布の厚さと、実施例1〜2及び比較例1〜5の試料の厚さとを上述の不織布の厚さの測定方法に従って測定して、比較し、厚さが厚いほど嵩回復効果が高いと判定した。特に、所定の基準値(例示:本実施例では0.8mm)を超える試料については、十分に嵩回復しており、よって厚さ方向に略均一に嵩回復していると判断した。
【0078】
(2−2)評価結果
実施例1〜2、比較例1〜5の評価結果を下記の表1に示す。
表1に示すように、比較例1の嵩回復前の不織布を基準として、比較例2〜4の試料を比較した。その結果、熱風だけ用いた場合の嵩回復(厚さ:1.10倍)と比較して、熱風及びカバー部材を用いた場合の嵩回復(厚さ:1.16〜1.19倍)の方が、より厚さがより厚くなった、すなわち嵩回復の効果が高いことが分った。また、比較例1の嵩回復前の不織布を基準として比較例3、5の試料を比較した。その結果、熱風及びカバー部材を用いた場合の嵩回復(厚さ:1.18倍)と比較して、加熱ロール及びカバー部材を用いた場合の嵩回復(厚さ:1.62倍)の方が、厚さがより厚くなった、すなわち嵩回復の効果が高いことが分った。また、熱風よりも加熱ロールの方が嵩回復の効果がより高いことが分った。しかし、比較例2〜5の試料は、いずれの場合にも、所定の基準値0.8mmを超えなかった。すなわち、加熱ロールによる加熱のみによる嵩回復や熱風の加熱のみによる嵩回復では、カバー部材を追加しても所定の基準値を満たすほど十分には嵩が回復しなかった。
【0079】
一方、比較例1の嵩回復前の不織布を基準として実施例1の試料と比較例3の試料とを比較した。その結果、実施例1の試料では厚さが2倍を超えるほど(2.57倍)嵩回復しているのに対して、比較例3の試料では厚さが1.19倍程度に止まった。同様に、比較例1の嵩回復前の不織布を基準として実施例2の試料と比較例4の試料とを比較した。その結果、実施例2の試料では厚さが2倍を超えるほど(2.41倍)嵩回復しているのに対して、比較例4の試料では厚さが1.16倍程度に止まった。更に、比較例1の嵩回復前の不織布を基準として実施例1、2の試料と比較例5の試料とを比較した。その結果、実施例1、2の試料では厚さが2倍を超えるほど(2.57、2.41倍)嵩回復しているのに対して、比較例5の試料では厚さが1.62倍程度に止まった。したがって、熱風と加熱ロールとを用いた手法は嵩回復において大変効果的であることが分った。なお、搬送速度を遅くすると(実施例3、4)、嵩回復の程度は更に向上する(3.97倍、3.68倍)となり、より効果的であることが分った。そして、実施例1〜4の試料は、所定の基準値(0.8mm)を超えるので、十分に嵩回復しており、よって厚さ方向に略均一に嵩差回復していると判断された。
【0080】
【表1】