特許第6843162号(P6843162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6843162制御収縮によって製造された保持性の高いポリアミド中空糸膜
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843162
(24)【登録日】2021年2月25日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】制御収縮によって製造された保持性の高いポリアミド中空糸膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/56 20060101AFI20210308BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20210308BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20210308BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20210308BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20210308BHJP
   D01F 6/60 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   B01D71/56
   B01D69/08
   B01D69/02
   B01D63/02
   B01D63/00 500
   D01F6/60 321A
【請求項の数】1
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-567949(P2018-567949)
(86)(22)【出願日】2017年6月26日
(65)【公表番号】特表2019-526431(P2019-526431A)
(43)【公表日】2019年9月19日
(86)【国際出願番号】US2017039203
(87)【国際公開番号】WO2018005326
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2019年2月20日
(31)【優先権主張番号】62/355,001
(32)【優先日】2016年6月27日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ウー, メイベル
(72)【発明者】
【氏名】タウンリー, ジェフリー イー.
(72)【発明者】
【氏名】チェン, クウォク‐シュン
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/030585(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/156403(WO,A1)
【文献】 特表2002−535129(JP,A)
【文献】 特開昭51−023482(JP,A)
【文献】 特開2004−204160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00 − 71/82
D01F 1/00 − 6/96
9/00 − 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流れに対して開放されていて、5L/m h bar−150L/m h barのイソプロパノール透過性及び1nm−25nmの呼び径を有する粒子に対する100%の粒子阻止率を有する、ポリアミド中空糸膜を製造するためのプロセスであって、
ポリアミド樹脂と水溶性有機溶媒とのスラリーを形成することと;
前記スラリーの凝固を誘導して中空糸を形成するための第1の所定温度に維持された水の中に、中空糸紡糸口金を通して前記スラリーを押出することと;
水を用いて前記中空糸から前記水溶性有機溶媒を抽出して前記中空糸膜を形成することと;
前記中空糸膜を圧縮可能なフレームに巻き付けることと;
前記圧縮可能なフレーム上の前記中空糸膜を第2の所定温度で所定時間にわたり乾燥させ、それによって流体流れに対して開放されている前記ポリアミド中空糸膜を製造することと
を含むプロセスであって
前記水溶性有機溶媒が、ジグリセロールであり、
前記圧縮可能なフレームが、フレームと、前記中空糸膜が収縮する時に縮む構成要素とを備えるものである、
プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
2016年6月27日出願の米国特許仮出願第62/355001号の米国特許法119条に基づく優先権の利益をここに主張する。米国特許仮出願第62/355001号の開示は、あらゆる目的において、その全文が出典明示により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、小さい粒子に対して高い保持率を有するポリアミド中空糸膜を製造することに関する。
【背景技術】
【0003】
ポリアミド中空糸膜は、透析、水濾過並びに医薬品及び半導体濾過を含む多様な用途のために製造されてきた。一般に、ポリアミド中空糸膜は、浸漬流延紡糸又は熱誘起相分離(TIPS)によって作製される。ポリアミドは室温で多くの溶媒に可溶性でないので、ギ酸などの強溶媒を浸漬流延プロセスで使用しなければならない。これは環境的に安全でもないし、加工の観点からも望ましくない。TIPSのほうが環境に害を与えないが、粘度は高温で大幅に低下するので、必要とされる高温が中空糸の形成をより困難にする。
【0004】
TIPSは、ポリアミド中空糸を製造するために使用されてきたが、得られる中空糸はどれも非常に小さい粒子に対して高い保持率を示していない。例えば、米国特許第8800783号は、TIPSにより製造されたポリアミド中空糸膜を開示する。形成された中空糸膜は、0.1ミクロン(100nm)の粒子阻止率が100%である。しかし、5又は25nmの試験粒子などの、より小さい試験粒子に対して高い保持率は言及されていない。
【0005】
米国特許出願公開第2003/0159984号は、熱誘起液−液相分離を用いたポリアミド膜を製造するための方法を開示している。ポリアミド及び溶媒系(ポリアミド用の溶媒及び非溶媒を含む)の溶液は、金型を通して押出され、冷却媒体を用いて冷却され、それによって相分離が生じ、ポリマーに富む相が凝固して膜構造を形成する。形成された中空糸膜は、イソプロパノールを用いるバブルポイント測定により決定されるように、0.57ミクロンの最大孔径を有していた。粒子阻止試験は報告されていない。
【0006】
米国特許第4666607号は、ポリアミド中空糸膜を製造するための方法及び装置を開示する。このプロセスは、溶媒に溶かしたポリアミドを高温で、内腔を満たす媒体を含む中空糸ノズルを通して、冷却液を用いて特別に設計された管に押出して多孔質成形体を形成することを含む。得られる繊維の最大孔径は、エタノールを用いるバブルポイント測定によって決定されるように0.29ミクロンであった。粒子阻止試験は報告されていない。
【0007】
したがって、流体流れに対して開放されていて、100nm未満の呼び径を有する粒子に対する保持率の高い、ポリアミド中空糸膜を製造するためのプロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本明細書に記載されるのは、ポリアミド中空糸膜及び中空糸膜を作製する方法及び例えば、フォトレジスト濾過、透析、廃水処理、タンパク質精製及びガス吸着において中空糸膜を使用する方法である。ポリアミド中空糸膜は、約5L/m h bar−約150L/m h barのイソプロパノール透過性及び約1ナノメートル(nm)−約25nmの呼び径を有する粒子に対する約100%の粒子阻止率を有する。
【0009】
また、本明細書に記載されるのは流体分離モジュールである。流体分離モジュールは、供給口及び透過口を有するハウジング及びハウジング内に配置された分離エレメントを含む。分離エレメントは、ハウジングを第1の容積部と、第1の容積部から流体密封された第2の容積部に分割し、複数のポリアミド中空糸膜を含む。各ポリアミド中空糸膜は、第1の端部及び第2の端部、流体流れに対して開放されている内腔及び約5L/m h bar−約150L/m h barのイソプロパノール透過性及び約1nm−約25nmの呼び径を有する粒子に対する約100%の粒子阻止率を有する。供給口は、第1の容積部と流体連通し、透過口は、第2の容積部と流体連通している。供給口に供給される流体の少なくとも一部分は、複数のポリアミド中空糸膜を透過し、それによって透過液を形成し、それは透過口から流出する。
【0010】
また、本明細書に記載されるのは、流体流れに対して開放されていて、約5L/m h bar−約150L/m h barのイソプロパノール透過性及び約1nm−約25nmの呼び径を有する粒子に対する約100%の粒子阻止率を有する、ポリアミド中空糸膜である。ポリアミド中空糸膜は、ポリアミド樹脂と水溶性有機溶媒のスラリーを形成すること、スラリーの凝固を誘導して中空糸を形成するのに十分な温度に維持された水の中に中空糸紡糸口金を通してスラリーを押出すること、及び水を用いて中空糸から水溶性有機溶媒を抽出して中空糸膜を形成することを含むプロセスに従って調製される。中空糸又は中空糸膜は、圧縮可能なフレームに巻き付けられている。中空糸膜は、圧縮可能なフレームの上で乾燥し、それによって流体流れに対して開放されているポリアミド中空糸膜が作製される。
【0011】
また、本明細書に記載されるのは、流体流れに対して開放されていて、約5L/m h bar−約150L/m h barのイソプロパノール透過性、及び約1nm−約25nmの呼び径を有する粒子に対する約100%の粒子阻止率を有する、ポリアミド中空糸膜を製造するためのプロセスである。このプロセスは、ポリアミド樹脂と水溶性有機溶媒のスラリーを形成することを含む。スラリーは、スラリーの凝固を誘導して中空糸を形成するのに十分な温度に維持された水の中に中空糸紡糸口金を通して押出され、水を用いて中空糸から水溶性有機溶媒が抽出されて中空糸膜を形成する。中空糸又は中空糸膜は、圧縮可能なフレームに巻き付けられている。中空糸膜は、圧縮可能なフレームの上で乾燥し、それによって流体流れに対して開放されているポリアミド中空糸膜が作製される。
【0012】
本発明の方法は、孔径が小さく、小さい粒子に対する保持率の高い膜を作製することができる。実際に、孔径が同様であるか又はそれよりも狭いポリアミドフラットシート膜は、そのような高い保持率をもたらさない。刺激の強い化学薬品、例えば浸漬流延プロセスで使用されるギ酸などは必要でなく、スラリー組成は単純で、通常、環境に害を与えない材料から構成される。対照的に、米国特許第4666607号及び米国特許出願公開第2003/0159984号は繊維を形成するために安定剤及び/又は増粘剤の添加を必要とし、米国特許第8800783号は、有毒である傾向があり皮膚浸透性の高い双極性非プロトン溶媒を使用する。
【0013】
前述の内容は、同様の参照文字が異なる図面を通して同じ部分をさす添付の図面に示されるように、以下の本開示の例示的な実施態様のより詳細な説明から明らかになるであろう。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに本開示の実施態様を例示することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】本開示によるデッドエンド型流体分離モジュールの断面側面図を示す図である。中空糸束の第1の端部が開口していて、中空糸束の第2の端部が封止されており、流体が各中空糸の外側から各中空糸の内腔へと透過する、流体分離モジュールが示される。
図1B】本開示によるデッドエンド型流体分離モジュールの断面側面図を示す図である。中空糸束の第1の端部が開口していて、中空糸束の第2の端部が封止されており、流体が各中空糸の内腔から各中空糸の外側に透過する、流体分離モジュールが示される。
図1C】本開示によるタンジェンシャルフロー濾過(TFF)流体分離モジュールの断面側面図を示す図である。中空糸束の第1及び第2の端部が開口している流体分離モジュールが示される。
図2A-B】Aは、長方形のステンレス鋼フレーム及び長方形のステンレス鋼フレームの基部(b)の上に配置されたエラストマーバルブシールガスケットを含む圧縮可能なフレームの模式図を示す図である。フレーム及びエラストマーバルブシールガスケットに巻き付けられた中空糸又は中空糸膜が示され、その長さに沿った中空糸又は中空糸膜の収縮がバルブシールの圧縮を引き起こす。Bは、Aに示される圧縮可能なフレームの丸く囲まれた部分の拡大図を示す図である。
図2C図2Aに示される圧縮可能なフレームの一部分の側面図を示す図である。
図3A-B】Aは、ばねガイド及び圧縮ばねによって形成された接合部で互いに対して可動である2つの構成要素から作製された長方形のステンレス鋼フレームを含む圧縮可能なフレームの模式図を示す図である。その高さ(h)に沿ったフレームの圧縮が、その長さに沿った中空糸又は中空糸膜の収縮によって引き起こされるような、圧縮可能なフレームに巻き付けられた中空糸又は中空糸膜が示される。Bは、Aに示される圧縮可能なフレームの丸く囲まれた部分の拡大図を示す図である。
図3C図3Aに示される圧縮可能なフレームの分解側面図を示す図である。
図4】イソプロパノール透過性内部流動試験装置の模式図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示はその例示的な実施態様を参照して特に示され説明されるが、添付される特許請求の範囲に包含される本開示の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において様々な変更がなされ得ることは当業者に理解されるであろう。
【0016】
様々な組成物及び方法が説明されるが、記載される特定の組成物、設計、方法論又はプロトコールは変動する場合があるので、本開示がこれらに限定されないことは当然理解される。また、説明に使用されている用語は、特定の1つ又は複数のバージョンを説明することのみを目的としており、添付される特許請求の範囲によってのみ限定される本開示の範囲を限定するものでないことも当然理解される。
【0017】
また、本明細書及び添付される特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈上明らかに指示されている場合を除いて、複数への言及が含まれることも留意されたい。したがって、例えば、「膜」への言及は、1つ又は複数の膜及び当業者に公知のその同等物などへの言及である。別に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等な方法及び材料を、本開示のバージョンを実践又は試験する際に使用することができる。本明細書において言及される全ての刊行物は、その全文が出典明示により援用される。「任意の」又は「任意選択的に」とは、その後に記載される事象又は状況が起こっても起こらなくてもよいこと、及びその事象が起こる例と起こらない例が説明に含まれることを意味する。本明細書中の全ての数値範囲は、明示的に示されていようといまいと、用語「約」によって修飾され得る。用語「約」は、通常、当業者が列挙される値と同等であると考える(すなわち、同じ機能又は結果を有する)数値範囲をさす。一部のバージョンでは、用語「約」とは、述べた値の±10%をさし、別のバージョンでは、用語「約」とは、述べた値の±2%をさす。組成物及び方法は、様々な構成要素又は工程を「含む」(「含むがこれに限定されるものではない」を意味すると解釈される)という点で記載されているが、組成物及び方法は、様々な構成要素及び工程「から本質的になる」又は「からなる」こともでき、そのような用語は本質的に閉じた要素群を定義すると解釈されるべきである。
【0018】
本開示の例示的な実施態様の説明を次に示す。
【0019】
本明細書に記載されるのは、約5L/m h bar−約150L/m h barのイソプロパノール透過性、及び約1nm−約25nmの呼び径を有する粒子に対する約100%の粒子阻止率を有するポリアミド中空糸膜である。ポリアミド中空糸膜は、例えば、フォトレジスト濾過、透析、廃水処理、タンパク質精製及びガス吸着に使用することができる。一部の態様では、ポリアミド中空糸膜は、フォトレジスト濾過用である。
【0020】
イソプロパノール透過性は、内部流動試験を用いて決定することができる。内部流動試験を実施するために、中空糸膜を10cmの長さに切断する。中空糸の両端を、長さ3cmOD1/4インチのプラスチック管に挿入して、中空糸でループを形成する。ホットメルト接着剤、例えばクラフト用グルーガンに使用されるものを、切断された繊維端部の側からプラスチック管に、管が充填されるまで挿入する。接着剤が冷めたら、管の端から約0.5cmを切り取り、中空糸の断面を明らかにする。管を流動試験器ホルダー(図4参照)に挿入し、イソプロパノールを22℃で所定の間隔で指定された圧力(例えば、14.2ポンド/平方インチ(psi))で試料に供給する。次に、膜を通って流れるイソプロパノールを収集し、測定する。イソプロパノール透過性は式1から計算する:
(1)
q=膜を通るイソプロパノール流量(L/h)
a=πDLx=膜の表面積(m
D=繊維の外径(m)
L=繊維の長さ(m)
x=繊維の数
p=膜を横切る圧力低下(bar)
【0021】
一部の態様では、本明細書に記載されるポリアミド中空糸膜のイソプロパノール透過性は、約10L/m h bar−約150L/m h bar、約40L/m h bar−約100L/m h bar、約55L/mh bar−約85L/mh bar又は約65L/mh bar−約85L/m h barである。一部の態様では、イソプロパノール透過性は、約5L/m h bar−約30L/mh barである。
【0022】
「粒子保持率」とは、流体流の流体経路内に設置された膜によって流体流から除去され得る粒子数の百分率をさす。中空糸膜の粒子保持率は、15psiの圧力で中空糸膜で1%の単層被覆率を達成するために十分な量の、pH9に調節され、呼び径が0.03の8ppmポリスチレン粒子(Duke Scientific G25Bより入手可能)を含有する0.1% Triton X−100の水性供給溶液を通過させること、及び内腔を通る透過液を収集することによって測定することができる。透過液中のポリスチレン粒子の濃度は、透過液の吸光度から計算することができる。次に、次式を用いて粒子保持率を計算する:粒子保持率=([供給液]−[濾液])/[供給液]×100%。粒子保持率は、上記のポリスチレン粒子を含有する水溶液の代わりにプロピレングリコールモノメチルエーテル中5nmの金粒子(Ted Pellaより入手可能)を用いることによっても測定することができる。
【0023】
1%の単層被覆率を達成するために必要な粒子の数(#)は、式2から計算することができる:
(2)
D=繊維の外径(m)
L=繊維の長さ(m)
x=繊維の数
d=粒子の直径
【0024】
本明細書において「呼び径」は、光子相関分光法(PCS)、レーザー回折又は光学顕微鏡法によって求められる粒子の直径である。一般に、計算された直径、又は呼び径は、粒子の投射画像と同じ投射面積を有する球の直径として表される。PCS、レーザー回折及び光学顕微鏡法の技法は、当技術分野で周知である。例えば、Jillavenkatesa,A.,ら;“Particle Size Characterization;” NIST Recommended Practice Guide; National Institute of Standards and Technology Special Publication 960−1; January 2001を参照されたい。
【0025】
一部の態様では、粒子阻止率は、約5nm−約25nm、約5nm−約20nm、約5nm又は約25nmの呼び径を有する粒子に対して約100%である。
【0026】
一部の態様では、ポリアミド中空糸は、約50psi−約150psi、約50psi−約120psi又は約70psi−約95psiの、下文及び実施例に記載される平均バブルポイント(MBP)を有する。一部の態様では、ポリアミド中空糸の平均バブルポイントは、約90psi−約150psiである。
【0027】
「平均バブルポイント」(MBP)とは、湿潤中空糸膜の空気流と乾燥中空糸膜の空気流の比が0.5になる圧力をさす。平均バブルポイントは、中空糸膜の内腔を空気で加圧し、空気流を圧力の関数として測定し、次に中空糸膜を低表面張力流体、例えばHFE−7200(3M Novec Engineered Fluidより入手可能)などに浸し、空気流を圧力の関数として測定することによって求めることができる。
【0028】
本明細書に記載されるポリアミド中空糸膜は、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド6,10又はポリアミド12或いは前述の何れかの組合せから作製され得る。本開示の一態様では、ポリアミドはポリアミド6である。
【0029】
ポリアミド中空糸膜は、約400ミクロン−約1,000ミクロン、約500ミクロン−約900ミクロン、約750ミクロン−約1,000ミクロン又は約500ミクロン−約750ミクロンの外径(OD)を有し得る。ポリアミド中空糸膜は、約200ミクロン−約800ミクロン、約300ミクロン−約700ミクロン、約250ミクロン−約500ミクロン又は約500ミクロン−約750ミクロンの内径(ID)を有し得る。一部の態様では、中空糸膜のODは、約400ミクロン−約1,000ミクロンであり、中空糸膜のIDは約200ミクロン−約800ミクロンである。
【0030】
ポリアミド中空糸膜の厚さは、一般に約100ミクロン−約250ミクロンである。例えば、中空糸膜は、約100ミクロン−約150ミクロン、約200ミクロン−約250ミクロン、約125ミクロン−約225ミクロン又は約150ミクロン−約200ミクロンの厚さを有し得る。
【0031】
本明細書において、「非ふるい分け膜」とは、粒子を捕捉するか又は主に非ふるい分け保持機構によって粒子を捕捉するように最適化されている膜をさす。本明細書において、「非ふるい分け保持機構」とは、フィルタ又は微多孔質膜の圧力低下又はバブルポイントに関連のない機構、例えば遮断、拡散及び吸着などによって生じる保持率をさす。膜表面への粒子吸着は、例えば、分子間ファンデルワールス力及び静電力によって媒介され得る。遮断は、膜を通って移動する粒子が膜との接触を避けるのに十分な速さで方向を変えることができない場合に起こる。拡散による粒子輸送は、主に小さい粒子のランダム又はブラウン運動から生じ、これは粒子が濾過媒体と衝突するという一定の確率を生成する。いかなる特定の理論にも縛られることを望むものではないが、本明細書に記載されるポリアミド中空糸膜は、少なくとも膜のpIよりも低いpH値、又は約pH9で、非ふるい分け膜として作用すると考えられる。したがって、本開示の一部の態様では、ポリアミド中空糸膜は非ふるい分け膜である。
【0032】
また、流体分離モジュールも本明細書に記載される。流体分離モジュールは、供給口及び透過口を有するハウジング及びハウジング内に配置された分離エレメントを含む。分離エレメントは、ハウジングを第1の容積部と、第1の容積部から流体密封された第2の容積部に分割し、複数のポリアミド中空糸膜(例えば、複数のポッティングされたポリアミド中空糸膜又は1つのポリアミド中空糸束)を含む。各ポリアミド中空糸膜は、第1の端部及び第2の端部、流体流れに対して開放されている内腔及び約5L/m h bar−約150L/m h barのイソプロパノール透過性及び約1nm−約25nmの呼び径を有する粒子に対する約100%の粒子阻止率を有する。供給口は、第1の容積部と流体連通し、透過口は、第2の容積部と流体連通している。供給口に供給される流体の少なくとも一部分は、複数のポリアミド中空糸膜を透過し、それによって透過液を形成し、それは透過口から流出する。複数の中空糸膜の代替特性(例、透過性、MBP、粒子阻止)は、本明細書に記載される通りである。
【0033】
「流体流れに対して開放されている」中空糸膜又は中空糸膜の内腔は、中空糸膜の長さ又は実質的に全長に沿った円形又は実質的に円形の断面を特徴とし、その結果、流体は内腔の長さ又は実質的に全長に沿って妨げられずに流れることができる。流体流れに対して開放されている中空糸膜は、例えば、ポリアミド中空糸膜を非圧縮可能なフレームで乾燥させた場合に起こり得るような、中空糸膜の長さに沿って潰れたか又は部分的に潰れた中空糸膜とは異なる。潰れたか又は部分的に潰れた繊維は、多くの場合、流体流れに対して開放されているその対応物と比較して流量が低下し、ポッティングすることが困難又は不可能である。なぜなら、繊維とポッティング樹脂との間に不十分な結合が生じ、それが完全でない装置をもたらすか、或いは、ポッティング中に用いる高温が、潰れたか又は部分的に潰れた繊維の弱化した壁を溶解し、それが繊維壁を不均一にするか又は内腔を通る流れを完全に妨げるためである。
【0034】
一般に、本明細書に記載される流体分離モジュール内の第1の容積部及び第2の容積部は、複数のポリアミド中空糸の各々の第1の端部を第1のポッティング樹脂にポッティングし、複数のポリアミド中空糸の各々の第2の端部を第2のポッティング樹脂に別々にポッティングすることによって封止されてポリアミド中空糸束を形成し、これをハウジングに一体的に結合して第1の容積部を第2の容積部から封止することができる。したがって、一部の実施態様では、複数のポリアミド中空糸の各々の第1の端部を(例えば、第1のポッティング樹脂で)ポッティングし、複数のポリアミド中空糸の各々の第2の端部を(例えば、第2のポッティング樹脂で)ポッティングしてポリアミド中空糸束を形成する。一般に、第1及び第2のポッティング樹脂は同じである。或いは、第1及び第2のポッティング樹脂は互いに異なっている。中空糸束は、ポッティング中に(例えば、一工程で)又は中空糸束の形成後に(例えば、さらなる接着工程中に)ハウジングに一体的に結合することができる。
【0035】
例となるポッティング樹脂としては、限定されるものではないが、高密度ポリエチレン(HDPE)、無水マレイン酸グラフトHDPE又はポリアミド(例えば、ポリアミド12、ポリアミド6,12)、或いは前述の何れかの組合せが挙げられる。一部の態様では、複数のポリアミド中空糸の各々の第1及び第2の端部或いは第1又は第2の端部は、90%HDPE及び10%無水マレイン酸グラフトHDPE;ポリアミド12;ポリアミド6,12;又はHDPE;或いは前述の何れかの組合せを含むポッティング樹脂でポッティングされる。
【0036】
ブレンドされたポッティング樹脂は、非極性熱可塑性ポリマー構成要素(例えば、ポリエチレンハウジング)の極性熱可塑性構成要素(例えば、ポリアミド中空糸膜)への一体的結合に特に有利である。特に、ブレンドされた樹脂は、2つの物理的かつ/又は化学的に適合しない材料を一体的に結合して、半導体製造産業で遭遇するような分離/濾過用途に適した構造一体性をもつ、液密シールをハウジング内に作り出すことができる。したがって、一部の態様では、ポッティング樹脂は、(1)非極性熱可塑性ポリマー及び極性熱可塑性ポリマーを含むブレンドされた樹脂であり、該極性熱可塑性ポリマーは、熱可塑性のブレンドされたポッティング樹脂の総重量パーセントの約1重量%よりも大きい;又は(2)極性基を含む変性熱可塑性ポリマーを含むブレンドされた樹脂であり、該極性基は変性熱可塑性ポリマーの総重量の約0.1重量%以上である。90重量%HDPE及び10重量%無水マレイン酸グラフトHDPEは、本明細書に記載される流体分離モジュールにおいて有用なブレンドされたポッティング樹脂である。
【0037】
本明細書において、「極性熱可塑性ポリマー」とは、極性繰り返し単位(例えば、ポリアミドを作製するためのアミド単位)を含むポリマー熱可塑性樹脂又は変性熱可塑性ポリマーをさす。ブレンドされた樹脂の一部の態様では、極性熱可塑性ポリマーは、ブレンドされた樹脂の総重量の約5重量%を上回る(すなわち、ブレンドされた樹脂の総重量パーセントの約5%よりも大きく約100重量%までである)。適した極性熱可塑性ポリマーとしては、限定されるものではないが、ポリエチレン無水マレイン酸、エチレンビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル、エチレンアクリル酸及びポリブタジエン無水マレイン酸が挙げられる。一般に、極性熱可塑性ポリマーは、ブレンドされた樹脂の総重量の約5%から約50重量%の間である。例えば、極性熱可塑性ポリマーは、ブレンドされた樹脂の総重量の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%又は約50重量%であり得る。
【0038】
「変性熱可塑性ポリマー」は、本明細書において、極性化学基で変性されている非極性熱可塑性ポリマー樹脂か(例えば、無水物−変性ポリエチレン)、又は非極性繰り返し単位と極性繰り返し単位を共重合することによって作製される非極性熱可塑性ポリマー樹脂(例えば、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)及びポリ(エチレン−コ−ビニルアルコール))をさす。非極性熱可塑性ポリマーが極性基で変性されているか又は極性基と共重合されている場合(例えば、無水物変性ポリエチレン)、極性基は、変性熱可塑性ポリマーの総重量の約0.1重量%−約75重量%である。適した変性熱可塑性ポリマーとしては、限定されるものではないが、ポリエチレン無水マレイン酸、エチレンビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル、エチレンアクリル酸及びポリブタジエン無水マレイン酸が挙げられる。
【0039】
本明細書において、「非極性熱可塑性ポリマー」とは、極性基又は繰り返し単位を全く含有しないか、或いは疎水性であるポリマー樹脂をさす。非極性樹脂の例としては、限定されるものではないが、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル))、テフロン(登録商標)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)又はパーフルオロメチルアルコキシ(MFA)が挙げられる。
【0040】
ブレンドされたポッティング樹脂は、均質に使用することも不均質に使用することもできる。ブレンドを均質に使用するためには、極性及び非極性樹脂のペレット又は粉末を混合して、押出機又は遠心ポッティング装置で溶融させて均質な溶融体を形成し、次にこれをポッティングに使用することができる。ブレンドを不均質に使用するためには、極性樹脂を溶融した後、例えば、ポリアミド中空糸膜と非極性樹脂溶融体との間に別々に「結合」層として、塗布することができる。
【0041】
ブレンドされたポッティング樹脂並びにブレンドされたポッティング樹脂を作製及び使用する方法は、2015年7月9日出願の米国特許仮出願第62/190617号、及び国際特許出願PCT/US2016/040425号、Iyerらに記載されており、これらは両方とも明白な定義を除いてその全文が出典明示により本明細書に援用される。
【0042】
ポッティングの後、中空糸束の第1及び第2の端部を、例えば切断によって露出させて、流体流れに対して開放されている中空糸の断面を明らかにする。中空糸束の第1又は第2の端部はその後、例えばキャッピングによって封止され得る。
【0043】
流体分離モジュールの一部の態様では、ポリアミド中空糸束の第1の端部は、内腔容積がポリアミド中空糸束の端部と連通しているように開口していて、ポリアミド中空糸束の第2の端部は、封止されている。図1A及び図1Bは、ポリアミド中空糸束の第1の端部が開口していて、ポリアミド中空糸束の第2の端部が封止されている、デッドエンド型流体分離モジュールの断面側面図である。流体は、図1Aに示されるモジュール内の各中空糸の外側から各中空糸の内腔へと透過する。流体は、図1Bに示されるモジュール内の各中空糸の内腔から各中空糸の外側に透過する。開口している第1の端部及び封止されている第2の端部を有する中空糸束は、本明細書において「片端開口型」中空糸束とも呼ばれる。
【0044】
デッドエンド型流体分離モジュールは、2つの流体流、供給流及び透過流を有し、そのために、少なくとも供給口及び透過口を必要とする。一般に、第3の口を使用して、供給流が液体である場合に、空気が膜の上流に閉じ込められ、それによって流体の流れが妨げられることを防ぐために、供給流に通気孔を設ける。供給口に導入された流体は、透過口で収集されることができる。
【0045】
ここで図1Aを参照すると、流体分離モジュール1のハウジングには、シェル16、エンドキャップ10、通気口11、供給口12及び透過口13が含まれる。分離エレメント14は、ハウジング内に配置され、複数の片端開口型ポリアミド中空糸膜又は片端開口型ポリアミド中空糸膜の束を含む。供給流は、中央導管15に接続されている供給口12に導入され、中央導管15は供給流をモジュール1の下端部にある供給室17に向ける。供給室17から、供給流はモジュール1の断面を横切って分配され、方向を逆にして、分離エレメント14の上方及び周囲に流れる。供給流は分離エレメント14を透過し、得られる透過流は透過室19に入り、透過口13を通ってモジュール1を出る。図1Aに示される実施態様では、シェル16はエンドキャップ10に溶融結合されていて、供給流は各中空糸の外側から各中空糸の内腔へと透過する。通気されるべき気体は、口11を通じて放出するための室18に収集することができる。
【0046】
図1Bでは、供給流は供給口21に導入される。供給流は分離エレメント24を透過し、得られる透過流は透過室27に入る。そこから透過流は中央導管25を上って透過口22まで流れ、そこで透過流は流体分離モジュール2を出る。図1Bに示される実施態様では、シェル26はエンドキャップ20に溶融結合されていて、供給流は各中空糸の内腔から各中空糸の外側に透過する。通気されるべき気体は、口23を通じて放出するための室28に収集することができる。
【0047】
流体分離モジュールの一部の態様では、ポリアミド中空糸束の第1の端部及び第2の端部は開口している。図1Cは、中空糸束の第1及び第2の端部が開口している、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)流体分離モジュールの断面側面図である。内腔容積が中空糸束の両端と連通しているように開口している第1及び第2の端部を有する中空糸束は、本明細書において「両端開口型」中空糸束とも呼ばれる。
【0048】
TFF流体分離モジュールは一般に3つの流れ、供給流、透過流及び保持液流を有し、そのために、少なくとも供給口、透過口及び保持液口を有する。時には第4の口を用いてモジュールを排水する。一般に、排水管はモジュールの動作中は作動しない。TFF流体分離モジュールでは、供給流の一部だけが濾過され、この部分は透過口で収集することができる;供給流の残りは、分離エレメントの上流の保持液口で収集することができる。
【0049】
TFF流体分離モジュールのハウジングは、上部のエンドキャップ30、下部のエンドキャップ36a、円筒形のシェル36b及び口31、32、33を含む。分離エレメント34はハウジング内に配置され、両端開口型ポリアミド中空糸束を含む。図1Cに示されるTFF流体分離モジュールは、少なくとも2つの構成で使用されることができる。第1の構成では、供給流は、各中空糸の外側から各中空糸の内腔へと透過する。第1の構成では、供給流は中央導管35に接続されている中央口32を通じて流体分離モジュール3に入り、中央導管35は供給流をモジュール3の下端部から室37に向ける。そこから供給流はモジュール3の断面を横切って分配され、方向を逆にして、上方に流れ、中空糸の内腔に入る。供給流の一部は分離エレメント34を透過し、得られる透過流は室38に入り、口31を通ってモジュール3を出る。供給流の残りの部分は中空糸の内腔を通って上方に流れ、得られる保持液流は室39に入り、口33を通ってモジュール3を出る。
【0050】
第2の構成では、供給流は、図1CのTFF流体分離モジュールの各中空糸の内腔から外側に透過する。第2の構成では、供給流は口33を通じて流体分離モジュール3に入る。供給流の一部は分離エレメント34を透過し、得られる透過流は室38に入り、口31からモジュール3を出る。供給流の残りの部分は中空糸の内腔に沿って下方に流れ、得られる保持液流は室37に入る。そこから保持液流は方向を逆にし、中央導管35を通って上方に流れ、中央口32でモジュール3を出る。
【0051】
また、本明細書に記載されるのは、流体流れに対して開放されていて、約5L/m h bar−約150L/m h barのイソプロパノール透過性、及び約1nm−約25nmの呼び径を有する粒子に対する約100%の粒子阻止率を有する、ポリアミド中空糸膜を製造するためのプロセスである。このプロセスは、ポリアミド樹脂と水溶性有機溶媒のスラリーを形成することを含む。スラリーは、スラリーの凝固を誘導して中空糸を形成するのに十分な温度に維持された水の中に中空糸紡糸口金を通して押出される。水溶性有機溶媒を、水を用いて中空糸から抽出して中空糸膜を形成する。中空糸又は中空糸膜は、圧縮可能なフレームに巻き付けられている。中空糸膜は、圧縮可能なフレームの上で乾燥し、それによって流体流れに対して開放されているポリアミド中空糸膜が作製される。
【0052】
スラリーは、一般に約15質量%−約25質量%のポリアミド樹脂又は約20質量%のポリアミド樹脂を含む。
【0053】
本明細書において、「水溶性有機溶媒」とは、水に溶解し、約100℃よりも高い温度でポリアミド樹脂を溶かし、約100℃よりも低い温度でポリアミド樹脂に不溶性である有機化合物又は有機化合物の混合物をさす。例となる水溶性有機溶媒としては、限定されるものではないが、多価アルコール(例、ジグリセロール、グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール)、環状ラクトン(例、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン)及び環状アミド(例、カプロラクタム)並びに前述の何れかの混合物が挙げられる。一部の態様では、水溶性有機溶媒は、ジグリセロール、グリセロール、グリコール、ジグリコール、グリセリルモノアセテート、カプロラクタム又はブチロラクトン、或いは前述の何れかの混合物である。本開示の一態様では、水溶性有機溶媒はジグリセロールである。
【0054】
スラリーは、一般に約50質量%−約85質量%、約60質量%−約75質量%又は約68質量%の水溶性有機溶媒(例、ジグリセロール)を含む。本開示の一態様では、スラリーは、約65質量%−約70質量%の水溶性有機溶媒を含む。
【0055】
一部の態様では、スラリーは水溶性有機非溶媒をさらに含む。したがって、本明細書に記載されるのは、流体流れに対して開放されていて、約5L/m h bar−約150L/m h barのイソプロパノール透過性、及び約1nm−約25nmの呼び径を有する粒子に対する約100%の粒子阻止率を有する、ポリアミド中空糸膜を製造するためのプロセスである。このプロセスは、ポリアミド樹脂、水溶性有機溶媒及び水溶性有機非溶媒のスラリーを形成することを含む。スラリーは、スラリーの凝固を誘導して中空糸を形成するのに十分な温度に維持された水の中に中空糸紡糸口金を通して押出される。水溶性有機溶媒及び水溶性有機非溶媒は、水を用いて中空糸から抽出されて中空糸膜を形成する。中空糸又は中空糸膜は、圧縮可能なフレームに巻き付けられている。中空糸膜は、圧縮可能なフレームの上で乾燥し、それによって流体流れに対して開放されているポリアミド中空糸膜が作製される。
【0056】
本明細書において、「水溶性有機非溶媒」とは、水に溶解し、ポリアミド樹脂に不溶性である有機化合物又は有機化合物の混合物をさす。例となる水溶性有機非溶媒としては、限定されるものではないが、多価アルコール(例、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、特に分子量が約100−約600のポリエチレングリコール)及びグリセロールトリアセテート、並びに前述の何れかの混合物が挙げられる。一部の態様では、水溶性有機非溶媒は、ポリエチレングリコール(例、分子量が約100−約600のポリエチレングリコール)、トリエチレングリコール又はグリセロールトリアセテート、或いは前述の何れかの混合物である。本開示の一態様では、水溶性有機非溶媒は、分子量が約100−約600のポリエチレングリコールである。
【0057】
スラリーが水溶性有機非溶媒を含む場合、スラリーは一般に約5質量%−約25質量%の水溶性有機非溶媒(例、ポリエチレングリコール)を含む。本開示の一態様では、スラリーは、約10質量%−約15質量%の水溶性有機非溶媒を含む。
【0058】
スラリーの凝固を誘導して中空糸を形成するのに十分な温度に維持された水の温度は、約100℃未満、約75℃未満、約50℃未満、約30℃未満、ほぼ室温(例、約25℃−約30℃又は約28℃)又は約10℃であってよい。例えば、スラリーの凝固を誘導して中空糸を形成するのに十分な温度に維持された水の温度は、約0℃−約100℃、約0℃−約75℃、約0℃−約50℃、約0℃−約30℃又は約0℃−約15℃であってよい。
【0059】
水溶性有機溶媒及び存在する場合水溶性有機非溶媒を抽出するために使用する水は、水溶性有機溶媒及び存在する場合水溶性有機非溶媒を溶解するか又は実質的に溶解するために十分な温度に維持される。一部の実施態様では、抽出に使用される水の温度は約25℃よりも高い、例えば約30℃よりも高い、約50℃よりも高い、例えば約80℃などである。一部の実施態様では、抽出に使用される水の温度は、約30℃−約130℃、約45℃−約100℃又は約75℃−約100℃である。抽出に使用される水の温度は、中空糸又は得られる中空糸膜を溶かすか又はその変形を誘導する温度よりも低くあるべきである。
【0060】
抽出及び乾燥の間、中空糸及び中空糸膜は収縮する傾向がある。繊維又は膜が、剛性フレームに巻き付けられている場合のように、抽出及び/又は乾燥の間に拘束されると、繊維又は膜は潰れてその丸い形状を失うことがあり、それはその強度及び透過性に影響を及ぼしかねない。しかし、繊維又は膜が拘束されていない場合、繊維又は膜は制御不能に収縮することがあり、それはその透過性を著しく低下させ得る。本明細書の実施態様に開示される圧縮可能なフレームは、繊維又は膜の開放性又は丸い形状を維持しながら、抽出及び/又は乾燥の間の収縮の程度を制御するために使用することができる。本明細書に開示される方法の一部の態様では、中空糸を圧縮可能なフレームの上に巻き付け、その後、水溶性有機溶媒を中空糸から抽出し、中空糸膜を乾燥させる。
【0061】
本開示の実施態様では、フレームが縮む時に、巻き付けられた繊維又は膜がその長さに沿って収縮するように、中空糸又は中空糸膜を圧縮可能なフレームに巻き付けることができる。一部の実施態様では、中空糸又は中空糸膜は、圧縮可能なフレームが縮む時に、巻き付けられた中空糸又は中空糸膜が中空糸又は中空糸膜の長さに沿って収縮することができるように、圧縮可能なフレームに巻き付けられる。図3Aに示される圧縮可能なフレームでは、中空糸又は中空糸膜は、図3Aに圧縮可能なフレーム5の高さ(h)として示される、フレームがそれに沿って縮む軸と繊維又は膜が平行であるか又は実質的に平行であるように、圧縮可能なフレームに巻き付けられている。
【0062】
「圧縮可能なフレーム」とは、本明細書において、フレームに巻き付けられた中空糸又は中空糸膜がその長さに沿って収縮する時に縮む、中空糸又は中空糸膜を抽出及び/又は乾燥するための装置をさす。図2A−2Cに示される圧縮可能なフレームでは、例えば、巻き付けられた繊維又は膜がその長さに沿って収縮する時に、フレームの縁に沿って配置されたエラストマーバルブシールガスケットが縮むように、中空糸又は中空糸膜がフレーム(例えばステンレス鋼フレーム)に巻き付けられる。図3A−3Cに示される圧縮可能なフレームでは、巻き付けられた繊維又は膜がその長さに沿って収縮する時に、ばねが圧縮可能なフレームの圧縮を容易にする。
【0063】
図2Aは、長方形のステンレス鋼フレーム41と、長方形のステンレス鋼フレーム41の基部bの上に配置されたエラストマーバルブシールガスケット42を含む圧縮可能なフレーム4の模式図である。中空糸又は中空糸膜44は、中空糸又は中空糸膜44のその長さに沿った収縮がバルブ43の圧縮を引き起こすように、フレーム41及びエラストマーバルブシールガスケット42の周囲に巻き付けられている。図2Bは、図2Aに示される圧縮可能なフレームの丸く囲まれた部分の拡大図を示し、図2Cは、2Aに示される圧縮可能なフレームの一部分の側面図である。
【0064】
図3Aは、ばねガイド58、58’(図3Cに図示)及び圧縮ばね57(図3Cに図示)と協働するブラケット53、ブラケット56及びねじ54、54’によって形成された接合部で互いに対して可動である2つの構成要素51、51’から作製した長方形のステンレス鋼フレームを含む圧縮可能なフレーム5の模式図である。動作中、圧縮ばね57は、ブラケット56の溝59(図3Cに図示)及びブラケット53の対応する溝(図示せず)にある。ねじ54はブラケット53から構成要素51内のばねガイド58を通ってブラケット56に入り、ねじ54’はブラケット53から構成要素51’内のばねガイド58’を通ってブラケット56に入り、それによって可動性接合部を固定する。中空糸又は中空糸膜55は、中空糸又は中空糸膜のその長さに沿った収縮がフレームのその高さ(h)に沿った圧縮を引き起こすように、フレーム5の周囲に巻き付けられている。図3Bは、図3Aに示される圧縮可能なフレームの丸く囲まれた部分の拡大図である。図3Cは、図3Aに示される実質的に同一の構成要素51及び51’を有する圧縮可能なフレームの分解側面図であり、可動性接合部を形成するための一対のブラケット53及び56とばね溝59及びばね57を示す(第2の可動性接合部ブラケット及びばねは明確さのために省略されている)。
【0065】
図3A−3C中の構成要素51、51’は互いに同一であるか、又は一部の実施態様では実質的に同一である。しかし、フレーム5の高さhに沿ってフレームを圧縮することを可能にする構成要素51、51’のその他の構成も考えられ、それらは本開示の範囲内にある。フレーム4及び5の基部bは図2A及び3Aにおいて高さhよりも長いものとして示されているが、基部bが高さhよりも短いか又は(正方形のフレームのように)等しいこともあり得る。
【0066】
本明細書において膜に関して使用される、「乾燥」とは、膜が水分又は液体を含まないか又は実質的に含まないことを意味する。「乾燥させること」とは、その用語が記載されているように、膜の乾燥状態を引き起こすか又は膜を乾燥した状態にさせることを意味する。ナイロンが吸湿性材料であることは理解されよう。一部の実施態様では、中空糸膜を乾燥させることには、中空糸膜が少なくとも指触乾燥になるまで中空糸膜を乾燥させることが含まれる。乾燥させることには、空気乾燥(例えば、室温で)させることと、膜に熱を加えるか又は膜を加熱することの両方が含まれ、それは中空糸膜からの水分又は液体の除去を早めることができる。加熱を用いて膜を乾燥させる場合、加熱時間及び温度は、中空糸膜を溶融又は変形させないように制御されるべきであることが理解されるであろう。
【0067】
また、本明細書に記載されるのは、流体流れに対して開放されていて、約5L/m h bar−約150L/m h barのイソプロパノール透過性及び約1nm−約25nmの呼び径を有する粒子に対する約100%の粒子阻止率を有する、ポリアミド中空糸膜である。ポリアミド中空糸膜は、ポリアミド樹脂と水溶性有機溶媒のスラリーを形成すること、スラリーの凝固を誘導して中空糸を形成するのに十分な温度に維持された水の中に中空糸紡糸口金を通してスラリーを押出すること、及び水を用いて中空糸から水溶性有機溶媒を抽出して中空糸膜を形成することを含むプロセスに従って調製される。中空糸又は中空糸膜は、圧縮可能なフレームに巻き付けられている。中空糸膜は、圧縮可能なフレームの上で乾燥し、それによって流体流れに対して開放されているポリアミド中空糸膜が作製される。方法及び中空糸膜の特性(例えば、透過性、MBP、粒子阻止)の変形は、本明細書に記載される通りである。
【0068】
スラリーが水溶性有機非溶媒を含まない場合、得られる中空糸膜は一般に約5L/mh bar−約30L/m h barのイソプロパノール透過性を有する。スラリーが水溶性有機非溶媒を含まないプロセスに従って製造された中空糸膜の平均バブルポイントは、一般に約90psi−約150psiである。
【0069】
スラリーが水溶性有機非溶媒を含む場合、得られる中空糸膜は一般に約10L/m h bar−約150L/mh bar、例えば、約40L/m h bar−約100L/mh barのイソプロパノール透過性を有する。スラリーが水溶性有機非溶媒を含むプロセスに従って製造された中空糸膜の平均バブルポイントは、一般に約50psi−約120psi、例えば約70psi−約95psiである。
【実施例】
【0070】
実施例1.ポッティングされた中空糸ループの調製。
中空糸膜を10cmの長さに切断した。中空糸の両端を、3cmの長さのOD1/4インチのプラスチック管に挿入して、中空糸でループを形成した。ホットメルト接着剤、例えばクラフト用グルーガンに使用されるものを、切断された繊維端部の側からプラスチック管に、管が充填されるまで挿入した。ホットメルト接着剤が冷めたら、管の端から約0.5cmを切り取って中空糸の断面を明らかにした。
【0071】
実施例2.平均バブルポイント(MBP)の決定。
実施例1に記載される通りに調製したポッティングされた中空糸ループの内腔を通して空気を加圧し、空気流を圧力の関数として測定した。次にループを低表面張力流体、HFE−7200(3M Novec Engineered Fluid HFE−7200)に浸し、空気を繊維の内腔を通して加圧した。空気流を再び圧力の関数として測定した。平均バブルポイント(MBP)は、湿潤繊維の空気流と乾燥繊維の空気流の比が0.5になる圧力をさす。
【0072】
実施例3.イソプロパノール透過性の決定。
内部流動試験を用いて、実施例1に従って調製したポッティングされた中空糸ループを用いるイソプロパノール透過性を決定した。図4は、ホットメルト接着剤62を用いて管63内にポッティングされた中空糸膜61に配管されたイソプロパノールを含有する加圧タンク65を含む、イソプロパノール透過性内部流動試験装置6の模式図である。内部流動試験を実施するために、管63を押し込み式継手64に挿入し、イソプロパノールを加圧タンク65から中空糸61を通して14.2psiで所定の間隔で22℃の温度で供給した。膜を流れるイソプロパノールを回収し、測定した。イソプロパノール透過性を式1から計算した。
【0073】
実施例4.粒子保持率の決定。
G25粒子:実施例1に従って調製したポッティングされた中空糸ループの粒子保持率を、15psiの圧力で中空糸膜で1%の単層被覆率を達成するために十分な量の、pH9に調節され、呼び径が0.03ミクロンの8ppmポリスチレン粒子(Duke Scientific G25Bより入手可能)を含有する0.1% Triton X−100の水性供給溶液を通過させ、内腔を通る濾液を収集することによって測定した。ポリスチレン粒子の濾液中の濃度を、濾液の吸光度から計算した。次に、粒子保持率を式3から計算した:
粒子保持率=([供給液]−[濾液])/[供給液]×100% (3)。
【0074】
金粒子:プロピレングリコールモノメチルエーテル中の5nm金粒子(Ted Pellaより入手可能)を、G25粒子の保持率を決定するための上記手順における0.1%Triton X−100中のG25粒子の代わりに用いた。金粒子の濾液中の濃度は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)によって求めた。
【0075】
実施例5.
20%ポリアミド6粉末(DSM Akulon F136E2、低温粉砕して微粉末にしたもの)、68%ジグリセロール、及び12%ポリエチレングリコール600を含有するスラリーを、3ゾーン共回転二軸スクリュー押出機に220℃−240℃で供給し、これを中空糸ダイに190℃で注入した。75%ジグリセロール及び25%ポリエチレングリコール600の溶液を110℃に予熱し、内腔に注入した。合した押出物及び内腔流体は、約3cmのエアギャップを通過した後、約28℃の水浴中で冷却され、その時点で中空糸膜が形成された。繊維をゴデットローラーによって毎分120フィート(fpm)で巻き取り、ロール上に収集した。繊維を図2A−2Cに示す圧縮可能なフレームの周囲に巻き付け、80℃の水浴中で一晩抽出し、2時間風乾し、次いでオーブン中80℃で1時間乾燥させた。
【0076】
得られた繊維は、89psiのMBP及び68L/m h barのイソプロパノール透過性を有していた。1%単層被覆率でのG25粒子保持率は100%であった。1%単層被覆率での5nm金粒子保持率は100%であった。
【0077】
実施例6.
熱水浴中で抽出する前に、図3A−3Cに示される圧縮可能なフレームの周囲に繊維を巻き付けたことを除いて、実施例5と同じ方法で中空糸膜を製造した。得られた繊維は、86psiのMBP及び81L/m h barのイソプロパノール透過性を有していた。
【0078】
実施例7.
ポリアミド6ペレット(EMS Grilon F50)を、3ゾーン単軸スクリュー押出機に220−230℃で供給した。その後、熱押出物を、20%のポリアミド6を達成する供給速度で、95%ジグリセロール及び5%ポリエチレングリコール600を含む混合物と同時に3ゾーン共回転二軸押出機に200−220℃で供給した。内腔を通して110℃に予熱した75%ジグリセリン及び25%ポリエチレングリコール600の溶液と同時に、混合物を190℃で中空糸ダイを通じて送り出し、1.5cmのエアギャップを経て27℃の水浴中で冷却した。繊維をゴデットローラーによって120fpmで巻き取り、ロール上に収集した。繊維を図2A−2Cに示す圧縮可能なフレームの周囲に巻き付け、80℃の水浴中で一晩抽出し、2時間風乾し、次いでオーブン中80℃で1時間乾燥させた。
【0079】
得られた繊維は、76psiのMBP及び58L/m h barのイソプロパノール透過性を有していた。1%単層被覆率でのG25粒子保持率は100%であった。
【0080】
実施例8.
ポリアミドペレット(BASF Ultramid B40)を240−250℃で単軸スクリュー押出機に通して加工し、それを20%のポリアミド6を達成する供給速度で、75%ジグリセロール及び25%ポリエチレングリコール600の混合物と同時に、二軸スクリュー押出機に200−260℃で供給したことを除いて、実施例7と同じ方法で中空糸膜を製造した。得られた繊維は、74psiのMBP及び32L/m h barのイソプロパノール透過性を有していた。1%単層被覆率でのG25粒子保持率は100%であった。
【0081】
実施例9.
ポリアミドペレット(DSM Akulon F136E2)を用いたことを除いて、実施例8と同じ方法で中空糸膜を製造した。得られた繊維は、89psiのMBP及び68L/m h barのイソプロパノール透過性を有していた。1%単層被覆率でのG25粒子保持率は100%であった。
【0082】
実施例9.
実施例5で得た中空糸膜を使用して濾過モジュールを作製した。米国特許仮出願第62/190617号のスパイラル積層法を用いて、〜1000繊維を90%HDPE/10%無水マレイン酸グラフトポリエチレン(Dow DMDA8965NT、Two H Chem HFS2100)でポッティングした。束を旋盤に取り付け、余分なポッティング材及び繊維を除去して、流体流に対して開放されている中空糸の断面を明らかにした。次に、束の一端をポリエチレンディスクで蓋をすることによって封止した。次に、束を図1のハウジングの中に接着した。1%単層でのG25粒子保持率は100%であった。
【0083】
比較例1.
熱水浴中で抽出する前に、非圧縮性のステンレス鋼フレームの周囲に繊維を巻き付けたことを除いて、実施例5と同じ方法で中空糸膜を製造した。得られた繊維は少し潰れており、円形ではなく長円形を有していた。それはバブルポイント又は透過性について試験するのに十分な強度を有していなかった。
【0084】
比較例2.
市販の平らなポリアミド膜を試験した。それは、119psiのMBP及び674L/m h barの透過性を有していた。1%単層被覆率でのG25粒子保持率は79%であった。
【0085】
本明細書中に引用された全ての特許、公開された出願及び参考文献の教示は、その全文が出典明示により援用される。
【0086】
1つ又は複数の実装形態に関して様々な実施態様が示され説明されたが、本明細書及び添付の図面を読み理解することによって、同等の変更及び修正が当業者に想起されるであろう。実施態様は、そのような修正形態及び代替形態を全て含み、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。その上、実施態様の特定の特徴又は態様は、いくつかの実装形態のうちの1つのみに関して開示されているが、そのような特徴又は態様は、所定又は特定の用途に望ましいか又は有利であり得るように、他の実装形態の1つ又は複数のその他の特徴又は態様と組み合わされてよい。さらに、用語「含む(includes)」、「有している(having)」、「有する(has)」、「と(with)」、又はその変形が、詳細な説明又は特許請求の範囲の何れかにおいて使用される限りにおいて、そのような用語は用語「含む(comprising)」と同様の方法で包括的であることが意図される。また、用語「例となる」は、最良の例よりはむしろ一例を意味しているにすぎない。また、本明細書において表される特徴及び/又は要素が、簡単にするためかつ理解し易くするために互いに対して特定の寸法及び/又は方向で例示されていること、及び実際の寸法及び/又は方向が本明細書に例示されるものとはかなり異なることがあることも理解される。
【0087】
本実施態様は、その特定のバージョンを参照してかなり詳細に説明されてきたが、その他のバージョンも可能である。そのため、添付される特許請求の範囲の趣旨及び範囲は、本明細書内に含まれる説明及びバージョンに限定されるべきではない。
【0088】
以下の条項は本発明の特定の態様及び実施態様を定義する。
条項1.約5L/m h bar−約150L/m h barのイソプロパノール透過性、及び約1nm−約25nmの呼び径を有する粒子に対する約100%の粒子阻止率を有するポリアミド中空糸膜。
条項2.イソプロパノール透過性が約40L/m h bar−約100L/m h barである、条項1に記載のポリアミド中空糸膜。
条項3.イソプロパノール透過性が約5L/m h bar−約30L/m h barである、条項1に記載のポリアミド中空糸膜。
条項4.粒子阻止率が、約5nm−約25nmの呼び径を有する粒子に対して約100%である、条項1から3の何れか一項に記載のポリアミド中空糸膜。
条項5.平均バブルポイントが約50psi−約150psiである、条項1から4の何れか一項に記載のポリアミド中空糸膜。
条項6.平均バブルポイントが約70psi−約95psiである、条項5に記載のポリアミド中空糸膜。
条項7.平均バブルポイントが約90psi−約150psiである、条項5に記載のポリアミド中空糸膜。
条項8.ポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド6,10又はポリアミド12、又は前述の何れかの組合せである、条項1から7の何れか一項に記載のポリアミド中空糸膜。
条項9.ポリアミドがポリアミド6である、条項8に記載のポリアミド中空糸膜。
条項10.中空糸膜の外径が約400ミクロン−約1,000ミクロンであり、中空糸膜の内径が約200ミクロン−約800ミクロンである、条項1から9の何れか一項に記載のポリアミド中空糸膜。
条項11.中空糸膜が約100ミクロン−約250ミクロンの厚さを有する、条項1から10の何れか一項に記載のポリアミド中空糸膜。
条項12.流体分離モジュールであって、
供給口及び透過口を有するハウジング;及び
ハウジング内に配置され、ハウジングを第1の容積部と、第1の容積部から流体密封された第2の容積部とに分割している分離エレメントであって、該分離エレメントは複数のポリアミド中空糸膜を含み、各ポリアミド中空糸膜は、第1の端部及び第2の端部、流体流れに対して開放されている内腔及び約5L/m h bar−約150L/m h barのイソプロパノール透過性、及び約1nm−約25nmの呼び径を有する粒子に対する約100%の粒子阻止率を有する、分離エレメント
を含み、
該供給口は第1の容積部と流体連通し、該透過口は第2の容積部と流体連通し、
それにより、供給口に供給される流体の少なくとも一部は複数のポリアミド中空糸膜を透過し、それによって透過液を形成し、それは透過口から流出する、流体分離モジュール。
条項13.複数の中空糸膜の各々の第1の端部がポッティングされ、複数の中空糸膜の各々の第2の端部がポッティングされて、ポリアミド中空糸束を形成する、条項12に記載の濾過カートリッジ。
条項14.ポリアミド中空糸束が、両端開口型ポリアミド中空糸束である、条項13に記載の濾過カートリッジ。
条項15.ポリアミド中空糸束が、片端開口型ポリアミド中空糸束である、条項13に記載の濾過カートリッジ。
条項16.ポリアミド樹脂と水溶性有機溶媒のスラリーを形成することと;
スラリーの凝固を誘導して中空糸を形成するのに十分な温度に維持された水の中に、中空糸紡糸口金を通してスラリーを押出することと;
水を用いて中空糸から水溶性有機溶媒を抽出して中空糸膜を形成することと;
中空糸又は中空糸膜を圧縮可能なフレームに巻き付けることと;
圧縮可能なフレーム上の中空糸膜を乾燥させ、それによって流体流れに対して開放されているポリアミド中空糸膜を製造することと
を含むプロセスに従って調製された、流体流れに対して開放されていて、約5L/m h bar−約150L/m h barのイソプロパノール透過性及び約1nm−約25nmの呼び径を有する粒子に対する約100%の粒子阻止率を有する、ポリアミド中空糸膜。
条項17.流体流れに対して開放されていて、約5L/m h bar−約150L/m h barのイソプロパノール透過性及び約1nm−約25nmの呼び径を有する粒子に対する約100%の粒子阻止率を有するポリアミド中空糸膜を製造するためのプロセスであって、
ポリアミド樹脂と水溶性有機溶媒のスラリーを形成することと;
スラリーの凝固を誘導して中空糸を形成するのに十分な温度に維持された水の中に、中空糸紡糸口金を通してスラリーを押出することと;
水を用いて中空糸から水溶性有機溶媒を抽出して中空糸膜を形成することと;
中空糸又は中空糸膜を圧縮可能なフレームに巻き付けることと;
圧縮可能なフレーム上の中空糸膜を乾燥させ、それによって流体流れに対して開放されているポリアミド中空糸膜を製造することと
を含む、プロセス。
条項18.スラリーが約15質量%−約25質量%のポリアミド樹脂を含む、条項17に記載のプロセス。
条項19.スラリーが約20質量%のポリアミド樹脂を含む、条項18に記載のプロセス。
条項20.ポリアミド樹脂がポリアミド6である、条項17から19の何れか一項に記載のプロセス。
条項21.水溶性有機溶媒がジグリセロールである、条項17から20の何れか一項に記載のプロセス。
条項22.スラリーが約50質量%−約85質量%の水溶性有機溶媒を含む、条項17から21の何れか一項に記載のプロセス。
条項23.スラリーが約65質量%−約70質量%の水溶性有機溶媒を含む、条項22に記載のプロセス。
条項24.スラリーが水溶性有機非溶媒をさらに含む、条項17から23の何れか一項に記載のプロセス。
条項25.水溶性有機非溶媒がポリエチレングリコールである、条項24に記載のプロセス。
条項26.スラリーが約5質量%−約25質量%の水溶性有機非溶媒を含む、条項24又は25に記載のプロセス。
条項27.スラリーが約10質量%−約15質量%の水溶性有機非溶媒を含む、条項26に記載のプロセス。
条項28.中空糸が圧縮可能なフレームに巻き付けられ、次に水溶性有機溶媒が中空糸から抽出され、中空糸膜が乾燥される、条項17から27の何れか一項に記載のプロセス。
条項29.中空糸又は中空糸膜が、圧縮可能なフレームが縮む時に、巻き付けられた中空糸又は中空糸膜が中空糸又は中空糸膜の長さに沿って収縮することができるように、圧縮可能なフレームに巻き付けられている、条項17から28の何れか一項に記載のプロセス。
条項30.中空糸又は中空糸膜を抽出及び/又は乾燥するための圧縮可能なフレーム装置であって、フレーム装置に巻き付けられた中空糸又は中空糸膜がその長さに沿って収縮する時に縮むように適合され、前記圧縮可能なフレームは:長方形のフレーム;フレームの対向する縁に沿って配置されるエラストマー材料を含み、前記エラストマー材料は、巻き付けられた中空糸又は中空糸膜がフレーム上のその長さに沿って収縮する時に縮む、フレーム装置。
条項31.エラストマー材料が、フレームの対向する縁の上に配置されたエラストマーバルブシールガスケットである、条項30に記載の圧縮可能なフレーム。
条項32.エラストマー材料が、前記フレーム装置に巻き付けられた中空糸中空糸膜の乾燥又は抽出の間に前記フレームに巻き付けられた中空糸又は中空糸膜の開放性を維持し、崩壊を防ぐために十分な力定数を特徴とする、条項30又は31に記載の圧縮可能なフレーム装置。
条項33.フレーム装置に巻き付けられた中空糸又は中空糸膜がその長さに沿って収縮する時に縮むように適合させた、中空糸又は中空糸膜を抽出及び/又は乾燥するための圧縮可能なフレーム装置であって、1つ又は複数のブラケットによって連結された第1の構成要素及び第2の構成要素から作製される長方形のフレームを含み、第1の構成要素及び第2の構成要素は、1又は複数のばねガイド及び圧縮ばねと協働する構成要素及び1又は複数のブラケットによって形成された接合部で互いに対して可動であり、前記長方形のフレームは巻き付けられた中空糸又は中空糸膜がフレーム上のその長さに沿って収縮する特に縮む、圧縮可能なフレーム装置。
条項34.第1の構成要素及び第2の構成要素が互いに実質的に同一である、条項33に記載の圧縮可能なフレーム装置。
条項35.ばねが、前記フレーム装置に巻き付けられた中空糸中空糸膜の乾燥又は抽出の間に中空糸又は中空糸膜の開放性を維持し、崩壊を防ぐために十分な力定数を有する、条項33又は34に記載の圧縮可能なフレーム装置。
条項36.圧縮可能なフレームに巻き付けられた中空糸又は中空糸膜をさらに含み、前記中空糸又は中空糸膜がポリアミドを含み、約400ミクロン−約1000ミクロンのOD及び約200ミクロン−約800ミクロンのIDを有する、条項30から35の何れか一項に記載の圧縮可能なフレーム装置。
図1A
図1B
図1C
図2A-B】
図2C
図3A-B】
図3C
図4