(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上端面から前記芯線挿入穴の底までの範囲に亘って、前記芯線保持部の外周面と、前記芯線挿入穴の壁面との間の前記芯線保持部の最大厚さは、30mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の芯線ホルダ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について
図1〜
図4及び
図7に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0011】
本実施の形態の芯線ホルダは、シリコン製造装置におけるベルジャー型反応炉に備えられてシリコン芯線を保持及び通電するものである。より具体的には、ベルジャー型シリコン製造装置の底盤に配置された電極に設けられる芯線ホルダに関するものである。最初に、ベルジャー型反応炉の構成について、
図2に基づいて説明する。
図2は、本実施の形態のシリコン製造装置におけるベルジャー型反応炉1Aの構成を示す断面図である。
【0012】
本実施の形態では、シリコン製造装置として、例えばジーメンス法にて多結晶シリコンを製造する。ジーメンス法では、
図2に示すように、ベルジャー型反応炉1A内でシランガスである三塩化珪素(SiHCl
3)を水素(H
2)ガスで還元することにより、高純度の多結晶シリコンを析出させる。
【0013】
ベルジャー型反応炉1Aは、
図2に示すように、底盤2に配置された少なくとも一対の電極3を備えていると共に、電極3の上側には、シリコン芯線4Aを保持するカーボンからなる芯線ホルダ10Aがそれぞれ設けられている。芯線ホルダ10Aは、上部に、芯線挿入穴13Aが形成された芯線保持部12Aを有しており、シリコン芯線4Aはこの芯線挿入穴13Aに挿入されることにより立設される。
【0014】
前記構成を備えたベルジャー型反応炉1では、電極3から芯線ホルダ10Aを介してシリコン芯線4Aに通電することにより900〜1100℃に赤熱させた状態で、三塩化珪素(SiHCl
3)及び水素(H
2)ガスを下側から反応器内に供給する。その結果、シリコン芯線4Aに多結晶シリコン5が析出し、最終的には、多結晶シリコン5が100〜150mm径の太さに成長するものとなっている。
【0015】
前記芯線ホルダ10A及び電極3の詳細構成について、
図1の(a)(b)(c)に基づいて説明する。
図1の(a)は、本実施の形態1における芯線ホルダ10A及び電極3の構成を示す断面図である。
図1の(b)は、芯線ホルダ10Aの構成を示すものであって、
図1の(a)のA−A’線断面図である。
図1の(c)は、芯線ホルダ10Aにおける芯線保持部12Aの上端面12aの構成を示す拡大正面図である。
【0016】
図1の(a)に示すように、本実施の形態の電極3は、金属電極からなっていると共に、水冷等による冷却機構6を有しており、多結晶シリコン5がシリコン芯線4Aに析出する間、該電極3が冷却されるようになっている。これにより、電極3が高温雰囲気から保護されると共に、該電極3に多結晶シリコン5が析出するのを防止するようになっている。
【0017】
芯線ホルダ10Aは、電極3の上側に接合されてシリコン芯線4Aを保持すると共に、電極3からの電位をシリコン芯線4Aに通電する。芯線ホルダ10Aと電極3との接合方法は、通電が円滑に行われれば特に制限されないが、例えばスクリュー型(螺合型)、吻合型、すり鉢型等の形状により接合する態様が好ましい。
【0018】
芯線ホルダ10Aは、電極3からの電位をシリコン芯線4Aに通電すべく例えばカーボン製になっている。ただし、芯線ホルダ10Aは必ずしもカーボン製でなくてもよい。しかし、カーボン製の芯線ホルダ10Aは、シリコン芯線4Aへの通電に必要な電気伝導性を有していると共に、冷却機構6を含む電極3の冷気がシリコン芯線4Aに及ばないようにするための小さい熱伝導率を有している点で好ましい。また、カーボン製の芯線ホルダ10Aは、熱膨張率が小さい点でも、芯線ホルダ10Aの高温時の変形を防止できる点で好ましい。
【0019】
芯線ホルダ10Aは、
図1の(a)(c)に示すように、下部に形成された基部11と上部に形成された円錐台形状を有する芯線保持部12Aとを備えている。
【0020】
基部11は、芯線ホルダ10Aと前記電極3とを接合する部分であり、本実施の形態では、電極3側に形成された凹部11aに電極3の凸部3aが嵌合されることにより、両者が一体に接合されるようになっている。基部11の外形形状は、例えば円錐台となっている。ただし、基部11の形状は必ずしも円錐台に限らず、例えば、後述する実施の形態2において
図6の(a)(b)に示す円柱形状であってよく、又は
図3の(b)及び
図4の(b)に示すように、逆円錐台形状であってもよい。
【0021】
芯線ホルダ10Aの芯線保持部12Aは、本実施の形態では、
図1の(a)に示すように、先細りの円錐台形状を有しており、円錐台の上端面12aには、シリコン芯線4Aを挿入して保持する芯線挿入穴13Aが形成されている。
【0022】
芯線挿入穴13Aには、例えば、一辺の長さが5〜12mmの正方形の断面形状を有するシリコン芯線4Aが挿入されるようになっている。シリコン芯線4Aは、
図2に示すように、一方の電極3から他方の電極3に電気的に接続されるようになっている。
【0023】
本実施の形態の芯線保持部12Aの円錐台形状の詳細について説明する。
【0024】
従来のように、芯線ホルダにおける略円錐台形状の軸線と母線とのなす角度が大きい場合、シリコン芯線の根元への原料ガスの流通が抑制され、その結果、シリコン芯線の根元へのシリコンの析出が遅くなり、シリコン芯線の全体のシリコンの析出も遅くなる。
【0025】
そこで、本実施の形態では、芯線ホルダにおける略円錐台形状の軸線と母線とのなす角度を従来とは変更することにより、シリコン芯線の根元へのシリコンの析出を改善したものとなっている。
【0026】
具体的には、
図1の(a)に示すように、本実施の形態の芯線ホルダ10Aは、芯線保持部12Aの円錐台形状として、軸線と母線とのなす角度θが10°以上かつ30°以下となっている。実験結果では、軸線と母線とのなす角度θは、11°以上かつ25°以下が好ましく、11°以上かつ16°以下がより好ましく、11°以上かつ15°未満が特に好ましいことが分かっている。例えば、
図3の(a)(b)(c)に示す芯線ホルダ10Aは、角度θ=25°の場合を示しており、
図4の(a)(b)に示す芯線ホルダ10Aは、角度θ=11°の場合を示している。
【0027】
これにより、芯線保持部12Aが上方に向けて細く尖った形状となり、シリコン芯線4Aの根元への原料ガスの流れが良くなり、原料ガスの供給量が増加し、シリコン芯線4Aの根元での析出が促進され、多結晶シリコン5の析出が早期に安定するようになる。
【0028】
尚、角度θが10°未満では、芯線保持部12Aの肉厚(芯線保持部12Aの外周面12cと芯線挿入穴13Aの内壁面13aとの間の距離)が薄くなりすぎて、シリコン芯線4Aを支持する強度が保てなくなるので、好ましくない。また、角度θが30°を超えると、シリコン芯線4Aの根元側への多結晶シリコン5の析出の成長が抑制されるので、好ましくない。
【0029】
また、本実施の形態の芯線ホルダ10Aにおいては、
図3の(b)及び
図4の(b)に示すように、上端面12aから芯線挿入穴13Aの底13bまでの範囲に亘って、芯線保持部12Aの外周面12cと、芯線挿入穴13Aの内壁面13aとの間の芯線保持部12Aの最大厚さD1は、30mm以下となっている。最大厚さD1は、好ましくは25mm以下であり、より好ましくは20mm以下である。これにより、芯線ホルダ10Aの角度θが10°以上かつ30°以下であることを満たし、さらに、上端面12aよりも下方部分である芯線挿入穴13Aの底までの外周面12cの厚さを30mm以下に薄くすることによって、冷却機構6を有する電極3からの芯線ホルダ10A、及びその上端部分である芯線保持部12Aの冷却を防止することができる。
【0030】
ここで、本実施の形態においては、
図3の(a)(b)(c)に示す芯線ホルダ10Aでは、芯線ホルダ10Aにおける10°以上かつ30°以下の角度θ=25°となっており、この角度θ=25°が軸線に沿って円錐台高さh1=37.5mmまで続いている。この結果、円錐台高さh1は少なくとも10mmの範囲に亘っている。また、
図3の(a)(b)(c)に示す芯線ホルダ10Aでは、芯線挿入穴13Aの底13bの内壁面13aと外周面12cとの間の芯線保持部12Aの最大厚さD1=20.5mmであり、最大厚さD1が30mm以下を満たしている。尚、
図3の(a)(b)(c)に示す芯線ホルダ10Aでは、挿入穴高さh2=40mmであり、芯線ホルダ10Aの全体高さh=130mmである。また、芯線ホルダ10Aの直径D=50mmである。
【0031】
さらに、
図4の(a)(b)(c)に示す芯線ホルダ10Aでは、角度θ=11°が軸線に沿って円錐台高さh1=90mmまで続いており、円錐台高さh1は少なくとも10mmの範囲に亘っている。また、芯線挿入穴13Aの底13bの内壁面13aと外周面12cとの間の芯線保持部12Aの最大厚さD1=11.1mmであり、最大厚さD1が30mm以下を満たしている。尚、
図4の(a)(b)(c)に示す芯線ホルダ10Aでは、挿入穴高さh2=40mmであり、芯線ホルダ10Aの全体高さh=130mmである。芯線ホルダ10Aの直径D=50mmである。
【0032】
ところで、芯線保持部12Aの形状として、このように、略円錐台形状の軸線と母線とのなす角度θを10°以上かつ30°以下としたとしても、略円錐台形状の芯線保持部12Aの上端面12aにおける厚さである縁幅Lが大きいと、多結晶シリコンの成長に適切とはいえないことが判明した。具体的には、比較例の芯線ホルダ10Xである
図7の(a)において実線で示すように、略円錐台形状の芯線保持部12Xの上端面12aにおける厚さである縁幅Lが大きい場合には、
図7の(b)に示すように、シリコン芯線4Aへの析出初期において、シリコン芯線4Aの根元の多結晶シリコン5の成長不足により、シリコン芯線4Aが倒壊する虞がある。この原因は、本実施の形態のベルジャー型反応炉1では、原料ガスがシリコン芯線4Aの根元に届き難くなるため、シリコン芯線4Aの根元の多結晶シリコン5の析出が遅くなるからである。また、
図7の(c)に示すように、シリコン芯線4Aへの多結晶シリコン5の析出後の冷却時において、上端面12a近傍から熱収縮による応力発生に伴うクラックが発生し、多結晶シリコン5が析出したシリコン芯線4Aが倒壊するという現象が発生し易くなる。
【0033】
そこで、本実施の形態の芯線ホルダ10Aでは、略円錐台形状の芯線保持部12Aの上端面12aにおける厚さである縁幅Lのうちの少なくとも1箇所において3mm以下とした。尚、縁幅Lのうちの少なくとも1箇所とは、下記の箇所をいう。すなわち、
図3の(a)(b)に示すように、本実施の形態の芯線保持部12Aにおいては、1辺の寸法が約8.4mmの正方形断面の芯線挿入穴13Aに対して1辺の寸法が8.0mmの正方形断面のシリコン芯線4Aを挿入し、
図3の(a)(b)(c)に示すように、芯線挿入穴13Aとシリコン芯線4Aとの間に楔7を挿入して該シリコン芯線4Aを固定している。尚、シリコン芯線4Aの固定方法は、必ずしもこれに限らず、芯線保持部12Aの側面に図示しないネジ穴を設け、ネジによってシリコン芯線4Aを押さえることにより固定することも可能である。
【0034】
この結果、本実施の形態では、
図3の(a)に示すように、正方形断面のシリコン芯線4Aが正方形断面の芯線挿入穴13Aの隣接する2辺に接触される。したがって、本実施の形態では、芯線保持部12Aの上端面12aにおける縁幅Lの少なくとも1箇所とは、
図3の(a)に示すように、芯線保持部12Aの上端面12aにおいて、断面正方形の芯線挿入穴13Aの内壁面13aにシリコン芯線4Aが密着している部分と、その密着部分に最も近い外周との間の1箇所の縁幅Lをいう。そして、本実施の形態では、その縁幅Lが3mm以下となっている。ここで、縁幅Lは、3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1mm以下が特に好ましい。
【0035】
これにより、この部分に析出した多結晶シリコン5が早期にシリコン芯線4Aの根元に結合する。すなわち、従来では、シリコン芯線4Aの長手方向の中央側から多結晶シリコン5が析出成長した後、シリコン芯線4Aの根元に徐々に析出し、芯線保持部12Aに密着していたが、本実施の形態では、シリコン芯線4Aの根元への析出及び芯線保持部12Aへの密着が従来よりも早くなる。
【0036】
この結果、シリコン芯線4Aの根元に析出した多結晶シリコン5がシリコン芯線4Aを支えるため、シリコン芯線4Aの破損を防ぐことができる。また、早期にシリコン芯線4Aの根元に多結晶シリコン5が析出するので、細いシリコン芯線4Aへの電流の集中を緩和することができる。このことは、シリコン芯線4Aに対して部分的に電流が集中してシリコン芯線4Aが溶融することがないので、シリコン芯線4Aへの電流を早くから大きくすることができることを意味する。この結果、シリコン芯線4Aへの電流を早期に大きくして、多結晶シリコン5の析出を促進することが可能となる。
【0037】
したがって、シリコン芯線4Aの根元への多結晶シリコン5の析出を向上し、延いてはシリコン芯線4Aの全体への多結晶シリコン5の析出を向上し得る芯線ホルダ10Aを提供することができる。
【0038】
尚、
図3の(a)(b)(c)に示す芯線ホルダ10Aでは、少なくとも1箇所の縁幅L=0.75mmとなっており、
図4の(a)(b)(c)に示す芯線ホルダ10Aでは、少なくとも1箇所の縁幅L=0.47mmとなっている。この結果、両者とも少なくとも1箇所の縁幅Lが3mm以下であることを満たしている。
【0039】
そして、例えば、
図3の(a)(b)(c)に示す芯線ホルダ10Aでは、シリコン芯線4Aの根元において、少なくとも1箇所の縁幅L=0.75mmとなっている側から多結晶シリコン5の析出が起こることを確認している。
【0040】
前述したように、本実施の形態の芯線ホルダ10Aにおける芯線保持部12Aの上端面12aにおける外周と、芯線挿入穴13Aにおけるシリコン芯線4Aが接する内壁面13aとの間の芯線保持部12Aの厚さである縁幅Lは、少なくとも1箇所において3mm以下である。これに対して、少なくとも1箇所の縁幅Lの寸法が3mmを越えた場合には、
図7の(b)(c)において説明したように、シリコン芯線4Aの根元への多結晶シリコン5の成長不足により、多結晶シリコン5を析出したシリコン芯線4Aが倒壊したり、成長した多結晶シリコン5が熱収縮によりクラックが発生したりするという問題が発生する。
【0041】
また、本実施の形態における芯線ホルダ10Aは、芯線保持部12Aの上端面12aから軸線に沿って少なくとも10mmの範囲に亘って、軸線と母線とのなす角度θが10°以上かつ30°以下となっている。
【0042】
すなわち、芯線保持部12Aにおける略円錐台形状の軸線と母線とのなす角度θが10°以上かつ30°以下となる、上端に向けて細く尖った部分は、シリコン芯線4Aが芯線保持部12Aから露出する部分に近い領域でできるだけ長い領域で確保されていることが好ましい。そこで、本実施の形態では、芯線保持部12Aにおいて、軸線と母線とのなす角度θが10°以上かつ30°以下である領域が、芯線保持部12Aの上端面12aから軸線に沿って少なくとも10mmの範囲に亘っている。これにより、芯線保持部12Aのシリコン芯線4Aの根元への原料ガスの流れが良くなり、供給量が増加し、該シリコン芯線4Aの根元での析出が促進され、多結晶シリコン5の析出が早期に安定することが担保される。尚、この構成は、シリコン芯線4Aが芯線保持部12Aの芯線挿入穴13Aにセトされた状態において、特に、芯線ホルダ10Aにおける芯線保持部12Aの上端面12aにおける外周と、芯線挿入穴13Aにおけるシリコン芯線4Aが接する内壁面13aとの間の芯線保持部12Aの厚さである縁幅Lは、少なくとも1箇所において3mm以下である場合において、効果が顕著になる。また、芯線保持部12Aにおいて、軸線と母線とのなす角度θが10°以上かつ30°以下である領域が、芯線保持部12Aの上端面12aから軸線に沿って10mmに満たない場合には、原料ガスの流れを十分に案内できないので、上述した効果が不十分となる。
【0043】
また、本実施の形態におけるシリコン芯線4Aは、上端面12aから芯線挿入穴13Aの底13bまでの範囲に亘って、芯線保持部12Aの外周面12cと、芯線挿入穴13Aの内壁面13aとの間の芯線保持部12Aの最大厚さD1は、30mm以下である。
【0044】
これにより、芯線ホルダ10Aの上端部分が略円錐台形状の軸線と母線とのなす角度θが10°以上かつ30°以下であることを満たし、さらに、上端面12aよりも下方部分である芯線挿入穴13Aの底13bまでの外周面12cの厚さをも30mm以下に薄くすることによって、芯線ホルダ10Aに流れる電流の電流密度が上昇し、芯線ホルダ10A自身が発熱して上端部分を高温に保ち、電極3の冷却機構6による芯線ホルダ10Aの上端部分の冷却を防止することができる。
【0045】
このように、本実施の形態の芯線ホルダ10Aは、ベルジャー型シリコン製造装置におけるベルジャー型反応炉1Aの底盤2に配置された電極3に設けられている。そして、芯線ホルダ10Aは、略円錐台形状を有するカーボン製の芯線保持部12Aを備え、芯線保持部12Aの上端面12aには、挿入されるシリコン芯線4Aを保持する芯線挿入穴13Aが形成されている。また、芯線保持部12Aの略円錐台形状の軸線と母線とのなす角度θは10°以上かつ30°以下であり、かつ芯線保持部12Aの上端面12aにおける外周と、芯線挿入穴13Aにおけるシリコン芯線4Aが接する内壁面13aとの間の芯線保持部12Aの縁幅Lは、少なくとも1箇所において3mm以下である。
【0046】
この結果、芯線保持部12Aにおいて、略円錐台形状の軸線と母線とのなす角度は10°以上かつ30°以下とであるので、芯線保持部12Aが上端に向けて細く尖った形状となり、芯線保持部12Aの根元への原料ガスの流れが良くなり、供給量が増加し、該シリコン芯線4Aの根元での析出が促進され、多結晶シリコン5の析出が早期に安定するようになる。
【0047】
加えて、略円錐台形状の芯線保持部12Aは、上端面12aにおける厚さが少なくとも1箇所における縁幅Lにおいて3mm以下としている。そのため、芯線保持部12Aの上端面12aと析出した多結晶シリコン5との隙間において、原料ガスがシリコン芯線4Aに供給され易くなる。それゆえ、この隙間において、多結晶シリコン5の析出が促進される。これにより、多結晶シリコン5が早期にシリコン芯線4Aの根元に結合してシリコン芯線4Aを支えるため、シリコン芯線4Aの破損を防ぐことができる。また、早期にシリコン芯線4Aの根元にシリコン芯線4Aに多結晶シリコン5が析出するので、早期に電流を大きくして、多結晶シリコン5の析出を促進することができる。
【0048】
したがって、シリコン芯線4Aの根元への多結晶シリコン5の析出を向上し、延いてはシリコン芯線4Aの全体への多結晶シリコン5の析出を向上し得るシリコン芯線4Aを提供することができる。
【0049】
また、本実施の形態におけるシリコン製造装置は、本実施の形態の芯線ホルダ10Aと、電極3とを備えている。これにより、シリコン製造装置においては、ベルジャー型反応炉1Aの底盤2に配置された電極3から、芯線ホルダ10Aにおけるカーボン製の芯線保持部12Aを介して該芯線保持部12Aの芯線挿入穴13Aに立設された芯線ホルダ10Aに電流が印加される。これにより、シリコン芯線4Aが高温度になり、該シリコン芯線4Aに多結晶シリコン5が析出し、成長する。そして、芯線ホルダ10Aは前述の構成を備えている。
【0050】
したがって、シリコン芯線4Aの根元への多結晶シリコン5の析出を向上し、延いてはシリコン芯線4Aの全体への多結晶シリコン5の析出を向上し得る芯線ホルダ10Aを備えたシリコン製造装置を提供することができる。
【0051】
また、本実施の形態におけるシリコン製造装置では、電極3は、内部に冷却機構6としての水冷機構を備えている。
【0052】
これにより、電極3が高温になって、電極3にまで多結晶シリコン5が析出するのを防止することができる。また、電極3が高温になって損傷するのを防止することができる。
【0053】
また、本実施の形態におけるシリコン製造方法は、本実施の形態のシリコン製造装置を用いて多結晶シリコン5を製造する。
【0054】
これにより、シリコン芯線4Aの根元への多結晶シリコン5の析出を向上し、延いてはシリコン芯線4Aの全体への多結晶シリコン5の析出を向上し得る芯線ホルダ10Aを備えたシリコン製造装置を用いて多結晶シリコン5を製造するシリコン製造方法を提供することができる。
【0055】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について
図5及び
図6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
前記実施の形態1のベルジャー型反応炉1Aでは、シリコン芯線4Aの断面形状が正方形となっており、この正方形断面のシリコン芯線4Aに合わせて、芯線ホルダ10Aにおける芯線保持部12Aの芯線挿入穴13Aの断面も正方形となっていた。これに対して、本実施の形態のベルジャー型反応炉1Bでは、シリコン芯線4Bの断面形状が円形となっており、この円形断面のシリコン芯線4Bに合わせて、芯線ホルダ10Bにおける芯線保持部12Bの芯線挿入穴13Bの断面も円形となっている点が異なっている。
【0057】
本実施の形態のベルジャー型反応炉1Bにおける芯線ホルダ10Bの構成について、
図5の(a)(b)(c)に基づいて説明する。
図5の(a)は、本実施の形態における芯線ホルダ10B及び電極3の構成を示す断面図である。
図5の(b)は、芯線ホルダ10Bの構成を示すものであって、
図5の(a)のA−A’線断面図である。
図5の(c)は、芯線ホルダ10Bにおける芯線保持部12Bの上端面12aの構成を示す拡大正面図である。
【0058】
図5の(a)(c)に示すように、本実施の形態の芯線ホルダ10Bは、前記実施の形態1の芯線ホルダ10Aと同様に、下部に形成された基部11と上部に形成された円錐台形状を有する芯線保持部12Bとを備えている。
【0059】
芯線ホルダ10Bの芯線保持部12Bは、
図5の(a)に示すように、先細りの円錐台形状を有しており、円錐台の上端面12aには、シリコン芯線4Bを挿入して保持する芯線挿入穴13Bが形成されている。
【0060】
ここで、本実施の形態のベルジャー型反応炉1Bでは、
図5の(a)(b)に示すように、シリコン芯線4Bの断面形状が円形となっている。この結果、本実施の形態の芯線ホルダ10Bにおける芯線保持部12Bの芯線挿入穴13Bの断面形状も、円形断面のシリコン芯線4Bに合わせて、円形となっている。
【0061】
前記芯線挿入穴13Bには、例えば、直径が5〜12mmの円形断面形状を有するシリコン芯線4Bが挿入されるようになっている。
【0062】
本実施の形態の芯線保持部12Bの円錐台形状は、前記実施の形態1の芯線保持部12Aと同様に、
図5の(a)に示すように、軸線と母線とのなす角度θが10°以上かつ30°以下となっている。実験結果では、軸線と母線とのなす角度θは、11°以上かつ25°以下が好ましく、11°以上かつ16°以下がより好ましく、11°以上かつ15°未満が特に好ましいことが分かっている。例えば、
図6の(a)(b)に示す芯線ホルダ10Bは、角度θ=16°の場合を示している。これにより、芯線保持部12Bが上方に向けて細く尖った形状となり、シリコン芯線4Bの根元への原料ガスの流れが良くなり、原料ガスの供給量が増加し、シリコン芯線4Bの根元での析出が促進され、多結晶シリコン5の析出が早期に安定するようになる。
【0063】
また、本実施の形態の芯線ホルダ10Bにおいては、上端面12aから芯線挿入穴13Bの底13bまでの範囲に亘って、芯線保持部12Bの外周面12cと、芯線挿入穴13Bの内壁面13aとの間の芯線保持部12Bの最大厚さD1は、30mm以下となっている。最大厚さD1は、好ましくは30mm以下であり、より好ましくは20mm以下である。これにより、芯線ホルダ10Bの角度θが10°以上かつ30°以下であることを満たし、さらに、上端面12aよりも下方部分である芯線挿入穴13Bの底13bまでの外周面12cの厚さを30mm以下に薄くすることによって、芯線ホルダ10Bに流れる電流の電流密度が上昇し、芯線ホルダ10B自身が発熱して上端部分を高温に保ち、上端部分の冷却を防止することができる。
【0064】
例えば、
図6の(a)(b)に示す本実施の形態の芯線ホルダ10Bでは、芯線ホルダ10Bにおける10°以上かつ30°以下の角度θ=16°となっており、この角度θ=16°が軸線に沿って円錐台高さh1=64.5mmまで続いている。この結果、円錐台高さh1は少なくとも10mmの範囲に亘っている。また、
図6の(a)(b)に示す芯線ホルダ10Bでは、芯線挿入穴13Bの底13bの内壁面13aと外周面12cとの間の芯線保持部12Bの最大厚さD1は15.8mmであり、最大厚さD1が30mm以下を満たしている。尚、
図6の(a)(b)に示す芯線ホルダ10Bでは、挿入穴高さh2=40mmであり、芯線ホルダ10Bの全体高さh=130mmである。また、芯線ホルダ10Bの直径Dは50mmである。
【0065】
ところで、芯線保持部12Bの形状として、このように、略円錐台形状の軸線と母線とのなす角度θを10°以上かつ30°以下としたとしても、略円錐台形状の芯線保持部12Bの上端面12aにおける厚さである縁幅Lが大きいと、多結晶シリコンの成長に適切とはいえない。
【0066】
そこで、本実施の形態の芯線ホルダ10Bでは、略円錐台形状の芯線保持部12Bの上端面12aにおける厚さである縁幅Lを少なくとも1箇所において3mm以下とした。尚、本実施の形態のベルジャー型反応炉1Bでは、シリコン芯線4Bが断面円形であり、芯線挿入穴13Bの断面も円形である。このため、本実施の形態では、
図5の(b)に示すように、上端面12aにおいて、芯線挿入穴13Bの内壁面13aと外周との間の縁幅Lは外周面12cのいずれにおいても同じ間隔になっている。
【0067】
これにより、この部分に析出した多結晶シリコン5が早期にシリコン芯線4Bの根元に結合する。この結果、析出した多結晶シリコン5がシリコン芯線4Bを支えるため、シリコン芯線4Bの破損を防ぐことができる。また、早期にシリコン芯線4Bの根元に多結晶シリコン5が析出するので、細いシリコン芯線4Bへの電流の集中を緩和することができる。このことは、シリコン芯線4Bに対して部分的に電流が集中することがないので、シリコン芯線4Bへの電流を大きくすることができることを意味する。この結果、シリコン芯線4Bへの電流を早期に大きくして、多結晶シリコン5の析出を促進することが可能となる。
【0068】
したがって、シリコン芯線4Bの根元への多結晶シリコン5の析出を向上し、延いてはシリコン芯線4Bの全体への多結晶シリコン5の析出を向上し得る芯線ホルダ10Bを提供することができる。
【0069】
尚、
図6の(a)(b)(c)に示す芯線ホルダ10Bでは、縁幅L=2.25mmとなっており、この結果、少なくとも1箇所の縁幅Lが3mm以下であることを満たしている。
【0070】
〔まとめ〕
本発明の一態様における芯線ホルダは、上記の課題を解決するために、略円錐台形状を有するカーボン製の芯線保持部を備え、前記芯線保持部の上端面には、挿入されるシリコン芯線を保持する芯線挿入穴が形成されており、前記略円錐台形状の軸線と母線とのなす角度は10°以上かつ30°以下であり、前記芯線保持部の前記上端面における外周と、前記芯線挿入穴における前記シリコン芯線が接する内壁面との間の前記芯線保持部の厚さは、少なくとも1箇所において3mm以下であることを特徴としている。
【0071】
上記の構成によれば、芯線ホルダは、略円錐台形状を有するカーボン製の芯線保持部を備え、芯線保持部の上端面には、挿入されるシリコン芯線を保持する芯線挿入穴が形成されている。このため、ベルジャー型シリコン製造装置の底盤に配置された電極から、カーボン製の芯線保持部を介して該芯線保持部の芯線挿入穴に立設されたシリコン芯線に電流が印加される。これにより、シリコン芯線が高温度になり、該シリコン芯線にシリコンが析出し、成長する。
【0072】
ここで、従来では、芯線ホルダにおける略円錐台形状の軸線と母線とのなす角度は前述したように、35°以上かつ65°以下であった。しかしながら、このような大きい角度にすると、シリコン芯線の根元への原料ガスの流通が抑制され、その結果、シリコン芯線の根元へのシリコンの析出が遅くなり、シリコン芯線の全体のシリコンの析出も遅くなることが判明した。
【0073】
そこで、本発明の一態様では、芯線保持部において、略円錐台形状の軸線と母線とのなす角度は10°以上かつ30°以下とした。これにより、芯線保持部が上端に向けて細く尖った形状となり、シリコン芯線の根元への原料ガスの流れが良くなり、供給量が増加し、該シリコン芯線の根元での析出が促進され、シリコンの析出が早期に安定するようになった。
【0074】
加えて、本発明の一態様においては、略円錐台形状の芯線保持部において、上端面における厚さを少なくとも1箇所において3mm以下としている。そのため、芯線保持部の上端面と析出したシリコンとの間の隙間において、原料ガスがシリコン芯線に供給され易くなる。それゆえ、この隙間において、シリコンの析出が促進される。これにより、この部分に析出したシリコンが早期にシリコン芯線の根元に結合する。この結果、析出したシリコンがシリコン芯線を支えるため、シリコン芯線の破損を防ぐことができる。また、早期にシリコン芯線の根元にシリコンが析出するので、細いシリコン芯線への電流の集中が緩和される。これにより、細いシリコン芯線の根元への電流集中による過剰発熱を抑制し、この部分の溶融によるシリコン芯線倒壊を防止することができる。そのため、早期に電流を大きくし、シリコンの析出を促進することができる。
【0075】
したがって、シリコン芯線の根元へのシリコンの析出を向上し、延いてはシリコン芯線の全体へのシリコンの析出を向上し得る芯線ホルダを提供することができる。
【0076】
本発明の一態様における芯線ホルダは、前記芯線保持部の前記上端面から前記軸線に沿って少なくとも10mmの範囲に亘って、前記軸線と前記母線とのなす角度が10°以上かつ30°以下であることが好ましい。
【0077】
すなわち、芯線保持部における略円錐台形状の軸線と母線とのなす角度は10°以上かつ30°以下となる上端に向けて細く尖った部分は、シリコン芯線が芯線挿入穴から露出する部分に近い領域でできるだけ長い領域で確保されていることが好ましい。具体的には、芯線保持部において、軸線と前記母線とのなす角度は10°以上かつ30°以下である領域が、芯線保持部の上端面から軸線に沿って少なくとも10mmの範囲に亘っていることが好ましい。これにより、シリコン芯線の根元への原料ガスの流れが良くなり、供給量が増加し、該シリコン芯線の根元での析出が促進され、シリコンの析出が早期に安定することが担保される。
【0078】
本発明の一態様における芯線ホルダは、前記上端面から前記芯線挿入穴の底までの範囲に亘って、前記芯線保持部の外周面と、前記芯線挿入穴の壁面との間の前記芯線保持部の最大厚さは、30mm以下であることが好ましい。
【0079】
これにより、芯線ホルダの上端部分が略円錐台形状の軸線と母線とのなす角度が10°以上かつ30°以下であることを満たし、さらに、上端面よりも下方部分である芯線挿入穴の底までの外周面の厚さをも30mm以下に薄くすることによって、芯線ホルダに流れる電流の電流密度が上昇し、芯線ホルダ自身が発熱して、上端部分は高温に保たれる。
【0080】
本発明の一態様におけるシリコン製造装置は、前記芯線ホルダと、電極とを備えていることを特徴としている。
【0081】
これにより、シリコン製造装置においては、ベルジャー型シリコン製造装置の底盤に配置された電極から、芯線ホルダにおけるカーボン製の芯線保持部を介して該芯線保持部の芯線挿入穴に立設されたシリコン芯線に電流が印加される。この結果、シリコン芯線が高温度になり、該シリコン芯線にシリコンが析出し、成長する。
【0082】
そして、芯線ホルダは、芯線保持部の上端面には、挿入されるシリコン芯線を保持する芯線挿入穴が形成されており、略円錐台形状の軸線と母線とのなす角度は10°以上かつ30°以下であり、前記芯線保持部の前記上端面における外周と、前記芯線挿入穴における前記シリコン芯線が接する内壁面との間の前記芯線保持部の厚さは、少なくとも1箇所において3mm以下であるという構成を備えている。
【0083】
したがって、シリコン芯線の根元へのシリコンの析出を向上し、延いてはシリコン芯線の全体へのシリコンの析出を向上し得る芯線ホルダを備えたシリコン製造装置を提供することができる。
【0084】
本発明の一態様におけるシリコン製造装置では、前記電極は、内部に水冷機構を備えている。
【0085】
これにより、電極が高温になって、電極にまでシリコンが析出するのを防止することができる。また、電極が高温になって損傷するのを防止することができる。
【0086】
本発明の一態様におけるシリコン製造方法は、前記シリコン製造装置を用いてシリコンを製造することを特徴としている。
【0087】
これにより、シリコン芯線の根元へのシリコンの析出を向上し、延いてはシリコン芯線の全体へのシリコンの析出を向上し得る芯線ホルダを備えたシリコン製造装置を用いてシリコンを製造するシリコン製造方法を提供することができる。
【0088】
尚、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【0089】
〔実施例〕
本実施の形態の芯線ホルダ10A・10Bについて、略円錐台形状の軸線と母線とのなす角度θとして、11°及び25°とした場合の効果について検証実験を行った。検証実験においては、芯線ホルダ10A・10Bにシリコン芯線4A・4Bを立てて、電流を徐々に上昇させる運転において、電流を安定して300Aまで上げられる限界時間を測定した。この限界時間は、これより早く電流を上昇させると、シリコン芯線4A・4Bが溶融して倒壊する時間である。したがって、限界時間が短い方が、300Aの電流を早く流すようにすることができ、その後の多結晶シリコン5の析出が早いことを示している。
【0090】
検証実験の結果を、比較例と共に、表1に示す。
【0091】
この表1から分かるように、本実施の形態の芯線ホルダ10A・10Bにおいて角度θを10°以上かつ30°以下とし、かつ芯線保持部12A・12Bの上端面12aにおける外周と芯線挿入穴13Aにおけるシリコン芯線4A・4Bが接する内壁面13aとの間の芯線保持部12A・12Bの厚さである縁幅Lを、少なくとも1箇所において3mm以下とした実施例1〜4においては、電流を安定して300Aまで上げられる限界時間が20時間以内であった。
【0092】
一方、角度θ=10°以上かつ30°以下と、少なくとも1箇所の縁幅Lが3mm以下との2つの条件のうちいずれか一方を満たさない比較例1〜4においては、電流を安定して300Aまで上げられる限界時間が25時間以上であった。
【0093】
この結果、角度θ=10°以上かつ30°以下と、少なくとも1箇所の縁幅Lが3mm以下との2つの条件を満たした場合には、電流を安定して300Aまで上げられる限界時間が短くなり、多結晶シリコン5を安定して早く析出できることが確認できた。