特許第6843344号(P6843344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843344
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】表面粗さ測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/28 20060101AFI20210308BHJP
   G01B 21/30 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   G01B5/28 102
   G01B21/30 102
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-29232(P2017-29232)
(22)【出願日】2017年2月20日
(65)【公開番号】特開2018-136149(P2018-136149A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】榎本 雅人
【審査官】 仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−310527(JP,A)
【文献】 特開昭59−168304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00−5/30
G01B 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの表面に接触されて前記ワークの表面粗さを測定する表面粗さ測定手段と、
前記表面粗さ測定手段とは別体で構成され、前記ワークの表面に接触されて前記ワークの振動を測定する振動測定手段と、
前記表面粗さ測定手段によって測定された表面粗さデータ、及び前記振動測定手段によって測定された振動データを取得して、前記表面粗さデータから前記振動データを除去した測定データを生成する測定データ生成手段と、
を備え
前記測定データ生成手段は、前記表面粗さデータと前記振動データとに相関があるか否かを判断し、相関があると判断した場合には、前記表面粗さデータから前記振動データを除去した測定データを生成する判断部を有する、
表面粗さ測定システム。
【請求項2】
前記振動測定手段は、前記表面粗さ測定手段による前記ワークの表面粗さの測定と同時に、前記ワークの振動を測定する、
請求項1に記載の表面粗さ測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面粗さ測定システムに係り、特にワークの表面粗さを測定する表面粗さ測定機を備えた表面粗さ測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表面粗さ測定機の一例が開示されている。表面粗さ測定機は、テーブルと、テーブルにZ(鉛直)方向に立設されたコラムと、コラムに設けられたX方向(水平方向)駆動部と、を備えている。また、表面粗さ測定機は、触針と、触針のZ方向の変位を測定する変位検出器とを備え、この変位検出器がX方向駆動部によってX方向に移動される。また、X方向駆動部には、変位検出器のX方向の移動量を測定するスケール又はエンコーダが内蔵されている。
【0003】
特許文献1の表面粗さ測定機によれば、ワークの表面に触針を接触させ、この状態で変位検出器をX方向駆動部によってX方向に移動させると、X方向の一定ピッチにおける触針のZ方向の変位量が測定されて、ワークの測定データが得られる。この測定データをデータ処理部によって演算処理することにより、ワークの表面粗さがサブミクロンオーダーで測定される。
【0004】
このような、表面粗さ測定機による表面粗さ測定においては、ワークに伝達される外乱振動を除去するために、表面粗さ測定機を除振台に搭載した状態でワークの表面粗さを測定することが好ましい。
【0005】
除振台として、空気ばねを使用した除振台が特許文献2に開示されている。この除振台は、測定機器が搭載される搭載盤を有し、この搭載盤が複数の空気ばねによって基台に支持されている。特許文献2の除振台は、基台が設置面から受けた振動を、空気ばねによって除振する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−300823号公報
【特許文献2】特許第4235246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、サブミクロンオーダーの測定能力を有する表面粗さ測定機では、ワークに生じている振動が微小なものであっても、測定した表面粗さデータに振動の成分(振動データ)が加わるので、正確な測定結果が得られないという問題がある。
【0008】
このような問題を解消するには、例えば特許文献2のような除振台に表面粗さ測定機を搭載し、ワークに伝達する振動をワークに伝達する前に除去することが考えられる。しかしながら、全ての振動を除振台によって完全に除去することは困難であり、除去できない微小な振動成分が表面粗さデータに加わるので、除振台による測定精度の向上には限界があるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ワークに伝達している振動の影響を受けることなく、正確な測定結果を得ることができる表面粗さ測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的を達成するために、本発明の表面粗さ測定システムは、ワークの表面に接触されてワークの表面粗さを測定する表面粗さ測定手段と、表面粗さ測定手段とは別体で構成され、ワークの表面に接触されてワークの振動を測定する振動測定手段と、表面粗さ測定手段によって測定された表面粗さデータ、及び振動測定手段によって測定された振動データを取得して、表面粗さデータから振動データを除去した測定データを生成する測定データ生成手段と、を備える。
【0011】
本発明によれば、ワークの表面粗さを測定する表面粗さ測定手段の他、ワークの振動を測定する振動測定手段を備えており、表面粗さ測定手段によって測定された表面粗さデータから、振動測定手段によって測定された振動データを除去し、これによって生成されたデータを測定データとして使用する。これにより、本発明によれば、ワークに伝達している振動の影響を受けることなく、正確な測定結果を得ることができる。
【0012】
本発明の一態様は、振動測定手段は、表面粗さ測定手段によるワークの表面粗さの測定と同時に、ワークの振動を測定することが好ましい。
【0013】
本発明の一態様によれば、振動測定手段は、表面粗さ測定手段によるワークの表面粗さの測定と同時に、ワークの振動を測定するので、より正確な測定データを生成することができる。
【0014】
本発明の一態様は、測定データ生成手段は、表面粗さデータと振動データとに相関があるか否かを判断し、相関があると判断した場合には、表面粗さデータから振動データを除去した測定データを生成する判断部を有することが好ましい。
【0015】
本発明の一態様によれば、測定データを生成するための必要とする振動データを得ることができるので、より正確な測定結果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ワークに伝達している振動の影響を受けることなく、正確な測定結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の表面粗さ測定システムの全体構成を示す説明図
図2】データ処理部の構造を示したブロック図
図3】第1実施形態の表面粗さ測定システムの動作を説明するフローチャート
図4】(A)は表面粗さデータの波形図、(B)は振動データの波形図、(C)は表面粗さデータから振動データを除去した測定データの波形図
図5】フーリエ変換処理及びフーリエ逆変換処理の一例を示す説明図
図6】相関係数の具体的な算出方法を説明したフローチャート
図7】第1実施形態に係る表面粗さ測定システムの第1変形例を示した全体構成図
図8】第1実施形態に係る表面粗さ測定システムの第2変形例を示した全体構成図
図9】第2実施形態に係る表面粗さ測定システムの全体構成図
図10】第3実施形態に係る表面粗さ測定システムの全体構成図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明に係る表面粗さ測定システムについて説明する。
【0019】
図1は、第1実施形態の表面粗さ測定システム10の全体構成を示す概略説明図である。
【0020】
第1実施形態の表面粗さ測定システム10は、ワークWの表面に接触されてワークWの表面粗さを測定する駆動部(表面粗さ測定手段)12と、駆動部12とは別体で構成され、ワークWの表面に接触されてワークWの振動を測定する駆動部(振動測定手段)14と、駆動部12によって測定された表面粗さデータ、及び駆動部14によって測定された振動データを取得して、表面粗さデータから振動データを除去した測定データを生成するデータ処理部(測定データ生成手段)16と、から構成される。
【0021】
駆動部12は、現場に持ち込んで使用する可搬型の表面粗さ測定機(例えば、株式会社東京精密製の「SURFCOM130A」)である。この駆動部12は、Z方向(鉛直方向)に立設されたコラム28Aに対し、Z方向に移動自在に設けられる。このコラム28Aは、ワークWが載置されるテーブル30に対し独立して設けられており、ワークWに振動を与えている振動源(不図示)から遮断された位置又は部材に設けられている。なお、コラム28Aをテーブル30に立設してもよい。
【0022】
駆動部12の構成は周知であるが、ワークWの表面に接触される触針18と、触針18のZ方向の変位を測定する変位検出器20と、触針18とともに変位検出器20をX方向(水平方向)に移動するX方向駆動部22と、を備えている。また、X方向駆動部22には、変位検出器20のX方向の移動量、すなわち、触針18のX方向の移動量を測定するスケール(不図示)が内蔵されている。
【0023】
駆動部12によれば、ワークWの表面の測定位置aに触針18を接触させて、触針18をワークWの表面に沿って移動させる。具体的には、変位検出器20をX方向駆動部22によってX方向に移動させる。これにより、駆動部12によって、触針18をX方向に移動させたときの触針18のZ方向の変位量が、触針18のX方向の移動量(位置情報)とともに測定される。
【0024】
駆動部12によって測定された触針18のZ方向の変位量と触針18のX方向の移動量は、表面粗さの測定データ(以下、表面粗さデータと言う。)として、ケーブル24による有線伝送によりデータ処理部16に取得され、データ処理部16のA/D変換器26(図2参照)によってディジタル形式の信号に変換される。
【0025】
一方、駆動部14は、Z方向に立設されたコラム28Bに対し、Z方向に移動自在に設けられる。このコラム28Bは、コラム28Aと同様にワークWが載置されるテーブル30に対し独立して設けられており、ワークWに振動を与えている振動源(不図示)から遮断された位置又は部材に設けられている。なお、コラム28Bをテーブル30に立設してもよい。
【0026】
駆動部14は、駆動部12と同様に、ワークWの表面に接触される触針32と、触針32のZ方向(鉛直方向)の変位を測定する変位検出器34と、を備えている。この駆動部14によれば、ワークWの表面の測定位置bに触針32を接触させて、ワークWの振動に起因する触針18のZ方向の変位量を変位検出器34によって測定する。なお、駆動部14は、後述するように表面粗さ測定機として併用される場合があるため、駆動部12と同様に、変位検出器34をX方向に移動するX方向駆動部36を有している。このX方向駆動部36には、変位検出器34のX方向の移動量、すなわち、触針32のX方向の移動量を測定するスケール(不図示)が内蔵されている。
【0027】
駆動部14によって測定された触針32のZ方向の変位量は、ワークWの振動データとして、駆動部14に内蔵されたA/D変換器38(図2参照)によってディジタル形式の信号に変換される。この信号は、無線伝送によりデータ処理部16に取得される。
【0028】
図2は、データ処理部16の構造を示した概略ブロック図である。
【0029】
データ処理部16は、前述したA/D変換器26を有する。このA/D変換器26は、駆動部12で測定された表面粗さデータを所定のサンプリング周期でディジタル形式の信号へ変換する。また、駆動部14のA/D変換器38は、駆動部14で測定された振動データを所定のサンプリング周期でディジタル形式の信号へ変換する。
【0030】
データ処理部16は、信号処理部46を有し、信号処理部46は、高速フーリエ変換器(Fast Fourier Transform:FFT)40と、振動成分除去部42と、高速フーリエ逆変換器(Inverse Fast Fourier Transform :IFFT)44と、を有する。なお、信号処理部46に代えてソフトウェアを用いてもよい。
【0031】
高速フーリエ変換器40は、A/D変換器26、38が逐次出力する信号列にフーリエ変換処理を施して、時間領域信号を周波数領域信号に変換する。
【0032】
振動成分除去部42は、高速フーリエ変換器40によって変換された表面粗さデータと振動データの周波数領域信号を取得し、表面粗さデータの周波数成分から、振動データの周波数成分を除去する。
【0033】
高速フーリエ逆変換器44は、振動成分除去部42の出力信号(表面粗さデータの周波数成分から、振動データの周波数成分を除去した信号)にフーリエ逆変換処理を施して、周波数領域信号を時間領域信号へ変換する。
【0034】
信号処理部46は、高速フーリエ逆変換器44によって変換された時間領域信号に基づき、触針18の変位信号列が示す各時刻における触針18の変位量と、それぞれの時刻における触針18の移動量(位置情報)とを対応付けて、ワークWの測定データを生成する。そして、信号処理部46は、この測定データに基づき、周知の粗さ解析ソフトウェア48を用いてワークWの粗さを算出し、その粗さ解析結果をデータ処理部16のディスプレイ50とプリンタ52に出力する。
【0035】
図3は、第1実施形態の表面粗さ測定システム10の動作を説明するフローチャートである。
【0036】
図3に示すように、ステップS1において、駆動部12の触針18をワークWの測定位置aに接触させ、駆動部14の触針32をワークWの測定位置bに接触させる(図1参照)。
【0037】
ステップS2において、駆動部12と駆動部14を同時に駆動する。これにより、駆動部12によって、触針18をX方向に移動させたときの触針18のZ方向の変位量が、触針18のX方向の移動量とともに測定される。そして、駆動部12によって測定された触針18のZ方向の変位量、及び触針18のX方向の移動量は、表面粗さデータとしてデータ処理部16に取得され、A/D変換器26によってディジタル形式の信号に変換される。
【0038】
図4(A)は、表面粗さデータの波形の一例が示されている。この表面粗さデータには、ワークWに生じている振動成分(振動データ)が重畳されているため、図4(A)の表面粗さデータに基づいて演算処理を実行した場合には、表面粗さの正確な測定結果を得ることができない。
【0039】
そこで、第1実施形態の表面粗さ測定システム10では、図1の如く、ワークWの表面粗さを測定する駆動部12の他に、ワークWの振動を個別に測定する駆動部14を備えている。
【0040】
駆動部14は、駆動部12と同時に駆動されて、触針32のZ方向の変位量を測定する。すなわち、駆動部14は、駆動部12によるワークWの表面粗さの測定と同時に、ワークWの振動を測定する。そして、駆動部12によって測定された触針32のZ方向の変位量は、振動データとして駆動部14のA/D変換器38によってディジタル形式の信号に変換されたのち、データ処理部16に取得される。図4(B)は、振動データの波形の一例が示されている。
【0041】
図3に戻り、ステップS3において、A/D変換器26が逐次出力する信号列と、A/D変換器38が逐次出力する信号列とに、高速フーリエ変換器40がフーリエ変換処理を施して、時間領域信号を周波数領域信号に変換する。なお、図5には、(A)で示す時間領域信号を、(B)で示す周波数領域信号に変換するフーリエ変換処理の一例が示されている。
【0042】
図3に戻り、ステップS4において、高速フーリエ変換器40によって変換された表面粗さデータの周波数領域信号から振動データの周波数領域信号を、振動成分除去部42によって除去する。図4(C)には、(A)で示した表面粗さデータから(B)で示した振動データを除去した測定データの波形が示されている。
【0043】
図3に戻り、ステップS5において、振動成分除去部42の出力信号に高速フーリエ逆変換器44がフーリエ逆変換処理を施して、周波数領域信号を時間領域信号へ変換する。なお、図5には、(B)で示した周波数領域信号を、(A)で示した時間領域信号に変換するフーリエ逆変換処理の一例が示されている。
【0044】
図3に戻り、ステップS6において、フーリエ逆変換処理を施したディジタル変位信号に基づいて、信号処理部46が測定データを生成する。この測定データは、表面粗さデータから振動データが除去されたデータである。
【0045】
ステップS7において、データ処理部16が、測定データに基づき、周知の粗さ解析ソフトウェア48を用いてワークWの粗さを算出し、その粗さ解析結果をディスプレイ50とプリンタ52に出力する。
【0046】
このように第1実施形態の表面粗さ測定システム10によれば、ワークWの粗さを測定する駆動部12の他に、ワークWの振動を測定する駆動部14を備え、駆動部12によって測定された表面粗さデータから、駆動部14によって測定された振動データを除去する処理を行うので、ワークWに伝達している振動の影響を受けることなく、正確な測定結果を得ることができる。
【0047】
なお、第1実施形態の表面粗さ測定システム10では、使用形態の変形例として、駆動部12を振動測定手段として使用し、駆動部14を表面粗さ測定手段として使用することもできる。
【0048】
これにより、測定位置bを起点とする粗さ測定を駆動部14によって実施することができ、測定位置aでのワークWの振動を駆動部12によって測定することができる。つまり、駆動部12を振動測定手段として使用し、駆動部14を表面粗さ測定手段として使用することにより、測定位置a、bの2か所において、粗さ測定と振動測定の交互の測定が可能となる。
【0049】
また、第1実施形態では、駆動部12とデータ処理部16とを有線によって接続し、駆動部14とデータ処理部16とを無線によって接続したが、これに限定されるものではない。例えば、駆動部12とデータ処理部16とを無線によって接続し、駆動部14とデータ処理部16とを有線によって接続してもよい。また、駆動部12、14とデータ処理部16とを無線によって接続してもよいし、駆動部12、14とデータ処理部16とを有線によって接続してもよい。駆動部12とデータ処理部16とを無線によって接続する場合には、駆動部12側にA/D変換器26を内蔵させる。
【0050】
また、第1実施形態では、表面粗さ測定機と構成が同一である駆動部14によってワークWの振動を測定したが、表面粗さ測定機である駆動部14に代えて、ワークWの振動を測定することが可能な加速度センサ等の専用の振動検出センサを適用してもよい。
【0051】
また、第1実施形態では、2本のコラム28A、28Bを立設したが、1本のコラムに駆動部12、14をZ方向に移動自在に設けてもよい。
【0052】
ところで、第1実施形態の表面粗さ測定システム10では、表面粗さデータから振動データを除去して測定データを得ている。この場合、表面粗さデータに対して関連性のない振動データを、表面粗さデータから除去してしまうと正確な測定結果を得ることができなくなる。このような問題は、測定位置a、bの間の距離が大きくなるに従って顕著に発生すると考えられる。
【0053】
そこで、第2実施形態の表面粗さ測定システムでは、表面粗さデータと振動データとに相関があるか否かをデータ処理部16が判断し、相関があると判断した場合には、表面粗さデータから振動データを除去した測定データを生成する。
【0054】
表面粗さデータと振動データとに相関があるか否かを判断するために、データ処理部16は、振動成分除去部42に演算部(判断部)43(図2参照)を備えている。この演算部43は、表面粗さデータと振動データとに基づいて相関係数(ρ)を算出する。そして、信号処理部(判断部)46は、演算部43にて算出された相関係数(ρ)が所定値(0.4〜0.7:本例では0.5)よりも高い場合に、表面粗さデータと振動データとが関連付けされているとみなして、表面粗さデータから振動データを除去した測定データを生成する。つまり、信号処理部46は、高速フーリエ変換器40で変換された周波数領域において、振動データの有効周波数に相関係数を乗じた成分を、表面粗さデータから除去する処理を行う。
【0055】
図6は、演算部43による相関係数(ρ)の具体的な算出方法を説明したフローチャートである。
【0056】
図6によれば、ステップS10において、高速フーリエ変換器40で処理された表面粗さデータの解析データA(周波数及び振幅)と振動データの解析データB(周波数及び振幅)とに基づき、下記の〔数1〕により演算部43が相関係数(ρ)を算出する。この算出式は、解析データA、Bの振幅値の数列で相関係数(ρ)を算出するものである。
【数1】

x:解析データAの振幅値
y:解析データBの振幅値
【0057】
ステップS11において、算出された相関係数(ρ)が0.5以上の場合は、相関が高いとみなして処理を継続する。
【0058】
ステップS12において、下記の〔数2〕により係数kを求める。
[数2]
k=C/D
C:解析データAの振幅値のうち一番大きな振幅値
D:解析データAで一番大きい振幅値となる周波数での解析データBの振幅値
【0059】
ステップS13において、算出された全ての周波数成分を有効周波数として使用する。この場合、各周波数成分において、下記の〔数3〕の計算を行う。
[数3]
Ci=Ai−kBi
Ai:解析データAの各周波数成分
Bi:解析データBの各周波数成分
Ci:表面粗さデータから必要な振動データが除去された測定データ
【0060】
以上の処理を行うことにより、駆動部12にて測定された表面粗さデータから、必要な振動データを除去した測定データを生成することができる。これによって、より正確な測定結果を得ることができる。
【0061】
なお、算出された相関係数(ρ)が0.5未満の場合は、相関がないとみなして、駆動部12にて測定された表面粗さデータのみを用いて演算処理を実施したり、再測定を実施したりする。
【0062】
図7は、第1実施形態に係る表面粗さ測定システム10の第1変形例である表面粗さ測定システム60を示した全体構成図である。なお、表面粗さ測定システム60を説明するに当たり、図1に示した表面粗さ測定システム10と同一若しくは類似の部材については、その説明を省略する。
【0063】
図1に示した表面粗さ測定システム10に対する、図7の表面粗さ測定システム60の相違点は、駆動部12を振動測定手段として使用し、駆動部14を表面粗さ測定手段として使用した点にある。
【0064】
図7の表面粗さ測定システム60によれば、駆動部12によって測定された触針18のZ方向の変位量が、振動データとしてデータ処理部16に取得される。また、駆動部14によって、触針32をX方向に移動させたときの触針32のZ方向の変位量が、触針32のX方向の移動量とともに測定される。そして、駆動部14によって測定された触針32のZ方向の変位量及び触針32のX方向の移動量が、表面粗さデータとしてデータ処理部16に取得される。
【0065】
図7の表面粗さ測定システム60は、駆動部14によって測定された表面粗さデータ、及び駆動部12によって測定された振動データをデータ処理部16が取得して、表面粗さデータから振動データを除去した測定データを生成する。
【0066】
表面粗さ測定システム60によれば、測定位置bを起点とする粗さ測定を駆動部14によって実施することができ、測定位置aでのワークWの振動を駆動部12によって測定することができる。
【0067】
図8は、第1実施形態に係る表面粗さ測定システム10の第2変形例である表面粗さ測定システム70を示した全体構成図である。なお、表面粗さ測定システム70を説明するに当たり、図1に示した表面粗さ測定システム10と同一若しくは類似の部材については、その説明を省略する。
【0068】
図1に示した表面粗さ測定システム10に対する、図8の表面粗さ測定システム70の相違点は、駆動部12に代えて、駆動部14と同一の機能を有する駆動部14Aをコラム28Aに取り付けた点と、駆動部14によってワークWの表面粗さを測定し、駆動部14AによってワークWの振動を測定した点にある。
【0069】
図8の表面粗さ測定システム70は、駆動部14によって測定された表面粗さデータ、及び駆動部14Aによって測定された振動データを無線によりデータ処理部16が取得して、表面粗さデータから振動データを除去した測定データを生成する。
【0070】
表面粗さ測定システム70によれば、測定位置bを起点とする粗さ測定を駆動部14によって実施することができ、測定位置aでのワークWの振動を駆動部14Aによって測定することができる。
【0071】
図9は、第3実施形態に係る表面粗さ測定システム80の全体構成図である。なお、表面粗さ測定システム80を説明するに当たり、図1に示した表面粗さ測定システム10と同一若しくは類似の部材については、その説明を省略する。
【0072】
図1に示した表面粗さ測定システム10に対する、図9の表面粗さ測定システム80の相違点は、駆動部12をワークWの表面に直接載置した点と、駆動部14に代えて、振動センサ82をコラム28Bに取り付けた点にある。
【0073】
振動センサ82は、ワークWの表面に接触させる触針84と、触針84のZ方向の変位を測定する変位検出器86を有する。振動センサ82は、駆動部12と同時に駆動されて、触針84のZ方向の変位量を測定する。そして、振動センサ82によって測定された触針84のZ方向の変位量は、振動データとして振動センサ82に内蔵されたA/D変換器(不図示)によってディジタル形式の信号に変換される。この信号は、無線伝送によりデータ処理部16に取得される。
【0074】
表面粗さ測定システム80は、駆動部12によって測定された表面粗さデータ、及び振動センサ82によって測定された振動データをデータ処理部16が取得して、表面粗さデータから振動データを除去した測定データを生成する。
【0075】
表面粗さ測定システム80によれば、測定位置aを起点とする粗さ測定を駆動部12によって実施することができ、測定位置bでのワークWの振動を振動センサ82によって測定することができる。
【0076】
図10は、第4実施形態に係る表面粗さ測定システム90の全体構成図である。なお、表面粗さ測定システム90を説明するに当たり、図1に示した表面粗さ測定システム10と同一若しくは類似の部材については、その説明を省略する。
【0077】
図1に示した表面粗さ測定システム10に対する、図10の表面粗さ測定システム90の相違点は、駆動部14と図9に示した振動センサ82とをワークWの表面に直接載置した点にある。
【0078】
表面粗さ測定システム90は、駆動部14によって測定された表面粗さデータ、及び振動センサ82によって測定された振動データをデータ処理部16が取得して、表面粗さデータから振動データを除去した測定データを生成する。
【0079】
表面粗さ測定システム90によれば、測定位置aを起点とする粗さ測定を駆動部14によって実施することができ、測定位置bでのワークWの振動を振動センサ82によって測定することができる。
【0080】
第1乃至第4実施形態を例示して説明したように、本発明の表面粗さ測定システムは、ワークの表面粗さを測定する表面粗さ測定手段と、表面粗さ測定手段とは別体で構成されてワークの振動を測定する振動測定手段を備えている。そして、本発明の表面粗さ測定システムは、表面粗さ測定手段によって測定された表面粗さデータ、及び振動測定手段によって測定された振動データを取得して、表面粗さデータから振動データを除去した測定データを生成する測定データ生成手段を備えている。
【0081】
本発明の測定データ生成手段は、取得した表面粗さデータと振動データとに基づいて測定データを生成するので、正確な測定データを生成することができる。また、振動測定手段は、表面粗さ測定手段によるワークの表面粗さの測定と同時に、ワークの振動を測定するので、同時ではなく時間差をもって測定した表面粗さデータと振動データとに基づいて測定データを生成する場合と比較して、より正確な測定データを生成することができる。
【符号の説明】
【0082】
10…表面粗さ測定システム、12…駆動部、14…駆動部、14A…駆動部、16…データ処理部、18…触針、20…変位検出器、22…X方向駆動部、24…ケーブル、26…A/D変換器、28A…コラム、28B…コラム、30…テーブル、32…触針、34…変位検出器、36…X方向駆動部、38…A/D変換器、40…高速フーリエ変換器、42…振動成分除去部、43…演算部、44…高速フーリエ逆変換器、46…信号処理部、48…粗さ解析ソフトウェア、50…ディスプレイ、52…プリンタ、60…表面粗さ測定システム、70…表面粗さ測定システム、80…表面粗さ測定システム、82…振動センサ、84…触針、86…変位検出器、90…表面粗さ測定システム
図1
図2
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図6
図7
図8
図9
図10