(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車や携帯電話などのモバイルバッテリー、スマートシティ市場など幅広い用途において、非水電解液蓄電デバイスが用いられており、その用途の広まりとともに、非水電解液蓄電デバイスには高いエネルギー密度が求められている。
【0003】
従来、アニオンおよびカチオンの両方を蓄電に利用する非水電解液蓄電デバイス(デュアルイオン電池)として、イオンの静電的な吸着により生じる電気二重層を利用した電気二重層キャパシタ(EDLC)や、正極活物質に活性炭、負極活物質にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素材を用い、予め負極板にリチウムイオンが吸蔵またはドープされているリチウムイオンキャパシタ(LIC)、正負極に炭素材料を用い、充電時に非水電解液中のアニオンが正極へ挿入、カチオンが負極へ挿入し、放電時には各々の電極内から非水電解液中にアニオンとカチオンが脱離するデュアルカーボン電池(DCB)などが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、CuKα線を用いた粉末X腺回折パターンにおいて2θ=22.3°における回折ピーク強度と2θ=26.4°における回折ピーク強度の比が0.4以下である炭素質材料を含む正極を用いることで、リチウムを参照電極として正極の充電終止電圧を表した場合に5.3〜5.6Vまで充電でき、高容量で高電圧でも安定動作できる二次電池が得られることが開示されている。
また、特許文献2には、正極活物質として、X腺回折法による(002)面の面間隔d(002)が0.340nm以上0.360nm以下であり、比表面積が1m
2/gより大きく30m
2/gより小さい炭素材料、すなわち、一定の層間距離を持つ炭素材料を含む正極を用いることで、アニオンが挿入脱離しやすく、低抵抗となり、正極活物質あたりの放電容量が高く、高電流充放電特性に優れ、充放電効率が高い非水電解液蓄電素子が得られることが開示されている。
【0005】
ところで、上記のような非水電解液蓄電デバイスでは、充放電に伴って電解液中のイオン量が増減する。EDLCやLICは、放電容量が小さいため電解液中のイオン量の増減が電池性能に与える影響は小さい一方、DCBは比較的容量が大きいため電解液中のイオン量の増減も大きく、場合によってはイオン不足により充電不能となることもある。また、DCBは、正極電位4.5V(vs.Li/Li+)以上でアニオンの挿入が開始されるが、この充電反応に伴って活物質が著しく膨張するため電極合材層内の空隙が増加して保液量が変化する。イオン不足に対しては、一般的に電解質塩濃度を高める、セパレータの厚みや空隙率を調整して保液量を増加させるといった対策が行われるが、この場合、イオンの移動がしにくくなり、抵抗が高くなるという問題がある。
【0006】
さらに、一般的に電極へのイオンの挿入脱離を伴う非水電解液蓄電デバイスでは、電解液添加剤等を用いて電極と電解液の界面に不導体被膜(SEI被膜)の形成が行われている。例えば、リチウム塩を電解質塩として用いるリチウムイオン電池やリチウムイオンキャパシタでは、ビニレンカーボネートやフルオロエチレンカーボネートを電解液中に添加することで良質なSEI被膜を形成し、リチウムイオンの挿入脱離可逆性や耐久性が向上することが知られている。
しかし、正極に炭素材料を用い、アニオンが挿入脱離するDCBのような電池は、正極電位4.5V(vs.Li/Li+)以上という非常に高い電位で充放電を行うことから、通常用いられる添加剤が正極表面において酸化分解されるために使用できず、負極表面へのSEI被膜形成が不十分となる結果、抵抗が高く、耐久性も低くなるという問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る二次電池は、正極集電体とその上に形成された正極合材層とを含む正極と、負極集電体とその上に形成された負極合材層とを含む負極と、正極および負極を隔離するセパレータと、アニオンおよびカチオンを含む電解液とを備え、正極合材層が、アニオンを吸蔵または放出可能な炭素材料を正極活物質として含み、負極合材層が、カチオンを吸蔵または放出可能な材料を負極活物質として含み、リチウム金属を基準とした正極の電位が5.0V以上となる初回充電を行い、下記式1で定義される充足率が150〜230%、好ましくは150〜200%、より好ましくは155〜190%であり、上記初回充電後において正負電極対向面内に保持される電解液中のイオン量の内、正極合材層および負極合材層内に保持されるイオン量の比率が、60%以上であることを特徴とする。
【0015】
すなわち、本発明では、あらかじめ余剰の電解液をセル内に保持した状態で行われるリチウム金属を基準とした正極の電位が5.0V以上となる初回充電において、正極活物質が膨張することにより正極合材層内部の空隙が増加し、充電前に保持していたよりも多くの電解液を電極合材層内に吸収することで、正極活物質の理論的な可逆容量から算出される吸蔵イオン量に対して150〜250%のイオン量を正負電極対向面内に保持させることができ、またそれにより正極活物質が均一に充電され、正極活物質重量あたり60mAh/gを超える放電容量を得ることができる。
特に、この電極膨張後の保持イオン量の内、60%以上、より一層好ましくは70%以上を正負電極内に保持することで、低抵抗を維持しつつより高い放電容量を得ることができる。
本発明において、正負電極対向面内に保持するイオン量の調整は、主として正極合材層厚み・密度および正極活物質組成を適宜調整して行い、さらに補助的にセパレータの厚み・空隙率、電解液濃度などにより適宜調整することもできる。
また、正負極合材層内とセパレータ内の保持イオン量の比率は、それぞれの空隙体積比に相当する。
【0016】
イオン充足率について詳しく説明する。
「正負電極対向面内に保持される電解液中のイオン量」とは、対向する1対の正負電極内および正負電極間に設置されるセパレータ内の総空隙内に保持される電解液中のイオン量を指す。空隙体積は、下記式2より、まず正負電極合材層およびセパレータの空隙率を算出し、さらに空隙率に見掛け体積を乗じて求められる。真密度は、材料の比重が既知である場合はその比重を用いればよく、未知の場合はピクノメーター法により測定される真密度を用いればよい。見掛け密度および見掛け体積は、正負合材層およびセパレータそれぞれの寸法と質量を測定して算出すればよい。このとき、正負電極合材層の見掛け体積および見掛け密度は、上記初回充電による電極膨張後の寸法から算出する。
【0018】
「正極活物質が可逆的に吸蔵できるイオン量」は、下記式3より算出される。一般に、炭素材料へのアニオンインターカレーションにおける理論容量は、炭素材料の結晶性とアニオン種の組み合わせや、電池の充電電圧によって異なる。本発明においては、セル電圧が5.0Vの充電において、電解質塩として一般的な六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)のPF
6アニオンが、下記式4に示すとおり、炭素原子32モルに対して1モルの比率で吸蔵されると仮定し、正極活物質の理論容量を算出した。
【0020】
32C + PF
6- → (PF
6)C
32 + e
- (式4)
【0021】
正極活物質の理論容量は、次のとおり算出できる。
1モルのPF
6アニオンを吸蔵する際の電気量は、ファラデー定数より26.8Ahとなる。これを炭素原子32モルの原子量で除して70mAh/gが得られる。
【0022】
本発明において、電解液は、溶媒、並びに上記アニオンおよびカチオンを有する電解質塩を含んで構成される。
電解液に用いる溶媒は、非水溶媒であれば特に制限はないが、非プロトン性溶媒が好ましい。
非プロトン性溶媒としては、電解質塩の溶解性が高く、電位窓が広く、電気伝導性が高く、比誘電率が高く、粘性が低い溶媒が好ましく、特に、これらの特性を有する複数の非水溶媒を混合して用いることが好ましい。
【0023】
非水溶媒としては、炭酸エステル結合を有する鎖状炭酸エステルや環状炭酸エステル等のカーボネート系有機溶媒を含むものが好ましい。
鎖状炭酸エステルの具体例としては、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(TFEC)等が挙げられる。
環状炭酸エステルの具体例としては、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ブチレン(BC)、炭酸フルオロエチレン(FEC)、炭酸ビニレン(VC)、炭酸ビニルエチレン(VEC)等が挙げられる。
また、これらの他に、1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル、1,3−プロパンスルトン等の環状スルホン酸エステル、エチルメチルスルホン等の鎖状スルホン、スルホラン等の環状スルホン、ガンマブチロラクトン等のラクトンを含んでいてもよい。
なお、これらの溶媒は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明で用いる電解質塩は、リチウム塩を含むことが好ましい。
リチウム塩としては、上述した非水溶媒に高濃度で溶解することができ、かつ、溶解時に粘度が低く、イオン導電性が高い塩が好ましい。
リチウム塩の具体例としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、リチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド(LiN(CF
3SO
2)
2)、リチウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド(LiN(C
2F
5SO
2)
2)、リチウムビスフルオロスルホニルイミド(Li(SO
2F)
2)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF
6)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、塩化リチウム(LiCl)等が挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、後述する添加剤として例示するジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiF
2BC
2O
4)は、リチウムイオンを含む塩であるため、電解質塩として用いることもできる。
【0025】
電解液中の電解質塩の濃度は特に制限はないが、上述したイオン充足率を満たすことを考慮すると、1.0〜3.0M(mol/L)程度が好ましく、内部抵抗や耐久試験などの性能を加味すると、1.2〜2.5Mがより好ましく、1.3〜2.3Mがより一層好ましい。
【0026】
さらに、本発明で用いる電解液は、電極と電解液の界面に電解液が分解されることによって不導体被膜(SEI被膜)を形成可能な添加剤を含んでいてもよい。
一般的なリチウムイオン電池の場合、高温貯蔵時には、高い電位に維持された正極表面上での溶媒の酸化分解が進むと同時に、満充電状態の負極から徐々にリチウムが抜け出し溶媒と反応する。正負電極上に高抵抗な分解物が堆積するだけでなく、可逆的に利用可能なリチウムが減少し、電池性能の低下を引き起こす。これらを抑制して二次電池の長寿命化を図るために、適したSEI被膜の形成が有効である。
【0027】
本発明で用いる添加剤としては、ホウ酸化合物が好ましく、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiF
2BC
2O
4)がより好ましい。添加されたホウ酸化合物が電解液中のリチウムと反応し、良質なSEI被膜が電極界面に形成される結果、このSEI被膜が充電状態の活物質と有機溶媒との直接接触を抑制し、分解抑制に寄与するとともに、高温耐久試験時に負極からのリチウムの放出を抑制し、二次電池の容量低下や抵抗増加を抑えることができる。
なお、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムは、リチウムイオンを含む塩であるため、電解質塩として寄与することもできる。
【0028】
添加剤を使用する場合、電解液中でのその濃度は、特に限定されるものではないが、0.01〜1mol/Lが好ましく、0.05〜0.5mol/Lがより好ましい。
【0029】
本発明の二次電池の正極は、正極集電体とその上に形成された正極合材層とを有する。
正極集電体の具体例としては、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔等が挙げられ、これらの発泡体や不織布状などの三次元多孔質体を集電体に用いることもできる。
正極合材は、少なくとも正極活物質を含むものであり、必要に応じて導電助剤、バインダ、増粘剤などを含む。
正極活物質としては、電解液中のアニオンを吸蔵・放出可能な炭素材料で、初回充電後の正極合材層の密度を0.50〜0.90g/cm
3に調整することができれば特に制限はなく、この範囲内で目的に応じて適宜選択することができる。
炭素材料の具体例としては、天然黒鉛、人造黒鉛、易黒鉛化炭素等が挙げられ、例えば高容量を目的とする場合は結晶性の高いものが好ましく、大電流充放電を目的とする場合は結晶性の低いものが好ましい。
【0030】
本発明の二次電池では、初回充電で膨張した正極活物質によって空隙が増加した正極内に多量の電解液を保持させるべく、初回充電後の正極合材層の密度を0.50〜0.90g/cm
3に調整することが好ましく、0.55〜0.8g/cm
3に調整することがより好ましく、0.60〜0.75g/cm
3に調整することがより一層好ましい。電極密度をこの範囲に調整することで、さらには電極密度をこの範囲に調整するとともに電解液濃度を前述の範囲に調整することで、より一層高容量かつ低抵抗な二次電池を得ることができる。
【0031】
一方、負極は、負極集電体とその上に形成された負極合材層とを有する。
負極集電体の具体例としては、銅箔、銅合金箔、ニッケル箔、ニッケル合金箔、ステンレス箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔等が挙げられる。
負極材は、少なくとも負極活物質を含むものであり、必要に応じて導電助剤、バインダ、増粘剤などを含む。
負極活物質としては、電解液中のカチオンを吸蔵・放出可能な材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭素材料、チタン酸リチウム、SiO等が挙げられる。
炭素材料の具体例としては、天然黒鉛、人造黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素等が挙げられ、例えば高容量を目的とする場合は結晶性の高いものが好ましく、大電流充放電を目的とする場合は結晶性の低いものが好ましい。
【0032】
必要に応じて用いられる導電助剤は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
その具体例としては、銅,アルミニウム,ニッケル等の金属粉末、カーボンブラック,カーボンナノチューブ等の炭素材料などが挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
バインダおよび増粘剤としては、スラリー作製時の溶媒や電解液に対して安定であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
その具体例としては、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエン共重合体、ポリアクリル酸、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
セパレータは、正極と負極間の短絡を防ぎ、正負極間の電解液の保持性を向上するために配置され、その材質、形状、厚みなどに特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができる。
セパレータの具体例としては、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン系セパレータ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系セパレータ、ポリアミド系セパレータ、ポリイミド系セパレータ、セルロース系セパレータ、ガラス繊維系セパレータなどが挙げられる。
電解液保持性の観点からは空隙率が高いことが好ましく、一方で正負極間の短絡を防ぐためには、厚みが厚く、気密度が高い材質のセパレータが好ましい。双方の特性を両立するためには、空隙率が好ましくは50〜80%程度、より好ましくは60〜75%で厚みが好ましくは10〜100μm程度、より好ましくは20〜50μmのセパレータが好適である。
【0034】
本発明の二次電池は、例えば、正極と負極との間にセパレータを介在させてなる電池構造体を、積層、折畳み、または捲回させ、必要に応じてコイン型等に形成し、これを電池缶またはラミネートパック等の電池容器に収容したうえで、電解液を充填し、電池缶であれば封缶、ラミネートパックであれば熱溶着して得ることができる。
【実施例】
【0035】
以下、製造例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0036】
[1]電極構造体の作製
[製造例1−1]正極構造体の作製
正極活物質として人造黒鉛(SCMG、昭和電工(株)製)、導電助剤としてカーボンブラック(Super C65、IMERYS社製)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(MAC200HC、日本製紙ケミカル(株)製)、バインダとしてスチレン−ブタジエン共重合体(TRD102A、JSR(株)製)を、固形分の質量比で92:3:1:4となるように自・公転式ミキサーを用いて混合し、正極用スラリーを調製した。
得られた正極用スラリーを、正の集電体であるアルミニウム箔に所定の厚みで塗布・乾燥した後、ロールプレスで圧延し、正極構造体を得た。
【0037】
[製造例1−2]負極構造体の作製1
負極活物質として人造黒鉛(SCMG、昭和電工(株)製)、導電助剤としてカーボンブラック(Super C65、IMERYS製)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(MAC200HC、日本製紙ケミカル(株)製)、バインダとしてスチレン−ブタジエン共重合体(TRD102A、JSR(株)製)を、固形分質量比で95:1:2:2となるように自・公転式ミキサーを用いて混合し、負極用スラリーを調製した。
得られた負極用スラリーを、負の集電体である銅箔に所定の厚みで塗布・乾燥した後、ロールプレスで圧延し、負極構造体を得た。
【0038】
[製造例1−3]負の電極構造体の作製2
負極活物質としてチタン酸リチウム粉末(チタン酸リチウム スピネル、シグマ−アルドリッチ製)、導電助剤としてカーボンブラック(Super C65、IMERYS製)、増粘剤としてバインダとしてポリフッ化ビニリデンを、固形分質量比で89:7:4となるように自・公転式ミキサーを用いて混合し、負極用スラリーを調製した。
得られた負極用スラリーを、負の集電体である銅箔に所定の厚みで塗布・乾燥した後、ロールプレスで圧延し、負極構造体を得た。
【0039】
[2]電解液の作製
[製造例2−1〜2−4]
表1に作製した電解液組成を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
[3]二次電池の作製
[実施例1]
製造例1−1の手法で作製された合材層厚み37μm(密度1.2g/cc)の正極と、製造例1−2の手法で作製された合材層厚み22μm(密度1.1g/cc)の負極を、厚み35μm(密度0.4g/cc)のセルロースセパレータ(TF40−35、ニッポン高度紙工業(株)製)を介して対向させ、アルミラミネート(大日本印刷(株)製)で形成した外装容器に挿入して注液前セルを得た。なお、正極および負極はあらかじめ外部端子を超音波溶接した後に120℃で、セパレータおよび外装ラミネートは85℃で、それぞれ12時間の真空乾燥を行ったものを使用した。得られた注液前セルに製造例2−1で調製した電解液5gを注入し、減圧下でラミネートを封止して電池セルを得た。セルの組立ておよび注液は露点を−40℃以下に管理したドライルームで行った。
【0042】
[実施例2]
厚み50μm(密度0.4g/cc)のセルロースセパレータ(TF40−50、ニッポン高度紙工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にして電池セルを作製した。
【0043】
[実施例3]
製造例1−1の手法で作製された合材層厚み25μm(密度1.1g/cc)の正極を用い、厚み25μm(密度0.44g/cc)のセルロースセパレータ(TF44−25、ニッポン高度紙工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にして電池セルを作製した。
【0044】
[実施例4]
製造例2−4で調製した電解液を用いた以外は、実施例1と同様にして電池セルを作製した。
【0045】
[実施例5]
製造例1−1の手法で作製された合材層厚み30μm(密度1.4g/cc)の正極を用い、製造例1−3の手法で作製された合材層厚み22μm(密度1.4g/cc)の負極を用いた以外は、実施例1と同様にして電池セルを作製した。
【0046】
[比較例1]
厚み25μm(密度0.44g/cc)のセルロースセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にして電池セルを作製した。
【0047】
[比較例2]
製造例2−2で調製した電解液を用いた以外は、実施例1と同様にして電池セルを作製した。
【0048】
[比較例3]
製造例2−3で調製した電解液を用いた以外は、実施例1と同様にして電池セルを作製した。
【0049】
[比較例4]
厚み50μm(密度0.4g/cc)のセルロースセパレータを2枚用いた以外は、実施例1と同様にして電池セルを作製した。
【0050】
[4]充放電試験
得られた電池セルを充放電装置(Scribner Associates社製、充放電システム585−NOHFR)を用い、25℃環境下、1mAでセル電圧5.1Vまで充電した後、10mAでセル電圧3.5Vまで放電する初回充放電を行った。続いて10mAでセル電圧5.0V30分のCCCV充電を行った後、10mAでセル電圧3.5Vまで放電する容量測定を行った。例として、実施例1の容量測定の充放電カーブを
図1に示す。
【0051】
[5]内部抵抗測定
容量測定の後、セル電圧4.8V、30分間のCV充電を行い、周波数特性分析器(NF製、FRA5087)にて、0.1Hzのインピーダンスを測定した。0.1Hzのインピーダンスは「電子移動抵抗」および「液・界面抵抗」(セルの内部抵抗(DC))を表すものとし、測定値を初期内部抵抗値とした。
【0052】
[6]充放電後の電極厚み測定
内部抵抗の測定後、セル電圧3.5Vまで放電した後、各実施例および比較例の電池セルを解体して取り出した電極をアセトニトリルで洗浄、乾燥し、電極厚みおよび質量を測定した。表2に電極厚みの変化および充放電後の電極密度を示す。
【0053】
【表2】
【0054】
[7]イオン充足率の算出
解体後の電極質量および電極厚みから、正極、負極それぞれの合材層密度と見掛け体積を算出した。次いで黒鉛の比重(2.1g/cc)と合材層密度の差分から空隙率を算出し、さらに見掛け体積と空隙率より空隙体積を算出した。同様に、セパレータについてもセルロースの比重(1.5g/cc)を用いて空隙体積を算出した。このとき用いる比重は原材料の物性が明らかである場合はその値を用いればよく、また不明な場合にはピクノメーター法で測定した真密度を用いればよい。正極、負極、セパレータの空隙体積を合算し、電解液比重(1.2g/cc)を用いて正負電極対向面内に保持される電解液量およびイオン量を算出した。次いでこのとき必要なイオン量を上記式3より算出した。イオン充足率とセル性能の関係を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
イオン充足率が150〜230%である実施例1〜5は65mAh/g以上の高い放電容量が得られている。一方で、イオン充足率が150%以下である比較例1,2では、イオン充足率に比例して容量が低くなった。
さらに、正負極空隙体積比率が45%で、イオン充足率が230%を超えている比較例4や、イオン充足率が230%を超え、かつ、電解液濃度が3.0Mの比較例3は、放電容量が実施例のそれよりも低く、かつ、内部抵抗が高くなった。比較例4についてはセパレータが厚く、比較例3については電解液粘度が高いことから、イオン伝導のしにくさに起因して高抵抗となったと考えられる。
以上のことから、イオン充足率が150〜230%であり、さらに正負電極対向面内に保持される電解液中のイオン量の内、正極合材層および負極合材層内に保持されるイオン量の比率を60%以上とすることで、高容量、低抵抗の電池セルを得ることができる。
【0057】
[8]高温耐久試験
実施例1および実施例4の電池セルを用いて、70℃環境下でセル電圧4.5VでのCV充電を250時間行った。次いで3.5Vまで放電した後、25℃環境下でセル電圧5.0−3.5Vの放電容量測定および4.8Vでのインピーダンス測定を行い、放電容量および内部抵抗の変化率を算出した。
表4に高温耐久試験の結果を示す。
【0058】
【表4】
【0059】
ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムを含む実施例1では70℃という高温環境下でも十分な性能維持ができている。一方で、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムを含まない実施例4では、「容量、抵抗共に大きく劣化した。このことから、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムを添加剤として使用することで、高容量、低抵抗でかつ副反応が少なく、高温耐久性に優れた電池セルを得ることができる。
【解決手段】 正極集電体とその上に形成された正極合材層とを含む正極と、負極集電体とその上に形成された負極合材層とを含む負極と、正極および負極を隔離するセパレータと、アニオンおよびカチオンを含む電解液とを備え、正極合材層が、アニオンを吸蔵または放出可能な炭素材料を正極活物質として含み、負極合材層が、カチオンを吸蔵または放出可能な材料を負極活物質として含み、リチウム金属を基準とした正極の電位が5.0V以上となる初回充電を行い、下記式1で定義されるイオン充足率が、150〜230%であり、前記初回充電後において、正負電極対向面内に保持される電解液中のイオン量の内、正極合材層および負極合材層内に保持されるイオン量の比率が、60%以上である二次電池。