【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業  研究成果最適展開支援プログラム、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
      
        
          (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
  そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、多成分材料で高硬度かつ化学的不活性な材料であっても、スクラッチや加工変質層の生成がなく、効率よく低コストにダメージのない均一で良好な表面粗さが得られる加工方法を提供する点にある。
 
【課題を解決するための手段】
【0006】
  本発明者は、プラズマエッチング加工に着目した。プラズマエッチング加工であれば、高硬度かつ化学的不活性な材料であっても、スクラッチや加工変質層の生成がなく、効率よく低コストに加工を行うことができる。特に、高能率な化学的ダメージフリー加工法として知られる大気圧プラズマCVM(atmospheric-pressure plasma chemical vaporization machining:AP−PCVM)を用いれば、より効率よく低コストに加工を行うことが可能となる。
【0007】
  しかし、プラズマエッチング加工は、SiやSiC、水晶ウエハなどの単成分材料の場合には良好な表面粗さが得られるものの、多成分材料に対しては、表面粗さが悪く、良好な表面粗さが得られず、また、加工領域内での加工量(エッチングレート)も均一にならず、良好な加工面が得られなかった。
【0008】
  そこで、本発明者は更に鋭意検討した結果、多成分材料を構成する各成分のプラズマによる反応性の相違が、表面粗さの悪化や加工量の不均一化の原因であり、各成分ごとのプラズマによる反応性を考慮することで、表面粗さを良好なものにしたり、加工領域内の加工量を均一化できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
  すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
  (1)  多成分材料のプラズマエッチング加工方法であって、プラズマ発生条件を、多成分材料を構成する各成分からなる材料のエッチングレートが、ほぼ同じレートとなる範囲内のプラズマ発生条件に設定し、該プラズマ発生条件を用いて、多成分材料をプラズマエッチング加工することを特徴とするプラズマエッチング加工方法。
【0010】
  (2)  前記プラズマ発生条件が、反応ガスの混合比である(1)記載のプラズマエッチング加工方法。
  (3)  前記多成分材料がRS−SiCであり、反応ガスをCF
4とO
2の混合ガスとし、且つ反応ガスの混合比をO
2ガス80〜90%に設定してプラズマエッチング加工する(2)記載のプラズマエッチング加工方法。
【0011】
  (4)  加工ギャップを、多成分材料を構成する各成分からなる材料の加工痕の形状が、ほぼ円形ないし楕円形となる範囲内の加工ギャップに設定し、該加工ギャップのもと、多成分材料をプラズマエッチング加工する(1)〜(3)のいずれかに記載のプラズマエッチング加工方法。なお、本発明でいう「加工痕」は静止加工痕である。
【0012】
  (5)  多成分材料のプラズマエッチング加工方法であって、加工ギャップを、多成分材料を構成する各成分からなる材料の加工痕の形状が、ほぼ円形ないし楕円形となる範囲内の加工ギャップに設定し、該加工ギャップのもと、多成分材料をプラズマエッチング加工することを特徴とするプラズマエッチング加工方法。
 
【発明の効果】
【0013】
  以上にしてなる本発明によれば、プラズマ発生条件を、多成分材料を構成する各成分からなる材料のエッチングレートが、ほぼ同じレートとなる範囲内のプラズマ発生条件に設定し、該プラズマ発生条件を用いて、多成分材料をプラズマエッチング加工することで、各成分のエッチングレートの相違に基づく凹凸が生じなく、効率よく低コストにダメージのない良好な表面粗さが得られる。
【0014】
  とくに、前記プラズマ発生条件として、エッチングレートに大きく影響する反応ガスの混合比を、前記各成分からなる材料のエッチングレートが同じレートとなる範囲内の混合比にすることで、より効率よく良好な表面粗さを得ることができる。たとえば多成分材料がRS−SiCの場合、反応ガスをCF
4とO
2の混合ガスとし、且つ反応ガスの混合比をO
2ガス80〜90%に設定することで良好な表面粗さを効率よく得ることができる。
【0015】
  また、多成分材料を構成する各成分からなる材料の加工痕の形状が、ほぼ円形ないし楕円形となる範囲内の加工ギャップに設定し、該加工ギャップのもと、多成分材料をプラズマエッチング加工することで、各成分の加工領域内のエッチングレートの片寄りによる加工量(エッチングレート)の不均一化が生じなく、均一な加工を行うことができる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)、(b)は、本発明の代表的実施形態にかかるプラズマエッチング加工装置を示す説明図。
 
【
図2】(a)は、加工ギャップ3.0mmでの各成分材料の加工痕、および同ギャップでの多成分材料の加工痕を示す走査型白色光干渉計(SWLI)画像、(b)は、加工ギャップ6.0mmでの各成分材料の加工痕、および同ギャップでの多成分材料の加工痕を示すSWLI画像。
 
【
図3】反応ガスの混合比と各成分材料のエッチングレートとの関係を示すグラフ。
 
【
図4】(a)は、
図3のAの反応ガス組成(混合比が酸素80%)による多成分材料の加工痕を示すSWLI画像とa−b横断切片の表面形状を示すグラフ、(b)は、
図3のBの反応ガス組成(混合比が酸素85%)による多成分材料の加工痕を示すSWLI画像とa−b横断切片の表面形状を示すグラフ、(c)は、
図3のCの反応ガス組成(混合比が酸素90%)による多成分材料の加工痕を示すSWLI画像とa−b横断切片の表面形状を示すグラフ、(d)は、
図3のDの反応ガス組成(混合比が酸素50%)による多成分材料の加工痕を示すSWLI画像とa−b横断切片の表面形状を示すグラフ。
 
【
図5】(a)は、
図3のCの反応ガス組成(混合比が酸素90%)による多成分材料の加工表面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像、(b)は、
図3のDの反応ガス組成(混合比が酸素50%)による多成分材料の加工表面のSEM画像。
 
【
図6】(a)は、
図3のDの反応ガス組成(混合比が酸素50%)による多成分材料の30秒間の加工痕を示すSWLI画像、(b)は同じく60秒間の加工痕を示すSWLI画像、(c)は各場合のa−b横断切片の表面形状を示すグラフ。
 
【
図7】(a)は、
図3のCの反応ガス組成(混合比が酸素90%)による多成分材料の60秒間の加工痕を示すSWLI画像、(b)は同じく120秒間の加工痕を示すSWLI画像、(c)は各場合のa−b横断切片の表面形状を示すグラフ。
 
【
図8】(a)は、プラズマエッチング加工前のダイヤモンド・ラップ仕上げをした多成分材料の表面の原子間力顕微鏡(AFM)画像とそのA−B間の断面形状を示す図、(b)は、
図3のDの反応ガス組成(混合比が酸素50%)による多成分材料の加工表面のAFM画像とそのA−B間の断面形状を示す図、(c)は、
図3のCの反応ガス組成(混合比が酸素90%)による多成分材料の加工表面のAFM画像とそのA−B間の断面形状を示す図、(d)は、混合比が酸素95%の反応ガス組成による多成分材料の加工表面のAFM画像とそのA−B間の断面形状を示す図。
 
【
図9】(a)は、プラズマエッチング加工前のダイヤモンド・ラップ仕上げをした多成分材料の断面構造を示す模式図、(b)は、
図3のDの反応ガス組成(混合比が酸素50%)による多成分材料の加工後の断面構造を示す模式図、(c)は、
図3のCの反応ガス組成(混合比が酸素90%)による多成分材料の加工後の断面構造を示す模式図、(d)は、混合比が酸素95%の反応ガス組成による多成分材料の加工後の断面構造を示す模式図。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0017】
  次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
 
【0018】
  本発明の多成分材料のプラズマエッチング加工方法は、プラズマ発生条件につき、多成分材料を構成する各成分からなる材料のエッチングレートが、ほぼ同じレートとなる範囲内の条件に設定し、この条件を用いて多成分材料をプラズマエッチング加工することを特徴とするものであり、これにより各成分のエッチングレートの相違に基づく凹凸が生じなく、良好な表面粗さが得られるものである。
 
【0019】
  このようなプラズマ発生条件としては、反応ガスの混合比や反応ガスを含むプロセスガスの流量、電力量、加工ギャップなどがあるが、特に、反応ガスの混合比はエッチングレートに大きく影響するため、この混合比を各成分材料のエッチングレートがほぼ同じになるように設定することが最も効果的である。
 
【0020】
  また、本発明は、多成分材料のプラズマエッチング加工方法であって、加工ギャップを、多成分材料を構成する各成分からなる材料の加工痕の形状が、ほぼ円形ないし楕円形となる範囲内の加工ギャップに設定し、該加工ギャップのもと、多成分材料をプラズマエッチング加工することをも特徴とし、これにより各成分の加工領域内のエッチングレートの片寄りによる加工量(エッチングレート)の不均一化が生じなく、均一な加工を行うことができるものである。
 
【0021】
  以下の実施形態では、各成分からなる材料のエッチングレートがほぼ同じになるようにプラズマ発生条件を設定することに加え、その前段階として、各成分からなる材料の加工痕の形状がほぼ円形ないし楕円形となる範囲内の加工ギャップに設定しているが、本発明は、双方の設定を組み合わせて用いることに何ら限定されず、一方のみ、すなわちエッチングレートがほぼ同じになるようにプラズマ発生条件を設定するが、各成分からなる材料の加工痕の形状はほぼ円形ないし楕円形とならないものや、その逆の場合も含まれる。
 
【0022】
  本発明の加工対象としての「多成分材料」としては、プラズマエッチング加工が可能な多成分材料を広く適用でき、とくにセラミックス材料の加工に好適である。セラミックス材料の中でもダメージフリーで良好な表面粗さを得ることが難しい反応焼結セラミックス材料を対象とすれば効果的である。以下、大気圧プラズマCVM(AP−PCVM)の装置を用いて、反応焼結炭化ケイ素(RS−SiC)をプラズマエッチング加工する例について説明する。
 
【0023】
  図1は、本実施形態で用いるAP−PCVM装置1の概略構成を示している。中心部にキャリアガスとしてアルゴンガスを供給するセラミック管2が設けられ、該セラミック管2の周囲には空洞共振器3が配置されている。空洞共振器3には、セラミック管2の先端付近(空洞共振器3の内側導体30の先端位置)に最大強度の電界が生成されるように、周波数2.45GHzのマイクロ波電界が付与される。このマイクロ波によりセラミック管2の先端付近の内部でアルゴンプラズマP1が発生する。
 
【0024】
  また、セラミック管2の先端開口が臨む空洞共振器3の内部には、側方の供給口11より、プロセスガスとしてアルゴン、CF
4、O
2ガスが供給され、上記アルゴンプラズマ中の活性アルゴンがプロセスガス中の反応ガス成分CF
4、O
2に衝突することで、エッチングに寄与するFラジカルおよび活性酸素が生成される二次的プラズマP2が生じ、空洞共振器3先端のノズル4から吐出した先で被加工物9の表面をエッチング加工する。
 
【0025】
  プラズマP2によるRS−SiCのエッチング加工は、RS−SiCを構成するSiおよびSiCの酸化プロセス、並びにSi、SiC及び酸化物SiO
2のエッチング過程により行われる。酸化プロセスは、
  SiC+4O*→SiO
2+CO
2↑
  Si+2O*→SiO
2
  の各反応が生じ、エッチング過程は、
  SiO
2+4F*→SiF
4↑+O
2↑
  SiC+2O*+4F*→SiF
4↑+CO
2↑
  Si+4F*→SiF
4↑
  の各反応が生じる。O*は活性酸素、F*はFラジカルを示す。
 
【0026】
  空洞共振器3は図示しないXYZテーブル上に支持されてコンピュータ数値制御(CNC)され、ノズル4先端と被加工物との間の加工ギャップの調整や横方向への移動がなされる。以上の装置構成は例示であり、他の装置構成でも勿論よい。また、キャリアガス、プロセスガスの種類も上記ガスに限定されるものではなく、被加工物に応じて適したものを選択できる。本実施形態の被加工物9であるRS−SiCは、AP−PCVM装置1で加工する前の前加工として、ダイヤモンド・ラップ仕上げを行った。
 
【0027】
  本実施形態では、RS−SiCをプラズマエッチング加工するにあたり、まず加工ギャップを最適な値に設定する。
図2(a)の右端のSWLI画像は、加工ギャップ3.0mmにおけるRS−SiC表面の加工痕を示しており、
図2(b)の右端のSWLI画像は、加工ギャップ6.0mmにおけるRS−SiC表面の加工痕を示している。加工時間は60秒、反応ガス(CF
4、O
2ガス)のO
2ガスの混合比(流量(sccm)の比)を50%とした。いずれも表面粗さは良くないが、加工ギャップ3.0mmの場合、加工領域(加工痕)内のエッチングレートが左半分の領域に片寄り、加工量(エッチングレート)の不均一化が生じているのに対し、加工ギャップ6.0mmの場合は、加工領域(加工痕)内の加工量(エッチングレート)が均一化していることが分かる。
 
【0028】
  そして、
図2(a)の左端と中央のSWLI画像は、それぞれ多成分材料(RS−SiC)を構成する各成分材料(SiC(単結晶SiC)とSi(単結晶Si))を用意し、それぞれ同じ加工ギャップ3.0mm、その他同じ条件で加工した材料表面の加工痕を示している。
図2(b)の左端と中央のSWLI画像も、それぞれ多成分材料(RS−SiC)を構成する各成分材料(SiC(単結晶SiC)とSi(単結晶Si))を用意し、それぞれ同じ加工ギャップ6.0mm、その他同じ条件で加工した材料表面の加工痕を示している。
 
【0029】
  この結果から、加工ギャップ3.0mmの場合、
図2(a)の中央のSWLI画像が示すようにSi成分の加工が左側に片寄った歪な形状をしており、その影響で、RS−SiCの加工量も左半分の領域に片寄ったものとなっていることが分かる。これに対し、加工ギャップ6.0mmの場合、
図2(b)に示すようにSiC(単結晶SiC)とSi(単結晶Si)の両材料とも加工痕の形状がほぼ円形ないし楕円形で均一な加工がされており、結果、RS−SiCの加工も均一な加工となっていることが分かる。
 
【0030】
  このように、多成分材料を構成する各成分からなる材料の加工痕の形状が、ほぼ円形ないし楕円形となる範囲内の加工ギャップに設定すれば、均一な加工を行うことができるのである。加工ギャップGが大きくなりすぎると加工レートが落ちるため、本実施形態のように反応ガスCF
4およびO
2ガスを用いたAP−PCVM装置によるRS−SiCの加工においては、5.0mm〜7.0mm、好ましくは6.0mmに加工ギャップが設定される。
 
【0031】
  次に、反応ガス(CF
4、O
2ガス)のO
2ガスの混合比(流量(sccm)の比)を設定する。
図4(a)〜(d)は、それぞれ前記混合比を酸素80%、85%、90%、50%としたときの加工痕を示すSWLI画像とa−b横断切片の表面形状を示すグラフである。なお、50%の加工痕の画像は、同じ条件で加工した
図2(b)の右端の画像とほぼ同じである。この結果からO
2ガスの混合比を80〜90%に設定すれば、良好な表面粗さの加工が行えることが分かる。
 
【0032】
  そして、
図3は、多成分材料(RS−SiC)を構成する各成分材料(SiC(単結晶SiC)とSi(単結晶Si))を用意し、それぞれO
2ガスの混合比を変化させて加工したときのエッチングレートを示すグラフである。グラフ中A、B、C、Dは、それぞれO
2ガス混合比が80%、85%、90%、50%の位置を示している。このグラフから分かるように、上記良好な表面粗さの加工が行われたO
2ガス混合比80〜90%(A〜C)は、各成分材料(SiC(単結晶SiC)とSi(単結晶Si))のエッチングレートが、ほぼ同じレートとなる範囲の混合比であることが分かる。
 
【0033】
  このように、多成分材料を構成する各成分からなる材料のエッチングレートが、ほぼ同じレートとなる範囲内の反応ガスの混合比に設定すれば、良好な表面粗さの加工を行うことができるのである。本実施形態のように反応ガスCF
4およびO
2ガスを用いたAP−PCVM装置によるRS−SiCの加工においては、上述のとおり、好ましくはO
2ガス混合比を80〜90%、より好ましくは85〜90%に設定される。
 
【0034】
  図5(a)は、O
2ガス混合比90%のときのRS−SiCの加工表面のSEM画像、
図5(b)は、O
2ガス混合比50%のときのRS−SiCの加工表面のSEM画像である。O
2ガス混合比90%では滑らかな表面となっているが、O
2ガス混合比50%ではSiのエッチングレートが高く、SiCが表面に大きく露出した凹凸表面となっている。
 
【0035】
  また、
図6(a)は、O
2ガス混合比50%のときのRS−SiCの30秒間の加工痕を示すSWLI画像、(b)は同じく60秒間の加工痕を示すSWLI画像、(c)は各場合のa−b横断切片の表面形状を示すグラフである。
図6から分かるように、O
2ガス混合比50%では、加工時間を2倍にしても表面が荒れる(Siだけが加工が進み、穴あき状態となる)だけで加工深さが時間に比例しない。
 
【0036】
  他方、
図7(a)は、O
2ガス混合比90%のときのRS−SiCの60秒間の加工痕を示すSWLI画像、(b)は同じく120秒間の加工痕を示すSWLI画像、(c)は各場合のa−b横断切片の表面形状を示すグラフである。
図7から分かるように、O
2ガス混合比90%では、加工時間を2倍にすれば表面が若干荒れるものの、時間に比例した加工深さが得られることが分かる。このことから、多成分材料を構成する各成分からなる材料のエッチングレートをほぼ同じレートとなる範囲内の反応ガスの混合比に設定すれば、良好な表面粗さの加工を行うことができるとともに、加工効率も向上できることが分かる。
 
【0037】
  図8(a)は、プラズマエッチング加工前のダイヤモンド・ラップ仕上げをしたRS−SiC表面の原子間力顕微鏡(AFM)画像とそのA−B間の断面形状を示す図、(b)は、O
2ガス混合比50%のときのRS−SiCの加工表面のAFM画像とそのA−B間の断面形状を示す図、(c)は、O
2ガス混合比90%のときのRS−SiCの加工表面のAFM画像とそのA−B間の断面形状を示す図、(d)は、O
2ガス混合比95%としたときのRS−SiCの加工表面のAFM画像とそのA−B間の断面形状を示す図である。
 
【0038】
  図8(a)が示すように、ダイヤモンド・ラップ仕上げは表面粗さは良好だが加工変質層が全面に形成され、スクラッチも避けられない。
図8(b)が示すように、O
2ガス混合比50%ではSiのエッチングレートが大きく、表面が荒れてしまう。
図8(c)が示すようにO
2ガス混合比90%では良好な表面粗さが得られる。
図8(d)が示すようにO
2ガス混合比95%とすると、逆にSiCのエッチングレートが大きく、Siが突出する形で表面が荒れてしまう。
 
【0039】
  これを断面構造の模式図で示したものが
図9である。(a)〜(d)は
図8の(a)〜(d)に対応したものである。図中(a)の表面の黒塗りの部分は加工変質層を表している。特に(b)〜(d)に示すように、多成分材料のプラズマエッチングで表面粗さを良好にすることが難しいのは各成分材料のエッチングレートのアンバランスであり、これが同じになるようにプラズマ生成条件(本例ではO
2ガス混合比)を設定することで、(c)のような良好な表面粗さが得られるのである。
 
【0040】
  RS−SiCは耐食性、耐熱性、耐摩耗性に優れ、高剛性、高熱伝導、低熱膨脹、低比重などの特性を持つため、これを効率よく低コストにダメージのない良好な表面粗さに加工することができる本発明によれば、RS−SiCを例えば宇宙望遠鏡用のミラーやガラスモールド非球面レンズの金型等に利用することができ、産業の発展に大きく貢献する。
 
【0041】
  以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。