(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6843621
(24)【登録日】2021年2月26日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】目標とする高い洗浄性能を得るためのこぶの比率
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20210308BHJP
A46B 1/00 20060101ALI20210308BHJP
A46B 9/02 20060101ALI20210308BHJP
B08B 1/04 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
H01L21/304 622Q
H01L21/304 644G
A46B1/00
A46B9/02
B08B1/04
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-553552(P2016-553552)
(86)(22)【出願日】2015年2月20日
(65)【公表番号】特表2017-513210(P2017-513210A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】US2015016949
(87)【国際公開番号】WO2015127301
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2018年2月20日
【審判番号】不服2019-14771(P2019-14771/J1)
【審判請求日】2019年11月5日
(31)【優先権主張番号】61/942,231
(32)【優先日】2014年2月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チンタン・パテル
【合議体】
【審判長】
恩田 春香
【審判官】
脇水 佳弘
【審判官】
小川 将之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−6974(JP,A)
【文献】
特開2009−66527(JP,A)
【文献】
米国特許第6299698(US,B1)
【文献】
特表2013−520803(JP,A)
【文献】
特開2000−246187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CMP処理後のウエハを洗浄するためのブラシであって、
発泡材でできており、回転軸のある基部と、基部の外面から外向きに延びる均一な形状で均一に離間する複数のこぶとを備える円柱形であり、こぶがそれぞれの中心と、こぶの高さと、こぶの直径を有し、こぶの直径に対するこぶのピッチの比(P/D)が1.2から1.5で、なおかつ、こぶの直径に対するこぶの高さの比(H/D)が0.2から0.5であり、
前記外面の直径は、基部の長手方向の長さ全体にわたって一定であり、
各こぶの高さは、6mmから7.5mmの範囲であり、
各こぶの直径は、12mmから15mmの範囲であり、
隣接するこぶ同士の中心から測定されるこぶのピッチは、17.4mmから21.75mmの範囲である、
ことを特徴とするブラシ。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシであって、発泡材がポリビニルアルコールか、ポリビニルアセタールか、ポリウレタンかのいずれか1種類の材料からなることを特徴とするブラシ。
【請求項3】
請求項1に記載のブラシであって、均一な形状で均一に離間する複数のこぶが各々実質的に円柱形であることを特徴とするブラシ。
【請求項4】
請求項1に記載のブラシであって、2つの端部を有し、その2つの端部のうち少なくとも1つの端部において周方向に並んだ細長いこぶの列が配置されていることを特徴とするブラシ。
【請求項5】
請求項1に記載のブラシであって、ブラシの回転軸に対して垂直な平面によってブラシが第一の側と第二の側とに分かれており、ブラシの第一の側にあるこぶの配置が、ブラシの第二の側にあるこぶの配置と異なることを特徴とするブラシ。
【請求項6】
CMP処理後のウエハを洗浄するためのブラシであって、発泡材でできており、回転軸のある基部と、基部の外面から外向きに延びている複数のこぶとを有する円柱形であり、こぶがそれぞれの中心と、こぶの高さと、こぶの直径を有し、こぶの直径に対するこぶの平均ピッチの比(P/D)が1.2から1.5で、こぶの直径に対するこぶの高さの比(H/D)が0.2から0.5であり、
前記外面の直径は、基部の長手方向の長さ全体にわたって一定であり、
各こぶの高さは、6mmから7.5mmの範囲であり、
各こぶの直径は、12mmから15mmの範囲であり、
隣接するこぶ同士の中心から測定されるこぶのピッチは、17.4mmから21.75mmの範囲である、
ことを特徴とするブラシ。
【請求項7】
請求項6に記載のブラシであって、こぶがそれぞれ実質的に円柱形であることを特徴とするブラシ。
【請求項8】
請求項6に記載のブラシであって、2つの端部を有し、その2つの端部のうち少なくとも1つの端部において周方向に並んだ細長いこぶの列が配置されていることを特徴とするブラシ。
【請求項9】
請求項6に記載のブラシであって、ブラシの回転軸に対して垂直な平面によってブラシが第一の側と第二の側とに分かれており、ブラシの第一の側にあるこぶの配置がブラシの第二の側にあるこぶの配置と異なることを特徴とするブラシ。
【請求項10】
CMP処理後のウエハを洗浄するためのブラシであって、発泡材でできており、2つの端部と回転軸のある基部と、この基部の外面から外向きに延びる均一な形状で均一に離間する複数のこぶとを備える円柱形であり、複数のこぶは、基部の2つの端部のそれぞれに隣接する箇所から延びており、こぶはそれぞれの中心と、こぶの高さと、こぶの直径を有し、こぶの直径に対するこぶのピッチの比(P/D)が1.2から1.5で、こぶの直径に対するこぶの高さの比(H/D)が0.2から0.5であり、
前記外面の直径は、基部の長手方向の長さ全体にわたって一定であり、
各こぶの高さは、6mmから7.5mmの範囲であり、
各こぶの直径は、12mmから15mmの範囲であり、
隣接するこぶ同士の中心から測定されるこぶのピッチは、17.4mmから21.75mmの範囲である、
ことを特徴とするブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2014年2月20日に出願の米国特許仮出願第61/942,231号の利益を主張するとともに、参照によりその全体を本明細書に援用する。
【0002】
本発明は概して基板の化学機械研磨を対象とする。具体的には、化学機械研磨後の基板を洗浄するためのブラシを対象とする。
【背景技術】
【0003】
半導体素子の作製工程では、化学機械研磨(CMP)作業とウエハの洗浄を行う必要がある。一般に、集積回路素子は多層構造となっている。ウエハ層では、拡散領域を有するトランジスタ素子が形成される。その後の層では所望の機能素子を形成するため、金属相互接続線がパターン形成され、トランジスタ素子に電気的に接続される。よく知られているように、パターン形成された導電層は二酸化ケイ素などの誘電体材料により他の導電層から絶縁される。金属層とこれに付随する誘電層が多く形成されるにつれて、誘電材料を平坦化する必要が増大する。平坦化をしなければ、表面トポグラフィーが様々に異なるため、さらなる相互接続と誘電層の作製が実質的にさらに困難となる。半導体素子の製造工程において、金属相互接続パターンがウエハ上の誘電材料に形成され、その後に、余分な金属を除去するために化学機械平坦化、CMPなどの作業が行われる。このようなCMPなどの作業の後、平坦化されたウエハから微粒子や混入物質を除去する必要がある。
【0004】
集積回路などの電子機器の製造において、粒子状汚染物質、微量金属、可動イオンがウエハ上に存在していれば、これは深刻な問題である。粒子状汚染物質は集積回路において局部腐食、ひっかき傷、「短絡」などの広く様々な問題の原因となる危険がある。可動イオンと微量金属汚染物質も同様に集積回路における信頼性の問題や機能的な問題へとつながる恐れがある。これらの要因が組み合わさることにより、結果としてウエハの歩留まりが低くなり、ウエハの平均的な機能素子にかかる費用が増加してしまう。それぞれのウエハについて、様々な製造段階で、原材料、設備制作期間、関連する研究開発に関して相当の投資が必要となっている。
【0005】
化学機械研磨(CMP)はウエハの後続処理の前にウエハ上のフィルムを平坦化するための技術としてよく用いられている。概してCMPでは研磨パッドの表面上に50から100ナノメートルの大きさの研磨粒子を有する研磨スラリーの導入を必要とする。除去する誘電体または金属の材料層を伴うウエハは、スラリーとともに研磨パッドの表面に接して配置する。回転する研磨パッドに逆らうようにウエハを回転させることで、化学的・機械的作用が組み合わさり、層の厚みを薄くする。スラリーは一般的に水を主体とし、二酸化ケイ素や酸化アルミニウムなどの微細な金属酸化研磨剤を含んでいてもよい。研磨が完了した後、研磨工程で生じた残留スラリーなどの残留物を、被処理ウエハから完全に除去するように洗浄しなければならない。これにより表面は、電気化学析出、エッチング、フォトリソグラフィなどの他の処理工程のための準備が整った状態となる。
【0006】
残留スラリー材の、特に直径0.1ミクロン以下の大きさの粒子を研磨後の表面から洗浄するのに、一般に洗浄ブラシが用いられる。これらの洗浄ブラシは概して円柱形で、ブラシの中心軸を中心として回転する。また、この洗浄ブラシは大体、ポリビニルアルコール(PVA)などの高分子発泡材や高分子多孔質材で作られている。このようなブラシは、米国特許第8,460,475号(本願の出願人が名義を有し、あらゆる目的のために本明細書に参照により援用する)に記載されているのと同様に、射出成形されたものがある。
【0007】
自動化した方法で洗浄操作を実施するため、工場では洗浄システムを採用している。この洗浄システムは通常、ウエハをこすり洗いする1つ以上のブラシ箱を備えている。それぞれのブラシ箱には一対のブラシが含まれており、それぞれのブラシでウエハの各面をこすり洗いするようになっている。このようなブラシ箱の洗浄能力を向上させるために、ブラシ(TTB)の中を通して洗浄液を供給するのが一般的な方法である。複数の穴が設けられたブラシコアを用いることにより、ある一定の圧力がかかると、この穴から基板表面に液体が供給され、TTBによる液体供給が達成される。この液体は、ブラシコアから高分子材料を通して基板表面に撒かれる。
【0008】
ブラシの回転移動と、ウエハに対してかかる力または圧力を組み合わせるだけでなく、さらに洗浄液や脱イオン水を用いることにより、ウエハ表面から残留スラリー材を除去することができる。
【0009】
これらのブラシには、基板に接触して基板から材料を除去するための突起またはこぶが表面に設けられている。ブラシは筒状に形成されており、ブラシに液体を供給するとともにブラシを回転させるために用いられるコア支持部の上にスライドして被せられる。
【0010】
半導体の各部形状が小さくなるにつれて、また、要求される装置性能が増えるにつれて、洗浄技師たちも自分たちが関わる処理に関して改善するよう求められている。先進世代の半導体製造においては、化学機械研磨(CMP)処理に続けてウエハや平板パネルディスプレイなどの基板から粒子や残留有機物を除去することの効果についてパラメーターと材料を調節しながら継続的に試験を行い、研磨基板から小さめのスラリー粒子や腐食抑制添加物を目標とする汚染管理レベル未満まで除去し、先進世代に求められる清浄度を達成できるような改良が行われている。例えば、銅のCMP処理において、例えばベンゾトリアゾール(BTA)(ただしこれに限定しない)などに関連する残留有機物は、Cu−CMP処理後の銅表面に吸着されるようになる場合がある。なお、さらなる処理を行う前にブラシ洗浄によりBTA残留物を除去することには利点がある。銅表面と酸化銅表面のBTAを検出するのにX線光電子分光法(XPS)を用いることができることである。XPS窒素1s線(N1線)の下側の面積を用いることにより、表面上のBTAの存在と量または相対量を検出することができ、銅2p3/2線を用いることにより、酸化銅の存在を示すことができる。BTAの付着した基板を複数回ブラシ洗浄して得た一連の洗浄後のXPSスペクトルにおけるN1s線の下側の面積の減少量を利用すれば、基板からBTAが除去されていることの指標とすることができる。洗浄後に異なる基板上のBTAの量を比較するのにXPS−N1s線の下側の面積を用いることができる。また、フーリエ変換赤外分光分析、表面上の液滴の接触角、オージェ電子分光法を含む、銅基板上のBTAを検出する他の手法を用いることができる。このようにして残留有機物を測定することにより、このようなブラシを利用する人が、処理の微調整による効果について評価することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0048018号明細書
【特許文献2】国際特許出願第PCT/US2012/057337号
【特許文献3】米国特許第7,984,526号明細書
【特許文献4】米国特許第8,092,730号明細書
【特許文献5】米国特許第4,098,728号明細書
【特許文献6】米国特許第6,793,612号明細書col.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これまで製造過程のパラメーターや材料の調整に重点を置いた最適化の努力はなされてきたが、こぶの大きさ、形状、縦横比、密度などのブラシの物理的構造に関するパラメーターや、それらの組み合わせを最適化するといった試みは、これまでに取り組まれて来なかったように思われる。本発明の実施例として、円柱形発泡体のブラシは、こぶの直径に対するこぶのピッチの比率(P/D)が1.2から1.5で、こぶの直径に対するこぶの高さの比率が0.2から0.5の大きさのこぶを有する。
【0013】
本発明の一実施例として、円柱形発泡体のブラシの2つの端部にそれぞれ複数の細長いこぶを一列配置してあり、その2つの端部の間に均一な形状のこぶを備える。この均一な形状のこぶは、こぶの直径に対するこぶのピッチの比率(P/D)が1.2から1.5で、こぶの直径に対するこぶの高さの比率が0.2から0.5となっている。
【0014】
本発明の一実施例として、円柱形発泡体のブラシの2つの端部にそれぞれ複数の細長いこぶを一列配置してあり、その2つの端部の間に均一な形状のこぶを備える。この均一な形状のこぶは、こぶの直径に対するこぶのピッチの比率(P/D)が1.2から1.5で、こぶの直径に対するこぶの高さの比率が0.2から0.5となっている。
【0015】
本発明の強みは、CMP処理後の基板から微細粒子や残留有機物をより良く除去できることにある。実施例として、CMP洗浄ブラシを低い圧縮強度の発泡体で作ることができる。実施例の特徴と強みとしては、銅のCMP処理後も含めた様々なCMP洗浄処理において、研磨された基板から微細粒子や残留有機物を除去するのにこのようなCMP洗浄ブラシを用いることができ、効果的であるということである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1はCMP洗浄ブラシについての様々な寸法と特徴を示す。
【
図4】
図4はブラシ基部の2つの端部に細長いこぶが並ぶブラシである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は洗浄ブラシ4を示しており、このブラシは外面12と複数のこぶ14とを備える基部8を有する。それぞれのこぶは外向き面16と側壁面21を備える側壁19を有する。この外向き面は概して平面であるが、わずかに凸形状としてもよい。各々のこぶは高さh、こぶの軸n.a.、こぶの中心n.c.、こぶの直径n.d.である。各こぶには別のこぶが隣接するように配置され、隣接するこぶとこぶの間にこぶの間隔(N.S.)すなわち「ピッチ」を形成している。隣接するこぶ同士が異なる間隔をとっている箇所では、このピッチは最も近くに隣接するこぶ同士の中心間の距離とする。このブラシは内径(ID)と外径(OD)を有する。このこぶは、基部の付近からこぶの最上面にかけてわずかに先細りしていてもよく、テーパ角βまたは円柱体からの角度変化を参照されたい。
【0018】
図2は、均一な形状かつ均一に離間するこぶの一実施例で、このこぶは実質的に円柱形としてもよい。「実質的に円柱形」とは、こぶの長さ全体にわたる直径の変化が20%未満であることと定義する。
【0019】
図1と
図3で、こぶが先細りしている場合は、こぶの最上面に隣接してこぶの上端にあるアールのついた角部31のすぐ下に隣接する箇所と、こぶの下端にあるアールのついた角部33を測り、小さい方の直径25と大きい方の直径26の平均をこぶの直径n.d.と定義する。本願でいう「最上」は半径方向外向きを意味し、底面または下側は半径方向内向きを意味する。
【0020】
下の表1は、2つの異なる方法でブラシのこぶのピッチ、高さ、直径を計測した結果を示す。この結果を見ると、類似するブラシに関してこれら2つの方法を比較できるということがわかる。例えばブラシC1をレーザーカメラで計測すると、P/D比が1.47でH/D比が0.64となり、また、目視で測定すると、P/D比が1.44でH/D比が0.64となった。いくつかの試験ブラシを表す文字表記、P/D比またはH/D比、ブラシによって基板から除去されたBTAについての報告された相対的定量的表現(不十分、適正である、良い、とても良い)を示す。
【0022】
ブラシのこぶとこぶの中心間の距離であるピッチPは、約5mmから約22mmまでの距離とする。ブラシによっては、こぶが複数の列を成し、各列が円柱体の長手軸周りの各半径位置に間隔を空けて配置されており、隣り合う列にある位置のずれた二個のこぶの中心軸を通る半径方向の直線と直線の間の角度が22.5度となるような間隔で一列の突起が配列されているものとする。このように22.5度の角度とすると、外周上に16個のこぶを設けることになる。同様に、異なる角度・異なる数のこぶをブラシに設けることもできる。こぶの高さは、こぶの根元から最上面までの高さを計測することができ、このこぶの高さは2mm(約2mm)から8mm(約8mm)までの間で変えてもよい。こぶの直径は4mm(約4mm)から15mm(約15mm)までの間で変えてもよい。ブラシのこぶの直径をすべて同じ大きさとしてもよいし、異なる大きさとしてもよい。ブラシのこぶの高さは実質的にすべて同じであり、ブラシのこぶとこぶの間のピッチも同じ大きさとしてもよいし異なる大きさとしてもよい。このピッチが異なる場合、本願発明に適合するようにブラシの平均ピッチを用いてもよい。
【0023】
こぶの直径に対するこぶのピッチの比率(P/D)が1.2から1.5の範囲の値となり、なおかつ、こぶの直径に対するこぶの高さの比率が0.2から0.5の範囲の値となるような、こぶの直径と、こぶ間のピッチと、こぶの高さとのいくつかの代表的な組み合わせを表2に示した。表2に記載されていない異なるこぶの直径、こぶ間のピッチ、こぶの高さの組み合わせも、無制限にブラシの各種バージョンに用いることができる。
【0025】
ブラシの外径はブラシの中心回転軸からこぶの最上面までの距離を計測し、この距離を2倍することにより決定することができる。この方法は、こぶが互いにブラシの対極位置にない場合であっても、ブラシの有効な外径を決定するのに用いることができる。バージョンによって、ブラシの外径またはブラシの有効な外径を40mmから70mmの範囲で変えてもよい。
【0026】
ブラシにある、こぶの直径に対するこぶのピッチの比率(P/D)は1.2から1.5の間で変えてもよい。P/D比が1.2未満であると、粒子をブラシのこぶの下から脱出させるための空間がこぶ間にほとんどなくなってしまい、基板を引っ掻いてしまう危険がある。逆にP/D比が1.5を超えると、ブラシにこぶのない自由空間が増えてしまうため、効率的に洗浄するための接触面積を十分確保できないおそれがある。
【0027】
ブラシにある、こぶの直径に対するこぶの高さの比率(H/D)は0.2から0.5の範囲で変えてもよい。H/D比が0.2未満である場合、0.2から0.5のときよりも基本的に短くて太く、ブラシのこぶからウエハにかかる応力が大きくなって、基板の損傷につながる可能性がある。P/D比が0.5を超えると、こぶから基板にかかるずり力が小さくなることで、洗浄効率が下がってしまうはずである。
【0028】
バージョンによっては、このP/D比をP/A(接触面積に対するピッチの)比で代替してもよいし、同様にH/D比をH/A(接触面積に対する高さの)比で代替してもよい。こぶはバージョンによっては、こぶの断面を実質的に円柱形としてもよく、例えばひとつまたはいくつかのこぶのどの箇所で測定するかによって直径に±20%未満の差異があってもよい。こぶが円柱形の基部に移行する箇所の、こぶの円錐部分の端部における直径と、こぶ外面の直径を比較する。円錐状のこぶのバージョンでは、こぶの最上部でこの直径をとることもできる。こぶのピッチ、高さ、直径の測定値を10個以上のこぶについての平均値としてもよい。不規則形のこぶや、非対称形のこぶに関しては、直径の代わりに不規則形のこぶを取り囲む円の直径を用いてもよい。ブラシの形状としては、例えば米国特許出願公開第US2013/0048018号(参照によりその全体を本明細書に援用する)などに図示されているような、非対称形のこぶが図示されている。
【0029】
隣接するこぶとこぶの間隔、すなわちピッチは、隣接するこぶ同士の中心間の距離から測定することができ、隣接するこぶとは普通、同列にあるこぶを指すが、らせん状やその他の形に並んだこぶであってもよい。また、こぶは円柱形または円錐台などの他の幾何学的形態であってもよい。不規則形のこぶに関して、例えば「Post−CMP CleaningApparatus and Method」と題して2012年9月26日出願の国際特許出願第PCT/US2012/057337号(パテル)(参照によりその全体を本明細書に援用する)に開示されており(ただしこれに限定しない)、断面のおおよその質量中心を、こぶの中心を見積もるのに用いることができる。
図1に示したように、こぶの高さは、こぶの最表面16または最上面からブラシ基部の外面12までの長さとして測定することができる。
【0030】
バージョンによっては、例えばブラシまたはウエハの中央部の周囲などにおいてこぶが偏って配置されたCMPブラシがあり、または米国特許出願公開第US2013/0048018号(参照によりその全体を本明細書に援用する)に開示されているような配置であったりする。また低圧縮比発泡体を備えかつこぶが偏って配置されているバージョンのCMPブラシでは、ブラシの片側のこぶのP/D比とH/D比が第一の値または第一の値の組であって、中央部のもう片側のこぶのP/D比とH/D比が第二の値または第二の値の組であってもよい。さらに第一のP/D比とH/D比の組ならびに第二のP/D比とH/D比の組は同じでも異なっていてもよく、両方の組はともに、こぶの直径に対するこぶのピッチの比(P/D)が1.2と1.5の範囲内の値となり、こぶの直径に対するこぶの高さの比(H/D)が0.2から0.5の範囲内の値とする。
【0031】
ブラシを備える発泡体の圧縮強度は60g/cm
2から90g/cm
2までとすることができる。60g/cm
2から90g/cm
2までの圧縮強度を有するCMP洗浄ブラシは、90g/cm
2超の圧縮強度の発泡体を備えるブラシと比べれば、比較的柔らかいブラシであると考えられる。バージョンによってはブラシが90g/cm
2以下の圧縮強度の発泡体を有するものもある。より柔らかいブラシを用いることには、こぶの最上面と基板の間に捕捉されるスラリー粒子による基板へのひっかき傷がつきにくくなるという利点があるが、圧縮強度が低いと、基板から粒子やBTAなどの有機物を除去するにあたってのブラシの洗浄効率が低下してしまう可能性がある。
【0032】
より強い力をブラシと基板の間にかけて、例えば銅CMP後のウエハなど(ただしこれに限定しない)の基板から微細粒子や有機物を除去する。P/D比が1.2から1.5のこぶと、H/D比が0.2から0.5のこぶのついたブラシで、とりわけ低圧縮比ブラシ発泡体を用いて洗浄した結果、質的改善が見られた。
【0033】
例えば2006年8月16日出願の米国特許第7,984,526号(ベンソン)や、2006年11月21日出願の米国特許第8,092,730号(ワーゴ等)(これらの内容は参照によりその全体を本明細書に援用する)の教示を利用してブラシを作ることができる。また、1976年1月2日出願の米国特許第4,098,728号(ローゼンブラット)や、2000年3月24日出願の米国特許第6,793,612号(これらの教示は参照によりその全体を本明細書に援用する)の教示を利用してブラシを作ることもできる。
【0034】
図4を参照すると、米国第2013/0048018号に提供されているように、このブラシの片端または両端において、周方向に1列または2列をなすように細長いこぶが配置されていてもよい。
【0035】
ブラシ発泡体はPVA(ポリビニルアルコール)、ポリビニルアセタール、ポリウレタンなどの、CMP洗浄用の発泡体ブラシを作るのに用いる材料であってよい。
【0036】
圧縮量は、ブラシを輪切りして環状(断面)のサンプルを得、インストロンを用いてこの環状サンプルを元の高さの30%にまで圧縮し、30%の高さまで圧縮するのに要した力の大きさを記録することにより決定できる。ブラシ圧縮の結果はg/cm
2で報告することができる。
【0037】
本発明のこれらの及び他の態様は、前述の説明と併せて考慮すれば、より良く認識し、理解できるはずである。その説明は、CMPブラシおよびCMPブラシのこぶに関して様々な実施例と様々なバージョンだけでなく、それらのたくさんの具体的詳細について示しているが、解説のためのものであって、限定するためのものではない。多くの置換、修正、付加または配置換えは本発明の趣旨の範囲内ですることができ、本発明はそのようなすべての置換、修正、付加、配置換えを含む。
【0038】
このこぶは米国特許第6,793,612号の第三段の30行から65行の開示に基づき、本願に記載したブラシの外側にあるブラシとこぶの形状を図示するのに用いることができる。例えば、米国特許第6,793,612号の第三段の30行から65行には高さ約0.1875インチ(0.476cm)で直径0.31インチ(0.78cm)のこぶが記載されている。このこぶは、突起を通過する径方向の直線と直線の間に22.5度を刻む間隔で設けられており、ブラシの周方向に16個の突起を設けることになるはずである。上述のこぶが、外径7センチメートルのブラシに設けられていると仮定した場合、ブラシの半径は3.5cmとなり、こぶ間のピッチは(2×3.145×(3.5))÷16すなわち1.37cmと計算される。同じこぶが設けられたブラシの外径を4cmと仮定すると、こぶ間のピッチは0.78cmとなる。ODが7cmのブラシを仮定すると、P/D比は(1.37÷0.78=1.76)で、H/D比は(0.476÷0.78=0.61)となり、ODが4cmのブラシと仮定すると、P/D比は(0.78÷0.78=1)で、H/D比は(0.476÷0.78=0.61)となる。米国特許第6,793,612号の第三段の30行から65行に記載のこぶを備える、外径7cmのブラシと外径4cmのブラシは、どちらも直径に対するピッチの比(P/D)が1.2から1.5の値とはならないし、こぶの直径に対するこぶの高さの比も0.2から0.5の値とはならない。
【0039】
様々な構成と方法を示したが、本発明は特定の微粒子、構成、デザイン、方法論、またはプロトコルに限定されるものではなく、また同様に変化してもよいことは、当業者であれば当然理解できるはずである。また、説明の中で用いた専門用語は、特定のバージョンと実施例のみを説明するためのものであって、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本開示の範囲を制限しようとするものでないことも、当業者であれば当然理解できるはずである。
【0040】
なお、本願および添付の請求の範囲で用いた単数形の「a」、「an」、「the」には、文脈上で明確に指示しない限り、複数形への言及も含んでいることに注意されたい。したがって、例えば「こぶ」という用語は、1つ以上のこぶや、当業者の間でよく知られている均等物のことを言っており、その他の用語についても同様である。他に定義されない限り、本願で用いた全ての技術用語または科学用語は、当業者によって通常理解されているものと同じ意味を有する。本発明の実施例の実施および試験においては、本願に記載した方法および材料と同じものや均等物を用いることができる。本願に挙げた公報は参照によりその全体を本明細書に援用する。本願に開示したものは、先発明の原則に基づいて本発明がその開示内容に対して先行する権利がないとの承認として解釈してはならない。「自由選択の」または「必要に応じて」という言葉は、その後に記載されたイベントまたは状況が発生してもしなくてもよいということを意味し、この表現にはこのイベントが起きた場合の例と起きなかった場合の例が含まれている。本願のすべての数値は、明確にそう書かれているかどうかに関わらず、「約」という言葉を用いて修飾することができる。「約」という言葉は概して、そこに記載されている数値に等しい(すなわち同じ機能や結果となる)と当業者によって考えられる範囲の数値をいうものである。実施例によっては「約」という言葉は指定した数値の±10%のことを指しているが、他の実施例では「約」は指定した数値の±2%のことを指していたりする。構成および方法が、様々な構成要素とステップを備えることを「備える」という言葉(「〜を含むがこれに限定しない」の意味として解釈される)を用いて説明したが、この構成と方法は様々な構成要素とステップを「基本的に〜からなる」または「〜からなる」するものであってもよく、このような用語は実質的に排他的な部材の集合または排他的な部材の集合を定義するものとして解釈されるべきである。
【0041】
1つ以上の実装を用いて本発明を図示し、説明してきたが、当業者であれば本明細書と添付の図面に基づいて、それと同等の変更および同等の修正を思い付くはずである。本発明はそのような修正や変更の全てを含み、後述する請求の範囲によってのみ本発明が制限される。さらに、本発明の特定の特徴や態様について、複数の実装のうちの1つに関してのみ開示してきたかもしれないが、他の実装のうちの1つ以上の他の特徴または態様が、所与の適用または特定の適用に関して必要であるか利益がある場合には、そのような特徴または態様を先述の特徴または態様と組み合わせてもよい。さらに、「含む」「有する(having, has)」「伴う」または、これらの変種などに含まれる範囲の用語を、詳細な説明や請求の範囲に用いており、このような用語は「備える」という用語と同様に包括的であることを意図している。同様に、「例示的」という用語は、最善例ではなく、ただ単に一例であることを意味する。なお当然ではあるが、本願で示した特徴や層や要素は、単純化および理解しやすいように互いに相対的な特定の寸法や配置で図示されており、実際の寸法や配置は本願に図示したものとは実質的に異なっていてもよいということは理解されたい。
【0042】
本発明は特定の実施例に関してかなり詳細に説明してきたが、他のバージョンも可能である。したがって、添付した請求の範囲の趣旨および範囲が、本明細書に含まれる説明およびバージョンに限定されてはならない。