特許第6844247号(P6844247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6844247-無害化装置及び無害化方法 図000002
  • 特許6844247-無害化装置及び無害化方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844247
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】無害化装置及び無害化方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/64 20060101AFI20210308BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20210308BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   B01D53/64ZAB
   B01D53/78
   B01D53/82
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-249962(P2016-249962)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-103078(P2018-103078A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】飯田 好孝
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−043611(JP,A)
【文献】 特開平07−072295(JP,A)
【文献】 特開平03−100498(JP,A)
【文献】 特開2013−155391(JP,A)
【文献】 特開2012−012241(JP,A)
【文献】 特開平02−099898(JP,A)
【文献】 実開平03−105921(JP,U)
【文献】 特開2001−149739(JP,A)
【文献】 特開平08−024567(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/140653(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第105457459(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14 − 53/18
B01D 53/34 − 53/85
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテニウム化合物を用いたプロセスから生じた酸化ルテニウムガスを無害化する無害化装置であって、
第1のアルカリ溶液を貯留する貯留槽と、該貯留槽に貯留された前記第1のアルカリ溶液中に前記プロセスから生じた前記酸化ルテニウムガスを供給するガス供給手段とを有し、前記酸化ルテニウムガスを前記第1のアルカリ溶液に溶解させる前処理設備と、
該前処理設備から送られてきた該前処理設備で除去されなかった前記酸化ルテニウムガスを、第2のアルカリ溶液を洗浄液として洗浄し、該前処理設備で除去されなかった前記酸化ルテニウムガスを捕捉するスクラバ設備と、を有する無害化装置。
【請求項2】
前記第1のアルカリ溶液は、前記第2のアルカリ溶液よりもpH値が高い請求項1に記載の無害化装置。
【請求項3】
前記前処理設備の前記ガス供給手段は、前記酸化ルテニウムガスを気泡化して前記第1のアルカリ溶液中に供給するバブリング装置を含む請求項1又は2に記載の無害化装置。
【請求項4】
前記スクラバ設備は、充填材と、
該充填材に前記第2のアルカリ溶液を噴霧供給するシャワーノズルと、
該充填材及び該シャワーノズルよりも下流側に設けられ、前記酸化ルテニウムガスを捕捉するフィルタと、を含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載の無害化装置。
【請求項5】
前記充填材及び前記シャワーノズルは、多段で設けられている請求項4に記載の無害化装置。
【請求項6】
前記スクラバ設備は、前記充填材、前記シャワーノズル及び前記フィルタを収納するとともに、前記第2のアルカリ溶液を底面に貯留可能なスクラバ塔と、
前記第2のアルカリ溶液を前記シャワーノズルに供給するポンプと、を有する請求項4又は5に記載の無害化装置。
【請求項7】
前記スクラバ設備の後段には、前記フィルタで捕捉されなかったミストを捕捉するミスト用充填材を有するミスト処理装置が更に設けられた請求項4乃至6のいずれか一項に記載の無害化装置。
【請求項8】
前記ミスト処理装置の後段には、前記ミスト処理装置及び前記スクラバ設備を通過する前記酸化ルテニウムガスを吸引する吸引手段が接続された請求項7に記載の無害化装置。
【請求項9】
前記前処理設備の前段には、前記プロセスから生じた前記酸化ルテニウムガスを前記前処理設備の前記ガス供給手段に供給する送風手段が設けられた請求項1乃至8のいずれか一項に記載された無害化装置。
【請求項10】
前記第1のアルカリ溶液のpH値は12以上14以下であり、
前記第2のアルカリ溶液のpH値は10以上12以下である請求項1乃至9のいずれか一項に記載の無害化装置。
【請求項11】
前記スクラバ設備は、多段で複数個設けられた請求項1乃至10のいずれか一項に記載の無害化装置。
【請求項12】
ルテニウム化合物を用いたプロセスから生じた酸化ルテニウムガスを無害化する酸化ルテニウムガスの無害化方法であって、
前記プロセスから生じた前記酸化ルテニウムガスを第1のアルカリ溶液内に供給して該第1のアルカリ溶液に溶解させる溶解工程と、
該第1のアルカリ溶液に溶解しなかった前記酸化ルテニウムガスを、第2のアルカリ溶液で湿潤された充填材を用いて洗浄した後、フィルタにて捕捉するスクラバ洗浄工程と、を有する無害化方法。
【請求項13】
前記第1のアルカリ溶液は、前記第2のアルカリ溶液よりもpH値が高い請求項12に記載の無害化方法。
【請求項14】
前記プロセスから生じた前記酸化ルテニウムガスは、気泡化して前記第1のアルカリ溶液中に供給される請求項12又は13に記載の無害化方法。
【請求項15】
前記スクラバ洗浄工程の後、前記フィルタで捕捉されなかったミストを、ミスト用充填材を有するミスト処理装置で捕捉するミスト捕捉工程を更に有する請求項12乃至14のいずれか一項に記載の無害化方法。
【請求項16】
前記第1のアルカリ溶液のpH値は12以上14以下であり、
前記第2のアルカリ溶液のpH値は10以上12以下である請求項12乃至15のいずれか一項に記載の無害化方法。
【請求項17】
前記スクラバ洗浄工程は、多段で複数回行われる請求項12乃至16のいずれか一項に記載の無害化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ルテニウムガスを無害化する無害化装置及び無害化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ルテニウムは、化学触媒としてだけでなく、半導体装置の電極や抵抗素子等の電子部品等に利用されている。これらルテニウム類の生産或いは処理工程からは、主にルテニウムやルテニウム化合物を含有するガスや液が排出され、これらを分離回収する処理方法や設備に関して、従来からさまざまな方法が提案されている。
【0003】
ルテニウムやルテニウム化合物を分離回収する方法としては、これら物質にハロゲンガス、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を用いて揮発性の酸化ルテニウム(主に四酸化ルテニウム)とし、回収する酸化蒸留法が一般的に知られている。例えば、特許文献1には、蒸留法を用いて分離回収する方法が開示されている。また、特許文献2には、酸性化のルテニウム溶液内で吸着剤を溶解させた後、アルカリ化することで吸着剤にルテニウムを析出回収する方法が開示されている。
【0004】
これらの回収方法を実際に実施するには、前述の方法に加えて、大小さまざまな前処理、薬剤添加、浸出処理等、多種多様な工程を経てから酸化ルテニウムが精製蒸留されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−179551号公報
【特許文献2】国際特許公開WO2012/111542号再公表公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1、特許文献2に記載のいずれの各方法、各工程においても、様々な工程処理を行う中で、酸化ルテニウムガスの系外への放出は免れ得ない。
【0007】
酸化ルテニウムガスは殆どが四酸化ルテニウムであると考えられるが、非常に粒子が細かい物質でもあり、ミスト状であっても粉塵状であっても、ほとんど通常の気体と変わらないと考えてよいようなガスである。
【0008】
他にも、特有の刺激臭がある、堆積し周囲を黒色に汚染する、強力な酸化作用を持つため付着した材料等に悪影響を及ぼす、等の性質を有するだけでなく、予期せぬ燃焼を促すことがある、非常に不安定なため自己分解爆発を起こすことがある等のやや危険度の高い特徴も持っている。
【0009】
以上述べたように、酸化ルテニウムガスは人間にも環境にも危険性の高い物質であることから、系外に放出することは避けるべきで、確実に捕集・処理することは極めて重要である。
【0010】
酸化ルテニウムガスは、上述のように、非常に粒子が細かい、燃焼の恐れがある等の特徴から、一般的なフィルタや乾式集塵機、電気集塵機等で捕集・処理することは技術的に困難であり、更に、最悪火災や爆発のおそれもある。一般的に、ルテニウム類の生産や各種処理は、もともと生産量が少ないか極めて限定的な規模での実施が多いため、それほど注目・問題にされてくることは殆どなかったものと思われる。
【0011】
しかしながら、今後は、更なる環境負荷低減への取組みとして注目・問題視されてくることになると想定される。
【0012】
そこで、本発明は、ルテニウム類の各種生産或いは各種処理工程において系外に放出される有害な酸化ルテニウムガスを、安全で、効率的にかつ確実に除去することができる無害化装置及び無害化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る無害化装置は、ルテニウム化合物を用いたプロセスから生じた酸化ルテニウムガスを無害化する無害化装置であって、
第1のアルカリ溶液を貯留する貯留槽と、該貯留槽に貯留された前記第1のアルカリ溶液中に前記プロセスから生じた前記酸化ルテニウムガスを供給するガス供給手段とを有し、前記酸化ルテニウムガスを前記第1のアルカリ溶液に溶解させる前処理設備と、
該前処理設備から送られてきた該前処理設備で除去されなかった前記酸化ルテニウムガスを、第2のアルカリ溶液を洗浄液として洗浄し、該前処理設備で除去されなかった前記酸化ルテニウムガスを捕捉するスクラバ設備と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、酸化ルテニウムガスを無害化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係る無害化装置の一例を示した図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る無害化装置の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0017】
本発明の第1の実施形態に係る無害化装置及び無害化方法で補足・処理して無害化する物質は、酸化ルテニウムである。ルテニウムは、半導体装置の電極や抵抗素子等の電子部品等に利用されており、これらの生産工程や、触媒として処理工程等で使用され、その時に発生する酸化ルテニウムがガスとなり、工程外に放出されている。本発明の実施形態に係る酸化ルテニウムガスの無害化装置及び無害化方法では、この工程外に放出されるガスの酸化ルテニウムを99%以上除去すること、又は30mg/m以下、より好ましくは10mg/mとして系外に清浄なガスとして排出することを目標値としている。酸化ルテニウムの殆どは四酸化ルテニウムであると考えられるが、非常に粒子が細かい物質でもあり、ミスト状であっても粉塵状であっても、ほとんど通常の気体と同じと考えてよいようなガスである。
【0018】
この酸化ルテニウムガスは、強力な酸化作用を持ち、且つ、非常に細かい粒子という特徴がある。これらの特徴から、安全性を考慮すると、乾式集塵機、電気集塵機、乾式フィルタ方式よりも湿式処理方法が好ましい。また、酸化ルテニウムガスは酸性であり、アルカリ溶液への溶解性が高いため、湿式における溶解除去効率性を考慮し、本発明の実施形態に係る無害化装置及び無害化方法では、アルカリ溶液を使用した湿式処理方法を採用した。一般的な湿式処理方法としては、スクラバ設備を使用した方法があるが、この方法では、酸化ルテニウムの除去率は60%から85%であり、十分と言える除去率は達成できていない。そこで、発明者は、試行錯誤の結果、本発明を創作するに至った。
【0019】
以下、本発明の第1の実施形態に係る無害化装置につき、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る酸化ルテニウムガスの無害化方法を行う、酸化ルテニウムガスの無害化装置の一例を示した模式図である。本発明の実施形態に係る酸化ルテニウムガス無害化装置は、前段に前処理設備20を有し、後段にスクラバ設備30を有する。また、前処理設備20の前段には、関連構成要素として、プロセス装置10が設けられている。また、スクラバ設備30の後段には、ミスト処理装置50と、ブロア60とが更に設けられている。なお、プロセス装置10と前処理設備20とは、ダクト16を介して接続されている。また、ダクト16には、ファン18が設けられている。前処理設備20とスクラバ設備30とは、ダクト26を介して接続されている。同様に、スクラバ設備30とミスト処理装置50とはダクト39を介して接続され、ミスト処理装置50とブロア60とは、ダクト55を介して接続されている。
【0021】
プロセス装置10は、半導体装置やそれらに用いられる部品の製造を行うためのプロセスを行う装置であり、かかるプロセスにおいて、ルテニウム又はルテニウム化合物が用いられ、酸化ルテニウムガスが発生する。プロセス装置10は、反応槽11を備え、ルテニウム又はルテニウム化合物を用いた各生産工程や触媒としての処理工程を、反応槽11で行う。
【0022】
反応槽11では、ルテニウム処理に必要なさまざまな物質が反応槽投入口12から投入され、攪拌機13により反応を促進するようになっている。反応槽11内には各種反応に必要な反応物質14が満たされている。なお、反応槽11については、ルテニウム処理工程の代表例の一つとして便宜的に記載したもので、槽以外に炉や塔等さまざまな形態が考えられる。本発明の実施形態に係る無害化装置及び無害化方法では、この反応により放出される酸化ルテニウムガス1を処理して無害化し、外系に放出する。
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る無害化装置の各設備について、個別に説明する。
【0024】
前処理設備20は、反応槽11から排出された酸化ルテニウムガス1をアルカリ性の溶液24に接触させることにより、アルカリ溶液24に溶解させて吸収させる溶解工程を行うための設備である。よって、前処理設備20は、前処理槽21内にアルカリ溶液24を貯留する。プロセス装置10の反応槽11における反応により放出される酸化ルテニウムガス1は、反応槽排気口15からファン18の吸引力及び送風力、及びブロア60の吸引力により、ダクト16を介して次工程を行う前処理設備20の前処理槽21に送られる。なお、ファン18は必要に応じて設けられてよく、ブロア60の吸引力、又はガス発生による自然的な拡散力で酸化ルテニウムガス1が前処理槽21に問題無く送られれば、必ずしもファン18は設ける必要は無い。しかしながら、ブロア60と反応槽11とは相当の距離があり、吸引力が不十分な場合には、ファン18を設けて、酸化ルテニウムガス1が円滑に、かつ効率的に前処理槽21に送られるようにすることが好ましい。
【0025】
前処理槽21はアルカリ溶液24で満たされており、プロセス反応により放出される酸化ルテニウムガス1をアルカリ溶液24内に供給し、放出することでアルカリ溶液24に溶解させて吸収させる。なお、ダクト16から供給された酸化ルテニウムガス1は、ガス供給管22を介してアルカリ溶液24内の深い位置に運ばれ、アルカリ溶液24内に供給される。また、酸化ルテニウムガス1を効率良くアルカリ溶液24内に供給するために、バブリング装置23を設けてもよい。送られてきた酸化ルテニウムガス1は、バブリング装置23により細かい粒子状の気泡となり、気泡表面でアルカリ溶液24と反応して除去される。前処理槽21におけるアルカリ溶液24のpH値は、酸化ルテニウムガス1の処理の観点からは高い方が良いが、処理効率と、前処理槽21やバブリング装置23の材料の耐食性とのバランスを考慮すると、12以上14以下のpH値に抑えることが好ましい。一般的に、pH値10を超えて、12以上14以下へと上げることは難しくなってくる。これは、アルカリ溶液24の投入量が増えるだけでなく、空気中のCO等と反応してそのレベルを維持するのが難しいからである。今回の前処理設備20では、バブリング装置23等は単体の装置であり、外気との接触は比較的少ないため、高pH値でも維持しやすい構成と言える。また、バブリング装置23は、駆動部もない機構なので設備自体の耐食性も高い。また、アルカリ溶液24の薬液は、用途に応じて種々の薬液を用いることができるが、汎用性や価格等の面から、例えば水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。アルカリ溶液24を通過し、前処理設備20で除去できなかった酸化ルテニウムガス1は、前処理設部20の出口25から、ダクト26を経由して、スクラバ設備30の入口32に送られる。なお、溶解効率を考慮すると、バブリング装置23を設ける方が好ましいが、酸化ルテニウムガス1をアルカリ溶液24内に供給するガス供給管22が設けられていれば安価でルテニウムガス1をアルカリ溶液24に溶解させることは十分可能であるので、バブリング装置23は、必要に応じて設けるようにしてよい。
【0026】
スクラバ設備30は、前処理設備20で取りきれなかった酸化ルテニウムガス1をスクラバ洗浄し、より確実に補足・処理する設備である。バブリング装置23で除去しきれなかった酸化ルテニウムガス1は、前処理槽21からダクト26を介して次工程のスクラバ設備30に送られる。スクラバ設備30は、スクラバ塔31と、入口32と、シャワーノズル33a、33bと、充填材34a、34bと、フィルタ37と、ポンプ35とから構成される。スクラバ塔31の底部は、アルカリ液36で満たされている。スクラバ設備30に供給された前処理槽21で除去しきれなかった酸化ルテニウムガス1は、2段式のシャワーノズル33a、33bにより、アルカリ溶液36で湿潤された充填材34a、34bに接触反応することで除去される。シャワーノズル33a、33bの構成については、特に限定ははく、充填材34a、34bに均等に不足なくアルカリ溶液36を噴霧供給することができればよい。スクラバ設備30の充填材34a、34bについても特に限定は無く、用途に応じて種々の充填材34a、34bを用いてよいが、なるべくアルカリ液36と酸化ルテニウムガス1との接触がし易くなるように、例えば、比較的小さ目のテラレット、ラシヒリング等を用いることが好ましい。また、図1においては、充填材34a、34bを用いた構成が示されているが、通過する酸化ルテニウムガス1をアルカリ溶液36で洗浄できる構成であれば、種々のアルカリ溶液36保持部材を用いることができる。
【0027】
また、図1のスクラバ設備30においては、2段式のシャワーノズル33a、33b方式を例示しているが、設置スペースや費用等との兼ね合いで、単段式のシャワーノズルとしても良い。スクラバ設備30におけるアルカリ溶液36のpH値も高い方が酸化ルテニウムガス1の捕捉効率は良いが、スクラバ塔31を含むスクラバ設備30本体やポンプ35等の材料の耐食性等から、pH値で10以上12以下に抑えることが望ましい。スクラバ設備30は、前処理設備20と異なり常に空気と接触し、ポンプ35等駆動部も多く、シール部や摺動部の耐食性を考慮すると、高pHでの運転は避ける必要がある。よって、前処理設備20に貯留されるアルカリ溶液24よりも、スクラバ設備30のスクラバ塔31に貯留されるアルカリ溶液36のpH値は小さな値となっている。また、アルカリ液36の薬液は、用途に応じて種々の薬液を用いることができるが、前処理設備20と同様、汎用性や価格等の面から水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。
【0028】
スクラバ塔31内のシャワーヘッド33a、33b及び充填材34a、34bよりも上方、つまり酸化ルテニウムガス1の流れにおけるシャワーヘッド33a、33b及び充填材34a、34bよりも下流側の出口38付近には、フィルタ37が設けられている。フィルタ37は、酸化ルテニウムガス1を含むミストを捕捉するために設けられ、酸化ルテニウムガス1がスクラバ設備30から放出される前に、比較的大きめのミスト等はフィルタ37にて補足回収される。
【0029】
スクラバ設備30の更に後段には、ミスト処理装置50が設けられ、ダクト39を介してスクラバ設備30の出口が、ミスト処理装置50の入口52に接続されている。ミスト処理装置50は、ケーシング51内に、酸化ルテニウムガス1を含むミストを捕捉するミスト充填材53を有する。即ち、フィルタ37で捕捉回収しきれない比較的細かなミストは、ケーシング51内にミスト用充填材53を設置したミスト処理装置50で回収する。
【0030】
酸化ルテニウムガス1の除去処理がなされた清浄なガス2は、最終的にブロア60を介して系外に放出される。ミスト処理装置50の出口54は、ダクト55を介してブロア60の吸入口62に接続されている。ブロア60は、例えば、ケーシング61内に、ファン用の羽根が設けられ、排出口63から清浄なガス2を排出する。なお、このブロア60は、排出と同時に、前処理設備20、スクラバ設備30、ミスト処理装置50内での酸化ルテニウムガス1の供給、排出を行っている。但し、前処理設備20への吸入が不十分な場合には、必要に応じてファン18を前処理設備20とプロセス装置10との間に設けてもよいことは、上述の通りである。
【0031】
以上説明した通り、第1の実施形態に係る無害化装置及び無害化方法によれば、反応槽11から発生した酸化ルテニウムガス1は、前処理槽21とスクラバ塔31にてそれぞれアルカリ液24、36により処理され、清浄なガス2として大気放出される。
【0032】
図2は、特に酸化ルテニウムガスの処理が困難な場合に有効な、2段のスクラバ設備30、40を直列に設置した、本発明の第2の実施形態に係る無害化装置の一例を示した図である。
【0033】
図2に示されるように、第2の実施形態に係る無害化装置は、2段のスクラバ設備30、40を備えている点で、第1の実施形態に係る無害化装置と異なっている。他の構成要素は、第1の実施形態に係る無害化装置と同様であるので、対応する構成要素に同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0034】
2段目のスクラバ設備40は、1段目のスクラバ設備30と同様の構成を有し、スクラバ塔41と、入口42と、シャワーノズル43a、43bと、充填材43a、43bと、アルカリ溶液46と、ポンプ45と、フィルタ47と、出口48とを有する。また、2段目のスクラバ設備40の出口48と、ミスト処理装置50とが、ダクト49により接続されている。このように、2段目のスクラバ設備40は、第1の実施形態に係るスクラバ設備30と同一の構成を有してもよい。2段のスクラバ設備30、40を設けることにより、酸化ルテニウムガス1の量や濃度が高い場合にも、十分に酸化ルテニウムガス1を捕捉、除去することが可能となる。
【0035】
ここで、図2において、第1段目のスクラバ設備30には、フィルタ37が設けられていない。これは、ミスト状態で1段目のスクラバ設備30から2段目のスクラバ設備40に酸化ルテニウムガス1を含むミストを送るからであり、最終の出口48にフィルタ47が1個設けられていれば十分だからである。
【0036】
なお、用途に応じて、1段目のスクラバ設備30と2段目のスクラバ設備40との構成を異なるものとしたり、アルカリ溶液36、46同士のpH値を異ならせたりすることも可能である。例えば、2段目のスクラバ設備40におけるシャワーノズル43a、43b及び充填材44a、44bを2段ではなく単段としたり、2段目のスクラバ設備40のアルカリ溶液46のpH値を1段目のアルカリ溶液36のpH値よりも低い値にしたりすることも可能である。2段目を1段目の捕捉的な役割を担わせる場合には、そのような構成も可能である。
【0037】
このように、第2の実施形態に係る無害化装置によれば、より柔軟な無害化方法を実施することが可能になる。特に酸化ルテニウムガス1の量や濃度が高い場合や、より清浄なガス2が必要な場合は、この方式を採用することが好ましい。
【0038】
なお、第1の実施形態、第2の実施形態のいずれにおいても、シャワーノズル33a、33b、43a、43b及び充填材34a、34b、44a、44bは、2段の場合と単段の場合しか説明していないが、用途に応じて、3段以上の多段としても良いことは言うまでもない。同様に、第2の実施形態に係る無害化装置及び無害化方法においても、スクラバ設備30、40を3段以上の多段とすることも可能である。
【0039】
更に、必要であれば、前処理設備20を2段以上の多段にすることも可能である。このように、本実施形態に係る無害化装置は、用途に応じて種々の構成とすることができ、種々の無害化方法を実施することが可能である。
【実施例】
【0040】
次に、第1の実施形態に係る無害化装置及び無害化処理方法を実施した実施例について説明する。なお、第1の実施形態に係る無害化装置に対応する構成要素には、理解の容易のため、同一の参照符号を付すこととする。
【0041】
本実施例では、抵抗素子等の電子部品作製工程から排出される酸化ルテニウムガスの無害化装置設備及び無害化方法について記載する。
【0042】
工程から排出される酸化ルテニウムガス1は、四酸化ルテニウムで、100mg/m以上であった。これを補足・処理し無害化した。
【0043】
本処理に使用した酸化ルテニウムガス1の無害化装置は、工程から排出される酸化ルテニウムガス1を前処理設備20に供給するファン18と、前処理を行う前処設備20と、湿式処理を行うスクラバ設備30と、残留ミストの除去を行うミスト処理装置50と、酸化ルテニウムガスを吸引するブロア60で構成した。
【0044】
前処理設備20においては、前処理槽21を設け、前処理槽21内にアルカリ溶液24を満たした。アルカリ溶液24は、水酸化ナトリウムを使用した。その時のアルカリ溶液24のpHを12〜14に調整した。また、前処理槽21内には、バブリング装置23を設置した。工程から排出される酸化ルテニウムガス1は、ファン18により前処理設備20に供給され、そのガスは、前処理槽内21に設置されたバブリング装置23を通り、バブリング装置23により細かい粒子状の気泡となり、気泡表面でアルカリ溶液24と反応して除去された。
【0045】
スクラバ設備30は、スクラバ塔31と、2段式のシャワーノズル33a、33bと、2段式の充填材34a、34bと、フィルタ37と、ポンプ35から構成した。スクラバ塔31の底部にはアルカリ溶液36を貯留した。アルカリ溶液36は、水酸化ナトリウムを使用した。その時のアルカリ溶液36のpHを10〜12に調整した。充填材34a、34bは、テラレットを使用した。スクラバ塔31の出口38の手前にはフィルタ37を設置した。前処理設備20で取りきれなかった酸化ルテニウムガス1は、スクラバ塔31の下側の入口32から供給され、2段式のシャワーノズル33a、33bにより湿潤された充填材34a、34bに接触反応することで除去された。スクラバ設備30から排出されるミスト等は、スクラバ出口38前のフィルタ37にて吸収した。
【0046】
ミスト処理装置50は、スクラバ設備30の後に設置された。フィルタ37で捕捉回収しきれない比較的細かなミストは、ミスト用充填材53をケーシング51内に設置したミスト処理装置50で吸収した。
【0047】
ブロア60は、ミスト処理装置50の後に設置した。ミストは、最終的にブロア60を介して処理され、無害化されたガス2が系外に放出された。
【0048】
この時の排出されたガス2に含まれた酸化ルテニウムは、0.4mg/m以下であった。
【0049】
このように、本実施例によれば、100mg/m以上あった酸化ルテニウムが、最終的には0.4mg/m以下に低減され、本実施形態に係る無害化装置及び無害化方法により、酸化ルテニウムガスを含むガスが無害化されることが証明された。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 酸化ルテニウムガス
2 清浄なガス
10 プロセス装置
11 反応槽
14 反応物質
15 反応槽排気口
16、26、39、49、55 ダクト
20 前処理設備
21 前処理槽
22 ガス供給管
23 バブリング装置
24、36、46 アルカリ溶液
30、40 スクラバ設備
33a、33b、43a、43b シャワーノズル
34a、34b、44a、44b 充填材
35、45 ポンプ
37、47 フィルタ
38、48 スクラバ出口
50 ミスト処理装置
60 ブロア
図1
図2