(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、ヒドロシリル化によって付加架橋可能なオルガノポリシロキサンが知られている。
例えば、特許文献1には、フェニルシルセスキオキサン単位を有する付加架橋可能なオルガノポリシロキサンを用いた熱硬化性樹脂組成物が開示されている。
しかし、アルキルシルセスキオキサン単位を含有する付加架橋可能なオルガノポリシロキサンは、そのモノマーであるアルキルトリアルコキシシラン化合物の加水分解縮合反応が非常に速く、ゲル化が起こるため、合成が困難であることが本発明者らの検討で明らかになっている。
【0003】
特許文献2には、メチルトリメトキシシランを含むアルコキシシラン混合物を加水分解する際、加水分解縮合の速度を遅くするために、アルコキシシリル基の加水分解によって生じるシラノール基を触媒として加水分解を行う手法が開示されている。また、この文献では、加水分解縮合を行った後、カルボン酸やカルボン酸塩を添加してメタノールを留去することで、ゲル化することなくオルガノポリシロキサンを合成する手法が開示されている。
しかし、特許文献2の手法は、低分子量のオルガノポリシロキサンの合成に適しているものの、重合が遅いため、比較的高分子量のオルガノポリシロキサンを得ようとすると厳しい反応条件が必要となるので、反応のコントロールが難しく、ゲル化や再現性低下、ミクロゲル発生による作業性低下などの問題がある。
【0004】
特許文献3には、アルカリ性加水分解触媒の存在下でメチルトリメトキシシランを含むモノマー組成物を加水分解し、反応混合物を濃縮して目的の分子量まで重合するとともに副生したアルコールを留去し、次いで酸性加水分解触媒を添加して残存アルコキシ基を加水分解縮合させることにより、ゲル化やミクロゲルの発生無しにオルガノポリシロキサンを合成する手法が開示されている。
しかし、ヒドロシリル基はアルカリ性条件下で分解するため、特許文献3の手法は、付加架橋可能なオルガノポリシロキサンの合成には適用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、アルキルシルセスキオキサン単位を有する付加架橋可能なポリシロキサン、およびこのポリシロキサンを、ゲル化の発生を抑制しつつ効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、アルキルシルセスキオキサン単位を有する付加架橋可能な所定のポリシロキサンが、加熱により耐熱性に優れた硬化物を与えるため、耐熱塗料等のバインダー成分やコーティング材料に好適であることを見出すとともに、所定の環状アルコキシシロキサンを含む有機ケイ素化合物を加水分解縮合することで、当該ポリシロキサンを、ゲル化の発生を抑制しつつ効率的に製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. 下記式(1)
【化1】
(式中、R
1は、互いに独立して置換または非置換の炭素原子数1〜3のアルキル基を表し、R
2は、互いに独立して置換または非置換の炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、nは、3〜8の整数を表す。)
で表される環状アルコキシシロキサンを含むケイ素化合物の加水分解縮合物からなり、ヒドロシリル化可能な炭素−炭素不飽和基を1分子中に少なくとも2つ有し、かつ、ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2つ有し、
前記加水分解縮合物中の全シロキサン単位に占める、前記R
1で表される基を有するT単位のモル分率をt1としたとき、0.25≦t1<1を満たす範囲であることを特徴とするポリシロキサン、
2. 前記式(1)で表される環状アルコキシシロキサンと、下記式(2)〜(6)で表されるケイ素化合物のうちの一種以上との共加水分解縮合物である1のポリシロキサン、
【化2】
(式中、R
2は、前記と同じ意味を表し、R
3は、水素原子、置換もしくは非置換の炭素原子数2〜6のアルケニル基、または炭素原子数6〜18のアリール基を表し、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、互いに独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭素原子数1〜18の1価炭化水素基を表す。)
3. さらに、前記加水分解縮合物中の全シロキサン単位に占める、Q単位のモル分率をq、R
3で表される基を有するT単位のモル分率をt2、D単位のモル分率をd、M単位のモル分率をmとしたとき、
前記t1、q、t2、dおよびmが、0≦q≦0.5、0.25≦t1<1、0≦t2≦0.5、0≦d≦0.7、0≦m≦0.5、かつq+t1+t2+d+m=1を満たす範囲である2のポリシロキサン、
4. 前記R
1が、メチル基であり、前記R
2が、互いに独立してメチル基またはエチル基であり、前記R
3が、互いに独立して、水素原子、ビニル基またはフェニル基であり、前記R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8が、互いに独立して、水素原子、メチル基、ビニル基、またはフェニル基であり、nが、4または5である2または3のポリシロキサン、
5. 下記式(1)で表される環状アルコキシシロキサンと、下記式(2)〜(6)で表されるケイ素化合物のうちの一種以上とを共加水分解縮合させることを特徴とするポリシロキサンの製造方法、
【化3】
(式中、R
1は、互いに独立して置換または非置換の炭素原子数1〜3のアルキル基を表し、R
2は、互いに独立して置換または非置換の炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、R
3は、水素原子、置換もしくは非置換の炭素原子数2〜6のアルケニル基、または炭素原子数6〜18のアリール基を表し、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、互いに独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭素原子数1〜18の1価炭化水素基を表し、nは、3〜8の整数を表す。ただし、R
1、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8のうち、少なくとも2つは水素原子であり、かつ、少なくとも2つは置換または非置換の炭素原子数2〜6のアルケニル基である。)
6. 前記R
1が、メチル基であり、前記R
2が、互いに独立してメチル基またはエチル基であり、前記R
3が、互いに独立して、水素原子、ビニル基またはフェニル基であり、前記R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8が、互いに独立して水素原子、メチル基、ビニル基またはフェニル基であり、nが、4または5である5のポリシロキサンの製造方法、
7. 1〜4のいずれかのポリシロキサンと、白金系触媒とを含み、
前記白金系触媒が、前記ポリシロキサン100質量部に対して白金量換算で0.01×10
-4〜50×10
-4質量部含まれる熱硬化性組成物、
8. 7の組成物から得られる硬化物
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアルキルシルセスキオキサン単位を有する付加架橋可能なポリシロキサンを含む組成物は、加熱により耐熱性に優れた硬化物を与えるため、耐熱塗料、耐熱樹脂などのバインダー成分や、建材、成形体に対してのコーティング、電子部品のコーティング材料や封止材料に好適に用いることができる。
また、本発明のポリシロキサンの製造方法を用いることで、ゲル化の発生を抑制しつつ、アルキルシルセスキオキサン単位を有する付加架橋可能なポリシロキサンを効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るポリシロキサンは、下記式(1)で表される環状アルコキシシロキサンを含むケイ素化合物の加水分解縮合物からなり、ヒドロシリル化可能な炭素−炭素不飽和基を1分子中に少なくとも2つ有し、かつ、ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2つ有し、加水分解縮合物中の全シロキサン単位に占める、式(1)中R
1で表される基を有するT単位のモル分率をt1としたとき、0.25≦t1<1を満たす範囲であることを特徴とする。
【0012】
式(1)において、R
1は、互いに独立して置換または非置換の炭素原子数1〜3のアルキル基を表し、R
2は、互いに独立して置換または非置換の炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、nは、3〜8の整数を表す。
【0013】
R
1の炭素原子数1〜3のアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル基等が挙げられるが、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
R
2の炭素原子数1〜6のアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル基等が挙げられるが、炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
なお、上記アルキル基は、その水素原子の一部または全部が、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子)またはシアノ基等のその他の置換基で置換されていてもよく、その具体例としては、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
また、nは3〜8の整数であるが、4、5、6が好ましく、工業的に入手し易いという点で、4がより好ましい。
【0014】
本発明のポリシロキサンは、上述のとおり、ヒドロシリル化可能な炭素−炭素不飽和基を1分子中に少なくとも2つ、好ましくは3つ以上有し、かつ、ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2つ、好ましくは3つ以上有する。これらの官能基を有しているため、本発明のポリシロキサンは、ヒドロシリル化反応を用いて硬化させることができる。
ヒドロシリル化可能な炭素−炭素不飽和基としては、置換または非置換の炭素原子数2〜6のアルケニル基が好ましく、その具体例としては、ビニル、1−プロペニル、アリル(2−プロペニル)、ヘキセニル、オクテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル基等が挙げられるが、これらの中でもビニル基がより好ましい。
【0015】
本発明のポリシロキサン中における、ヒドロシリル化可能な炭素−炭素不飽和基の含有量は、ケイ素原子1モルあたり0.025〜0.5モルの範囲が好ましく、0.05〜0.4モルの範囲がより好ましい。この範囲を満たすことで、架橋反応が十分に進行する。
本発明のポリシロキサン中のヒドロシリル基の含有量は、ケイ素原子1モルあたり0.025〜0.5モルが好ましく、0.05〜0.4モルがより好ましい。
また、ヒドロシリル化可能な炭素−炭素不飽和基の総モル数に対して、ヒドロシリル基が0.5〜5.0倍モルとなる量が好ましく、0.7〜4.0倍モルとなる量がより好ましく、0.7〜2.0倍モルとなる量がより一層好ましい。この範囲を満たすことで、効率よく架橋反応が進行する。
【0016】
本発明のポリシロキサンは、上記式(1)で表される環状アルコキシシロキサンを含むケイ素化合物の加水分解縮合物であり、上述した数の炭素−炭素不飽和基およびヒドロシリル基を有するものであれば、特に限定されるものではないが、上記式(1)で表される環状アルコキシシロキサンと、下記式(2)〜(6)で表されるケイ素化合物のうちの一種以上との共加水分解縮合物であることが好ましい。
【0018】
上記各式において、R
2は、上記と同じ意味を表し、R
3は、水素原子、置換もしくは非置換の炭素原子数2〜6のアルケニル基、または炭素原子数6〜18のアリール基を表し、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、互いに独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭素原子数1〜18の1価炭化水素基を表す。
【0019】
R
3の炭素原子数2〜6のアルケニル基としては、ビニル、1−プロペニル、アリル(2−プロペニル)、ヘキセニル、オクテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル基等が挙げられるが、ビニル基が好ましい。
なお、上記アルケニル基は、その水素原子の一部または全部が、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子)またはシアノ基等のその他の置換基で置換されていてもよい。
炭素原子数6〜18のアリール基としては、フェニル、ナフチル基等の非置換アリール基;トリル、キシリル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18のアルキルアリール基などが挙げられるが、フェニル基が好ましい。
【0020】
また、R
4〜R
8の炭素原子数1〜18の1価炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等の炭素原子数1〜18のアルキル基;ビニル、1−プロペニル、アリル(2−プロペニル)、ヘキセニル、オクテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル、ナフチル基等の非置換アリール基;トリル、キシリル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル基等のアルキルアリール基;ベンジル、フェネチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0021】
これらの中でも、アルキル基としては炭素原子数1〜4のものが好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。また、アルケニル基としては炭素原子数2〜4のものが好ましく、アリル(2−プロペニル)基、ビニル基がより好ましい。アリール基としては、炭素数6〜12の非置換アリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
なお、上記1価炭化水素基は、その水素原子の一部または全部がその他の置換基で置換されていてもよく、その他の置換基の具体例としては、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;グリシドキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、アミノ基、メルカプト基、ヒドロキシ基等の反応性基などが挙げられる。
【0022】
本発明のポリシロキサンは、加水分解縮合物中の全シロキサン単位に占める、上記R
1で表される基を有するT単位のモル分率をt1としたとき、0.25≦t1<1を満たすが、0.3≦t1<1が好ましい。t1が0.25未満であると、架橋密度が低下して被膜や成形体の強度が低下する。
さらに、本発明のポリシロキサンは、全シロキサン単位に占めるQ単位のモル分率をq、R
3で表される基を有するT単位のモル分率をt2、D単位のモル分率をd、M単位のモル分率をmとしたとき、q+t1+t2+d+m=1であり、q、t2、d、mは下記の範囲であるものが好ましい。
すなわち、qは、重合時にゲル化がより起こりにくい0≦q≦0.5の範囲が好ましく、0≦q≦0.2がより好ましい。
t2は、重合時にゲル化がより起こりにくい0≦t2≦0.5の範囲が好ましく、0≦t2≦0.3がより好ましい。
dは、架橋密度の低下を抑え、被膜や成形体の強度をより高くする観点から、0≦d≦0.7の範囲が好ましく、0≦d≦0.5の範囲がより好ましい。
mは、ポリシロキサンが低分子量となり過ぎることを防いで強度に優れた被膜や成形体を得るという観点から、0≦m≦0.5の範囲が好ましく、0≦m≦0.4の範囲がより好ましい。
【0023】
本発明のポリシロキサンの平均分子量は特に限定されるものではないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量で500〜100,000が好ましく、1,000〜60,000がより好ましい。このような範囲であれば、より硬化物の強度や耐熱性に優れ、取り扱いも容易なものとなる。
また、本発明のオルガノポリシロキサンの粘度は特に限定されるものではないが、作業性および反応操作の容易さの観点から、1〜50,000mPa・sが好ましく、10〜30,000mPa・sがより好ましい。なお、本発明における粘度はJIS Z 8803の9.2に準拠し、単一円筒型回転粘度計による25℃における測定値である。
【0024】
本発明のポリシロキサンの製造方法は、式(1)で表される環状アルコキシシロキサンと、式(2)〜(6)で表されるケイ素化合物のうちの一種以上とを共加水分解縮合させる方法が好ましい。この場合、式(1)で表される環状アルコキシシロキサン化合物の量は、共加水分解縮合させるケイ素化合物の合計に対してケイ素成分で25モル%以上100モル%未満となる量である。
【0026】
上記各式において、R
1〜R
8およびnは、上記と同じ意味を表すが、R
1、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8のうち、少なくとも2つは水素原子であり、かつ、少なくとも2つは置換または非置換の炭素原子数2〜6のアルケニル基である。このアルケニル基としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0027】
式(1)で表される環状アルコキシシロキサンは、平面性の高い環状構造を有するため、重合時の3次元的な架橋が抑制され、ゲル化を防ぐことができると考えられる。また、式(1)で表される環状アルコキシシロキサンによって導入されたアルキルシルセスキオキサン単位は、ケイ素原子1つあたり炭素原子を1〜3個しか持たないため、例えば、ケイ素原子1つあたり炭素原子を6つ有するフェニルシルセスキオキサン単位に比べて700℃における耐熱性に優れる。
このように、本発明のポリシロキサンの製造方法は、700℃のような高温条件下における耐熱性に優れた硬化物を与えるオルガノポリシロキサンをゲル化することなく合成可能な点において優れている。
【0028】
式(1)で表される環状アルコキシシロキサンは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、さらに、2種以上の加水分解縮合物を用いてもよい。
式(1)で表される環状アルコキシシロキサンの具体例としては、下記式(1A)〜(1H)で示される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
式(1)で表される環状アルコキシシロキサンと共加水分解縮合するケイ素化合物としては、具体的には下記のようなものが例示でき、これらは1種単独で用いても、2種以上の組み合わせて用いてもよく、さらに、これらの加水分解縮合物を用いてもよい。
テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラノルマルプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラノルマルブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラtert−ブトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
トリアルコキシシランとしては、フェニルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、5−ヘキセニルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルトリメトキシシラン、3−(4−ビニルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルメチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
ジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジメチルジイソプロペノキシシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
モノアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシランが挙げられ、さらに、これらの加水分解縮合物であるヘキサメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン等も好適に用いることができる。
【0034】
上記式(1)で表される環状アルコキシシロキサンと上記各種ケイ素化合物の共加水分解縮合は、公知の方法で行うことができる。
この際、加水分解時に使用する水の添加量を、原料のアルコキシ基の全てを加水分解するために必要な量よりも少なくすることで、得られるポリシロキサンは加水分解性基シリル基であるメトキシ基やエトキシ基を多く含むポリシロキサンとなり、アルコキシ基の全てを加水分解するために必要な量よりも多くの水を添加することで、シラノールを多く含むポリシロキサンとなる。
【0035】
また、加水分解縮合反応は必要に応じて有機溶媒存在下で行ってもよい。
有機溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール等のアルコール類などが挙げられる。
【0036】
加水分解を実施するに際し、加水分解触媒を使用してもよい。
加水分解触媒は、従来公知の触媒を使用することができるが、その水溶液がpH2〜7の酸性を示すものが好ましく、特に酸性のハロゲン化水素、カルボン酸、スルホン酸、酸性または弱酸性の無機塩、イオン交換樹脂等の固体酸などが好ましい。
酸性触媒の具体例としては、フッ化水素、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、マレイン酸に代表される有機カルボン酸;メタンスルホン酸;表面にスルホン酸基またはカルボン酸基を有するカチオン交換樹脂などが挙げられる。
これらの中でもメタンスルホン酸、塩酸、硝酸が好ましく、反応性の観点から、メタンスルホン酸がより好ましい。
【0037】
加水分解触媒の量はケイ素原子上の加水分解性基1モルに対して0.001〜10モル%の範囲内であることが好ましい。
さらに、加水分解工程(第一工程)の後に、反応溶媒、副生物、残留モノマーおよび水等を留去する工程(第二工程)を行うことが好ましい。
【0038】
本発明のポリシロキサンは、ヒドロシリル化触媒を添加することで熱硬化性組成物とすることができる。
ヒドロシリル化触媒は、オルガノポリシロキサンの付加反応(ヒドロシリル化反応)を促進するものとして従来公知の触媒であればよいが、白金系触媒が好ましい。
白金系触媒の具体例としては、塩化白金酸、塩化白金酸−オレフィン錯体、塩化白金酸−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、塩化白金酸−アルコール配位化合物、白金のジケトン錯体等が挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
白金系触媒の使用量は、硬化性および硬化物の着色とのバランスの点で、上記のオルガノポリシロキサン100質量部に対し、白金の量に換算して0.01×10
-4〜50×10
-4質量部が好ましく、0.1×10
-4〜30×10
-4質量部がより好ましい。
【0039】
また、上記の熱硬化性組成物には、ポットライフを確保するために制御剤を配合してもよい。
制御剤は、上記白金触媒に対して硬化抑制効果を有する化合物であれば特に限定されるものではなく、その具体例としては、トリフェニルホスフィン等のリン含有化合物;トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等の窒素含有化合物;メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、2,2−ジベンゾチアゾリルジスルフィド等の硫黄含有化合物;1−エチニルシクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレンアルコール化合物;ビス[(1,1−ジメチル−2−プロピニル)オキシ]メチルフェニルシラン等のアセチレン化合物;アルケニル基を2個以上含む化合物;ハイドロパーオキシ化合物;マレイン酸誘導体などが挙げられる。
【0040】
さらに、上記の熱硬化性組成物は希釈溶剤を含んでいてもよい。
希釈溶剤としては、本発明のオルガノポリシロキサンを溶解または分散し得るものであれば特に制限されるものではなく、その具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、オクタン等の炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール等のアルコール類などが挙げられる。
【0041】
本発明の熱硬化性組成物の調製方法には特に制限はなく、上述したオルガノポリシロキサンと白金系触媒とを、適宜な手段で混合すればよい。
組成物の硬化条件も従来公知の付加型オルガノポリシロキサン組成物の硬化条件に従えばよく、例えば、50〜200℃で、10分〜24時間程度加熱する条件が挙げられる。
また、本発明の熱硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加剤をさらに含んでいてもよい。
その他の添加剤としては、例えば、無機充填剤、蛍光体、シランカップリング剤、接着助剤、老化防止剤等が挙げられる。
【0042】
本発明の加水分解縮合物およびその組成物から得られる硬化物は耐熱性に優れるため、耐熱塗料、耐熱樹脂などのバインダー成分や、建材、成形体に対してのコーティング、電子部品のコーティング材料や封止材料として好適に利用できる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、以下において、重量平均分子量(Mw)の値は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、製品名:HLC−8320GPC EccSEC、東ソー(株)製)を用いてテトラヒドロフランを展開溶媒として測定した標準ポリスチレン換算値である。
粘度は、JIS Z 8803の9.2に準拠し、単一円筒型回転粘度計を用いて25℃で測定した値である。
また、上記q、t1、t2、d、mの値は、
1H−NMR測定(装置名:ULTRA SHIELD 400 Plus、Bruker製)および
29Si−NMR測定(装置名:JNM−ECX5002、JEOL製)の結果から算出した。各略号はそれぞれ下記のシロキサン単位を表す。Q:SiO
4/2、T
Me:MeSiO
3/2、T
H:HSiO
3/2、T
Vi:ViSiO
3/2、T
Φ:PhSiO
3/2、D
H:MeHSiO
2/2、D
Vi:ViHSiO
2/2、M
H:Me
2HSiO
1/2、M
Vi:Me
2ViSiO
1/2、M:Me
3SiO
1/2(式中、Meはメチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基をそれぞれ表す。)
【0044】
(1)ポリシロキサンの合成
[実施例1−1]
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、T
Me単位が50mol%,T
H単位が10mol%,T
Vi単位が10mol%,M
H単位が30mol%となるように、国際公開第2007/140012号のExample26の手順に従って合成した上記式(1A)で表される環状アルコキシシロキサン化合物675g、トリメトキシシラン183g、ビニルトリメトキシシラン222g、テトラメチルジシロキサン302g、トルエン977gを仕込み、撹拌しながらメタンスルホン酸15gを投入した後、さらに水156gを1時間かけて滴下し、67℃で2時間熟成させ、さらに80℃で3時間熟成させた。得られた液を抽出水の液性が中性になるまで水洗した後、溶媒を留去する事で、生成物を得た。
得られたオルガノポリシロキサンは、Mw47,000、粘度18,300mPa・sであり、NMR測定の結果から算出した各構成単位の割合は、それぞれq=0、t1=0.54、t2=0.22、d=0、m=0.24であった。
【0045】
[実施例1−2〜1−5、比較例1−1〜1−4]
表1に示すモル比に変更した以外は、実施例1−1と同様の手法でオルガノポリシロキサンを合成した。NMR測定の結果から算出した各構成単位の割合を表1,2に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
表1,2に示されるように、実施例1−1〜1−5では加水分解縮合時にゲル化することなく、目的のポリシロキサンが製造できていることがわかる。
一方、化合物(1A)の代わりにメチルトリメトキシシランを用いて合成を試みている比較例1−1〜1−3では、加水分解縮合時にゲル化が起こり、目的のポリシロキサンが製造できていないことがわかる。
【0049】
(2)
熱硬化性組成物およびその硬化物の作成
[実施例2−1]
実施例1−1で得られたポリシロキサン(A−1)100質量部に対し、白金系触媒(白金(0)−1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、Pt含有率0.08質量%)を白金量換算で10×10
-4質量部添加し、25℃で混合溶解させることで、熱硬化性組成物を得た。
【0050】
[実施例2−2〜2−5、比較例2−1]
組成比を表3に示す組成比に変更した以外は、実施例2−1と同様にして各熱硬化性組成物を調製した。
【0051】
上記実施例2−1〜2−5および比較例2−1で得た熱硬化性組成物を型に流し込み、200℃で16時間加熱し、25℃まで放冷して厚み1.3mmの硬化物を作製した。得られた硬化物の大気下、700℃での加熱減量率を、TG−DTA(装置名:Thermo plus EVO2、Rigaku製)で測定した。得られた値を表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
表3に示されるように、本発明のポリシロキサン(A−1)〜(A−5)を用いた熱硬化性組成物から得られる実施例2−1〜2−5の硬化物は耐熱性に優れることがわかる。
一方、比較例1−4のポリシロキサン(B−4)は、実施例1−5のポリシロキサン(A−5)のメチルシルセスキオキサン単位をフェニルシルセスキオキサン単位に置換した構造を有しているが、このポリシロキサン(B−4)を用いた熱硬化性組成物を硬化させて得られた比較例2−1の硬化物は、実施例2−5の硬化物と比べ、700℃における減量が大きく、耐熱性に劣ることがわかる。