【文献】
添加剤ドットコム 耐光安定剤,2015年,遅くとも3月10日には公開,https://web.archive.org/web/20150310225925/http://www.tenkazai.com/ciba/syousai_taikou.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも、脂環構造含有重合体、硫黄原子及び/又はリン原子を有していてもよいヒンダードフェノール系酸化防止剤、並びにヒンダードアミン化合物、を配合してなり、硫黄原子及び/又はリン原子を有するヘテロ原子含有化合物(ただし、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤を除く)を含有していてもよい樹脂組成物であって、
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の配合量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して0.2〜2.0重量部、
前記ヒンダードアミン化合物の配合量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して0.005〜0.10重量部、
前記ヘテロ原子含有化合物の配合量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して0.05重量部以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を、1)樹脂組成物、並びに、2)樹脂成形体及び光学部材、に項分けして詳細に説明する。
【0021】
1)樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、
(i)脂環構造含有重合体、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及びヒンダードアミン化合物、を含有する樹脂組成物であって、
(ii)前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、前記式(1)で示される基を有する化合物であり、
(iii)前記ヒンダードアミン化合物が、分子内に、前記式(2)で示される基を有する化合物であり、
(iv)前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して、0.1重量部以上2.0重量部以下であり、
(v)前記ヒンダードアミン化合物の含有量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して、0重量部超1.0重量部以下である、
ことを特徴とする。
【0022】
〔脂環構造含有重合体〕
本発明の樹脂組成物を構成する脂環構造含有重合体は、主鎖及び/又は側鎖に脂環構造を有する重合体である。なかでも、機械的強度、耐熱性等に優れる樹脂成形体が得られ易いことから、主鎖に脂環構造を有するものが好ましい。
脂環構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造等が挙げられる。なかでも、機械的強度、耐熱性等に優れる樹脂成形体が得られ易いことから、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、シクロアルカン構造がより好ましい。
脂環構造を構成する炭素原子数は、特に限定されないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲である。脂環構造を構成する炭素原子数がこれらの範囲内であることで、機械的強度、耐熱性、及び成形性等の特性がより高度にバランスされた樹脂成形体が得られ易くなる。
【0023】
脂環構造含有重合体中の脂環構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択することができる。この繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位に対して、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。脂環構造含有重合体中の脂環構造を有する繰り返し単位の割合が30重量%以上であることで、耐熱性、透明性等に優れる樹脂成形体が得られ易くなる。脂環構造含有重合体中の脂環構造を有する繰り返し単位以外の残部は、特に限定されず、使用目的に応じて適宜選択される。
【0024】
脂環構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、通常、5,000〜500,000、好ましくは8,000〜200,000、より好ましくは10,000〜100,000である。脂環構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)がこれらの範囲内であることで、樹脂成形体の機械的強度と、樹脂成形体を製造する際の成形加工性とがより高度にバランスされる。
脂環構造含有重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、通常、1.0〜4.0、好ましくは1.0〜3.0、より好ましくは1.0〜2.5である。
脂環構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、シクロヘキサンを溶媒としてゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を行い、標準ポリイソプレン換算値として求めることができる。
【0025】
脂環構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、通常、100〜200℃、好ましくは130〜170℃である。
脂環構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)が100℃以上であることで、耐熱性に優れる樹脂成形体が得られ易くなる。また、脂環構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)が200℃以下の脂環構造含有重合体を含有する樹脂組成物は溶融時に十分な流動性を有し、成形性に優れる。
ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に基づいて測定することができる。
脂環構造含有重合体は、非晶性樹脂(融点を有しない樹脂)であることが好ましい。脂環構造含有重合体が非晶性樹脂であることで、より透明性に優れる樹脂成形体が得られ易くなる。
【0026】
脂環構造含有重合体の具体例としては、(a)ノルボルネン系重合体、(b)単環の環状オレフィン系重合体、(c)環状共役ジエン系重合体、(d)ビニル脂環式炭化水素系重合体等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度に優れる樹脂成形体が得られ易いことから、ノルボルネン系重合体が好ましい。
なお、本明細書において、これらの重合体は、重合反応生成物だけでなく、その水素化物も意味するものである。
【0027】
(a)ノルボルネン系重合体
ノルボルネン系重合体は、ノルボルネン骨格を有する単量体であるノルボルネン系単量体を重合して得られる重合体又はその水素化物である。
ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体、これらの開環重合体の水素化物、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体等が挙げられる。
【0028】
ノルボルネン系単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.0
1,6.1
2,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、テトラシクロ[9.2.1.0
2,10.0
3,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、(メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、テトラシクロ[4.4.1
2,5.1
7,10.0]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、等が挙げられる。
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基等が挙げられる。
置換基を有するノルボルネン系単量体としては、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらのノルボルネン系単量体は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、及びこれらの誘導体(環に置換基を有するもの)等の単環の環状オレフィン系単量体等が挙げられる。これらの置換基としては、ノルボルネン系単量体の置換基として示したものと同様のものが挙げられる。
【0030】
ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜20の、α−オレフィン及びこれらの誘導体(置換基を有するもの);シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン等の、シクロオレフィン及びこれらの誘導体(環に置換基を有するもの);1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン;等が挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。これらの置換基としては、ノルボルネン系単量体の置換基として示したものと同様のものが挙げられる。
【0031】
ノルボルネン系単量体の開環重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体は、単量体成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合させることにより合成することができる。
開環重合触媒としては、ルテニウム、オスミウム等の金属のハロゲン化物と、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデン等の金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒等が挙げられる。
【0032】
ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0033】
ノルボルネン系単量体の付加重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体は、単量体成分を、公知の付加重合触媒の存在下で重合させることにより合成することができる。付加重合触媒としては、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が挙げられる。
【0034】
これらのノルボルネン系重合体の中でも、耐熱性、機械的強度等に優れる樹脂成形体が得られ易いことから、ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物が好ましく、ノルボルネン系単量体として、テトラシクロ[9.2.1.0
2,10.0
3,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエンを用いたノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物がより好ましい。ノルボルネン系重合体中の、テトラシクロ[9.2.1.0
2,10.0
3,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン由来の繰り返し単位の量は、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましい。
【0035】
(b)単環の環状オレフィン系重合体
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン系単量体の、付加重合体が挙げられる。
これらの付加重合体の合成方法は特に限定されず、公知の方法を適宜利用することができる。
【0036】
(c)環状共役ジエン系重合体
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系単量体を1,2−又は1,4−付加重合した重合体及びその水素化物等が挙げられる。
これらの付加重合体の合成方法は特に限定されず、公知の方法を適宜利用することができる。
【0037】
(d)ビニル脂環式炭化水素系重合体
ビニル脂環式炭化水素系重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素化物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素化物;等が挙げられる。
また、ビニル脂環式炭化水素系重合体は、ビニル脂環式炭化水素系単量体やビニル芳香族系単量体と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。かかる共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体等が挙げられる。
これらの重合体の合成方法は特に限定されず、公知の方法を適宜利用することができる。
【0038】
〔ヒンダードフェノール系酸化防止剤〕
本発明の樹脂組成物を構成するヒンダードフェノール系酸化防止剤は、下記式(1)で示される基を有する化合物であって、パーオキシラジカル(ROO・)を捕捉し得るものである。
【0040】
式(1)中、R
1、R
2は、それぞれ独立に、炭素数が1以上の基を表し、R
1とR
2を構成する炭素数の合計は、2〜20であり、好ましくは3〜15、より好ましくは5〜10である。*は結合手を表す。
R
1、R
2としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基が挙げられる。また、R
1、R
2は、これらのアルキル基の炭素−炭素結合間に硫黄原子が挿入されてなるものであってもよい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤に含まれる前記式(1)で示される基の数は特に限定されず、通常1〜10、好ましくは1〜5である。
【0041】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、分子内に硫黄原子やリン原子を有するものであってもよいし、有しないものであってもよいが、耐熱黄変性により優れる樹脂成形体が得られ易いことから、分子内に硫黄原子とリン原子のいずれも有しないものが好ましい。
【0042】
分子内に硫黄原子とリン原子のいずれも有しないヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等の、前記式(1)で示される基の数が1の化合物;トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等の、前記式(1)で示される基の数が2の化合物;1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等の、前記式(1)で示される基の数が3の化合物;ペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等の、前記式(1)で示される基の数が4の化合物;等が挙げられる。
これらの中でも、ペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。
【0043】
分子内に硫黄原子及び/又はリン原子を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,2’−チオジエチルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、6−t−ブチル−4−[3−(2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イルオキシ)プロピル]−o−クレゾール等が挙げられる。
【0044】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の分子量は、好ましくは200〜1,500、より好ましくは500〜1,300である。分子量が上記範囲内のヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることで、成形時の焼けがより生じにくく、かつ、長期耐熱黄変性により優れる樹脂組成物を得ることができる。
【0045】
〔ヒンダードアミン化合物〕
本発明の樹脂組成物を構成するヒンダードアミン化合物は、分子内に、下記式(2)で示される基を有する化合物であって、光安定剤として機能し得るものである。
【0047】
式(2)中、R
3は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、又はアシル基を表し、水素原子が好ましい。R
4〜R
7は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、又はアラルキル基を表し、アルキル基が好ましい。*は、結合手を表す。
【0048】
R
3〜R
7のアルキル基の炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい。
R
3〜R
7のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等が挙げられる。
R
3〜R
7のシクロアルキル基の炭素数は3〜15が好ましく、3〜10がより好ましい。R
3〜R
7のクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ノルボルニル基等が挙げられる。
R
3〜R
7のアラルキル基の炭素数は7〜15が好ましく、7〜12がより好ましい。
R
3〜R
7のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
R
3〜R
7のアシル基の炭素数は2〜15が好ましく、2〜8がより好ましい。
R
3〜R
7のアシル基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
これらの基は、アルコキシ基、ハロゲン原子等の置換基を有するものであってもよい。
【0049】
ヒンダードアミン化合物は、低分子量型の化合物であってもよいし、高分子量型の化合物であってもよい。
低分子量型のヒンダードアミン化合物としては、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸−ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−アミン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
【0050】
高分子量型のヒンダードアミン化合物としては、
ジブチルアミン、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、
ジブチルアミン、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、
ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、
1,6−ヘキサンジアミン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、
ポリ〔(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕、
コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物、
ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、下記式(2a)で示さる化合物等が挙げられる。これらの中でも、成形時の焼けが生じにくく、長期耐熱黄変性に優れ、且つ、帯電による異物の付着が抑制された樹脂組成物が得られる観点から、下記式(2a)で示さる化合物が特に好ましい。
【0052】
式(2a)中、nは任意の自然数を表し、Meはメチル基を示し、n−Buはノルマルブチル基を示す。
式(2a)で示されるヒンダードアミン化合物の分子量は、好ましくは1,000〜5,000、より好ましくは2,000〜4,000である。分子量が上記範囲内のヒンダードアミン化合物を用いることで、成形時の焼けが生じにくく、かつ、長期耐熱黄変性に優れる樹脂組成物を得ることができる。
【0053】
式(2a)で示される化合物は、例えば、ジブチルアミン、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンを重縮合することにより合成することができる。
また、式(2a)で示される化合物として、CHIMASSORB 2020 FDL(BASF社製)等の市販品を用いることもできる。
【0054】
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、脂環構造含有重合体、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及びヒンダードアミン化合物、を含有する樹脂組成物であって、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、前記式(1)で示される基を有する化合物であり、前記ヒンダードアミン化合物が、分子内に、前記式(2)で示される基を有する化合物であり、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して、0.1重量部以上2.0重量部以下であり、前記ヒンダードアミン化合物の含有量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して、0重量部超1.0重量部以下の樹脂組成物である。
【0055】
本発明の樹脂組成物は、次の樹脂組成物(A)、樹脂組成物(B)のいずれかであるのが好ましい。
〔樹脂組成物(A)〕
脂環構造含有重合体、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及びヒンダードアミン化合物、を含有する樹脂組成物であって、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、前記式(1)で示される基を有する化合物であり、前記ヒンダードアミン化合物が、前記式(2a)で示される化合物であり、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して、0.1重量部以上1.0重量部以下、好ましくは0.1重量部以上0.8重量部以下、より好ましくは0.1重量部以上0.6重量部以下であり、前記ヒンダードアミン化合物の含有量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して、0重量部超0.20重量部以下、好ましくは0.01重量部以上0.15重量部以下、より好ましくは0.01重量部以上0.10重量部以下の樹脂組成物である。
【0056】
用いるヒンダードフェノール系酸化防止剤やヒンダードアミン化合物は、樹脂組成物に配合すると、目的の性能を向上させる一方で、他の特性を低下させる原因にもなるものである。すなわち、前記ヒンダードアミン化合物は、樹脂組成物の耐熱黄変性を向上させるために重要な添加剤であるが、その一方で、このヒンダードアミン化合物を含有する樹脂組成物は帯電し易く、異物の付着が問題になることがあった。また、前記フェノール系酸化防止剤は、成形時の焼けを防止するために重要な添加剤であり、また、高温条件下における樹脂成分の黄変を抑制する効果も有するものである。一方で、前記ヒンダードアミン化合物と併用する場合は、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量が増加するにしたがって、かえって樹脂組成物の耐熱黄変性が低下するという傾向もみられる。この黄変は、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の劣化が主な原因であると考えられる。
【0057】
これらの問題を解決するために、本発明においては、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤と前記ヒンダードアミン化合物を、それぞれ上記範囲の量で組み合わせて用いる。
すなわち、本発明の樹脂組成物においては、前記ヒンダードアミン化合物の含有量を脂環構造含有重合体100重量部に対して0.20重量部以下とし、かつ、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量を脂環構造含有重合体100重量部に対して0.1重量部以上1.0重量部以下という範囲にする。
【0058】
前記ヒンダードアミン化合物の含有量を少量にすることで、樹脂組成物や樹脂成形体が帯電し、異物が付着するという問題を解消することができる。また、ヒンダードアミン化合物の含有量が少なければ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を添加するほど樹脂組成物の耐熱黄変性が低下するという現象も起こり難くなり、得られる樹脂組成物は、成形時の焼けが生じにくく、長期耐熱黄変性にも優れる。
このように、上記範囲の量のヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン化合物を組み合わせて用いることにより、帯電防止性、成形時の焼けの防止性、及び長期耐熱黄変性の全てに優れる樹脂組成物を得ることができる。
【0059】
〔樹脂組成物(B)〕
樹脂組成物(B)は、少なくとも、脂環構造含有重合体、硫黄原子及び/又はリン原子を有していてもよいヒンダードフェノール系酸化防止剤、並びにヒンダードアミン化合物、を配合してなり、硫黄原子及び/又はリン原子を有するヘテロ原子含有化合物(ただし、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤を除く)を含有していてもよい樹脂組成物であって、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の配合量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して0.1〜2.0重量部、好ましくは0.3〜1.5重量部、より好ましくは0.4〜1.0重量部であり、前記ヒンダードアミン化合物の配合量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して0.005〜1.0重量部、好ましくは0.1〜1.0重量部、より好ましくは0.2〜0.8重量部、さらに好ましくは0.2〜0.5重量部であり、前記ヘテロ原子含有化合物の配合量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して0.05重量部以下の樹脂組成物である。
【0060】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の配合量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して0.1重量部未満又は2.0重量部超のときは、得られる樹脂成形体は、耐熱黄変性に劣り易くなる。また、ヒンダードアミン化合物の配合量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して0.005重量部未満又は1.0重量部超のときは、得られる樹脂成形体は、耐熱黄変性に劣り易くなる。
【0061】
樹脂組成物(B)に用いる硫黄原子及び/又はリン原子を有してもよいヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、分子内に硫黄原子やリン原子を有するものであってもよいし、有しないものであってもよいが、耐熱黄変性により優れる樹脂成形体が得られ易いことから、分子内に硫黄原子とリン原子のいずれも有しないものが好ましい。
【0062】
樹脂組成物(B)に用いるヒンダードアミン化合物は、分子内に、前記式(2)で示される基を有する化合物であって、光安定剤として機能し得るものである。
【0063】
樹脂組成物(B)は、耐熱黄変性に優れる樹脂成形体の製造原料として適するものである。したがって、樹脂組成物の調製方法や、樹脂成形体の成形条件等を最適化することにより、より黄変度(ΔδYI)が小さい樹脂成形体を効率よく得ることができる。
【0064】
樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲において、脂環構造含有重合体以外の高分子化合物や、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン化合物以外の添加剤を含有するものであってもよい。
ただし、樹脂組成物が、〔硫黄原子及び/又はリン原子を有するヘテロ原子含有化合物(ただし、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤を除く)〕(以下、この化合物を「ヘテロ原子含有化合物」ということがある。)を含有する場合、樹脂組成物を調製する際の、ヘテロ原子含有化合物の配合量は、脂環構造含有重合体100重量部に対して0.05重量部以下であり、好ましくは0.02重量部以下、より好ましくは0.01重量部以下である。ヘテロ原子含有化合物の配合量が脂環構造含有重合体100重量部に対して0.05重量部を超えるときは、得られる樹脂成形体は、耐熱黄変性に劣り易くなる。
【0065】
脂環構造含有重合体以外の高分子化合物としては、例えば、液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン系軟質重合体;ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などのジエン系軟質重合体;ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサンなどのケイ素含有軟質重合体;ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体などのα,β−不飽和酸からなる軟質重合体;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などの不飽和アルコール及びアミン又はそのアシル誘導体又はアセタールからなる軟質重合体;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴムなどのエポキシ系軟質重合体;フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素系軟質重合体;天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどの軟質重合体;テルペンフェノール樹脂;等が挙げられる。
本発明に用いる樹脂組成物がこれらの高分子化合物を含有する場合、これらの高分子化合物の含有量は、脂環構造含有重合体100重量部に対して、通常100重量部以下、好ましくは50重量部以下である。
【0066】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン化合物以外の添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、離型剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニルジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4−ビフェニレンジホスホナイト、トリノニルフェニルホスファイト、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン等のリン系酸化防止剤;ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリトリトール−テトラ(3−ラウリルチオプロピオネート)等の硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
【0067】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アクリレート系紫外線吸収剤、金属錯体系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0068】
近赤外線吸収剤としては、シアニン系近赤外線吸収剤;ピリリウム系赤外線吸収剤;スクワリリウム系近赤外線吸収剤;クロコニウム系赤外線吸収剤;アズレニウム系近赤外線吸収剤;フタロシアニン系近赤外線吸収剤;ジチオール金属錯体系近赤外線吸収剤;ナフトキノン系近赤外線吸収剤;アントラキノン系近赤外線吸収剤;インドフェノール系近赤外線吸収剤;アジ系近赤外線吸収剤;等が挙げられる。
可塑剤としては、燐酸トリエステル系可塑剤、脂肪酸一塩基酸エステル系可塑剤、二価アルコールエステル系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤等が挙げられる。
帯電防止剤としては、第4級アンモニウム塩、スルホン酸塩、アルキルホスフェート系化合物等が挙げられる。
離型剤としては、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、パラフィン、低分子量のポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸部分鹸化エステル、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変性シリコーン等が挙げられる。これらの中でも、揮発性が低い点で、パラフィンワックス;ステアリルステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、1,2−ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、グリセリントリステアレート等の脂肪酸エステル系離型剤;N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等の脂肪酸アミド系離型剤;等が好ましい。
【0069】
樹脂組成物がこれらの添加剤を含有する場合、その含有量は、目的に合わせて適宜決定することができる。これらの添加剤の含有量は、脂環構造含有重合体100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.3〜2重量部の範囲である。
【0070】
樹脂組成物の調製方法は、脂環構造含有重合体中に、各添加剤を十分に分散させ得るものであれば特に限定されない。例えば、適当な溶媒に各成分を溶解又は分散させた後、溶媒を除去する方法(方法α)、脂環構造含有重合体を加熱して溶融させ、ここに添加剤を添加して混練する方法(方法β)等により、樹脂組成物を調製することができる。
【0071】
方法αにおいて、用いる溶媒としては各成分を溶解又は分散し得るものであれば特に限定されない。溶媒としては、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロ[4.3.0]ノナン、トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
また、重合反応後又は水素化反応後に得られた溶液又は分散液を、そのまま方法αにおける溶液又は分散液として使用してもよい。
溶媒の除去方法は特に限定されず、例えば、凝固法、キャスト法、直接乾燥法等を利用して、溶媒を除去することができる。
【0072】
方法βにおいては、例えば単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等の溶融混練機を用いて、混錬を行うことができる。混練温度は、好ましくは200〜400℃、より好ましくは240〜300℃である。また、混練するに際しては、各成分を一括に添加して混練してもよいし、数回に分けて添加しながら混練してもよい。
【0073】
これらの方法のなかで、方法αはそれほど高い温度を要しないものであるため、樹脂組成物の調製方法として方法αを採用することにより、樹脂組成物の調製工程中における各成分の分解、劣化を抑制することができる。したがって、より耐熱黄変性に優れる樹脂成形体を製造するときは、方法αが好ましい。
【0074】
また、樹脂組成物の調製工程中における脂環構造含有重合体の劣化を防止するためには、樹脂組成物の調製工程中の早い段階で、脂環構造含有重合体にヒンダードフェノール系酸化防止剤を加えることが好ましい。例えば、重合反応後又は水素化反応後に得られた溶液又は分散液から、脂環構造含有重合体を単離する際に加熱して溶媒を除去するのであれば、加熱をする前に、この溶液又は分散液にヒンダードフェノール系酸化防止剤を加えることが好ましい。
【0075】
本発明の樹脂組成物は、前記ヒンダードアミン化合物の含有量が少ないため、帯電による異物の付着が抑制されたものである。したがって、本発明の樹脂組成物を用いて得られる光学部材においては優れた光学的性能が長期間にわたって維持される。
本発明の樹脂組成物は、前記フェノール系酸化防止剤を十分に含有するものであるため、成形時の焼けが生じにくいものである。したがって、本発明の樹脂組成物を用いて得られる樹脂成形体は、透明性や光透過性に優れるものである。
【0076】
本発明の樹脂組成物は、少量のヒンダードアミン化合物と適切な量のフェノール系酸化防止剤とを併用するものである。このため、本発明の樹脂組成物は、長期耐熱黄変性に優れるものである。
本発明の樹脂組成物の長期耐熱黄変性は、例えば、本発明の樹脂組成物を用いて光路長が3mmの試験片を作製し、これを用いてJIS K7373に準拠して黄色度を光路長3mmで測定し、下記式(I)により、黄変度(ΔδYI)を求めることにより評価することができる。
【0078】
式(I)中、δYI
1は、耐熱試験後の試験片の黄色度(YI
1)とブランク(空気)の黄色度(YI
B)の差を表し、δYI
0は、耐熱試験前の試験片の黄色度(YI
0)とブランク(空気)の黄色度(YI
B)の差を表す。
本発明の樹脂成形体の黄変度(ΔδYI)は、通常、20以下、好ましくは15以下である。
【0079】
本発明の樹脂組成物は、これらの特徴を有することから光学部材の成形材料として好適に用いられる。
【0080】
2)樹脂成形体及び光学部材
本発明の樹脂成形体は、本発明の樹脂組成物を成形してなるものである。
本発明の樹脂成形体は、耐熱黄変性に優れるものである。
樹脂成形体の耐熱黄変性は、JIS K7373に準拠して黄色度を光路長3mmで測定し、下記式(I)により、黄変度(ΔδYI)を求めることにより評価することができる。
【0082】
式(I)中、δYI
1は、耐熱試験後の試験片の黄色度(YI
1)とブランク(空気)の黄色度(YI
B)の差を表し、δYI
0は、耐熱試験前の試験片の黄色度(YI
0)とブランク(空気)の黄色度(YI
B)の差を表す。
本発明の樹脂成形体の黄変度(ΔδYI)は、通常、20以下、好ましくは15以下である。
なお、耐熱試験においては、同等の樹脂成形体を2個以上用意し、耐熱試験前の黄色度(YI
0)を測定するための樹脂成形体と、耐熱試験後の黄色度(YI
1)を測定するための樹脂成形体と、に分け、後者である耐熱試験後の黄色度(YI
1)を測定するための樹脂成形体に関しては、試験片作製前の樹脂成形体のままで耐熱試験を行い、耐熱試験後に上記のように樹脂成形体から光路長が3mmの試験片を作製して耐熱試験後の黄色度(YI
1)を測定してもよく、その場合に黄変度(ΔδYI)が20以下であれば本発明の樹脂成形体に該当する。
【0083】
本発明の樹脂成形体は、前記樹脂組成物を成形して得られた、3mm以上の部分を有するものであって、この樹脂成形体を材料として用いて光路長が3mmの試験片を作製し、得られた試験片を、酸素濃度が21体積%、温度が125℃の条件下に1,000時間静置して耐熱試験を行ったときに、前記式(I)で表される黄変度(ΔδYI)が20以下であることが好ましい。
【0084】
後述するように、本発明の樹脂成形体は、光学部材等として用いることを想定したものであり、少なくとも3mmの部分を有するものである。したがって、耐熱性試験を行う際は、切削加工等の公知の樹脂加工法を必要に応じて利用して、樹脂成形体から光路長が3mmの試験片を作製することができる。
なお、「3mm以上の部分を有する樹脂成形体」とは、「耐熱試験に用いる、光路長が3mmの試験片を作製できる形状の樹脂成形体」を意味するものである。3mm以上の部分を有する樹脂成形体としては、例えば、厚みが3mm以上の樹脂シートや、厚み又は直径が3mm以上のレンズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
本発明の樹脂成形体の成形方法は特に限定されず、射出成形法、プレス成形法、押出ブロー成形法、射出ブロー成形法、多層ブロー成形法、コネクションブロー成形法、二重壁ブロー成形法、延伸ブロー成形法、真空成形法、回転成形法等が挙げられる。なかでも、目的の樹脂成形体を寸法精度よく成形し得ることから、射出成形法、プレス成形法が好ましく、射出成形法がより好ましい。
【0086】
射出成形法を用いて樹脂成形体を成形する際は、通常、成形材料(前記樹脂組成物)を射出成形機のホッパーに投入し、高温のシリンダー内でこれを可塑化し、次いで、溶融樹脂(可塑化された樹脂)を、ノズルから金型内に射出する。溶融樹脂が金型内で冷却固化することにより、目的の樹脂成形体を得ることができる。
シリンダー温度は、通常150〜400℃、好ましくは200〜350℃、より好ましくは250〜320℃の範囲で適宜選択される。シリンダー温度が過度に低いと溶融樹脂の流動性が低下し、樹脂成形体にヒケやひずみを生じるおそれがある。一方、シリンダー温度が過度に高いと成形材料の熱分解によるシルバーストリークが発生したり、樹脂成形体が黄変したりするおそれがある。
【0087】
シリンダーから金型へ溶融樹脂を射出するときの射出速度は、1〜1,000cm
3/秒が好ましい。射出速度がこの範囲であることで、外観形状に優れる樹脂成形体が得られ易くなる。
シリンダーから金型へ溶融樹脂を射出するときの射出圧は特に限定されず、金型の種類や、成形材料の流動性等を考慮して適宜設定すればよい。射出圧は、通常、50〜1,500MPaである。
【0088】
射出成形法においては、通常、金型内を溶融樹脂で満たした後も、金型のゲート部分の溶融樹脂が完全に冷却固化するまでの一定時間、スクリューを稼働させて、金型内の溶融樹脂に圧力をかける(以下、この圧力を「保圧」という)。
保圧は、一般に金型の締め圧の範囲内で設定されるが、通常、その上限は200MPa以下、好ましくは170MPa以下、より好ましくは150MPa以下である。保圧が200MPa以下であることで、歪の少ない樹脂成形体が得られ易くなる。
一方、保圧の下限は、通常、10MPa以上、好ましくは12MPa以上、より好ましくは15MPa以上である。保圧が、10MPa以上であることで、ひけの発生が防止され、かつ、寸法精度に優れた樹脂成形体が得られ易くなる。
【0089】
金型温度は、通常、成形材料中の脂環構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度であり、好ましくはTgよりも0〜50℃低い温度、より好ましくはTgよりも5〜20℃低い温度である。金型温度がこの範囲内であることで、歪の少ない樹脂成形体が得られ易くなる。
【0090】
また、射出成形法においては、成形材料の予備乾燥を行ったり、射出成形機のホッパー部から窒素等の不活性ガスを通じたりしてもよい。予備乾燥の条件は特に限定されず、例えば、100〜110℃で4〜12時間、真空乾燥を行うことにより、予備乾燥をすることができる。
これらの処理を行うことで、より透明性に優れる樹脂成形体が得られ易くなる。
【0091】
本発明の樹脂成形体は、本発明の樹脂組成物からなるものであり、帯電による異物の付着が抑制され、成形時の焼けが生じにくく、かつ、長期耐熱黄変性に優れる。
したがって、本発明の樹脂成形体は、光学レンズ、プリズム、導光体等の光学部材として、好適に用いられる。なかでも、自動車の車内に設置されるカメラに用いられるレンズ等の光学部材として特に好ましく用いられる。
【0092】
本発明の樹脂成形体は、光学レンズ、プリズム、導光体等の光学部材として、好適に用いられる。なかでも、自動車の車内に設置されるカメラに用いられるレンズ等の光学部材として特に好ましく用いられる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。以下において、「部」及び「%」は特に断りのない限り、重量基準である。
【0094】
各種の物性の測定は、下記の方法に従って行った。
(1)重量平均分子量
製造例において、重合体の重量平均分子量(Mw)は、シクロヘキサンを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリイソプレン換算値として求めた。
標準ポリイソプレンとしては、東ソー社製標準ポリイソプレン(Mw=602、1390、3920、8050、13800、22700、58800、71300、109000、280000)を用いた。
測定は、東ソー社製カラム(TSKgelG5000HXL、TSKgelG4000HXL及びTSKgel G2000HXL)を3本直列に繋いで用い、流速1.0mL/分、サンプル注入量100μL、カラム温度40℃の条件で行った。
【0095】
(2)ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度は示差走査熱量分析計(DSC6220SII、ナノテクノロジー社製)を用いて、JISK6911に基づき昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0096】
(3)耐熱黄変性試験
実施例又は比較例で得た樹脂成形体を試験片として用いて、以下の方法により耐熱黄変性試験を行った。
[耐熱黄変性試験(1)]
JISK7373に準拠して、色差計(製品名「SE−2000」、日本電色工業社製)を用いて、試験片の黄色度(YI:イエローインデックス)を透過モードにて測定した。なお、このとき、ブランクとして空気のみの黄色度を測定した。
次いで、試験片を、酸素濃度が21体積%、温度が125℃の条件下に、1,000時間静置して耐熱試験を行った後、上記と同様にして、黄色度を測定した。
次いで、前記式(I)に基づいて、黄変度(ΔδYI)を求めた。△δYIが小さいほど、高温下での黄変が少なく耐熱性が良好であることを意味する。
【0097】
[耐熱黄変性試験(2)]
試験片の加熱条件を、酸素濃度が21体積%、温度が135℃の条件下で480時間に変更したことを除き、耐熱黄変性試験(1)と同様にして試験を行った。
【0098】
(4)酸化開始温度
実施例又は比較例で得た樹脂組成物について熱重量測定を行い、酸化開始温度を測定した。測定結果に基づき、以下の基準により、成形時の焼けの抑制効果を評価した。
○(良好):酸化開始温度が240℃以上
×(不良):酸化開始温度が240℃未満
【0099】
〔製造例1〕脂環構造含有重合体(I)の製造
内部を乾燥し、窒素置換した重合反応器に、ジシクロペンタジエン10%、テトラシクロドデセン75%、メタノテトラヒドロフルオレン15%からなる単量体混合物2.0部(重合に使用するモノマー全量に対して1%)、脱水シクロヘキサン785部、分子量調節剤(1−ヘキセン)1.21部、ジエチルアルミニウムエトキシドのn−ヘキサン溶液(濃度:19%)0.98部、及びタングステン(フェニルイミド)テトラクロリド・テトラヒドロフランのトルエン溶液(濃度:2.0%)11.7部を入れ、50℃で10分間攪拌した。
次いで、全容を50℃に保持し、攪拌しながら、前記重合反応器中に、前記組成と同じ単量体混合物198.0部を150分かけて連続的に滴下した。滴下終了後30分間攪拌を継続した後、イソプロピルアルコール4部を添加して重合反応を停止させた。ガスクロマトグラフィーによって重合反応溶液を測定したしたところ、単量体の重合体への転化率は100%であった。
得られた重合反応溶液中の重合体の数平均分子量(Mn)は14,000、重量平均分子量(Mw)は24,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.7であった。
この重合反応溶液240部に珪藻土担持ニッケル触媒(日揮化学社製;「T8400RL」、ニッケル担持率58%)4部を加え、オートクレーブ中、4.4MPa、190℃で5時間、水素化反応を行った。水素化反応後、水素化反応溶液中の触媒残渣を濾別し、無色透明の溶液(水素化反応溶液I)を得た。水素化反応における水添率は99%以上であった。
アセトン250部とイソプロパノール250部との混合溶液を攪拌しながら、この混合溶液中に水素化反応溶液Iを注いで重合体水素化物を析出させ、これを濾取した。得られた重合体水素化物を、アセトン200部で洗浄した後、0.13kPa以下に減圧した100℃の真空乾燥器で24時間乾燥させた。
得られた重合体水素化物〔脂環構造含有重合体(I)〕の数平均分子量(Mn)は13,700、重量平均分子量(Mw)は23,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.7で、ガラス転移温度(Tg)は152℃であった。
【0100】
〔製造例2〕脂環構造含有重合体(II)の製造
内部を乾燥し、窒素置換した重合反応器に、トルエン960部、テトラシクロドデセン220部、及び1−ヘキセン0.166部を反応器に仕込み、回転数300〜350rpmで攪拌しながら溶媒温度を40℃に昇温した。
一方で、トルエン23.5部、rac−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド0.044部、メチルアルミノキサン9.0%トルエン溶液(東ソー・ファインケム社製:TMAO−200シリーズ)6.22部をガラス容器にて混合して触媒液を得た。
前記反応器中の溶媒温度が40℃に達したところで、前記触媒液を反応器に添加し、その後直ちに0.08MPaのエチレンガスを液相に導入し、重合を開始した。エチレン噴出し口の位置は、反応器の底と液面との距離(A)と、エチレン噴出し口と液面との距離(B)との比(B)/(A)が0.60である。エチレンガスが消費されると、自動的にエチレンガスが供給されるようにして、エチレンガスの圧力を一定に保った。30分間経過した後、エチレンガスの導入を停止し、脱圧し、次いでメタノール5部を添加し重合反応を停止させた。
得られた反応溶液をラジオライト#800で濾過し、0.05%の塩酸を含むイソプロパノール中に注いで重合体を析出させた。析出した重合体を分取、洗浄し、100℃で15時間減圧乾燥した。
得られた重合体〔脂環構造含有重合体(II)〕の数平均分子量(Mn)は22,000、重量平均分子量(Mw)は56,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.6で、ガラス転移温度(Tg)は145℃であった。
【0101】
〔参考例1〕
製造例1で得た脂環構造含有重合体(I)100部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製、製品名「イルガノックス(登録商標)1010」)(以下、「ヒンダードフェノール系酸化防止剤(1)」又は「H.P.」ということがある。)0.20部を2軸混練機で混練して押し出し、ペレット化した樹脂組成物1を得た。
上記ペレットを80℃で4時間加熱して乾燥させ、次いで射出成形機(ファナック社製、ロボショットα−100B)に投入し、シリンダー温度280℃で射出成形し、65mm×65mm×3mmの平板状の樹脂成形体1を得た。
得られた樹脂成形体1を試験片として用いて、長期耐熱黄変性試験(1)を行った。結果を第1表に示す。
【0102】
〔参考例2〜3〕
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(1)の含有量を第1表に記載の量に変更したこと以外は、参考例1と同様にして樹脂組成物2〜3を調製し、これを用いて樹脂成形体2〜3を得て、長期耐熱黄変性試験(1)を行った。結果を第1表に示す。
【0103】
〔参考例4〕
製造例1で得た重合体水素化物100部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(1)0.20部、ヒンダードアミン化合物として、ジブチルアミン、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(BASF社製 製品名「CHIMASSORB (登録商標)2020 FDL」)(以下、「ヒンダードアミン化合物(1)」又は「H.A.」ということがある。)0.30部を2軸混練機で混練して押し出し、ペレット化した樹脂組成物4を調製し。これを用いて樹脂成形体4を得、長期耐熱黄変性試験(1)を行った。結果を第1表に示す。
【0104】
〔参考例5〜9〕
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(1)とヒンダードアミン化合物(1)の含有量を第1表に記載の量に変更したこと以外は、参考例4と同様にして樹脂組成物5〜9を調製し、これを用いて樹脂成形体5〜9を得、長期耐熱黄変性試験(1)を行った。結果を第1表に示す。また、参考例1〜9の長期耐熱黄変性試験(1)の結果をまとめたグラフを
図1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
第1表及び
図1から以下のことが分かる。
ヒンダードアミン化合物(1)を含有しない樹脂組成物1〜3(参考例1〜3)においては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(1)の含有量が増加するにしたがって、△δYIが小さくなる。
一方、ヒンダードアミン化合物(1)を含有する樹脂組成物4〜9(参考例4〜9)においては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(1)の含有量が増加するにしたがって、△δYIが大きくなる。
このように、ヒンダードアミン化合物の有無という違いにより、樹脂組成物の黄変性に関するヒンダードフェノール系酸化防止剤の影響が大きく異なることが分かる。
これらのことから、ヒンダードアミン化合物を含有しない樹脂組成物においては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量が多くなるにつれて樹脂がより劣化し難くなり、黄変がより抑えられていると考えられる。一方、ヒンダードアミン化合物を含有する樹脂組成物においては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量が多くなるにつれてヒンダードフェノール系酸化防止剤の劣化物も多くなり、これにより試験片が黄変していると考えられる。
【0107】
〔実施例1〜9〕
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(1)とヒンダードアミン化合物(1)の含有量を第2表に記載の量に変更したこと以外は、参考例4と同様にして樹脂組成物10〜18を調製し、これを用いて樹脂成形体10〜18を得、長期耐熱黄変性試験(2)と酸化開始温度の測定を行った。結果を第2表に示す。
【0108】
〔実施例10〜11〕
脂環構造含有重合体(I)に代えて、脂環構造含有重合体(II)を使用したことと、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(1)とヒンダードアミン化合物(1)の含有量を第2表に記載の量に変更したこと以外は、参考例4と同様にして樹脂組成物19〜20を調製し、これを用いて樹脂成形体19〜20を得、長期耐熱黄変性試験(2)と酸化開始温度の測定を行った。結果を第2表に示す。
【0109】
〔比較例1〜6〕
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(1)とヒンダードアミン化合物(1)の含有量を第2表に記載の量に変更したこと以外は、参考例4と同様にして樹脂組成物21〜26を調製し、これを用いて樹脂成形体21〜26を得、長期耐熱黄変性試験(2)と酸化開始温度の測定を行った。結果を第2表に示す。また、実施例1〜9、比較例1〜6の長期耐熱黄変性試験(2)の結果をまとめたグラフを
図2に示す。
【0110】
【表2】
【0111】
第2表及び
図2から以下のことが分かる。
実施例1〜11の樹脂組成物10〜20は、長期耐熱黄変性に優れている。この長期耐熱黄変性は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(1)を十分に含有しながらも達成されたものである。したがって、このヒンダードフェノール系酸化防止剤(1)の効果により、これらの樹脂組成物は、成形時の焼けが生じにくいものである。
またこれらの樹脂組成物は、ヒンダードアミン化合物(1)の含有量が少ないため、帯電し難く、異物の付着の問題が生じにくいものである。
一方、比較例1〜3の樹脂組成物21〜23は、ヒンダードアミン化合物(1)を含有しないものであるため、長期耐熱黄変性に劣っている。
また、比較例4〜6の樹脂組成物24〜26は、長期耐熱黄変性には優れるものの、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(1)の含有量が少ない。このため、これらの樹脂組成物は、酸化開始温度が低いため、成形時の焼けの問題が生じやすいものである。
【0112】
〔製造例3〕
窒素置換した重合反応容器に、脱水したトルエン690部、テトラシクロ[9.2.1.0
2,10.0
3,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン210部、テトラシクロ[4.4.1
2,5.1
7,10.0]ドデカ−3−エン75部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン15部、1−ヘキセン1.1部、塩化タングステンの0.3%トルエン溶液11部、及びトリイソブチルアルミニウム0.5部を入れ、1気圧、60℃で1時間、開環重合反応を行った。
得られた重合反応溶液中の重合体の数平均分子量(Mn)は14,000、重量平均分子量(Mw)は24,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.7であった。
この重合反応溶液240部に珪藻土担持ニッケル触媒(日揮化学社製;「T8400RL」、ニッケル担持率58%)4部を加え、オートクレーブ中、45kgf/cm
2、190℃で5時間、水素化反応を行った。水素化反応後、水素化反応溶液中の触媒残渣を濾別し、無色透明の溶液(水素化反応溶液III)を得た。水素化反応における水添率は99%以上であった。
得られた重合体水素化物の数平均分子量(Mn)は16,500、重量平均分子量(Mw)は28,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.7で、ガラス転移温度(Tg)は145℃であった。
【0113】
〔実施例12〕
製造例3で得られた水素化反応溶液IIIに、重合体水素化物100部当り、ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製;「イルガノックス(登録商標)1010」)(以下、「ヒンダードフェノール系酸化防止剤(a1)」という。)0.8部、ヒンダードアミン化合物として、ジブチルアミン、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(BASF社製;「CHIMASSORB(登録商標)2020 FDL」)(以下、「ヒンダードアミン化合物(b1)」という。)0.3部を加えた後、フィルター(キュノーフィルター社製;「ゼータプラス(登録商標)30H」、孔径0.5〜1μm)、及び金属ファイバー製フィルター(ニチダイ社製;孔径0.4μm)を用いて異物を濾別除去した。
次いで、得られた濾液を、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所社製)に入れ、温度290℃、圧力1kPa以下の条件で、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、水冷後、ペレタイザー(長田製作所製;「OSP−2」)でカッティングしてペレット化した樹脂組成物27を得た。
【0114】
上記ペレットを80℃で4時間加熱して乾燥させ、次いで射出成形機(ファナック社製;「ロボショットα−100B」)に投入し、シリンダー温度280℃で射出成形し、65mm×65mm×3mmの平板状の樹脂成形体27を得た。
得られた樹脂成形体27を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0115】
〔実施例13〕
実施例12において、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(a1)に代えて、6−t−ブチル−4−[3−(2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イルオキシ)プロピル]−o−クレゾール(住友化学社製;「スミライザーGP」)(以下、「ヒンダードフェノール系酸化防止剤(a2)」という。)0.8部を添加したことを除き、実施例12と同様にして、樹脂組成物28及び樹脂成形体28を得た。
得られた樹脂成形体28を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0116】
〔実施例14〕
実施例12において、ヒンダードアミン化合物(b1)に代えて、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](BASF社製;「Chimassorb(登録商標)944FDL」)(以下、「ヒンダードアミン化合物(b2)」という。)0.3部を添加したことを除き、実施例12と同様にして、樹脂組成物29及び樹脂成形体29を得た。
得られた樹脂成形体29を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0117】
〔実施例15〕
実施例12において、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(a1)の添加量を、重合体水素化物100部当り0.3部に変更したことを除き、実施例12と同様にして、樹脂組成物30及び樹脂成形体30を得た。
得られた樹脂成形体30を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0118】
〔実施例16〕
実施例12において、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(a1)の添加量を、重合体水素化物100部当り2.0部に変更したことを除き、実施例12と同様にして、樹脂組成物31及び樹脂成形体31を得た。
得られた樹脂成形体31を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0119】
〔実施例17〕
実施例12において、ヒンダードアミン化合物(b1)の添加量を、重合体水素化物100部当り1.0部に変更したことを除き、実施例12と同様にして、樹脂組成物32及び樹脂成形体32を得た。
得られた樹脂成形体32を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0120】
〔実施例18〕
実施例12において、樹脂組成物を調製する際に、さらに、リン含有酸化防止剤として、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA社製;「PEP−36」)(以下、「ヘテロ原子含有化合物(c1)」という)を重合体水素化物100部当り0.05部添加したことを除き、実施例12と同様にして、樹脂組成物33及び樹脂成形体33を得た。
得られた樹脂成形体33を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0121】
〔実施例19〕
実施例12において、樹脂組成物を調製する際に、さらに、硫黄含有酸化防止剤として、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)(住友化学社製;「スミライザーTP−D」)(以下、「ヘテロ原子含有化合物(c2)」という)を重合体水素化物100部当り0.05部添加したことを除き、実施例12と同様にして、樹脂組成物34及び樹脂成形体34を得た。
得られた樹脂成形体34を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0122】
〔実施例20〕
実施例12において、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(a1)の添加量を、重合体水素化物100部当り0.1部に変更し、ヒンダードアミン化合物(b1)の添加量を、重合体水素化物100部当り0.1部に変更したことを除き、実施例12と同様にして、樹脂組成物35及び樹脂成形体35を得た。
得られた樹脂成形体35を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0123】
〔実施例21〕
実施例12において、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(a1)の添加量を、重合体水素化物100部当り2.0部に変更し、ヒンダードアミン化合物(b1)の添加量を、重合体水素化物100部当り、1.0部に変更したことを除き、実施例12と同様にして樹脂組成物36及び樹脂成形体36を得た。
得られた樹脂成形体36を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0124】
〔実施例22〕
アセトン250部とイソプロパノール250部との混合溶液を撹拌しながら、この混合溶液中に製造例3で得られた水素化反応溶液IIIを注いで重合体水素化物を析出させ、これを濾取した。得られた重合体水素化物を、アセトン200部で洗浄した後、1mmHg以下に減圧した100℃の真空乾燥器で24時間乾燥させた。
得られた重合体水素化物100部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(a1)0.8部、ヒンダードアミン化合物(b1)0.3部を2軸混練機で混練して押し出し、ペレット化した樹脂組成物37を得た。
次いで、実施例12において、樹脂組成物12に代えて樹脂組成物37を用いたことを除き、実施例12と同様にして樹脂成形体37を得た。
得られた樹脂成形体37を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0125】
〔実施例23〕
実施例12において、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(a1)の添加量を、重合体水素化物100部当り0.1部に変更し、ヒンダードアミン化合物(b1)の添加量を、重合体水素化物100部当り、0.005部に変更したことを除き、実施例12と同様にして樹脂組成物38及び樹脂成形体38を得た。
得られた樹脂成形体38を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0126】
〔比較例7〕
実施例12において、樹脂組成物を調製する際に、さらに、ヘテロ原子含有化合物(c1)を重合体水素化物100部当り0.1部添加したことを除き、実施例12と同様にして、樹脂組成物39及び樹脂成形体39を得た。
得られた樹脂成形体39を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0127】
〔比較例8〕
実施例12において、樹脂組成物を調製する際に、さらに、ヘテロ原子含有化合物(c2)を重合体水素化物100部当り0.1部添加したことを除き、実施例12と同様にして、樹脂組成物40及び樹脂成形体40を得た。
得られた樹脂成形体40を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0128】
〔比較例9〕
実施例12において、ヒンダードアミン化合物(b1)を添加しなかったことを除き、実施例12と同様にして、樹脂組成物41及び樹脂成形体41を得た。
得られた樹脂成形体41を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0129】
〔比較例10〕
実施例12において、ヒンダードアミン化合物(b1)の添加量を、重合体水素化物100部当り2.0部に変更したことを除き、実施例12と同様にして、樹脂組成物42及び樹脂成形体42を得た。
得られた樹脂成形体42を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0130】
〔比較例11〕
実施例12において、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(a1)の添加量を、重合体水素化物100部当り0.05部に変更し、ヒンダードアミン化合物(b1)の添加量を、重合体水素化物100部当り0.5部に変更したことを除き、実施例12と同様にして、樹脂組成物43及び樹脂成形体43を得た。
得られた樹脂成形体43を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0131】
〔比較例12〕
実施例12において、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(a1)の添加量を、重合体水素化物100部当り3.0部に変更したことを除き、実施例12と同様にして、樹脂組成物44及び樹脂成形体44を得た。
得られた樹脂成形体44を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0132】
〔比較例13〕
実施例15において、射出成形時のシリンダー温度を320℃に変更したことを除き、実施例15と同様にして、樹脂組成物45及び樹脂成形体45を得た。
得られた樹脂成形体45を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0133】
〔比較例14〕
実施例22において、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(a1)の添加量を、重合体水素化物100部当り0.1部に変更し、ヒンダードアミン化合物(b1)の添加量を、重合体水素化物100部当り0.1部に変更したことを除き、実施例22と同様にして樹脂組成物46及び樹脂成形体46を得た。
得られた樹脂成形体46を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0134】
〔比較例15〕
実施例15において、ヒンダードアミン化合物(b1)の添加量を、重合体水素化物100部当り0.002部に変更したことを除き、実施例15と同様にして、樹脂組成物47及び樹脂成形体47を得た。
得られた樹脂成形体47を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0135】
〔比較例16〕
実施例12において、ヒンダードアミン化合物(b1)の添加量を、重合体水素化物100部当り0.002部に変更したことを除き、実施例12と同様にして、樹脂組成物48及び樹脂成形体48を得た。
得られた樹脂成形体48を試験片として用いて耐熱黄変性試験を行った。結果を第3表に示す。
【0136】
【表3】
【0137】
第3表から以下のことが分かる。
実施例27〜38の樹脂成形体27〜38は、耐熱試験後の黄変度ΔδYIが、いずれも20以下であり、耐熱黄変性に優れている。
一方、比較例7、8の樹脂成形体39、40は、いずれも、ヘテロ原子含有化合物の配合量が多いため、耐熱黄変性に劣っている。
比較例9、10、15、16の樹脂成形体41、42、47、48は、いずれも、ヒンダードアミン化合物の配合量が適切な範囲外であるため、耐熱黄変性に劣っている。
比較例11、12の樹脂成形体43、44は、いずれも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の配合量が適切な範囲外であるため、耐熱黄変性に劣っている。
比較例13の樹脂成形体45は、添加剤の配合量が若干少なめであり、また、射出成形時における溶融温度が高すぎたため、耐熱黄変性に劣っている。
比較例14の樹脂成形体46は、添加剤の配合量が若干少なめであり、また、樹脂組成物の調製方法として二軸混錬法を採用したため、耐熱黄変性に劣っている。