特許第6844547号(P6844547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844547
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】塗料組成物および塗装体
(51)【国際特許分類】
   C09D 127/12 20060101AFI20210308BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20210308BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20210308BHJP
   E04F 13/14 20060101ALI20210308BHJP
   E04F 13/12 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   C09D127/12
   C09D133/14
   C09D175/04
   E04F13/14 102Z
   E04F13/12 Z
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-554189(P2017-554189)
(86)(22)【出願日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】JP2016085804
(87)【国際公開番号】WO2017094861
(87)【国際公開日】20170608
【審査請求日】2019年8月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-235674(P2015-235674)
(32)【優先日】2015年12月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100121393
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊
(72)【発明者】
【氏名】江畑 志郎
【審査官】 川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−085774(JP,A)
【文献】 特開2007−112893(JP,A)
【文献】 特開平04−279612(JP,A)
【文献】 特開2000−297242(JP,A)
【文献】 特開平07−228833(JP,A)
【文献】 特開平05−098206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
E04F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基価が5〜100mgKOH/gである水酸基を有する含フッ素重合体と、ガラス
転移温度が15〜70℃である、水酸基を有する(メタ)アクリレート系重合体と、イソシアネート系硬化剤、ブロック化イソシアネート系硬化剤およびアミノ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化剤と、を含有する塗料組成物であって、
前記含フッ素重合体の数平均分子量と前記(メタ)アクリレート系重合体の数平均分子量との差の絶対値が5000以内であり、
前記塗料組成物中、前記含フッ素重合体と前記(メタ)アクリレート系重合体との含有比率(含フッ素重合体の含有量(質量%))/((メタ)アクリレート系重合体の含有量(質量%)が、90/10〜30/70であり、
前記(メタ)アクリレート系重合体が、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに基づく単位と、架橋性基を有さない(メタ)アクリレートに基づく単位とを有し、
単量体に基づく単位の全量に対するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに基づく単位の含有量をYモル%とし、架橋性基を有さない(メタ)アクリレートに基づく単位の含有量をZモル%とした場合にY/Z(モル比)が1/99〜30/70の範囲にあり、
さらに、顔料成分を含有し、
前記顔料成分の含有量が、前記含フッ素重合体と前記(メタ)アクリレート系重合体の総含有量に対して、30質量超100質量%以下である、塗料組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレート系重合体の水酸基価が20〜80mgKOH/gである、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記含フッ素重合体のガラス転移温度と前記(メタ)アクリレート系重合体のガラス転移温度との差の絶対値が30℃以内である、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記架橋性基を有さない(メタ)アクリレートが、炭素数6以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記架橋性基を有さない(メタ)アクリレートに基づく単位が、メチル(メタ)アクリレートおよびエチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートに基づく第1の単位と、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレートおよびt−ブチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートに基づく第2の単位との組合せからなり、
単量体に基づく単位の全量に対する前記第1の単位の含有量をZ1モル%とし、前記第2の単位の含有量をZ2モル%とした場合にZ1/Z2(モル比)が5/99〜70/30の範囲にある、請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記アルキル(メタ)アクリレートがアルキルメタクリレートである、請求項またはに記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリレート系重合体のガラス転移温度が15〜40℃である、請求項1〜のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の塗料組成物から形成された硬化塗膜を有する塗装体。
【請求項9】
前記塗装体の基材が建築外装部材である、請求項に記載の塗装体。
【請求項10】
前記硬化塗膜の膜厚が20〜60μmである、請求項またはに記載の塗装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物および塗装体に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂塗料は、塗膜の耐候性に優れ、メンテナンスフリーの要求が高い、屋根材、壁材、ガラス開口部材などの建築外装材として利用されている。
たとえば、フッ素樹脂塗料を塗装した金属板は、フッ素樹脂塗膜の持つ物理的、化学的特性、すなわち、耐候性、耐薬品性、耐汚染性などに優れるため、屋根や壁などの建築外装部材として普及している。フッ素樹脂塗料が塗装された金属板には、成形加工時の加工性の観点から、一般的にポリフッ化ビニリデンを主原料とする熱可塑型フッ素樹脂塗料が使用される。
一方、熱硬化型フッ素樹脂塗料は、熱可塑型フッ素樹脂塗料よりも塗膜の強度、耐薬品性、耐熱性という点では優れているが、加工部の割れやひびなどによって、基材に錆や塗膜の剥離が発生しやすいため、厳しい加工性が要求されない用途で使用されていた。このような問題に対して、特許文献1、2では、塗膜の加工性、基材との密着性を向上すべく、熱硬化性フッ素樹脂に熱硬化性型(メタ)アクリレート系重合体をブレンドした熱硬化型フッ素樹脂塗料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−87575号公報
【特許文献2】特開2015−875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、熱硬化性フッ素樹脂である水酸基含有含フッ素重合体と水酸基含有(メタ)アクリレート系重合体は相溶性が悪く、混合後の塗料が外見上均一になっていても、得られる硬化塗膜は、含フッ素重合体の硬化部分と(メタ)アクリレート系重合体の硬化部分との海島構造を取る場合があり、その結果、(メタ)アクリレート系重合体の硬化部分の経時的な紫外線劣化が目立ちやすいという問題があった。また、施工後経時的に割れが発生するという問題があった。
また、加工性についても、充分満足できるレベルになく、塗装板の施工中に加工部に割れが発生する問題があった。
【0005】
本発明の課題は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、加工性および耐候性に優れた硬化塗膜を形成可能な塗料用組成物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]〜[12]に記載の構成を有する。
[1]水酸基価が5〜100mgKOH/gである水酸基を有する含フッ素重合体と、ガラス転移温度が15〜70℃である、水酸基を有する(メタ)アクリレート系重合体と、イソシアネート系硬化剤、ブロック化イソシアネート系硬化剤およびアミノ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化剤と、を含有する塗料組成物であって、前記含フッ素重合体の数平均分子量と前記(メタ)アクリレート系重合体の数平均分子量との差の絶対値が5000以内である、塗料組成物。
[2]前記(メタ)アクリレート系重合体の水酸基価が20〜80mgKOH/gである、[1]の塗料組成物。
[3]前記含フッ素重合体のガラス転移温度と前記(メタ)アクリレート系重合体のガラス転移温度との差の絶対値が30℃以内である、[1]または[2]の塗料組成物。
[4]前記(メタ)アクリレート系重合体が、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに基づく単位と、架橋性基を有さない(メタ)アクリレートに基づく単位とを有し、単量体に基づく単位の全量に対するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに基づく単位の含有量をYモル%とし、架橋性基を有さない(メタ)アクリレートに基づく単位の含有量をZモル%とした場合にY/Z(モル比)が1/99〜30/70の範囲にある、重合体である、[1]〜[3]のいずれかの塗料組成物。
【0007】
[5]前記架橋性基を有さない(メタ)アクリレートが、炭素数6以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートである、[4]の塗料組成物。
[6]前記架橋性基を有さない(メタ)アクリレートに基づく単位が、メチル(メタ)アクリレートおよびエチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートに基づく第1の単位と、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレートおよびt−ブチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートに基づく第2の単位との組合せからなり、単量体に基づく単位の全量に対する前記第1の単位の含有量をZモル%とし、前記第2の単位の含有量をZモル%とした場合にZ/Z(モル比)が5/99〜70/30の範囲にある、[4]の塗料組成物。
[7]前記アルキル(メタ)アクリレートがアルキルメタクリレートである、[5]または[6]の塗料組成物。
[8]前記(メタ)アクリレート系重合体のガラス転移温度が15〜40℃である、[1]〜[7]のいずれかの塗料組成物。
[9]さらに、顔料成分を含有し、前記顔料成分の含有量が、前記含フッ素重合体と前記(メタ)アクリレート系重合体の総含有量に対して、30質量超100質量%以下である、[1]〜[8]のいずれかの塗料組成物。
[10]前記[1]〜[9]のいずれかの塗料組成物から形成された硬化塗膜を有する塗装体。
[11]前記塗装体の基材が建築外装部材である、[10]の塗装体。
[12]前記硬化塗膜の膜厚が20〜60μmである、[10]または[11]の塗装体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塗料組成物によれば、加工性に優れた硬化塗膜を形成できる。すなわち、上記硬化塗膜は追従性に優れることから、上記硬化塗膜を有する基材が曲げ加工等の成形がなされた場合、その成形直後において、硬化塗膜の加工部に割れが生じることを抑制できる。
また、本発明の塗料組成物によれば、耐候性に優れた硬化塗膜が得られるため、長期間屋外で使用した場合にも加工部に割れが発生しない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の塗料組成物、および塗装体について詳述する。
本明細書において、「単量体に基づく単位」とは、単量体1分子が重合することで直接形成される原子団と、該原子団の一部を化学変換することで得られる原子団との総称である。なお、単量体に基づく単位は、以下、単に「単位」ともいう。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の総称であり、「(メタ)アクリレート系重合体」とは、(メタ)アクリレートに基づく単位を含む重合体であり、本発明における含フッ素重合体とは異なる重合体である。
本明細書において、重合体の数平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される数平均分子量である。なお、数平均分子量は、単に「Mn」ともいう。
本明細書において、重合体のガラス転移温度は、JIS K 6240:2011の方法で測定したガラス転移点温度である。なお、ガラス転移温度は、単に「Tg」ともいう。
【0010】
以下、本発明の塗料組成物の各成分について詳述する。
本発明における含フッ素重合体の水酸基価は、5〜100mgKOH/gであり、7〜95mgKOH/gが好ましく、9〜90mgKOH/gがより好ましい。含フッ素重合体の水酸基価が5mgKOH/g以上であれば、硬化剤と反応し、強靭な硬化塗膜が得られる。また、含フッ素重合体の水酸基価が上限値である100mg/g以下であれば、硬化塗膜の柔軟性や基材への密着性が良好となる。
なお、以下、硬化塗膜を単に「塗膜」ともいう。
【0011】
含フッ素重合体のMnは、3000〜500000が好ましく、5000〜300000がより好ましく、10000〜100000が特に好ましい。
含フッ素重合体のTgは、5〜100℃が好ましく、10〜80℃がより好ましく、15〜60℃が特に好ましい。Tgが5℃以上であれば、基材への密着性が良好となり、Tgが100℃以下であれば、塗膜の耐熱性が良好となる。
【0012】
含フッ素重合体は、水酸基を有する単位を含むことが好ましい。
含フッ素重合体は、塗膜の耐候性と基材への密着性の点から、下記単位(1)〜(3)を含む含フッ素重合体が好ましい。
単位(1):フルオロオレフィンに基づく単位。
単位(2):水酸基を有する単量体に基づく単位。
単位(3):フッ素原子および水酸基のいずれも有しない単量体に基づく単位。
【0013】
フルオロオレフィンは、オレフィンの水素原子の1個以上がフッ素原子で置換された化合物である。
フルオロオレフィンの炭素数は、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。
フルオロオレフィンにおけるフッ素原子の数(以下、「フッ素置換数」という。)は、2以上が好ましく、3〜4がより好ましい。フッ素置換数が2以上であれば、形成される塗膜の耐候性が向上する。フルオロオレフィンにおいては、フッ素原子で置換されていない水素原子の1個以上が塩素原子で置換されていてもよい。
【0014】
フルオロオレフィンとしては、CF=CF、CF=CFCl、CF=CHF、CH=CF、CF=CFCF、CF=CHCF等が挙げられ、塗膜の耐候性の点から、CF=CF、またはCF=CFClが好ましく、CF=CFClがより好ましい。
単位(1)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。単位(1)としては、フルオロオレフィンを重合することで直接形成される構成単位が好ましい。
【0015】
水酸基を有する単量体としては、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ポリアルキレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエステル、ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル、ポリアルキレングリコールモノビニルエステル、ヒドロキシアルキルイソプロペニルエーテル、ヒドロキシシクロアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキル置換シクロアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ヒドロキシアルキル基としては、炭素数6以下のヒドロキシアルキル基が好ましく、ポリアルキレングリコールとしてはオキシアルキレン基の繰り返し単位の数が2〜6であって、該オキシアルキレン基の炭素数が2または3であるポリアルキレングリコールが好ましい。また、水酸基を有する単量体は2以上の水酸基を有する単量体であってもよい。
【0016】
水酸基を有する単量体の具体例としては、下記の単量体が挙げられる。
ヒドロキシアルキルビニルエーテル:2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル。
ポリアルキレングリコールモノビニルエーテル:ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル。
ヒドロキシアルキルアリルエーテル:2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル。
ヒドロキシアルキルビニルエステル、その他の単量体:2−ヒドロキシエチルビニルエステル、4−ヒドロキシブチルビニルエステル、ヒドロキシエチルアリルエステル、ヒドロキシブチルアリルエステル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート。
【0017】
水酸基を有する単量体は、入手が容易な点から、ヒドロキシアルキルビニルエーテルが好ましく、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテルおよび4−ヒドロキシブチルビニルエーテルがより好ましく、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルおよび4−ヒドロキシブチルビニルエーテルがさらに好ましい。
単位(2)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。単位(2)としては、水酸基を有する単量体を重合することで直接形成される単位が好ましい。
【0018】
単位(3)は、フッ素原子および水酸基を有しない単量体に基づく単位である。
該単量体は、水酸基に加えて、カルボキシ基、エポキシ基、オキセタン基およびアルコキシシリル基等の架橋性基を有さないことが好ましい。
該単量体としては、フッ素原子および水酸基のいずれも有しない、ビニルエーテル、アリルエーテル、イソプロペニルエーテル、カルボン酸ビニルエステル、カルボン酸アリルエステル、カルボン酸イソプロペニルエステル、メタリルエーテル、カルボン酸メタリルエステル、α−オレフィン、および(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
フッ素原子および水酸基を有しない単量体としては、フルオロオレフィンとの共重合性に優れる点から、フッ素原子および水酸基を有しない、アルキルビニルエーテル、シクロアルキルビニルエーテル、カルボン酸ビニルエステル、アルキルアリルエーテルおよびカルボン酸アリルエステルが好ましく、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または脂環状のアルキル基を有するアルキルビニルエーテルおよび炭素数12以下の分岐を有していてもよい飽和脂肪酸の誘導体であるカルボン酸ビニルエステルがより好ましい。
単位(3)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0020】
該フッ素原子および水酸基を有しない単量体の具体例としては、以下の単量体が挙げられる。
エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、メチルイソプロペニルエーテル、ベオバー10(商品名、炭素数10の分岐状脂肪酸の誘導体である飽和脂肪酸ビニルエステル、シェルケミカルズジャパン株式会社製)、酪酸ビニル、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、プロピオン酸アリル、酢酸アリル、エチレン、プロピレン、イソブチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート。
【0021】
本発明における含フッ素重合体中の全構成単位に対する単位(1)の含有量は、20〜80モル%が好ましく、30〜70モル%がより好ましい。単位(1)の含有量が下限値以上であれば、優れた耐候性が得られやすい。単位(1)の含有量が上限値以下であれば、基材への密着性が確保できる。
含フッ素重合体中の全構成単位に対する単位(2)の含有量は、0.5〜60モル%が好ましく、1〜50モル%がより好ましい。単位(2)の含有量が下限値以上であれば、硬化剤と反応しやすく、強靭な塗膜が得られる。単位(2)の含有量が上限値以下であれば、塗膜の耐水性が低下しにくい。
含フッ素重合体中の全単位に対する単位(3)の含有量は、0.5〜60モル%が好ましく、1〜50モル%がより好ましい。単位(3)の含有量が下限値以上であれば、塗膜の柔軟性や基材への密着性が良好となる。単位(3)の含有量が上限値以下であれば、塗膜の耐候性への影響が少ない。
含フッ素重合体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
含フッ素重合体の製造方法としては、フルオロオレフィン、水酸基を有する単量体、およびフッ素原子および水酸基を有しない単量体を含む単量体混合物を共重合させる方法が好ましい。
重合方法は、ラジカル重合開始剤の作用によるラジカル重合法が採用できる。重合形態としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等を採用できる。重合における反応温度は通常、0〜130℃であり、反応時間は通常、1〜50時間である。
重合における重合溶媒の具体例としては、イオン交換水;エタノール、ブタノール、プロパノール等のアルコール;n−へキサン、n−ヘプタン等の飽和炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステルが挙げられる。
【0023】
ラジカル重合開始剤の具体例としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル;シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロへキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロへキサン等のパーオキシケタール;t−ヘキシルパーオキシ−n−ブチルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−n−プロピルカーボネート等のパーオキシカーボネートエステル;イソブチリルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド等が挙げられる。
【0024】
乳化重合を採用する場合には、水中、かつアニオン系乳化剤、およびノニオン系乳化剤の存在下、水溶性過酸化物、過硫酸塩、水溶性アゾ化合物等の重合開始剤の作用により重合できる。また、重合反応中には微量の塩酸またはフッ酸が生成する場合があるため、重合時に緩衝液をあらかじめ添加することが好ましい。
【0025】
本発明の塗料組成物中、含フッ素重合体の含有量は、塗料組成物の固形分に対して、10〜80質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましい。含フッ素重合体の含有量が10質量%以上であれば、塗膜の耐候性が低下しにくい。含フッ素重合体の含有量が80質量%以下であれば、塗装に最適な粘度に設計しやすい。
なお、塗料組成物の固形分とは、後述の有機溶媒や水性媒体等の、塗料組成物を硬化させる前に除去される成分を除いた組成物をいう。
【0026】
本発明における水酸基を有する(メタ)アクリレート系重合体(以下、単に「(メタ)アクリレート系重合体」ともいう。)は、Tgが15〜70℃である。Tgが15℃以上であるため、塗膜の硬度が高くなり、充分な耐候性を有する。そのため、長期間屋外で使用した場合においても加工部に割れが発生しにくい。また、Tgが70℃以下であるため、塗膜の硬度が過度に高くなることがなく、加工性に優れる。その結果、成形直後においても加工部に割れが発生しにくい。
(メタ)アクリレート系重合体のTgの下限値は、15℃以上であり、上記効果がより発揮される点から、17℃が好ましく、20℃以上がより好ましく、22℃以上がさらに好ましい。
(メタ)アクリレート系重合体のTgの上限値は、70℃以下であり、上記効果がより発揮される点から、67℃以下が好ましく、65℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましく、40℃以下が特に好ましい。
【0027】
本発明において、含フッ素重合体のTgと(メタ)アクリレート系重合体のTgとの差の絶対値は、30℃以内が好ましく、25℃以内がより好ましく、20℃以内がさらに好ましい。該差の絶対値が上記範囲内であれば、塗料組成物により形成される塗膜が、耐候性および加工性、熱冷サイクル性により優れる。両者の差の下限は、特に制限されないが、0℃が挙げられる。
なお、含フッ素重合体のTgと(メタ)アクリレート系重合体のTgとを比較すると、塗膜の耐候性および加工性がより優れる点で、(メタ)アクリレート系重合体のTgが含フッ素重合体のTgより高いことが好ましい。
【0028】
本発明における(メタ)アクリレート系重合体のMnは、3000〜500000が好ましく、5000〜300000がより好ましく、10000〜100000が特に好ましい。
本発明において、含フッ素重合体のMnと(メタ)アクリレート系重合体のMnとの差の絶対値は、5000以内であり、4500以内が好ましく、4000以内がより好ましく、3000以内が特に好ましい。これにより、含フッ素重合体と(メタ)アクリレート系重合体との相溶性が向上する。その結果、均一な塗膜を得ることが可能になり、部材への塗膜の追従性が向上し、成形直後において、加工部に割れがより発生しにくくなる。また、塗膜の耐候性が向上し、長期間屋外で使用した場合においても加工部に割れがより発生しにくくなる。
【0029】
本発明における(メタ)アクリレート系重合体は、水酸基価が20〜80mgKOH/gが好ましく、21〜77mgKOH/gがより好ましく、22〜75mgKOH/gがさらに好ましい。(メタ)アクリレート系重合体の水酸基価が上記範囲であると、水酸基価が上述した数値範囲の含フッ素重合体と、の相溶性が向上する。その結果、より均一な塗膜が得られ、部材への塗膜の追従性が向上し、成形直後において、加工部に割れがより発生しにくくなる。また、塗膜の耐候性が向上し、長期間屋外で使用した場合も加工部での割れの発生を抑制できる。
【0030】
本発明における(メタ)アクリレート系重合体は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに基づく単位(以下、単位b1とも称する。)と、架橋性基を有さない(メタ)アクリレートに基づく単位(以下、単位b2とも称する。)と、を含むことが好ましい。これにより、塗料組成物により形成される塗膜の硬度が高くなる。また、(メタ)アクリレート系重合体と含フッ素重合体との相溶性が向上し、より均一な塗膜が得られ、基材への塗膜の追従性が向上し、成形直後において、加工部に割れがより発生しにくくなる。また、塗膜の耐候性が向上し、長期間屋外で使用した場合においても加工部に割れがより発生しにくくなる。
なお、架橋性基を有さないとは、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、オキセタン基、アルコキシシリル基等の架橋性基を有さないことを意味する。
また、単位b1および単位b2を含有する(メタ)アクリレート系重合体の場合、(メタ)アクリレート系重合体の全単位に対する単位b1の含有量がYモル%、単位b2の含有量がZモル%とすると、単位b1の含有量と単位b2の含有量とのモル比(Y/Z)は、1/99〜30/70の範囲が好ましく、3/97〜25/75がより好ましく、5/95〜20/80がさらに好ましい。これにより、塗膜の加工性およびそれによる成形直後における加工部での割れの発生と、耐候性の向上による長期間屋外で使用した場合における加工部での割れの発生とを抑制できる。
【0031】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記Tg等の物性を有する重合体を得やすいことより、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、ヒドロキシアルキルメタクリレートが好ましく、塗膜の柔軟性が高く塗装板の加工性がより優れることより、ヒドロキシエチルメタクリレートが特に好ましい。
【0032】
架橋性基を有さない(メタ)アクリレートとしては、炭素数6以下のアルキルを有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。さらに、炭素数1または2のアルキル(メタ)アクリレートと炭素数3〜6のアルキル(メタ)アクリレートとが組み合わされることがより好ましい。言い換えれば、(メタ)アクリレート系重合体における単位b2としては、炭素数1または2のアルキル(メタ)アクリレートに基づく第1の単位と炭素数3〜6のアルキル(メタ)アクリレートに基づく第2の単位との組合せからなることがより好ましい。
特に、(メタ)アクリレート系重合体における単位b2としては、メチル(メタ)アクリレートおよびエチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種の(メタ)アクリレートに基づく第1の単位と、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレートおよびt−ブチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種の(メタ)アクリレートに基づく第2の単位との組合せからなることが好ましい。
前記Tg等の物性を有する重合体を得やすいことより、上記各アルキル(メタ)アクリレートとしては、アルキルメタクリレートがより好ましい。
さらに、(メタ)アクリレート系重合体の全単位に対する第1の単位をZモル%とし、第2の単位をZモル%とした場合、そのモル比(Z/Z)は、5/95〜70/30が好ましく、7/93〜60/40がより好ましく、10/90〜50/50がさらに好ましい。これにより、溶剤溶解性、含フッ素重合体との相溶性、塗膜の耐候性、密着性、基材への追従性などがより優れる。
【0033】
塗料組成物中、(メタ)アクリレート系重合体の含有量は、塗料組成物の固形分に対して、10〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましい。
また、塗料組成物中、含フッ素重合体と(メタ)アクリレート系重合体との含有比率(含フッ素重合体の含有量(質量%))/((メタ)アクリレート系重合体の含有量(質量%)は、90/10〜30/70が好ましく、85/15〜35/65がより好ましく、80/20〜40/60がさらに好ましい。
【0034】
本発明の塗料組成物は、イソシアネート系硬化剤、ブロック化イソシアネート系硬化剤およびアミノ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化剤を含む。
イソシアネート系硬化剤の具体例としては、無黄変ポリイソシアネート、無黄変ポリイソシアネート変性体が挙げられる。イソシアネート系硬化剤のイソシアネート基はブロック化されていない。
無黄変ポリイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)等の脂環族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
無黄変ポリイソシアネート変性体の具体例としては、ジイソシアネートのイソシアヌレート体、ジイソシアネートのポリオール変性体、ジイソシアネートのポリアミン変性体、ジイソシアネートのイソシアヌレート体の一部のイソシアネート基をポリオールで変性した変性体、これらの変性体の混合物等が挙げられる。
ブロック化イソシアネート系硬化剤は、イソシアネート系硬化剤のイソシアネート基がブロック化剤でブロック化された硬化剤である。
ブロック化剤としては、イプシロンカプロラクタム(E−CAP)、メチルエチルケトンオキシム(MEK−OX)、メチルイソブチルケトンオキシム(MIBK−OX)、ピラリジン、トリアジン(TA)等が挙げられる。
【0036】
アミノ樹脂の具体例としては、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、スルホアミド樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂等が挙げられる。なかでも、硬化速度が速い点から、メラミン樹脂が好ましい。これらの樹脂はアミノ基の窒素原子に結合したヒドロキシメチル基やアルキルエーテル化されたヒドロキシメチル基等の反応性基を有する。
メラミン樹脂の具体例としては、アルキルエーテル化したアルキルエーテル化メラミン樹脂等が挙げられる。なかでも、メラミン樹脂としては、水酸基がメトキシ基およびブトキシ基の少なくとも一方で置換されたメチロールメラミンやその部分縮合物からなることがより好ましい。
【0037】
塗料組成物中、硬化剤の含有量は、本発明における含フッ素重合体100質量部に対して、1〜40質量部が好ましく、3〜30質量部がより好ましい。硬化剤の含有量が下限値以上であれば、充分な架橋により強靭な塗膜が得られやすい。硬化剤の含有量が上限値以下であれば、イソシアネート基と水分との反応による塗膜の発泡を抑制しやすい。
硬化剤は、1種を単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本発明の塗料組成物は、顔料を含有してもよい。顔料としては、防錆顔料、着色顔料および体質顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種の顔料が好ましい。
防錆顔料は、塗料組成物を塗布する基材の腐食や変質を防止するための顔料である。環境への負荷が少ない点から無鉛防錆顔料が好ましい。無鉛防錆顔料としては、シアナミド亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸カルシウムマグネシウム、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸バリウム、シアナミド亜鉛カルシウム等が挙げられる。
【0039】
着色顔料は、塗膜を着色するための顔料である。着色顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、モアゾイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド等が挙げられる。酸化チタンは、塗膜の耐候性をさらに向上させる目的で、顔料表面に光触媒作用を抑制するための処理が施された酸化チタンが好ましく、D918(商品名、堺化学社製)、PFC105(商品名、石原産業社製)が特に好ましい。
体質顔料は、塗膜の硬度を向上させ、かつ、厚みを増すための顔料である。体質顔料としては、タルク、硫酸バリウム、マイカ、炭酸カルシウム等が挙げられる。
顔料成分としては、耐候性に優れる点では、酸化チタンが特に好ましい。
【0040】
本発明の塗料組成物が顔料を含有する場合、顔料の含有量は、前記含フッ素重合体と前記(メタ)アクリレート系重合体の総含有量に対して、通常は5〜250質量%であり、30質量超100質量%以下が特に好ましい。顔料の含有量が下限値以上であれば、顔料の機能(塗膜の着色、防錆、硬度等)が得られやすく、顔料の含有量が上限値以下であれば、塗膜の加工性(塗膜の割れの発生等)や硬度(雨滴の衝突等による耐擦傷性)が向上しやすい。
【0041】
本発明の塗料組成物は、架橋反応を促進する目的で硬化触媒を含有してもよい。特に、低温において短時間で硬化させる場合には、硬化触媒を含有することが好ましい。硬化触媒は、含フッ素重合体の硬化反応を促進し、塗膜の化学性能および物理性能を高める。
【0042】
本発明の塗料組成物は、有機溶媒や水性媒体を含有してもよい。有機溶媒や水性媒体は、塗料組成物の塗布性を向上させるために使用され、これらを含みかつ未硬化の組成物の塗布膜から有機溶媒や水性媒体を除去した後、組成物を硬化させて硬化した膜とする。有機溶媒や水性媒体の除去は、通常加熱による蒸発除去で行われ、この蒸発除去は、組成物の硬化と別工程で行ってもよく、組成物の加熱硬化工程において蒸発除去と硬化を連続的に行うこともできる。
また、本発明の塗料組成物は、有機溶媒や水性媒体を含有しない塗料組成物である、粉体塗料組成物であってもよい。
【0043】
有機溶媒の具体例としては、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル等が挙げられる。
【0044】
本発明の塗料組成物が有機溶媒を含有する場合、有機溶媒を含む塗料組成物に対する有機溶媒の含有量は、5〜55質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましい。有機溶媒の含有量が5質量%以上あれば、塗料組成物の粘度がより低くなり、塗布作業が容易になる。有機溶媒の含有量が55質量%以下であれば、有機溶媒を除去して塗膜を形成することが容易になる。
有機溶媒は、1種を単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0045】
水性媒体は、水のみ、または水と水溶性溶媒とを含む媒体が挙げられる。水溶性溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール等のアルコールが挙げられる。水性媒体として水溶性溶媒を含有する場合、水溶性溶媒の含有量は、水性媒体全質量に対して10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
本発明の塗料組成物が水性媒体を含有する場合、水性媒体を含む塗料組成物に対する水性媒体の含有量は、5〜55質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましい。水性媒体の含有量が5質量%以上あれば、塗料組成物の粘度がより低くなり、塗布作業が容易になる。水性媒体の含有量が55質量%以下であれば、水性媒体を除去して塗膜を形成することが容易になる。
【0046】
硬化触媒は、硬化剤の種類等に応じて適宜選択され、硬化剤がイソシアネート系硬化剤またはブロック化イソシアネート系硬化剤である場合、硬化触媒は、錫触媒またはジルコニウム触媒が好ましい。
錫触媒の具体例としては、オクチル酸錫、トリブチル錫ジラウレート、ジブチルチンジラウレート等が挙げられる。
ジルコニウム触媒の具体例としては、ジルコニウムキレート等が挙げられる。ジルコニウム触媒の市販品としては、「K−KAT XC−4205」(楠本化成社製、商品名)等が挙げられる。
硬化剤がアミノ樹脂である場合、硬化触媒は、ブロック化した酸触媒が好ましい。
ブロック化した酸触媒としては、カルボン酸、スルホン酸、リン酸等の各種酸のアミン塩が挙げられ、p−トルエンスルホン酸のジエタノールアミン塩またはトリエチルアミン塩、ドデシルベンゼンスルホン酸のジエタノールアミン塩またはトリエチルアミン塩等の高級アルキル置換スルホン酸アミン塩が挙げられる。
【0047】
本発明の塗料組成物が硬化触媒を含有する場合、硬化触媒の含有量は、硬化剤100質量部に対して、0.001〜5.0質量部が好ましい。硬化触媒の割合が下限値以上であれば、触媒効果が充分に得られやすい。硬化触媒の割合が上限値以下であれば、硬化触媒が残存して塗膜に影響し、耐水性が低下することを抑制しやすい。
硬化触媒は、1種を単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0048】
また、本発明の塗料組成物は、光安定剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、シランカップリング剤、顔料分散剤等を含有してもよい。
光安定剤としては、たとえば、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、たとえば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物等が挙げられる。
塗料組成物が界面活性剤を含有すれば、塗料組成物の表面張力を制御できるため、特定の成分の表面濃度を調整する場合に有効である。
界面活性剤としては、ノニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、アニオン型界面活性剤のいずれでもよい。
【0049】
塗料組成物がシランカップリング剤を含有すれば、基材との密着性が良好な塗膜を形成しやすい。
シランカップリング剤としては、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、メルカプト基およびイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するシランカップリング剤が挙げられ、エポキシ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0050】
顔料分散剤としては、アニオン性化合物、カチオン性化合物、非イオン性化合物、分子量が数千〜数万の高分子化合物が挙げられ、シアニンブルーとカーボンブラックとの色浮性および色分かれ性の点で、硫酸塩基、スルホン酸基、リン酸塩基および脂肪酸アミン塩基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する化合物が好ましい。
【0051】
本発明の塗料組成物は、含フッ素重合体、(メタ)アクリレート系重合体および硬化剤とを混合し、必要に応じて、これら以外の上述した成分を混合して製造するのが好ましい。それぞれの成分を混合順序は、特に限定されない。
混合方法としては、ボールミル、ペイントシェーカー、サンドミル、ジェットミル、ロッキングミル、アトライター、三本ロール、ニーダー等を用いて混合する方法が挙げられる。
【0052】
本発明の塗装体は、基材の表面に、本発明の塗料組成物により形成された塗膜を有する、塗装体である。本発明の塗料組成物は、使用する基材や環境に応じ、含フッ素重合体、(メタ)アクリレート系重合体および硬化剤が有機溶媒または水性媒体に溶解または分散した塗料組成物であってもよく、有機溶媒および水性媒体を含まない粉体塗料組成物であってもよい。
基材としては、金属材料、金属以外の無機質材料等の耐熱材料からなる基材が好ましい。金属材料としては、鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられる。金属材料からなる基板の表面はメッキ等の表面処理がなされていてもよい。
金属以外の無機質材料としては、粘土、ケイ砂、石灰岩等の非金属原料を高熱処理して製造された建材が挙げられ、より具体的には、ガラス板、タイル、レンガ、ガラス繊維強化セメント板、石綿セメント板、木片セメント板、セメントけい酸カルシウム板、石こうスラグ板等が挙げられる。
塗装体の基材としては、建築外装部材が好ましい。
建築外装部材としては、窯業建材とも呼ばれる、上記金属以外の無機質材料からなる建築外装部材が好ましい。
塗膜の膜厚は、通常は10〜100μmであり、20〜60μmが好ましい。塗膜の膜厚が下限値以上であれば、塗膜の透けなどを抑制でき、塗膜の膜厚が上限値以下であれば、塗膜の割れ等の加工性の低下を抑制できる効果がある。かかる効果は、本発明の塗料組成物が、他の成分として顔料を含む態様において、特に顕著に発現する。
【0053】
また、基材の表面と上述の塗料組成物により形成された塗膜の間に、下塗り層、中塗り層を含んでいてもよい。
下塗り層としては、基材との密着性や基材保護の観点から、エポキシ系塗料、アクリル系塗料、ポリエステル系塗料等が挙げられる。
中塗り層としては、下塗り層と上塗り層の密着性や、下塗り層と上塗り層の収縮応力の緩和、色味を出すための顔料や色素などの分散性、上塗り層を通過してくるUV光に対する耐候性の観点から、アクリル系塗料、ポリフッ化ビニリデン系塗料、シリコーン系塗料、アクリルシリコーン系塗料等が挙げられる。
たとえば、建築外装材としては、エポキシ系塗料の下塗り層、アクリル系塗料の中塗り層、および本発明の塗料組成物により形成された塗膜を有することが好ましい。
【0054】
塗装体は、基材の表面に塗料組成物を塗布した後、形成された塗布層を硬化させて塗膜を形成することによって製造できる。
塗料組成物は、基材の表面に直接塗布してもよく、基材の表面に公知の表面処理(下塗り、中塗り、下地処理等)を施した上に塗布してもよい。
塗料組成物の塗布方法としては、刷毛、ローラー、ディッピング、スプレー、ロールコーター、ダイコーター、アプリケーター、スピンコーター、静電塗装機等の塗装装置を用いる方法が挙げられる。
硬化温度は、室温〜250℃が好ましく、50〜200℃が好ましい。塗料組成物が有機溶媒等の揮発成分を含有する場合は、この加熱の前段で除去される。
塗布層を加熱する場合の加熱方法としては、密封式硬化炉、連続硬化が可能なトンネル炉等を用いる方法が挙げられる。加熱源は、熱風循環、赤外線加熱、高周波加熱等を採用できる。加熱方法は、連続生産性の点から、トンネル炉が好ましい。加熱源は、熱伝道が均一で、均一な塗膜が得られやすい点から、熱風循環または赤外線加熱が好ましい。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。以下の説明では、特に説明がない限り、成分割合は「質量%」を単に「%」と示した。
【0056】
<含フッ素重合体の製造>
[例1]
内容積2500mLのステンレス製撹拌機付き耐圧反応器に、キシレンの590gと、エタノールの170gと、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルの129gと、エチルビニルエーテルの206gと、シクロヘキシルビニルエーテルの208gと、炭酸カルシウムの11gと、パーブチルパーピバレートの3.5gとを仕込み、窒素による脱気により液中の溶存酸素を除去した。
次に、CF=CFClの660gを導入して徐々に昇温し、温度65℃に維持しながら反応を続けた。10時間反応させた後、反応器を水冷して反応を停止した。該反応液を室温まで冷却した後、未反応モノマーをパージし、得られた反応液を珪藻土で濾過して固形物を除去した。次に、キシレンの一部とエタノールを減圧留去により除去し、水酸基を含有する含フッ素重合体1のキシレン溶液(不揮発分60%、Mn15000)を得た。また、含フッ素重合体1のキシレン溶液を乾燥し、含フッ素重合体1の水酸基価とTgを測定した結果、水酸基価52.0mgKOH/g、Tg35℃であった。
【0057】
<メタクリレート系重合体の製造>
[例2]
温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下ロートを備えた容量500mlの4つ口フラスコに、キシレン160質量部を仕込み、撹拌しながら加熱して80℃に昇温した。次いで、80℃の温度で、ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAとも称する)23.9質量部、メチルメタクリレート(以下、MMAとも称する)36.7質量部、n−ブチルメタクリレート(以下、n−BMAとも称する)139.4質量部、過酸化物系重合開始剤(日油(株)社製、「パーヘキシルO(商標、純度93%)」。以下、開始剤とも称する。)11質量部、キシレン29質量部を予め均一混合したものを、2時間かけて、滴下ロートにより等速滴下した。滴下終了後、100℃の温度を5時間維持した後、得られた反応液を珪藻土で濾過することで、水酸基を含有するメタクリレート重合体1のキシレン溶液(不揮発分50%、Mn13000)を得た。
また、メタクリレート重合体1のキシレン溶液を乾燥し、メタクリレート重合体1の水酸基価とTgを測定した結果、水酸基価51.8mgKOH/g、Tg36.5℃であった。また、1H−NMR分析により、メタクリレート重合体1は、HEMAに基づく単位、MMAに基づく単位、n−BMAに基づく単位を、この順に12モル%、24モル%、64モル%含むことを確認した。
【0058】
[例3]
温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下ロートを備えた容量500mlの4つ口フラスコに、キシレン160質量部を仕込み、撹拌しながら加熱して80℃に昇温した。次いで、80℃の温度で、HEMA20.6質量部、エチルメタクリレート(以下、EMAとも称する)96.0質量部、i−ブチルメタクリレート(以下、i−BMAとも称する)83.4質量部、開始剤8質量部、キシレン32質量部を予め均一混合したものを、2時間かけて、滴下ロートにより等速滴下した。滴下終了後、100℃の温度を5時間維持した後、得られた反応液を珪藻土で濾過することで、水酸基を含有するメタクリレート重合体2のキシレン溶液(不揮発分50%、Mn19000)を得た。
また、メタクリレート重合体2のキシレン溶液を乾燥し、メタクリレート重合体2の水酸基価とTgを測定した結果、水酸基価43.2mgKOH/g、Tg56.7℃であった。また、1H−NMR分析により、メタクリレート重合体2は、HEMAに基づく単位、EMAに基づく単位、i−BMAに基づく単位を、この順に10モル%、53モル%、37モル%含むことを確認した。
【0059】
[例4]
温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下ロートを備えた容量500mlの4つ口フラスコに、キシレンの160質量部を仕込み、撹拌しながら加熱して80℃に昇温した。次いで、80℃の温度で、HEMA14.3質量部、i−BMA179.3質量部、開始剤8質量部、キシレン32質量部を予め均一混合したものを、2時間かけて、滴下ロートにより等速滴下した。滴下終了後、100℃の温度を5時間維持した後、得られた反応液を珪藻土で濾過することで、水酸基を含有するメタクリレート重合体3のキシレン溶液(不揮発分50%、Mn19000)を得た。
また、メタクリレート重合体3のキシレン溶液を乾燥し、メタクリレート重合体3の水酸基価とTgを測定した結果、水酸基価60.5mgKOH/g、Tg97.1℃であった。また、1H−NMR分析により、メタクリレート重合体3は、HEMAに基づく単位、i−BMAに基づく単位を、この順に11モル%、89モル%含むことを確認した。
【0060】
[例5]
温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下ロートを備えた容量500mlの4つ口フラスコに、キシレンの160質量部を仕込み、撹拌しながら加熱して80℃に昇温した。次いで、80℃の温度で、HEMA24.0質量部、MMA38.4質量部、t−ブチルメタクリレート(以下、t−BMAとも称する)137.6質量部、開始剤6質量部、キシレン34質量部を予め均一混合したものを、2時間かけて、滴下ロートにより等速滴下した。滴下終了後、90℃の温度を5時間維持した後、得られた反応液を珪藻土で濾過することで、水酸基を含有するメタクリレート重合体4のキシレン溶液(不揮発分50%、Mn22000)を得た。
また、メタクリレート重合体4のキシレン溶液を乾燥し、メタクリレート重合体4の水酸基価とTgを測定した結果、水酸基価51.8mgKOH/g、Tg99.5℃であった。また、1H−NMR分析により、メタクリレート重合体4は、HEMAに基づく単位、MMAに基づく単位、t−BMAに基づく単位を、この順に12モル%、25モル%、63モル%含むことを確認した。
【0061】
なお、固形分濃度は、JIS K 5601−1−2(2009年制定)によって加熱残分を測定して求めた。
数平均分子量(Mn)は、GPC(東ソー社製、HLC−8220)にて測定した。展開溶媒としてテトラヒドロフラン、標準物質としてポリスチレンを用いた。
ガラス転移温度(Tg)は、熱分析装置DSC(セイコーインスツルメント製)を使用し、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
例2〜5で製造したメタクリレート重合体1〜4の構成を下記表にまとめて示す。
なお、表中の記載中、「第1の単位」は単位b2のうちの前記第1の単位をいい、「第2の単位」は単位b2のうちの前記第2の単位をいう。具体的単位は単量体の略名で示した。また、「Mn差」とは含フッ素重合体のMn(15000)とメタクリレート重合体1〜4のMnとの差の絶対値をいう。
【0062】
【表1】
【0063】
<塗料組成物の製造>
塗料組成物の製造においては、酸化チタン顔料(堺化学社製、商品名「D−918」)と、硬化剤(HDIのイソシアヌレート体、日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートHX」)と、硬化触媒(ジブチルチンジラウレートをキシレンで4〜10倍に希釈した溶液)とを、更に使用した。
[例6]
含フッ素重合体1のキシレン溶液(不揮発分60%)58.5g、メタクリレート重合体1(不揮発分50%)30.1gに、酸化チタン顔料200g、キシレン105.7g、酢酸ブチル105.7gを加え、さらに、直径1mmのガラスビーズの369gを加えて、ペイントシェーカーで2時間撹拌した。撹拌後、濾過を行ってガラスビーズを取り除き、顔料組成物を得た。
次に、該顔料組成物の100gに、含フッ素重合体1のキシレン溶液(不揮発分60%)96.5gと、メタクリレート重合体1の49.6g、キシレン18.7g、硬化剤16.5gと、硬化触媒5.4gと、をさらに加えて混合し、塗料組成物Iを得た。
【0064】
[例7]
含フッ素重合体1のキシレン溶液(不揮発分60%)58.5g、メタクリレート重合体2(不揮発分50%)36.1gに、酸化チタン顔料200g、キシレン102.7g、酢酸ブチル102.7gを加え、さらに、直径1mmのガラスビーズの369gを加えて、ペイントシェーカーで2時間撹拌した。撹拌後、濾過を行ってガラスビーズを取り除き、顔料組成物を得た。
次に、該顔料組成物の100gに、含フッ素重合体1のキシレン溶液(不揮発分60%)96.5gと、メタクリレート重合体2の59.5g、キシレンの8.8g、硬化剤16.5gと、硬化触媒5.4gと、をさらに加えて混合し、塗料組成物IIを得た。
【0065】
[例8]
含フッ素重合体1のキシレン溶液(不揮発分60%)58.5g、メタクリレート重合体3(不揮発分50%)25.9gに、酸化チタン顔料200g、キシレン107.8g、酢酸ブチル107.8gを加え、さらに、直径1mmのガラスビーズの369gを加えて、ペイントシェーカーで2時間撹拌した。撹拌後、濾過を行ってガラスビーズを取り除き、顔料組成物を得た。
次に、該顔料組成物の100gに、含フッ素重合体1のキシレン溶液(不揮発分60%)96.5gと、メタクリレート重合体3の42.7g、キシレン25.6g、硬化剤16.5gと、硬化触媒5.4gと、をさらに加えて混合し、塗料組成物IIIを得た。
【0066】
[例9]
含フッ素重合体1のキシレン溶液(不揮発分60%)58.5g、アクリル樹脂4(不揮発分50%)30.1gに、酸化チタン顔料200g、キシレン105.7g、酢酸ブチル105.7gを加え、さらに、直径1mmのガラスビーズの369gを加えて、ペイントシェーカーで2時間撹拌した。撹拌後、濾過を行ってガラスビーズを取り除き、顔料組成物を得た。
次に、該顔料組成物の100gに、含フッ素重合体1のキシレン溶液(不揮発分60%)96.5gと、メタクリレート重合体4の49.6g、キシレン18.7g、硬化剤16.5gと、硬化触媒5.4gと、をさらに加えて混合し、塗料組成物IVを得た。
【0067】
<塗装板の作製とその評価>
クロメート処理したアルミニウム板の表面に、塗料組成物I〜IVを、乾燥後の塗膜の膜厚が40μmとなるように塗装し、25℃の恒温室中で1週間養生させることにより塗膜を形成して、塗膜付試験板をそれぞれ得た。
それぞれの塗膜付試験板について、塗膜の加工性、加工部塗膜の耐候性試験を行った。
【0068】
[評価方法]
(加工性)
JIS K 5600−5−1(耐屈曲性、円筒形マンドレル法)に準拠し、以下の基準に従って評価した。
すなわち、オールグッド社製、円筒形マンドレル屈曲試験器を使用し2mmのマンドレルを使用し評価を行った。
○:塗膜の割れ及び塗膜の剥離は見られなかった。
△:試験板の端部に、塗膜の割れが若干確認された。
×:加工部の全面に、塗膜の割れ及び塗膜の剥離が確認された。
(促進耐候性試験)
Accelerated Weathering Tester(Q−PANEL LAB PRODUCTS社製、モデル:QUV/SE)を用い、5000時間暴露後の塗膜の割れ・塗膜の剥離の有無について、以下の基準に従って評価した。
○:塗膜の割れ及び塗膜の剥離は見られなかった。
△:試験板の端部に、塗膜の割れが若干確認された。
×:加工部の全面に、塗膜の割れ及び塗膜の剥離が確認された。
(実暴露試験)
塗膜付試験板を沖縄県那覇市の屋外に設置し、1年後の塗膜剥離の有無について、以下の基準に従って評価した。
○:塗膜の割れ及び塗膜の剥離は見られなかった。
△:試験板の端部に、塗膜の割れが若干確認された。
×:加工部の全面に、塗膜の割れ及び塗膜の剥離が確認された。
結果を下記表にまとめて示す。
【0069】
【表2】
【0070】
<塗装板の作製とその評価(その2)>
塗料組成物I(含フッ素重合体とメタクリレート重合体の総質量に対する酸化チタン顔料の含有量が33質量%)における酸化チタン顔料の含有量を変更する以外は、塗料組成物Iと同様にして塗料組成物I−1(該酸化チタン顔料の含有量110質量%)と塗料組成物I−2(該酸化チタン顔料の含有量10質量%)をそれぞれ調製した。それぞれの塗料組成物から得られた塗装板を評価した結果、塗料組成物I−1のそれは、加工性と促進耐候試験に関して、塗料組成物Iのそれに劣っており、塗料組成物IIのそれと同等であった。塗料組成物I−2の塗装板は、塗料組成物Iのそれと同等の評価結果であったが、顔料配合による効果(塗膜の着色効果)に劣っていた。
【0071】
<塗装板の作製とその評価(その3)>
塗料組成物Iを、乾燥後の塗膜の膜厚が、それぞれ15μm、45μm、75μmとなる様に塗装して、塗料組成物Iから得られる膜厚の異なる塗装板を得た。それぞれの塗装板を評価した結果、膜厚75μmの塗装板は、膜厚45μmのそれに比較して、加工性が低下しており、塗料組成物IIのそれと同等であった。膜厚15μmの塗装板は、膜厚45μmのそれと同等の評価結果であったが、顔料配合による効果(塗膜の着色効果)に劣っていた。
【0072】
表2に示すように、実施例の塗料組成物(I,II)、特に塗料組成物(I)は、塗膜の加工性に優れていた。また、促進試験及び実暴露試験により、耐候性に優れていることが確認された。さらに、塗料組成物Iにおいても、顔料の配合量、または形成される塗膜の膜厚を制御すれば、より一層、加工性に優れた塗膜を形成できることが確認された。
なお、2015年12月2日に出願された日本特許出願2015−235674号の明細書、特許請求の範囲および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。