【文献】
YAMAGUCHI. T et al.,Influence of molecular weight of resist polymers on surface roughness and line-edge roughness,J. Vac. Sci. Technol. B,2004年,22(6),p.2604-2610
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
α−メチルスチレン単位と、α−クロロアクリル酸メチル単位とを含有する重合体を含んでなるポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターン形成における現像条件の決定方法であって、
前記重合体の分子量が100000超の成分の割合が13%以下であり、
前記重合体の重量平均分子量が57000以上90000以下であるとともに、前記重合体の分子量分布が1.20以上1.40未満であり、
感度曲線を作成して、照射量が0.95Ethでの残膜率が0.250以上となる条件を求める、現像条件の決定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、主鎖切断型のポジ型レジストにおいては、パターニングの際の効率を高め、かつ得られるレジストパターンが明瞭であること、すなわち、レジスト膜が残って(残膜して)いる部分と、溶解している部分との境界が明瞭であることが求められる。具体的には、より明瞭性の高いレジストパターン形成を可能とする観点からは、レジストには、照射量が特定量に至らなければ現像液に溶解せず、特定量に至った時点で速やかに主鎖が切断され現像液に溶解される特性を有すること、すなわち電離放射線等の照射量の常用対数と、現像後のレジストの残膜厚との関係を示す感度曲線の傾きの大きさを表すγ値を高めることが求められている。さらに、高集積化への要求からレジストパターンを微細化して解像度を向上させることも求められている。このためには、レジストには、得られるパターンが電離放射線等の照射時に生じうる、照射領域のブレなどの照射ノイズの影響を受け難いことが求められている。
【0006】
しかしながら、例えば、特許文献1に記載されたような主鎖切断型のポジ型レジストを用いたレジストパターンの形成において、現像液の種類や現像時間を変更することによっては、得られるパターンの明瞭性を十分に高めることができなかった。さらに、特許文献1に記載されたようなポジ型レジストはパターニング効率が良好であるものの、比較的低照射量の場合であってもレジストが現像液に溶解してしまい、得られるパターンに電離放射線の照射時に生じうるノイズの影響が反映されて、パターンの解像度を充分に高めることができなかった。そのため、主鎖切断型のポジ型レジストを用いたレジストパターンの形成においては、解像度及び明瞭性の高いレジストパターンを形成し得る方途の開発が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、解像度及び明瞭性の高いレジストパターンを形成することを目的として、鋭意検討を行った。そして、本発明者は、主鎖切断型のポジ型レジストを用いたレジストパターンの形成において、α−メチルスチレン・α−クロロアクリル酸メチル共重合体の性状と、現像液の種類とを適切に組み合わせることで、γ値を維持または向上させつつ、得られるパターンの明瞭性と解像度を向上させることができる、ポジ型レジストとして使用可能な重合体及びレジストパターンの現像条件が存在することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のレジストパターン形成方法は、α−メチルスチレン単位と、α−クロロアクリル酸メチル単位とを含有する重合体および溶剤を含むポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜を露光する工程と、露光されたレジスト膜を現像する工程とを含み、前記重合体の分子量が100000超の成分の割合が13%以下であり、前記現像を、照射量が0.95Ethでの残膜率が0.250以上となる条件で行うことを特徴とする。α−メチルスチレン単位と、α−クロロアクリル酸メチル単位とを含有する分子量が100000超の成分の割合が13%以下の重合体よりなるポジ型レジストを用いたレジストパターンの形成において、上述した条件で現像を行えば、解像度及び明瞭性の高いレジストパターンを形成することができる。
なお、本発明において、分子量が所定範囲である成分の割合は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって得られるクロマトグラムを使用し、クロマトグラム中のピークの総面積(A)に対するクロマトグラム中の分子量が所定範囲である成分のピークの面積の合計(X)の割合(=(X/A)×100%)を算出することにより求めることができる。
また、本発明において、「Eth」は、レジストの感度を表す指標であり、電離放射線等を照射して現像液に溶解させたレジストの残膜率を概ね0とすることが可能な、電離放射線等の総照射量の目安となる。また「照射量が0.95Ethでの残膜率」とは、Ethに0.95を乗じた照射量、すなわちEthの95%の照射量におけるレジスト膜の残膜率(0≦残膜率≦1.00)を意味する。そして、「Eth」および「照射量が0.95Ethでの残膜率」は、何れも本明細書の実施例に記載の方法を用いて算出される。
【0009】
さらに、本発明のレジストパターン形成方法において、分子量が10000未満の成分の割合が0%超1%以下であることが好ましい。かかる重合体を含有するポジ型レジスト組成物を用いることで、レジストパターンの解像度及び明瞭性を一層向上させることができるからである。
【0010】
さらに、本発明のレジストパターン形成方法において、前記重合体の分子量が40000超の成分の割合が75%以上90%以下であることが好ましい。かかる重合体を含有するポジ型レジスト組成物を用いることで、レジストパターンの解像度及び明瞭性を一層向上させることができるからである。
【0011】
さらに、本発明のレジストパターン形成方法において、前記現像を、酢酸ヘキシルを90質量%以上含有する現像液を用いて行うことが好ましい。かかる現像液を採用して現像を行えば、γ値を更に高めてレジストパターンの明瞭性を一層向上させることができるからである。また、レジストパターンの解像度も一層向上させることができる。
【0012】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の現像条件の決定方法はα−メチルスチレン単位と、α−クロロアクリル酸メチル単位とを含有する重合体を含んでなるポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターン形成における現像条件の決定方法であって、前記重合体の分子量が100000超の成分の割合が13%以下であり、感度曲線を作成して、照射量が0.95Ethでの残膜率が0.250以上となる条件を求めることを特徴とする。照射量が0.95Ethでの残膜率が0.250以上となる条件で現像を行えば、解像度及び明瞭性の高いレジストパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のレジストパターン形成方法によれば、解像度及び明瞭性の高いレジストパターンを形成することができる。
また、本発明の現像条件の決定方法によれば、解像度及び明瞭性の高いレジストパターンを形成しうる現像条件を決定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明のレジストパターン形成方法は、電子線などの電離放射線や紫外線などの短波長の光の照射により主鎖が切断されて低分子量化する、主鎖切断型のポジ型レジストを使用するレジストパターンの形成方法であり、例えばビルドアップ基板などのプリント基板を製造する際などに好適に用いることができる。また、本発明の現像条件の決定方法は、本発明のレジストパターン形成方法における現像条件を決定する際に用いることができる。
【0015】
(レジストパターンの形成方法)
本発明のレジストパターン形成方法は、レジスト膜を形成する工程(膜形成工程)と、膜形成工程で形成したレジスト膜を露光する工程(露光工程)と、露光工程で露光されたレジスト膜を現像する工程(現像工程)とを含む。そして、本発明のレジストパターン形成方法は、膜形成工程においてα−メチルスチレン単位と、α−クロロアクリル酸メチル単位とを含有する分子量が100000超の成分の割合が13%以下である重合体を含むポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、現像工程において、照射量が0.95Ethでの残膜率が0.250以上となる条件で現像を行うことを特徴とする。
【0016】
上述した重合体は、α位にクロロ基(−Cl)を有するα−クロロアクリル酸メチルに由来する構造単位(α−クロロアクリル酸メチル単位)を含んでいるので、電離放射線等(例えば、電子線、KrFレーザー、ArFレーザー、EUV(Extreme ultraviolet)レーザーなど)が照射されると、主鎖が容易に切断されて低分子量化する。そして、本発明のレジストパターン形成方法では、Ethの95%の照射量における残膜率が0.250以上と高い。このことは、Ethにほぼ匹敵する照射量におけるレジストの溶解が抑制されるということを意味する。従って、本発明のレジストパターンの形成方法によれば、γ値を十分に高めて得られるパターンの明瞭性を十分に向上させることができる。加えて、このような高い残膜率により、非照射領域における照射ノイズの影響を一層低減して、得られるレジストパターンの解像度を十分に高めることができる。従って、本発明のパターン形成方法を用いれば、解像度及び明瞭性に優れるレジストパターンを形成することができる。
【0017】
<膜形成工程>
膜形成工程では、例えば基板などのレジストパターンを利用して加工される被加工物の上に、ポジ型レジスト組成物を塗布し、塗布したポジ型レジスト組成物を乾燥させてレジスト膜を形成する。
ここで、基板としては、特に限定されることなく、半導体基板や、マスクブランクスや、プリント基板の製造等に用いられる、絶縁層および絶縁層上に設けられた銅箔を有する基板などを用いることができる。また、ポジ型レジスト組成物の塗布方法および乾燥方法としては、特に限定されることなく、レジスト膜の形成に一般的に用いられている方法を用いることができる。ここで、膜形成工程では、レジスト膜の膜厚を1000nm以下とすることが好ましく、500nm以下とすることがより好ましく、200nm以下とすることが特に好ましい。本発明のレジストパターンの形成方法にて、膜厚が上記範囲内のレジスト膜を用いれば、明瞭性が高く解像度の高いレジストパターンを形成することができるからである。
そして、本発明のパターン形成方法においては、以下のポジ型レジスト組成物を使用する。
【0018】
[ポジ型レジスト組成物]
ポジ型レジスト組成物は、α−メチルスチレン単位と、α−クロロアクリル酸メチル単位とを含有する、分子量が100000超の成分の割合が13%以下である重合体(α−メチルスチレン・α−クロロアクリル酸メチル共重合体)と、溶剤とを含み、任意に、レジスト組成物に配合され得る既知の添加剤を更に含有する。
【0019】
[[重合体]]
−α−メチルスチレン単位−
ここで、α−メチルスチレン単位は、α−メチルスチレンに由来する構造単位である。そして、重合体は、α−メチルスチレン単位を有しているので、ポジ型レジストとして使用した際に、ベンゼン環の保護安定性により優れた耐ドライエッチング性を発揮する。
なお、重合体は、α−メチルスチレン単位を30mol%以上70mol%以下の割合で含有することが好ましい。
【0020】
−α−クロロアクリル酸メチル単位−
また、α−クロロアクリル酸メチル単位は、α−クロロアクリル酸メチルに由来する構造単位である。そして、重合体は、α−クロロアクリル酸メチル単位を有しているので、電離放射線等が照射されると、塩素原子が脱離し、β開裂反応によって主鎖が容易に切断される。従って、この重合体よりなるポジ型レジストは、高い感度を示す。
なお、重合体は、α−クロロアクリル酸メチル単位を30mol%以上70mol%以下の割合で含有することが好ましい。
【0021】
−重量平均分子量−
ここで、重合体の重量平均分子量(Mw)は、57000以上であることが好ましく、90000以下であることが好ましい。重合体の重量平均分子量(Mw)が57000以上であれば、ポジ型レジストとして使用した際に、パターニングに用いた電離放射線等を照射しなかった領域(以下、非照射領域ともいう)における残膜率を高めて、γ値を一層向上させ、得られるレジストパターンの明瞭性を一層高めることができる。また、重合体の重量平均分子量(Mw)が57000以上であれば、ポジ型レジストとして使用した際にレジストが照射ノイズの影響を受け難いため、得られるレジストパターンを高解像度化することができる。さらに、重合体の重量平均分子量(Mw)が90000以下であれば、重合体の製造容易性を高めることができる。重合体の重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であれば、ポジ型レジストとして使用した際のγ値を更に高め、得られるパターンの明瞭性を更に高めることができる。
【0022】
−分子量分布−
重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.40未満であることが好ましく、1.35以下であることがより好ましく、1.20以上であることが好ましい。重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.40以上の場合、ポジ型レジストとして使用した際のγ値を十分に高めることができない。また、重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.20以上であれば、重合体の製造容易性を高めることができる。なお、本発明において、「分子量分布(Mw/Mn)」とは、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比を指す。そして、本発明において、「数平均分子量(Mn)」および「重量平均分子量(Mw)」は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
【0023】
−分子量が100000超の成分の割合−
重合体は、分子量が100000超の成分の割合が、13%以下であることが必要であり、12%以下であることが好ましく、10%以上であることが好ましい。分子量が100000超の成分の割合が上記上限値以下であれば、重合体の製造が容易である上に、かかる重合体を含有するポジ型レジスト組成物を用いて形成したレジストをポジ型レジストとして使用した際のγ値を高め、得られるレジストパターンの明瞭性を一層高めることができる。また、分子量が100000超の成分の割合が上記下限値以上であれば、ポジ型レジストとして使用した際、非照射領域における残膜率を高めて、トップが崩れることを抑制することができ、得られるレジストパターンの明瞭性を一層高めることができる。なお、本明細書において、「トップ」とは、レジスト上の非照射領域と照射領域との境界に接する、非照射領域側の部分であって、レジストパターンのエッジを形成する部分を指す。
【0024】
−分子量が80000超の成分の割合−
また、重合体は、分子量が80000超の成分の割合が、20%以下であることが好ましく、15%以上であることが好ましい。分子量が80000超の成分の割合が、上記上限値以下であれば、ポジ型レジストとして使用した際のγ値を更に高めて、得られるレジストパターンの明瞭性を一層高めることができる。分子量が80000超の成分の割合が上記下限値以上であれば、かかる重合体を含有するポジ型レジスト組成物を用いて形成したレジストをポジ型レジストとして使用した際の非照射領域における残膜率を高めて、トップが崩れることを抑制することができ、得られるレジストパターンの明瞭性を一層高めることができる。
【0025】
−分子量が50000超の成分の割合−
また、重合体は、分子量が50000超の成分の割合が、45%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、80%以下であることが好ましく、55%以下であることがより好ましい。分子量が50000超の成分の割合が上記範囲内であれば、かかる重合体を含有するポジ型レジスト組成物を用いて形成したレジストをポジ型レジストとして使用した際のパターンの解像度及び明瞭性を一層向上させることができる。
【0026】
−分子量が40000超の成分の割合−
また、重合体は、分子量が40000超の成分の割合が、75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましい。分子量が40000超の成分の割合が上記範囲内であれば、かかる重合体を含有するポジ型レジスト組成物を用いて形成したレジストをポジ型レジストとして使用した際のパターンの解像度及び明瞭性を一層向上させることができる。
【0027】
−分子量が10000未満の成分の割合−
重合体は、分子量が10000未満の成分の割合が、0%超1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが更に好ましい。分子量が10000未満の成分の割合が1%超の場合、かかる重合体を含有するポジ型レジスト組成物を用いて形成したレジストをポジ型レジストとして使用した際、電離放射線等の照射量が少ない状態であっても過度に減膜してしまい、得られるパターンの解像度及び明瞭性を十分に向上させることができない。
【0028】
[[重合体の調製方法]]
そして、上述した性状を有する重合体は、例えば、α−メチルスチレンとα−クロロアクリル酸メチルとを含む単量体組成物を重合させた後、得られた重合物を必要に応じて精製することにより調製することができる。
なお、重合体の組成、分子量分布、重量平均分子量および数平均分子量は、重合条件および精製条件を変更することにより調整することができる。具体的には、例えば、重量平均分子量および数平均分子量は、重合温度を高くすれば、小さくすることができる。また、重量平均分子量および数平均分子量は、重合時間を短くすれば、小さくすることができる。
【0029】
−単量体組成物の重合−
ここで、重合体の調製に用いる単量体組成物としては、α−メチルスチレンを含む単量体およびα−クロロアクリル酸メチルを含む単量体と、溶媒と、重合開始剤と、任意に添加される添加剤との混合物を用いることができる。そして、単量体組成物の重合は、既知の方法を用いて行うことができる。中でも、溶媒としては、シクロペンタノンなどを用いることが好ましく、重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
【0030】
なお、重合体の組成は、重合に使用した単量体組成物中の各単量体の含有割合を変更することにより調整することができる。
【0031】
そして、単量体組成物を重合して得られた重合物は、そのまま重合体として使用してもよいが、特に限定されることなく、重合物を含む溶液にテトラヒドロフラン等の良溶媒を添加した後、良溶媒を添加した溶液をメタノール等の貧溶媒中に滴下して重合物を凝固させることにより回収し、以下のようにして精製することもできる。
【0032】
−重合物の精製−
得られた重合物を精製して重合体を得る際に用いる精製方法としては、特に限定されることなく、再沈殿法やカラムクロマトグラフィー法などの既知の精製方法を用いることができる。中でも、精製方法としては、再沈殿法を用いることが好ましい。
なお、重合物の精製は、複数回繰り返して実施してもよい。
【0033】
そして、再沈殿法による重合物の精製は、例えば、得られた重合物をテトラヒドロフラン等の良溶媒に溶解した後、得られた溶液を、テトラヒドロフラン等の良溶媒とメタノール等の貧溶媒との混合溶媒に滴下し、重合物の一部を析出させることにより行うことが好ましい。このように、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中に重合物の溶液を滴下して重合物の精製を行えば、良溶媒および貧溶媒の種類や混合比率を変更することにより、得られる重合体の分子量分布、重量平均分子量および数平均分子量を容易に調整することができる。具体的には、例えば、混合溶媒中の良溶媒の割合を高めるほど、混合溶媒中で析出する重合体の分子量を大きくすることができる。
【0034】
なお、再沈殿法により重合物を精製する場合、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中で析出した重合体を用いてもよいし、混合溶媒中で析出しなかった重合体(即ち、混合溶媒中に溶解している重合体)を用いてもよい。ここで、混合溶媒中で析出しなかった重合体は、濃縮乾固などの既知の手法を用いて混合溶媒中から回収することができる。
【0035】
[[溶剤]]
なお、溶剤としては、上述した重合体を溶解可能な溶剤であれば既知の溶剤を用いることができる。中でも、適度な粘度のポジ型レジスト組成物を得てポジ型レジスト組成物の塗工性を向上させる観点からは、溶剤としてはアニソールを用いることが好ましい。
【0036】
<露光工程>
露光工程では、膜形成工程で形成したレジスト膜に対し、電離放射線や光を照射して、所望のパターンを描画する。
なお、電離放射線や光の照射には、電子線描画装置やレーザー描画装置などの既知の描画装置を用いることができる。
【0037】
<現像工程>
現像工程では、露光工程で露光されたレジスト膜と、現像液とを接触させてレジスト膜を現像し、被加工物上にレジストパターンを形成する。
ここで、レジスト膜と現像液とを接触させる方法は、特に限定されることなく、現像液中へのレジスト膜の浸漬やレジスト膜への現像液の塗布等の既知の手法を用いることができる。
本発明の現像工程では、「照射量が0.95Ethでの残膜率が0.250以上という条件」(以下、条件(i)とも称する)を満たすことが必要である。
【0038】
[現像条件の決定方法]
照射量が上記条件(i)を満たす現像条件は、現像液の種類や現像時間などを特定しうる本発明の現像条件の決定方法を用いて決定することができる。
【0039】
具体的には、まず、α−メチルスチレン・α−クロロアクリル酸メチル共重合体を含むポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターンの形成にあたり、現像液の種類や現像時間等の条件を仮で設定し、この仮の現像条件における感度曲線を、本明細書の実施例に記載の方法を用いて作成する。次いで、この感度曲線におけるEthの値と、照射量が0.95Ethでの残膜率の値とを、同じく本明細書の実施例に記載の方法を用いて導出する。そして、上記条件(i)を満たすのであれば、当該仮の現像条件を本発明のレジストパターン形成方法に採用しうる現像条件とすることができる。この仮の現像条件が、上記条件(i)を満たさない場合は、再度仮の現像条件を設定し感度曲線を作成して、照射量が0.95Ethでの残膜率の値を導出する。再度の条件設定に当たっては、例えば、レジストに対する溶解能がより低い現像液を採用すれば照射量が0.95Ethでの残膜率を上昇させることができる。また、現像時間をより短くすれば照射量が0.95Ethでの残膜率を向上させることができる。この操作を繰り返すことで、特定の重合体を含むポジ型レジスト組成物を用いた場合において、解像度及び明瞭性の高いレジストパターンを形成しうる現像条件を決定することができる。
【0040】
[[Eth]]
そして、現像条件の決定に当たり、Ethが70μC/cm
2以上130μC/cm
2以下となる現像条件を採用することが好ましい。Ethが上記範囲内となる現像条件を採用することで、非照射領域における照射ノイズの影響を低減して、得られるレジストパターンの解像度を十分に高めることができる。
【0041】
[[照射量が0.95Ethでの残膜率]]
また、現像条件の決定に当たり、照射量が0.95Ethでの残膜率が上述した通り0.250以上となる現像条件を採用することが必要である。照射量が0.95Ethでの残膜率が0.250以上であることが好ましく、0.275以上であることがより好ましく、0.290以上であることが更に好ましい。照射量が0.95Ethでの残膜率が0.250以上であれば、γ値を高めて明瞭性を高めると共に、高解像度のレジストパターンを形成することができる。
【0042】
[[照射量が0.90Ethでの残膜率]]
さらにまた、現像条件の決定に当たり、照射量が0.90Ethでの残膜率が0.500以上となる現像条件を採用することが好ましく、0.506以上となる現像条件を採用することがより好ましく、0.520以上となる現像条件を採用することが更に好ましい。照射量が0.90Ethでの残膜率が0.500以上である現像条件を採用すれば、γ値を一層高めてレジストパターンの明瞭性をより向上させることができ、さらに、非照射領域におけるレジストの残膜率を一層高めることによっても、レジストパターンの明瞭性をより向上させることができる。加えて、非照射領域における照射ノイズの影響を一層低減して、得られるレジストパターンの解像度を十分に高めることができる。
【0043】
[[照射量が0.85Ethでの残膜率]]
さらに、現像条件の決定に当たり、照射量が0.85Ethでの残膜率は0.670以上となる現像条件を採用することが好ましく、0.679以上となる現像条件を採用することがより好ましく、0.700以上となる現像条件を採用することが更に好ましい。照射量が0.85Ethでの残膜率が0.670以上である現像条件を採用すれば、γ値を一層高めてレジストパターンの明瞭性をより向上させることができ、さらに、非照射領域におけるレジストの残膜率を一層高めることによっても、レジストパターンの明瞭性をより向上させることができる。加えて、非照射領域における照射ノイズの影響を一層低減して、得られるレジストパターンの解像度を十分に高めることができる。
【0044】
[[現像液]]
現像液は、上述の現像条件の決定方法により、既知の現像液から適宜選択すればよい。使用可能な現像液の成分としては、例えば、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ヘキシル等を挙げることができ、これらの成分のうちの少なくとも一種を90質量%以上含有する現像液であることが好ましく、酢酸ヘキシルを90質量%以上含有する現像液がより好ましい。なお、現像液は、製造上不可避的に混入した不純物のみを含む上記成分のうちの一種であることがさらに好ましい。
また、現像液の温度は特に限定されないが、例えば21℃以上25℃以下とすることができる。
【0045】
[[現像時間]]
現像時間も、上述の現像条件の決定方法により適宜決定すればよい。具体的な現像時間は、重合体の性状、および現像液の種類等の他の現像条件によるが、例えば1分以上30分以下、1分以上20分以下、1分以上10分以下、1分以上5分以下、2分以上30分以下、2分以上20分以下、2分以上10分以下、2分以上5分以下、3分以上30分以下、3分以上20分以下、3分以上10分以下、3分以上5分以下、及び3分以上4分以下とすることができる。なお、本発明の現像条件の決定方法により決定される現像時間は、これら例示の範囲に限定されるものではない。特に、本発明のレジストパターン形成方法では、分子量が100000超の成分の割合が13%以下の重合体を含むレジスト組成物を用いるため、現像時間は比較的短いことが好ましい。レジスト組成物に含有される重合体の分子量が100000超の高分子量成分が比較的少ないため、長時間の現像により、レジスト膜が過度に溶解し、γ値が低下する虞があるからである。
【実施例】
【0046】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、実施例および比較例において、重合体の重量平均分子量、分子量分布、及び重合体中の各分子量の成分の割合は、下記の方法で測定した。
【0047】
<重量平均分子量および分子量分布>
得られた重合体についてゲル浸透クロマトグラフィーを用いて重量平均分子量(Mw)を測定し、また数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。結果を表1〜2に示す。
具体的には、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー製、HLC−8220)を使用し、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を標準ポリスチレン換算値として求めた。そして、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。結果を表1〜2に示す。
【0048】
<重合体中の各分子量の成分の割合>
ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー製、HLC−8220)を使用し、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、実施例、比較例で調製した重合体A及びBのクロマトグラフを得た。そして、得られたクロマトグラムから、ピークの総面積(A)、分子量が所定範囲である成分のピークの面積の合計(X)をそれぞれ求めた。具体的には、下記複数の閾値によりそれぞれ定められる所定範囲の分子量の成分(X
1〜X
10)について、割合を算出した。結果を表3に示す。
分子量が10000未満の成分(X
1)の割合(%)=(X
1/A)×100
分子量が40000超の成分(X
4)の割合(%)=(X
4/A)×100
分子量が50000超の成分(X
5)の割合(%)=(X
5/A)×100
分子量が80000超の成分(X
8)の割合(%)=(X
8/A)×100
分子量が100000超の成分(X
10)の割合(%)=(X
10/A)×100
【0049】
(実施例1−1)
<重合体Aの調製>
[単量体組成物の重合]
単量体としてのα−クロロアクリル酸メチル3.0gおよびα−メチルスチレン6.88gと、溶媒としてのシクロペンタノン2.47gと、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.01091gとを含む単量体組成物をガラス容器に入れ、ガラス容器を密閉および窒素置換して、窒素雰囲気下、78℃の恒温槽内で6時間撹拌した。その後、室温に戻し、ガラス容器内を大気解放した後、得られた溶液にテトラヒドロフラン(THF)30gを加えた。そして、THFを加えた溶液をメタノール300g中に滴下し、重合物を析出させた。その後、析出した重合物を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の凝固物(重合物)を得た。得られた重合物の重量平均分子量(Mw)は45000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.68であった。また、得られた重合物は、α−メチルスチレン単位を46mol%、α−クロロアクリル酸メチル単位を54mol%含んでいた。
[重合物の精製]
次いで、得られた重合物を100gのTHFに溶解させ、得られた溶液をTHF600gとメタノール(MeOH)400gとの混合溶媒に滴下し、白色の凝固物(α−メチルスチレン単位およびα−クロロアクリル酸メチル単位を含有する重合体A)を析出させた。その後、析出した重合体Aを含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の重合体Aを得た。そして、得られた重合体Aについて、重量平均分子量、及び分子量分布を測定・評価した。結果を表1に示す。また、重合体Aについて上記方法に従って重合体中の各分子量の成分の割合を測定した結果を表3に示す。
<ポジ型レジスト組成物の調製>
得られた重合体Aを溶剤としてのアニソールに溶解させ、重合体Aの濃度が11質量%であるレジスト溶液(ポジ型レジスト組成物)を調製した。
【0050】
<感度曲線の作成>
スピンコーター(ミカサ製、MS−A150)を使用し、ポジ型レジスト組成物を直径4インチのシリコンウェハ上に厚さ500nmになるように塗布した。そして、塗布したポジ型レジスト組成物を温度180℃のホットプレートで3分間加熱して、シリコンウェハ上にレジスト膜を形成した。電子線描画装置(エリオニクス社製、ELS−S50)を用いて、電子線の照射量が互いに異なるパターン(寸法500μm×500μm)をレジスト膜上に複数描画し、レジスト用現像液として酢酸ヘキシルよりなる現像液(製造上不可避的に混入した不純物のみを含む酢酸ヘキシル、日本ゼオン社製、ZED−N60)を用いて温度23℃で1分間の現像処理を行った後、イソプロピルアルコールで10秒間リンスした。なお、電子線の照射量は、4μC/cm
2から200μC/cm
2の範囲内で4μC/cm
2ずつ異ならせた。次に、描画した部分のレジスト膜の厚みを光学式膜厚計(大日本スクリーン製、ラムダエース)で測定し、電子線の総照射量の常用対数と、現像後のレジスト膜の残膜率(=現像後のレジスト膜の膜厚/シリコンウェハ上に形成したレジスト膜の膜厚)との関係を示す感度曲線を作成した。
<γ値の決定>
得られた感度曲線(横軸:電子線の総照射量の常用対数、縦軸:レジスト膜の残膜率(0≦残膜率≦1.00))について、下記の式を用いてγ値を求めた。なお、下記の式中、E
0は、残膜率0.20〜0.80の範囲において感度曲線を二次関数にフィッティングし、得られた二次関数(残膜率と総照射量の常用対数との関数)に対して残膜率0を代入した際に得られる総照射量の対数である。また、E
1は、得られた二次関数上の残膜率0の点と残膜率0.50の点とを結ぶ直線(感度曲線の傾きの近似線)を作成し、得られた直線(残膜率と総照射量の常用対数との関数)に対して残膜率1.00を代入した際に得られる総照射量の対数である。そして、下記式は、残膜率0と1.00との間での上記直線の傾きを表している。γ値の値が大きいほど、感度曲線の傾きが大きく、明瞭性の高いパターンを形成し得ることを示す。結果を表1に示す。
【数1】
<Ethの決定>
γ値の算出の際に得られた直線(感度曲線の傾きの近似線)の残膜率が0となる際の、電子線の総照射量Eth(μC/cm
2)を求めた。
<残膜率の決定>
感度曲線作成時に使用した、4μC/cm
2から200μC/cm
2の範囲内で4μC/cm
2ずつ異ならせた電子線の照射量(すなわち、4、8、12、16・・・196、200μC/cm
2)を、それぞれ上述のように決定したEthで除した。
得られた値(電子線の照射量/Eth)が0.95となる電子線の照射量が存在すれば、その電子線の照射量における残膜率を、残膜率(0.95Eth)とした。
得られた値(電子線の照射量/Eth)が0.95となる電子線の照射量が存在しない場合、これらの値のうち、0.95に最も近接する2つの値を特定し、この2点における電子線の照射量を、それぞれP(μC/cm
2)、P+4(μC/cm
2)とした。そして、下記式により、残膜率(0.95Eth)を決定した。結果を表1に示す。
残膜率(0.95Eth)=S−{(S−T)/(V−U)}×(0.95−U)
この式中、
Sは電子線の照射量Pにおける残膜率を示し、
Tは電子線の照射量P+4における残膜率を示し、
UはP/Ethを示し、そして、
Vは(P+4)/Ethを示す。
同様にして、得られた値(電子線の照射量/Eth)が0.85となる電子線の照射量における残膜率(0.85Eth)、及び得られた値(電子線の照射量/Eth)が0.90となる電子線の照射量における残膜率(0.90Eth)を決定した。
ここで算出したような0.85Eth、0.90Eth、及び0.95Ethにおける残膜率が高いほど、残膜率を概ね0とすることができる電子線の総照射量よりも低い照射量では、レジスト膜が現像液に対して溶解しにくいということである。換言すれば、照射量の比較的少ない領域である、レジスト膜上におけるパターン形成領域の周辺領域では、レジスト膜の現像液に対する溶解性が低いということである。したがって、上述のようにして算出した残膜率が高いということは、レジスト膜上で溶解されてパターンを形成すべき領域と、溶解せずに残るべき領域との境界が明瞭であり、パターンの明瞭性が高いということを意味する。
さらに、上記残膜率が高いということは、非照射領域においてレジストが照射ノイズの影響を受けにくく、得られるレジストパターンの解像度を十分に高めることができることを意味する。
【0051】
(実施例1−2〜1−5)
実施例1−1と同様にして、重合体Aおよびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、表1のように現像時間を変更した以外は、実施例1−1と同様にして、測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
(比較例1−1)
実施例1−1と同様にして、重合体Aおよびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、表1のように現像時間を変更した以外は、実施例1−1と同様にして、測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
(比較例2−1〜2−6)
重合時間を6.5時間に変更し、重合物の精製を実施することなく、単量体組成物を重合した際にろ過により回収した重合物をそのまま重合体Bとして用いてポジ型レジスト組成物を調製した。そして、表2のように現像時間を変更した以外は、実施例1−1と同様にして、測定および評価を行った。結果を表2に示す。なお、重合体Bについて、上記方法に従って重合体中の各分子量の成分の割合を測定した結果を表3に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
上述の表1〜3より、100000超の成分の割合が13%以下である、α−メチルスチレン・α−クロロアクリル酸メチル共重合体を含むポジ型レジスト組成物を使用した場合において、照射量が0.95Ethでの残膜率が0.250以上となる現像条件を採用すれば、高いγ値を確保しつつ、Eth付近の照射量における残膜率も比較的高く維持することができ、明瞭性及び解像度の高いレジストパターンを形成しうることがわかる。