(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の光学レンズの製造方法は、樹脂シートを、金型内で真空圧縮成形するものであって、樹脂シートのガラス転移温度(Tg)が、100〜200℃であり、金型の最深部の深さ(H
1)と樹脂シートの最大厚み(X
1)が、下記式(I)
【0017】
(式中、h
1は前記H
1の値(μm)を表し、x
1は前記X
1の値(μm)を表す。)
を充足し、真空圧縮成形時の金型の表面温度(T)と樹脂シートのガラス転移温度(Tg)が、下記式(II)
【0019】
(式中、Tgは前記と同じ意味を表し、tは前記Tの値(℃)を表す。)
を充足することを特徴とするものである。
【0020】
〔金型〕
本発明の製造方法に用いる金型としては、樹脂シートを成形材料とし、真空圧縮成形法により、目的の形状の光学レンズが得られるものであれば、特に限定されない。
本発明に用いる金型の一例を
図1に示す。
図1(a)は、
図1(b)に示す形状の光学レンズ(平凸レンズ)を製造するための金型の模式図である。
図1(a)に示す金型は、下部金型(1)と上部金型(2)とからなるものである。この金型内の空間は、成形時に減圧状態にすることができるようになっている。例えば、金型内部を外部に設置した真空引き装置(図示を省略)と連結させ、該真空引き装置を用いて、成形時に金型内部を減圧状態にすることができる。
【0021】
金型の形状、大きさ、材質等は、特に限定されず、目的の光学レンズの形状、特性等に合わせて適宜決定することができる。
【0022】
本発明において、金型の最深部の深さ(H
1)とは、光学レンズの最も厚い部分に対応するものであり、金型の最浅部の深さ(H
2)とは、光学レンズの最も薄い部分に対応するものである。例えば、
図2、3、4に示した金型においては、H
1は、それぞれ、矢印Aで示される部分の長さであり、H
2は、それぞれ、矢印Bで示される部分の長さである。
【0023】
前記H
1の値は、通常、0.5mm以下であり、好ましくは0.05〜0.4mmである。
前記H
2の値は、通常、0.05mm以上であり、好ましくは0.05〜0.35mmである。
また、H
1の値とH
2の値の差は、通常、0.01〜0.4mm、好ましくは0.01〜0.03mmである。
【0024】
金型の直径(光学レンズの直径に対応する値)は、通常2〜15mmであり、好ましくは3〜10mmである。
【0025】
〔樹脂シート〕
本発明の製造方法においては、成形材料として樹脂シートを使用する。
樹脂シートを構成する樹脂は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。また、架橋性ポリオレフィン樹脂のような熱硬化性樹脂であっても、樹脂シートの状態では架橋構造が十分に形成されておらず、加熱により溶融し、最終的に得られるレンズでは、架橋構造を有する樹脂(硬化樹脂)となるものであれば、本発明に使用することができる。
【0026】
熱可塑性を有する樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、脂環構造含有樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ウレタン樹脂、チオウレタン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、透明性に優れる光学レンズが得られることから、脂環構造含有樹脂が好適に用いられる。
【0027】
脂環構造含有樹脂とは、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有する重合体である。
脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられる。なかでも、機械強度、耐熱性に優れる光学レンズが得られ易いことから、シクロアルカン構造が好ましい。脂環式構造は主鎖にあっても良いし、側鎖にあっても良いが、機械強度、耐熱性に優れる光学レンズが得られ易いことから、主鎖に脂環式構造を有するものが好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数は特に限定されないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこれらの範囲内であることで、機械強度、耐熱性等の特性が高度にバランスされた光学レンズが得られ易くなる。
【0028】
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は特に限定されないが、全繰り返し単位に対して、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が50重量%以上の脂環式構造含有重合体を用いることで、透明性および耐熱性に優れる光学レンズが得られ易くなる。
【0029】
脂環式構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、通常、5,000〜150,000、好ましくは10,000〜100,000である。
脂環式構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)は、例えば、シクロヘキサンを溶媒として40℃で測定し、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
脂環式構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、通常、100〜200℃、好ましくは120〜160℃である。
【0030】
脂環式構造含有重合体の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系重合体、及びビニル脂環式炭化水素系重合体が好ましい。
なお、本明細書において、これらの重合体は、重合反応生成物だけでなく、その水素化物も意味するものである。
【0031】
(1)ノルボルネン系重合体
ノルボルネン系重合体は、ノルボルネン系モノマーの重合体又はその水素化物である。
ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環重合体、これらの開環重合体の水素化物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加重合体などが挙げられる。なかでも、耐熱性、機械的強度等に優れる光学レンズが得られ易いことから、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素化物が好ましい。
【0032】
ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.0
1,6.1
2,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3−エン(慣用名メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体、などが挙げられる。
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基などが挙げられる。
置換基を有するノルボルネン系モノマーとしては、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系モノマーは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとしては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などが挙げられる。
【0034】
ノルボルネン系モノマーと付加共重合可能なその他のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0035】
ノルボルネン系モノマーの開環重合体、またはノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環重合体は、モノマー成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合させることにより合成することができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒等が挙げられる。
ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0036】
ノルボルネン系モノマーの付加重合体、またはノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加重合体は、モノマー成分を、公知の付加重合触媒の存在下で重合させることにより合成することができる。付加重合触媒としては、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が挙げられる。
【0037】
(2)単環の環状オレフィン系重合体
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの、単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体が挙げられる。
これらの付加重合体の合成方法は特に限定されず、公知の方法を適宜利用することができる。
【0038】
(3)環状共役ジエン系重合体
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−または1,4−付加重合した重合体及びその水素化物などを用いることができる。
これらの付加重合体の合成方法は特に限定されず、公知の方法を適宜利用することができる。
【0039】
(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体
ビニル脂環式炭化水素系重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素化物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素化物;などが挙げられる。また、ビニル脂環式炭化水素系単量体やビニル芳香族系単量体と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。かかる共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体等が挙げられる。
これらの重合体の合成方法は特に限定されず、公知の方法を適宜利用することができる。
【0040】
また、脂環式構造含有重合体として、市販品を使用することもできる。市販品としては、日本ゼオン社製、ZEONEX(登録商標)、三井化学社製、APEL(登録商標)、JSR社製、ARTON(登録商標)、ポリプラスチックス社製、TOPAS(登録商標)などが挙げられる。
【0041】
成形材料として使用する樹脂シートは、樹脂成分以外の成分を含有するものであってもよい。
樹脂成分以外の成分としては、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、帯電防止剤等の添加剤が挙げられる。
これらの成分の配合量は、特に限定されず適宜決定することができる。例えば、これらの添加剤の合計量は、樹脂成分に対して、10重量%以下である。
【0042】
樹脂シートの製造方法は特に限定されず、従来公知の適宜な方法を採用すればよい。例えば、所定の成分を混合して樹脂シート製造用の成形材料を得、これを用いて、溶融押出成形法、溶融流延成形法、射出成形法等により、樹脂シートを得ることができる。
【0043】
後述するように、本発明の製造方法においては、金型の形状に合わせて、所定の厚みの樹脂シートを用いるが、その厚みは、通常、50〜500μm、好ましくは70〜400μmである。
【0044】
本発明の製造方法においては、用いる樹脂シートは平坦なものであってもよいし、金型に合わせた突起を有するもの(すなわち、金型の凹部に対応する部分の厚みが他の部分よりも厚いもの)であってもよい。ただし、金型の凹部に合わせて樹脂シートに突起を設けると、そのために別途工程が必要になる。したがって、より効率よく、安価に光学レンズを製造することができる観点から、平坦な樹脂シートを用いることが好ましい。
【0045】
本発明の製造方法に用いる樹脂シートの最大厚み(X
1)と最小厚み(X
2)の差は、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。この差の下限は特になく、この差は小さいほど好ましいが、樹脂シートの最大厚み(X
1)と最小厚み(X
2)の差は通常は、0.5μm以上である。
このような樹脂シートであれば、入手が容易であり、また、光学レンズを効率よく製造することができる。
【0046】
本発明の製造方法に用いる樹脂シートのガラス転移温度(Tg)は、100〜200℃であり、120〜160℃が好ましい。
用いる樹脂シートのガラス転移温度(Tg)が100℃未満のときは、得られる光学レンズは耐熱性に劣るものとなる。一方、樹脂シートのガラス転移温度が200℃を超えると得られる光学レンズは、その製造工程における熱の影響から形状精度に劣り易くなる。
樹脂シートのガラス転移温度(Tg)は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0047】
〔光学レンズの製造方法〕
本発明の光学レンズの製造方法においては、前記樹脂シートを金型内で真空圧縮成形する。
真空圧縮成形とは、熱可塑性の樹脂シートを成形材料とする成形法であって、金型内に樹脂シートを載置し、金型を加熱して熱可塑性の樹脂シートを加熱軟化させ、金型内を減圧状態にして、シートを型に密着させて所定の形状に成形し、冷却後真空状態を解除して樹脂成形品を取り出す成形方法である。例えば、
図5(a)に示すように、下部金型(1)と上部金型(2)で樹脂シート(3)を挟み込み、下部金型(1)、上部金型(2)を所定の温度に加熱して樹脂シートを軟化させる。この状態で金型を閉じ、金型内部を減圧にして、溶融樹脂(樹脂シート)を圧縮成形した後、金型を冷却することで、所定の形状の成形品(4)を得る〔
図5(b)〕。次いで、成形品(4)を取り出し、必要に応じて端部の加工を施すことにより、目的の光学レンズを得ることができる。
【0048】
本発明の光学レンズの製造方法においては、金型の最深部の深さ(H
1)と樹脂シートの最大厚み(X
1)が、下記式(I)を充足するようにして、真空圧縮成形を行う。
【0050】
式(I)中、h
1は前記H
1の値(μm)を表し、x
1は前記X
1の値(μm)を表す。
x
1が(0.9×h
1)以下の場合、得られる光学レンズは形状精度に劣り易くなる。一方、x
1が(1.1×h
1)以上の場合も、得られる光学レンズは形状精度に劣り、さらに、低複屈折性にも劣り易くなる。
【0051】
本発明の効果がより得られ易いことから、H
1とX
1は、下記式(Ia)を充足することが好ましい。
【0053】
式(Ia)中、h
1は前記H
1の値(μm)を表し、x
1は前記X
1の値(μm)を表す。
【0054】
さらに、本発明の光学レンズの製造方法においては、金型の表面温度(T)と樹脂シートのガラス転移温度(Tg)が、下記式(II)を充足するようにして、真空圧縮成形を行う。
【0056】
式(II)中、Tgは樹脂シートのガラス転移温度を表し、tは前記Tの値(℃)を表す。
tが(Tg+30)℃未満の場合、得られる光学レンズは低複屈折性に劣り易くなる。一方、tが(Tg+70)℃を超える場合、得られる光学レンズは形状精度に劣り易くなる。
【0057】
用いる樹脂シートの量は、金型内を十分に満たすことができる量であれば特に限定されない。通常は、金型の開口部の面積よりも面積が広い樹脂シートを用いることが好ましい。
【0058】
真空圧縮成形をする際における金型内の真空度は、通常、10000Pa以下であり、金型圧縮時間は通常、5〜120秒である。
金型の冷却温度は、通常、(Tg−30℃)から(Tg−3℃)の範囲である(Tgは前記と同じ意味を表す。)。
【0059】
本発明の製造方法により得られるレンズは、特に限定されない。例えば、平凸レンズ、両凸レンズ、凸メニスカスレンズ、平凹レンズ、両凹レンズ、凹メニスカスレンズ等が挙げられる。なかでも、本発明の製造方法は、平凸レンズ、両凸レンズ、凸メニスカスレンズ等の凸レンズを製造する際に好ましく用いられる。
【0060】
本発明の製造方法により得られる光学レンズは、射出成形法を利用しないものであるため、低複屈折性に優れ、かつ、ウェルドラインが発生せず、形状精度が高いものである。
本発明の製造方法により得られる光学レンズの有効径内の位相差は、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。
本発明の製造方法により得られる光学レンズのX方向とY方向の形状誤差〔PV(Peak to Valley)値〕は、1.0μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。以下において、「部」および「%」は特に断りのない限り、重量基準である。
【0062】
・樹脂シートのガラス転移温度(Tg)
樹脂シートのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析計(製品名「DSC6220SII」、ナノテクノロジー社製)を用いて、JIS K6911に基づき昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0063】
・レンズの形状精度
実施例及び比較例で得られたレンズの形状精度(レンズのX方向とY方向の形状誤差)を、形状測定器〔「NH−3SP」、三鷹光機社製〕を用いて測定した。
【0064】
・レンズの位相差
実施例及び比較例で得られたレンズの有効径内の位相差を、樹脂成形レンズ検査システム〔「WPA−100」、フォトニックスラティス社製〕を用いて測定した。
【0065】
〔実施例1〕
樹脂材料(ZEONEX E48R(日本ゼオン社製)、Tg=139℃)をフィルム押出成形機(単軸押出機、φ=20mm:GSIクレイオス社製)に入れ、これを260℃で溶融し、溶融樹脂をTダイから押し出し、これを冷却して、最大厚みが345μmでA4サイズ(210mm×297mm)の樹脂シートを得た。
【0066】
この樹脂シートを成形材料として使用し、真空熱加圧装置(製品名「VACUUM STAR(登録商標)、ミカドテクノス社製)にて、真空圧縮成形を行い、レンズを製造した。このレンズについて各種測定を行った。真空圧縮成形における成形条件及び測定結果を第1表に示す。
【0067】
〔実施例2〜4、比較例1〜7〕
樹脂シートの厚みや成形条件を第1表に記載のものに変更したことを除き、実施例1と同様にして光学レンズを製造し、各種測定を行った。測定結果を第1表に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
第1表から以下のことが分かる。
実施例1〜4で得られた光学レンズは複屈折が小さく、形状精度に優れる。
一方、金型の表面温度が低すぎる比較例1、5で得られた光学レンズは、複屈折が大きく、形状精度に劣っている。
金型の最深部の深さ(H
1)との関係で、最大厚み(X
1)が大きすぎる樹脂シートを用いて得られた比較例2、4の光学レンズは複屈折が大きく、形状精度に劣っている。
金型の最深部の深さ(H
1)との関係で、最大厚み(X
1)が小さすぎる樹脂シートを用いて得られた比較例3、7の光学レンズは、形状精度に劣っている。
また、金型の表面温度が高すぎる比較例6で得られた光学レンズは、形状精度に劣っている。