(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シリコン単結晶に照射する炭素および酸素以外のイオンビームを、ボロン、リン、砒素、アンチモン、水素、ヘリウム、アルゴン、ゲルマニウム、フッ素、窒素、シリコン、アルミニウム、インジウム、キセノンのうちのいずれか1つまたは複数のイオンビームとすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸素濃度評価方法。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶中の不純物濃度を高感度に測定する方法として、低温フォトルミネッセンス(PL)法がある。
低温PL法による酸素濃度定量方法は、特許文献1に2通りの方法が開示されている。第一の方法は、試料に電子線、および炭素イオンまたは酸素イオンを照射することで複合欠陥を形成させ、その複合欠陥に起因するルミネッセンス強度を測定し、その強度から酸素濃度を定量する方法である。第二の方法は、試料に大量の炭素イオンビームを照射して複合欠陥を形成させ、その複合欠陥に起因するルミネッセンス強度を測定し、その強度から酸素濃度を定量する方法である。
【0003】
また、低温PL法による炭素濃度定量方法は、例えば非特許文献1や特許文献1に、試料に電子線や炭素イオンまたは酸素イオンのイオンビームを照射して複合欠陥を形成させ、その複合欠陥に起因するルミネッセンス強度を測定し、その強度から炭素濃度を定量する方法が開示されている。
特許文献2には、シリコン単結晶に電子線を照射することで導入される格子間シリコン(I)由来のルミネッセンススペクトル(W線)をシリコン由来の発光線(TO線)で規格化した値と、シリコン単結晶中の炭素濃度の間で検量線を作成し、ルミネッセンス法で得られたW線/TO線から、炭素濃度を定量する方法が開示されている。
特許文献3には、シリコン単結晶中に炭素及び酸素以外のイオンを注入し、これにより形成される格子間炭素またはCi−Cs、またはCi−Oiのルミネッセンススペクトル強度と、炭素濃度の間で検量線を作成し、炭素関連複合欠陥のスペクトル強度から、炭素濃度を定量する方法が開示されている。
【0004】
シリコン単結晶中の酸素濃度測定方法は、FT−IR法やSIMS法が一般的に用いられている。その検出下限値は、FT−IR法では0.07(ppma−JEITA)、SIMS法では0.02(ppma)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シリコン単結晶中に形成させた複合欠陥の強度を測定することにより、高感度に不純物濃度を測定する方法として低温PL法があるが、前記したように、その多くは炭素濃度測定方法である。
【0008】
特許文献1には、低温PL法による酸素濃度測定方法が開示されており、大量の炭素イオンビーム、もしくは電子線とイオンビームの両方を照射して酸素濃度を求める方法である。しかし、酸素、もしくは炭素のイオンビームを照射すると、照射されるイオンがCi−Cs、Ci−Oiの形成に影響を与えるため、このフォトルミネッセンス強度を用いて求める酸素濃度は、不正確になる。
また、前述したように、シリコン単結晶中の酸素濃度測定方法としてFT−IR法やSIMS法が一般的であるが、それらの方法は感度が悪く、その検出下限値は、FT−IR法は0.07(ppma−JEITA)、SIMS法は0.02(ppma)である。
【0009】
シリコン単結晶中に酸素が存在すると、Ci−Oiが形成されやすくなる。この複合欠陥はライフタイムを低下させるライフタイムキラーとなるため、特にパワーデバイスでは低酸素が求められている。従って高感度に酸素を測定することは重要である。
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、シリコン単結晶中の酸素濃度を高感度で評価する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、シリコン単結晶中の酸素濃度をフォトルミネッセンス法またはカソードルミネッセンス法により評価する酸素濃度評価方法であって、
前記シリコン単結晶に、所定照射量の電子線、または、所定照射量の炭素および酸素以外のイオンビームを照射して、前記シリコン単結晶中に形成させた、格子間炭素Ciと格子間酸素Oiの複合欠陥Ci−Oiに由来する発光線(C線)の強度と格子間炭素Ciと置換型炭素Csの複合欠陥Ci−Csに由来する発光線(G線)の強度を所定温度で測定し、該C線とG線との強度比(Ci−Oi強度/Ci−Cs強度)を求め、
前記酸素濃度[Oi]を、
前記強度比(Ci−Oi強度/Ci−Cs強度)と前記シリコン単結晶中の炭素濃度[Cs]を下記式
[Oi]=α・(Ci−Oi強度/Ci−Cs強度)・[Cs](ここで、αは比例定数)
に代入して評価することを特徴とする酸素濃度評価方法を提供する。
【0012】
このような本発明のフォトルミネッセンス法またはカソードルミネッセンス(CL)法による酸素濃度評価方法であれば、シリコン単結晶中の炭素関連複合欠陥(上記の複合欠陥Ci−Oiと複合欠陥Ci−Cs)のルミネッセンス強度の比と、シリコン単結晶中の炭素濃度から、高感度に酸素濃度を定量することができる。
【0013】
このとき、前記酸素濃度を評価するとき、予め、
酸素濃度および炭素濃度が既知のシリコン単結晶である試験結晶を用意し、
該試験結晶に、前記所定照射量の電子線、または、前記所定照射量の炭素および酸素以外のイオンビームを照射して、前記試験結晶中に形成させた、C線の強度とG線の強度を所定温度で測定し、該試験結晶におけるC線とG線との強度比(Ci−Oi強度/Ci−Cs強度)を求め、
前記試験結晶における前記酸素濃度および前記炭素濃度と、前記試験結晶におけるC線とG線との強度比(Ci−Oi強度/Ci−Cs強度)と、前記式とから、前記比例定数αの値を求めておくことができる。
【0014】
比例定数αは、ルミネッセンス強度の測定時の温度(サンプル温度)、電子線照射やイオンビーム照射の条件(照射量)によって変わるため、異なるサンプル温度や電子線照射条件、イオンビーム照射条件でシリコン単結晶基板の酸素濃度を測定する場合、それぞれで比例定数αを決定するのがより好ましい。そこで、上記のように、試験結晶を用いて上記のような予備試験を行っておき、評価対象のシリコン単結晶中の酸素濃度を評価する時と同様の条件での比例定数αを求めておくことができる。これにより、種々の条件に、より適切に対応することができ、より高精度に酸素濃度を評価することができる。
【0015】
または、前記シリコン単結晶に照射するときの電子線の所定照射量を1.0×10
15(electrons/cm
2)とし、前記C線の強度とG線の強度を測定するときの所定温度を液体ヘリウム温度とし、前記炭素濃度の単位を(atoms/cm
3)とし、前記酸素濃度の単位を(ppma−JEITA)とし、前記C線強度およびG線強度を相対値としたとき、
前記比例定数αの値を2.25×10
−15とすることができる。
【0016】
あるいは、前記シリコン単結晶に照射するときの電子線の所定照射量を1.0×10
15(electrons/cm
2)とし、前記C線の強度とG線の強度を測定するときの所定温度を液体窒素温度とし、前記炭素濃度の単位を(atoms/cm
3)とし、前記酸素濃度の単位を(ppma−JEITA)とし、前記C線強度およびG線強度を相対値としたとき、
前記比例定数αの値を3.55×10
−15とすることができる。
【0017】
上記のサンプル温度や電子線等の照射量に従ってシリコン単結晶基板の評価をすれば、炭素関連複合欠陥のルミネッセンス強度と炭素濃度を測定するだけで、直ちに酸素濃度を定量できる。このようにサンプル温度や電子線等の照射量の条件を固定すれば、検量線等を作成せずに、より簡便に酸素濃度を評価することができる。
【0018】
また、前記シリコン単結晶に照射する炭素および酸素以外のイオンビームを、ボロン、リン、砒素、アンチモン、水素、ヘリウム、アルゴン、ゲルマニウム、フッ素、窒素、シリコン、アルミニウム、インジウム、キセノンのうちのいずれか1つまたは複数のイオンビームとすることができる。
【0019】
酸素や炭素のイオンビームを用いる従来法では、照射されるイオンが炭素関連複合欠陥の形成に影響を与えてしまい、それにより評価する酸素濃度に影響が生じてしまう。しかし、本発明のように上記のうちのいずれか1つまたは複数のイオンビームを用いることで、そのような影響が発生するのをより確実に防ぐことができる。
【0020】
また、前記シリコン単結晶中の炭素濃度を、1.0×10
14(atoms/cm
3)以上とすることができる。
【0021】
上記式に炭素濃度を代入するにあたり、炭素濃度を求める際に、例えばFT−IR法やSIMS法などによって、より確実に測定することができるように、評価対象のシリコン単結晶中の炭素濃度を上記範囲のものとすることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の酸素濃度評価方法であれば、酸素濃度を従来法よりも高感度で評価することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について図面を参照して実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、シリコン単結晶中の炭素濃度や、炭素関連複合欠陥であるCi−Oi(C線)とCi−Cs(G線)の強度比(Ci−Oi強度/Ci−Cs強度)から、シリコン単結晶中の酸素濃度を評価することができる式(酸素濃度関係式)を本発明者らが導出した過程を説明する。
【0025】
非特許文献1によると、シリコン単結晶基板に対して高エネルギーの電子線を照射すると、格子位置のシリコン原子が弾き出されて、格子間シリコン(以下、Iと称する)とその抜け殻である空孔(以下、Vと称する)のペアが生成される。過剰に生成されたIやVは、単体では不安定なため、再結合したり(V+I→0)、I同士やV同士がクラスタリングしたり、シリコン基板中に含まれる不純物と反応して複合体を形成する。
【0026】
シリコン単結晶基板中に置換型炭素Csが存在する場合、電子線照射で生成されたIがCsを弾き出すことにより、格子間型炭素Ciが生成される。更にCiは、他のCsと反応することでCi−Cs(G線)を形成したり、シリコン基板中に含まれる他の不純物である格子間型酸素Oiと反応することでCi−Oi(C線)を形成する。
【0027】
このCi−CsおよびCi−Oiの形成における平衡定数をK
1、K
2と定める(下記式(1)、(2)、非特許文献1の[4]式、[5]式)と、Ci−Csの形成およびCi−Oiの形成は競合反応の為、以下の式(3)、(4)が得られる。
なお、[Oi]は格子間酸素濃度(単に酸素濃度ともいう)、[Cs]は置換型炭素濃度(単に炭素濃度ともいう)、[Ci]は格子間炭素濃度、[CiCs]はG線強度(Ci―Cs強度)、[CiOi]はC線強度(Ci−Oi強度)を表す。
【0029】
ここで、式(3)、(4)において同類項をまとめて[Oi]について解くと、以下の酸素濃度関係式(5)(以下、単に、式(5)や関係式(5)とも言う)が得られる。
【0031】
ここで比例定数αは、サンプル温度や電子線照射条件、イオンビーム照射条件によって異なる定数である。理由は、サンプル温度が異なるとG線とC線の発光効率が変わり、得られるG線強度、およびC線強度が変化するためである。また、電子線照射条件やイオンビーム照射条件が異なると、Ci−CsとCi−Oiの形成比が異なるため、比例定数αは変化する。
【0032】
以下、上記酸素濃度関係式(5)を用いた本発明の酸素濃度評価方法について説明する。
図1は本発明の評価方法の工程を示したフロー図である。
図1の例では、評価用サンプルを評価するための本試験と、式(5)のαの値を予め求めておくための予備試験からなっている。予備試験の実施は、式(5)に炭素濃度等を実際に代入する、本試験の工程4の前であればいつでも良い。
【0033】
(予備試験)
予備試験について説明する。
先に述べたように、式(5)の比例定数αの値は、サンプル温度、電子線照射条件、イオンビーム照射条件によって異なる。そこで、まず、酸素濃度および炭素濃度が既知のシリコン単結晶である試験結晶を用意し、本試験と同じ条件(所定温度のサンプル温度、所定照射量の電子線またはイオンビーム(炭素および酸素以外))で照射・測定を行い、C線とG線の強度比(Ci−Oi強度/Ci−Cs強度)を求める。そして、試験結晶における酸素濃度および炭素濃度と、試験結晶におけるC線とG線との強度比(Ci−Oi強度/Ci−Cs強度)と、式(5)とから、比例定数αの値を求める。
本試験での種々の条件に応じて、予め、予備試験でその本試験の条件と同様の条件とした時の比例定数αを取得することができ、それにより本試験で、より高精度に酸素濃度を評価することができる。
【0034】
ここで、より具体的な一例を挙げて説明する。
CZ法により、炭素濃度、および酸素濃度が異なるシリコン単結晶基板(試験結晶サンプル)を15水準用意した。
炭素濃度が異なるシリコン単結晶基板を用意した理由は、異なる炭素濃度でも1つの関係式から酸素濃度を定量できる事を検証する為である。なお、酸素濃度をより確実にFT−IRで検出できるようにするため、またC線の形成に使われるCiが多くなり、G線のS/N比が悪くなるのをより確実に防ぐため、シリコン単結晶基板の酸素濃度範囲は、ここでは3〜17(ppma−JEITA)で準備した。
【0035】
また、導出される比例定数αの精度を上げる為、少なくとも5水準は欲しいところ、ここではサンプルを15水準用意した。
次に、これらのサンプルの炭素濃度をSIMS法、酸素濃度をFT−IR法で測定した。
その後、電子線照射装置により各シリコン単結晶基板に2(MV)の加速電圧で1.0×10
15(electrons/cm
2)の電子線を照射し、シリコン単結晶基板にCi−Cs、およびCi−Oiを形成させ、それらのピーク強度をフォトルミネッセンス法で測定した。この測定時のサンプル温度は液体ヘリウム温度とした。
【0036】
これらシリコン単結晶基板において、得られた酸素濃度、炭素濃度、G線強度、およびC線強度を上記の式(5)に代入し、得られた比例定数αを酸素濃度に対してグラフ上にプロットした。結果を
図2に示す。
比例定数αはほぼ一定の値となったため、αとして上記15水準のサンプルの平均値とし、2.25×10
−15が得られた。ここで、それぞれの単位は、炭素濃度が(atoms/cm
3)、酸素濃度が(ppma−JEITA)、G線強度、C線強度が相対値(a.u.)である。
以上により、この条件の場合における酸素濃度関係式(6)が求まった。
【0038】
また、同様の方法でサンプル温度が液体窒素の場合の比例定数αを求めると、3.55×10
−15となった。
【0039】
(本試験)
次に、本試験について説明する。
本発明において、まず、評価用サンプルであるシリコン単結晶基板を用意する(工程1)。このシリコン単結晶基板は特に限定されず、例えばチョクラルスキー法(CZ法)によるものや、フローティングゾーン法(FZ法)によるものとすることができる。
なお、酸素濃度を評価するにあたって、炭素濃度は後の工程において測定して上記のような関係式に代入するが、その測定の際に例えばFT−IRやSIMSなどでより確実に検出して測定可能なように、例えば1.0×10
14(atoms/cm
3)以上のものが好ましい。すなわち1.0×10
14(atoms/cm
3)以上のものとすることで、より精度高く炭素濃度を求める事ができ、そのため、本発明において求められる酸素濃度の精度も上げる事ができる。
また、酸素濃度自体は特に限定されるものではない。
【0040】
次に、評価用サンプルの炭素濃度(置換型炭素濃度)を測定する(工程2)。例えばFT−IR法やSIMS法などにより測定することができる。炭素濃度の測定方法は、評価用サンプル中の炭素濃度を求める事ができれば良く、特には限定されない。
【0041】
次に、PL法またはCL法により、評価用サンプルに電子線、または、炭素および酸素以外のイオンビームを照射して形成させた複合欠陥Ci−Oiに由来する発光線(C線)の強度と、複合欠陥Ci−Csに由来する発光線(G線)の発光強度を測定し、C線とG線の強度比を求める(工程3)。各々のピーク強度を測定して、それらの比を求める。
【0042】
このとき、評価用サンプルの温度は、例えば液体ヘリウム温度または液体窒素温度とすることができる。温度は特に限定されないが、これらの温度であれば、G線およびC線のピークがブロードになり、正しい強度を測定できなくなるのをより効果的に防ぐことができる。
また、電子線照射量は、例えば2.5×10
14〜2.5×10
16(electrons/cm
2)の範囲とすることができる。この範囲の照射量とすることにより、電子線照射量が少な過ぎてCi−CsやCi−Oiが形成されない等の問題が生じるのをより確実に防ぐことができる。また、電子線照射量が多過ぎてシリコンの格子が乱れ、G線やC線のS/N比が悪くなることをより確実に防ぐ事ができる。
【0043】
また、CL法では電子の加速電圧を変えることにより、PL法ではレーザー光の波長を変えることにより、測定深さを変えることができるため、それらの条件を調整することで試料表面から所望の深さまでを評価することができる。
【0044】
そして炭素濃度、C線とG線の強度比を上記酸素濃度関係式(5)に代入して酸素濃度を評価する(工程4)。
式(5)の比例定数αの値は、本試験と同様の条件下(所定温度のサンプル温度、所定照射量の電子線、または、所定照射量の炭素および酸素以外のイオンビーム)において予備試験で求めた比例定数αの値を用いることができる。
【0045】
或いは、先に述べた一例でも既に判明しているように、シリコン単結晶に照射するときの電子線の所定照射量を1.0×10
15(electrons/cm
2)とし、C線の強度とG線の強度を測定するときの所定温度を液体ヘリウム温度とし、炭素濃度の単位を(atoms/cm
3)とし、酸素濃度の単位を(ppma−JEITA)とし、C線強度およびG線強度を相対値としたとき、予備試験を行うことなく、比例定数αの値を2.25×10
−15とすることができる(すなわち、式(6))。
一方、シリコン単結晶に照射するときの電子線の所定照射量を1.0×10
15(electrons/cm
2)とし、C線の強度とG線の強度を測定するときの所定温度を液体窒素温度としたとき、予備試験を行うことなく、比例定数αの値を3.55×10
−15とすることができる。
上記条件の下では、予備試験・検量線の作成を必要とせずに比例定数αを決定することができ、より簡便に酸素濃度を評価することができる。なお、当然、比例定数αはこれらに限定されるものではない。
【0046】
また、電子線照射量が1.0×10
15(electrons/cm
2)以外の場合や、電子線照射ではなくイオンビーム照射を行った場合も、比例定数αが異なる。その場合、予備試験として、サンプル測定して得られる酸素濃度、炭素濃度、G線強度、およびC線強度を同様に関係式(5)に代入し、サンプル毎に比例定数αを算出し、その平均値を求めることで、比例定数αを求める事ができる。
【0047】
また、イオンビーム照射条件としては、例えばドーズ量が1×10
12〜1×10
14(atoms/cm
3)の範囲とすることができる。この範囲であれば、測定するのに十分な炭素関連複合欠陥を形成させる事ができ、且つイオンビーム照射に要する時間が長くなり過ぎる事がない。
【0048】
また、酸素や炭素のイオンビームを照射すると、測定する酸素濃度に影響を与えてしまうため、イオンビームとしては、ボロン、リン、砒素、アンチモン、水素、ヘリウム、アルゴン、ゲルマニウム、フッ素、窒素、シリコン、アルミニウム、インジウム、キセノンのイオンからいずれか1つまたは複数選ばれる事が好ましい。
【0049】
このような本発明の評価方法により、酸素濃度が未知のシリコン単結晶基板において、炭素濃度、G線強度、C線強度から酸素濃度を定量できる。
さらに、この方法で定量できる酸素濃度に制限はなく、あらゆる範囲の酸素濃度を定量できる。例えば酸素濃度の検出下限値は、FT−IR法では0.07(ppma−JEITA)、SIMS法では0.02(ppma)であるが、本発明の酸素濃度評価方法では、これらの検出下限値以下の酸素濃度を定量できる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例)
本発明の酸素濃度評価方法を行い、評価対象のシリコン単結晶における酸素濃度を評価した。
ここで扱うサンプルの温度は全て液体ヘリウム温度とし、また電子線照射条件は、加速電圧2(MV)、照射量1.0×10
15(electrons/cm
2)とした。
予備試験の実施により式(5)のαの値を求めることもできるが、上記条件においては、先の具体例で既に判明していることもあり、比例定数αの値を2.25×10
−15とした。すなわち、ここでは式(6)を用いることにした。
【0051】
続いて、CZ法もしくはFZ法で引き上げた、炭素濃度、および酸素濃度の異なるシリコン単結晶インゴットからシリコン単結晶ウェーハを切り出してサンプル(以下、酸素濃度測定用サンプルと称する)を105枚作製した。
次に、SIMS法で酸素濃度測定用サンプルの炭素濃度を測定した。その結果、105枚のサンプルの炭素濃度は、1.0×10
14〜7.3×10
15(atoms/cm
3)の範囲内であった。
続いて、酸素濃度測定用サンプルに対して電子線照射装置で電子線を照射した(加速電圧2(MV)、照射量1.0×10
15(electrons/cm
2))。電子線が照射された酸素濃度測定用サンプルに対し、フォトルミネッセンス測定装置を用いてサンプル温度を液体ヘリウム温度として発光スペクトルを測定し、G線強度、C線強度を得た。
これらの値を上記関係式(6)に代入し、各々の酸素濃度測定用サンプルの酸素濃度を算出した。
【0052】
なお、ここで求めた酸素濃度を、従来法であるFT−IR法で求めた値と比較して本発明の評価方法の妥当性を確認した。そのため、次に従来法による比較例について説明する。
【0053】
(比較例)
実施例と同様の酸素濃度測定用サンプルを用意し、それらの酸素濃度を、FT−IR法およびSIMS法により評価した。
【0054】
酸素濃度測定用サンプルにおいて、従来法であるFT−IR法で定量した酸素濃度(比較例での酸素濃度)と、本発明の方法により定量した酸素濃度(実施例での酸素濃度)の関係を
図3にプロットした。
ここで、FT−IR法では0.07(ppma−JEITA)未満の酸素濃度を定量できないため、実施例での酸素濃度が0.07(ppma−JEITA)未満のサンプルの評価データは、別途、
図4に示した。
【0055】
図3より、本発明の方法による酸素濃度(実施例)は、従来法による酸素濃度(比較例)と良く一致したことから、本発明が有効である事が確認された。
【0056】
さらに、
図4に示したサンプルのうち、2サンプルの酸素濃度をSIMS法(比較例)により評価したところ、SIMS法で検出できたサンプルの酸素濃度(0.022ppma)は、本発明による酸素濃度(実施例:0.023ppma)と非常に良く一致し、本発明の妥当性が確認された。またSIMS法(比較例)で検出下限値(0.02ppma)以下となったサンプルの本発明による酸素濃度(実施例)は0.013ppmaとなり、矛盾の無い結果であった。
【0057】
以上の結果より、検出下限値が0.07(ppma−JEITA)であるFT−IR法や検出下限値が0.02(ppma)であるSIMS法では定量できない範囲の酸素濃度も、本発明の評価方法ではC線およびG線のルミネッセンス強度が得られるため、定量できることが確認された。
【0058】
このように本発明の評価方法であれば、C線およびG線のルミネッセンス強度の比と、シリコン単結晶中の炭素濃度から、酸素濃度を定量することができる。しかも高感度で評価することができる。
【0059】
また、PL法による測定時のサンプル温度を液体窒素温度とし、酸素濃度を割り出す式の比例定数αの値を3.55×10
−15に変更する以外は実施例と同じにして酸素濃度を求めたところ、
図3、4と同様の結果が得られた。
さらには、別の電子線照射条件、サンプル温度にて、予備試験を行って比例定数αを求めるとともに本試験を行って酸素濃度を求めたところ、やはり同様の結果が得られた。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。