(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記重合性液晶化合物が、前記重合性液晶化合物の分子中に、ベンゾチアゾール環、並びに、シクロヘキシル環及びフェニル環の組み合わせ、からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶硬化フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示物及び実施形態を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す例示物及び実施形態に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0010】
以下の説明において、要素の方向が「平行」及び「垂直」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°、好ましくは±3°、より好ましくは±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0011】
以下の説明において、ある層のレターデーションとは、別に断らない限り、面内レターデーションReを表す。この面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx−ny)×dで表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。レターデーションの測定波長は、別に断らない限り、590nmである。
【0012】
以下の説明において、ある層の遅相軸の方向とは、別に断らない限り、層の面内方向の遅相軸の方向をいう。
【0013】
以下の説明において、固有複屈折値が正の樹脂とは、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも大きくなる樹脂を意味する。また、固有複屈折値が負の樹脂とは、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも小さくなる樹脂を意味する。固有複屈折値は、誘電率分布から計算しうる。
【0014】
以下の説明において、「偏光板」及び「波長板」は、別に断らない限り、樹脂フィルム等の可撓性を有するフィルム及びシートを含む用語として用いる。
【0015】
[1.液晶硬化フィルムの概要]
図1は、本発明の一実施形態に係る液晶硬化フィルム100を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、液晶硬化フィルム100は、逆波長分散性の複屈折を発現しうる重合性液晶化合物を含む液晶性組成物の硬化物からなる液晶硬化層110を備える。以下の説明において、逆波長分散性の複屈折を発現しうる重合性液晶化合物のことを、適宜「逆波長重合性液晶化合物」ということがある。液晶硬化層110において、逆波長重合性液晶化合物としては、その分子構造中にエチレン性不飽和結合及び芳香環を含有する化合物を用いている。
【0016】
さらに、液晶硬化層110は、下記の式(i)を満たす
1.00<X(S)/X(A) (i)
(前記の式(i)において、
X(S)は、液晶硬化層110の一方の面(
図1では、基材フィルム側の面)110Dのピーク比Xを表し、
X(A)は、液晶硬化層110の他方の面(
図1では、空気側の面)110Uのピーク比Xを表し、
ピーク比Xは、X=I(1)/I(2)で表される比を表し、
I(1)は、赤外全反射吸収スペクトル測定によるエチレン性不飽和結合の面内変角振動由来のピーク強度を表し、
I(2)は、赤外全反射吸収スペクトル測定による芳香環の不飽和結合の伸縮振動由来のピーク強度を表す。)
以下の説明において、「赤外全反射吸収スペクトル」のことを、適宜「IRスペクトル」ということがある。
【0017】
式(i)の意義を説明する。液晶硬化層110に含まれる液晶性組成物の硬化物は、通常、その液晶性組成物に含まれる逆波長重合性液晶化合物が重合することによって硬化したものであり、そのため、逆波長重合性液晶化合物の重合体を含む。また、一般に、重合性の液晶化合物の重合を完全に進行させきることは困難であることから、前記の硬化物は、残留モノマーとして逆波長重合性液晶化合物を含みうる。液晶性組成物の硬化の際、逆波長重合性液晶化合物のエチレン性不飽和結合は重合反応によって消失するが、芳香環の不飽和結合は反応しないので、消失しない。したがって、ピーク強度I(1)とピーク強度I(2)との比Xは、液晶硬化層110におけるエチレン性不飽和結合の残留割合を示し、ひいては、液晶硬化層110における残留モノマーとしての逆波長重合性液晶化合物の割合を示す。よって、前記のピーク比Xによれば、逆波長重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いを定量的に表すことができる。
【0018】
したがって、式(i)は、液晶硬化層110の一方の面110Dよりも他方の面110Uの方において、逆波長重合性液晶化合物の重合反応が大きく進行していることを表す。これにより、液晶硬化層110の面110Uの硬度を高めることができるので、液晶硬化層110の耐傷付き性を良好にできる。
【0019】
液晶硬化層110の耐傷付き性は、擦り試験を行うことにより、評価しうる。具体的には、液晶硬化フィルム100のヘイズを測定した後、液晶硬化層110の面110Uを擦る擦り試験を行い、擦り試験後の液晶硬化フィルム100のヘイズを測定する。そして、擦り試験の前後でのヘイズの変化量を計算する。ヘイズの変化量が小さいほど、液晶硬化層110は耐傷付き性に優れると評価できる。
【0020】
液晶硬化フィルム100は、液晶硬化層110のみを備えていてもよく、液晶硬化層110に組み合わせて任意の層を備えていてもよい。例えば、液晶硬化フィルム100は、液晶硬化層110に組み合わせて、液晶硬化層110の形成に用いた基材フィルム120を任意の層として備えうる。このような基材フィルム120を備える液晶硬化フィルム100においては、通常、
図1に示すように、空気側の面110Uの硬度を高めて耐傷付き性を良好にできる。
【0021】
また、上述した液晶硬化フィルム100によれば、通常、下記の利点を得ることができる。
一般に、液晶硬化層を備える液晶硬化フィルムは、液晶硬化層を適切な接着剤を用いて任意の光学部材に貼り合わせて使用されることがある。このような場合、接着剤としては、紫外線硬化型の接着剤を用いることが多い。ところが、従来の液晶硬化フィルムでは、液晶硬化層を接着剤に接触させると、液晶硬化層のレターデーションが変化し、所望の光学特性が得られないことがあった。
【0022】
これに対し、本実施形態に係る液晶硬化フィルム100が備える液晶硬化層110は、接着剤耐性に優れる。そのため、液晶硬化層110に接着剤に接触させた場合に、液晶硬化層のレターデーションの変化を抑制できる。本発明者らの検討によれば、一般に、液晶硬化層における残留モノマーの量を減らせば、その液晶硬化層の接着剤耐性を改善できることが判明している。本実施形態に係る液晶硬化フィルム100においては、液晶硬化層110の面110Uにおいて残留モノマーの量を少なくすることにより、前記の面110Uにおいて優れた接着剤耐性を達成している。
【0023】
液晶硬化層110の接着剤耐性は、下記の方法により評価しうる。
液晶硬化フィルム100の測定波長590nmにおける面内レターデーションRe
0を測定する。その後、液晶硬化層110の面110Uに、紫外線硬化型の接着剤を厚み100μm以上で塗工して、基材フィルム、液晶硬化層及び接着剤層を備える積層体を得る。液晶硬化層に接着剤を塗工した時点から5分後、前記の積層体の測定波長590nmにおける面内レターデーションRe
1を測定する。そして、下記の式(ii)により、接着剤の塗工による面内レターデーションの変化量ΔReを計算する。
ΔRe={(Re
0−Re
1)/Re
0}×100(%) (ii)
こうして得られる面内レターデーションの変化量ΔReの絶対値が小さいほど、液晶硬化層110の接着剤に対する耐性が優れることを示す。
【0024】
さらに、液晶硬化フィルム100が液晶硬化層110及び基材フィルム120を備える場合、通常、基材フィルム120の剥離が容易である。上述したように、液晶硬化層110は、その空気側の面110Uよりも基材側の面110Dにおいて逆波長重合性液晶化合物の重合反応の進行程度が小さい。よって、液晶硬化層110と基材フィルム120との接着力は、小さい。そのため、前記のように、基材フィルム120の剥離性を良好にできる。
【0025】
特に、液晶硬化層110の良好な耐傷付き性を実現しながら、基材フィルム120の剥離性を良好にできることは、特許文献1のような従来技術では実現できなかった有利な効果である。特許文献1では、液晶硬化層の空気側の面において重合反応の進行を抑えることにより、液晶硬化層の空気側の面における接着剤との接着力を高めて、基材フィルムの剥離を容易にしている。しかし、特許文献1の液晶硬化層は、空気側の面の硬度が低くなり、耐傷付き性の改善が困難である。これに対し、本実施形態に係る液晶硬化フィルム100では、液晶硬化層の空気側の面110Uでの硬度を高めながら、基材フィルム120の剥離性を改善できるので、耐傷付き性及び剥離性の両方の改善が可能である。
【0026】
[2.逆波長重合性液晶化合物]
逆波長重合性液晶化合物は、液晶性を有するので、当該逆波長重合性液晶化合物を配向させたときに、液晶相を呈しうる。また、逆波長重合性液晶化合物は、重合性を有するので、前記のように液晶相を呈した状態で重合し、液晶相における分子の配向を維持したまま重合体となりうる。
【0027】
さらに、逆波長重合性液晶化合物は、逆波長分散性の複屈折を発現しうる化合物である。ここで、逆波長分散性の複屈折を発現しうる化合物とは、前記のように重合体とした場合に、得られた重合体が逆波長分散性の複屈折を発現する化合物をいう。
【0028】
逆波長分散性の複屈折とは、波長450nmにおける複屈折Δn(450)及び波長650nmにおける複屈折Δn(650)が、下記式(iii)を満たす複屈折をいう。このような逆波長分散性の複屈折を発現しうる前記の逆波長重合性液晶化合物は、通常、測定波長が長いほど、大きい複屈折を発現しうる。したがって、通常、逆波長重合性液晶化合物を前述のように重合させた重合体の複屈折は、下記式(iv)を満たす。下記式(iv)において、Δn(550)は、測定波長550nmにおける複屈折を表す。
Δn(450)<Δn(650) (iii)
Δn(450)<Δn(550)<Δn(650) (iv)
【0029】
逆波長重合性液晶化合物としては、例えば、当該逆波長重合性液晶化合物の分子中に、主鎖メソゲンと、前記主鎖メソゲンに結合した側鎖メソゲンとを含む化合物を用いうる。主鎖メソゲン及び側鎖メソゲンを含む前記の逆波長重合性液晶化合物は、当該逆波長重合性液晶化合物が配向した状態において、側鎖メソゲンが主鎖メソゲンと異なる方向に配向しうる。したがって、このような配向を維持したまま逆波長重合性液晶化合物を重合させて得た重合体において、主鎖メソゲン及び側鎖メソゲンは異なる方向に配向しうる。このような場合、複屈折は主鎖メソゲンに対応する屈折率と側鎖メソゲンに対応する屈折率との差として発現するので、結果として、逆波長重合性液晶化合物及びその重合体は、逆波長分散性の複屈折を発現できる。
【0030】
例えば主鎖メソゲン及び側鎖メソゲンを有する前記化合物のように、逆波長重合性液晶化合物は、通常、一般的な順波長重合性液晶化合物の立体形状とは異なる特異的な立体形状を有する。ここで、「順波長重合性液晶化合物」とは、順波長分散性の複屈折を発現しうる重合性液晶化合物をいう。また、順波長分散性の複屈折とは、測定波長が大きいほど当該複屈折の絶対値が小さくなる複屈折を表す。逆波長重合性液晶化合物がこのように特異的な立体形状を有することが、本発明の効果が得られる一因になっているものと推察される。
【0031】
さらに、上述した逆波長重合性液晶化合物として、本発明では、その分子構造中にエチレン性不飽和結合及び芳香環を含有する化合物を用いる。逆波長重合性液晶化合物がエチレン性不飽和結合及び芳香環を含有することにより、液晶硬化層においてピーク比Xを用いた重合反応の進行度合いの定量化が可能である。
【0032】
逆波長重合性液晶化合物の分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは700以上、特に好ましくは1000以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1700以下、特に好ましくは1500以下である。逆波長重合性液晶化合物が前記のような分子量を有することは、逆波長重合性液晶化合物が単量体であることを表す。重合体ではなく単量体としての逆波長重合性液晶化合物を用いることにより、液晶性組成物の塗工性を特に良好にできる。
【0033】
前記の逆波長重合性液晶化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0034】
逆波長重合性液晶化合物としては、例えば特開2014−123134号公報に記載されたものなどが挙げられる。
また、逆波長重合性液晶化合物の例としては、下記式(Ia)で表される化合物が挙げられる。以下の説明において、式(Ia)で表される化合物を、適宜「化合物(Ia)」ということがある。
【0036】
前記式(Ia)において、A
1aは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群より選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する炭素数1〜67の有機基を置換基として有する芳香族炭化水素環基;または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群より選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する炭素数1〜67の有機基を置換基として有する芳香族複素環基;を表す。
【0037】
A
1aの具体例としては、式:−R
fC(=N−NR
gR
h)、あるいは式:−R
fC(=N−N=R
f1R
h)で表される基で置換されたフェニレン基;1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;5−(2−ブチル)−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4,6−ジメチル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;6−メチル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4,6,7−トリメチル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4,5,6−トリメチル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;5−メチル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;5−プロピル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;7−プロピル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;5−フルオロ−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;フェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4−フルオロフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4−ニトロフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4−トリフルオロメチルフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4−シアノフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4−メタンスルホニルフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;チオフェン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;チオフェン−3−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;5−メチルチオフェン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;5−クロロチオフェン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;チエノ[3,2−b]チオフェン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;2−ベンゾチアゾリル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4−ビフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4−プロピルビフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4−チアゾリル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;1−フェニルエチレン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4−ピリジル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;2−フリル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;ナフト[1,2−b]フラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;5−メトキシ−2−ベンゾチアゾリル基で置換された1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン−4,7−ジイル基;フェニル基で置換された1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン−4,7−ジイル基;4−ニトロフェニル基で置換された1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン−4,7−ジイル基;または、2−チアゾリル基で置換された1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン−4,7−ジイル基;等が挙げられる。ここで、R
fおよびR
f1は、それぞれ独立して、後述するQ
1と同じ意味を表す。R
gは、後述するA
yと同じ意味を表し、R
hは、後述するA
xと同じ意味を表す。
【0038】
前記式(Ia)において、Y
1a〜Y
8aは、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
1−C(=O)−、−C(=O)−NR
1−、−O−C(=O)−NR
1−、−NR
1−C(=O)−O−、−NR
1−C(=O)−NR
1−、−O−NR
1−、又は、−NR
1−O−を表す。ここで、R
1は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0039】
前記式(Ia)において、G
1a及びG
2aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の二価の脂肪族基を表す。また、前記脂肪族基には、1つの脂肪族基当たり1以上の−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
2−C(=O)−、−C(=O)−NR
2−、−NR
2−、又は、−C(=O)−が介在していてもよい。ただし、−O−又は−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。ここで、R
2は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0040】
前記式(Ia)において、Z
1a及びZ
2aは、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
【0041】
前記式(Ia)において、A
2a及びA
3aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基を表す。
【0042】
前記式(Ia)において、A
4a及びA
5aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数6〜30の二価の芳香族基を表す。
【0043】
前記式(Ia)において、k及びlは、それぞれ独立に、0又は1を表す。
【0044】
逆波長重合性液晶化合物の特に好適な具体例としては、下記式(I)で表される化合物が挙げられる。以下の説明において、式(I)で表される化合物を、適宜「化合物(I)」ということがある。
【0046】
化合物(I)は、通常、下記式で表すように、基−Y
5−A
4−(Y
3−A
2)
n−Y
1−A
1−Y
2−(A
3−Y
4)
m−A
5−Y
6−からなる主鎖メソゲン1a、及び、基>A
1−C(Q
1)=N−N(A
x)A
yからなる側鎖メソゲン1bの2つのメソゲン骨格を含む。また、これらの主鎖メソゲン1a及び側鎖メソゲン1bは、互いに交差している。上記の主鎖メソゲン1a及び側鎖メソゲン1bをあわせて1つのメソゲンとすることもできるが、本発明では、2つのメソゲンに分けて表記する。
【0048】
主鎖メソゲン1aの長軸方向における屈折率をn1、側鎖メソゲン1bの長軸方向における屈折率をn2とする。この際、屈折率n1の絶対値及び波長分散性は、通常、主鎖メソゲン1aの分子構造に依存する。また、屈折率n2の絶対値及び波長分散性は、通常、側鎖メソゲン1bの分子構造に依存する。ここで、液晶相において逆波長重合性液晶化合物は、通常、主鎖メソゲン1aの長軸方向を回転軸として回転運動を行うので、ここでいう屈折率n1及びn2とは、回転体としての屈折率を表している。
【0049】
主鎖メソゲン1a及び側鎖メソゲン1bの分子構造に由来して、屈折率n1の絶対値は屈折率n2の絶対値より大きい。さらに、屈折率n1及びn2は、通常、順波長分散性を示す。ここで、順波長分散性の屈折率とは、測定波長が大きいほど当該屈折率の絶対値が小さくなる屈折率を表す。主鎖メソゲン1aの屈折率n1は、小さい程度の順波長分散性を示す。よって、長波長で測定した屈折率n1は、短波長で測定した屈折率よりも小さくなるが、それらの差は小さい。これに対し、側鎖メソゲン1bの屈折率n2は、大きな程度の順波長分散性を示す。よって、長波長で測定した屈折率n2は、短波長で測定した屈折率n2よりも小さくなり、且つ、それらの差は大きい。そのため、測定波長が短いと屈折率n1と屈折率n2との差Δnは小さく、測定波長が長いと屈折率n1と屈折率n2との差Δnが大きくなる。このようにして、主鎖メソゲン1a及び側鎖メソゲン1bに由来して逆波長分散性の複屈折率が発現しうる。
【0050】
前記式(I)において、Y
1〜Y
8は、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
1−C(=O)−、−C(=O)−NR
1−、−O−C(=O)−NR
1−、−NR
1−C(=O)−O−、−NR
1−C(=O)−NR
1−、−O−NR
1−、又は、−NR
1−O−を表す。
【0051】
ここで、R
1は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
R
1の炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基が挙げられる。
R
1としては、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0052】
化合物(I)においては、Y
1〜Y
8は、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、又は、−O−C(=O)−O−であることが好ましい。
【0053】
前記式(I)において、G
1及びG
2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の二価の脂肪族基を表す。
炭素数1〜20の二価の脂肪族基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基等の鎖状構造を有する二価の脂肪族基;炭素数3〜20のシクロアルカンジイル基、炭素数4〜20のシクロアルケンジイル基、炭素数10〜30の二価の脂環式縮合環基等の二価の脂肪族基;が挙げられる。
【0054】
G
1及びG
2の二価の脂肪族基の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;が挙げられる。なかでも、フッ素原子、メトキシ基及びエトキシ基が好ましい。
【0055】
また、前記脂肪族基には、1つの脂肪族基当たり1以上の−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
2−C(=O)−、−C(=O)−NR
2−、−NR
2−、又は、−C(=O)−が介在していてもよい。ただし、−O−又は−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。ここで、R
2は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
前記脂肪族基に介在する基としては、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−C(=O)−が好ましい。
【0056】
これらの基が介在する脂肪族基の具体例としては、例えば、−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−S−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−O−C(=O)−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−C(=O)−O−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−C(=O)−O−CH
2−、−CH
2−O−C(=O)−O−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−NR
2−C(=O)−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−C(=O)−NR
2−CH
2−、−CH
2−NR
2−CH
2−CH
2−、−CH
2−C(=O)−CH
2−が挙げられる。
【0057】
これらの中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、G
1及びG
2は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基等の鎖状構造を有する二価の脂肪族基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基〔−(CH
2)
10−〕等の、炭素数1〜12のアルキレン基がより好ましく、テトラメチレン基〔−(CH
2)
4−〕、ヘキサメチレン基〔−(CH
2)
6−〕、オクタメチレン基〔−(CH
2)
8−〕、及び、デカメチレン基〔−(CH
2)
10−〕が特に好ましい。
【0058】
前記式(I)において、Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
該アルケニル基の炭素数としては、2〜6が好ましい。Z
1及びZ
2のアルケニル基の置換基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0059】
Z
1及びZ
2の炭素数2〜10のアルケニル基の具体例としては、CH
2=CH−、CH
2=C(CH
3)−、CH
2=CH−CH
2−、CH
3−CH=CH−、CH
2=CH−CH
2−CH
2−、CH
2=C(CH
3)−CH
2−CH
2−、(CH
3)
2C=CH−CH
2−、(CH
3)
2C=CH−CH
2−CH
2−、CH
2=C(Cl)−、CH
2=C(CH
3)−CH
2−、CH
3−CH=CH−CH
2−が挙げられる。
【0060】
なかでも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、Z
1及びZ
2としては、それぞれ独立して、CH
2=CH−、CH
2=C(CH
3)−、CH
2=C(Cl)−、CH
2=CH−CH
2−、CH
2=C(CH
3)−CH
2−、又は、CH
2=C(CH
3)−CH
2−CH
2−が好ましく、CH
2=CH−、CH
2=C(CH
3)−、又は、CH
2=C(Cl)−がより好ましく、CH
2=CH−が特に好ましい。
【0061】
前記式(I)において、A
xは、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。「芳香環」は、Huckel則に従う広義の芳香族性を有する環状構造、すなわち、π電子を(4n+2)個有する環状共役構造、及びチオフェン、フラン、ベンゾチアゾール等に代表される、硫黄、酸素、窒素等のヘテロ原子の孤立電子対がπ電子系に関与して芳香族性を示す環状構造を意味する。
【0062】
A
xの、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基は、芳香環を複数個有するものであってもよく、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の両方を有するものであってもよい。
【0063】
前記芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。前記芳香族複素環としては、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等の単環の芳香族複素環;ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、フタラジン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、チアゾロピリジン環、オキサゾロピリジン環、チアゾロピラジン環、オキサゾロピラジン環、チアゾロピリダジン環、オキサゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、オキサゾロピリミジン環等の縮合環の芳香族複素環;が挙げられる。
【0064】
A
xが有する芳香環は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;−C(=O)−R
5;−C(=O)−OR
5;−SO
2R
6;等が挙げられる。ここで、R
5は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は、炭素数3〜12のシクロアルキル基を表し、R
6は後述するR
4と同様の、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。
【0065】
また、A
xが有する芳香環は、同一又は相異なる置換基を複数有していてもよく、隣り合った二つの置換基が一緒になって結合して環を形成していてもよい。形成される環は単環であってもよく、縮合多環であってもよく、不飽和環であってもよく、飽和環であってもよい。
さらに、A
xの炭素数2〜30の有機基の「炭素数」は、置換基の炭素原子を含まない有機基全体の総炭素数を意味する(後述するA
yにて同じである。)。
【0066】
A
xの、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、例えば、芳香族炭化水素環基;芳香族複素環基;芳香族炭化水素環及び複素環の組み合わせを含む基;芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数3〜30のアルキル基;芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数4〜30のアルケニル基;芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数4〜30のアルキニル基;が挙げられる。
【0067】
A
xの好ましい具体例を以下に示す。但し、A
xは以下に示すものに限定されるものではない。なお、下記式中、「−」は環の任意の位置からのびる結合手を表す(以下にて同じである。)。
(1)芳香族炭化水素環基
【0073】
上記式中、Eは、NR
6a、酸素原子又は硫黄原子を表す。ここで、R
6aは、水素原子;又は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0075】
上記式中、X及びYは、それぞれ独立して、NR
7、酸素原子、硫黄原子、−SO−、又は、−SO
2−を表す(ただし、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO
2−が、それぞれ隣接する場合を除く。)。R
7は、前記R
6aと同様の、水素原子;又は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0077】
(上記式中、Xは前記と同じ意味を表す。)
【0079】
〔各式中、X
1は、−CH
2−、−NR
c−、酸素原子、硫黄原子、−SO−または−SO
2−を表し、E
1は、−NR
c−、酸素原子または硫黄原子を表す。ここで、R
cは、水素原子、または、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。(但し、各式中において酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO
2−は、それぞれ隣接しないものとする。)〕
(3)芳香族炭化水素環及び複素環の組み合わせを含む基
【0081】
(上記式中、X、及びYは、それぞれ独立して、前記と同じ意味を表す。また、上記式中、Zは、NR
7、酸素原子、硫黄原子、−SO−、又は、−SO
2−を表す(ただし、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO
2−が、それぞれ隣接する場合を除く。)。)
(4)芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルキル基
【0083】
(5)芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルケニル基
【0085】
(6)芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルキニル基
【0087】
上記したA
xの中でも、炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基、炭素数4〜30の芳香族複素環基、又は、芳香族炭化水素環及び複素環の組み合わせを含む炭素数4〜30の基であることが好ましく、下記に示すいずれかの基であることがより好ましい。
【0090】
さらに、A
xは、下記に示すいずれかの基であることが更に好ましい。
【0092】
A
xが有する環は、置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;−C(=O)−R
8;−C(=O)−OR
8;−SO
2R
6;が挙げられる。ここでR
8は、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;又は、フェニル基等の炭素数6〜14のアリール基;を表す。なかでも、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、及び炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。
【0093】
A
xが有する環は、同一又は相異なる置換基を複数有していてもよく、隣り合った二つの置換基が一緒になって結合して環を形成していてもよい。形成される環は、単環であってもよく、縮合多環であってもよい。
A
xの炭素数2〜30の有機基の「炭素数」は、置換基の炭素原子を含まない有機基全体の総炭素数を意味する(後述するA
yにて同じである。)。
【0094】
前記式(I)において、A
yは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、−C(=O)−R
3、−SO
2−R
4、−C(=S)NH−R
9、又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。ここで、R
3は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基を表す。R
4は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。R
9は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数5〜20の芳香族基を表す。
【0095】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基の炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルペンチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基が挙げられる。置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基の炭素数は、1〜12であることが好ましく、4〜10であることが更に好ましい。
【0096】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の炭素数2〜20のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基が挙げられる。置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の炭素数は、2〜12であることが好ましい。
【0097】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基が挙げられる。
【0098】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基の炭素数2〜20のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、2−プロピニル基(プロパルギル基)、ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基、2−ペンチニル基、ヘキシニル基、5−ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、2−オクチニル基、ノナニル基、デカニル基、7−デカニル基が挙げられる。
【0099】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の炭素数2〜12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、−CH
2CF
3等の、少なくとも1個がフッ素原子で置換された炭素数1〜12のフルオロアルコキシ基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;−C(=O)−R
7a;−C(=O)−OR
7a;−SO
2R
8a;−SR
10;−SR
10で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基;水酸基;が挙げられる。ここで、R
7a及びR
10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基を表す。R
8aは、前記R
4と同様の、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。
【0100】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;−C(=O)−R
7a;−C(=O)−OR
7a;−SO
2R
8a;水酸基;が挙げられる。ここでR
7a及びR
8aは、前記と同じ意味を表す。
【0101】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基の置換基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、及び、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の置換基と同様な置換基が挙げられる。
【0102】
A
yの、−C(=O)−R
3で表される基において、R
3は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基を表す。これらの具体例は、前記A
yの、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、及び、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基;並びに、前記A
xで説明した芳香族炭化水素環基のうち炭素数が5〜12のものの例として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0103】
A
yの、−SO
2−R
4で表される基において、R
4は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。R
4の、炭素数1〜20のアルキル基、及び炭素数2〜20のアルケニル基の具体例は、前記A
yの、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基の例として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0104】
A
yの、−C(=S)NH−R
9で表される基において、R
9は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数5〜20の芳香族基を表す。これらの具体例は、前記A
yの、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基;並びに、前記A
xで説明した芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基等の芳香族基のうち炭素数が5〜20のものの例として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0105】
A
yの、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、前記A
xで説明したのと同様のものが挙げられる。
【0106】
これらの中でも、A
yとしては、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、−C(=O)−R
3、−SO
2−R
4、又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基で表される基が好ましい。さらに、A
yとしては、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、置換基を有していてもよく芳香族炭化水素環及び複素環の組み合わせを含む炭素数3〜9の基、−C(=O)−R
3、−SO
2−R
4で表される基が更に好ましい。ここで、R
3、R
4は前記と同じ意味を表す。
【0107】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、フェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基、ベンゾイル基、−SR
10が好ましい。ここで、R
10は前記と同じ意味を表す。
【0108】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、置換基を有していてもよく芳香族炭化水素環及び複素環の組み合わせを含む炭素数3〜9の基の置換基としては、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基が好ましい。
【0109】
また、A
xとA
yは、一緒になって、環を形成していてもよい。かかる環としては、例えば、置換基を有していてもよい、炭素数4〜30の不飽和複素環、炭素数6〜30の不飽和炭素環が挙げられる。
【0110】
前記炭素数4〜30の不飽和複素環、及び、炭素数6〜30の不飽和炭素環は、特に制約はなく、芳香族性を有していても有していなくてもよい。
A
xとA
yが一緒になって形成される環としては、例えば、下記に示す環が挙げられる。なお、下記に示す環は、式(I)中の
【0112】
として表される部分を示すものである。
【0116】
(式中、X、Y、Zは、前記と同じ意味を表す。)
また、これらの環は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、A
xが有する芳香環の置換基として説明したのと同様のものが挙げられる。
【0117】
A
xとA
yに含まれるπ電子の総数は、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、4以上24以下であるのが好ましく、6以上20以下であるのがより好ましく、6以上18以下であるのが更により好ましい。
【0118】
A
xとA
yの好ましい組み合わせとしては、下記の組み合わせ(α)及び組み合わせ(β)が挙げられる。
(α)A
xが炭素数4〜30の、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基、又は、芳香族炭化水素環及び複素環の組み合わせを含む基であり、A
yが水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよく芳香族炭化水素環及び複素環の組み合わせを含む炭素数3〜9の基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルケニル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基であり、当該置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、ベンゼンスルホニル基、ベンゾイル基及び−SR
10のいずれかである組み合わせ。
(β)A
xとA
yが一緒になって不飽和複素環又は不飽和炭素環を形成している組み合わせ。
ここで、R
10は前記と同じ意味を表す。
【0119】
A
xとA
yのより好ましい組み合わせとしては、下記の組み合わせ(γ)が挙げられる。
(γ)A
xが下記構造を有する基のいずれかであり、A
yが水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよく芳香族炭化水素環及び複素環の組み合わせを含む炭素数3〜9の基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルケニル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基であり、当該置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、ベンゼンスルホニル基、ベンゾイル基、−SR
10のいずれかである組み合わせ。
ここで、R
10は前記と同じ意味を表す。
【0122】
(式中、X、Yは、前記と同じ意味を表す。)
A
xとA
yの特に好ましい組み合わせとしては、下記の組み合わせ(δ)が挙げられる。
(δ)A
xが下記構造を有する基のいずれかであり、A
yが水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよく芳香族炭化水素環及び複素環の組み合わせを含む炭素数3〜9の基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルケニル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基であり、当該置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、ベンゼンスルホニル基、ベンゾイル基、及び、−SR
10のいずれかである組み合わせ。
下記式中、Xは前記と同じ意味を表す。ここで、R
10は前記と同じ意味を表す。
【0124】
前記式(I)において、A
1は、置換基を有していてもよい三価の芳香族基を表す。三価の芳香族基としては、三価の炭素環式芳香族基であってもよく、三価の複素環式芳香族基であってもよい。本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、三価の炭素環式芳香族基が好ましく、三価のベンゼン環基又は三価のナフタレン環基がより好ましく、下記式に示す三価のベンゼン環基又は三価のナフタレン環基がさらに好ましい。なお、下記式においては、結合状態をより明確にすべく、置換基Y
1、Y
2を便宜上記載している(Y
1、Y
2は、前記と同じ意味を表す。以下にて同じ。)。
【0126】
これらの中でも、A
1としては、下記に示す式(A11)〜(A25)で表される基がより好ましく、式(A11)、(A13)、(A15)、(A19)、(A23)で表される基がさらに好ましく、式(A11)、(A23)で表される基が特に好ましい。
【0128】
A
1の、三価の芳香族基が有していてもよい置換基としては、前記A
xの芳香環の置換基として説明したのと同様のものが挙げられる。A
1としては、置換基を有さないものが好ましい。
【0129】
前記式(I)において、A
2及びA
3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基を表す。炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、炭素数3〜30のシクロアルカンジイル基、炭素数10〜30の二価の脂環式縮合環基が挙げられる。
【0130】
炭素数3〜30のシクロアルカンジイル基としては、例えば、シクロプロパンジイル基;シクロブタン−1,2−ジイル基、シクロブタン−1,3−ジイル基等のシクロブタンジイル基;シクロペンタン−1,2−ジイル基、シクロペンタン−1,3−ジイル基等のシクロペンタンジイル基;シクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基等のシクロへキサンジイル基;シクロヘプタン−1,2−ジイル基、シクロヘプタン−1,3−ジイル基、シクロヘプタン−1,4−ジイル基等のシクロへプタンジイル基;シクロオクタン−1,2−ジイル基、シクロオクタン−1,3−ジイル基、シクロオクタン−1,4−ジイル基、シクロオクタン−1,5−ジイル基等のシクロオクタンジイル基;シクロデカン−1,2−ジイル基、シクロデカン−1,3−ジイル基、シクロデカン−1,4−ジイル基、シクロデカン−1,5−ジイル基等のシクロデカンジイル基;シクロドデカン−1,2−ジイル基、シクロドデカン−1,3−ジイル基、シクロドデカン−1,4−ジイル基、シクロドデカン−1,5−ジイル基等のシクロドデカンジイル基;シクロテトラデカン−1,2−ジイル基、シクロテトラデカン−1,3−ジイル基、シクロテトラデカン−1,4−ジイル基、シクロテトラデカン−1,5−ジイル基、シクロテトラデカン−1,7−ジイル基等のシクロテトラデカンジイル基;シクロエイコサン−1,2−ジイル基、シクロエイコサン−1,10−ジイル基等のシクロエイコサンジイル基;が挙げられる。
【0131】
炭素数10〜30の二価の脂環式縮合環基としては、例えば、デカリン−2,5−ジイル基、デカリン−2,7-ジイル基等のデカリンジイル基;アダマンタン−1,2−ジイル基、アダマンタン−1,3−ジイル基等のアダマンタンジイル基;ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,3−ジイル基、ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,5-ジイル基、ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,6−ジイル基等のビシクロ[2.2.1]へプタンジイル基;が挙げられる。
【0132】
これらの二価の脂環式炭化水素基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。置換基としては、前記A
xの芳香環の置換基として説明したものと同様のものが挙げられる。
【0133】
これらの中でも、A
2及びA
3としては、炭素数3〜12の二価の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3〜12のシクロアルカンジイル基がより好ましく、下記式(A31)〜(A34)で表される基がさらに好ましく、下記式(A32)で表される基が特に好ましい。
【0135】
前記炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基は、Y
1及びY
3(又はY
2及びY
4)と結合する炭素原子の立体配置の相違に基づく、シス型及びトランス型の立体異性体が存在しうる。例えば、シクロヘキサン−1,4−ジイル基の場合には、下記に示すように、シス型の異性体(A32a)とトランス型の異性体(A32b)が存在し得る。
【0137】
前記炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基は、シス型であってもよく、トランス型であってもよく、シス型及びトランス型の異性体混合物であってもよい。中でも、配向性が良好であることから、トランス型あるいはシス型であるのが好ましく、トランス型がより好ましい。
【0138】
前記式(I)において、A
4及びA
5は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数6〜30の二価の芳香族基を表す。A
4及びA
5の芳香族基は、単環のものであっても、多環のものであってもよい。A
4及びA
5の好ましい具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0140】
上記A
4及びA
5の二価の芳香族基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、−C(=O)−OR
8b基;が挙げられる。ここでR
8bは、炭素数1〜6のアルキル基である。なかでも、置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基が好ましい。また、ハロゲン原子としては、フッ素原子がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基がより好ましく、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
【0141】
これらの中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、A
4及びA
5は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、下記式(A41)、(A42)又は(A43)で表される基がより好ましく、置換基を有していてもよい式(A41)で表される基が特に好ましい。
【0143】
前記式(I)において、Q
1は、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、前記A
yで説明した置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基のうち、炭素数が1〜6のものが挙げられる。これらの中でも、Q
1は、水素原子及び炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子及びメチル基がより好ましい。
【0144】
前記式(I)において、m及びnは、それぞれ独立に、0又は1を表す。中でも、mは好ましくは1であり、また、nは好ましくは1である。
【0145】
化合物(I)は、例えば、下記に示す反応により製造しうる。
【0147】
(式中、Y
1〜Y
8、G
1、G
2、Z
1、Z
2、A
x、A
y、A
1〜A
5、Q
1、m及びnは、前記と同じ意味を表す。)
【0148】
前記の反応式に示したように、式(3)で表されるヒドラジン化合物と式(4)で表されるカルボニル化合物とを反応させることにより、化合物(I)を製造することができる。以下、式(3)で表されるヒドラジン化合物を、適宜「ヒドラジン化合物(3)」ということがある。また、式(4)で表されるカルボニル化合物を、適宜「カルボニル化合物(4)」ということがある。
【0149】
前記の反応において、「ヒドラジン化合物(3):カルボニル化合物(4)」のモル比は、好ましくは1:2〜2:1、より好ましくは1:1.5〜1.5:1である。このようなモル比で反応させることにより、高選択的かつ高収率で、目的とする化合物(I)を製造できる。
【0150】
この場合、反応系は、(±)−10−カンファースルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸;塩酸、硫酸等の無機酸;等の酸触媒を含んでいてもよい。酸触媒を用いることで、反応時間が短縮され、収率が向上する場合がある。酸触媒の量は、カルボニル化合物(4)1モルに対して、通常0.001モル〜1モルである。また、酸触媒は、反応系にそのまま配合してもよく、適切な溶液に溶解させた溶液として配合してもよい。
【0151】
この反応に用いる溶媒としては、反応に不活性なものを用いうる。溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、及び、アルコール系溶媒とエーテル系溶媒の混合溶媒が好ましい。
【0152】
溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類及び反応規模等を考慮して設定しうる。溶媒の具体的な使用量は、ヒドラジン化合物(3)1gに対し、通常1g〜100gである。
【0153】
反応は、通常、−10℃以上、用いる溶媒の沸点以下の温度範囲で、円滑に進行しうる。各反応の反応時間は、反応規模によるが、通常、数分から数時間である。
【0154】
ヒドラジン化合物(3)は、次のようにして製造しうる。
【0156】
(式中、A
x及びA
yは、前記と同じ意味を表す。X
aは、ハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等の脱離基を表す。)
【0157】
前記の反応式に示したように、式(2a)で表される化合物とヒドラジン(1)とを、適切な溶媒中で反応させることで、対応するヒドラジン化合物(3a)を得ることができる。この反応における「化合物(2a):ヒドラジン(1)」のモル比は、好ましくは1:1〜1:20、より好ましくは1:2〜1:10である。さらに、ヒドラジン化合物(3a)と式(2b)で表される化合物とを反応させることで、ヒドラジン化合物(3)を得ることができる。
【0158】
ヒドラジン(1)としては、通常1水和物のものを用いうる。ヒドラジン(1)は、市販品をそのまま使用することができる。
【0159】
この反応に用いる溶媒としては、反応に不活性なものを用いうる。溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;が挙げられる。これらの中でも、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、及び、アルコール系溶媒とエーテル系溶媒の混合溶媒が好ましい。
【0160】
溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類及び反応規模等を考慮して設定しうる。溶媒の具体的な使用量は、ヒドラジン1gに対し、通常1g〜100gである。
【0161】
反応は、通常、−10℃以上、用いる溶媒の沸点以下の温度範囲で、円滑に進行しうる。各反応の反応時間は、反応規模によるが、通常、数分から数時間である。
【0162】
また、ヒドラジン化合物(3)は、次のように、公知の方法を用いて、ジアゾニウム塩(5)を還元することによっても製造しうる。
【0164】
式(5)中、A
x及びA
yは、前記と同じ意味を表す。X
b−は、ジアゾニウムに対する対イオンである陰イオンを示す。X
b−としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン、ホウフッ化水素酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン等の無機陰イオン;ポリフルオロアルキルカルボン酸イオン、ポリフルオロアルキルスルホン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、芳香族カルボン酸イオン、芳香族スルホン酸イオン等の有機陰イオン;が挙げられる。
【0165】
上記反応に用いる還元剤としては、例えば金属塩還元剤が挙げられる。金属塩還元剤とは、一般に、低原子価金属を含む化合物、もしくは金属イオンとヒドリド源からなる化合物である(「有機合成実験法ハンドブック」1990年社団法人有機合成化学協会編 丸善株式会社発行810ページを参照)。
【0166】
金属塩還元剤としては、例えば、NaAlH
4、NaAlH
p(Or)
q(p及びqは、それぞれ独立して1〜3の整数を表し、p+q=4である。rは、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)、LiAlH
4、iBu
2AlH、LiBH
4、NaBH
4、SnCl
2、CrCl
2、TiCl
3が挙げられる。ここで「iBu」は、イソブチル基を表す。
【0167】
還元反応においては公知の反応条件を採用しうる。例えば、特開2005−336103号公報、新実験化学講座 1978年 丸善株式会社発行 14巻、実験化学講座 1992年 丸善株式会社発行 20巻、等の文献に記載の条件で反応を行いうる。
また、ジアゾニウム塩(5)は、アニリン等の化合物から常法により製造しうる。
【0168】
カルボニル化合物(4)は、例えば、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−、−O−C(=O)−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)及びアミド結合(−C(=O)−NH−、−NH−C(=O)−)の形成反応を任意に組み合わせて、所望の構造を有する複数の公知化合物を適切に結合及び修飾することにより、製造しうる。
【0169】
エーテル結合の形成は、以下のようにして行いうる。
(i)式:D1−hal(halはハロゲン原子を表す。以下にて同じ。)で表される化合物と、式:D2−OMet(Metはアルカリ金属(主にナトリウム)を表す。以下にて同じ。)で表される化合物とを、混合して縮合させる(ウイリアムソン合成)。なお、式中、D1及びD2は任意の有機基を表す(以下にて同じ。)。
(ii)式:D1−halで表される化合物と、式:D2−OHで表される化合物とを、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して縮合させる。
(iii)式:D1−J(Jはエポキシ基を表す。)で表される化合物と、式:D2−OHで表される化合物とを、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して縮合させる。
(iv)式:D1−OFN(OFNは不飽和結合を有する基を表す。)で表される化合物と、式:D2−OMetで表される化合物とを、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して付加反応させる。
(v)式:D1−halで表される化合物と、式:D2−OMetで表される化合物とを、銅あるいは塩化第一銅の存在下、混合して縮合させる(ウルマン縮合)。
【0170】
エステル結合及びアミド結合の形成は、以下のようにして行いうる。
(vi)式:D1−COOHで表される化合物と、式:D2−OH又はD2−NH
2で表される化合物とを、脱水縮合剤(N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド等)の存在下に脱水縮合させる。
(vii)式:D1−COOHで表される化合物にハロゲン化剤を作用させることにより、式:D1−CO−halで表される化合物を得て、このものと式:D2−OH又はD2−NH
2で表される化合物とを、塩基の存在下に反応させる。
(viii)式:D1−COOHで表される化合物に酸無水物を作用させることにより、混合酸無水物を得た後、このものと式:D2−OH又はD2−NH
2で表される化合物とを反応させる。
(ix)式:D1−COOHで表される化合物と、式:D2−OH又はD2−NH
2で表される化合物とを、酸触媒あるいは塩基触媒の存在下に脱水縮合させる。
【0171】
カルボニル化合物(4)は、より具体的には、下記反応式に示す方法により製造しうる。
【0173】
(式中、Y
1〜Y
8、G
1、G
2、Z
1、Z
2、A
1〜A
5、Q
1、m及びnは、前記と同じ意味を表す。L
1及びL
2は、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等の脱離基を表す。−Y
1bは、−L
1と反応して−Y
1−となりうる基を表し、−Y
2bは、−L
2と反応して−Y
2−となりうる基を表す。)
【0174】
前記の反応式に示したように、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−、−O−C(=O)−)、又は、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)の形成反応を用いることにより、式(6d)で表される化合物に、式(7a)で表される化合物、次いで、式(7b)で表される化合物を反応させて、カルボニル化合物(4)を製造することができる。
【0175】
具体例として、Y
1が、式:Y
11−C(=O)−O−で表される基であり、且つ、式:Z
2−Y
8−G
2−Y
6−A
5−(Y
4−A
3)
m−Y
2−で表される基が、式:Z
1−Y
7−G
1−Y
5−A
4−(Y
3−A
2)
n−Y
1−で表される基と同一である、化合物(4’)の製造方法を以下に示す。
【0177】
(式中、Y
3、Y
5、Y
7、G
1、Z
1、A
1、A
2、A
4、Q
1、n及びL
1は、前記と同じ意味を表す。Y
11は、Y
11−C(=O)−O−がY
1となる基を表す。Y
1は前記と同じ意味を表す。)
【0178】
前記の反応式に示したように、式(6)で表されるジヒドロキシ化合物(化合物(6))と式(7)で表される化合物(化合物(7))とを反応させることにより、化合物(4’)を製造し得る。この反応における「化合物(6):化合物(7)」のモル比は、好ましくは1:2〜1:4、より好ましくは1:2〜1:3である。このようなモル比で反応させることにより、高選択的かつ高収率で目的とする化合物(4’)を得ることができる。
【0179】
化合物(7)が、L
1が水酸基である化合物(カルボン酸)である場合には、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤の存在下に反応させることにより、目的物を得ることができる。脱水縮合剤の使用量は、化合物(7)1モルに対し、通常1モル〜3モルである。
【0180】
また、化合物(7)が、L
1が水酸基である化合物(カルボン酸)である場合には、メタンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド等のスルホニルハライド、及びトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の塩基の存在下に反応させることによっても、目的物を得ることができる。スルホニルハライドの使用量は、化合物(7)1モルに対し、通常1モル〜3モルである。また、塩基の使用量は、化合物(7)1モルに対し、通常1モル〜3モルである。この場合、前記式(7)中、L
1がスルホニルオキシ基の化合物(混合酸無水物)を単離して、次の反応を行ってもよい。
【0181】
さらに、化合物(7)が、L
1がハロゲン原子である化合物(酸ハライド)である場合には、塩基の存在下に反応させることにより、目的物を得ることができる。塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。塩基の使用量は、化合物(7)1モルに対し、通常1モル〜3モルである。
【0182】
上記反応に用いる溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶媒;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン等のエーテル溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;及びこれらの溶媒の2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類及び反応規模等を考慮して設定しうる。溶媒の具体的な使用量は、ヒドロキシ化合物(6)1gに対し、通常1g〜50gである。
【0183】
化合物(6)の多くは公知物質であり、公知の方法により製造しうる。例えば、下記反応式に示す方法により製造しうる(国際公開第2009/042544号、及び、The Journal of Organic Chemistry,2011,76,8082−8087等参照。)。化合物(6)として市販されているものを、所望により精製して用いてもよい。
【0185】
(式中、A
1及びQ
1は、前記と同じ意味を表し、A
1bは、ホルミル化又はアシル化されることによりA
1になりうる2価の芳香族基を表し、R’は、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基、メトキシメチル基等の炭素数2〜6のアルコキシアルキル基等の、水酸基の保護基を表す。)
【0186】
前記の反応式に示したように、式(6a)で表されるジヒドロキシ化合物(1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシナフタレン等)の水酸基をアルキル化して、式(6b)で表される化合物を得る。その後、OR’基のオルト位を、公知の方法により、ホルミル化又はアシル化することにより、式(6c)で表される化合物を得る。そして、このものを脱保護(脱アルキル化)することにより、目的とする化合物(6)を製造しうる。
また、化合物(6)として、市販されているものをそのまま、又は所望により精製して用いてもよい。
【0187】
化合物(7)の多くは公知化合物であり、例えば、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−、−O−C(=O)−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)及びアミド結合(−C(=O)−NH−、−NH−C(=O)−)の形成反応を任意に組み合わせて、所望の構造を有する複数の公知化合物を適切に結合及び修飾することにより、製造しうる。
【0188】
例えば、化合物(7)が、下記式(7’)で表される化合物(化合物(7’))である場合には、式(9’)で表されるジカルボン酸(化合物(9’))を用いて、下記のようにして製造することができる。
【0190】
(式中、Y
5、Y
7、G
1、Z
1、A
2、A
4及びY
11は、前記と同じ意味を表す。Y
12は、−O−C(=O)−Y
12がY
3となる基を表す。Rは、メチル基、エチル基等のアルキル基;フェニル基、p−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいアリール基;を表す。)
【0191】
先ず、化合物(9’)に、式(10)で表されるスルホニルクロライドを、トリエチルアミン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の塩基存在下で反応させる。次いで、反応混合物に、化合物(8)と、トリエチルアミン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の塩基を加えて反応を行う。
スルホニルクロライドの使用量は、化合物(9’)1当量に対して、通常0.5当量〜0.7当量である。
また、化合物(8)の使用量は、化合物(9’)1当量に対して、通常0.5当量〜0.6当量である。
塩基の使用量は、化合物(9’)1当量に対して、通常0.5当量〜0.7当量である。
反応温度は、20℃〜30℃であり、反応時間は反応規模等にもよるが、数分から数時間である。
【0192】
上記反応に用いる溶媒としては、前記化合物(4’)を製造する際に用いうる溶媒として例示したものが挙げられる。なかでも、エーテル溶媒が好ましい。
溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類及び反応規模等を考慮して設定しうる。溶媒の具体的な使用量は、化合物(9’)1gに対し、通常1g〜50gである。
【0193】
いずれの反応においても、反応終了後は、有機合成化学における通常の後処理操作を行いうる。また、所望により、カラムクロマトグラフィー、再結晶法、蒸留法等の公知の分離精製法を施すことにより、目的物を単離しうる。
目的とする化合物の構造は、NMRスペクトル、IRスペクトル、マススペクトル等の測定、元素分析等により、同定できる。
【0194】
上述した逆波長重合性液晶化合物の中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、当該逆波長重合性液晶化合物の分子中に、ベンゾチアゾール環(下記式(11A)の環);並びに、シクロヘキシル環(下記式(11B)の環)及びフェニル環(下記式(11C)の環)の組み合わせ;からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するものが好ましい。
【0196】
[3.液晶性組成物]
液晶性組成物は、上述した逆波長重合性液晶化合物を含む。また、液晶性組成物は、逆波長重合性液晶化合物に組み合わせて、任意の成分を含みうる。これらの任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0197】
液晶性組成物は、例えば、界面活性剤を含みうる。界面活性剤により、液晶性組成物の塗工性を良好にできる。そのため、液晶性組成物を硬化させた硬化物の層としての液晶硬化層の面状態を良好にできるので、液晶硬化層の厚み、配向性及びレターデーションの均一性を向上させることができる。
【0198】
また、界面活性剤としては、重合性を有さないものを用いてもよく、重合性を有するものを用いてもよい。重合性を有する界面活性剤は、重合性液晶化合物を重合させる際に重合しうるので、通常は、液晶硬化層においては重合体の分子の一部に含まれる。
【0199】
界面活性剤としては、フッ素原子を含むものが好ましい。このような界面活性剤としては、例えば、AGCセイミケミカル社製のサーフロンシリーズ(S242、S386など)、DIC社製のメガファックシリーズ(F251、F554、F556、F562、RS−75、RS−76−Eなど)、ネオス社製のフタージェントシリーズ(FTX601AD、FTX602A、FTX601ADH2、FTX650Aなど)等が挙げられる。また、これらの界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0200】
界面活性剤の量は、重合性液晶化合物100重量部に対して、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、特に好ましくは0.3重量部以上であり、好ましくは5.0重量部以下、より好ましくは1.0重量部以下、更に好ましくは0.7重量部以下、特に好ましくは0.5重量部未満である。界面活性剤の量が、前記範囲の下限値以上であることにより、液晶性組成物の塗工性が良好になり、前記範囲の上限値以下であることにより、配向性を保ちながら液晶性組成物の面状態の改良ができる。
【0201】
液晶性組成物は、例えば、溶媒を含みうる。溶媒としては、逆波長重合性液晶化合物を溶解できるものが好ましい。このような溶媒としては、通常、有機溶媒を用いる。有機溶媒の例としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル溶媒;及びトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;が挙げられる。
【0202】
溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせた混合溶媒として用いてもよい。例えば、シクロペンタノン等のケトン溶媒と1,3−ジオキソラン等のエーテル溶媒とを組み合わせて用いることが好ましい。このように組み合わせる場合、ケトン溶媒とエーテル溶媒との重量比(ケトン溶媒/エーテル溶媒)は、好ましくは10/90以上、より好ましくは30/70以上、特に好ましくは40/60以上であり、好ましくは90/10以下、より好ましくは70/30以下、特に好ましくは50/50以下である。ケトン溶媒及びエーテル溶媒を前記の重量比で用いることにより、塗工時の欠陥発生の抑制ができる。
【0203】
溶媒の沸点は、取り扱い性に優れる観点から、好ましくは60℃〜250℃、より好ましくは60℃〜150℃である。
【0204】
溶媒の量は、重合性液晶化合物100重量部に対して、好ましくは300重量部以上、より好ましくは350重量部以上、特に好ましくは400重量部以上であり、好ましくは700重量部以下、より好ましくは600重量部以下、特に好ましくは500重量部以下である。溶媒の量を、前記範囲の下限値以上にすることにより異物発生の抑制ができ、前記範囲の上限値以下にすることにより乾燥負荷の低減ができる。
【0205】
液晶性組成物は、例えば、重合開始剤を含みうる。重合開始剤の種類は、逆波長重合性液晶化合物の種類に応じて選択しうる。例えば、逆波長重合性液晶化合物がラジカル重合性であれば、ラジカル重合開始剤を使用しうる。また、逆波長重合性液晶化合物がアニオン重合性であれば、アニオン重合開始剤を使用しうる。さらに、逆波長重合性液晶化合物がカチオン重合性であれば、カチオン重合開始剤を使用しうる。
【0206】
ラジカル重合開始剤としては、加熱によって逆波長重合性液晶化合物の重合を開始しうる活性種を発生する化合物である熱ラジカル発生剤;可視光線、紫外線(i線など)、遠紫外線、電子線、X線等の露光光の露光により、逆波長重合性液晶化合物の重合を開始しうる活性種を発生する化合物である光ラジカル発生剤;のいずれも使用可能である。中でも、ラジカル重合開始剤としては、光ラジカル発生剤が好適である。
【0207】
光ラジカル発生剤としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O−アシルオキシム系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物を挙げられる。これらの化合物は、露光によって、活性ラジカル、活性酸、又は、活性ラジカル及び活性酸の両方を発生しうる。
【0208】
アセトフェノン系化合物の具体例としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル・フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1,2−オクタンジオン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4’−モルフォリノブチロフェノンを挙げることができる。
【0209】
ビイミダゾール系化合物の具体例としては、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールを挙げることができる。
【0210】
重合開始剤としてビイミダゾール系化合物を用いる場合、ビイミダゾール系化合物に組み合わせて水素供与体を用いることにより、感度を更に改良することができる。ここで「水素供与体」とは、露光によりビイミダゾール系化合物から発生したラジカルに対して、水素原子を供与することができる化合物を意味する。水素供与体としては、下記で例示するメルカプタン系化合物及びアミン系化合物が好ましい。
【0211】
メルカプタン系化合物としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−2,5−ジメチルアミノピリジンを挙げることができる。アミン系化合物としては、例えば、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノベンゾニトリルを挙げることができる。
【0212】
トリアジン系化合物の具体例としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等の、ハロメチル基を有するトリアジン系化合物を挙げることができる。
【0213】
O−アシルオキシム系化合物の具体例としては、1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−ヘプタン−1,2−ジオン 2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−オクタン−1,2−ジオン 2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−〔4−(ベンゾイル)フェニル〕−オクタン−1,2−ジオン 2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−エタノン 1−(O−アセチルオキシム)、1−[9−エチル−6−(3−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−エタノン 1−(O−アセチルオキシム)、1−(9−エチル−6−ベンゾイル−9H−カルバゾール−3−イル)−エタノン 1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)ベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)を挙げることができる。
【0214】
光ラジカル発生剤としては、市販品をそのまま用いてもよい。具体例としては、BASF社製の、商品名:Irgacure907、商品名:Irgacure184、商品名:Irgacure369、商品名:Irgacure651、商品名:Irgacure819、商品名:Irgacure907、商品名:Irgacure379、及び商品名:Irgacure OXE02、ADEKA社製の、商品名:アデカオプトマーN1919等が挙げられる。
【0215】
アニオン重合開始剤としては、例えば、アルキルリチウム化合物;ビフェニル、ナフタレン、ピレン等の、モノリチウム塩又はモノナトリウム塩;ジリチウム塩やトリリチウム塩等の多官能性開始剤;が挙げられる。
【0216】
カチオン重合開始剤としては、例えば、硫酸、リン酸、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のプロトン酸;三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズのようなルイス酸;芳香族オニウム塩又は芳香族オニウム塩と、還元剤との併用系;が挙げられる。
【0217】
重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0218】
重合開始剤の量は、重合性液晶化合物100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。重合開始剤の量が前記範囲に収まることにより、逆波長重合性液晶化合物の重合を効率的に進行させることができる。
【0219】
液晶性組成物は、例えば、順波長重合性液晶化合物を含みうる。順波長重合性液晶化合物としては、例えば、特開2002−030042号公報、特開2004−204190号公報、特開2005−263789号公報、特開2007−119415号公報、特開2007−186430号公報、及び特開平11−513360号公報に記載された、棒状液晶化合物が挙げられる。また、好ましい液晶化合物の例を製品名で挙げると、BASF社製「LC242」等が挙げられる。順波長重合性液晶化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0220】
順波長重合性液晶化合物の量は、逆波長重合性液晶化合物100重量部に対して、好ましくは200重量部以下、より好ましくは150重量部以下、特に好ましくは100重量部以下である。順波長重合性液晶化合物の量が、前記上限値以下であると、耐傷付き性等の利点を大きく損なうことなく、液晶硬化層のレターデーションの波長分散性を調整できる。液晶性組成物が順波長重合性液晶化合物を含む場合、その順波長重合性液晶化合物の量の下限は、制限は無い。例えば、順波長重合性液晶化合物の量は、逆波長重合性液晶化合物100重量部に対して、0.1重量部以上でありうる。
【0221】
液晶性組成物が含みうる任意の成分としては、例えば、非液晶性アクリル系重合性モノマー;金属;金属錯体;酸化チタン等の金属酸化物;染料、顔料等の着色剤;蛍光材料、燐光材料等の発光材料;レベリング剤;チキソ剤;ゲル化剤;多糖類;紫外線吸収剤;赤外線吸収剤;抗酸化剤;イオン交換樹脂;等の添加剤が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0222】
前記の添加剤の量は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意に設定しうる。添加剤の量は、具体的には、重合性液晶化合物100重量部に対して、各々0.1重量部〜20重量部としうる。
【0223】
[4.液晶硬化層]
液晶硬化層は、上述した液晶性組成物の硬化物からなる層である。この液晶硬化層は、当該液晶硬化層の厚み方向に対して垂直な2つの面(おもて面及び裏面)のピーク比Xが、式(i)を満たす。より詳しくは、X(S)/X(A)は、通常1.00より大きく、好ましくは1.05より大きく、また、好ましくは1.30未満、より好ましくは1.25未満である。X(S)/X(A)が、前記範囲の下限値より大きいことにより、液晶硬化層の耐傷付き性を良好にでき、更に通常は、液晶硬化層の接着剤耐性及び剥離性を良好にできる。また、X(S)/X(A)が、前記範囲の上限値未満であることにより、液晶硬化層の経年変化などによる耐久性の低下を抑制できる。
【0224】
前記のピーク比X(S)及びX(A)は、下記の方法によって測定しうる。
液晶硬化フィルムの液晶硬化層の面のIRスペクトルを測定する。測定したIRスペクトルから、エチレン性不飽和結合の面内変角振動に由来する1407.7809cm
−1のピーク強度I(1)、及び、芳香環の不飽和結合の伸縮振動に由来する1505.1685cm
−1のピーク強度I(2)を求める。これらのピーク強度I(1)及びI(2)から、液晶硬化層の各面のピーク比X(S)及びX(A)を計算する。
【0225】
式(i)を満たす液晶硬化層を実現する方法としては、例えば、重合性液晶化合物の種類の選択、重合開始剤の種類の選択、液晶性組成物を硬化させる際に液晶性組成物の層の空気側の面に紫外線等の活性エネルギー線を照射すること、などが挙げられる。一般に、液晶性組成物の空気側の面では、空気中の酸素による重合阻害が生じるため、重合反応を高度に進行させることが難しい。また、仮に、窒素等の不活性雰囲気で液晶性組成物の硬化を行った場合でも、雰囲気中の酸素を完全に排除することは困難であることから、酸素による重合阻害の影響を全て排除することは難しい。そのため、単に液晶性組成物の層の空気側の面に活性エネルギー線を照射することだけでは、液晶性組成物の層の空気側の面で重合反応を高度に進行させられるとは限らない。したがって、式(i)の達成のためには、逆波長重合性液晶化合物の種類に応じて適切な種類の重合開始剤を選択することと、液晶性組成物の層の空気側の面に活性エネルギー線を照射することとを組み合わせることが好ましい。
【0226】
上述したように、液晶硬化層に含まれる逆波長重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いは、厚み方向において異なっている。そのため、液晶硬化層に含まれる逆波長重合性液晶化合物の割合は、厚み方向の位置により異なり、分布を有する。しかし、このような液晶硬化層においても、厚み方向全体における逆波長重合性液晶化合物の平均割合は、所定値以下に収まることが好ましい。以下、液晶硬化層に含まれる逆波長重合性液晶化合物の平均割合を、適宜「残留モノマー割合」ということがある。液晶硬化層の残留モノマー割合の具体的な値は、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。液晶硬化層の残留モノマー割合が、前記上限値以下であると、液晶硬化層の硬化が十分に進んでいるので、液晶硬化層の耐傷付き性及び接着剤耐性を効果的に改善できる。
【0227】
液晶硬化層の残留モノマー割合は、液晶硬化層から逆波長重合性液晶化合物を抽出して抽出溶液を得て、当該抽出溶液中の逆波長重合性液晶化合物の量を定量することにより、測定しうる。抽出溶液中の逆波長重合性液晶化合物の定量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行いうる。
【0228】
液晶性組成物が界面活性剤を含む場合、その液晶性組成物から製造される液晶硬化層も、通常は、界面活性剤を含む。この場合、液晶硬化層の一方の面での界面活性剤の量は、液晶硬化層の他方の面での界面活性剤の量より、少なくなりうる。液晶性組成物において界面活性剤は空気界面に多く集まる傾向があるので、通常、液晶硬化層の前記一方の面は、液晶硬化層の形成に用いた基材フィルム側の面に相当し、液晶硬化層の前記他方の面は、基材フィルムとは反対側の面に相当する。よって、基材フィルムが剥離された液晶硬化フィルムにおいて、液晶硬化層のいずれの面が基材フィルム側の面であったかは、その液晶硬化層の面における界面活性剤の量を測定することにより、確認できる。
【0229】
液晶硬化層の一方の面での界面活性剤の量が、液晶硬化層の他方の面での界面活性剤の量より少ないことは、前記一方の面及び前記他方の面での界面活性剤の量の比を測定することによって、確認しうる。また、界面活性剤自体の量の比を測定する代わりに、その界面活性剤が含む特定原子の量の比を測定してもよい。液晶硬化層の面での特定原子の量は、X線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)により、水素(H)を除く全原子中に含まれる特定原子の個数含有率として、測定できる。例えば、界面活性剤が特定原子としてフッ素原子を含んでいる場合、液晶硬化層の一方の面でのフッ素原子の含有率f2と、液晶硬化層の他方の面でのフッ素原子の含有率f1との比f1/f2が、1.0より大きいことが確認できれば、液晶硬化層の一方の面での界面活性剤の量が、液晶硬化層の他方の面での界面活性剤の量より少ないと判定できる。
【0230】
液晶硬化層に含まれる逆波長重合性液晶化合物の重合体は、通常、逆波長重合性液晶化合物がその配向状態を維持したまま重合したものである。よって、液晶性組成物に含まれていた逆波長重合性液晶化合物が配向していた場合、その逆波長重合性液晶化合物から得られる重合体は、液晶相における逆波長重合性液晶化合物の分子の配向を維持したまま重合体となるので、ホモジニアス配向規則性を有しうる。ここで、「ホモジニアス配向規則性を有する」とは、重合体の分子のメソゲンの長軸方向が、液晶硬化層の面に平行なある一の方向に整列することをいう。また、前記の重合体の分子のメソゲンの長軸方向は、当該重合体に対応する逆波長重合性液晶化合物のメソゲンの長軸方向となる。さらに、逆波長重合性液晶化合物として化合物(I)を用いた場合のように、液晶硬化層中に配向方向の異なる複数種類のメソゲンが存在する場合は、それらのうち最も長い種類のメソゲンが整列する方向が、前記の整列方向となる。
【0231】
このような液晶硬化層は、通常、前記のような重合体の配向規則性に対応して、前記の重合体の整列方向と平行な遅相軸を有する。逆波長重合性液晶化合物を重合させて得た重合体がホモジニアス配向規則性を有しているか否か、及びその整列方向は、AxoScan(Axometrics社製)に代表されるような位相差計を用いた遅相軸方向の測定と、遅相軸方向における入射角毎のレターデーション分布の測定とにより確認しうる。
【0232】
液晶硬化層の遅相軸の方向は、液晶硬化フィルムの用途に応じて、任意に設定しうる。例えば、長尺の基材フィルムを用いて製造された液晶硬化フィルムのように、長尺の形状を有する液晶硬化フィルムの液晶硬化層は、当該液晶硬化フィルムの長手方向に対して40°〜50°の角度をなす遅相軸を有することが好ましい。通常、直線偏光子は、当該直線偏光子の長手方向に平行な吸収軸及び垂直な透過軸を有する長尺のフィルムとして製造される。よって、液晶硬化層が液晶硬化フィルムの長手方向に対して40°〜50°の角度をなす遅相軸を有することにより、直線偏光子及び液晶硬化層を備える円偏光板の製造を、ロール・トゥ・ロール法を用いて容易に行うことが可能となる。
【0233】
液晶硬化層に含まれる逆波長重合性液晶化合物の重合体が配向している場合、当該液晶硬化層は、配向状態に応じたレターデーションを有しうる。液晶硬化層の具体的なレターデーションの範囲は、用途に応じて任意に設定しうる。例えば、液晶硬化層を1/4波長板として機能させたい場合には、測定波長590nmにおける液晶硬化層のレターデーションReは、好ましくは90nm以上、より好ましくは110nm以上、特に好ましくは130nm以上であり、好ましくは190nm以下、より好ましくは170nm以下、特に好ましくは160nm以下である。また、例えば、液晶硬化層を1/2波長板として機能させたい場合には、測定波長590nmにおける液晶硬化層のレターデーションReは、好ましくは265nm以上、より好ましくは285nm以上、特に好ましくは290nm以上であり、好ましくは325nm以下、より好ましくは305nm以下、特に好ましくは300nm以下である。
【0234】
逆波長重合性液晶化合物を重合させた重合体を含むので、液晶硬化層は、逆波長分散性の複屈折を有しうる。したがって、液晶硬化層は、逆波長分散性のレターデーションを有することができる。ここで、逆波長分散性のレターデーションとは、波長450nmにおけるレターデーションRe(450)、波長550nmにおけるレターデーションRe(550)及び波長650nmにおけるレターデーションRe(650)が、通常下記式(v)を満たすレターデーションを言い、好ましくは下記式(vi)を満たすレターデーションを言う。逆波長分散性のレターデーションを有することにより、前記の液晶硬化層は、1/4波長板又は1/2波長板等の光学用途において、広い帯域において均一に機能を発現できる。
Re(450)<Re(650) (v)
Re(450)<Re(550)<Re(650) (vi)
【0235】
液晶硬化層の厚みは、レターデーション等の特性を所望の範囲にできるように、適切に設定しうる。具体的には、液晶硬化層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下である。
【0236】
[5.基材フィルム]
液晶硬化フィルムは、液晶硬化層の形成に用いた基材フィルムを備えていてもよい。このような基材フィルムとして、通常は、樹脂フィルムを用いる。樹脂としては、各種の重合体を含む樹脂が挙げられる。当該重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体等の脂環式構造含有重合体、セルロースエステル、ポリビニルアルコール、ポリイミド、UV透過アクリル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシ重合体、ポリスチレン、及び、これらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性の観点から、脂環式構造含有重合体及びセルロースエステルが好ましく、脂環式構造含有重合体がより好ましい。
【0237】
基材フィルムの表面には、液晶性組成物の層における逆波長重合性液晶化合物の配向を促進するため、配向規制力を付与するための処理が施されていてもよい。ここで、ある面の配向規制力とは、液晶性組成物中の逆波長重合性液晶化合物を配向させうる、その面の性質をいう。
【0238】
配向規制力を付与するための処理としては、例えば、ラビング処理が挙げられる。基材フィルムの表面にラビング処理を施すことにより、逆波長重合性液晶化合物を均一配向させる配向規制力を、かかる面に付与できる。ラビング処理の方法としては、例えば、ナイロン等の合成繊維、木綿等の天然繊維からなる布又はフェルトを巻き付けたロールで、一定方向に基材フィルムの表面を擦る方法が挙げられる。ラビング処理した時に発生する微粉末を除去して処理された面を清浄な状態とするために、ラビング処理後に、処理された面をイソプロピルアルコール等の洗浄液によって洗浄することが好ましい。
【0239】
また、配向規制力を付与するための処理としては、例えば、基材フィルムの表面に配向層を形成する処理が挙げられる。配向層は、液晶性組成物中の逆波長重合性液晶化合物を、面内で一方向に配向させうる層である。配向層を設けた場合、この配向層の表面に液晶硬化層を形成しうる。
【0240】
配向層は、通常、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリマーを含有する。配向層は、このようなポリマーを含む溶液を基材フィルム上に膜状に塗工し、乾燥させ、そして一方向にラビング処理を施すことで、製造できる。また、ラビング処理以外に、配向層の表面に偏光紫外線を照射する方法によっても、配向層に配向規制力を付与しうる。配向層の厚さは、好ましくは0.001μm〜5μm、より好ましくは0.001μm〜1μmである。
【0241】
さらに、配向規制力を付与するための処理としては、例えば、延伸処理が挙げられる。基材フィルムに適切な条件で延伸処理を施すことにより、基材フィルムに含まれる重合体の分子を配向させることができる。これにより、基材フィルムに含まれる重合体の分子の配向方向に逆波長重合性液晶化合物を配向させる配向規制力を、基材フィルムの表面に付与できる。
【0242】
基材フィルムの延伸は、基材フィルムに異方性を付与して、当該基材フィルムに遅相軸を発現させられるように行うことが好ましい。これにより、通常は、基材フィルムの遅相軸と平行又は垂直な方向に逆波長重合性液晶化合物を配向させる配向規制力が、基材フィルムの表面に付与される。例えば、基材フィルムの材料として正の固有複屈折値を有する樹脂を用いた場合、通常は、基材フィルムに含まれる重合体の分子が延伸方向に配向することにより延伸方向に平行な遅相軸が発現するので、基材フィルムの遅相軸と平行な方向に逆波長重合性液晶化合物を配向させる配向規制力が、基材フィルムの表面に付与される。したがって、基材フィルムの延伸方向は、逆波長重合性液晶化合物を配向させようとする所望の配向方向に応じて設定しうる。特に、基材フィルムの遅相軸は、基材フィルムの巻取方向に対して40°〜50°の角度をなすように発現させることが好ましい。ここで、基材フィルムの巻取方向とは、長尺の基材フィルムが巻き取られる方向をいい、通常は、基材フィルムの長手方向に平行な方向を意味する。
【0243】
延伸倍率は、延伸後の基材フィルムの複屈折Δnが所望の範囲となるように設定しうる。延伸後の基材フィルムの複屈折Δnは、好ましくは0.000050以上、より好ましくは0.000070以上であり、好ましくは0.007500以下、より好ましくは0.007000以下である。延伸後の基材フィルムの複屈折Δnが前記範囲の下限値以上であることにより、当該基材フィルムの表面に良好な配向規制力を付与できる。また、複屈折Δnが前記範囲の上限値以下であることにより、基材フィルムのレターデーションを小さくできるので、基材フィルムを液晶硬化層から剥離しなくても、液晶硬化層と基材フィルムとを組み合わせて備える液晶硬化フィルムを各種の用途に用いうる。
前記の延伸は、テンター延伸機などの延伸機を用いて行いうる。
【0244】
また、配向規制力を付与するための処理としては、例えば、イオンビーム配向処理が挙げられる。イオンビーム配向処理では、Ar
+等のイオンビームを基材フィルムに対して入射させることにより、基材フィルムの表面に配向規制力を付与することができる。
【0245】
基材フィルムの厚みは、特に制限されないが、生産性の向上、薄型化及び軽量化を容易にする観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、特に好ましくは30μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは300μm以下、特に好ましくは100μm以下である。
【0246】
[6.任意の層]
液晶硬化フィルムは、上述した液晶硬化層に、基材フィルム以外の任意の層を備えていてもよい。例えば、液晶硬化フィルムは、液晶硬化層の基材フィルムとは反対側の面に、任意の層を備えていてもよい。任意の層の例としては、他の部材と接着するための接着剤層、フィルムの滑り性を良くするマット層、耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂層などのハードコート層、反射防止層、防汚層等が挙げられる。
【0247】
[7.液晶硬化フィルムの特性]
液晶硬化フィルムは、その用途に応じた適切な特性を有することが好ましい。例えば、液晶硬化フィルムを光学フィルムとして用いる場合、液晶硬化層が有しうるレターデーションReの範囲として説明したのと同様の範囲のレターデーションを有しうる。
【0248】
また、液晶硬化フィルムを光学フィルムとして用いる場合、光学フィルムは、高い透明性を有することが好ましい。具体的には、液晶硬化フィルムの全光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。また、液晶硬化フィルムのヘイズは、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。フィルムの全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm〜700nmの範囲で測定しうる。また、フィルムのヘイズは、ヘイズメーターを用いて測定しうる。
【0249】
[8.液晶硬化フィルムの製造方法]
上述した液晶硬化フィルムは、基材フィルム上に液晶性組成物の層を形成する工程と、液晶性組成物の層を硬化させて液晶硬化層を得る工程と、を含む製造方法によって、製造できる。
【0250】
この製造方法では、基材フィルムを用意し、その基材フィルムの面に、液晶性組成物の層を形成する。上述したように、基材フィルムの面には、配向規制力を付与するための処理が施されていてもよい。また、基材フィルムとしては、長尺のフィルムを用いることが好ましい。ここで「長尺」とは、幅に対して、5倍以上の長さを有する形状をいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムの形状をいう。長尺の基材フィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して1万倍以下としうる。長尺の基材フィルムを用いることにより、液晶硬化フィルムの生産性を向上させることができる。
【0251】
液晶性組成物の層の形成は、通常、塗工法によって行う。具体的には、基材フィルムの表面に、液晶性組成物を塗工して、液晶性組成物の層を形成する。塗工方法としては、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ギャップコーティング法、及びディッピング法が挙げられる。塗工される液晶性組成物の層の厚みは、液晶硬化層に求められる所望の厚さに応じて適切に設定しうる。
【0252】
液晶性組成物の層を形成した後で、必要に応じて、当該層に含まれる逆波長重合性液晶化合物を配向させる工程を行ってもよい。この工程では、通常は、液晶性組成物の層に配向処理を施すことにより、基材フィルムの面の配向規制力に応じた方向に逆波長重合性液晶化合物を配向させる。配向処理は、通常、液晶性組成物の層を、所定の配向温度に加熱することによって、行う。この配向処理の条件は、使用する液晶性組成物の性質に応じて適切に設定しうる。配向処理の条件の具体例を挙げると、50℃〜160℃の温度条件において、30秒間〜5分間処理する条件としうる。
【0253】
ただし、逆波長重合性液晶化合物の配向は、液晶性組成物の塗工により直ちに達成される場合がありえる。そのため、逆波長重合性液晶化合物を配向させたい場合でも、配向処理は、必ずしも液晶性組成物の層に施さなくてもよい。
【0254】
必要に応じて逆波長重合性液晶化合物を配向させた後で、前記液晶性組成物の層を硬化させて、液晶硬化層を得る工程を行う。この工程では、逆波長重合性液晶化合物を重合させて、液晶性組成物の層を硬化させる。逆波長重合性液晶化合物の重合方法としては、液晶性組成物に含まれる成分の性質に適合した方法を選択しうる。重合方法としては、例えば、活性エネルギー線を照射する方法、及び、熱重合法が挙げられる。中でも、加熱が不要であり、室温で重合反応を進行させられるので、活性エネルギー線を照射する方法が好ましい。ここで、照射される活性エネルギー線には、可視光線、紫外線、及び赤外線等の光、並びに電子線等の任意のエネルギー線が含まれうる。
【0255】
なかでも、操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。紫外線照射時の温度は、基材フィルムのガラス転移温度以下とすることが好ましく、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下、特に好ましくは80℃以下である。紫外線照射時の温度の下限は、15℃以上としうる。紫外線の照射強度は、好ましくは0.1mW/cm
2以上、より好ましくは0.5mW/cm
2以上であり、好ましくは1000mW/cm
2以下、より好ましくは600mW/cm
2以下である。
【0256】
液晶性組成物の層を硬化させて液晶硬化層を形成することにより、液晶硬化層と基材フィルムとを備えた液晶硬化フィルムが得られる。
【0257】
液晶硬化フィルムの製造方法は、前記の工程に加えて、任意の工程を含みうる。
液晶硬化フィルムの製造方法は、例えば、逆波長重合性液晶化合物を重合させる工程の前に、液晶性組成物の層を乾燥させる工程を含んでいてもよい。かかる乾燥は、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等の乾燥方法で達成しうる。かかる乾燥により、液晶性組成物の層から、溶媒を除去することができる。
また、液晶硬化フィルムの製造方法は、例えば、製造された液晶硬化フィルムから基材フィルムを剥離する工程を含んでいてもよい。
さらに、液晶硬化フィルムの製造方法は、例えば、製造された液晶硬化フィルムに、更に任意の層を設ける工程を含んでいてもよい。
【0258】
[9.液晶硬化フィルムの用途]
液晶硬化フィルムの用途は、任意である。好ましくは、液晶硬化フィルムは、光学フィルムとして用いうる。
【0259】
好適な光学フィルムとしては、1/4波長板及び1/2波長板等の波長板が挙げられる。前記の波長板としては、液晶硬化層のみを備える液晶硬化フィルムを用いてもよい。このように液晶硬化層のみを備える波長板は、例えば、基材フィルム上で形成された液晶硬化層を基材フィルムから剥離し、矩形などの用途に応じた所望の形状に裁断して製造しうる。また、前記の波長板としては、液晶硬化層に組み合わせて、液晶硬化層の形成に用いた基材フィルムを更に備える液晶硬化フィルムを用いてもよい。例えば、基材フィルム上で形成された液晶硬化層を基材フィルムから剥離せず、基材フィルム及び液晶硬化層を備える複層構造の液晶硬化フィルムをそのまま、波長板として用いてもよい。さらに、前記の波長板は、液晶硬化層及び基材フィルム以外に任意の層を備えていてもよい。
【0260】
また、好適な別の光学フィルムとしては、円偏光板が挙げられる。円偏光板は、直線偏光子及び前記の液晶硬化層を備える。
【0261】
直線偏光子としては、液晶表示装置等の装置に用いられている任意の直線偏光子を用いうる。直線偏光子の例としては、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって得られるもの;ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させ延伸しさらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって得られるもの;が挙げられる。直線偏光子の他の例としては、グリッド偏光子、多層偏光子、コレステリック液晶偏光子などの偏光を反射光と透過光に分離する機能を有する偏光子が挙げられる。これらのうちポリビニルアルコールを含有する偏光子が好ましい。
【0262】
直線偏光子に自然光を入射させると、一方の偏光だけが透過する。直線偏光子の偏光度は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。また、直線偏光子の平均厚みは、好ましくは5μm〜80μmである。
【0263】
液晶硬化層は、1/4波長板として機能しうるように、適切なレターデーションを有することが好ましい。また、液晶硬化層の遅相軸と直線偏光子の透過軸とがなす角は、厚み方向から見て45°またはそれに近い角度であることが好ましく、具体的には40°〜50°であることが好ましい。
【0264】
また、円偏光板は、直線偏光子及び液晶硬化層に加えて、更に任意の層を備えていてもよい。
【0265】
このような円偏光板の用途の一つとして、有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置の反射防止フィルムとしての用途が挙げられる。表示装置の表面に、円偏光板を、直線偏光子側の面が視認側に向くように設けることにより、装置外部から入射した光が装置内で反射して装置外部へ出射することを抑制することができ、その結果、表示装置の表示面のぎらつきを抑制できる。具体的には、装置外部から入射した光は、その一部の直線偏光のみが直線偏光子を通過し、次にそれが液晶硬化層を通過することにより円偏光となる。円偏光は、装置内の光を反射する構成要素(反射電極等)により反射され、再び液晶硬化層を通過することにより、入射した直線偏光の偏光軸と直交する方向に偏光軸を有する直線偏光となり、直線偏光子を通過しなくなる。これにより、反射防止の機能が達成される。
【実施例】
【0266】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中の条件において行った。
【0267】
[評価方法]
〔1.IRスペクトルの測定方法〕
液晶硬化フィルムの液晶硬化層の空気側の面と、樹脂フィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム」)とを、粘着剤を用いて貼り合わせた。その後、基材フィルムを剥離して、液晶硬化層の基材フィルム側の面を露出させた。こうして得られた樹脂フィルム及び液晶硬化層を備える試料を用いて、液晶硬化層の基材フィルム側の面のIRスペクトルを測定した。
【0268】
他方、液晶硬化層の空気側の面のIRスペクトルは、液晶硬化フィルム自体を試料として用いて、測定した。
【0269】
IRスペクトルの測定は、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製「FTIR4100」)を用いて測定した。また、この測定は、前記のフーリエ変換赤外分光光度計に付属の治具(日本分光社製「ATR−PRO450−S」)を用いて、入射角45°において行った。
【0270】
測定したIRスペクトルから、エチレン性不飽和結合の面内変角振動に由来する1407.7809cm
−1のピーク強度I(1)、及び、芳香環の不飽和結合の伸縮振動に由来する1505.1685cm
−1のピーク強度I(2)を求めた。
【0271】
〔2.擦り試験方法〕
液晶硬化フィルムのヘイズを、ヘイズメーター(東洋精機社製「HAZE−GARD II」)を用いて測定した。
【0272】
その後、液晶硬化フィルムの液晶硬化層の空気側の面を、表面性測定器(新東科学株式会社「HEIDON TRIBOGEAR type38」)を用いて、リヨセル製の不織布(直径12mm、ガードナー社製「トリセプタ」)に荷重50gをかけて擦る擦り試験を行った。擦る際の条件は、不織布の移動速度2000mm/min、不織布の移動距離30mm、不織布による擦り回数30往復とした。
【0273】
前記の擦り試験を行った後で、不織布によって擦られた部分における液晶硬化フィルムのヘイズを、前記のヘイズメーターを用いて測定した。
擦り試験後のヘイズから擦り試験前のヘイズの値を引き算して、ヘイズの変化量Δhaze(%)を求めた。
【0274】
〔3.接着剤耐性の評価方法〕
分子内に水酸基を含む(メタ)アクリレートモノマーである「2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート」を7部、水酸基を含まないアクリレートモノマーである「3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート」を90部、及び光重合開始剤(BASF社製「Irgacure2959」)を3部仕込み、十分に撹拌を行い、十分に脱泡を行った。これにより、紫外線硬化型の接着剤を得た。
【0275】
液晶硬化フィルムの測定波長590nmにおける面内レターデーションRe
0を、位相差計(Axometrix社製「Axoscan」;積算回数20回)を用いて測定した。
その後、液晶硬化フィルムの液晶硬化層の空気側の面に、前記の紫外線硬化型の接着剤を厚み100μm以上で塗工して、基材フィルム、液晶硬化層及び接着剤層を備える積層体を得た。
液晶硬化層に接着剤を塗工した時点から5分後、前記の積層体の測定波長590nmにおける面内レターデーションRe
1を、前記の位相差計を用いて測定した。
【0276】
得られた面内レターデーションRe
0及びRe
1から、下記の式(ii)により、面内レターデーションの変化量ΔReを計算した。
ΔRe={(Re
0−Re
1)/Re
0}×100(%) (ii)
面内レターデーションの変化量ΔReの絶対値が小さいほど、液晶硬化層の接着剤に対する耐性が優れることを示す。
【0277】
〔4.転写性の評価方法〕
液晶硬化フィルムを2cm×5cmの大きさで切り出してサンプルを得て、このサンプルの液晶硬化層の空気側の面と、樹脂フィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム」)とを、粘着剤を用いて貼り合わせた。その後、基材フィルムを剥離し、剥離した基材フィルムを観察した。
剥離した基材フィルムの全体にわたって、基材フィルムに液晶硬化層が付着していなければ、転写性を「良」と判定した。また、剥離した基材フィルムに液晶硬化層の一部が付着していれば、転写性を「不良」と判定した。
【0278】
〔5.液晶硬化層の残留モノマー割合の測定方法〕
実施例及び比較例で用いた液晶化合物を、溶媒である1,3−ジオキソランに溶解し、様々な濃度の検量線作成用の溶液を得た。これらの溶液を汎用HPLC(島津製作所社製「Prominence」)で分析し、検量線を作成した。
【0279】
液晶硬化フィルムから、液晶硬化層のみを20mg程度収集し、1.5gの1,3−ジオキソラン中に投入し、8時間整置して、残留モノマーである液晶化合物を抽出した。得られた抽出液を、孔径0.45μmのディスクフィルターで濾過した後、前記の汎用HPLCで分析した。分析結果を前記の検量線と対照することにより、抽出液中の液晶化合物の濃度を求めて、残留モノマー割合を計算した。
【0280】
HPLCの分析条件は、下記のとおりとした。
溶媒:アセトニトリル
流速:1mL/min
使用カラム: Eclipse XDB−C18(Agilent社製)
【0281】
〔6.表面元素分析による界面活性剤量の量比の測定方法〕
液晶硬化層の空気側の面におけるフッ素の含有率(%:原子数の百分率)f1を、液晶硬化フィルム自体を試料として用いて、下記の条件に従ってX線光電子分光法により、測定した。
【0282】
また、液晶硬化フィルムの液晶硬化層の空気側の面と、導電性カーボンテープとを、粘着剤を用いて貼り合わせた。その後、基材フィルムを剥離して、液晶硬化層の基材フィルム側の面を露出させた。こうして得られた導電性カーボンテープ及び液晶硬化層を備える試料を用いて、下記の条件に従ってX線光電子分光法により、液晶硬化層の基材フィルム側の面におけるフッ素の含有率(%:原子数の百分率)f2を測定した。
【0283】
システム:Kratos Analytical社製「AXIS ULTRA」
励起X線:Al Kα線
フィラメントEmission:10mA
AnodeHT:15kV
中和銃:Electron Neutralizer
中和条件 Filament Current:1.55A
Charge Balance:3.3V
Filament Bias:1.5V
分析エリア:約700μm×300μm
光電子検出角度:0°(試料面と検出器のなす角度:90°)
【0284】
その後、液晶硬化層の空気側の面におけるフッ素の含有率f1と、液晶硬化層の基材フィルム側の面におけるフッ素の含有率f2との比f1/f2を計算した。以下に説明する実施例及び比較例で使用された界面活性剤は、その分子中にフッ素原子を含む。よって、前記のフッ素の含有率f1及びf2は、液晶硬化層の面における界面活性剤の量に対応する。したがって、前記の比f1/f2が1.0より大きいことは、液晶硬化層の基材フィルム側の面での界面活性剤の量が、液晶硬化層の空気側の面での界面活性剤の量よりも、少ないことを表す。
【0285】
[製造例1.基材フィルムの製造]
熱可塑性ノルボルネン樹脂のペレット(日本ゼオン社製「ZEONOR1420R」)を90℃で5時間乾燥させた。乾燥させたペレットを押し出し機に供給し、押し出し機内で溶融させ、ポリマーパイプ及びポリマーフィルターを通し、Tダイからキャスティングドラム上にフィルム状に押し出し、冷却して、厚み60μm、幅1490mmの長尺の延伸前基材を製造した。この製造した延伸前基材を巻き取って、ロールを得た。
【0286】
前記の延伸前基材を、ロールから引き出し、テンター延伸機に供給した。そして、テンター延伸機を用いて、延伸後に得られる延伸基材の遅相軸が延伸基材の巻取方向に対して45°の角度をなすように延伸を行い、さらにフィルム幅方向の両端をトリミングし、巻き取って、幅1350mmの長尺の延伸基材を、基材フィルムとして得た。得られた基材フィルムの厚みは47μmであった。
【0287】
[実施例1]
(1.1.液晶性組成物の製造)
下記式(E1)で示す構造を有する逆波長重合性液晶化合物(E1)100重量部、界面活性剤(DIC社製「F562」)0.3重量部、及び、光重合開始剤(BASF社製「IRGACURE379EG」)3重量部を、溶媒であるシクロペンタノン146.5重量部及び1,3−ジオキソラン219.8重量部と混合して、完全に溶解させた。こうして得られた混合液を、孔径0.45μmのディスクフィルターで濾過して、液状の液晶性組成物を製造した。
【0288】
【化40】
【0289】
(液晶硬化フィルムの製造)
前記の液晶性組成物を、製造例1で製造した基材フィルム上に、ワイヤーバー(#6)を用いて塗工して、液晶性組成物の層を形成した。液晶性組成物の層を、オーブン(ヤマト科学社製「イナートオーブンDN410I」)を用いて、液晶化合物の液晶化温度以上の温度である110℃で、4分間加熱し、乾燥処理及び配向処理を行った。
【0290】
その後、コンベアUV照射装置(アイグラフィックス社製、高圧水銀ランプ、出力4kW、ランプ高さ220mm、搬送速度10m/min)を用いて、窒素雰囲気下において、液晶性組成物の層の空気側の面に紫外線を照射した。この際、紫外線の照射条件は、照射量240mJ/cm
2、照射強度265mW/cm
2とした。この照射条件は、UV照度計(アイグラフィックス社製「UVPF−A1」;受光器PD−365(365nm))を用いて測定した。紫外線を照射されたことにより、液晶性組成物の層が硬化して、基材フィルム及び液晶硬化層を備える液晶硬化フィルムが得られた。形成された液晶硬化層には、逆波長重合性液晶化合物(E1)を重合させた重合体が、ホモジニアス配向規則性を有して含まれていた。また、液晶硬化層の遅相軸の角度は、塗工に用いた基材フィルムの遅相軸と同じく、巻取方向に対して45°の角度をなしていることが確認された。
こうして得られた液晶硬化フィルムを、上述した方法によって評価した。
【0291】
また、得られた液晶硬化フィルムの液晶硬化層をガラス板に転写して、ガラス板及び液晶硬化層を備える測定用試料を得て、この測定試料を用いて液晶硬化層の面内レターデーションを測定した。その結果、測定波長450nmでの面内レターデーションRe(450)、測定波長550nmでの面内レターデーションRe(550)、及び、測定波長650nmでの面内レターデーションRe(650)がRe(450)<Re(550)<Re(650)を満たしていた。この結果から、実施例1において使用した逆波長重合性液晶化合物(E1)の複屈折Δnが、測定波長が大きくなるにつれて大きくなる特性(逆波長分散性)を有していることが確認された。
【0292】
[実施例2]
光重合開始剤の種類をBASF社製「IRGACURE907」に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、液晶硬化フィルムの製造及び評価を行った。形成された液晶硬化層には、逆波長重合性液晶化合物(E1)を重合させた重合体が、ホモジニアス配向規則性を有して含まれていた。また、液晶硬化層の遅相軸の角度は、塗工に用いた基材フィルムの遅相軸と同じく、巻取方向に対して45°の角度をなしていることが確認された。
【0293】
また、実施例1と同様にして、液晶硬化フィルムの液晶硬化層をガラス板に転写して測定用試料を作製し、この測定試料を用いて液晶硬化層の面内レターデーションを測定した。その結果、液晶硬化層の面内レターデーションは、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たしていた。
【0294】
[実施例3]
光重合開始剤の種類をBASF社製「LucirinTPO」に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、液晶硬化フィルムの製造及び評価を行った。形成された液晶硬化層には、逆波長重合性液晶化合物(E1)を重合させた重合体が、ホモジニアス配向規則性を有して含まれていた。また、液晶硬化層の遅相軸の角度は、塗工に用いた基材フィルムの遅相軸と同じく、巻取方向に対して45°の角度をなしていることが確認された。
【0295】
また、実施例1と同様にして、液晶硬化フィルムの液晶硬化層をガラス板に転写して測定用試料を作製し、この測定試料を用いて液晶硬化層の面内レターデーションを測定した。その結果、液晶硬化層の面内レターデーションは、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たしていた。
【0296】
[実施例4]
逆波長重合性液晶化合物(E1)100部の代わりに、逆波長重合性液晶化合物(E1)80部と、下記式(F1)で示す構造を有する順波長重合性液晶化合物(BASF社製「LC242」)20部とを組み合わせて用いた。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、液晶硬化フィルムの製造及び評価を行った。形成された液晶硬化層には、逆波長重合性液晶化合物(E1)及び下記式(F1)で示す構造を有する順波長重合性液晶化合物を重合させた重合体が、ホモジニアス配向規則性を有して含まれていた。また、液晶硬化層の遅相軸の角度は、塗工に用いた基材フィルムの遅相軸と同じく、巻取方向に対して45°の角度をなしていることが確認された。
【0297】
【化41】
【0298】
また、実施例1と同様にして、液晶硬化フィルムの液晶硬化層をガラス板に転写して測定用試料を作製し、この測定試料を用いて液晶硬化層の面内レターデーションを測定した。その結果、液晶硬化層の面内レターデーションは、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たしていた。
【0299】
[実施例5]
逆波長重合性液晶化合物(E1)100部の代わりに、逆波長重合性液晶化合物(E1)60部と、前記式(F1)で示す構造を有する順波長重合性液晶化合物(BASF社製「LC242」)40部とを組み合わせて用いた。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、液晶硬化フィルムの製造及び評価を行った。形成された液晶硬化層には、逆波長重合性液晶化合物(E1)及び前記式(F1)で示す構造を有する順波長重合性液晶化合物を重合させた重合体が、ホモジニアス配向規則性を有して含まれていた。また、液晶硬化層の遅相軸の角度は、塗工に用いた基材フィルムの遅相軸と同じく、巻取方向に対して45°の角度をなしていることが確認された。
【0300】
また、実施例1と同様にして、液晶硬化フィルムの液晶硬化層をガラス板に転写して測定用試料を作製し、この測定試料を用いて液晶硬化層の面内レターデーションを測定した。その結果、液晶硬化層の面内レターデーションは、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たしていた。
【0301】
[実施例6]
逆波長重合性液晶化合物(E1)100部の代わりに、逆波長重合性液晶化合物(E1)80部と、下記式(F2)で示す構造を有する順波長重合性液晶化合物(BASF社製「LC1057」)20部とを組み合わせて用いた。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、液晶硬化フィルムの製造及び評価を行った。形成された液晶硬化層には、逆波長重合性液晶化合物(E1)及び下記式(F2)で示す構造を有する順波長重合性液晶化合物を重合させた重合体が、ホモジニアス配向規則性を有して含まれていた。また、液晶硬化層の遅相軸の角度は、塗工に用いた基材フィルムの遅相軸と同じく、巻取方向に対して45°の角度をなしていることが確認された。
【0302】
【化42】
【0303】
また、実施例1と同様にして、液晶硬化フィルムの液晶硬化層をガラス板に転写して測定用試料を作製し、この測定試料を用いて液晶硬化層の面内レターデーションを測定した。その結果、液晶硬化層の面内レターデーションは、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たしていた。
【0304】
[実施例7]
逆波長重合性液晶化合物(E1)100部の代わりに、逆波長重合性液晶化合物(E1)60部と、前記式(F2)で示す構造を有する順波長重合性液晶化合物(BASF社製「LC1057」)40部とを組み合わせて用いた。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、液晶硬化フィルムの製造及び評価を行った。形成された液晶硬化層には、逆波長重合性液晶化合物(E1)及び前記式(F2)で示す構造を有する順波長重合性液晶化合物を重合させた重合体が、ホモジニアス配向規則性を有して含まれていた。また、液晶硬化層の遅相軸の角度は、塗工に用いた基材フィルムの遅相軸と同じく、巻取方向に対して45°の角度をなしていることが確認された。
【0305】
また、実施例1と同様にして、液晶硬化フィルムの液晶硬化層をガラス板に転写して測定用試料を作製し、この測定試料を用いて液晶硬化層の面内レターデーションを測定した。その結果、液晶硬化層の面内レターデーションは、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たしていた。
【0306】
[比較例1]
液晶性組成物の層への紫外線の照射を、液晶性組成物の層の空気側の面にではなく、基材フィルムを通して行った。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、液晶硬化フィルムの製造及び評価を行った。
【0307】
[結果]
上述した実施例及び比較例の構成を表1に示し、その結果を表2に示す。
【0308】
【表1】
【0309】
【表2】
【0310】
[検討]
表2から分かるように、X(S)/X(A)が式(i)を満たす実施例1〜7においては、Δhazeが小さく、耐傷付き性を改善できている。また、実施例1〜7においては、ΔReの絶対値が小さいことから、得られた液晶硬化層が、優れた接着剤耐性を有していることが分かる。