特許第6844685号(P6844685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6844685先供給型アンダーフィル材及びその硬化物、並びに電子部品装置及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6844685
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】先供給型アンダーフィル材及びその硬化物、並びに電子部品装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20210308BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20210308BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20210308BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20210308BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   H01L23/30 R
   C08F290/06
   H01L21/56 R
   H01L21/60 311S
【請求項の数】9
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2019-237276(P2019-237276)
(22)【出願日】2019年12月26日
(62)【分割の表示】特願2015-249383(P2015-249383)の分割
【原出願日】2015年12月22日
(65)【公開番号】特開2020-57815(P2020-57815A)
(43)【公開日】2020年4月9日
【審査請求日】2020年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 英俊
(72)【発明者】
【氏名】増田 智也
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−079215(JP,A)
【文献】 特表2015−503220(JP,A)
【文献】 特開2015−032639(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/141347(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0242757(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0088543(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
C08F 290/06
H01L 21/56
H01L 21/60
H01L 23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ラジカル重合性化合物と、(B)ラジカル重合開始剤と、(C)下記一般式(I)で表されるシラン化合物と、カップリング剤で処理された無機充填材と、を含む、先供給型アンダーフィル材。
【化1】

〔一般式(I)において、R、R及びRはそれぞれ独立にメトキシ基であり、Rはビニル基、グリシジル基、グリシジルオキシ基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基又はメタクリロイルオキシ基であり、nは4〜9である。〕
【請求項2】
前記無機充填材はシリカである、請求項1に記載の先供給型アンダーフィル材。
【請求項3】
前記カップリング剤は不飽和二重結合を有する、請求項1又は請求項2に記載の先供給型アンダーフィル材。
【請求項4】
前記カップリング剤は下記一般式(V)で表される基を有する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の先供給型アンダーフィル材。
【化2】

一般式(V)中、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を示し、Rは炭素数1〜30のアルキレン基を示す。
【請求項5】
さらに可とう剤を含む、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の先供給型アンダーフィル材。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の先供給型アンダーフィル材の硬化物。
【請求項7】
請求項6に記載の先供給型アンダーフィル材の硬化物を含む、電子部品装置。
【請求項8】
電子部品と、前記電子部品と対向して配置され、前記電子部品に接合部を介して電気的に接合される配線基板と、を有し、前記先供給型アンダーフィル材の硬化物は、前記電子部品と前記配線基板との間に配置される、請求項7に記載の電子部品装置。
【請求項9】
電子部品と配線基板とを接合部を介して電気的に接合することで電子部品装置を製造する電子部品装置の製造方法であり、
前記電子部品における前記配線基板と対向する側の面又は、前記配線基板における前記電子部品と対向する側の面の少なくとも一方の面に、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の先供給型アンダーフィル材を供給する供給工程と、
前記電子部品と前記配線基板とを接合部を介して接合し、かつ前記先供給型アンダーフィル材を硬化する接合工程と、を含む、電子部品装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先供給型アンダーフィル材及びその硬化物、並びに電子部品装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランジスタ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integration)等の電子部品装置の素子を封止する技術としては、生産性、コスト等の面から樹脂による封止が主流であり、これに用いる樹脂としてエポキシ樹脂が広く用いられている。これは、エポキシ樹脂は、作業性、成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性のバランスがとれているためである。
【0003】
COB(Chip on Board)、COG(Chip on Glass)、TCP(Tape Carrier Package)等のベアチップ実装した電子部品装置においては、室温で液状のエポキシ樹脂組成物が広く使用されている。また、セラミック、ガラス/エポキシ樹脂、ガラス/イミド樹脂、ポリイミドフィルム等を基板とする配線基板上に、半導体素子を直接バンプ接続してなる電子部品装置(フリップチップ)においても、バンプ接続した半導体素子と配線基板との間の空隙(ギャップ)を充填するアンダーフィル材として、室温で液状のエポキシ樹脂組成物が使用されている。
【0004】
ベアチップ実装は回路形成面が充分に保護されていないため、水分及びイオン性不純物が浸入し易い。また、フリップチップ実装では、半導体素子と配線基板とでそれぞれ熱膨張係数が異なることから、接続部に熱応力が発生し易い。そのため、エポキシ樹脂組成物は、温度、湿度又は機械的な外力から電子部品を保護するために重要な役割を果たしている。
【0005】
アンダーフィル材としては、エポキシ樹脂を硬化性成分として含有するものが知られている。例えば、エポキシ樹脂の硬化促進剤としてイミダゾール化合物を使用するエポキシ樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)、エポキシ樹脂の硬化促進剤としてイミダゾール化合物の周囲を熱硬化性樹脂による被膜で被覆して得られる微細球粒子又はアミンアダクト粒子の少なくとも一方を使用するエポキシ樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)が報告されている。
【0006】
アンダーフィル材の充填方式としては、リフロー等の方法で半導体素子と配線基板とを金属接合させた後に、半導体素子と配線基板との間の空隙(ギャップ)に、毛細管現象を利用して、室温で液状のエポキシ樹脂組成物を浸透させるキャピラリーアンダーフィル方式(後供給方式)が一般的である。この方式では、ギャップが狭くなると充填が不充分となりやすく、ボイドが発生しやすくなるおそれがある。その結果、半導体素子と配線基板とを接合させた後に、冷却時の体積変化により応力が生じ、接合部が破壊されやすくなることが懸念されている。
【0007】
そこで、半導体素子と配線基板との接合の前に、液体又は固体(フィルム状等)のアンダーフィル材を配線基板上に供給し、金属バンプを有する半導体素子を熱圧着して、半導体素子と配線基板との接合とアンダーフィル材の硬化反応とを一括して行う先供給方式が考案されている。先供給方式は、接合とともにアンダーフィル材が硬化し、すぐさま接合部が保護されるため、狭ピッチ化への対応がしやすいという特長がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平7−53794号公報
【特許文献2】特許第3446730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先供給型アンダーフィル材として従来のエポキシ樹脂組成物を用いようとすると、次の課題がある。
エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と硬化触媒及び硬化剤の少なくとも一方とを含有し、熱を加えることによってエポキシ基の開環重合反応が起こり高分子量化する。そのため、エポキシ樹脂組成物は硬化するまでには多少の時間を要する。特に、先供給方式の場合は、50℃〜100℃程度の中温領域のホットプレートで加熱された配線基板又は電子部品に、アンダーフィル材が供給される。そのため、硬化するまでに時間がかかると、配線基板、電子部品等の上に付着する水分、揮発性の化合物等に起因するボイドが発生しやすい傾向がある。ボイドは剥離、クラック等の不良の原因となり、信頼性を低下させる可能性がある。
【0010】
アンダーフィル材の反応機構をエポキシ開環反応からラジカル重合反応に変更することは、アンダーフィル材の硬化速度を上げてボイドの発生を抑制するために有効な手段である。しかしながら、反応機構がラジカル重合反応であるアンダーフィル材であっても、エポキシ樹脂と同様に、中温領域での反応が徐々に進行して粘度が上昇することで巻き込みボイドが発生するおそれがある。特に、先供給方式ではパッケージ(PKG)の形態によってはアンダーフィル材がホットプレート上で長時間保持される場合がある。従って、中温領域で放置しても硬化物中のボイドの発生が抑制されるという性質が先供給型のアンダーフィル材に求められている。
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、中温領域で放置しても硬化物中のボイドの発生が抑制される先供給型アンダーフィル材及びその硬化物、並びに電子部品装置及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>(A)ラジカル重合性化合物と、(B)ラジカル重合開始剤と、(C)反応性官能基が酸素原子を介して又は酸素原子を介さずに結合している炭素数4〜9の鎖状炭化水素基がケイ素原子に結合した構造を有するシラン化合物と、を含む、先供給型アンダーフィル材。
<2>前記反応性官能基は、ビニル基、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基又はイソシアネート基である、<1>に記載の先供給型アンダーフィル材。
<3>前記シラン化合物は、下記一般式(I)で表される、<1>又は<2>に記載の先供給型アンダーフィル材。
【化1】


〔一般式(I)において、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、フェニル基又はフェノキシ基であり、Rはビニル基、グリシジル基、グリシジルオキシ基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、スチリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基又はイソシアネート基であり、nは4〜9である。〕
<4>さらに無機充填材を含む、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の先供給型アンダーフィル材。
<5>さらに可とう剤を含む、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の先供給型アンダーフィル材。
<6><1>〜<5>のいずれか1項に記載の先供給型アンダーフィル材の硬化物。
<7><6>に記載の先供給型アンダーフィル材の硬化物を含む、電子部品装置。
<8>電子部品と、前記電子部品と対向して配置され、前記電子部品に接合部を介して電気的に接合される配線基板と、を有し、前記先供給型アンダーフィル材の硬化物は、前記電子部品と前記配線基板との間に配置される、<7>に記載の電子部品装置。
<9>電子部品と配線基板とを接合部を介して電気的に接合することで電子部品装置を製造する電子部品装置の製造方法であり、
前記電子部品における前記配線基板と対向する側の面又は、前記配線基板における前記電子部品と対向する側の面の少なくとも一方の面に、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の先供給型アンダーフィル材を供給する供給工程と、
前記電子部品と前記配線基板とを接合部を介して接合し、かつ前記先供給型アンダーフィル材を硬化する接合工程と、を含む、電子部品装置の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、中温領域で放置しても硬化物中のボイドの発生が抑制される先供給型アンダーフィル材及びその硬化物、並びに電子部品装置及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】25℃で液体の先供給型アンダーフィル材を用いた電子部品装置の製造方法の工程を説明する断面図である。
図2】25℃でフィルム状の先供給型アンダーフィル材を用いた電子部品装置の製造方法の工程を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合、原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本明細書においてアンダーフィル材中の各成分の含有率は、アンダーフィル材中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、アンダーフィル材中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本明細書においてアンダーフィル材中の各成分の粒子径は、アンダーフィル材中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、アンダーフィル材中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
本明細書において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0016】
<先供給型アンダーフィル材>
本実施の形態の先供給型アンダーフィル材(以下、単にアンダーフィル材とも称する)は、(A)ラジカル重合性化合物と、(B)ラジカル重合開始剤と、(C)反応性官能基が酸素原子を介して又は酸素原子を介さずに結合している炭素数4〜9の鎖状炭化水素基がケイ素原子に結合した構造を有するシラン化合物(以下、特定シラン化合物とも称する)と、を含む。
【0017】
本実施の形態のアンダーフィル材は、反応機構がラジカル重合反応であるため、反応機構がエポキシ開環反応であるアンダーフィル材に比べて高温領域での硬化反応の速度が速い。さらに、本発明者らの検討により、アンダーフィル材が特定シラン化合物を含むことで、中温領域での硬化反応の進行が抑制されることが明らかになった。その理由は明らかではないが、特定シラン化合物はアンダーフィル材に含まれる(メタ)アクリレート化合物等のラジカル重合性化合物に対する濡れ性が高く、相溶性に優れ、熱安定性が向上することが考えられる。さらに、特定シラン化合物は長鎖アルキル基を有するために表面張力が小さく、硬化前のアンダーフィル材の表面(外気に接する部分)に集まりやすく、アンダーフィル材の表面が特定シラン化合物で被覆されたような状態になることで、中温領域で長時間放置しても硬化反応が抑制されることが考えられる。
【0018】
アンダーフィル材は、室温で液体であっても、固体であってもよい。室温で固体のアンダーフィル材としては、フィルム状のアンダーフィル材等が挙げられる。
本明細書において「室温」とは、25℃を意味する本明細書において「液体」とは流動性と粘性を示し、かつ粘性を示す尺度である粘度が25℃において0.0001Pa・s〜1000Pa・sである物質を意味する。本明細書において「粘度」とは、25℃に保たれたアンダーフィル材について、せん断粘度として、コーンプレート(直径40mm、コーン角0°)を装着した回転式のせん断粘度計を用いて、5.0s−1のせん断速度で温度25℃で測定される値と定義する。
本明細書において「室温で固体」とは、上記の「室温で液体」の定義に該当せず、かつ気体でない状態を意味する。
【0019】
室温で液体のアンダーフィル材が中温領域において反応が開始しているか否かは、中温領域(50℃〜100℃)に昇温(さらには必要に応じて所定の時間放置)する前後の粘度の変化、示差走査熱量測定(DSC)でのピークの変化(反応挙動の変化)等により確認することができる。室温で固体のアンダーフィル材の場合には、硬さの変化等により確認することができる。
以下、本発明のアンダーフィル材を構成する各成分について説明する。
【0020】
(A)ラジカル重合性化合物
アンダーフィル材は、ラジカル重合性化合物を含有する。ラジカル重合性化合物は特に制限されず、分子中に不飽和二重結合を有する化合物が好ましい。ラジカル重合性化合物としては、例えば、レドックス重合性化合物、エマルジョン乳化重合化合物及び(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。ラジカル重合性化合物は、電子部品装置への適用性、硬化速度のコントロール性、アンダーフィル材のハンドリング性等を考慮すると、(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。ラジカル重合性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
ラジカル重合性化合物として(メタ)アクリレート化合物を用いる場合、アンダーフィル材中に含有される全ラジカル重合性化合物の総量に占める(メタ)アクリレート化合物以外のその他のラジカル重合性化合物の含有率は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、実質的にその他のラジカル重合性化合物は含有されていないことが好ましい。
【0022】
ラジカル重合性化合物としての(メタ)アクリレート化合物は、特に限定されるものではなく、従来から公知の(メタ)アクリレート化合物を用いることができる。(メタ)アクリレート化合物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。2種以上の(メタ)アクリレート化合物を併用する場合の(メタ)アクリレート化合物の組み合せは、特に制限されない。ディスペンス性の観点からは、一分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を含む多官能(メタ)アクリレート化合物の少なくとも一種と、一分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を含む単官能(メタ)アクリレート化合物の少なくとも一種とを併用することが好ましい。このようにすることでアンダーフィル材が低粘度となる場合が多く、ディスペンス性が向上する傾向にある。
【0023】
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート、ポリカーボネートアクリレート、ウレタンアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリシクロデカンジメチロールジメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリメタクリレート、ポリカーボネートメタクリレート、ウレタンメタクリレート、及び下記構造式(II)で表される2官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらの中でも、下記構造式(II)で示される液状の2官能(メタ)アクリレート化合物は、室温で液状であるため、アンダーフィル材に良好な熱時流動性を付与できる点で好ましい。
【0024】
【化2】

【0025】
構造式(II)中、Rは2価の有機基を表し、R及びRは各々独立に水素原子又はメチル基を表し、m及びnは各々独立に正の数を表す。構造単位数であるm及びnは、単一の分子については整数値を示すが、複数種の分子の集合体としては平均値である有理数を示す。
で表される2価の有機基としては、炭素数が1〜5の直鎖又は分岐したアルキレン基が好ましく、添加する化合物の粘度の観点から炭素数が1〜2のアルキレン基がより好ましい。m及びnは各々独立に1〜15の数であることが好ましい。
【0026】
構造式(II)で表される2官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えば、下記構造式(III)で示される2官能(メタ)アクリレート化合物及び下記構造式(IV)で示される2官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0027】
【化3】

【0028】
構造式(III)中、R及びRは各々独立に水素原子又はメチル基を表し、m及びnは各々独立に正の数である。
【0029】
【化4】

【0030】
構造式(IV)中、R及びRは各々独立に水素原子又はメチル基を表し、m及びnは各々独立に正の数である。
【0031】
単官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル(メタ)アクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−8−イルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−9−イルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ダイマージオールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ベンゾイルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ−ト、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ−ト、テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシエチルホスフェート、(メタ)アクリロキシエチルフェニルアシッドホスフェート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート及びエチレンオキシド変性ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、イソボニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)クリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、及びネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステルが挙げられる。
【0032】
ラジカル重合性化合物として、多官能(メタ)アクリレート化合物の少なくとも一種と単官能(メタ)アクリレート化合物の少なくとも一種とを併用する場合、多官能(メタ)アクリレート化合物の合計量と単官能(メタ)アクリレート化合物の合計量の比(質量基準)が10:1〜1:2であることが好ましく、8:1〜1:1であることがより好ましく、6:1〜2:1であることが更に好ましい。
【0033】
アンダーフィル材の応力緩和性と接着力の観点からは、官能基当量が100〜1300であるラジカル重合性化合物を1種以上含むことが好ましく、官能基当量が250〜800であるラジカル重合性化合物を1種以上含むことがより好ましい。中温領域での硬化のしにくさと接着力の観点からは、官能基当量が300〜700であるラジカル重合性化合物を1種以上含むことが更に好ましい。
【0034】
一般的に、官能基当量の数値が大きいほど、硬化反応によって形成される架橋構造は疎になり応力緩和性は向上する傾向にある。一方、応力緩和性とトレードオフの関係にある熱時の接着性は、官能基当量の数値が大きいほど、低下する傾向にある。また、一分子中の官能基数が少ない場合も同様である。応力緩和性と優れた接着性を両立する観点から、ラジカル重合性化合物の一分子中の官能基数は1〜3であることが好ましく、2又は3であることがより好ましい。これにより、応力緩和に優れ、且つ優れた接着性を有するアンダーフィル材が得ることができる。
【0035】
ここで、官能基当量とは、理論分子量を官能基数で除した値又はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された1分子の重量平均分子量を不飽和二重結合の数で割ったものと定義する。その範囲に収まる分子であればその骨格は特定するものではない。官能基当量が上記の範囲内であるラジカル重合性化合物は、例えば、末端に官能基を有し、かつ、分子内に長鎖の主鎖を有する化合物、分子内に長鎖の側鎖又は枝分れした嵩高い側鎖を有する化合物等が挙げられる。官能基当量が上記数値範囲内にあるラジカル重合性化合物を用いた場合、光又は熱による硬化反応によって形成された架橋構造が疎になる傾向にある。末端に官能基を有し、かつ、分子内に長鎖の主鎖を有する化合物を用いた場合、官能基が末端にあるため反応点間が長くなり、これにより応力が緩和される傾向にある傾向にある。また、長い側鎖、嵩高い側鎖が存在することで、それらの周りに空間が生じ、密な部分と疎な部分が生じる傾向にある。これにより応力が緩和される傾向にある。このため、官能基当量が100〜1300であるラジカル重合性化合物を含むアンダーフィル材は、応力緩和性に優れ、接着力が向上する傾向にある。
【0036】
なお、本明細書において、重量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(例えば、株式会社島津製作所製、製品名「C−R4A」)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量を意味する。検量線は、標準ポリスチレンの5サンプルセット(PStQuick MP−H、PStQuick B[東ソー株式会社製、商品名])を用いて3次式で近似した。GPCの条件を、以下に示す。
【0037】
装置:(ポンプ:L−2130型[株式会社日立ハイテクノロジーズ製])、
(検出器:L−2490型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ製])、
(カラムオーブン:L−2350[株式会社日立ハイテクノロジーズ製])
カラム:Gelpack GL−R440 + Gelpack GL−R450 + Gelpack GL−R400M(計3本)(日立化成株式会社製、商品名)
カラムサイズ:10.7mm(内径)×300mm
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:10mg/2mL
注入量:200μL
流量:0.05mL/分
測定温度:25℃
【0038】
官能基当量が250g/eq〜1300g/eqである(メタ)アクリレート化合物は、官能基当量が250未満である(メタ)アクリレート化合物と併用することが好ましい。例えば、官能基当量が250〜1300の(メタ)アクリレート化合物A1と、官能基当量が250未満の(メタ)アクリレート化合物A2との質量比(A1:A2)は、5:3〜1:10であることが好ましく、5:4〜1:9であることがより好ましく、1:1〜1:8が更に好ましい。
【0039】
(B)ラジカル重合開始剤
アンダーフィル材は、ラジカル重合開始剤を含有する。ラジカル重合開始剤は特に限定されず、従来から公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、後述する有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル、アゾジベンゾイル等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、及び、過硫酸アンモニウム等の水溶性触媒と過酸化物の組み合わせ又は過硫酸塩と還元剤の組み合わせによるレドックス触媒が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも保管安定性の観点から、有機過酸化物を少なくとも一種含むことが好ましい。
【0040】
有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール;p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−へキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−へキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノネート等のパーオキシエステルが挙げられる。
【0041】
これらの中でも、特に中温領域での温度安定性の観点から有機過酸化物内にフェニル基を有するジアルキルパーオキサイド等が好ましく、ジクミルパーオキサイド及びジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンがより好ましい。
【0042】
アンダーフィル材中のラジカル重合開始剤の含有量は、特に制限されない。例えば、ラジカル重合開始剤の含有量は、全ラジカル重合性化合物の100質量部に対して0.1質量部〜20質量部であることが好ましく、硬化性の観点から0.5質量部〜10質量部であることがより好ましい。ラジカル重合開始剤の含有量が全ラジカル重合性化合物の100質量部に対して20質量部以下であると、揮発分が発生しにくく硬化物中のボイドの発生が抑制される傾向にある。また、ラジカル重合開始剤の含有量が全ラジカル重合性化合物の100質量部に対して0.3質量部以上であると、硬化性が向上する傾向にある。
【0043】
ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度は、90℃〜150℃が好ましく、硬化性の観点から100℃〜140℃がより好ましい。ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度が90℃以上であれば、アンダーフィル材を供給した状態の基板を中温領域(例えば、ホットプレートのステージ上)で放置しても、アンダーフィル材の硬化反応の開始が抑制される傾向にある。ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度が150℃以下であれば、高温領域(電子部品と配線基板とを接合部を介して接合する温度)でのアンダーフィル材の硬化速度が速くなる傾向にある。その結果、ボイドの発生が抑制される傾向にある。
【0044】
ラジカル重合開始剤の半減期温度は、下記式により算出される値(℃)である。半減期温度は市販品のカタログに記載されているので、それを参照してもよい。
【0045】
【数1】

【0046】
τ:半減期、C:定数、Ea:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度
【0047】
10時間半減期の場合、半分の濃度になるτ(時間因子)が50%になる絶対温度を計算によって求めることができる。濃度の測定方法は、ヨード滴定法を用いて測定を行う。
【0048】
(C)特定シラン化合物
特定シラン化合物は、反応性官能基が酸素原子を介して又は酸素原子を介さずに結合している炭素数が4〜9の鎖状炭化水素基がケイ素原子に結合した構造を有する。炭素数4〜9の鎖状炭化水素基の炭素数は、5〜9であることが好ましく、6〜8であることがより好ましい。特定シラン化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0049】
特定シラン化合物において、反応性官能基は特に制限されない。例えば、ビニル基、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基及びイソシアネート基が挙げられる。用いる樹脂との相溶性の観点からはビニル基、グリシジル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基が好ましい。
【0050】
特定シラン化合物において、炭素数4〜9の鎖状炭化水素基は分岐していてもよく、不飽和結合を含んでいてもよい。また、反応性官能基は1つでも複数であってもよく、反応性官能基以外に置換基を有していてもよい。なお、炭素数4〜9の鎖状炭化水素基が分岐している又は置換基を有している場合は、当該鎖状炭化水素基の炭素数には、分岐又は置換基に含まれる炭素原子の数は含まないものとする。
炭素数4〜9の鎖状炭化水素基は、末端にのみ1つの反応性官能基が酸素原子を介して又は酸素原子を介さずに結合していることが好ましい。また、炭素数4〜9の鎖状炭化水素基は分岐しておらず、不飽和結合を含んでおらず、反応性官能基以外に置換基を有していないことが好ましい。
【0051】
特定シラン化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0052】
【化5】

【0053】
一般式(I)において、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、フェニル基又はフェノキシ基であり、Rはそれぞれ独立にビニル基、グリシジル基、グリシジルオキシ基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基又はメタクリロイルオキシ基、スチリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基又はイソシアネート基であり、nは4〜9である。nは5〜9であることが好ましく、6〜8であることがより好ましい。
【0054】
一般式(I)において、R、R及びRのうち少なくとも1つがメトキシ基、エトキシ基又はフェノキシ基であることが好ましく、R、R及びRのうち少なくとも2つがメトキシ基、エトキシ基又はフェノキシ基であることがより好ましく、R、R及びRの全てがメトキシ基、エトキシ基又はフェノキシ基であることが更に好ましい。
【0055】
特定シラン化合物は合成しても、市販されているものを用いてもよい。市販されている特定シラン化合物としては、例えば、信越化学工業株式会社製のシランカップリング剤であるKBM−1063(5−ヘキセニルトリメトキシシラン)、KBM−1083(7−オクテニルトリメトキシシラン)、KBM−4803(8−グリシドキシオクチルトリメトキシシラン)及びKBM−5803(8−メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン)が挙げられる。
【0056】
特定シラン化合物の含有率は、アンダーフィル材の総量中に0.15質量%〜3.0質量%であることが好ましく、0.25質量%〜2.0質量%であることがより好ましい。特定シラン化合物の含有率がアンダーフィル材の総量中に0.25質量%以上であると、特定シラン化合物の含有により得られる中温領域における硬化反応の抑制効果が充分に得られる傾向にある。特定シラン化合物の含有率がアンダーフィル材の総量中に3.0質量%以下であると、アンダーフィル材の粘度の上昇が抑制され、成形性が充分に維持される傾向にある。
【0057】
(任意成分)
アンダーフィル材は、ラジカル重合性化合物、ラジカル重合開始剤及び特定シラン化合物以外の成分を必要に応じて含有してもよい。以下、アンダーフィル材に含まれてもよい任意成分について説明する。
【0058】
(無機充填材)
アンダーフィル材は、無機充填材を含有してもよい。無機充填材の種類は特に制限されない。例えば、球状シリカ、結晶シリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、クレー、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミニウム、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛及びモリブデン酸亜鉛が挙げられる。無機充填材の状態は特に制限されず、粒子、粉体、これらを球形化したビーズ、ガラス繊維等が挙げられる。アンダーフィル材の微細間隙への流動性及び浸透性の観点からは、球状シリカが好ましい。無機充填材は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。無機充填材を2種以上併用する場合には、例えば、同じ成分で平均粒子径が異なる無機充填材を2種類以上用いる場合、平均粒子径が同じで成分の異なる無機充填材を2種類以上用いる場合並びに平均粒子径及び種類の異なる無機充填材を2種類以上用いる場合が挙げられる。
【0059】
無機充填材は、中温領域での反応抑制効果の観点から、カップリング剤で処理されていることが好ましい。カップリング剤としては、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン化合物、チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、及びアルミニウムジルコニウム化合物が挙げられる。これらの中でも、不飽和二重結合を有するカップリング剤が好ましく、アクリロイルオキシ基又はα置換アクリロイルオキシ基を有するカップリング剤がより好ましく、下記一般式(V)で表される基を有するカップリング剤が更に好ましい。
【0060】
【化6】

【0061】
一般式(V)中、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を示し、Rは炭素数1〜30のアルキレン基を示す。Rで表されるアルキレン基の炭素数は、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましい。
【0062】
で表される炭素数1〜30のアルキレン基としては、例えば、炭素数が1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜30の脂環式炭化水素基、及び脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基の組み合わせであって全体の炭素数が30以下であるものが挙げられる。Rで表されるアルキレン基は、分岐していてもよく、二重結合を含んでいてもよく、置換基を有していてもよい。なお、Rで表されるアルキル基が置換基を有している場合は、当該アルキル基の炭素数には、置換基に含まれる炭素原子の数は含まないものとする。Rで表されるアルキル基が分岐している場合は、当該アルキル基の炭素数には、分岐に含まれる炭素原子の数は含めるものとする。
【0063】
炭素数が1〜30の脂肪族炭化水素基として具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、sec−ブチレン基、t−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基及びドデシレン基が挙げられる。
【0064】
炭素数が3〜30の脂環式炭化水素基として具体的には、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロペンテニレン基、シクロヘキセニレン基が挙げられる。
【0065】
で表されるアルキレン基が置換基を有する場合の置換基としては、例えば、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のアリール基、炭素数1〜15のアリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、及びイソシアネート基が挙げられる。なお、Rで表されるアルキレン基が置換基を有する場合、当該アルキレン基の炭素数には、置換基に含まれる炭素数は含まれないものとする。
【0066】
一般式(V)で表される基を有するカップリング剤は、下記一般式(VI)で表される化合物であることが好ましい。
【0067】
【化7】

【0068】
一般式(VI)におけるR及びRは、一般式(V)におけるR及びRとそれぞれ同義である。Rは、各々独立に炭素数1〜30のアルキル基を表し、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜5のアルキル基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることが更に好ましい。
【0069】
で表される炭素数1〜30のアルキル基としては、例えば、炭素数が1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜30の脂環式炭化水素基、及び脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基の組み合わせであって全体の炭素数が30以下であるものが挙げられる。炭素数1〜30のアルキル基は、分岐していてもよく、二重結合を含んでいてもよく、置換基を有していてもよい。なお、Rで表されるアルキル基が置換基を有している場合は、当該アルキル基の炭素数には、置換基に含まれる炭素原子の数は含まないものとする。Rで表されるアルキル基が分岐している場合は、当該アルキル基の炭素数には、分岐に含まれる炭素原子の数は含めるものとする。
【0070】
カップリング剤で表面処理した無機充填材を用いる場合は、予め表面処理した無機充填材をその他の成分と混合してもよく(前処理方式)、表面処理していない無機充填材と、カップリング剤と、その他の成分とを混合することで表面処理を行ってもよい(別添加方式)。中温領域における反応の開始を抑制する観点からは、他の成分と混合する前に予め表面処理した無機充填材を用いることが好ましい。
【0071】
無機充填材をカップリング剤で表面処理する場合のカップリング剤の量は、無機充填材に対して質量比率で0.05質量%〜5質量%であることが好ましく、0.1質量%〜2.5質量%であることがより好ましい。カップリング剤の量が無機充填材に対して質量比率で0.05質量%以上であると、電子部品の構成部材との接着性が向上する傾向にあり、5質量%以下であると、成形性、ボイド性及び中温領域での耐熱性が向上する傾向にある。
【0072】
無機充填材の平均粒子径は、特に制限されない。例えば、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが更に好ましい。また、無機充填材の平均粒子径は0.1μm以上であることが好ましい。無機充填材の平均粒子径が5μm以下であれば、アンダーフィル材の微細間隙への浸透性及び流動性が向上して、ボイド及び未充填を起こしにくくなり、且つ半導体素子と配線基板との接続部に無機充填材が噛み込みにくくなり、接続不良が発生しにくくなる傾向にある。
【0073】
本明細書において、無機充填材の平均粒子径は、下記の方法を用いて粒子径を階級、体積を度数とし、度数の累積で表記された積算分布において、積算分布が50%となる粒子径を意味する。粒子の粒子径を測定する方法としては、例えば、レーザー回折、動的光散乱、小角X線散乱等の装置を用いて一括して多数の粒子を測定する方法、及び電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等を用いて画像化し、粒子1つ1つの粒子径を測定する方法が挙げられる。液相遠心沈降、フィールドフロー分別、粒子径排除クロマトグラフィー、流体力学クロマトグラフィー等の方法を用い、粒子を測定する前に100μm以上の粒子を分離する前処理を行ってもよい。また測定試料が硬化物である場合は、例えば、マッフル炉等で800℃以上の高温で処理した後に残渣として得られる灰分を上記の方法で測定することができる。
【0074】
無機充填材の最大粒子径は、特に制限されない。例えば、圧着する電子部品における半導体素子の隙間の大きさの観点からは、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。無機充填材の最大粒子径が20μm以下であると、アンダーフィル材の微細間隙への浸透性及び流動性が向上して、ボイド及び未充填を起こしにくくなり、且つ電子部品と配線基板との接続部に無機充填材が噛み込みにくくなり、接続不良が発生しにくくなる傾向にある。
【0075】
無機充填材の最大粒子径を測定する方法としては、例えば、レーザー回折、動的光散乱、小角X線散乱等の装置を用いて一括して多数の粒子を測定する方法、及び電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等を用いて画像化し、粒子1つ1つの粒径を測定する方法が挙げられる。
【0076】
アンダーフィル材中の無機充填材の含有率は、特に制限されない。例えば、アンダーフィル材の総質量中に20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましい。また、無機充填材の含有率は、アンダーフィル材の総質量中に70質量%以下であることが好ましい。無機充填材の含有率が20質量%以上であると、アンダーフィル材の硬化物の強度が向上し、耐温度サイクル性等の信頼性が向上する傾向にある。
【0077】
アンダーフィル材では、無機充填材以外のその他の充填材を用いてもよい。全充填材中のその他の充填材の含有率は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更に好ましく、実質、その他の無機充填材を含まないこと(0.1質量%以下)が特に好ましい。
【0078】
(重合禁止剤)
アンダーフィル材は、重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤の種類は特に制限されず、公知の重合禁止剤を用いることができる。
【0079】
アンダーフィル材が重合禁止剤を含有する場合の含有率は、特に制限されない。例えば、アンダーフィル材の総量中に0.05質量%〜1質量%であることが好ましく、0.08質量%〜0.7質量%であることがより好ましく、0.1質量%〜0.5質量%であることが更に好ましい。重合禁止剤の含有率が0.05質量%以上であると、中温領域での反応が抑制される傾向にあり、1質量%以下であると、中温領域でのラジカル重合反応が阻害されにくい傾向にある。
【0080】
(可とう剤)
本発明の先供給型アンダーフィル材は、可とう剤を含有してもよい。可とう剤の種類は特に限定されず、電子部品装置の製造用途に用いられるアンダーフィル材に、一般的に使用されているものを用いることができる。具体的には、例えば、アクリルゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴム等のゴム製品、及び低分子量のゴム用架橋剤が挙げられる。
【0081】
ゴム製品の市販品としては、例えば、根上工業株式会社製の「パラクロンRP」シリーズ、ガンツ化成株式会社製の「スタフィロイドIM」シリーズ及び「スタフィロイドAC」シリーズ、ゼオン化成株式会社製の「ゼオン」シリーズ、三菱レーヨン株式会社製の「メタブレンC/E/W/S/SX/SRX」、クラレ株式会社製の「LA」シリーズ、及びアルケマ株式会社製の「ナノストレングス」シリーズのD51N等が挙げられる。
【0082】
低分子量のゴム用架橋剤の市販品としては、例えば、SARTOMER株式会社製の「Ricon」シリーズ、出光株式会社製の「poly bd」シリーズ、「poly ip」シリーズ、「エポール」シリーズ及び「KRASOL」、日本曹達株式会社製の「NISSO−PB」等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0083】
アンダーフィル材が可とう剤を含有する場合の含有率は、特に制限されない。例えば、アンダーフィル材の総量中に1質量%〜30質量%であることが好ましく、1.5質量%〜25質量%であることがより好ましく、2質量%〜20質量%であることが更に好ましい。可とう剤の含有率が1質量%以上であると、低応力化に優れる傾向にあり、30質量%以下であると、ディスペンス性に優れる傾向にある。
【0084】
(揺変付与剤)
アンダーフィル材が室温で液体の場合は、揺変付与剤を含有してもよい。室温で液体のアンダーフィル材に揺変付与剤を含有することによって、ボイドの発生が抑制される傾向にある。すなわち、アンダーフィル材が基板上に供給された状態で形状を保持できずに流動してしまうとボイドを巻き込みやすくなるが、揺変付与剤を含有することによって、アンダーフィル材が流動しにくくなり、ボイドが発生しにくくなる傾向にある。
【0085】
揺変付与剤の種類は特に制限されず、電子部品用の有機樹脂組成物に一般的に使用されている揺変付与剤を使用できる。具体的には、例えば、ひまし油に水素を添加することにより得られる水素添加ひまし油化合物、ポリエチレンを酸化処理して極性基を導入して得られる酸化ポリエチレン化合物、植物油脂肪酸とアミンから合成されるアマイドワックス化合物、長鎖ポリアミノアマイドと酸ポリマーとの塩、不飽和ポリカルボン酸ポリマー、微粉末シリカ、及び破砕シリカが挙げられる。
【0086】
上記揺変付与剤の中でも、取扱い性、成形性及びボイドの発生の低減の観点から、長鎖ポリアミノアマイドと酸ポリマーとの塩、不飽和ポリカルボン酸ポリマー、微粉末シリカ、及び破砕シリカが好ましい。
【0087】
長鎖ポリアミノアマイドと酸ポリマーとの塩としては、例えば、ANTI−TERRA−U100(ビックケミー・ジャパン株式会社、商品名)が市販品として入手可能であり、不飽和ポリカルボン酸ポリマーとしては、例えば、BYK−P105(ビックケミー・ジャパン株式会社、商品名)が市販品として入手可能である。
【0088】
揺変付与剤としての微粉末シリカは、平均一次粒子径が5nm〜200nmであることが好ましく、5nm〜50nmであることがより好ましい。また、表面をシリコーンオイル又はカップリング剤で処理したものを用いてもよい。微粉末シリカとしては、例えば、平均一次粒子径が12nmで、ジメチルシランで表面処理したR974(日本アエロジル株式会社、商品名)、平均一次粒子径が12nmで、トリメチルシランで表面処理したRX200(日本アエロジル株式会社、商品名)、平均一次粒子径が12nmで、ジメチルシロキサンで表面処理したRY200(日本アエロジル株式会社、商品名)、平均一次粒子径が14nmで、ジメチルシロキサンで表面処理したR202(日本アエロジル株式会社、商品名)、平均一次粒子径が12nmで、アミノシランで表面処理したRA200H(日本アエロジル株式会社、商品名)、平均一次粒子径が12nmで、アルキルシランで表面処理したR805(日本アエロジル株式会社、商品名)、平均一次粒子径が12nmで、メタクリロキシシランで表面処理したR7200(日本アエロジル株式会社、商品名)、及び平均一次粒子径が50nmで、フェニルシランで表面処理したYA050C−SP3(アドマテックス株式会社、商品名)が市販品として入手可能である。
【0089】
揺変付与剤としての破砕シリカは、平均粒子径が10nm以下であることが好ましく、7.5nm以下であることがより好ましく、5.5nm以下であることが更に好ましい。また、樹脂内部への分散性及び破砕シリカ自身の凝集性の観点から、破砕シリカの平均粒子径は4.5nm以上であることが好ましい。破砕シリカの表面をシリコーンオイル又はカップリング剤で処理したものを用いてもよい。破砕シリカとしては、例えば、MC3000(アドマテックス株式会社、商品名)が市販品として入手可能である。
【0090】
(高分子成分)
アンダーフィル材が25℃で固体の場合、高分子成分を含有してもよい。高分子成分の種類は特に制限されず、電子部品用の有機樹脂組成物に一般的に使用される高分子成分を使用できる。高分子成分としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂及びアクリルゴムが挙げられる。これらの中でも耐熱性及びフィルム形成性に優れる観点から、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリルゴム、シアネートエステル樹脂及びポリカルボジイミド樹脂が好ましく、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びアクリルゴムがより好ましい。これらの高分子成分は1種単独で又は2種以上の混合物又は共重合体として使用することもできる。高分子成分は市販品を用いてもよく、合成したものを用いてもよい。
【0091】
ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。より具体的には、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モル程度混合し(各成分の添加順序は任意)、反応温度を80℃以下、好ましくは0℃〜60℃に設定して付加反応させる。なお、アンダーフィル材の諸特性の低下を抑えるため、テトラカルボン酸二無水物は無水酢酸で再結晶精製処理されていることが好ましい。
【0092】
高分子成分のガラス転移温度(Tg)は、アンダーフィル材の貼付性に優れる観点から、100℃以下であることが好ましく、85℃以下であることがより好ましい。Tgが100℃以下である場合には、電子部品に形成されたバンプ、配線基板に形成された電極、配線パターン等の凹凸をアンダーフィル材により埋め込み易くなり、気泡が残存しにくくボイドが発生しにくい傾向がある。上記Tgは、示差走査熱量測定装置(DSC)(例えば、パーキンエルマー社、DSC−7型)を用いて、サンプル量10mg、昇温速度10℃/分、測定雰囲気:空気の条件で測定したときの値である。
【0093】
フィルム形成性の向上の観点からは、高分子成分の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で10000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましく、40000以上であることが更に好ましく、50000以上であることが特に好ましい。重量平均分子量が10000以上であると、フィルム形成性及び耐熱性が向上する傾向がある。
【0094】
高分子成分の含有量は特に制限されないが、アンダーフィル材の形状(フィルム状等)を良好に保持する観点から、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、高分子成分を含有する場合、1質量部〜500質量部であることが好ましく、5質量部〜300質量部であることがより好ましく、10質量部〜200質量部であることが更に好ましい。高分子成分の含有量が1質量部以上であると、フィルム形成性の向上効果が得られ易い傾向があり、500質量部以下であると、アンダーフィル材の硬化性が向上し、接着力が向上する傾向がある。
【0095】
(フラックス剤)
アンダーフィル材は、フラックス剤を含有してもよい。フラックス剤の種類は特に制限されず、従来から用いられてきたハロゲン化水素酸アミン塩等を用いることができる。電気特性の観点からは、例えば、ヒドロキシ安息香酸等のフェノール性水酸基とカルボキシル基を有する化合物、トリメリット酸等のカルボキシ基を含む酸無水物、アビエチン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、クエン酸、2−フランカルボン酸、リンゴ酸等の有機酸、1分子にアルコール性水酸基を2個以上含有する化合物、金属スルホン酸塩、金属カルボニル酸塩等の有機酸塩、及びキノリノール誘導体が好ましいフラックス剤として挙げられる。より好ましくは、有機酸又は有機酸塩が挙げられる。フラックス剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0096】
アンダーフィル材がフラックス剤を含有する場合、その含有率は特に制限されない。例えば、アンダーフィル材の総質量中、0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.5質量%〜5質量%であることがより好ましい。フラックス剤の含有率が0.1質量%以上であると、はんだの濡れ性が十分であり接続抵抗が低くなる傾向がある。フラックス剤の含有率が10質量%以下であると、ボイドが発生しにくくなり、耐マイグレーション性等の信頼性が向上する傾向がある。
【0097】
(イオントラップ剤)
アンダーフィル材は、耐湿性及び高温放置特性をより向上させる観点から、必要に応じてイオントラップ剤を含有してもよい。イオントラップ剤の種類は特に制限されず、電子部品用の有機樹脂組成物に一般的に使用されているイオントラップ剤を用いることができる。具体的には、例えば、下記一般式(VII)又は(VIII)で表される化合物が挙げられる。
【0098】
Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO ・・・(VII)
BiO(OH)(NO ・・・(VIII)
【0099】
一般式(VII)中、xは0<x≦0.5であり、mは正数である。
一般式(VIII)中、xは0.9≦x≦1.1、yは0.6≦y≦0.8、zは0.2≦z≦0.4である。
【0100】
上記のイオントラップ剤は市販品として入手可能である。例えば、上記一般式(VII)の化合物は、協和化学工業株式会社のDHT−4A(商品名)として入手可能である。また、上記一般式(VIII)の化合物は、東亞合成株式会社のIXE500(商品名)として入手可能である。
【0101】
上記以外のイオントラップ剤としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及びアンチモンから選択される元素の含水酸化物が挙げられる。イオントラップ剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0102】
アンダーフィル材がイオントラップ剤を含有する場合、その含有率は、アンダーフィル剤に含まれるラジカル重合性化合物の全量に対して、0.1質量%〜5.0質量%であることが好ましく、1.0質量%〜3.0質量%であることがより好ましい。また、イオントラップ剤の平均粒子径は0.1μm〜3.0μmであることが好ましく、最大粒径は10μm以下であることが好ましい。
【0103】
イオントラップ剤の平均粒子径及び最大粒子径は、上述した無機充填材と同様の方法を用いて測定される。
【0104】
(界面活性剤)
アンダーフィル材は、室温で液体の場合、フィレット性をより向上させる観点から、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤の種類は特に制限されず、電子部品用の有機樹脂組成物に一般的に使用されている界面活性剤を使用できる。界面活性剤としては、例えば非イオン性の界面活性剤が挙げられる。非イオン性の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアミン界面活性剤、アルキルアルカノールアミド界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤、アラルキル変性シリコーン界面活性剤、ポリエステル変性シリコーン界面活性剤、及びポリアクリル界面活性剤が挙げられる。アンダーフィル材の表面張力低減の観点からは、ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤及びアラルキル変性シリコーン界面活性剤が好ましい。
【0105】
界面活性剤は、例えば、BYK−307、BYK−333、BYK−377及びBYK−323(ビックケミー・ジャパン株式会社、商品名)が市販品として入手可能である。
【0106】
上記の界面活性剤のほか、シリコーン変性エポキシ樹脂を界面活性剤として用いることもできる。シリコーン変性エポキシ樹脂は、エポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンとエポキシ樹脂との反応物として得ることができる。シリコーン変性エポキシ樹脂は、室温で液状であることが好ましい。エポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンとしては、例えば、アミノ基、カルボキシ基、水酸基、フェノール性水酸基、メルカプト基等を1分子中に少なくとも1個有するジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン及びメチルフェニルシロキサンが挙げられる。これらのオルガノシロキサンは、例えば、BY16−799、BY16−871及びBY16−004(東レ・ダウコーニング株式会社、商品名)、並びにX−22−1821及びKF−8010(信越化学工業株式会社、商品名)が市販品として入手可能である。
【0107】
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したオルガノシロキサンの重量平均分子量は、500〜5000の範囲であることが好ましく、1000〜3000の範囲であることがより好ましい。重量平均分子量が500以上であると、樹脂との相溶性が過剰に向上することが抑制され、添加剤としての効果がより発揮されやすい傾向にある。重量平均分子量が5000以下であると、樹脂との相溶性の低下が抑えられ、シリコーン変性エポキシ樹脂の硬化物からの分離及び染み出しが発生しにくく、接着性及び外観が損なわれにくい傾向にある。
【0108】
シリコーン変性エポキシ樹脂を得るために用いるエポキシ樹脂は、アンダーフィル材に相溶するものであれば特に制限されず、電子部品用の有機樹脂組成物に一般的に使用されているエポキシ樹脂を用いることができる。具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ナフタレンジオール、水添ビスフェノールA等とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の、フェノール化合物とアルデヒド化合物とを縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂;フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;並びにオレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる、線状脂肪族エポキシ樹脂及び脂環族エポキシ樹脂が挙げられる。これらの一種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。シリコーン変性エポキシ樹脂を得るために用いるエポキシ樹脂は、室温で液状のものが好ましい。
【0109】
(特定シラン化合物以外のシラン化合物)
アンダーフィル材は、特定シラン化合物以外のシラン化合物を含んでいてもよい。このようなシラン化合物としては、例えば、シランカップリング剤として市販されているシラン化合物のうち特定シラン化合物に該当しないものが挙げられる。
【0110】
シランカップリング剤としては、例えば、アミノシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、ウレイドシランカップリング剤、イソシアネートシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤、アクリルシランカップリング剤、メタクリルシランカップリング剤及びケチミンシランカップリング剤が挙げられ、イソシアネートシランカップリング剤、アクリルシランカップリング剤、メタクリルシランシランカップリング剤及びエポキシシランカップリング剤が好ましい。これらのシランカップリング剤は、東レ・ダウコーニング株式会社、信越化学工業株式会社、マツモトファインケミカル株式会社、東京化成工業株式会社等から購入することができる。
【0111】
アンダーフィル材がシランカップリング剤を含有する場合、その含有率は特に制限されない。例えば、特定シランカップリング剤とその他のシランカップリング剤の合計の含有率を、アンダーフィル材の総量中に0質量%〜10質量%とすることができ、0質量%〜5質量%であることが好ましい。上記含有率が10質量%以下であると、実装時の熱によってシランカップリング剤が気化しにくく、ボイドが発生しにくい傾向にある。
【0112】
(その他の成分)
アンダーフィル材は、その他の添加剤として、染料、カーボンブラック等の着色剤、希釈剤などを必要に応じて使用することができる。
【0113】
(物性)
アンダーフィル材の揺変指数は、1.0以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることが更に好ましい。
【0114】
アンダーフィル材の揺変指数は、25℃に保たれたアンダーフィル材について、レオメーターを用いて粘度を測定したときの(0.5s−1のせん断速度での粘度)/(5.0s−1のせん断速度での粘度)の値とする。0.5s−1のせん断速度での粘度及び5.0s−1のせん断速度での粘度は、コーンプレート(直径40mm、コーン角0°)を装着した回転式のせん断粘度計を用いて、温度25℃で測定した値とする。
【0115】
アンダーフィル材が25℃で液体である場合、アンダーフィル材の25℃における粘度は、10Pa・s〜150Pa・sであることが好ましく、20Pa・s〜130Pa・sであることがより好ましく、30Pa・s〜110Pa・sであることが更に好ましい。
50℃〜100℃程度の中温領域における粘度は、0.1Pa・s〜20Pa・sであることが好ましく、0.5Pa・s〜15Pa・sであることがより好ましく、1Pa・s〜10Pa・sであることが更に好ましい。
硬化の際の高温領域における粘度は、0.1Pa・s〜10Pa・sであることが好ましく、0.3Pa・s〜8Pa・sであることがより好ましく、0.5Pa・s〜5Pa・sであることが更に好ましい。
【0116】
<アンダーフィル材の製造方法>
(室温で液体のアンダーフィル材の製造方法)
室温で液体のアンダーフィル材の製造方法は、特に制限されない。例えば、所定の成分を秤量し、らいかい機、ミキシングロール、プラネタリミキサ等を用いて混合及び混練し、必要に応じて脱泡することによって、室温で液体のアンダーフィル材を製造することができる。
【0117】
(室温で固体のアンダーフィル材の製造方法)
室温で固体のアンダーフィル材の製造方法は、特に制限されない。例えば、室温で固体のアンダーフィル材がフィルム状である場合は、まず所定の成分を秤量し、撹拌混合、混錬等により溶解又は分散させて、樹脂ワニスを調製し、樹脂ワニスを離型処理を施した基材フィルム上にナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター等を用いて塗布し、加熱により有機溶媒を除去することにより製造することができる。
【0118】
樹脂ワニスの調製に用いる有機溶媒は、各成分を均一に溶解又は分散し得る特性を有するものが好ましい。例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ジオキサン、シクロヘキサノン、及び酢酸エチルが挙げられる。これらの有機溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。樹脂ワニス調製の際の撹拌混合又は混錬は、例えば、撹拌機、らいかい機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル又はホモディスパーを用いて行うことができる。
【0119】
基材フィルムとしては、有機溶媒を揮発させる際の加熱条件に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に制限はない。例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム及びポリエーテルイミドフィルムを例示できる。基材フィルムは、単層フィルムであっても、多層フィルムであってもよい。多層フィルムの場合、それぞれの層は、互いに異なる材質であってもよく、同じ材質であってもよい。
【0120】
基材フィルム上に塗布した樹脂ワニスから有機溶媒を揮発させる際の乾燥条件は、有機溶媒が充分に揮発する条件とすることが好ましい。具体的には、例えば、50℃〜200℃で0.1分間〜90分間の条件で行うことができる。
【0121】
<電子部品装置>
本実施の形態の電子部品装置は、上述した先供給型アンダーフィル材の硬化物を含む。
ある実施態様では、電子部品装置は、電子部品と、前記電子部品と対向して配置され、前記電子部品に接合部を介して電気的に接合される配線基板と、を有し、前記先供給型アンダーフィル材の硬化物が、前記電子部品と前記配線基板との間に配置された構造を有している。
【0122】
電子部品装置としては、例えば、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、リジッド及びフレキシブル配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材(配線基板)に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等の受動素子などの電子部品を搭載し、必要な部分をアンダーフィル材で封止して得られる電子部品装置等が挙げられる。
【0123】
本実施の形態のアンダーフィル材は、高い信頼性が要求されるフリップチップボンディング用のアンダーフィル材として特に好適である。従って、本実施の形態の電子部品装置の好ましい一態様は、リジッド若しくはフレキシブル配線板又はガラス板上に形成した配線に、半導体素子をバンプ接続によるフリップチップボンディングした電子部品装置である。具体的には、例えば、フリップチップBGA(Ball Grid Array)、LGA(Land Grid Array)及びCOF(Chip On Film)の電子部品装置が挙げられる。
【0124】
本実施の形態のアンダーフィル材が特に好適なフリップチップの分野としては、配線基板と電子部品の半導体素子を接続する接続部のバンプ材質がSn−Ag−Cu系等の鉛フリーはんだを用いたフリップチップ半導体素子が挙げられる。本実施の形態のアンダーフィル材を用いることで、従来の鉛はんだと比較して物性的に脆い鉛フリーはんだによるバンプ接続をしたフリップチップに対しても良好な信頼性を維持できる。
【0125】
<電子部品装置の製造方法>
本実施の形態の電子部品装置の製造方法は、電子部品と配線基板とを接合部を介して電気的に接合することで電子部品装置を製造する電子部品装置の製造方法であり、
前記電子部品における前記配線基板と対向する側の面又は、前記配線基板における前記電子部品と対向する側の面の少なくとも一方の面に、上述した先供給型アンダーフィル材を供給する供給工程と、
前記電子部品と前記配線基板とを接合部を介して接合し、かつ前記先供給型アンダーフィル材を硬化する接合工程と、を含む。
【0126】
上記方法の供給工程において、アンダーフィル材が液体である場合には、アンダーフィル材を塗布により供給する。アンダーフィル材がフィルム状である場合には、フィルム状のアンダーフィル材を貼付により供給する。また、接合工程において電子部品と配線基板との接合は、アンダーフィル材の硬化と一括して行ってもよい。
【0127】
ある実施態様では、電子部品装置の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)電子部品の配線基板と対向する側の面又は前記配線基板の前記電子部品と対向する側の面の少なくとも一方にアンダーフィル材を供給する供給工程
(2)前記電子部品と前記配線基板とを前記接続部の金属バンプを介して加圧しながら対向させることで、前記電子部品と前記配線基板との間隙をアンダーフィル材で充填し、かつ、前記電子部品と前記配線基板とを前記接続部の金属バンプを介して接触させる加圧工程
(3)前記加圧工程中及び前記加圧工程後の少なくとも一方で、前記電子部品と前記配線基板とを前記接続部の金属バンプを介して加圧して接触する状態で熱処理して前記前記電子部品と前記配線基板とを前記接続部の金属バンプを介して接合させ、かつ、アンダーフィル材を硬化する接合工程(熱処理工程)
【0128】
以下、図面を参照しながら先供給方式による電子部品装置の製造方法について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
図1は、室温で液体の先供給型アンダーフィル材を用いる先供給方式による電子部品装置の製造方法の工程を概略的に示す断面図である。なお、図1の電子部品装置の製造方法においては、配線基板の電子部品と対向する側の面に先供給型アンダーフィル材を付着させる態様について説明する。また、金属バンプは電子部品側に設けられており、当該金属バンプを介して電子部品と配線基板とが接合される。しかし、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0129】
図1において、1は半導体チップ(電子部品)、2ははんだバンプ(金属バンプ)、3は接続パッド、4はソルダーレジスト、5は配線基板、6はアンダーフィル材である。
【0130】
まず、図1(a)において、配線基板5の接続パッド3の設けられた側(配線基板5の半導体チップ1と対向する側)の面にアンダーフィル材6を付与する(供給工程)。アンダーフィル材6の付与方法としては、例えば、ディスペンス方式、注型方式及び印刷方式が挙げられる。アンダーフィル材6は、配線基板5の接続パッド3の設けられた領域の全域に付与してもよく、配線基板5の接続パッド3の設けられた領域の一部に付与してもよい。アンダーフィル材6を配線基板5の接続パッド3の設けられた領域の一部に付与することで、配線基板5と半導体チップ1とをはんだバンプ2を介して接触させる際にアンダーフィル材6が流動して配線基板5と半導体チップ1との間隙に充填されるため好ましい。アンダーフィル材6の配線基板5への付与パターンとしては、配線基板5の半導体チップ1の配置される領域の対角線に沿ったクロス形又はダブルクロス形が好ましい。
【0131】
次いで、図1(b)において、半導体チップ1と配線基板5とをはんだバンプ2を介して加圧しながら対向させることで、半導体チップ1と配線基板5との間の空隙をアンダーフィル材6で充填し、かつ、半導体チップ1と配線基板5の接続パッド3とをはんだバンプ2を介して接触させる(加圧工程)。
【0132】
半導体チップ1と配線基板5との間隙にアンダーフィル材6を充填させる際の加圧条件としては、1つのバンプあたりの加重量が0.001N〜100Nであることが好ましく、0.005N〜50Nであることがより好ましく、0.01N〜10Nであることが更に好ましい。
【0133】
また、半導体チップ1と配線基板5の接続パッド3とをはんだバンプ2を介して接触させる際の加圧条件としては、1つのバンプあたりの加重量が0.002N〜200Nであることが好ましく、0.01N〜100Nであることがより好ましく、0.02N〜20Nであることが更に好ましい。この加圧条件下において、後述の熱処理工程での半導体チップ1と配線基板5の接続パッド3とのはんだバンプ2を介した接合を実施してもよい。
【0134】
前記加圧工程中、及び前記加圧工程後の少なくとも一方で、半導体チップ1と配線基板5の接続パッド3とがはんだバンプ2を介して加圧して接触する状態で熱処理して半導体チップ1と配線基板5の接続パッド3とをはんだバンプ2を介して接合させ、かつ、アンダーフィル材6を硬化する(熱処理工程)。
【0135】
熱処理の温度は、150℃〜350℃であることが好ましく、220℃〜300℃であることがより好ましく、240℃〜270℃であることが更に好ましい。この熱処理により、アンダーフィル材6が硬化する。
【0136】
更に、必要に応じてアンダーフィル材6の硬化を充分なものとするため、120℃〜200℃の範囲で0.5時間〜6時間の熱処理を行ってもよい。
【0137】
以上の工程を経ることで、本実施の形態の電子部品装置が製造される。
【0138】
図2は、室温で固体かつフィルム状のアンダーフィル材を用いる先供給方式による電子部品装置の製造方法の工程を概略的に示す断面図である。
【0139】
まず、図2(a)に示すように、配線15を有する基板20上に、接続バンプ30を形成する位置に開口を有するソルダーレジスト60を形成する。また、ソルダーレジスト60の開口に接続バンプ30を形成する。ソルダーレジスト60は必ずしも設ける必要はないが、基板20上にソルダーレジストを設けることにより、配線15間のブリッジの発生を抑制し、接続信頼性及び絶縁信頼性を向上させることができる。ソルダーレジスト60は、例えば、市販のパッケージ用ソルダーレジスト用インキを用いて形成することができる。市販のパッケージ用ソルダーレジスト用インキとしては、具体的には、SRシリーズ(日立化成株式会社製、商品名)及びPSR4000−AUSシリーズ(太陽インキ製造株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0140】
次に、図2(b)に示すように、接続バンプ30及びソルダーレジスト60が形成された基板20上に、フィルム状のアンダーフィル材(以下、場合により「フィルム状アンダーフィル材」という。)40を貼付する。フィルム状アンダーフィル材40の貼付は、例えば、加熱プレス、ロールラミネート又は真空ラミネートによって行うことができる。フィルム状アンダーフィル材40の供給面積及び厚みは、半導体チップ(電子部品)10及び基板20のサイズ及び接続バンプ30の高さによって適宜設定される。
【0141】
フィルム状アンダーフィル材40を基板20に貼り付けた後、半導体チップ10を配線15が基板20と対向するように配置する。このとき、半導体チップ10の配線15と接続バンプ30とを、フリップチップボンダー等の接続装置を用いて、位置合わせする。続いて、半導体チップ10と基板20とを接続バンプ30の融点以上の温度で加熱しながら圧着し、図2(c)に示すように、半導体チップ10と基板20とを接続バンプ30を介して接続する。このとき、フィルム状アンダーフィル材40で半導体チップ10と基板20の間の空隙を充填する。以上により、電子部品装置600が得られる。
【0142】
本実施の形態の電子部品装置の製造方法では、位置合わせをした後に仮固定し(電子部品接着剤を介している状態)、リフロー炉で加熱処理することによって、接続バンプ30を溶融させて半導体チップ10と基板20とを接続してもよい。仮固定の段階では、金属接合を形成することが必ずしも必要ではないため、上記の加熱しながら圧着する方法に比べて低荷重、短時間及び低温度で圧着を実施できる。このため、生産性が向上するとともに、接続部の劣化が抑制される傾向にある。
【0143】
また、半導体チップ10と基板20とを接続した後、オーブン等で熱処理を行って、更に接続信頼性及び絶縁信頼性を高めてもよい。熱処理は、アンダーフィル材の硬化が進行する温度で行うことが好ましく、完全に硬化する温度で行うことがより好ましい。熱処理の温度及び時間は適宜設定でき、好適な条件は、室温で液体のアンダーフィル材の場合と同様である。
【実施例】
【0144】
次に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0145】
(アンダーフィル材の作製)
下記の成分をそれぞれ表1及び表2に示す量(単位:質量部)で配合し、三本ロール及びらいかい機にて混練分散した後、真空脱泡して、実施例及び比較例のアンダーフィル材を作製した。表中の「−」は、該当する成分を含有しないことを意味する。作製したアンダーフィル材は、いずれも25℃で液体であった。シラン化合物1〜7のうち、シラン化合物1〜4は特定シラン化合物に該当し、シラン化合物5〜7は特定シラン化合物に該当しない。
【0146】
・ラジカル重合性化合物1:A−DCP(新中村化学工業株式会社製、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、官能基当量:152g/eq)
・ラジカル重合性化合物2:ABE−300(新中村化学工業株式会社製、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、官能基当量:233g/eq)
・ラジカル重合性化合物3:UA−13(新中村化学工業株式会社製、ウレタンアクリレート、官能基当量:744g/eq)
・ラジカル重合性化合物4:HOA−MPE(N)(共栄社化学株式会社製、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、官能基当量:292g/eq)
・シラン化合物1:KBM−1063(信越化学工業株式会社製、5−ヘキセニルトリメトキシシラン)
・シラン化合物2:KBM−1083(信越化学工業株式会社製、7−オクテニルトリメトキシシラン)
・シラン化合物3:KBM-4803(信越化学工業株式会社製、8−グリシドキシオクチルトリメトキシシラン)
・シラン化合物4:KBM−5803(信越化学工業株式会社製、8−メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン)
・シラン化合物5:KBM−503(信越化学工業株式会社製、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)
・シラン化合物6:KBM−403(信越化学工業株式会社製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
・シラン化合物7:KBM−1003(信越化学工業株式会社製、ビニルトリメトキシシラン)
・ラジカル重合開始剤:Perkadox BC−FF(化薬アクゾ株式会社製、ジクミルパーオキサイド)
・可とう剤:ナノストレングス D51N(アルケマ株式会社製、変性ポリメタクリル酸メチル−ポリブチルアクリレートブロック共重合体、重量平均分子量:57000)
・重合禁止剤:SUMIRIZER GM(住友化学株式会社製、2−t−ブチル−6−(3−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート)
・フラックス剤:アジピン酸(旭化成ケミカルズ株式会社製)
・揺変付与剤:R805(日本アエロジル株式会社製、体積平均粒子径12nmの粉末シリカ)
・無機充填材:SE−2050−SMJ(株式会社アドマテックス社製、体積平均粒子径0.5μm、最大粒子径5μmでメタクリレートシランカップリング処理(3−メタクリロキシプロピル基を有するシランカップリング剤により処理)された球状シリカ)
【0147】
【表1】

【0148】
【表2】

【0149】
(評価)
実施例及び比較例で作製したアンダーフィル材を用いて電子部品装置を作製し、ボイドの発生状態を以下に示す試験によって評価した。評価結果を表3及び表4に示す。
【0150】
配線基板のチップ搭載部に、ディスペンサー(ニードル径0.3mm)を用いて、アンダーフィル材をクロス形状に塗布し、更に別のクロス形状を45°ずらして重ねるように塗布した(合計塗布量:約3mg)。次いで、70℃に加熱したホットプレートのステージ上に、アンダーフィル材を塗布した配線基板を置き、5分間、30分間、60分間又は90分間放置した。その後、配線基板上にチップを搭載し、加重:7.5N、温度/時間:260℃/5秒の条件で熱圧着を行い、その後、175℃、1時間の条件で硬化することで半導体装置を得た。
【0151】
電子部品装置の作製に用いた配線基板は、サイズが縦14mm、横14mm、厚み0.30mmであり、コア層がE−679FG(日立化成株式会社、商品名)であり、ソルダーレジストがAUS−308(太陽ホールディングス株式会社、商品名)であり、基板めっきがNi(5.0μm)、Pd(0.30μm)、Au(0.35μm)の順に積層されていた。
電子部品装置の作製に用いたチップは、サイズが縦7.3mm、横7.3mm、厚み0.15mmであり、バンプが銅(高さ30μm)とはんだ(材質:SnAg、高さ:15μm)とからなり、バンプピッチが80μmであり、バンプ数が328であった。
【0152】
作製した電子部品装置を、超音波探傷装置(AT−5500、日立建機株式会社、商品名)を用いて観察し、下記の基準に従ってボイド占有率を評価した。
A:ボイド面積が全面積の1%以下
B:ボイド面積が全面積の1%を超え5%以下
C:ボイド面積が全面積の5%を超え20%以下
D:ボイド面積が全面積の20%を超える
【0153】
【表3】

【0154】
【表4】

【0155】
評価結果から明らかなように、特定シラン化合物を含有するアンダーフィル材を用いて作製した実施例の電子部品装置は、ホットプレートのステージ上での放置時間を長くした場合においてもボイド占有率が小さかった。従って、実施例のアンダーフィル材はボイドレス性及びステージ安定性に優れることがわかる。
【0156】
一方、特定シラン化合物に該当しないシラン化合物を含有するアンダーフィル材を用いて作製した比較例の電子部品装置は、ホットプレートのステージ上での放置時間が短い場合にはボイド占有率が小さいが、放置時間が長くなるに従いボイド占有率が上昇した。
【0157】
なお、上記の実施例では、25℃において液体のアンダーフィル材を用いたが、25℃で固体のアンダーフィル材を用いた場合も同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0158】
1 半導体チップ(電子部品)
2 はんだバンプ
3 接続パッド
4 ソルダーレジスト
5 配線基板
6 アンダーフィル材
10 半導体チップ(電子部品)
15 配線
20 基板
30 接続バンプ
40 フィルム状アンダーフィル材
60 ソルダーレジスト
600 電子部品装置
図1
図2