(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一加工によって得る前記ウェーハの厚み分布α[μm]が、前記第四加工によって得る前記基板ウェーハのWarp値w[μm]の50%以下となるように、前記第一加工を行うことを特徴とする請求項1に記載の基板ウェーハの製造方法。
前記平坦化樹脂層の厚みばらつきが、前記基板ウェーハの前記Warp値w[μm]の25%以下となるように、前記平坦化樹脂層を形成することを特徴とする請求項2に記載の基板ウェーハの製造方法。
前記基板ウェーハの前記Warp値w[μm]が40μm以上となるように、前記第一加工〜前記第四加工を行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の基板ウェーハの製造方法。
前記第一加工及び/又は前記第三加工において、前記ウェーハが中凸状の厚み分布を持つように加工を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の基板ウェーハの製造方法。
前記第一加工及び/又は前記第三加工において、前記ウェーハが中凹状の厚み分布を持つように加工を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の基板ウェーハの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、
図5を参照しながら、従来の一例の基板ウェーハの製造方法を説明する。
【0007】
図5に示す製造方法では、まず、(C−1)に示す加工対象のウェーハ10を準備する。ウェーハ10は、第一主面1、及び第一主面1と反対側の第二主面2を有する。次に、(C−2)に示すように、ウェーハ10の第二主面2をチャックテーブル60に吸着保持させる。この吸着により、ウェーハ10は弾性変形し、それにより第二主面2も弾性変形した第二主面2sとなる。
【0008】
次いで、(C−2)に示すように、ウェーハ10の第一主面1を、研削ホイール50を用いて、研削又は研磨する。この際、(C−2)に示すように、ウェーハ10が、この方法で得ようとする所望のWarpの値に対応する中凹状の厚み分布(中凹TTV)を有するウェーハ15となるように、研削ホイール50に対する第一主面1の角度を、チャックテーブル60の軸角度を調整することによって調整する。この加工により、加工した第一主面1sを有するウェーハ15が得られる。
【0009】
次に、チャックテーブル60による吸着を開放させる。それにより、(C−3)に示す、解放された第一主面1t及び開放された第二主面2tを有するウェーハ15が得られる。
【0010】
次に、得られたウェーハ15を、(C−4)に示すように、開放された第二主面2tが上向きになるように反転させ、このウェーハ15の第一主面1tをチャックテーブル60に吸着保持させる。この吸着で、ウェーハ15は弾性変形する。この際、(C−4)において点線で示した加工した第一主面1tも、弾性変形して、チャックテーブル60の表面に追随した第一主面1uとなる。一方、(C−4)において点線で示した第二主面2tは、弾性変形して、解放された第一主面1tの外形に対応する外形を有する第二主面2uとなる。
【0011】
次に、(C−5)に示すように、この状態で、(C−5)において点線で示すウェーハ15の第二主面2uを、研削ホイール50を用いて、研削又は研磨する。それにより、加工した第二主面2vを有するウェーハ16が得られる。
【0012】
最後に、得られたウェーハ16を、チャックテーブル60から解放する。それにより、(C−6)に示すような、中凹状の第一主面1v及び中凸状の第二主面2xを有する、反りを有する基板ウェーハ16が得られる。
【0013】
このような方法によると、所望のWarp値を有する基板ウェーハ16を得ることができる。しかしながら、このような方法で得られた基板ウェーハ16は、ナノトポグラフィの値が大きいという問題があった。
【0014】
ナノトポグラフィの対策として、例えば、特許文献2には、ナノトポグラフィの影響を抑えて圧力ゾーンごとに適切な研磨圧力を付与するために、ウェーハ表面のナノトポグラフィマップを測定し、その測定結果に基づいてウェーハに対する研磨ヘッドの研磨圧力を圧力ゾーンごとに設定して研磨加工を実施するウェーハの研磨方法が記載されている。また、基板ウェーハのナノトポグラフィ改善のために、ウェーハの片面に樹脂を被覆して研削する方法等がある。例えば、特許文献3には、スライス後のウェーハの片(裏)面に硬化性材料を40〜300μm厚塗布し、硬化後塗布面を保持し反対側(表)面を研削することによりうねりを除去し均一厚みのウェーハを製造する方法が記載されている。また、特許文献4には、特許文献3に記載された方法において、硬化性材料として紫外光硬化樹脂を10〜200μm厚塗布する樹脂被覆方法と装置が記載されている。
【0015】
しかしながら、これらの方法では、所望のWarp値を有する、すなわち所望の反りを有する基板ウェーハを得ることはできなかった。
【0016】
このように、エピタキシャル成長用又は貼合せ用の基板ウェーハには、反りを有し且つナノトポグラフィが良好であることが求められるが、両者を満足させるウェーハおよびその製造方法はなかった。
【0017】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、反りを有し且つナノトポグラフィが良好な基板ウェーハを製造できる基板ウェーハの製造方法、及び反りを有し且つナノトポグラフィが良好な基板ウェーハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明では、基板ウェーハの製造方法であって、
第一主面及び前記第一主面と反対側の第二主面を有するウェーハを準備すること、
前記ウェーハの前記第二主面上に、平坦化樹脂層を形成すること、
前記平坦化樹脂層を基準面として吸着保持し、その状態で、第一加工として、前記ウェーハの前記第一主面を研削又は研磨すること、
前記ウェーハから前記平坦化樹脂層を除去すること、
前記ウェーハの前記第一加工した前記第一主面を吸着保持し、その状態で、第二加工として、前記ウェーハの前記第二主面を研削又は研磨すること、
前記ウェーハの前記第二加工した前記第二主面を吸着保持し、その状態で、第三加工として、前記ウェーハの前記第一主面を更に研削又は研磨すること、及び
前記ウェーハの前記第三加工した前記第一主面を吸着保持し、その状態で、第四加工として、前記ウェーハの前記第二主面を更に研削又は研磨して、基板ウェーハを得ること
を含み、
前記第一加工及び/又は前記第三加工において、前記ウェーハが中凹状又は中凸状の厚み分布を持つように加工を行うことを特徴とする基板ウェーハの製造方法を提供する。
【0019】
本発明の基板ウェーハの製造方法によれば、平坦化樹脂層を基準として吸着保持した状態でウェーハの第一主面に対する第一加工を行い、次いで、第一加工した第一主面で吸着保持した状態でウェーハの第二主面に対する第二加工を行い、次いで、第二加工した第二主面で吸着保持した状態でウェーハの第一主面に対する第三加工を行い、次いで、第三加工した第一主面で吸着保持した状態でウェーハの第二主面に対する第四加工を行い、第一加工及び/又は第三加工においてウェーハが中凹状又は中凸状の厚み分布を持つように加工を行うことにより、Warp値が大きい、すなわち反りを有し、且つナノトポグラフィが小さい、すなわちナノトポグラフィが良好な基板ウェーハを製造できる。また、この製造方法によって製造できる基板ウェーハは、反りを有しており且つナノトポグラフィが良好なので、エピタキシャル成長用又は貼合わせ用の基板として有用である。
【0020】
前記第一加工によって得る前記ウェーハの厚み分布α[μm]が、前記第四加工によって得る前記基板ウェーハのWarp値w[μm]の50%以下となるように、前記第一加工を行うことが好ましい。
【0021】
このように第一加工を行うことにより、第一加工でのウェーハ厚み調整量を第三加工でのウェーハ厚み調製量よりも小さくすることができ、その結果、ナノトポグラフィがより小さい基板ウェーハを製造できる。
【0022】
前記平坦化樹脂層の厚みばらつきが、前記基板ウェーハの前記Warp値w[μm]の25%以下となるように、前記平坦化樹脂層を形成することが好ましい。
【0023】
このようにして平坦化樹脂層を形成することにより、前記第一加工によって得られるウェーハの厚みに平坦化樹脂層の厚みばらつきが与える影響を小さくすることができ、その結果加工後の基板ウェーハのWarp値を狙いに近づけることが可能になる。
【0024】
前記基板ウェーハの前記Warp値w[μm]が40μm以上となるように、前記第一加工〜前記第四加工を行うことができる。
【0025】
本発明の基板ウェーハの製造方法によれば、Warp値w[μm]が40μm以上の基板ウェーハを製造することができる。
【0026】
前記第一加工及び/又は前記第三加工において、前記ウェーハが中凸状の厚み分布を持つように加工を行うことができる。
【0027】
或いは、前記第一加工及び/又は前記第三加工において、前記ウェーハが中凹状の厚み分布を持つように加工を行うことができる。
【0028】
製造しようとする基板ウェーハの所望の形状に応じて、第一加工及び/又は第三加工において、ウェーハの厚み分布を中凸状又は中凹状にすることができる。具体的には、ウェーハの第二主面を表面とする場合、第一加工及び/又は第三加工においてウェーハの厚み分布を中凹状にすることにより、中凸状の反りを有する基板ウェーハを製造できる。一方、ウェーハの第二主面を表面とする場合、第一加工及び/又は第三加工においてウェーハの厚み分布を中凸状にすることにより、中凹状の反りを有する基板ウェーハを製造できる。
【0029】
前記ウェーハの前記第二主面上に、前記平坦化樹脂層の前駆体である樹脂を塗布し、
前記樹脂に荷重をかけ、
前記荷重をかけた樹脂を硬化させて、前記平坦化樹脂層を形成することが好ましい。
【0030】
このようにして平坦化樹脂層を形成することで、平坦化樹脂層の厚みばらつきを抑えることができ、それにより、ナノトポグラフィがより小さい基板ウェーハを製造できる。
【0031】
また、本発明は、中凸又は中凹状の反りを有し且つSQMM2mm×2mmにおけるナノトポグラフィが10nm未満のものであることを特徴とする基板ウェーハを提供する。
【0032】
このような基板ウェーハは、反りを有しており且つナノトポグラフィが良好なので、エピタキシャル成長用又は貼合わせ用の基板として有用である。
【0033】
基板ウェーハは、前記ナノトポグラフィが5nm未満のものであることが好ましい。
【0034】
このような基板ウェーハは、エピタキシャル成長用又は貼合わせ用の基板としてより有用である。
【0035】
基板ウェーハは、Warp値w[μm]が40μm以上のものであることが好ましい。
【0036】
このような基板ウェーハは、エピタキシャル成長用又は貼合わせ用の基板としてより有用である。
【発明の効果】
【0037】
以上のように、本発明の基板ウェーハの製造方法であれば、Warp値が大きい、すなわち所望の反りを有し、ナノトポグラフィが小さい、すなわちナノトポグラフィが良好な基板ウェーハを製造できる。また、本発明のウェーハの製造方法によって製造できる基板ウェーハは、所望の反りを有し且つナノトポグラフィが良好なので、エピタキシャル成長用又は貼合わせ用の基板として有用である。
【0038】
また、本発明の基板ウェーハは、所望の反りを有しており且つナノトポグラフィが良好なので、エピタキシャル成長用又は貼合わせ用の基板として有用であり、これを用いることによって最終的に反りがなく、ナノトポグラフィが良好なエピタキシャルウェーハや、貼り合わせ基板を得ることができる
【発明を実施するための形態】
【0040】
先に説明したように、所望の反りを有し且つナノトポグラフィが良好な基板ウェーハを製造できる基板ウェーハの製造方法、及び所望の反りを有し且つナノトポグラフィが良好な基板ウェーハの開発が求められていた。
【0041】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、平坦化樹脂層を基準として吸着保持した状態でウェーハの第一主面に対する第一加工を行い、次いで、第一加工した第一主面で吸着保持した状態でウェーハの第二主面に対する第二加工を行い、次いで、第二加工した第二主面で吸着保持した状態でウェーハの第一主面に対する第三加工を行い、次いで、第三加工した第一主面で吸着保持した状態でウェーハの第二主面に対する第四加工を行い、ウェーハが中凹状又は中凸状の厚み分布を持つように第一加工及び/又は第三加工を行うことにより、Warp値が大きい、すなわち反りが大きく、ナノトポグラフィが小さい、すなわちナノトポグラフィが良好な基板ウェーハを製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0042】
即ち、本発明は、基板ウェーハの製造方法であって、
第一主面及び前記第一主面と反対側の第二主面を有するウェーハを準備すること、
前記ウェーハの前記第二主面上に、平坦化樹脂層を形成すること、
前記平坦化樹脂層を基準面として吸着保持し、その状態で、第一加工として、前記ウェーハの前記第一主面を研削又は研磨すること、
前記ウェーハから前記平坦化樹脂層を除去すること、
前記ウェーハの前記第一加工した前記第一主面を吸着保持し、その状態で、第二加工として、前記ウェーハの前記第二主面を研削又は研磨すること、
前記ウェーハの前記第二加工した前記第二主面を吸着保持し、その状態で、第三加工として、前記ウェーハの前記第一主面を更に研削又は研磨すること、及び
前記ウェーハの前記第三加工した前記第一主面を吸着保持し、その状態で、第四加工として、前記ウェーハの前記第二主面を更に研削又は研磨して、基板ウェーハを得ること
を含み、
前記第一加工及び/又は前記第三加工において、前記ウェーハが中凹状又は中凸状の厚み分布を持つように加工を行うことを特徴とする基板ウェーハの製造方法である。
【0043】
また、本発明は、中凸又は中凹状の反りを有し且つSQMM2mm×2mmにおけるナノトポグラフィが10nm未満のものであることを特徴とする基板ウェーハである。
【0044】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
[基板ウェーハの製造方法]
先に示した本発明の基板ウェーハの製造方法のうち、ウェーハの準備及び平坦化樹脂層の形成を(Step 1)として、第一加工及び平坦化樹脂層の除去を(Step 2)として、第二加工を(Step 3)として、第三加工を(Step 4)として、及び第四加工を(Step 5)として、以下に説明する。
【0046】
(Step 1)
まず、
図1の(S1−1)に示すように、加工対象のウェーハ10を準備する。ウェーハ10は、第一主面1、及び第一主面1と反対側の第二主面2を有する。なお、
図1では、説明のために第一主面1及び第二主面2の表面の凹凸を誇張して示しているが、第一主面1及び第二主面2の表面粗さは特に限定されない。
【0047】
準備するウェーハ10は、基板ウェーハ用の原材料、例えばエピタキシャル成長用又は貼り合わせ用の基板ウェーハの原材料として使用できるものであれば、特に限定されない。
【0048】
一方で、(S1−1)に示す、平坦な面を有する下定盤41を準備する。この下定盤41上に、例えば紫外光に透明な光透過性フィルム30を敷く。次いで、光透過性フィルム30上に、平坦化樹脂層の前駆体である、可塑状態、例えば液状の樹脂21を供給し、塗布する。
図1に示す例では、樹脂21としてUV硬化性樹脂を用いている。ただし、樹脂21の材料は特に限定されない。
【0049】
次に、ウェーハ10の第一主面1を上定盤42に吸着保持させる。そして、(S1−2)に示すように、この状態のウェーハ10を、第二主面2が樹脂21に接するようにこの樹脂21上に載せる。これにより、ウェーハ10の第二主面2上に、平坦化樹脂層の前駆体である樹脂21が塗布される。次いで、樹脂21の面が平坦となるように上定盤42を用いて、所定荷重で押圧する(所定荷重(プレス)をかける)。
【0050】
この際の押圧を調整することにより、樹脂21の厚みのばらつきを調整することができる。適切な押圧をすることにより、樹脂を適切に押し広げることができ、適切な樹脂厚さ分布を得ることができる。樹脂厚みのばらつきは、本発明の製造方法で製造する基板ウェーハの所望のWarp値w[μm]の25%以下であることが望ましく、15%以下であることがより好ましい。
【0051】
次に、上定盤42及び下定盤41から、樹脂21及び光透過性フィルム30が取り付けられたウェーハ10を取り外す。取り外したウェーハ10に対し、(S1−3)に示すように光透過性フィルム30側からUV光を照射し、樹脂21を硬化させる。なお、樹脂21の硬化処理は、樹脂21の材料に応じて変更する。光硬化処理を行わない場合は、光透過性フィルム30の敷設を省略することができる。
【0052】
この硬化処理により、
図2の(S2−1)に示す、平坦化樹脂層20付きのウェーハ10が得られる。
【0053】
(Step 2)
次に、以上のようにして得られた
図2の(S2−1)に示す平坦化樹脂層20付きウェーハ10を、平坦化樹脂層20を基準面として、(S2−2)に示すチャックテーブル60に吸着保持させる。このチャックテーブル60は、例えば多孔質セラミック製であり、ウェーハ10を真空吸着して保持することができる。また、チャックテーブル60は、研削又は研磨手段に対するウェーハ10の軸角度を調整する機能が備わっている。ただし、本発明において、ウェーハ10を吸着保持する手段は、特に限定されない。
【0054】
なお、(S2−2)では光透過性フィルム30がチャックテーブル60に接しているが、光透過性フィルム30は、ウェーハ10及び平坦化樹脂層20の厚みに比べて小さな厚みを有しており、吸着保持を阻害しない。
【0055】
次に、吸着保持された状態のウェーハ10の第一主面1を、第一加工として、(S2−2)に示すように研削又は研磨する。(S2−2)では、研削ホイール50を用いて研削する例を示しているが、研削又は研磨する手段は特に限定されない。また、本発明では、この第一加工及び/又は後段で説明する第三加工において、ウェーハが中凹状又は中凸状の厚み分布を持つように加工を行う。(S2−2)では、ウェーハ10の第一主面1を第一加工として研削して、第一加工した第一主面1aを有し、中凹状の厚み分布を有するウェーハ11を得る例を示している。
【0056】
次に、第一加工したウェーハ11をチャックテーブル60から解放する。次いで、ウェーハ11から、平坦化樹脂層20及び光透過性フィルム30を除去する。これにより、(S2−3)に示すウェーハ11が得られる。得られたウェーハ11は、第一加工した第一主面1a、及び第一主面1aと反対側の第二主面2を有する。また、ウェーハ11は、中凹状の厚み分布(中凹TTV)を有している。
【0057】
(Step 3)
次に、Step 2で得られたウェーハ11を、
図2の(S3−1)に示すように、第二主面2が上向きになるように反転させ、第一加工した第一主面1aをチャックテーブル60に吸着保持させる。この吸着で、ウェーハ11は弾性変形する。この際、(S3−1)において点線で示した第一加工した第一主面1aも、弾性変形して、チャックテーブル60の表面に追随した第一主面1bとなる。一方、(S3−1)において点線で示した第二主面2は、弾性変形して下方に変位し、第二主面2aとなる。
【0058】
次に、このようにして吸着保持した状態のウェーハ11の第二主面2aを、第二加工として、研削又は研磨する。(S3−2)では、研削手段として研削ホイール50を用いて、点線で示す第二主面2aを研削する例を示している。第二加工では、(S3−2)に示すようにウェーハ厚みが平坦になるように、研削又は研磨を行う。このような第二加工により、(S3−2)に示す第二加工した第二主面2bを有するウェーハ12が得られる。
【0059】
次に、得られたウェーハ12をチャックテーブル60から解放して、(S3−3)に示す状態のウェーハ12が得られる。吸着からの解放により、第一加工した第一主面1bは変形して、中凹状の第一主面1cとなる。一方、第二加工した第二主面2bも変形して、中凸状の第二主面2cとなる。そのため、(S3−3)に示すように、ウェーハ12は、第二主面2cを表面とした場合に中凸状の反りを有するウェーハである。
【0060】
(Step 4)
次に、Step 3で得られたウェーハ12を、
図3の(S4−1)に示すように、第一加工した第一主面1cが上向きになるように反転させる。この方向のウェーハ12の第二加工した第二主面2cをチャックテーブル60に吸着保持させる。この吸着で、ウェーハ12は弾性変形する。この際、(S4−2)に示すように、第二加工した第二主面2cも弾性変形してチャックテーブル60の表面に追随した第二主面2dとなる。図示はしていないが、第一加工した第一主面1cも弾性変形する。
【0061】
この状態のウェーハ12の第一主面1cを、第三加工として、研削又は研磨する。(S4−2)では、研削ホイール50を用いて研削する例を示しているが、研削又は研磨する手段は特に限定されない。先に述べたように、本発明では、第一加工及び/又は第三加工を、ウェーハが中凹状又は中凸状の厚み分布を持つように行う。(S4−2)では、ウェーハ12の第一主面1cを第三加工として研削して、第三加工した第一主面1dを有し、中凹状の厚み分布を有するウェーハ13を得る例を示している。
【0062】
次に、第三加工したウェーハ13をチャックテーブル60から解放する。これにより、(S4−3)に示すウェーハ13が得られる。得られたウェーハ13は、中凹状の第三加工した第一主面1e、及び第一主面1eと反対側の、中凸状の第二加工した第二主面2eを有する。また、ウェーハ13は、中凹状の厚み分布(中凹TTV)を有している。
【0063】
(Step 5)
次に、Step 4で得られたウェーハ13を、
図3の(S5−1)に示すように、第二主面2eが上向きになるように反転させ、第三加工した第一主面1eをチャックテーブル60に吸着保持させる。この吸着で、ウェーハ13は弾性変形する。この際、(S5−1)において点線で示した第三加工した第一主面1eも、弾性変形して、チャックテーブル60の表面に追随した第一主面1fとなる。一方、(S5−1)において点線で示した第二主面2eは、弾性変形して下方に変位し、第二主面2fとなる。
【0064】
次に、このようにして吸着保持した状態のウェーハ13の第二加工した第二主面2fを、第四加工として、研削又は研磨する。(S5−2)では、研削手段として、研削ホイール50を用いて、点線で示した第二主面2fを研削する例を示している。第四加工では、(S5−2)に示すように、ウェーハ厚みが平坦になるように研削又は研磨を行う。このような第四加工により、(S5−2)に示す第四加工した第二主面2gを有する基板ウェーハ14が得られる。
【0065】
次に、得られた基板ウェーハ14をチャックテーブル60から解放して、(S5−3)に示す状態のウェーハ14が得られる。吸着からの解放により、第三加工した第一主面1fは変形して、中凹状の第一主面1gとなる。一方、第四加工した第二主面2gも変形して、中凸状の第二主面2hとなる。そのため、(S5−3)に示すように、基板ウェーハ14は、第二主面2hを表面とした場合に中凸状の反りを有する基板ウェーハである。
【0066】
繰り返しになるが、本発明では、ウェーハが中凹状又は中凸状の厚み分布を持つように、第一加工及び/又は第三加工を行う。厚み分布は、チャックテーブルの軸角度を調製することにより調整できる。例えば、中凸状の厚み分布を持つように加工を行う場合には、例えば
図4に示すように、研削又は研磨手段(
図4では研削ホイール50)に対するチャックテーブル60の軸角度を調整する。それにより、
図4に示すような中凸状の第一主面1a’を有する、中凸状の厚み分布を有するウェーハ10’が得られる。
【0067】
ウェーハが中凹状の厚み分布を持つように、第一加工及び/又は第三加工を行うことで、
図1〜
図3を参照しながら説明したのと同様に、第二主面を表面とした場合に中凸状の反りを有する基板ウェーハを得ることができる。一方、ウェーハが中凸状の厚み分布を持つように、第一加工及び/又は第三加工を行うことで、第二主面を表面とした場合に中凹状の反りを有する基板ウェーハを得ることができる。
【0068】
以上に例を挙げて説明した本発明の基板ウェーハの製造方法では、第一加工及び/又は第三加工において、ウェーハ厚み分布(厚みばらつき)の調製を行う。加えて、ウェーハに平坦化樹脂層が形成された状態で行う第一加工と第三加工とで第一主面を研削又は研磨し、且つ第二主面も第二加工及び第四加工の2回の研削又は研磨に供する。これらの結果、本発明の基板ウェーハの製造方法は、Warp値が大きい、すなわち所望の反りを有し、ナノトポグラフィが小さい、すなわちナノトポグラフィが良好な基板ウェーハを製造できる。
【0069】
第一加工によって得るウェーハの厚み分布α[μm]が、第四加工によって得る基板ウェーハのWarp値w[μm]の50%以下となるように、第一加工を行うことが好ましい。すなわち、第一加工によるウェーハ厚み調整量が第三加工によるウェーハ厚み調整量よりも少ないことが望ましい。このように第一加工及び第三加工を行うことで、ナノトポグラフィがより小さい基板ウェーハを製造できる。
【0070】
本発明では、第一加工又は第三加工のいずれか一方において中凸又は中凹となる加工を行い、他方では厚み分布の調整を行わなくても良い。厚み分布の調整を行わない方の加工では、研削又は研磨手段の加工面(例えば研削ホイール又は研磨パッド)をウェーハの第一主面に平行に押し当てて、平坦化のための研削又は研磨を行うことができる。
【0071】
基板ウェーハのWarp値w[μm]が40μm以上となるように、第一加工〜第四加工を行うことができる。
本発明の基板ウェーハの製造方法によれば、Warp値w[μm]が40μm以上の基板ウェーハを製造することができる。
【0072】
第四加工後に得られた基板ウェーハを、鏡面研磨に供することが好ましい。特に、エピタキシャル層形成や貼合せを行うために、エピタキシャル層形成や貼合せを行う面を鏡面研磨することが好ましい。基板ウェーハの第一主面及び第二主面の両面を鏡面研磨することがより好ましい。両面を鏡面研磨することにより、第一加工〜第四加工で作り込んだ反り形状をより確実に維持することができる。
【0073】
[基板ウェーハ]
本発明の基板ウェーハは、中凸又は中凹状の反りを有し且つSQMM2mm×2mmにおけるナノトポグラフィが10nm未満のものである。
【0074】
このような基板ウェーハは、反りを有しており且つナノトポグラフィが良好なので、エピタキシャル成長用又は貼合わせ用の基板として有用である。
【0075】
本発明の基板ウェーハは、例えば、先に説明した本発明の基板ウェーハの製造方法によって製造できる。
【0076】
基板ウェーハは、ナノトポグラフィが5nm未満のものであることが好ましい。
このような基板ウェーハは、エピタキシャル成長用又は貼合わせ用の基板としてより有用である。
【0077】
基板ウェーハは、Warp値w[μm]が40μm以上のものであることが好ましい。
このような基板ウェーハは、エピタキシャル成長用又は貼合わせ用の基板としてより有用である。
【実施例】
【0078】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
(実施例1、2、3−1、3−2、3−3、4及び5)
実施例1、2、3−1、3−2、3−3、4及び5では、以下の手順で、基板ウェーハを製造した。所望Warp値wは40μmとした。
【0080】
(Step 1)
まず、以下の材料を準備した。
・被加工対象のウェーハとして、第一主面、及び第一主面と反対側の第二主面を有する、直径300mmの面方位<100>P型Si単結晶ウェーハを準備した。
・平坦化樹脂層(被覆物)の前駆体として、UV硬化性樹脂を準備した。
・光透過性フィルムとしてPETフィルムを準備した。
【0081】
次に、平坦なガラス定盤(下定盤)にPETフィルムを敷き、そのPETフィルム上にUV硬化性樹脂を10ml滴下した。
【0082】
ウェーハの第一主面をセラミック定盤(上定盤)に吸着保持し、上記樹脂に押し当て接着した。
【0083】
押圧制御は、セラミック定盤を保持するサーボモータで駆動させ、所定荷重Lを検出するまで加圧した。
【0084】
ここで、樹脂厚みばらつきによる影響を鑑みて、上記所定荷重Lは、実施例1、2、3−1、4及び5では2000N、実施例3−2では1900N、実施例3−3では1800Nとした。
【0085】
押圧後、PETフィルム側からUV硬化性樹脂に紫外光を照射し、上記樹脂を硬化させて、ウェーハの第二主面上に平坦化樹脂層を形成した。樹脂硬化用の光源としては波長365nmのUV−LEDを用いた。
【0086】
得られた平坦化樹脂層の厚みを、以下の条件で測定した。
・樹脂厚み測定用光学センサには、KeyenceのSI−T80を使用した。
・センサを固定し、ウェーハを直線上に走査することで、厚みプロファイルを計測した。
・1本の測定ラインにつき0.25mmピッチで1160点の測定を行った。
・放射線状に均等に測定した4本の樹脂厚みプロファイルの最大値―最小値を樹脂厚みばらつきとした。
【0087】
測定結果を以下の表1に示す。
【0088】
(Step 2〜Step 5)
次に、平坦化樹脂層を形成したウェーハを、以下の条件で、第一加工〜第四加工に供した。
【0089】
(全般)
・研削加工には、ディスコのDFG8360を使用した。
・研削ホイールとしてダイヤ砥粒が結合されたものを用いた。
・チャックテーブルとして、多孔質セラミック製のチャックテーブルを用いた。このチャックテーブルは、ウェーハの一方の主面を真空吸着して保持することができるものである。また、このチャックテーブルは、研削ホイールに対する軸角度を調整する機能を備えていた。
【0090】
<第一加工条件(第一主面研削)(Step 2)>
・チャックテーブルの軸角度を、ウェーハ厚み分布が中凹αμmとなるように調整して、加工を行った。
・平坦化樹脂層側を真空吸着した状態で、第一主面(裏面)の研削加工を行った。
・研削後に平坦化樹脂層をウェーハから剥離した。
【0091】
なお、実施例1では、第一加工においてウェーハ厚み分布の調整を行わず(α=0μm)、ウェーハ厚み分布が1μm以下となるように表面を平坦化させる研削を行った。
【0092】
<第二加工条件(第二主面研削)(Step 3)>
・チャックテーブルの軸角度を、ウェーハ厚み分布が1μm以下となるように調整して、加工を行った。
・第一加工した第一主面(裏面)を真空吸着した状態で、第二主面(表面)の研削加工を行った。
【0093】
<第三加工条件(第一主面研削)(Step 4)>
・チャックテーブルの軸角度を、ウェーハ厚み分布が中凹βμmとなるように調整して、加工を行った。
・第二加工した第二主面(表面)を真空吸着した状態で、第一加工した第一主面(裏面)の研削加工を行った。
【0094】
なお、実施例5では、第三加工においてウェーハ厚み分布の調整を行わず(β=0μm)、ウェーハ厚み分布が1μm以下となるように表面を平坦化させる研削を行った。
【0095】
<第四加工条件(第二主面研削)(Step 5)>
・チャックテーブルの軸角度を、ウェーハ厚み分布が1μm以下となるように調整して、加工を行った。
・第三加工した第一主面(裏面)を真空吸着した状態で、第二加工した第二主面(表面)の研削加工を行った。
【0096】
上記ウェーハ厚み分布調整量α及びβは、実施例1、2、3−1、3−2、3−3、4及び5において、以下の表1に示す値とした。
【0097】
(仕上げ)
各実施例で第四加工後に得られた基板ウェーハの表裏両面を鏡面研磨した。これにより、各実施例の基板ウェーハを得た。
【0098】
(比較例)
一方、比較例としては、平坦化樹脂層形成、並びに第一加工及び第二加工をスキップし、第三加工として、ウェーハ厚み分布が中凹40μmとなるようにチャックテーブルの軸角度を調整して研削を行い、次いで第四加工として、ウェーハ厚み分布が1μm以下となるようにチャックテーブルの軸角度を調整して研削を行ったこと以外は、実施例1と同様の手順で、基板ウェーハを製造した。
【0099】
[Warp及びナノトポグラフィの測定]
各実施例の基板ウェーハ及び比較例の基板ウェーハのWarp及びナノトポグラフィの測定を行った。測定には、光学干渉式の平坦度・ナノトポグラフィ測定装置(KLA社製:Wafer Sight 2)を用いた。
【0100】
ナノトポグラフィの指標としては、SQMM 2mm×2mmを使用した。結果を、以下の表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
ナノトポグラフィについては、SQMM 2mm×2mmにおける数値結果を下記のように評価した。
○:5nm未満
△:5nm以上〜10nm未満
×:10nm以上
【0103】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1、2、3−1、3−2、3−3、4及び5では、Warp値が35.7μm以上の高い値を示すと共に、ナノトポグラフィが10nm未満であって良好な基板ウェーハを得ることができた。これらの結果は、各実施例において、ウェーハに平坦化樹脂層が形成された状態で第一加工を行い、この第一加工と第三加工とで第一主面を研削しつつウェーハ厚み分布の調整を行い、且つ第二主面も第二加工及び第四加工の2回の研削に供したことによるものである。
【0104】
一方、比較例では、Warp値は所望の40μm以上を達成したが、平坦化樹脂層を形成した状態での研削を行わず、第一主面及び第二主面の研削を1回ずつしか行わなかったために、ナノトポグラフィが不良となった。
【0105】
それに対し、実施例1、2、3−1及び3−2では、Warpが所望の40μm以上であり且つナノトポグラフィが5nm未満であり、比較例に対してナノトポグラフィが著しく改善した基板ウェーハを製造することができた。
【0106】
また、実施例4及び5も、Warpが所望の40μm以上であり且つナノトポグラフィが10nm未満であり、比較例に対してナノトポグラフィが改善した基板ウェーハを製造することができた。
【0107】
一方で、第一加工でのウェーハ厚み調整量α[μm]が第二加工でのウェーハ厚み調整量β[μm]以下であった実施例1、2、3−1及び3−2で得られた基板ウェーハは、第一加工でのウェーハ厚み調整量α[μm]が第二加工でのウェーハ厚み調整量β[μm]よりも大きかった実施例4及び5で得られた基板ウェーハよりもナノトポグラフィが更に良好であった。これらの実施例の結果の比較から、第一加工でのウェーハ厚み調整量α[μm]が第二加工でのウェーハ厚み調整量β[μm]以下であることが好ましいことが分かる。
【0108】
さらに、実施例3−3では、ナノトポグラフィが5nm未満であり、比較例に対してナノトポグラフィが著しく改善した基板ウェーハを得ることができた。一方で、実施例3−3で得られた基板ウェーハは、許容範囲内ではあるものの、Warp値が他の実施例よりも小さかった。
【0109】
第一加工でのウェーハ厚み調整量α[μm]と第二加工でのウェーハ厚み調整量β[μm]とがそれぞれ20μmで等しい実施例3−1、3−2及び3−3で結果を比較すると、樹脂厚みばらつきが小さいほど、得られるWarp値がより大きくなったことが分かる。これらの結果から、樹脂厚みばらつきは小さいほど好ましく、望ましくは所望Warp値の25%以下であると良いことが分かる。
【0110】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【解決手段】第一主面及び第二主面を有するウェーハを準備すること、第二主面上に平坦化樹脂層を形成すること、平坦化樹脂層を基準面として吸着保持した状態で、第一加工として第一主面を研削又は研磨すること、ウェーハから平坦化樹脂層を除去すること、第一加工した第一主面を吸着保持した状態で、第二加工として第二主面を研削又は研磨すること、第二加工した第二主面を吸着保持した状態で、第三加工として第一主面を更に研削又は研磨すること、及び第三加工した第一主面を吸着保持した状態で、第四加工として第二主面を更に研削又は研磨して、基板ウェーハを得ることを含み、第一加工及び/又は第三加工においてウェーハが中凹状又は中凸状の厚み分布を持つように加工を行う基板ウェーハの製造方法。