特許第6845022号(P6845022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845022
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20210308BHJP
   B23Q 3/08 20060101ALI20210308BHJP
   B28D 7/04 20060101ALI20210308BHJP
   B28D 5/02 20060101ALI20210308BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20210308BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20210308BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   B23Q3/08 A
   B28D7/04
   B28D5/02 A
   H01L21/304 622H
   H01L21/304 601B
   B24B41/06 L
   B24B27/06 J
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-3265(P2017-3265)
(22)【出願日】2017年1月12日
(65)【公開番号】特開2018-113352(P2018-113352A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國重 仁志
(72)【発明者】
【氏名】上田 真也
【審査官】 鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−144340(JP,A)
【文献】 特開平05−326470(JP,A)
【文献】 特開2014−110411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B23Q 3/08
B28D 7/04
B28D 5/02
H01L 21/304
B24B 41/06
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハから小径ウエーハをくり抜き加工する加工装置であって、
ウエーハから複数枚の該小径ウエーハを円環状の砥石でくり抜く加工を可能にするとともにくり抜かれて穴が形成されたウエーハとくり抜かれて作製された該小径ウエーハとを吸引保持でき、該小径ウエーハより僅かに小さい面積の円状の保持面と、該保持面の中心と中心を同一とし該保持面を囲み該小径ウエーハの直径より僅かに小さい内径を備える円環状溝と、ウエーハの該小径ウエーハがくり抜かれた部分以外の領域を吸引保持する第2の保持面と、を備えるチャックテーブルが装着された保持手段と、
該チャックテーブルが保持したウエーハから小径ウエーハをくり抜くコアドリルが装着されたくり抜き手段と、
該チャックテーブルが保持するウエーハの径方向に該保持手段と該くり抜き手段とを相対的に移動させる位置決め手段とを備え、
該保持手段は、該チャックテーブルの中心を軸に該チャックテーブルを回転させる回転部と、所定の角度で該回転部を停止させる停止部とを備え、
該位置決め手段でウエーハの径方向位置を位置決めし、該停止部が所定の角度で停止させた該チャックテーブルが保持するウエーハに該コアドリルを切り込ませウエーハをくり抜き小径ウエーハを形成する加工装置。
【請求項2】
前記チャックテーブルは、前記保持面と前記円環状溝とが、チャックテーブルの中心を中心とした同心円に沿って円周方向に等間隔に複数配設される請求項1記載の加工装置
【請求項3】
前記チャックテーブルは、保持するウエーハを切削送りして切削ブレードを切削送り方向に直線状に切り込ませ、前記小径ウエーハの外周を該切削ブレードで切り欠いて該小径ウエーハの円周方向におけるマークの形成を可能とするように前記保持面と前記円環状溝とが配置される請求項1記載の加工装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを吸引保持するチャックテーブル及びウエーハをくり抜き小径ウエーハを形成する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハ等の加工においては、一枚のウエーハを回転するコアドリルを用いてくり抜いて、より小径のウエーハを複数枚形成する場合がある。このようなくり抜き加工によって作製された小径ウエーハは、例えば、ウエーハの物性等を測定するための実験に使用される。
【0003】
そして、コアドリルを用いて一枚のウエーハから小径ウエーハをくり抜く加工を行う際には、チャックテーブル(例えば、特許文献1参照)の保持面上に吸引保持されたウエーハに対して、ウエーハの厚み以上の深さ分コアドリルの砥石を切込ませる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−014783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載されているような保持面全面がポーラス部材等で形成されているチャックテーブルでウエーハを吸引保持しつつ、コアドリルによるウエーハのくり抜き加工を行っていくと、ウエーハをくり抜いたコアドリルの砥石の下端がチャックテーブルの保持面まで到達し、チャックテーブルを傷つけてしまうおそれがある。そこで、ウエーハに粘着材と基材とを備える保護テープを貼着し、ウエーハに貼着された保護テープの基材側をチャックテーブルにより吸引保持し、コアドリルの砥石の下端が保護テープの基材をくり抜かない高さ位置までコアドリルを下降させることで、小径ウエーハを確実にくり抜き、かつ、チャックテーブルをくり抜いてしまうことを防止することができる。しかし、保護テープを使用することで加工費用が嵩むという問題が生じる。
【0006】
よって、コアドリルを用いて一枚のウエーハから小径ウエーハをくり抜く加工を行う場合においては、コアドリルによってチャックテーブルを傷つけてしまうといった事態が生じないようにし、かつ、保護テープの使用による加工費用の増加が起きないようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、ウエーハから小径ウエーハをくり抜き加工する加工装置であって、ウエーハから複数枚の該小径ウエーハを円環状の砥石でくり抜く加工を可能にするとともにくり抜かれて穴が形成されたウエーハとくり抜かれて作製された該小径ウエーハとを吸引保持でき、該小径ウエーハより僅かに小さい面積の円状の保持面と、該保持面の中心と中心を同一とし該保持面を囲み該小径ウエーハの直径より僅かに小さい内径を備える円環状溝と、ウエーハの該小径ウエーハがくり抜かれた部分以外の領域を吸引保持する第2の保持面と、を備えるチャックテーブルが装着された保持手段と、該チャックテーブルが保持したウエーハから小径ウエーハをくり抜くコアドリルが装着されたくり抜き手段と、該チャックテーブルが保持するウエーハの径方向に該保持手段と該くり抜き手段とを相対的に移動させる位置決め手段とを備え、該保持手段は、該チャックテーブルの中心を軸に該チャックテーブルを回転させる回転部と、所定の角度で該回転部を停止させる停止部とを備え、該位置決め手段でウエーハの径方向位置を位置決めし、該停止部が所定の角度で停止させた該チャックテーブルが保持するウエーハに該コアドリルを切り込ませウエーハをくり抜き小径ウエーハを形成する加工装置である。
そして、該チャックテーブルは、該保持面と該円環状溝とが、該チャックテーブルの中心を中心とした同心円に沿って円周方向に等間隔に複数配設されると好ましい。
また、該チャックテーブルは、保持するウエーハを切削送りして切削ブレードを切削送り方向に直線状に切り込ませ、該小径ウエーハの外周を該切削ブレードで切り欠いて該小径ウエーハの円周方向におけるマークの形成を可能とするように該保持面と該円環状溝とが配置されると好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る加工装置は、ウエーハから複数枚の小径ウエーハを円環状の砥石でくり抜く加工を可能にするとともにくり抜かれて穴が形成されたウエーハとくり抜かれて作製された小径ウエーハとを吸引保持でき、小径ウエーハより僅かに小さい面積の円状の保持面と、保持面の中心と中心を同一とし保持面を囲み小径ウエーハの直径より僅かに小さい内径を備える円環状溝と、ウエーハの小径ウエーハがくり抜かれた部分以外の領域を吸引保持する第2の保持面と、を備えるチャックテーブルが装着された保持手段と、チャックテーブルが保持したウエーハから小径ウエーハをくり抜くコアドリルが装着されたくり抜き手段と、チャックテーブルが保持するウエーハの径方向に保持手段とくり抜き手段とを相対的に移動させる位置決め手段とを備え、保持手段は、チャックテーブルの中心を軸にチャックテーブルを回転させる回転部と、所定の角度で回転部を停止させる停止部とを備えていることから、位置決め手段でウエーハの径方向位置を位置決めし、停止部が所定の角度で停止させたチャックテーブルが保持するウエーハにコアドリルを切り込ませ、小径ウエーハのくり抜き加工を連続的に行っていくことが可能になる。
また、本発明に係る加工装置においては、チャックテーブルが、保持面と円環状溝とが、チャックテーブルの中心を中心とした同心円に沿って円周方向に等間隔に複数配設されていることで、コアドリルがチャックテーブルに接触することなく、また、加工費用を増加させることもなく、かつ、チャックテーブルを回転させて、又は、チャックテーブルをウエーハの径方向に移動させて小径ウエーハのくり抜き加工を連続的に行っていくことが可能になる。
また、本発明に係る加工装置においては、チャックテーブルが、保持するウエーハを切削送りして切削ブレードを切削送り方向に直線状に切り込ませ、小径ウエーハの外周を切削ブレードで切り欠いて小径ウエーハの円周方向におけるマークの形成を可能とするように保持面と円環状溝とが配置されることで、チャックテーブルに保持したウエーハの外周領域に、結晶方位の判別を容易にするために用いられるオリエンテーションフラット等のマークを形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】加工装置の一例を示す斜視図である。
図2】チャックテーブルの中心を中心とした同心円に沿って円周方向に等間隔に保持面と円環状溝とが複数配設されたチャックテーブルの一例を示す平面図である。
図3】チャックテーブルの構造の一部分及びくり抜き手段の構造の一例を示す端面図である。
図4】チャックテーブルで保持されたウエーハにコアドリルを切込ませて小径ウエーハをくり抜いた状態を示す端面図である。
図5】小径ウエーハの外周を切削ブレードで切り欠いて小径ウエーハの円周方向におけるマークの形成を可能とするように保持面と円環状溝とが複数配置されたチャックテーブルの一例を示す平面図である。
図6】小径ウエーハの外周を切削ブレードで切り欠いて小径ウエーハの円周方向におけるマークの形成を可能とするように保持面と円環状溝とが複数配置されたチャックテーブルの別例を示す平面図である。
図7】ウエーハに切削ブレードをハーフカット溝が形成されるように切込ませている状態を示す側面図である。
図8】小径ウエーハの外周を切削ブレードで切り欠いて小径ウエーハの円周方向におけるハーフカット溝を形成している状態を一部分だけ拡大して示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示す加工装置1は、チャックテーブル30が保持するウエーハWにコアドリル74を切り込ませウエーハWをくり抜いて、小径ウエーハW1を形成する加工装置である。加工装置1の基台10上の前方(−Y方向側)は、保持手段31に装着されたチャックテーブル30に対してウエーハWの着脱が行われる領域である着脱領域Aとなっており、基台10上の後方(+Y方向側)は、くり抜き手段7によってチャックテーブル30上に保持されたウエーハWのくり抜き加工が行われる領域である加工領域Bとなっている。くり抜き加工が施される図1に示すウエーハWは、例えば、外形が円形板状のシリコンウエーハである。
【0017】
加工装置1は、CPU及びメモリ等の記憶素子で構成され装置全体の制御を行う制御手段9を備えている。制御手段9は、図示しない配線によって、図1に示すくり抜き送り手段5及び位置決め手段2等に接続されており、制御手段9の制御の下で、くり抜き送り手段5によるくり抜き手段7のくり抜き送り動作や、位置決め手段2によるチャックテーブル30のY軸方向における位置決め動作等が制御される。
【0018】
加工領域Bには、コラム11が立設されており、コラム11の−Y方向側の側面にはくり抜き手段7をチャックテーブル30に対して離間又は接近する上下方向にくり抜き送りするくり抜き送り手段5が配設されている。くり抜き送り手段5は、鉛直方向(Z軸方向)の軸心を有するボールネジ50と、ボールネジ50と平行に配設された一対のガイドレール51と、ボールネジ50の上端に連結しボールネジ50を回動させるモータ52と、内部のナットがボールネジ50に螺合し側部がガイドレール51に摺接する昇降板53と、昇降板53に連結されくり抜き手段7を保持するホルダ54とを備えており、モータ52がボールネジ50を回動させると、これに伴い昇降板53がガイドレール51にガイドされてZ軸方向に往復移動し、ホルダ54に保持されたくり抜き手段7がZ軸方向にくり抜き送りされる。
【0019】
チャックテーブル30に保持されたウエーハWをくり抜き加工するくり抜き手段7は、軸方向が鉛直方向(Z軸方向)である回転軸70と、回転軸70を回転可能に支持するハウジング71と、回転軸70を回転駆動するモータ72と、回転軸70の下端に接続された円形板状のマウント73と、マウント73の下面に着脱可能に接続されたコアドリル74とを備える。
【0020】
コアドリル74は、例えば、下端側が解放され上端側が閉鎖された円筒状の基体部740を備えており、基体部740の円環状の下端面には、全周にわたって円環状の砥石741が配設されている。砥石741は、例えば、レジンボンドやメタルボンド等でダイヤモンド砥粒等が固着されて成形されている。なお、砥石741の形状は、環状に一体に形成されているものに限定されず、略直方体形状の複数の砥石が基体部740の下端面に環状に複数配設されているものであってもよい。
【0021】
チャックテーブル30は、防水カバー39によって周囲から囲まれ、チャックテーブル30の下方に配設された保持手段31に装着されており、保持手段31によりZ軸方向の軸心周りに回転可能に支持されている。また、防水カバー39には、Y軸方向に伸縮する蛇腹カバー391が連結されている。防水カバー39及び蛇腹カバー391は、くり抜き加工時にコアドリル74とウエーハWとの接触部位及びその周囲に供給される洗浄水等を基台10の内部に入り込ませないようにカバーする役割を果たす。
【0022】
図1に示すように、基台10の内部には、チャックテーブル30が保持するウエーハWの径方向(図1においてはY軸方向)に保持手段31を往復移動させる位置決め手段2が内蔵されている。位置決め手段2は、例えば、Y軸方向の軸心を有するボールネジ20と、ボールネジ20が配設される保持台24と、ボールネジ20と平行に保持台24上に配設された一対のガイドレール21と、ボールネジ20を回動させるモータ22と、内部のナットがボールネジ20に螺合し底部がガイドレール21に摺接する可動ブロック23とから構成される。そして、モータ22がボールネジ20を回動させると、これに伴い可動ブロック23がガイドレール21にガイドされてY軸方向に移動し、可動ブロック23上に配設された保持手段31が可動ブロック23の移動に伴いY軸方向に移動する。モータ22は、例えば、サーボモータであり、モータ22の回転数を検出する図示しないロータリエンコーダが接続されている。そして、このロータリエンコーダは、サーボアンプとしても作用する制御手段9に接続されており、制御手段9からモータ22に対して動作信号が供給された後、エンコーダ信号(モータ22の回転数)を制御手段9に対して出力する。制御手段9は、ロータリエンコーダから制御手段9に対して出力されるエンコーダ信号によって、チャックテーブル30のY軸方向における移動量を算出する。
【0023】
チャックテーブル30の下方に配設された保持手段31は、例えば、有底筒状のケーシング310と、チャックテーブル30の中心を軸にチャックテーブル30を回転させる回転部311と、所定の角度で回転部311を停止させる停止部312とを備えている。
【0024】
ケーシング310の底面側は可動ブロック23の上面に固定されており、ケーシング310の上端側には図示しないベアリングを介してチャックテーブル30の底面側が装着されている。ケーシング310の内部に収容されている回転部311は、例えば、チャックテーブル30の底面側にその上端が固定された回転軸311aと、回転軸311aを回転させるモータ311bとを備えている。回転軸311aのZ軸方向に延びる軸心線上には、チャックテーブル30の回転中心が位置しており、回転軸311aの下端側は、モータ311bの出力を伝達するシャフトに連結されている。
【0025】
モータ311bは、例えば、サーボモータであり、モータ311bには、回転軸311aの回転角度を検出し、かつ、エンコーダ信号(検出したモータ311bの回転数を示す信号)を制御手段9に送信するロータリエンコーダが停止部312として接続されている。停止部312は、制御手段9にエンコーダ信号を出力し制御手段9からのモータ311bへの動作信号の供給を停止させることで回転部311を停止させる。そして、停止部312として作用するロータリエンコーダは、例えば、電源投入時において原点復帰動作が不要なアブソリュート型のエンコーダであってもよいし、原点センサを備えるインクリメンタル方式でもよい。なお、停止部312及び制御手段9による回転部311の角度停止制御は、このようなサーボモータを用いたフィードバック制御によって実現されるものに限定されず、ステッピングモータを用いた位置制御等によって実現されるものであってもよい。
【0026】
(チャックテーブルの実施形態1)
本発明に係る図1、2に示すチャックテーブル30は、例えば、汎用エンプラ又は合金等の材料からなり外形が円形状に形成されたチャック部30Aと、チャック部30Aを支持する有底円形枠体状の枠体部30Bとを備えている。なお、図1においては、チャック部30Aを簡略化して示しており、後述する円環状溝301及び保持面300等を省略して示している。例えば、図2に示すように、チャック部30Aの外周領域には、周方向に一定の間隔をおいて複数(例えば90度間隔で4つ)のボルト挿通穴309が厚み方向(Z軸方向)に向かって貫通形成されており、ボルトをボルト挿通穴309に通して枠体部30Bのネジ穴に螺合させることにより、チャック部30Aを枠体部30Bに固定することができる。ボルトのネジ頭はチャック部30Aの上面から突出しないように、ボルト挿通穴309内に埋設された状態となることで、枠体部30Bに固定された状態のチャック部30Aの上面は平坦な状態が保たれる。なお、チャック部30Aの枠体部30Bへの固定は、チャック部30Aの外周面および下面の一部が適宜のボンド剤を介して枠体部30Bに接着されることでなされるものとしてもよい。また、チャックテーブル30は、チャック部30Aと枠体部30Bとが一体的に構成されたものであってもよい。
【0027】
例えば、枠体部30Bの外周領域には、周方向に一定の間隔をおいて複数の取り付け孔308が厚み方向(Z軸方向)に向かって貫通形成されており、図示しないボルトと取り付け孔により、チャックテーブル30を図1に示す保持手段31のケーシング310に装着することができる。ボルトのネジ頭は枠体部30Bの上面から突出しないように、取り付け孔308内に埋設された状態となることで、ケーシング310に固定された状態の枠体部30Bの上面は平坦な状態が保たれる。
【0028】
図2に示すチャック部30Aの上面は、例えば、枠体部30Bの上面と面一に、又は段差を設けるように形成されており、ウエーハWからくり抜かれて作製された小径ウエーハW1より僅かに小さい面積の円状の保持面300と、保持面300の中心と中心を同一とし保持面300を囲み小径ウエーハW1の直径より僅かに小さい内径を備える円環状溝301と、ウエーハWの小径ウエーハW1がくり抜かれた部分以外の領域を吸引保持する第2の保持面302とを備えている。
【0029】
例えば、図2に示すように、保持面300と円環状溝301とは、チャックテーブル30の中心を中心とした同心円に沿って円周方向に等間隔で複数配設されている。図2、3に示すように、各保持面300には、上方に向かって開口する吸引孔300aが例えば複数形成されており、各吸引孔300aは、例えば、チャックテーブル30の内部に径方向外側に向かって延びる吸引路300bの一本に合流している。吸引路300bの下端側は、チャック部30Aの底面と枠体部30Bとの間に形成される環状の吸引空間300cに連通し、吸引空間300cは、枠体部30Bの底板に形成された図3に示す貫通孔307を介して、可撓性を有する樹脂チューブ又は金属配管等で構成される吸引管370の一端に連通している。例えば、吸引管370は、ケーシング310の内部に配設された図示しないロータリージョイント等を介してケーシング310の内部を通過しており、そのもう一端が真空発生装置及びコンプレッサー等からなる吸引源37に連通している。
【0030】
図3に示すように、円環状溝301の深さは、少なくとも、ウエーハWを完全切断する切込み高さ位置までコアドリル74の砥石741を下降させた場合に、砥石741の最下端が円環状溝301の底に接触しない程度の深さを有する。なお、チャック部30Aは、円環状溝301の深さよりも厚く形成されている。円環状溝301の内径は、ウエーハWがくり抜かれて作製される小径ウエーハW1の直径よりも僅かに小さくなっており、例えば、砥石741の内径よりも僅かに小さくなっている。円環状溝301の外径は、例えば、砥石741の外径よりも僅かに大きくなっている。
【0031】
チャック部30Aの上面には、図2,3に示すように、径方向外側に向かって放射状に延びる複数の放射状吸引溝304aと、径方向に所定の間隔を保って形成される複数の円環状の環状吸引溝304bとが形成されている。複数の環状吸引溝304bは、チャックテーブル30の中心を中心とする同心円状に形成されており、図2に示す例においては5つ形成されている。そして、吸引源37により生み出される負圧(吸引圧力)は、この放射状吸引溝304aを通じて各環状吸引溝304bに伝えられる。
【0032】
図2に示すように、+Z方向から見て放射状吸引溝304aと環状吸引溝304bとによって区画された各領域に、保持面300と円環状溝301とがセットで形成されている。例えば、図2においては、チャック部30Aの上面において最も中心側に形成された環状吸引溝304bで区画された円形状の領域に、保持面300と円環状溝301とが1つずつ形成されている。
チャック部30Aの上面において最も中心側に形成された環状吸引溝304bと、その1つ径方向外側に形成され中心から数えて二番目となる環状吸引溝304bと、この二つの環状吸引溝304bとにそれぞれ連通する6本の放射状吸引溝304aとで区画された6つの領域に、保持面300と円環状溝301とが1つずつ形成されている。例えば、上記6つの領域にそれぞれ1つずつ形成された各円環状溝301の周方向における間隔は、各円環状溝301が60度ずつ離間していることで一定になっている。
チャック部30Aの上面において中心側から数えて二番目の環状吸引溝304bと、その1つ径方向外側に形成された中心から三番目となる環状吸引溝304bと、この二つの環状吸引溝304bとにそれぞれ連通する4本の放射状吸引溝304aとで区画された4つの領域に、保持面300と円環状溝301とがそれぞれ3つずつ形成されている。上記4つの領域にそれぞれ3つずつ形成された各円環状溝301の周方向における間隔は、各円環状溝301が30度ずつ離間していることで一定になっている。
このように、保持面300と円環状溝301とは、例えば、チャックテーブル30の中心を中心とした同心円に沿って円周方向に等間隔で、チャック部30の上面において計5周に渡って形成されている。チャックテーブル30の中心から径方向外側に向かって4番目の周に位置する計20個の円環状溝301の周方向における間隔は、各円環状溝301が18度ずつ離間していることで一定になっている。また、チャックテーブル30の中心側から径方向外側に向かって5番目の周(最外周)に位置する計25個の円環状溝301の周方向における間隔は、各円環状溝301が14.4度ずつ離間していることで一定になっている。したがって、チャック部30Aの上面には、例えば、計64個の保持面300と計64個の円環状溝301とが形成されている。
【0033】
ウエーハWの小径ウエーハW1がくり抜かれた部分以外の領域を吸引保持する第2の保持面302は、例えば、チャック部30Aの上面における複数の保持面300と複数の円環状溝301とを除いた領域となる。なお、保持面300及び円環状溝301の形成個数及び円周方向における間隔は本実施形態におけるものに限定されない。
【0034】
以下に、加工装置1において、チャックテーブル30に保持されたウエーハWからくり抜き手段7によって小径ウエーハW1をくり抜く加工を行う場合の、加工装置1の動作について説明する。まず、図1に示す着脱領域A内において、チャックテーブル30の中心とウエーハWの中心とが略合致するように、ウエーハWが、例えば裏面Wb側を下にしてチャック部30A上に載置される。そして、吸引源37が作動し、吸引源37で生み出される吸引力が、図3に示す吸引管370、吸引空間300c、吸引路300b、及び吸引口300aを通り各保持面300に伝達される。また、吸引源37が駆動することで生み出される吸引力が、吸引管370、吸引空間300c、放射状吸引溝304a及び環状吸引溝304b(図3においては不図示)を通り第2の保持面302に伝達されることで、保持面300と第2の保持面302とによってチャック部30A上でウエーハWが吸引保持された状態になる。
【0035】
次いで、図1に示す制御手段9から位置決め手段2のモータ22に対して所定量の動作信号が供給され、モータ22がボールネジ20を回動させ、可動ブロック23がガイドレール21にガイドされてY軸方向に移動し、可動ブロック23上に配設された保持手段31が可動ブロック23の移動に伴いY軸方向に移動する。すなわち、位置決め手段2が、チャックテーブル30が保持するウエーハWの径方向(図1におけるY軸方向)に保持手段31とくり抜き手段7とを相対的に移動させる。例えば、図2に示すチャック部30Aの保持面300及び円環状溝301の配設個数及び配設位置等についての情報は、制御手段9に予め記憶されている。そして、チャックテーブル30が着脱領域Aから加工領域B内のくり抜き手段7の直下まで+Y方向へ移動した後、くり抜き手段7に備えるコアドリル74とチャックテーブル30との位置合わせがなされる。この位置合わせは、例えば、図3に示すように、コアドリル74の砥石741の回転中心が1つの保持面300、本実施形態においては、例えば、チャック部30Aの上面において中心から最も外側に形成された保持面300の1つの中心に略合致し、砥石741の回転軌道がこの保持面300を囲む円環状溝301上に重なるように行われる。
【0036】
次いで、モータ72が回転軸70を例えば+Z方向側から見て反時計回り方向に回転駆動するのに伴って砥石741が回転する。また、くり抜き手段7が−Z方向へとくり抜き送りされ、回転するコアドリル74の砥石741がウエーハWの表面Waに当接することでくり抜き加工が開始される。なお、くり抜き加工中においては、例えば、洗浄水を砥石741とウエーハWとの接触部位に対して供給して、砥石741とウエーハWの表面Waとの接触部位を冷却・洗浄する。図4に示すように、コアドリル74がウエーハWを完全切断しコアドリル74の砥石741の最下端がチャックテーブル30の円環状溝301内に至るくり抜き高さ位置までくり抜き手段74がくり抜き送りされることで、ウエーハWから一枚の小径ウエーハW1が作製される。
【0037】
本発明に係るチャックテーブル30は、小径ウエーハW1より僅かに小さい面積の円状の保持面300と、保持面300の中心と中心を同一とし保持面300を囲み小径ウエーハW1の直径より僅かに小さい内径を備える円環状溝301と、ウエーハWの小径ウエーハW1がくり抜かれた部分以外の領域を吸引保持する第2の保持面302とを備えていることから、コアドリル74をウエーハWを完全切断するくり抜き高さ位置までくり抜き送りしても、砥石741を円環状溝に収容させることで、コアドリル74がチャックテーブル30を傷付けてしまうといった事態が生じないようにしつつ、小径ウエーハW1を作製できる。また、くり抜かれて作製された小径ウエーハW1を保持面300によって確実に吸引保持することができるため、くり抜かれて作製された小径ウエーハW1がチャックテーブル30上で動いてしまい砥石741に衝突して欠けてしまう等の事態も発生しない。さらに、第2の保持面302でウエーハWの小径ウエーハW1がくり抜かれた部分以外の領域を確実に吸引保持することができるため、ウエーハWがチャックテーブル30上でずれてしまう等の事態も生じない。よって、小径ウエーハW1のくりぬき加工を容易に行うことを可能にし、また、ウエーハWに貼着する保護テープを使用せずに済むことから加工費用を増加させることもない。
【0038】
ウエーハWから小径ウエーハW1が一枚くり抜かれた後、くり抜き送り手段5によりくり抜き手段7を+Z方向へと移動させてウエーハWから離間させる。くり抜かれて作製された一枚の小径ウエーハW1は、保持面300上で吸引保持された状態が維持される。次いで、制御手段9から回転部311のモータ311bに対して動作信号が供給されることで回転軸311aが+Z方向からみて例えば反時計周り方向に回転する。さらに、停止部312が、制御手段9にエンコーダ信号(検出したモータ311bの回転数を示す信号)を出力し制御手段9からのモータ311bへの動作信号の供給を停止させることで、正確に14.4度だけウエーハWを保持するチャックテーブル30が+Z方向からみて反時計周り方向に回転し停止する。そのため、図4に示す円環状溝301の周方向に向かって隣に位置する円環状溝301上に砥石741の回転軌道が重なるように、くり抜き手段7とチャックテーブル30との位置合わせが行われた状態となる。
【0039】
次いで、くり抜き手段7が−Z方向へとくり抜き送りされ、回転するコアドリル74の砥石741が未だくり抜かれていないウエーハWの表面Waに当接することでくり抜き加工が開始され、二枚目の小径ウエーハW1がくり抜かれて作製される。このように、回転部311によるチャックテーブル30の回転動作と、所定の角度分(例えば、14.4度)だけチャックテーブル30の回転させた後の停止部312による回転部311の停止動作と、くり抜き手段7の上下動動作とを順次同様に行うことにより、図2に示すチャックテーブル30の中心から径方向外側に向かって5番面の周(最外周)に位置する計25個の保持面300上に、それぞれ小径ウエーハW1がくり抜かれた状態で一枚ずつ吸引保持された状態となる。したがって、計25枚の小径ウエーハW1が作製された状態になる。
【0040】
次いで、制御手段9から位置決め手段2のモータ22に対して所定量の動作信号が供給され、位置決め手段2がチャックテーブル30をY軸方向に移動する。そして、位置決め手段2によるフィードバック制御が行われることで、コアドリル74の砥石741の回転中心が、チャックテーブル30の中心から径方向外側に向かって4番面の周に位置する複数の保持面300のうちの1つの中心に略合致し、砥石741の回転軌道がこの保持面300を囲む円環状溝301上に重なるようにして、ウエーハWの径方向位置における位置決めがなされる。
【0041】
くり抜き手段7が−Z方向へとくり抜き送りされ、回転するコアドリル74の砥石741が未だくり抜かれていないウエーハWの表面Waに当接することでくり抜き加工が開始され、26枚目の小径ウエーハW1がくり抜かれて作製される。くり抜き手段7が+Z方向に向かって上昇しウエーハWから離間した後、制御手段9から回転部311のモータ311bに対して所定量の動作信号が供給されることで、回転軸311aが+Z方向からみて反時計周り方向に回転する。さらに、停止部312が、制御手段9にエンコーダ信号(検出したモータ311bの回転数を示す信号)を出力し制御手段9からのモータ311bへの動作信号の供給を停止させることで、正確に18度だけウエーハWを保持するチャックテーブル30が+Z方向からみて反時計周り方向に回転され停止する。そのため、図2に示す円環状溝301の周方向に向かって隣に位置する円環状溝301上に砥石741の回転軌道が重なるように、くり抜き手段7とチャックテーブル30との位置合わせが行われた状態となる。
【0042】
次いで、くり抜き手段7が−Z方向へとくり抜き送りされ、回転するコアドリル74の砥石741が未だくり抜かれていないウエーハWの表面Waに当接することでくり抜き加工が開始され、27枚目の小径ウエーハW1がくり抜かれて作製される。このように、回転部311によるチャックテーブル30の回転動作と、所定の角度分(計5周に渡って形成されている保持面300の各周ごとにおける離間角度分)だけチャックテーブル30の回転させた後の停止部312による回転部311の停止動作と、くり抜き手段7の上下動動作と、位置決め手段2によるウエーハWの径方向(Y軸方向)位置の位置決め動作とを順次同様に行うことにより、チャック部30Aに形成されている計64個の保持面300と同じ数(計64枚)だけの小径ウエーハW1を、ウエーハWの全面からくり抜いて作製することができる。
【0043】
上記のように、本発明に係るチャックテーブル30は、保持面300と円環状溝301とが、チャックテーブル30の中心を中心とした同心円に沿って円周方向に等間隔で複数配設されるものとすることで、コアドリル74がチャックテーブル30を傷付けることなく、また、保護テープの使用による加工費用を増加させることもなく、かつ、チャックテーブル30を回転させて、又は、チャックテーブル30をウエーハWの径方向に移動させて小径ウエーハW1のくり抜き加工を連続的に行っていくことが可能になる。
【0044】
また、本発明に係る加工装置1は、チャックテーブル30を装着する保持手段31と、チャックテーブル30が保持したウエーハWから小径ウエーハW1をくり抜くコアドリル74を装着するくり抜き手段7と、チャックテーブル30が保持するウエーハWの径方向に保持手段31とくり抜き手段7とを相対的に移動させる位置決め手段2とを備え、保持手段31は、チャックテーブル30の中心を軸にチャックテーブル30を回転させる回転部311と、所定の角度で回転部311を停止させる停止部312とを備えていることから、位置決め手段2でウエーハWの径方向位置を位置決めし、停止部312が所定の角度で停止させたチャックテーブル30が保持するウエーハWにコアドリル74を切り込ませ、連続的に小径ウエーハW1のくり抜き加工を行っていくことが可能になる。
【0045】
なお、回転部311によるチャックテーブル30の回転動作、所定の角度分だけチャックテーブル30の回転させた後の停止部312による回転部311の停止動作、及び位置決め手段2によるウエーハWの径方向(Y軸方向)位置の位置決め動作は、例えば、加工装置1にチャックテーブル30の保持面300及び円環状溝301を検出するアライメント手段を備えるものとし、このアライメント手段から制御手段9に送られる検出信号を組み合わせることで実現されるようにしてもよい。
例えば、アライメント手段は、くり抜き手段7の近傍(例えば、図1に示すホルダ54の側面)に配設されており、カメラにより保持面300及び円環状溝301を撮像した画像に基づき、パターンマッチング等の画像処理によって保持面300及び円環状溝301の座標位置検出することができる。そして、アライメント手段は、検出した保持面300及び円環状溝301の座標位置情報を制御手段9に検出信号として送信する。
【0046】
(チャックテーブルの実施形態2)
本発明に係る図5に示すチャックテーブル35は、例えば、汎用エンプラ又は合金等の材料からなり外形が円形状に形成されたチャック部35Aと、チャック部35Aを支持する円形板状の枠体部35Bとを備えている。図7に示すように、チャック部35Aの枠体部35Bへの固定は、チャック部35Aの下面の一部が適宜のボンド剤を介して枠体部35Bの上面に接着されることでなされる。
【0047】
例えば、図5に示すように、枠体部35Bの外周領域には、周方向に一定の間隔をおいて複数の取り付け孔308が厚み方向(Z軸方向)に向かって貫通形成されており、図示しないボルトと取り付け孔により、チャックテーブル35を図1に示す保持手段31のケーシング310に装着することができる。
【0048】
図5に示すチャック部35Aの上面は、ウエーハWからくり抜かれて作製された小径ウエーハW1より僅かに小さい面積の円状の保持面300と、保持面300の中心と中心を同一とし保持面300を囲み小径ウエーハW1の直径より僅かに小さい内径を備える円環状溝301と、ウエーハWの小径ウエーハW1がくり抜かれた部分以外の領域を吸引保持する第2の保持面306とを備えている。
【0049】
チャック部35Aは、図2に示すチャック部30Aの構成の一部、すなわち、保持面300及び円環状溝301の配設個数及び配設位置並びに放射状吸引溝304aの形成本数及び形成箇所を変更したものであり、それ以外については、チャック部35Aとチャック部30Aとは同様に構成されている。
【0050】
チャック部35Aには、チャックテーブル35が保持するウエーハWを切削送りして図7に示す切削ブレード60を直線状に切り込ませ、小径ウエーハW1の外周を切削ブレード60で切り欠いて小径ウエーハW1の円周方向におけるマークの形成を可能とするように保持面300と円環状溝301とが配置されている。
【0051】
図5に示すように、チャック部35Aの上面において、例えば、保持面300及び円環状溝301はチャックテーブル30の中心を中心とした同心円に沿って円周方向に配設される。そして、チャック部35A上の任意のY座標位置においてX軸方向に並列する複数の保持面300の中心及び複数の円環状溝301の中心は、X軸方向に平行に延びる一本の直線上に位置している。なお、X軸方向は、切削ブレード60を切削送りする方向と一致する方向となる。
すなわち、例えば、図5に示すように、チャックテーブル35の中心を通りX軸方向に延びる一本の直線上に各保持面300の中心が位置するようにして、保持面300及び円環状溝301がそれぞれ計9個X軸方向に並んでいる。
チャックテーブル30の中心を通りX軸方向に延びる直線上に9個の保持面300及び円環状溝301が並ぶ一列から、所定距離だけ−Y方向側にずれた位置には、保持面300及び円環状溝301の各中心のY座標位置を合わせて、保持面300及び円環状溝301がそれぞれ計8個X軸方向に並んでいる。また、チャックテーブル35の中心を通りX軸方向に延びる直線上に9個の保持面300及び円環状溝301が並ぶ一列から、所定距離だけ+Y方向側にずれた位置には、保持面300及び円環状溝301の各中心のY座標位置を合わせて、保持面300及び円環状溝301がそれぞれ計8個X軸方向に並んでいる。
上記のような、チャック部35A上の任意のY座標位置においてX軸方向に平行に延びる直線上に複数の保持面300及び円環状溝301の中心が位置しX軸方向に並ぶ規則性に基づいて、チャック部35Aの上面には、例えば、保持面300及び円環状溝301がそれぞれ計61個配設されている。
【0052】
図6に示すチャック部35Cは、図5に示すチャック部35Aの別例であり、チャック部35Aの構成の一部、すなわち、保持面300及び円環状溝301の配設個数をそれぞれ4つ減らしたものであり、それ以外の構成については、チャック部35Cとチャック部35Aとは同様に構成されている。つまり、チャック部35Cでは、図6においてくり抜かれた小径ウエーハの+Y方向側の外周を直線的に切り欠いてオリエンテーションフラットを形成する。チャック部35Aは、図5においてくり抜かれた小径ウエーハの+Y方向側の外周または−Y方向側の外周を直線的に切り欠いてオリエンテーションフラットを形成する。そして、チャック部35Cとチャック部35Aとを選択的に使い分けることで、小径ウエーハの外周の一部を切り欠いて結晶方位を示すオリエンテーションフラットを形成することができる。なお、切り欠かれたウエーハは、保持面300で保持されている。
【0053】
以下に、図7に示すように、チャックテーブル35が保持するウエーハWを切削送りして切削ブレード60を直線状に切り込ませ、小径ウエーハW1の外周を切削ブレード60で切り欠いて小径ウエーハW1の円周方向におけるマーク(オリエンテーションフラット)を形成する場合について説明する。例えば、図7に示すウエーハWは、加工装置1に配設されたチャックテーブル35上に吸引保持された状態となっており、また、その全面から既に計61枚の小径ウエーハW1がくり抜かれた状態になっている。なお、先に実施したチャックテーブル35上に吸引保持されたウエーハWからの小径ウエーハW1のくり抜き加工は、例えば、図1に示す位置決め手段2でウエーハWの径方向位置を位置決めし、停止部312が所定の角度で停止させたチャックテーブル35が保持するウエーハWにコアドリル74を切り込ませる際に、先に説明したアライメント手段による画像処理を実施することで実現されている。
【0054】
図7に示す切削手段6は、例えば、チャックテーブル35のX軸方向の移動経路上に配設されており、図示しない割り出し送り手段によってY軸方向へ移動可能となっており、図示しない切り込み送り手段によってZ軸方向に移動可能となっている。切削手段6に備える切削ブレード60は、例えば、軸方向がX軸方向に対し水平方向に直交する方向(Y軸方向)であるスピンドル61に回転可能に装着されている。そして、図示しないモータによりスピンドル61が回転駆動されることに伴って、切削ブレード60も高速回転する。
【0055】
切削手段6の近傍には、検出手段6Aが配設されている。検出手段6Aは、カメラにより取得した画像に基づいて、チャックテーブル35の保持面300及び円環状溝301を検出することができる。検出手段6Aと切削手段6とは一体となって構成されており、両者は連動してY軸方向及びZ軸方向へと移動する。
【0056】
小径ウエーハW1の円周方向におけるオリエンテーションフラット等のマークの形成については、まず、チャックテーブル35に保持されたウエーハWが−X方向に送られるとともに、検出手段6Aにより、例えば、図5に示すチャック部35Aの上面において中心から最も−Y方向側に形成された2つの保持面300が検出される。すなわち、カメラによって撮像された2つの保持面300の画像により、検出手段6Aがパターンマッチング等の画像処理を実行し、切削ブレード60を切り込ませる図5に一点鎖線で示す切削ラインL1の位置が検出される。切削ラインL1は、X軸方向に平行な直線であり、例えば、上記2つの保持面300の−Y軸方向側の外周に接する接線である。
【0057】
切削ラインL1が検出されるのに伴って、切削手段6が図示しない割り出し送り手段によってY軸方向に駆動され、切削すべき切削ラインL1と切削ブレード60とのY軸方向における位置合わせがなされる。切削ブレード60と検出した切削ラインL1とのY軸方向の位置合わせが図示しない割り出し送り手段によって行われた後、ウエーハWを保持するチャックテーブル30が所定の切削送り速度で−X方向に送り出される。また、図示しない切り込み送り手段が図7に示す切削手段6を−Z方向に降下させていき、例えば、切削ブレード60の最下端がウエーハWの裏面Wbを切り抜けない所定の高さ位置に切削手段6が位置付けられる。
【0058】
図示しないモータがスピンドル61を高速回転させ、スピンドル61に固定された切削ブレード60がスピンドル61の回転に伴って高速回転をしながらウエーハWに切込み、図5に示す切削ラインL1を切削していく。図5に示すように、保持面300の面積は小径ウエーハW1より僅かに小さい円状であり、切削ラインL1は保持面300の外周に接する直線であるため、チャック部35Aの上面において中心から最も−Y方向の外側に形成された2つの保持面300で吸引保持されている小径ウエーハW1の外周の一部が、切削ブレード60で切り欠かれ、この2つの小径ウエーハW1の表面の外周から僅かに内側の領域にハーフカット溝が直線状に形成される。図8に示すように、小径ウエーハW1は保持面300によって確実に吸引保持されているため、切削ブレード60が小径ウエーハW1に切り込むことによる小径ウエーハW1のずれ等は生じない。
【0059】
切削ブレード60が図5に示す一本目の切削ラインL1を切削し終えるX軸方向の所定の位置までウエーハWが−X方向に進行すると、ウエーハWの切削送りを一度停止させ、図示しない切込み送り手段が切削ブレード60をウエーハWから離間させ、次いで、位置決め手段2がチャックテーブル30を+X方向へ送り出して元の位置に戻す。
【0060】
次いで、検出手段6Aにより、例えば、図5に示すチャック部35Aの上面において中心から最も−Y方向側に形成された2つの保持面300よりも一列だけ+Y方向側に位置する二つの保持面300(以下、−Y方向側から二列目の保持面300とする。)及び−Y方向側から二列目の保持面300より+Y方向側に位置する4つの保持面300(以下、−Y方向側から3列目の保持面300とする。)をカメラによって撮像し、撮像された画像により、検出手段6Aがパターンマッチング等の画像処理を実行し、切削ブレード60を切り込ませる図5に一点鎖線で示す切削ラインL2の位置が検出される。切削ラインL2は、X軸方向に平行な直線であり、例えば、−Y方向側から二列目の2つの保持面300の+Y軸方向側の外周と−Y方向側から3列目の4つの保持面300の−Y軸方向側の外周とに接する接線である。
【0061】
切削ラインL2が検出されるのに伴って、図8に示す切削手段6が図示しない割り出し送り手段によって+Y軸方向に駆動され、切削すべき切削ラインL2と切削ブレード60とのY軸方向における位置合わせがなされる。そして、切削ラインL1に対する切削加工と同様の切削加工が、二列目の保持面300及び三列目の保持面300の計6つの保持面300で各々保持された6枚の小径ウエーハW1に対して施される。
【0062】
このように、検出手段6Aのカメラにより、図5に示すチャック部35Aの上面において任意のY座標位置上でX軸方向に並ぶ複数の保持面300を1列ごと又は2列ごとに撮像して、切削ブレード60を切り込ませる一点鎖線で示す切削ラインL3〜切削ラインL11の位置を検出しつつ、切削ブレード60をY軸方向に割り出し送りしながら順次同様の切削を行うことにより、残りの同方向の全ての切削ラインL3〜切削ラインL11を切削する。その結果、各保持面300でそれぞれ一枚ずつ吸引保持されている計61枚の小径ウエーハW1の表面中の外周から僅かに内側の領域に、ハーフカット溝が形成される。
【0063】
次いで、例えば、図示しない押圧手段等によって、各小径ウエーハW1のハーフカット溝が形成されている領域に外力を加え、小径ウエーハW1の外周の一部分をハーフカット溝に沿って割断することで、小径ウエーハW1の円周方向におけるマーク(オリエンテーションフラット)を小径ウエーハW1に形成することができる。
なお、切削ブレード60による小径ウエーハW1の外周の一部分の切削は、フルカットでもよく、この場合、保持面300はフルカットされた破片も吸引保持する。その為、切削中に吸引保持力が低下しないようにウエーハWには表面Wa全面に水を行き渡らせ水シールを形成するとよい。
【0064】
なお、本発明に係るチャックテーブルは本実施形態1及び2に示すものに限定されず、また、添付図面に図示されている加工装置1の各構成等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【0065】
例えば、被加工物であるウエーハがデバイスの形成等によって表面と裏面とに違いがあるものである場合等においては、図6に示すチャック部35Cを用いることで、小径ウエーハに適切なオリエンテーションフラットを形成することができる。チャック部35Cを用いて小径ウエーハにオリエンテーションフラットを形成する場合においては、図6に示す切削ラインM1〜切削ラインM11が、検出手段6Aにより順に検出され、この切削ラインM1〜切削ラインM11に沿ってハーフカット溝もしくはフルカット溝を形成する切削が行われる。
【符号の説明】
【0066】
1:加工装置 10:基台 11:コラム
5:くり抜き送り手段50:ボールネジ 51:ガイドレール 52:モータ 53:昇降板 54:ホルダ
30:チャックテーブル
30A:チャック部 300:保持面 300a:吸引孔 300b:吸引路 300c:吸引空間
301:円環状溝 302:第2の保持面
304a:放射状吸引溝 304b: 環状吸引溝 309:ボルト挿通穴
30B:枠体部 308:取り付け孔 307:貫通孔
31:保持手段 310:ケーシング 311:回転部 311a:回転軸 311b:モータ 312:停止部
37:吸引源 370:吸引管 39:防水カバー 391:蛇腹カバー
2:位置決め手段 20:ボールネジ 21:ガイドレール 22:モータ 23:可動ブロック 24:保持台
7:くり抜き手段 70:回転軸 71:ハウジング 72:モータ 73:マウント
74:コアドリル 740:基体部 741:砥石
9:制御手段
W:ウエーハ A:着脱領域 B:加工領域
35:チャックテーブル 35A:チャック部 35B:枠体部 306:第2の保持面
6:切削手段 60:切削ブレード 61:スピンドル 6A:検出手段
35C:チャック部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8