特許第6845023号(P6845023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許6845023-検査装置 図000002
  • 特許6845023-検査装置 図000003
  • 特許6845023-検査装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845023
(24)【登録日】2021年3月1日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20210308BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   H01L21/78 P
   H01L21/66 J
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-3847(P2017-3847)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2018-113383(P2018-113383A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】森數 洋司
(72)【発明者】
【氏名】武田 昇
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−117928(JP,A)
【文献】 特開2005−043229(JP,A)
【文献】 特開2009−283633(JP,A)
【文献】 特開平05−087739(JP,A)
【文献】 特開2008−045965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査装置であって、
複数のデバイスが形成されたウエーハが載置されるテーブルと、該テーブルの外周に配設されウエーハの外周からウエーハに対して透過性を有する波長の光を照射する光源と、該テーブルに対面して配設されウエーハを撮像する撮像手段と、該撮像手段が撮像した画像を表示する表示手段と、
から、少なくとも構成され
該光源は、ウエーハの直径よりも大きい内径を有する環状板の上面に周方向に間隔をおいて複数配置されている検査装置。
【請求項2】
該撮像手段が撮像した画像を記憶する画像記憶手段と、欠陥の位置を記憶する位置記憶手段と、を含み構成される請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
ウエーハを構成する基板はSiであり、ウエーハを透過する波長は1064〜3000nmである請求項1記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスに発生したクラックを容易に検出することができる検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されシリコン基板の表面に形成されたウエーハは、切削ブレードを回転可能に備えたダイシング装置、レーザー光線を照射するレーザー加工装置によって分割予定ラインが切断されて個々のデバイスに分割され、分割されたデバイスは携帯電話、パソコン、テレビ等の電気機器に利用される。
【0003】
しかし、ダイシング装置、レーザー加工装置によってウエーハを個々のデバイスに分割、または分割予定ラインに積層されたパシベーション膜、Low−k膜を除去する等のハーフカットを行うとデバイスの内部に微細なクラックが発生する場合があり、クラックを見逃してデバイスの品質を低下させるという問題がある(特許文献1及び2参照。)。
【0004】
また、ウエーハをダイシング装置、レーザー加工装置によって加工する前にウエーハの内部にクラックが生じている場合には、ウエーハのダイシング加工、レーザー加工によってクラックが大きくなり被害が増大するという問題がある。
【0005】
更に、シリコンウエーハとガラス基板とが積層されたウエーハ、シリコンウエーハが2層以上積層されたウエーハにおいては内部に発生したクラックを検出することが困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−334751号公報
【特許文献2】特開2004−188475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、デバイスに発生したクラックを容易に検出することができる検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が提供するのは以下の検査装置である。すなわち、検査装置であって、複数のデバイスが形成されたウエーハが載置されるテーブルと、該テーブルの外周に配設されウエーハの外周からウエーハに対して透過性を有する波長の光を照射する光源と、該テーブルに対面して配設されウエーハを撮像する撮像手段と、該撮像手段が撮像した画像を表示する表示手段と、から、少なくとも構成され、該光源は、ウエーハの直径よりも大きい内径を有する環状板の上面に周方向に間隔をおいて複数配置されている検査装置である。
【0009】
好ましくは、該撮像手段が撮像した画像を記憶する画像記憶手段と、欠陥の位置を記憶する位置記憶手段と、を含み構成される。ウエーハを構成する基板はSiであり、ウエーハを透過する波長は1064〜3000nmであるのが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明が提供する検査装置は、複数のデバイスが形成されたウエーハが載置されるテーブルと、該テーブルの外周に配設されウエーハの外周からウエーハに対して透過性を有する波長の光を照射する光源と、該テーブルに対面して配設されウエーハを撮像する撮像手段と、該撮像手段が撮像した画像を表示する表示手段と、から、少なくとも構成されているので、ウエーハの形態を維持した状態で個々のデバイスに発生したクラックを容易に検出することができると共に、分割予定ラインに積層されたパシベーション膜、Low−k膜を除去する等のハーフカットによってデバイスに発生した微細なクラックを検出することができる。また、本発明の検査装置では、ダイシング装置、レーザー加工装置によってウエーハを加工する前にウエーハの内部にクラックが生じているか否かを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に従って構成された検査装置の斜視図。
図2】本発明の検査装置の光源と、本発明の検査装置によって検査されるウエーハとを示す斜視図。
図3】本発明の検査装置で検査が行われている状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成された検査装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1に示すとおり、検査装置2は、基台4と、ウエーハ等の被検査物を保持する保持手段6と、保持手段6を移動させる移動手段8と、保持手段6に保持された被検査物を撮像する撮像手段10と、撮像手段10が撮像した画像を表示する表示手段12とを備えると共に、図2に示すとおり、被検査物の外周から被検査物を照明する照明手段14を備える。
【0014】
図1に示すとおり、保持手段6は、X方向において移動自在に基台4に搭載された矩形状のX方向可動板16と、Y方向において移動自在にX方向可動板16に搭載された矩形状のY方向可動板18と、Y方向可動板18の上面に固定された円筒状の支柱20と、支柱20の上端に固定された矩形状のカバー板22とを含む。カバー板22にはY方向に延びる長穴22aが形成され、長穴22aを通って上方に延びる円形状のテーブル24が支柱20の上端に回転自在に搭載されている。テーブル24の上面には、多孔質材料から形成され実質上水平に延在する円形状の吸着チャック26が配置され、吸着チャック26は流路によって吸引手段(図示していない。)に接続されている。そして、テーブル24においては、吸引手段によって吸着チャック26の上面に吸引力を生成することにより、吸着チャック26の上面に載置された被検査物を吸着して保持することができる。また、テーブル24の周縁には、周方向に間隔をおいて複数個のクランプ28が配置されている。なお、X方向は図1に矢印Xで示す方向であり、Y方向は図1に矢印Yで示す方向であってX方向に直交する方向である。X方向及びY方向が規定する平面は実質上水平である。
【0015】
図1に示すとおり、移動手段8は、テーブル24をX方向に進退させるX方向移動手段30と、テーブル24をY方向に移動させるY方向移動手段32と、上下方向に延びる軸線を中心としてテーブル24を回転させる回転手段(図示していない。)とを含む。X方向移動手段30は、基台4上においてX方向に延びるボールねじ34と、ボールねじ34の片端部に連結されたモータ36とを有する。ボールねじ34のナット部(図示していない。)は、X方向可動板16の下面に固定されている。そしてX方向移動手段30は、ボールねじ34によりモータ36の回転運動を直線運動に変換してX方向可動板16に伝達し、基台4上の案内レール4aに沿ってX方向可動板16をX方向に進退させ、これによってテーブル24をX方向に進退させる。Y方向移動手段32は、X方向可動板16上においてY方向に延びるボールねじ38と、ボールねじ38の片端部に連結されたモータ40とを有する。ボールねじ38のナット部(図示していない。)は、Y方向可動板18の下面に固定されている。そしてY方向移動手段32は、ボールねじ38によりモータ40の回転運動を直線運動に変換してY方向可動板18に伝達し、X方向可動板16上の案内レール16aに沿ってY方向可動板18をY方向に進退させ、これによってテーブル24をY方向に進退させる。回転手段は、支柱20に内蔵されたモータ(図示していない。)を有し、上下方向に延びる軸線を中心として支柱20に対してテーブル24を回転させる。
【0016】
図1を参照して説明を続けると、撮像手段10は、基台4の上面から上方に延び次いで実質上水平に延びる枠体42の先端下面に配置され、テーブル24の上方に位置する。撮像手段10は、可視光線により被検査物を撮像する通常の撮像素子(CCD)と、赤外線を捕らえる光学系と、光学系が捕らえた赤外線に対応する電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)とを含む(いずれも図示していない。)。また、撮像手段10に電気的に接続され撮像手段10が撮像した画像の信号が出力される表示手段12は、枠体42の先端上面に搭載されている。
【0017】
図2を参照して、被検査物としてのウエーハ44と、検査装置2の照明手段14とを説明する。Si(シリコン)等から形成され得る円盤状のウエーハ44の表面44aは、格子状の分割予定ライン46によって複数の矩形領域に区画され、複数の矩形領域のそれぞれにはデバイス48が形成されている。図示の実施形態では、周縁が環状フレーム50に固定された粘着テープ52にウエーハ44の裏面が貼り付けられている。なお、ウエーハ44の表面44aが粘着テープ52に貼り付けられていてもよい。検査装置2の照明手段14は、ウエーハ44の直径よりも大きい内径を有する環状板54と、環状板54の上面に周方向に間隔をおいて配置された複数個(図示の実施形態では4個)の光源56とを含む。環状板54の外径は環状フレーム50の内径よりも小さいのが好都合である。環状板54の径方向内方に向かって光を照射する光源56は、被検査物に対して透過性を有する波長の光を照射する。たとえば、被検査物としてのウエーハ44を構成する基板がSi(シリコン)である場合には、光源56は、Si(シリコン)に対して透過性を有する1064〜3000nmの波長の光を照射する。
【0018】
図示の実施形態では図3に示すとおり、移動手段8、撮像手段10及び表示手段12の作動を制御する制御手段58が移動手段8、撮像手段10及び表示手段12に電気的に接続されている。コンピュータから構成される制御手段58は、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)60と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)62と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)64とを含む。そして、本発明に従って構成された検査装置2は、撮像手段10が撮像した画像を記憶する画像記憶手段と、被検査物のクラック等の欠陥の位置を記憶する位置記憶手段とを含むのが好ましく、図示の実施形態ではランダムアクセスメモリ64は、画像記憶手段を構成する画像記憶部64aと、位置記憶手段を構成する位置記憶部64bとを有する。
【0019】
検査装置2を用いてウエーハ44を検査する際は、粘着テープ52に貼り付けた面(図示の実施形態ではウエーハ44の裏面)を下に向けて、粘着テープ52に貼り付けられたウエーハ44をテーブル24の上面に載置する。あるいは、切削ブレードを回転可能に備えたダイシング装置、レーザー光線を照射するレーザー加工装置によって分割予定ライン46に沿ってウエーハ44が個々のデバイス48に分割され、粘着テープ52によってウエーハ44の形態が維持されているものをテーブル24の上面に載置してもよい。あるいは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって分割予定ライン46に積層されたパシベーション膜、Low−k膜を除去する等のハーフカットが施されたものをテーブル24の上面に載置してもよい。次いで、吸引手段を作動させてテーブル24の上面に吸引力を生成し、テーブル24の上面にウエーハ44(図示の実施形態ではウエーハ44の裏面側)を吸着させる。また、環状フレーム50の外周縁部を複数のクランプ28によって固定する。次いで、図3に示すとおり、ウエーハ44の外周と環状フレーム50の内周との間(すなわち、テーブル24の外周)に照明手段14を配設し、照明手段14の光源56によってウエーハ44の外周からウエーハ44に対して透過性を有する波長の光を照射する。次いで、ウエーハ44に撮像手段10が対面するようにテーブル24を移動手段8によって移動させる。次いで、移動手段8によってテーブル24を適宜移動させながら、ウエーハ44全体を撮像手段10によって撮像する。このように、ウエーハ44の外周からウエーハ44に対して透過性を有する波長の光を照射しながら、ウエーハ44に対面して配設された撮像手段10によってウエーハ44を撮像することによって、ウエーハ44に存在するクラックの撮像が可能となる。そして、撮像手段10が撮像した画像が表示手段12に表示されるため、表示手段12に表示された画像に基づいてウエーハ44のクラック(クラックの例を図3に符号66で示す。)を検出することができる。クラックを検出した場合は、クラックを含む領域の画像をランダムアクセスメモリ64の画像記憶部64aに記憶させると共に、クラックの位置をランダムアクセスメモリ64の位置記憶部64bに記憶させる。
【0020】
以上のとおり、検査装置2においては、ダイシング装置、レーザー加工装置によって分割予定ライン46に沿ってウエーハ44を個々のデバイス48に分割した後にウエーハ44の形態を維持した状態で個々のデバイス48に発生したクラックを容易に検出することができると共に、分割予定ライン46に積層されたパシベーション膜、Low−k膜を除去する等のハーフカットによってデバイス48に発生した微細なクラックを検出することができる。また、検査装置2では、ダイシング装置、レーザー加工装置によってウエーハ44を加工する前にウエーハ44の内部にクラックが生じているか否かを検出することもできる。
【0021】
検査装置2においては、ダイシング装置やレーザー加工装置によりウエーハ44に施す加工の前後に検査を行うことができるので、ウエーハ44に施す加工がクラックの伸張に及ぼす影響を検証することができる。加工前の検査でウエーハ44のクラックを検出した場合は、クラックを含む領域の画像をランダムアクセスメモリ64の画像記憶部64aに記憶させると共に、クラックの位置をランダムアクセスメモリ64の位置記憶部64bに記憶させる。また、加工後の検査において加工前に画像記憶部64aに記憶させた領域(クラックを含む領域)と同じ領域を撮像し、撮像した領域の画像を画像記憶部64aに記憶させると共に、クラックの位置を位置記憶部64bに記憶させる。そして、加工前の画像と加工後の画像とを比較することによって、ウエーハ44に施す加工がクラックの伸張に及ぼす影響を検証することができる。
【0022】
ウエーハ44を個々のデバイス48に分割した後には、クラックの無いデバイス48と、クラックを有するデバイス48とを選別する選別作業が行われるところ、この選別作業の際に、ランダムアクセスメモリ64の位置記憶部64bに記憶させたクラックの位置を参照することにより、デバイス48ごとにクラックの有無を検査する必要がなくなるため、選別作業の効率が向上する。
【0023】
なお、ダイシング装置またはレーザー加工装置のチャックテーブルおよびアライメントを行うための撮像手段を本発明のテーブルおよび撮像手段として兼用して本発明の検査装置を構成してもよい。また、図示の実施形態では、光源については環状板54に配置されている例を説明したが、テーブル24の径方向外方においてテーブル24の周方向に間隔をおいて保持手段6のカバー板22に複数個の光源が配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0024】
2:検査装置
10:撮像手段
12:表示手段
24:テーブル
44:ウエーハ
48:デバイス
56:光源
64:ランダムアクセスメモリ(RAM)
64a:画像記憶部(画像記憶手段)
64b:位置記憶部(位置記憶手段)
図1
図2
図3