(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態にかかる長尺線状体1について説明する。
図1は、流体輸送管である長尺線状体1を示す斜視断面図である。長尺線状体1は、主に管体であるインターロック管3、樹脂管7、耐内圧補強層9、軸方向補強層11、周方向補強層13、保護層17等から構成される。
【0026】
インターロック管3は、長尺線状体1の最内層に位置し、外圧に対する座屈強度に優れ、耐食性も良好なステンレス製である。インターロック管3はテープを断面S字形状に成形させてS字部分で互いに噛み合わせて連結されて構成され、可撓性を有する。なお、インターロック管3と同様の可撓性を有し、座屈強度等に優れる管体であれば、インターロック管3に代えて他の態様の管体を使用することも可能である。
【0027】
インターロック管3の外周には、樹脂管7が設けられる。樹脂管7は、インターロック管3内を流れる流体を遮蔽する。樹脂管7は、例えば高密度ポリエチレン、ポリアミド、PVdF等の樹脂製である。なお、インターロック管3と樹脂管7との間に座床層15aを設けてもよい。座床層15aは、必要に応じて設けられ、インターロック管3の外周の凹凸形状を略平らにならすための層であり、インターロック管3の可撓性に追従して変形可能である。すなわち、座床層15aは、例えば不織布等からなり、インターロック管3外周の凹凸のクッションとしての役割を有する。
【0028】
なお、以下の説明においては座床層を有する場合について説明するが、座床層は必ずしも必要ではなく、省くこともできる。したがって、以降の長尺線状体の断面を示す図においては、座床層の図示を省略する。
【0029】
また、インターロック管3の外周に樹脂管7が設けられるとは、必ずしもインターロック管3と樹脂管7とが接触していることを要せず、例えば、座床層15aのような他層が間に挟まれて設けられている場合も、樹脂管7は、インターロック管3の「外周に」設けられていると称する。以下の説明においては、同様にして「外周」なる用語を用いる。
【0030】
樹脂管7の外周には、周方向補強層である耐内圧補強層9が設けられる。耐内圧補強層9は、炭素鋼、ステンレス等からなり、主にインターロック管3内を流れる流体の内圧等に対する補強層である。耐内圧補強層9は、例えば断面C形状または断面Z形状等の異形線等2層を互いに向かい合うように、かつ、互いに軸方向に重なり合うように短ピッチ(金属製のテープの幅と巻きつけピッチが略同じ)で巻きつけられて形成される。なお、耐内圧補強層9は、インターロック管3の曲げ変形等に追従可能である。
【0031】
ここで、インターロック管3および樹脂管7等を合わせて管構造体5と称する。すなわち、管構造体5は、流体輸送管である長尺線状体1の内部の断面中心近傍を構成する構造体である。
【0032】
流体輸送管の管構造体5の外周には、軸方向補強層11が設けられる。軸方向補強層11は、主にインターロック管3が長尺線状体1の軸方向へ変形する(伸びる)ことを抑えるための補強層である。軸方向補強層11は、耐内圧補強層9の外周において、例えば鋼線やFRP線の線材をロングピッチで線材の径に対して巻きつけピッチが十分に長くなるように、線材の巻き付け径に対して数倍〜十数倍の巻き付けピッチにて2層交互巻きして形成される。なお、線材の断面形状は、円形または矩形である。軸方向補強層11は、インターロック管3の可撓性に追従して変形可能である。
【0033】
なお、必要に応じて、耐内圧補強層9と軸方向補強層11の間にポリエチレン製等の樹脂テープである座床層15bを設けてもよく、また、逆向きに螺旋状に巻きつけられる2層のFRP線の間に、座床層15cを設けてもよい。座床層15b、15cは、補強部材同士が長尺線状体1の変形に追従する際に擦れて、摩耗することを防止するためである。この場合でも、座床層の有無を問わず、耐内圧補強層9の外周に軸方向補強層11が設けられると称する。
【0034】
軸方向補強層11の外周には、周方向補強層13が設けられる。周方向補強層13は、軸方向補強層11を構成する線材が外方に座屈することを抑制する補強層である。なお、本発明において、周方向補強層である耐内圧補強層9、軸方向補強層11および周方向補強層13を総称して、単に補強層と呼ぶ場合がある。すなわち、本発明における補強層とは、軸方向補強層と周方向補強層とを備えるものである。軸方向補強層11の外周には、必要に応じて座床層15dが設けられる。座床層15dは、軸方向補強層11の外周の凹凸形状を略平らにならすための層であり、インターロック管3の可撓性に追従して変形可能である。
【0035】
図2は、周方向補強層13を構成するテープ状部材19を示す図である。テープ状部材19は、第1のFRP線である複数のFRP線21aが併設されて、例えば熱融着によって一体化されて構成される。FRP線21aの補強繊維としては、例えば、高強度繊維としてアラミド繊維やベクトラン繊維、液晶ポリマー繊維、超高分子PE繊維、PBO、炭素繊維等が使用され、補強繊維の断面占有率は50%〜70%である。また、FRP線21aの最外層は耐摩耗性や外傷を防止するため樹脂被覆層が設けられる。
【0036】
なお、FRP線21aは、例えば0.5〜1.0mmφ程度である。テープ状部材19の厚みが薄い方が、巻き付け易く、また、長尺線状体1の外径が大きくなることを抑制することができる。また、テープ状部材19の幅は、例えば、50〜100mm程度である。なお、FRP線21aの本数は図示した例には限られない。
【0037】
テープ状部材19を構成する少なくとも一部のFRP線21aの内部には、第1の光ファイバである光ファイバ23aが配置される。光ファイバ23aは、FRP線21aと密着して一体化している。したがって、周方向補強層13の変形によって、光ファイバ23aに応力が付与される。このため、光ファイバ23aによって、周方向補強層13の歪量を測定することができる。
【0038】
なお、光ファイバ23aを用いた歪測定方法としては、例えば、OTDR法、BOTDR法、PPP−BOTDA法を適用することができるが、PPP−BOTDA法であることが望ましい。PPP−BOTDA法によれば、光ファイバ23aからの光情報を、光ファイバ23aの各部の位置毎の歪の大きさである歪情報に換算することで、光ファイバ23aの歪を検知することができる。このため、長尺線状体1の全長に渡って位置毎の周方向補強層13の変形を測定することができる。この結果、光ファイバ23aによる歪の計測値が所定以上となった場合には、周方向補強層13の変形が所定以上であることを意味し、軸方向補強層11の座屈などが生じていることを把握することができる。
【0039】
なお、光ファイバ23aは、テープ状部材19の幅方向の複数個所に配置されることが望ましい。例えば、光ファイバ23aは、テープ状部材19の幅方向の端部近傍と、中央部近傍に配置されることが望ましい。光ファイバ23aを複数個所に配置することで、より正確に、周方向補強層13の変形状態を把握することができる。
【0040】
また、光ファイバ23aが配置される少なくとも一対のFRP線21aの物性(例えば弾性係数、線膨張係数)を異なるようにしてもよい。FRP線21aの物性が異なると、周方向補強層13の変形に対して生じる応力が変わる。このため、それぞれのFRP線21aの物性に応じて、光ファイバ23aから得られる歪情報が異なる。したがって、それぞれの光ファイバ23aからの情報に基づいて、より詳細な周方向補強層13の変形状態を把握することができる。
また、これとは逆にFRP線21aに配置される少なくとも一対の光ファイバ23aの特性(例えば弾性係数、線膨張係数、許容歪)を異なるようにしてもよい。この場合も同様に、それぞれの光ファイバ23aからの情報に基づいて、より詳細な周方向補強層13の変形状態を把握することができる。
【0041】
図3は、テープ状部材19の巻き付け工程を示す概念図である。テープ状部材19は、軸方向補強層11の外周に螺旋状に隙間25をあけて巻き付けられる。すなわち、周方向補強層13は、テープ状部材19が螺旋状に配置されて形成される。隙間25を形成することで、長尺線状体1を曲げた際にも、テープ状部材19の幅方向の端部同士が接触することがない。このため、テープ状部材19の幅方向端部に、互いの接触による応力が付与されることを抑制することができる。なお、テープ状部材19同士の隙間25は、例えば、テープ状部材19の幅の5〜10%程度である。
【0042】
ここで、光ファイバ23aは、テープ状部材19の両端に位置するFRP線21aを除く、他のFRP線21aの内部に配置されることが望ましい。すなわち、テープ状部材19の両端部のFRP線21aには、光ファイバ23aが配置されないことが望ましい。テープ状部材19の両端部は、巻き付け時や長尺線状体1の曲げ変形の際に、ダメージを受けやすい。このため、光ファイバ23aの断線等のおそれがある。また、巻き付け時にダメージを受けた場合は、周方向補強層13の変形状態を正しく把握することが困難となる。したがって、光ファイバ23aは、テープ状部材19の両端に位置するFRP線21aを除く、他のFRP線21aの内部に配置されることが望ましい。
【0043】
周方向補強層13(補強層)の外周には、保護層17が設けられる。保護層17は、例えば海水等が補強層へ浸入することを防止するための層である。保護層17は、例えばポリエチレン製やポリアミド系合成樹脂製等が使用できる。なお、周方向補強層13の外周には、必要に応じて座床層15eが設けられる。座床層15eは、周方向補強層13の外周の凹凸形状を略平らにならすための層であり、インターロック管3の可撓性に追従して変形可能である。
【0044】
以上のように、第1の実施形態の長尺線状体1は、軸方向補強層11の外周に周方向補強層13が配置される。すなわち、長尺線状体1は、軸方向補強層11の外側に周方向補強層13が配置されるとともに、軸方向補強層11の内側にさらに周方向補強層である耐内圧補強層9が配置される。このため、耐内圧補強層9によって、内部の流体の圧力による影響を抑制し、周方向補強層13によって、軸方向補強層11を構成するFRP線の座屈等を抑制することができる。
【0045】
なお、耐内圧補強層9に対しても、周方向補強層13と同様に、FRP線21aを用いたテープ状部材19によって形成してもよい。このようにすることで、耐内圧補強層9の軽量化や、接触する他の層の耐摩耗性を向上させることができる。
【0046】
例えば、本実施形態においては、軸方向補強層11の内側および外側の両方に周方向補強層を配置したが、軸方向補強層11の内側または外側の少なくともいずれか一方に周方向補強層を配置し、当該周方向補強層を、複数のFRP線21aが併設されて一体化されたテープ状部材19で形成することで、周方向補強層を容易に形成することができる。
【0047】
また、周方向補強層13は、テープ状部材19によって形成されるため、製造が容易である。また、テープ状部材19を構成する少なくとも一部のFRP線21aの内部に、光ファイバ23aが配置されるため、光ファイバ23aを歪センサとして利用することができる。このため、光ファイバ23aの歪を常にモニタリングすることで、周方向補強層13の変形状態を把握することができる。このため、軸方向補強層11の座屈の有無を把握することができる。
【0048】
この際、光ファイバ23aが、テープ状部材19の両端に位置するFRP線21aを除く、他の複数のFRP線21aの内部に配置されるため、特に損傷しやすい幅方向端部を避けて、光ファイバ23aを配置することができる。
【0049】
また、テープ状部材19が隙間25を開けて螺旋状に巻き付けられるため、仮に長尺線状体1が曲り変形を生じた場合でも、テープ状部材19の端部同士が接触することを抑制することができる。このため、テープ状部材19が、幅方向の両側から圧縮されることを抑制することができる。なお、隙間25を埋めるために、テープ状部材19を半ピッチずらして2重に巻き付けてもよい。
【0050】
また、複数の光ファイバ23aを配置した際に、少なくとも一対の光ファイバ23aが配置されるFRP線21aの物性(例えば弾性係数や線膨張係数)を変えることによって、同一の変形に対しても、それぞれの光ファイバ23aが異なる応力を受ける。このため、物性の違いに応じた応力の差を検知することで、応力を要因ごとに分離して把握することができる。また、FRP線21aに配置される一対の光ファイバ23aの特性(例えば弾性係数や線膨張係数、許容歪)を変えることによって、同一の変形に対しても、それぞれの光ファイバ23aが異なる特性を示す。このため、幅広い範囲において応力をより正確に把握することができる。
【0051】
次に、第2の実施の形態について説明する。
図4は、第2の実施形態にかかる長尺線状体1aの長手方向に垂直な断面図である。なお、以下の説明において、長尺線状体1と同一の機能を奏する構成については、
図1〜
図3と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0052】
長尺線状体1aは、長尺線状体1とほぼ同様の構成であるが、軸方向補強層11の構造が異なる。長尺線状体1aの軸方向補強層11は、第2のFRP線である複数のFRP線21bにより形成される。FRP線21bは、FRP線21aとほぼ同様の材質でよく、例えば、6〜10mmφのサイズである。少なくとも2本のFRP線21b(図では5本)の内部には、光ファイバ23b、23cが配置される。
【0053】
図5(a)は、
図4のA部拡大図である。図示したように、第2の光ファイバである光ファイバ23bはFRP線21bの内部に配置される。光ファイバ23bは、FRP線21bと密着して一体化している。光ファイバ23bは、長尺線状体1aの歪を測定する部位である。なお、光ファイバ23bは、少なくとも1か所形成されれば良いが、図示したように、長尺線状体1aの断面において、互いに直交する位置であって周方向に等間隔に4か所以上に設けられることが望ましい。このようにすることで、長尺線状体1aの曲がり位置や方向に関係なく、確実に光ファイバ23bによって歪を測定することができる。
【0054】
また、光ファイバ23bは、できるだけ長尺線状体1aの外周側に配置されることが望ましい。長尺線状体1aが曲がる際には、長尺線状体1aの断面中心に対して、断面最外周側が最も大きな歪が生じる。このため、光ファイバ23bを、できるだけ長尺線状体1aの外周側に配置することにより、高い感度で歪を測定することができる。したがって、本実施形態のように、FRP線21bが2層構造である場合には、外周側のFRP線21bの一部に光ファイバ23bを配置することが望ましい。
【0055】
なお、光ファイバ23bの配置は図示した例には限られず、さらに多くの箇所に配置してもよく、また、2層構造のFRP線21bの内外の両方に光ファイバ23bを配置してもよい。例えば、周方向の略同一箇所であって、内外のFRP線21bに対して、それぞれ光ファイバ23bを配置してもよい。
【0056】
複数の光ファイバ23bの歪変化量を測定することで、長尺線状体1aの曲率を知ることができる。すなわち、長尺線状体1aの長手方向の各部の歪変化をプロットすることで、長尺線状体1aの形状変化を全長に渡って知ることができる。
【0057】
また、
図5(b)に示すように、1本のFRP線21bに対して、複数本の光ファイバ23bを配置してもよい。このようにすることで、光ファイバ23bのわずかな配置の違いに応じて、互いの歪量を異なるようにすることができる。この結果、配置の違いによる歪量の差を算出することで、より詳細に歪量を計測することができる。
なお、光ファイバ23a、FRP線21aと同様に、一対の光ファイバ23bが配置されるFRP線21bの物性(例えば弾性係数や線膨張係数)を変えることによって、応力を要因ごとに分離して把握することができる。また、FRP線21bに配置される一対の光ファイバ23bの特性(例えば弾性係数や線膨張係数、許容歪)を変えることによって、幅広い範囲において応力をより正確に把握することができる。
【0058】
図5(c)は
図4のB部拡大図である。前述した光ファイバ23bが配置されているFRP線21b以外のFRP線21bにおいて、一部のFRP線21bの内部には、ルースチューブ27が配置される。また、ルースチューブ27の内部には、第3の光ファイバである光ファイバ23cが配置される。すなわち、光ファイバ23cは、FRP線21bに対して拘束されない。なお、光ファイバ23cは、少なくとも1本配置されればよい。
【0059】
図6は、光ファイバ23bを用いた長尺線状体1aの歪測定システム40のブロック図である。歪測定システム40は、光ファイバ23b、23c、測定部43、演算部45、表示部47、記憶部49等からなる。
【0060】
前述の通り、長尺線状体1aの内部に配置された光ファイバ23b、23cからの情報は測定部43に送られる。測定部43では、光ファイバ23bからの光情報が、光ファイバ23bの各部の位置毎の歪の大きさである歪情報に換算される。すなわち、測定部43は、軸方向補強層11に配置された光ファイバ23bを用いて、例えばPPP−BOTDA法によって長尺線状体1aの全長に渡って歪変化を測定する。
【0061】
演算部45は、測定部43で測定された歪情報を記憶部49に記憶させるとともに、あらかじめ記憶部49に記憶されている、長尺線状体1a敷設時の初期の歪状態である基準状態と、測定部43で得られた歪情報とを比較する。すなわち、演算部45では、歪情報の演算を行い、敷設初期の形状からの歪変化量が算出される。
【0062】
また、演算部45は、得られた歪変化量を記憶部49に記憶させる。さらに、演算部45は、敷設初期からの歪変化量を累積し、長尺線状体1aの長手方向の各部の累積歪変化量を算出する。
【0063】
さらに、演算部45では、記憶部49に記憶された基準累積歪変化量を参照し、現時点での累積歪変化量から、各部の長尺線状体1aの疲労の進行度を予測する。例えば、基準累積歪変化量に達すると、疲労により長尺線状体1aの損傷が予測されるとして(疲労の進行度が100%)、これに対する疲労の進行度(疲労寿命)を予測する。以上により、長尺線状体1aの全長に渡る累積歪変化量および疲労の進行度を知ることができる。
【0064】
ここで、前述したように、光ファイバ23cは、FRP線21bに対して拘束されていないため、長尺線状体1aが曲り変形した際にも、光ファイバ23cは、その影響を受けにくい。一方、光ファイバ23cは、長尺線状体1aの温度変化の影響を受ける。このため、測定部43では、光ファイバ23cからの光情報が、温度変化による情報に換算される。このため、長尺線状体1aの温度分布を検知することが可能である。
【0065】
演算部45は、ルースチューブ27内に配置された光ファイバ23cによって、温度による影響を検出し、FRP線21bと密着する光ファイバ23bの測定値から、温度による影響を差し引く。したがって、演算部45は、温度変化の影響を差し引いた、長尺線状体1aの歪成分のみを算出することができる。
【0066】
このように、光ファイバ23cによって温度を測定し、この温度の影響を、光ファイバ23bの測定結果から差し引くことで、長尺線状体1aの曲りによる歪のみを抽出することができる。したがって、より正確に長尺線状体1aの曲り情報を得ることができる。
【0067】
なお、演算部45は、必要に応じて、適宜、歪情報、累積歪変化量、疲労進行度の予測等を表示部47に表示させることができる。このような、測定部43、演算部45、記憶部49、表示部47を備える装置としては、記憶媒体および表示手段を有するコンピュータを用いることができる。
【0068】
以上、第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、光ファイバ23bを用いて、PPP−BOTDA法によって長尺線状体1aの歪変化量の測定を行うため、長尺線状体1aの全長に渡って感度良く歪変化量を測定することができる。
【0069】
また、光ファイバ23bは、少なくとも長尺線状体1aの長手方向に垂直な断面において互いに断面の中心を挟んで対称な2個所以上に設けられる。さらに望ましくは、中心を挟んで対称な相互に直交する4個所に設けられる。このようにすることで、長尺線状体1aの曲がり方向によらずに、確実に感度良く長尺線状体1aの歪変化を測定することができる。
【0070】
また、
図5(b)に示すように、同一のFRP線21bの内部の異なる位置に、複数の光ファイバ23bを配置することで、光ファイバ23bの位置に応じた歪を正確に測定することができる。なお、この場合には、それぞれの光ファイバ23bの周囲のFRP線21bの物性(例えば弾性係数)を変えてもよい。すなわち、複数の光ファイバ23bが配置されるFRP線21bの内部において、断面の部位(例えば径方向)によってFRP線21bの物性を異なるようにしてもよい。このようにすることで、FRP線21bの物性に対応した、それぞれの光ファイバ23bからの歪情報を得ることができる。
【0071】
また、軸方向補強層11を構成するFRP線21bに密着して一体化された光ファイバ23bと、ルースチューブ27を用いて、FRP線21bに拘束されない光ファイバ23cとを用いることで、長尺線状体1aの温度の影響を差し引いて、より正確な歪量を得ることができる。
【0072】
また、演算部45において、敷設初期の歪状態を基準状態として、基準状態からの歪変化量を算出することで、より正確に長尺線状体1aの動きを把握することができ、歪変化量を累積することで疲労の進行を予測することができる。
【0073】
次に、第3の実施の形態について説明する。
図7は、第3の実施形態にかかる長尺線状体1bの長手方向に垂直な断面図である。長尺線状体1bは、長尺線状体1aとほぼ同様の構成であるが、管構造体5の構成が異なる。
【0074】
長尺線状体1aは、海底油井等と洋上浮体設備とを接続し、高い内圧と繰り返しの揺動(曲げや引張)に耐えることが要求されるダイナミック仕様である。一方、長尺線状体1bは、海底水管や上水道、深層水取水管などの、敷設時の張力、曲げ、側圧等に耐えることが要求されるスタティック仕様の流体輸送管である。したがって、最内部にインターロック管が用いられず、樹脂管7が最内部に配置される。すなわち、長尺線状体1bの管構造体5は、樹脂管7等からなり、管構造体5の外周に耐内圧補強層9が設けられる。
【0075】
以上、第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。このように、本発明に適用可能な流体輸送管としては、その断面構造によらず、少なくとも、管構造体5の外周に補強層(例えば軸方向補強層11と周方向補強層13)が配置されればよい。
【0076】
次に、第4の実施の形態について説明する。
図8は、第4の実施形態にかかる長尺線状体1cの長手方向に垂直な断面図である。長尺線状体1cは、長尺線状体1等のような流体輸送管ではなく、電力ケーブルである。
【0077】
長尺線状体1cは、主にケーブルコア30、軸方向補強層11、周方向補強層13、保護層17等から構成される。また、ケーブルコア30は、複数(図では3本)の電力用線心31から構成される。
【0078】
電力用線心31は、導体部33、絶縁部35、内部シース37等から構成される。導体部33は、例えば銅素線を撚り合わせて構成される。
【0079】
導体部33の外周部には、絶縁部35が設けられる。絶縁部35は、例えば架橋ポリエチレンで構成される。なお。絶縁部35は、内部半導体層、絶縁体層、外部半導体層の三層構造としてもよい。内部半導体層、絶縁体層、外部半導体層の三層構造とすることで、水トリー劣化抑制と、絶縁体と金属層との機械的緩衝層としての効果を得ることができる。
【0080】
絶縁部35の外周には、内部シース37が設けられる。なお、内部シース37内部にシールド層を設けてもよい。この場合、シールド層は、導電性部材により構成される。また、さらに、遮水層や防食層を設けてもよい。
【0081】
このようにして構成される電力用線心31が、3相交流送電用に3本集合撚りされる。また、3本の電力用線心31を撚り合わせた後、隙間に通信用の光ケーブル39が配置される。さらに、3本の電力用線心31の隙間に、樹脂紐等の介在物を配置して略円形のケーブルコア30が形成される。
【0082】
電力ケーブルの内部のケーブルコア30の外周には、軸方向補強層11が設けられる。また、軸方向補強層11の外周には、周方向補強層13が設けられ、周方向補強層13の外周には保護層17が設けられる。軸方向補強層11および周方向補強層13の構成は、長尺線状体1a等と同様である。
【0083】
以上、第4の実施の形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、本発明に適用可能な長尺線状体としては、流体輸送管のみではなく、電力ケーブルに対しても適用可能である。例えば、たとえば浮体式洋上風力発電装置などの洋上浮体設備同士の接続や、地上への送電などに用いられる海中ケーブルや海底ケーブルに適用することができる。
【0084】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0085】
例えば、各実施形態は互いに組み合わせることができることは言うまでもない。また、各実施形態において、一部の構成を削除してもよく、他の構成を加えてもよい。