【文献】
J. Chromatogr. A (2000) vol.878, issue 2, p.183-196
【文献】
J. Biotechnol. (2004) vol.113, issue 1-3, p.137-149
【文献】
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【文献】
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(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
粒状の疎水性クロマトグラフ分離材料が、10nm〜30nmの範囲にある細孔径を有する疎水性多孔質ポリマービーズからなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
工程(b)において、3〜11の範囲にあるpH値と、1〜50mS/cmの範囲にある伝導度を有する、標的ペプチドを含有する水性溶液が、疎水性クロマトグラフィー材料と接触する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
工程(b)において、疎水性クロマトグラフ材料が、充填床のmlあたり30〜100mgの標的ペプチドに、150〜1000cm/分の範囲にあるフロー速度でさらされる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
工程(c)において、疎水性クロマトグラフ材料が、直接的または段階的な方式で、水性溶液含有有機溶媒にさらされ、それによって、含有される有機溶媒の濃度に依存して、凝集したペプチドと標的ペプチドとの間の部分的な分離が達成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
工程(c)において、水性混合物中に含有される種々の比率の有機溶媒を使用して、結合成分の選択的な脱離および分離が達成される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
サンプルを疎水性クロマトグラフィー材料と好適な時間接触させてペプチドを吸着させた後に、ロードしたクロマトグラフィー材料を、選択的に凝集物質のレベルを減少させるために、好適な時間、ペプチドリフォールディング後の溶液に施す、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
分離および精製を、結合および溶出またはフロースルーモードで行い、それによって、流速を150cm/分〜1000cm/分の範囲にあるように調節する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
工程(b)において、サンプルを、1〜100cmの範囲にある直径を有する液体クロマトグラフィーカラム中のポリマービーズの形態の疎水性クロマトグラフィー材料と接触させ、ここでカラムを、100barまでの圧力で操作する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
工程(b)において、サンプルを、10〜50cmの範囲にある直径を有する液体クロマトグラフィーカラム中のポリマービーズの形態の疎水性クロマトグラフィー材料と接触させ、ここでカラムを、0.2〜80barの範囲における圧力で操作する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
工程(a)において、E. coli発現系に由来する粗製インスリン溶液を提供する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
技術水準
組み換え技術によって発現したペプチドが医薬用途に使用されるため、それらは非常に高純度であることが必要とされる[E. P. Kroeff, R. A. Owens, E. L. Campbell, R. D. Johnson, H. I. Marks, Journal of Chromatography, 461 (1989) 45-61]。
【0003】
より低いコストおよびより高い量の生物学的製剤への市場圧力に応えて、多くの製造者は、可能な場合、微生物発現系(E.coli)を、哺乳動物培養(mammalian culture)に代わる魅力的な代替物と考えている。微生物発現系は、高い生産性および短い発現速度を特色とするが、多くの場合、標的分子は、変性した状態で得られる。
【0004】
一般的に、現在市場にある組換えペプチドの大部分を製造するのに大腸菌培養が用いられる[F. A. O. Marston, Biochem. J. (1986) 240, 1-12]。これらの治療ペプチドの生産は、典型的には、治療ペプチドを高速で生産し、その集合および封入体の形成を細胞内液中で起こす細胞の懸濁液を含んだバイオリアクター中にて開始する。成長した細胞が、次に収穫され、破壊されて、不溶性の標的ペプチドを含有する封入体が獲得される。標的分子の可溶化およびリフォールディングの後、後者は、清澄化、濾過、および、ミスフォールドしたペプチド、DNA、HCP、凝集体などを除去する精製を含む、一連のプロセスに供される。この一連のプロセスは、しばしば、下流プロセス(DSP)と呼ばれる。
【0005】
最もよく用いられるDSPは、1または2の結合・溶出クロマトグラフィー精製工程を含み、1または2のフロースルーポリッシング工程がこれに続く。典型的な下流の精製プロセスは、多孔質ビーズに基づいたクロマトグラフィー媒体で満たされた充填カラム、または、膜に基づいたデバイスを用いる。これらの単位操作は直列的に用いられ、各々は、フロースルーポリッシングまたは結合/溶出キャプチャーモードのいずれかにおいて、粒状の不純物を除去することを標的とする。ポリッシング媒体の主目的の1つは、標的ペプチド濃度を基準として凝集体の濃度を<1%に減少させることである。
【0006】
上で示したとおり、多くの場合、標的分子は、変性した状態で得られる。これは、標的分子を最終精製に先立って可溶化しリフォールディングすべきであるため、精製プロセスを複雑化する。これらの条件のため、全体の歩留まり率がたったの5〜10%の範囲にあるので、また、精製プロセスに少なくとも5つの時間のかかる精製工程を段階的な様式で行うことが必要であるので、プロセスは極めて非効率であり得る。しかも、主な不純物は、凝集した標的分子であり、これは除去されなければならない。
【0007】
したがって、ペプチドリフォールディングプロセスは、最も難しい生産工程の1つであり[A. Jungbauer, Journal of Biotechnology 128 (2007) 587-596; A.P.J. Middelberg, Trends in Biotechnology Vol. 20 No. 10 October 2002, 437-443]、不溶性の凝集体の形成に起因する多大な標的ペプチドの損失をもたらす。
【0008】
生物学的製剤の分子仕様に到達するために、このプロセスは、所望の標的分子の補足および必要な一次精製(幾多の直交技術(例えばサイズ排除クロマトグラフィー、疎水相互作用など)を使用した追加の精製工程が続く)に好適であるイオン交換クロマトグラフィー様式の狭い適用範囲(例えばpHおよび溶媒伝導度に依存)に基づく。加えて、後続する結晶化が、最終高圧ポリッシング工程に使用した有機溶媒を除去するために実施される。
【0009】
各標的分子のための製造プロセスは、物性および生物学的製剤分子仕様に対応して独立に開発され、製造コストおよび商品化までの時間を増加させている。
【0010】
要約すれば、典型的な標的ペプチド精製プロセスは、物性および生物学的製剤分子仕様に対応して独立に開発される。種々の清澄化、濾過、および精製工程が、標的ペプチドを精製するのに使用される。例えば、いくつかの技術は、より一般的である、EPOの精製のために使用されるイオン交換クロマトグラフィーおよび疎水相互作用クロマトグラフィーなどである[WO03/045996;WO00/27869;WO2009/147060]。他のプロセスは、捕捉工程として疎水性ポリスチレン樹脂(例えばSource 30RP)を使用することを含み、イオン交換工程(EP0265222)が直後に続き、断片および凝集体の分離のためのヒドロキシアパタイトがこれに続く。
【0011】
主なプロセス不純物は標的分子凝集体であるので、とりわけ、ヒドロキシアパタイトの使用が、微生物発現系からの標的分子の精製のために極めて重要である(WO2005/044856;WO2010/147686)。
【0012】
近年、産業において、精製工程の数を減少させようと試みるか、または製品の品質を維持しつつそれらを簡素化しようと試みる顕著な傾向がある。また、バイオリアクターを使用したより高い発現価(expression titer)を得るための技術の使用が、産業において上昇する傾向である。これら2つの傾向の組み合わせは、製品をより多くカラム上にロードすることをもたらしており、これによってかなり高額なクロマトグラフィー媒体の負担の増加、ならびにより低い製品純度をもたらし、それはいずれも望ましくない。
【0013】
凝集体のような所望のタンパク質性製品のクロマトグラフィー精製の選択性を改善するために、種々のクロマトグラフ材料が、精製方法の変化と並行して開発されている。とりわけ、分離材料の表面の特定の誘導体化は、所望の製品からの望ましくない不純物のより選択的な分離を招くはずである。しかし、これらの特別かつ複雑な表面誘導体化は、これらのクロマトグラフィー材料の生産を市販の製品よりも圧倒的に高額にするので、産業スケールの精製におけるこれらの使用は魅力が少ない。
【0014】
シリカ材料に基づいた市販の材料は、特に再生の間、一般に、塩基性環境に影響されて安定性を失うため、クロマトグラフィー材料の分野における他の開発は、有機基質に基づいた分離材料に注目してきた。
【0015】
有機ポリマーに基づいた固定相は、広範囲のpH条件にわたって操作することができる。したがって、ポリマー樹脂は、高pH条件下で積極的に清浄化されてもよい。しかし、現在のポリマー性固定相は、高性能な生体分子分離において使用される中〜高圧条件において、いくらか圧縮され得る。
【0016】
非溶媒物の存在下でジビニルベンゼン(DVB)含有混合物の懸濁重合から生産される従来のマクロ孔質コポリマーは、広範囲の細孔径分布と表面積を有するポリマーを代表する。かかるポリマービーズは、例えばUS4,686,269に開示される。これらのポリマービーズは、平均粒径0.5〜50μmを有するビニル芳香族モノマーから調製される。しかし、これらは、生産スケールのクロマトグラフィーカラムにおいて慣用される高圧条件下において硬性ではない。クロマトグラフィーに使用するポリマービーズの硬性は、多孔質ポリマー固定相と一緒に、分離の間の必要な圧力および流動特性を提供するため、必須である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の詳細な説明
本発明は、標的ペプチドを含有する溶液からのペプチド凝集体および断片の分離のための方法であり、ペプチドを含有する溶液が、疎水性クロマトグラフィー材料と好適な時間接触し、それによりペプチドが疎水性クロマトグラフィー材料に吸着され、異なる溶媒組成物の使用による吸着されたペプチドの選択的な回収がこれに続く。これによって、凝集したペプチドの形態を、標的ペプチドから部分的にまたは完全に標的ペプチドから分離することができる。
詳細には、分離は、粒状であり、架橋されたビニルベンゼン、エチルスチレン、ポリ(エチル)スチレン−ジビニルベンゼンまたはポリ(エチル)スチレン−ジビニルベンゼンエチレングリコール−ジメチルアクリラート樹脂で作られた、疎水性クロマトグラフィー材料の使用により行われる。好ましくは、樹脂は、98:2〜10:90重量%までの比率のスチレンとジビニルベンゼンから構成された架橋ポリマーから構成されている。改変された形態において、粒状材料は、98:2〜10:90重量%までの比率のジビニルベンゼンとエチレングリコールジメタクリラートとのコポリマーで架橋されたポリスチレンからなる。多くの場合、これらの粒状の疎水性クロマトグラフ分離材料は、10μm〜600μmの範囲に、好ましくは20μm〜150μmの範囲に、最も好ましくは20μm〜63μmの範囲にある平均粒径を有する。このサイズの好適な疎水性多孔質ポリマービーズは、好ましい細孔径を、4〜500nmの範囲に、より好ましくは10〜30nmの範囲に、最も好ましくは13nm〜25nmの範囲に有する。
【0022】
本発明の目標は、特に、標的ペプチドを含有する溶液からの凝集体およびペプチド断片の分離のための、細孔径を4nm〜500nmの範囲に、より好ましくは10nm〜30nmの範囲に、最も好ましくは13nm〜25nmの範囲に有する疎水性クロマトグラフ分離材料の使用による、凝集したペプチドの所望のペプチドからの分離のための方法である。本発明の、使用する疎水性クロマトグラフ分離材料は、好ましくは、架橋されたビニルベンゼン、架橋されたエチルスチレン、ポリスチレン/ポリエチルスチレン−ジビニルベンゼン、またはポリスチレン/ポリエチルスチレン−ジビニルベンゼンエチレングリコール−ジメチルアクリラート樹脂で作られている。とりわけ好ましい態様において、使用する本明細書中に記載の疎水性の硬質ポリマービーズは、10μm〜600μmの範囲に、好ましくは20μm〜150μmの範囲に、最も好ましくは20μm〜63μmの範囲にある平均粒径と、4nm〜500nmの範囲に、好ましくは10nm〜30nmの範囲に、最も好ましくは13nm〜25nmの範囲にある細孔径を有する。
【0023】
凝集したペプチドの、所望のペプチドからの分離を行うために、2〜11の範囲に、好ましくは3〜8の範囲にあるpH値と、1〜150mS/cmの範囲に、好ましくは2〜50mS/cmの範囲にある伝導度を有する水性溶液が、疎水性クロマトグラフィー材料と接触する。疎水性クロマトグラフ材料は、充填床のmlあたり30〜100mgの標的ペプチドに、好ましくは充填床のmlあたり50〜80mgの標的ペプチドに、150〜1000cm/分の範囲にある、好ましくは300〜900cm/分の範囲にあるフロー速度でさらされる。標的ペプチドの吸着の後、疎水性クロマトグラフ材料は、直接的または段階的な方式で、水性溶液含有有機溶媒にさらされる。有機溶媒の濃度に依存して、凝集したペプチドと標的ペプチドとの間の部分的な分離が達成される。特に好ましい態様において、凝集体の分離は、標的分子リフォールディング工程の後にプロセスされる。必要があれば、精製シーケンスは、イオン交換樹脂での処理を含む。処理された流体から分離すべき物質の性質に依存して、アニオンまたはカチオン交換樹脂のいずれかを、プロセス工程に適用してもよい。好ましくは、スルホン酸または硫酸基のような負に帯電した基を提供するカチオン交換樹脂が使用され得る。この目的のために、Eshmuno(登録商標) Sの商品名で販売されているイオン交換材料が特に好適であることが見出されている。
【0024】
標的分子を勾配方式で
脱離させるために、溶出時間の間の移動相の組成が変更される。本発明の目的のために、役立つように水性溶媒混合物が使用される。実験は、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、エタノール、メタノールおよびプロパノールの群から選択される少なくとも1種の溶媒を含む水性混合物が、良好な分離結果を招くことを示している。一般的に、これらの溶媒混合物は、溶出を設定するためのさらなる添加物を含む。例えば、溶媒混合物は、一定の量のグリシンと混合されてもよい。
これに加えて、pHが、所望の目的のための適当な緩衝液の添加により調節される。いかなるpH範囲において溶出が起こるかに依存して、異なる緩衝液が好適である。したがって、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、酢酸またはリン酸緩衝液が適用され得る。そのうえ、必要であれば、溶媒混合物は、塩化ナトリウムのような好適な塩を含んでもよい。
専門家は、対応する勾配溶出の実施に関する詳細な情報を、文献において、または適当な教科書において、例えば「Preparative Chromatography of Fine Chemicals and Pharmaceutical Agents」、Henner Schmidt-Traub、Wiley-VCH Verlag、2005年、152〜161頁にて、見出すことができる。
【0025】
ここに記載の種々の実験により、多孔質ポリ(ジ)ビニル芳香族ビーズなどの多孔質疎水相互作用材料は、大スケールのペプチド精製のために有用であることが見出された。これらの精製工程は、興味の対象のタンパク質を含有するサンプル(例えばペプチドリフォールディングのプール)中に存在する1種以上の不純物のレベルを減少させるために行うことができる。
【0026】
この目的のために、ペプチドリフォールディング溶液は、疎水相互作用材料と接触、例えば、多孔質疎水性ポリスチレンビーズと接触させられ、標的ペプチドおよび一部または全部の不純物(例えば、凝集体および断片)を吸着するために一定の時間インキュベートされる。吸着の後、種々の比率の有機溶媒を使用して、結合成分の選択的な
脱離が達成される。この手順によって、興味の対象のペプチドを含有する溶液から不要なペプチド断片および凝集体を選択的に減少させることが可能である。
【0027】
前記疎水相互作用材料は、ペプチドリフォールディング後の溶液(post peptide refolding solutions)を施されることに、および清澄化された細胞培養溶液を材料と好適な時間接触させることによって選択的に凝集物質のレベルを減少させるために、とりわけ好適である。この精製プロセスを行うために、疎水相互作用材料(例えばポリスチレンビーズ)が、1つまたは数個のクロマトグラフィーカラムまたは他のデバイス、例えばフィルターハウジングなどに組み込まれる。これらの充填カラムは次に、結合および溶出またはフロースルーモードにおけるタンパク質精製プロセスのために使用され、それによって凝集物質が疎水相互作用材料とより強く相互作用して凝集体のレベルが減少する。この場合、流速が150cm/分〜1000cm/分の範囲に、とりわけ300〜900cm/分の間になるように調節されているときに、良好な精製結果が得られる。
【0028】
そのうえ、ここに記載の実験において、溶液のpHがpH2〜11の間の範囲に、好ましくはpH3〜8の範囲になるように調節されている場合に、良好な精製結果が達成可能であることが見出された。
【0029】
同時に、溶液の伝導度が1〜50mS/cmの範囲に、好ましくは2〜50mS/cmの範囲にある場合に、有利であることが証明された。
【0030】
さらに、本明細書中に記載の実験において、疎水相互作用材料から選択的に吸着物質を
脱離させるためにエタノール、1−プロパノール、ジプロピレングリコールなどの有機溶媒を使用した場合に、良好な精製結果が達成可能であることが見出された。
【0031】
本明細書中の実験により実証されたとおり、標的ペプチドの高い純度が、小さな多孔質ポリマービーズの形態の疎水相互作用材料の使用により達成できるという、とりわけ驚くべきことが見出された。いくつかの態様において、この材料は、主にポリスチレンまたはポリエチルスチレンからなってもよく、ジビニルベンゼン(DVB)とエチレングリコールジメタクリラート(EGDMA)などの疎水性および親水性のモノマーの混合物により架橋されていてもよい。
【0032】
多孔質ポリマービーズは、典型的には、懸濁重合により生産される。これらは、例えば、US4,382,124に開示されたものに類似したプロセス、ここで、モノマーについては溶媒であるがポリマーについては非溶媒であるポロゲン(「相増量剤(phase extender)」または「沈殿剤」としても知られる)の存在下での懸濁重合によって、コポリマービーズ中に多孔性が導入される、によって生産され得る。US4,382,124に従って調製されるものなどの従来の多孔質ポリマーは典型的に、広範囲のポロゲン種、モノマー相に相対的なポロゲン濃度、モノマー種、架橋モノマー種、架橋剤レベル、重合開始剤および開始剤濃度を包含する。しかし、本発明は、疎水性モノマーの比率が特別な範囲にあるときに、これらのポリマービーズが、細胞培養液からの抗体の精製にとりわけ好適かつ効果的であるという予想外な知見に基づく。
【0033】
理論に束縛されることを望むものではないが、本発明の場合には、ポリマー中の疎水性分子の含有シェアを増加させることによってポリマーマトリックスを変化させた場合に、標的分子に対する容量の増加が主として達成されると考えられる。この変化は、全体で多孔性、硬性および標的分子の結合容量のパラメーターに影響を及ぼす、ポリマーを構築するモノマーおよびポロゲンの量および架橋剤レベルのバランスを考慮してなされる。
【0034】
かなり予想外なことに、凝集体の大幅に改善した分離を、これらの選択した開放多孔質疎水性ポリマービーズによって達成することができることが見出された。多孔質構造は、分子のポリマーマトリックス中へのおよびポリマーマトリックス外への急速な拡散を可能にし、ポリマービーズの多孔性のため、大きな表面積が、細胞培養媒体中に含有された不要な不純物との相互作用のために利用可能である。したがって、これらの材料は、固定相中の生体分子を分離することに極めて効果的である。最も最近では、市販のポリマー系逆相クロマトグラフィー固定相が、これらの基準の周辺に設計されているように見え、より低い圧力条件下で使用されているようであるが、しかし、より高い圧力条件下(典型的には10〜100barの範囲)では、これらの材料は圧縮され得る。幸いにも、ここに記載されたとおりのポリマービーズは、増加した硬性を有し、同時に高い多孔性を有し、これによって粒内拡散の高い容量を提供する。
【0035】
本発明において使用される疎水性多孔質ポリマービーズは、溶液を、1〜100cmの範囲に、好ましくは5〜50cmの範囲にある直径を有する液体クロマトグラフィーカラム中のポリマービーズと接触させること、ここでカラムは、100barまでの圧力で、好ましくは0.2〜80barの範囲における圧力で操作される、により、標的ペプチドを含有する溶液からの凝集体の除去に良好に適する。典型的には、調製スケールのカラムは、5〜50cmの範囲にあって、0.2〜80barの範囲にある圧力で操作される。
【0036】
本発明に従う多孔質ポリマービーズは、典型的には、200μmまでの平均粒子サイズ直径を有する、球状コポリマービーズであり、これは高性能の逆相液体クロマトグラフィー(例えば、直径1〜100cmの範囲にあるカラムにおける)を介した生体分子の分離および精製に有用なポリマービーズとして典型的なサイズである。
【0037】
一般的に、多孔質分離材料は、これらが10〜600μmの範囲に、好ましくは20〜150μmの範囲に平均粒子サイズ直径(d
50)を有するときに特に効果的であることが見出されたのに対し、20〜63μmの範囲に平均粒子サイズを有するかかる材料は、特に効果的であることが示されている。
【0038】
かかる疎水性の分離材料、好ましくはポリスチレンビーズが、4〜500nmの範囲にある細孔径を有すると、所望の分離効果のために好適であるように見える。精製実験は、10〜30nmの間の平均細孔径を有する疎水相互作用材料が良好な分離結果を招くことを示した。これらの望ましい分離結果は、好適な材料から作られ、平均細孔径が13〜25nmの間の範囲にある球状疎水性ポリマービーズを使用したとき、さらに改善され得る。本発明の好適な多孔質ポリマービーズは、好ましくは、表面積(BET)を、300〜1000m
2/g(グラムあたり平方メートル)の範囲に、より好ましくは450〜850m
2/gの範囲に、最も好ましくは500〜800m
2/gの範囲に持つ。
【0039】
本明細書中に記載の多孔質ポリマービーズの調製に使用され得る好適なモノ不飽和ビニル芳香族モノマーは、限定されないが、スチレン、C1〜C4−アルキル置換スチレン、ビニルナフタレンおよびビニルアントラセンを含む。好ましくは、モノ不飽和ビニル芳香族モノマーは、スチレンおよびC1〜C4−アルキル置換スチレンの1以上から選択される。好適なC1〜C4−アルキル置換スチレンの群に含まれるのは、エチルビニルベンゼン、ビニルトルエン、ジエチルスチレン、エチルメチルスチレンおよびジメチルスチレンである。前述のビニル芳香族モノマーの各々の、種々の位置異性体のあらゆるものが好適であることが理解される。
【0040】
これは、本発明において好適な多孔質ポリマービーズは、特に、ビニルベンゼン(スチレン)、エチルスチレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、ジビニルアントラセン、ジビニルキシレン、およびこれらのモノマーのあらゆる構造異性体からなる群から選択される1種以上のモノマーを使用して調製され得ることを意味する。
【0041】
好ましくは、多孔質ポリマーは、ビニルベンゼン(スチレン)とジビニルベンゼン、またはエチルスチレンとジビニルベンゼンのコポリマーを使用して調製される。本発明の好ましい態様において、適用される架橋多孔質ポリマービーズは、スチレン/およびジビニルベンゼンを、一方の他方に対する重量比98:2〜10:90%で含む。
【0042】
任意に、脂肪族不飽和モノマー、例えば(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸のアルキルエステルも、ビニル芳香族モノマーに加えて、本明細書中に記載の前記疎水性の多孔質ポリマービーズの調製のために使用してもよい。これらの脂肪族不飽和モノマーは、所望のポリマービーズの調製において架橋剤として使用してもよい。
【0043】
好適な脂肪族架橋モノマーは、エチレングリコールジアクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート、ジエチレングリコールジビニルエーテルおよびトリビニルシクロヘキサンからなる群から選択され、本発明に従う架橋疎水性多孔質ポリマービーズの調製のために使用され得るものである。脂肪族モノマーは、単独で、または架橋モノマーとして上で述べたポリビニル芳香族モノマーと組み合わせて、使用することができる。
いずれの変化形においても、エチレングリコールジメタクリラート、グリシジルメタクリラート、およびジエチレングリコールジビニルエーテルは、多孔質ビーズの調製のためにとりわけ好適である。好ましくは、これらの脂肪族架橋モノマーは、ポリビニル芳香族架橋モノマーと組み合わせて使用される。これらの条件下で、脂肪族モノマーは、典型的には、硬質かつ多孔質のポリマービーズを形成するのに用いる総モノマー重量に基づいて0〜50%の範囲にある量で、好ましくは0〜30%の範囲にある量で含まれる。
【0044】
本明細書中に記載の多孔質ポリマー粒子の、本発明の使用においては、ジビニルベンゼンまたはその誘導体と、エチレングリコールジメタクリラートおよびジエチレングリコールジビニルエーテルからなる群から選択されるモノマーとのコポリマーで架橋されたポリスチレンからなる多孔質ポリマービーズを使用することで優れた分離結果が達成され、ここで、ポリスチレンと架橋コポリマーとの比率は、98:2〜10:90重量%までの範囲にある。好ましい態様において、ポリ(エチル)スチレンからなる多孔質粒子が使用され、これは98:2〜14:86重量%までの比率でのジビニルベンゼンとエチレングリコールメタクリラートとのコポリマーで架橋されている。このことに関して、標的ペプチドを含有する溶液からの凝集物質の分離のために、(ジ)ビニル芳香族モノマーを50重量%より多い量で含有する多孔質ビーズが、より良好に適していることが見出された。したがって、約10:90〜98:2重量%の比率でジビニルベンゼンとエチレングリコールメタクリラートとのコポリマーで架橋されたモノビニル芳香族のポリマーからなる多孔質ビーズが好ましい。より好ましいのは、比率が重量で約14:86である、かかる多孔質ビーズである。
【0045】
好ましい疎水性多孔質ポリマーは、ビニルベンゼン(スチレン)コポリマー、エチルビニルベンゼン(エチルスチレン)コポリマー、ジビニルベンゼンコポリマー、架橋されたポリスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、架橋されたポリスチレンエチレングリコールジメタクリラート、架橋されたポリジビニルベンゼンエチレングリコールジメタクリラートの1以上から選択される。最も好ましいものは、架橋されたポリ(エチル)スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、および、ジビニルベンゼンとエチレングリコールジメタクリラートのコポリマーとともに架橋されたポリ(エチル)スチレンである。
【0046】
多孔質ポリマーを調製するために有用なポロゲンは、(C
7〜C
10)芳香族炭化水素および(C
6〜C
12)飽和炭化水素などの疎水性ポロゲン、ならびに(C
4〜C
10)アルカノールおよびポリアルキレングリコールなどの親水性ポロゲンを含む。したがって、好適なポロゲンは、例えば、トルエン、エチルベンゼン、オルト−キシレン、メタ−キシレン、パラ−キシレンからなる群から選択することができる。前述の炭化水素のいずれについても、種々の位置異性体のあらゆるものが好適であることが理解される。好ましくは、芳香族炭化水素は、トルエンまたはキシレンまたはキシレンの混合物またはトルエンとキシレンとの混合物である。そのうえ、上で表示したとおり、飽和炭化水素もまた、ポロゲンとして使用することができる。好適な例は、限定されないが、例えばヘキサン、ヘプタンまたはイソオクタンを含む。この場合の本発明の好ましい飽和炭化水素は、イソオクタンである。好適なアルカノールは、限定されないが、イソブチルアルコール、tert−アミルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、メチルイソブチルカルビノール(4−メチル−2−ペンタノール)、ヘキサノールおよびオクタノールを含む。好ましくは、ポロゲン混合物は、1種以上の(C
5〜C
8)アルカノールから選択される親水性ポロゲンと、1種以上の(C
7〜C
10)芳香族炭化水素から選択される疎水性ポロゲンとを含む。
【0047】
典型的に、ポロゲンは、重合懸濁液に過剰量で、多くの場合、モノマーの重量に基づいて合計量100〜170%、好ましくは115〜150、より好ましくは120〜140%添加される。これに加えて、本発明に従うポリマーを調製するのに使用するポロゲンは、溶媒系と混合され、ここで溶媒系は、少なくとも疎水性溶媒、および任意に、より疎水性でない溶媒(「親水性の」溶媒)を含み、これらはいずれも多孔質ビーズの構築を支持する。より疎水性でない(または上述のとおり「親水性の」)溶媒が、少なくともいくらかの限られた水溶性、例えば、0.5〜5%の範囲の水溶性を有するのに対して、疎水性溶媒は、10〜100ppmまたはそれより少ない水溶性を示すということは、自明である。
【0048】
一般に、低疎水性を有するポロゲン(すなわち、「親水性ポロゲン」)の疎水性ポロゲンに対する比率は、0.7:1〜3:1の範囲、好ましくは0.8:1〜2.5:1の範囲、最も好ましくは0.9:1〜2.4:1の範囲にある。
【0049】
本発明に好適なポリマーを調製するのに有用な重合開始剤は、当業者によく知られており、ペルオキシド、ヒドロペルオキシドのようなモノマー溶解性開始剤、および関連する開始剤を含む。これらの開始剤は、市販で入手可能である。また有用なのは、アゾジイソブチロニトリル、アゾジイソブチルアミドなどのアゾ開始剤である。開始剤の性質に依存して、使用レベルは、含まれるビニルモノマーの総重量に基づいて0.5〜10%の範囲にある。
【0050】
そのうえ、多孔質ポリマービーズを調製するために有用な分散剤または懸濁剤は、通例の界面活性剤であってもよく、これは、イオン性であり、1〜24個の炭素原子を含有する疎水性アルキル鎖を含有してもよい。懸濁重合において好適な別の市販の分散剤の群は、非イオン性界面活性剤であり、これはエポキシ化ヒドロキシアルキルセルロース誘導体に基づく。典型的には、これらの添加物は、水相の総重量に基づいて約0.01〜4%までのレベルで使用される。
【0051】
好適であれば、他の分散剤を使用してもよく、それらの界面活性剤および分散剤と一緒に適用することができる。例えば、セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デンプンなどを含むポリマー性分散剤などが、本明細書において使用される他の界面活性剤または分散剤と混合して使用されてもよい。しかし、最も好ましいものは、イオン性界面活性剤の添加であり、これは、水でリンスすることにより、調製されたポリマービーズから容易に取り除くことができる。
【0052】
本明細書中に開示された多孔質疎水性ポリマービーズの調製のために、懸濁補助剤を含む連続的な水相溶液を調製し、次にこの溶液を、ポリビニル芳香族モノマーを含有するモノマー混合物、フリーラジカル開始剤、および、例えばモノマー混合物1部あたり1〜1.7部の(混合)ポロゲン(疎水性および親水性ポロゲン)と混合する。モノマー/ポロゲンの組み合わせは次に、上昇した温度で重合させられ(典型的には40〜100℃で、例えば1〜約15時間)、およびポロゲンは、続いて、得られたポリマービーズから、例えば蒸留または溶媒洗浄により除去される。得られた多孔質ポリマービーズは次に、脱水および乾燥のような従来の手段により単離される。
【0053】
任意に、ポリマービーズの調製は、ポリマー表面から重合の間に用いられた分散剤および懸濁剤の残渣を洗い落とすための処理を含んでもよい。この処理は、特許文献(JP61-141704またはJP57-98504またはEP1179732B1)に開示されるような酵素処理を含んでもよい。
【0054】
調製されたポリマービーズは、それらの多孔性および機械的強度のため、とりわけ充填カラム中において好適である。有利なことに、これらの多孔質かつ硬質のポリマービーズは、上昇した圧力においてさえ、溶液を液体クロマトグラフィーカラム中のこれらのポリマービーズと接触させることにより、標的ペプチドを含有する溶液からの凝集物質の分離のために有用である。これらのビーズは、とりわけ、長期の使用のため起こる圧力上昇なしに、高スループット率で、生体分子の高性能な分離および精製を行うことに好適である。
【0055】
本発明において使用される多孔質ポリマービーズは、選択された多孔性および細孔径分布により特徴付けられ、これは逆サイズ排除クロマトグラフィー(iSEC)により決定され得る。本発明において好適なポリマービーズは、典型的には、0.4〜1.0の範囲に、好ましくは0.45〜0.75の範囲にある多孔度εを有する。これらのビーズは、300〜100m
2/g[BET]の範囲に、より好ましくは450〜850m
2/g、最も好ましくは500〜800m
2/gの極めて狭い範囲にある表面積を有する。
【0056】
ここに開示されたとおりのポリマービーズは、標的ペプチドを含有する溶液からの凝集物質の分離に、予想外によく適している。これらの化学的性質およびこれらのナノ多孔質構造のため、これらの材料はとりわけ低分子量タンパク質およびペプチドとの疎水相互作用のために適しており、クロマトグラフィーカラムに基づいた結合および溶出またはフロースルーモードでの精製プロセスに組み込むことができる。有利なことに、適用されるポリスチレンビーズは、誘導体化される必要がなく、ゆえに、この精製工程において慣用されるクロマトグラフィーゲルよりもはるかに費用対効果が高い。本明細書中に記載の分離材料は、相当に廉価であり、再生することができ、これによって、ペプチド精製プラットホームおよびその外の、全体のコストを減少させることができる。
【0057】
加えて、疎水性材料の適用は、それが低分子量物質の、とりわけ分子質量<70kDaの化合物の、サイズ排除機構および疎水性吸着に基づくので、所与の例に限られない。
【0058】
そのうえ、本発明は、クロマトグラフィーに基づいた抗体精製工程を提供し、ここで本明細書中に記載のクロマトグラフィー材料は、再生することができ、広範な操作ウィンドウにおいて適用可能である(例えばpH3〜11;伝導度1mS/cm〜50mS/cm、操作速度150cm/分〜1000cm/分)。特に、多孔質ポリマービーズの低および高pH値での抵抗性は、満足な再生が可能でありこれらの材料が非常に長い寿命を有するため、ここでは大いに有利である。
【0059】
上で既に表示したとおり、本明細書中に記載の疎水性多孔質ポリマービーズを使用したペプチド溶液からの低分子量物質の、とりわけ分子質量<70kDaの化合物の吸着は、産業スケールならびにマイクロスケールのいずれにおいて行ってもよいのは、選択された分離材料が圧力に対して安定であり、高圧で変形し難いためである。使用者は、クロマトグラフィー精製を行う方式において自由である。適用される溶液の性質ならびに低分子量タンパク質およびペプチドの性質に依存して、多孔質ポリマー粒子の組成物のどれか1つが精製工程のために有利であり得ることは、自明である。ここで専門家は、純粋な(ビニル)アルキル芳香族から作られた多孔質ポリマー、または好適なアクリラートによって架橋されたそれらの間で選択肢を有する。この場合、最も好適なポリマービーズを、当業者は簡単に特定することができる。
【0060】
本記載は、当業者が本発明を包括的に実施することを可能にする。したがって、さらなるコメントを伴わずとも、当業者が上記記載を最も広い範囲において利用することができるであろうことが想定される。
【0061】
何らかの不明なことがある場合、引用された刊行物および特許文献が閲覧されるべきであることが理解される。したがって、これらの文書は、本記載の開示内容の一部とみなされる。
【0062】
よりよい理解のため、および、本発明を解説するため、例が以下に記載され、これは本発明の保護の範囲内にある。これらの例はまた、可能性のある変化形を解説する役割も果たす。
【0063】
そのうえ、所与の例においても、また本記載の残りにおいても、組成物中に存在する成分量は、常に、合計すると組成物全体に基づいて100重量%またはモル%までであり、たとえ表示したパーセント範囲からより高い値が生じ得たとしても、このパーセンテージを超過することができないことは、当業者には言うまでもない。他に表示されない限り、%データは、ゆえに、重量%またはモル%であり、ただし、体積データで示される比率を除く。
【0064】
明細書全体を通して使用される以下の用語は、文脈が明らかに他を表示しない限り、以下の意味を有するものとする:
【0065】
用語「アルキル(メタ)アクリラート」は、対応するアクリラートまたはメタクリラートエステルのいずれかをいい;同様に、用語「(メタ)アクリル((meth)aclyric)」は、アクリルまたはメタクリル酸のいずれか、および対応するエステルまたはアミドなどの誘導体をいう。上で表示したとおり、言及される全てのパーセンテージは、他に指定されない限り、関与するポリマーまたは組成物(溶液)の総重量に基づいた重量%で表現される。用語「コポリマー」は、2種以上の異なるモノマー(位置異性体を含む)の単位を含有するポリマー組成物をいう。
【0066】
以下の略語が、本明細書中で使用される:
g=グラム、
ppm=重量/体積での百万分率(parts per million)、
m=メートル、
cm=センチメートル、
mm=ミリメートル、
μm=マイクロメートル(ミクロン)=10
−6m、
nm=ナノメートル=10
−9m、
ml=ミリリットル、L=リットル。他に指定しない限り、挙げられる範囲は、両端を含み、合体可能であるものと読み取るものとする。
例および本記載において、ならびに特許請求の範囲において、与えられる温度は、常にセルシウス度(℃)である。
【0067】
方法:
粒子の特質:
粒子の特徴づけは、当技術分野において公知であり、I. C. Edmundson, Particle-size analysis, H. S. Bean, A. H. Beckett and J. E. Carles (編):Advances in Pharmaceutical Sciences vol.2中、 Academic Press, London 1967, 95-174によって記載されている。
【0068】
粒子サイズ分布および平均直径は、Mastersizer 2000E(Malvern Instruments Ltd., UK)を使用したレーザー回析測定により、またはレーザー遮光技術(Accusizer(商標)、モデル770、Particle Sizing Systems、Santa Barbara, Calif., USA)により測定することができる。
【0069】
マイクロスフェアの形状および表面特性(多孔性)は、走査型電子顕微鏡(SEM)分析により確立することができる。
【0070】
細孔径は、当技術分野において公知の方法によって決定する。マクロ孔は、水銀ポロシメトリーを使用して決定することができる。この場合、使用する水銀ポロシメトリー分析器(例えばAutoPore IV 9500、Micromeritics、USA)のプロトコルに従って、細孔径を分析するための実験を行う。細孔の寸法を走査型電子顕微鏡像(SEM)から概算することもまた、可能であり、走査型電子顕微鏡(SEM)(JSM-6700F. JEOL、Japan)により、乾燥後にポリマーマイクロスフェアの直径および表面の特徴を観察する。マイクロスフェアを蒸留水中に再懸濁し、分散体を、アルミ箔片上に滴下し、環境大気において乾燥させる。サンプルを、両面伝導性粘着テープを用いて金属スタブ上に置き、JFC-1600ファインコーター(JEOL、Japan)を用いて5Paより低い減圧下において金薄膜でコーティングする。
【0071】
メソ孔(mesopores)の細孔径およびそれらの比表面積もまた、窒素吸着/脱着測定法によって決定することができ、これは標準プロトコルに従うことによって行う。この後者の方法はまた、BET表面積を決定するためにも使用し得る。
【実施例】
【0072】
例
基本ビーズ:
ポリスチレンに基づく材料の合成(P353、P374およびP375など)
25.6gのポリビニルアルコールおよび0.38gのSDSを614.2gの水に溶解して、以下の懸濁重合のための水相を形成する。19.94gのエチルビニルベンゼン、75gのジビニルベンゼン、41.57gのエチレングリコールジメタクリラート、90.24gのトルエン、90.24gの2−エチル−1−ヘキサノールおよび0.96gのAIBNの均一な溶液により、有機相を形成する。有機相をリアクター容器中の水相に添加し、2つの相を、25℃において480rpmで攪拌器を用いて、見込まれる粒子サイズ分布に達成するために乳化させる。60分後、640gの水を添加し、反応混合物を72℃まで加熱する。2時間、温度を72℃に維持し、次に82℃に上昇させる。混合物を82℃でさらなる2時間重合させる。重合に続いて、懸濁液を濾過用漏斗で濾過し、粒子を1.5リットルの60℃の水で洗浄し、60℃にて5リットルのメタノールで、40℃にて5リットルのトルエンおよび2リットルのメタノールで洗浄することがこれに続く。最終生成物を真空オーブン中で24時間50℃および50mbarにおいて乾燥させる。乾燥質量に関する収量は、定量的である。見込まれる粒子サイズ分布に依って、最終生成物を、技術水準の手法に従うふるい分けにより分類する。
【0073】
例1
この実験においては、異なる材料について、組換えペプチド−インスリンを吸着するそれらの能力を評価する。以下の例については、ポリスチレン(PS)粒子P00446を、純粋インスリン(A11382IM、life technologies)の捕捉のために、通常使用されるLiChroprep(登録商標) RP-18(113900、Merck Millipore)のビーズおよび1つのカチオン交換材料(例えばEshmuno(登録商標) S、120078、Merck Millipore)との比較において使用する。100μlの粒子を、1mlの50mM酢酸、pH4で洗浄する。その後、50mM酢酸、pH4中の5mg/mlのインスリンの溶液1mlを、25℃にて30分間吸着させた。遠心分離の後、上清を除去する(5μlを、5μlのゲルローディング緩衝液、NP0007、life technologiesと混合した)。粒子を、1mlの50mM酢酸、pH4で洗浄し、2つの試験管に分ける。遠心分離の後、上清を廃棄する。吸着後のビーズについて、粒子の一部を500μlのゲルローディング緩衝液中に再懸濁させる。他の部分を500μlの50mM酢酸、40体積%のDPG、pH4で、それぞれ、50mMリン酸、500mM NaCl、pH8でEshmuno(登録商標) Sについて、25℃にて30分間溶出させる。遠心分離の後、上清を除去する(5μlを、5μlのゲルローディング緩衝液と混合した)。粒子を、500μlの50mM酢酸、pH4で洗浄する。遠心分離の後、上清を廃棄する。溶出後のビーズについて、粒子を500μlのゲルローディング緩衝液中に再懸濁させる。全てのサンプルを99℃にて10分間加熱した後、10μlの上清/溶出液それぞれ5μlのビーズサンプルを4〜12%のNuPAGE(登録商標)Novex(登録商標) Bis-Trisゲル(NP0336、life technologies)上にロードする。ゲルを、200Vの定電圧で25分間通電する。純水で洗浄した後、これをSimplyBlue(商標)SafeStain(LC6065、life technologies)で染色し、純水で脱染する。
【0074】
図1に示すとおり、ポリスチレンビーズP00446は、ほぼ完全にインスリンを吸着し、これはml粒子懸濁液あたりタンパク質50mgの静的結合容量に相当する。40体積%のジプロピレングリコールは、有用な脱離溶液である。新しいPS粒子の技術は、通常使用されるカチオン交換プロセスに匹敵する。それと比較して、LiChroprep(登録商標) RP-18(代替の逆相材料として)は、所与の条件下においてインスリンを吸着しない。
【0075】
例2
この実験においては、異なる材料について、粗製インスリンAを吸着するそれらの能力を評価する。以下の例については、ポリスチレン(PS)粒子P00446を、10mmの直径の12mm長カラム中に、20%エタノール・150mM NaCl溶液を使用して充填する。充填カラムは、50mMグリシン/50mM酢酸緩衝液、pH3.5を使用して、少なくとも20カラム体積、1ml/分にて平衡化する。粗製インスリン溶液Aを、pH3.5(インスリン濃度約1.7g/L)に調節する。60mLの得られた溶液を、平衡化されたカラム上に直接1ml/分でロードして、フロースルー分画を別個のフラスコ中に収集する。ローディングの後、カラムを、平衡化溶液を使用して10CVで洗浄する。捕捉された粗製インスリンの溶出を、50mMグリシン/50mM酢酸緩衝液、pH3.5中の50%エタノールの0〜100%の勾配溶出を使用して、30CVにおいて1ml/分で行う(
図2)。分画を収集し、非還元SDS PAGE分析に供する(
図3)。
【0076】
図3に示すとおり、ポリスチレンビーズP00446は、ほぼ完全にインスリンを吸着し、これはml充填床あたりタンパク質>80mgの結合容量に対応する。50体積%エタノールは、有用な脱離溶液(例えば、回収率101.33%)であり、粗製インスリン捕捉のためのイオン交換体を使用していては気付かない(データ示さず)、凝集体および標的分子の分離のためのポリスチレン粒子を使用することを可能にする。
【0077】
例3
この実験においては、ジビニルベンゼンコポリマーと架橋された(PS−DVB)、ポリ(エチル)スチレン(m)からなる粒状材料について、粗製インスリンBを吸着するその能力を評価する。以下の例については、ポリスチレン(PS)粒子P00446を、10mmの直径の12mm長カラム中に、20%エタノール・150mM NaCl溶液を使用して充填する。充填カラムは、50mMTRIS、100mMアルギニン緩衝液、pH7.0を使用して、少なくとも20カラム体積、1ml/分にて平衡化する。E.coli発現系に由来する粗製インスリン溶液Bを、pH3.5に調節し、30mlの得られた溶液を、平衡化されたカラム上に直接1ml/分でロードして、フロースルー分画を別個のフラスコ中に収集する。ローディングの後、カラムを、平衡化溶液を使用して10CVで洗浄する。捕捉された粗製インスリンの溶出を、50mMグリシン/50mM酢酸緩衝液、pH3.5中の60%ジプロピレングリコールの0〜100%の勾配溶出を使用して、20CVにおいて1ml/分で行う。分画を収集し、非還元SDS PAGE分析に供する(
図4)。
【0078】
図4に示すとおり、ポリスチレンビーズP00446は、粗製溶液からインスリンを吸着し(純度5%)、ジプロピレングリコール溶液を適用して、インスリン断片を凝集体および標的から分離して純度>40%を達成することができる。
【0079】
例4
この実験においては、ジビニルベンゼンコポリマーと架橋された(PS−DVB)、ポリ(エチル)スチレン(m)からなる粒状材料について、粗製タンパク質pSCP194を吸着するそれらの能力を評価する。以下の例については、ポリスチレン(PS)粒子P00446を、10mmの直径の12mm長カラム中に、20%エタノール・150mM NaCl溶液を使用して充填する。充填カラムは、50mMTRIS、100mMアルギニン緩衝液、pH7.0を使用して、少なくとも20カラム体積、1ml/分にて平衡化する。タンパク質pSCP194を含有する粗製E.coli溶解物を、pH7.0に調節し、20mlの得られた溶液を、平衡化されたカラム上に直接1ml/分でロードして、フロースルー分画を別個のフラスコ中に収集する。ローディングの後、カラムを、平衡化溶液を使用して10CVで洗浄する。捕捉された粗製インスリンの溶出を、50mMグリシン/50mM酢酸緩衝液、pH3.5中の60%ジプロピレングリコールの0〜100%の勾配溶出を使用して、20CVにおいて1ml/分で行う。分画を収集し、非還元SDS PAGE分析に供する(
図5)。
【0080】
図5に示すとおり、ポリスチレンビーズP00446は、粗製E.coli溶解物溶液からタンパク質pSCP194を吸着し、ジプロピレングリコール溶液を適用して、補足された標的を溶出させて純度>80%を達成することができる。
【0081】
例5
この実験においては、ジビニルベンゼンコポリマー(PS−DVB)およびエチレングリコールジメチルアクリラートからなる材料(PS−DVB−EGDMA)のコポリマーと種々の比率で架橋された、ポリ(エチル)スチレン(m)からなる粒状材料について、尿素の存在下においてインスリンを吸着するその能力を評価する。
以下の例については、ポリスチレン(PS)粒子P00446を、10mmの直径の12mm長カラム中に、20%エタノール・150mM NaCl溶液を使用して充填する。充填カラムは、50mMグリシン/50mM酢酸緩衝液、pH3.5を使用して、少なくとも20カラム体積、1ml/分にて平衡化する。8M尿素溶液中でのインキュベーション後の凝集したインスリンを含有する粗製インスリン溶液を、2M尿素濃度まで純水で希釈し、pH3.5に調節する。50mlの得られた溶液を、平衡化されたカラム上に直接1ml/分でロードして、フロースルー分画を別個のフラスコ中に収集する。ローディングの後、カラムを、平衡化溶液を使用して10CVで洗浄する。捕捉された粗製インスリンの溶出を、50mMグリシン/50mM酢酸緩衝液、pH3.5中の60%ジプロピレングリコールの0〜100%の勾配溶出を使用して、20CVにおいて1ml/分で行う。分画を収集し、非還元SDS PAGE分析に供した(
図6)。
【0082】
図6に示すとおり、ポリスチレンビーズP00446およびPS02は、粗製2M尿素含有溶液からインスリンを吸着し、ジプロピレングリコール溶液を適用して、補足された標的を溶出させて純度>90%を達成することができる(分画A3〜A4およびA11〜A12)。
【0083】
例6
この実験においては、ジビニルベンゼンコポリマー(PS−DVB)およびエチレングリコールジメチルアクリラート(PS−DVB−EGDMA)のコポリマーと種々の比率で架橋された、ポリ(エチル)スチレン(m)からなる粒状材料について、線形溶出勾配および水性緩衝液中のジプロピレングリコール有機溶媒を使用してpH3.5で、インスリンをその凝集体から精製するその能力を評価する。以下の例については、1mlのポリスチレン(PS)粒子PP00446を、10mmの直径の6.2長カラム中に、カラムを延長するための研削ビーズを使用して充填する。カラムの充填のために、20%エタノール・150mM NaCl溶液を調製する。充填カラムは、50mMグリシン/50mM酢酸緩衝液、pH3.5(平衡化緩衝液)を使用して、少なくとも20カラム体積、1ml/分にて平衡化する。インスリン/凝集体溶液を、酢酸を添加することによりpH3.5に調節する(インスリン濃度:約1.5mg/ml)。92mlの調製した溶液を、平衡化されたカラム上に1ml/分でロードし、その間にフロースルーをフラスコ中に収集する。ローディングを完了した後、カラムを15カラム体積の平衡化緩衝液を用いて1ml/分ですすぎ、結合していないインスリン分子を洗い流す。洗い流し工程の間のフロースルーを、第2のフラスコ中に収集する。続いて、50mMグリシン/50mM酢酸緩衝液(溶出緩衝液)中の50%ジプロピレングリコールの0〜100%の線形勾配を使用して、40カラム体積において1ml/分で溶出を開始させる。溶出液を、分画あたり10mlにて分画化させる。
図7は、インスリン/凝集体精製の間に記録されたクロマトグラムを描写する。収集した分画を、非還元SDS PAGE分析に供する(
図8)。
【0084】
図8に示すとおり、PP00446樹脂は、インスリン/凝集体溶液でオーバーロードされる。測定したPP00446の動的結合容量は、ml充填床あたりタンパク質>80mgに達した。50体積%のジプロピレングリコールは、好適な脱離溶液(例えば回収率:115%)であるだけでなく、線形勾配溶出の間にインスリンをその凝集体から分離することも可能にするということが、明らかになる。
【0085】
例7
この実験においては、ジビニルベンゼンコポリマー(PS−DVB)およびエチレングリコールジメチルアクリラート(PS−DVB−EGDMA)のコポリマーと種々の比率で架橋された、ポリ(エチル)スチレン(m)からなる粒状材料について、線形溶出勾配およびエタノールを使用してpH3.5で、インスリンをその凝集体から精製するその能力を評価する。以下の例については、1mlのポリスチレン(PS)粒子PP00446を、10mmの直径の6.2長カラム中に、カラムを延長するための研削ビーズを使用して充填する。カラムの充填のために、20%エタノール・150mM NaCl溶液を調製する。充填カラムは、50mMグリシン/50mM酢酸緩衝液、pH3.5(平衡化緩衝液)を使用して、少なくとも20カラム体積、1ml/分にて平衡化する。インスリン/凝集体溶液を、酢酸を添加することによりpH3.5に調節する(インスリン濃度:約2.0mg/ml)。50mlの調製した溶液を、平衡化されたカラム上に1ml/分でロードし、その間にフロースルーをフラスコ中に収集する。ローディングを完了した後、カラムを15カラム体積の平衡化緩衝液を用いて1ml/分ですすぎ、結合していないインスリン分子を洗い流す。洗い流し工程の間のフロースルーを、第2のフラスコ中に収集する。続いて、50mMグリシン/50mM酢酸緩衝液(溶出緩衝液)中の50%エタノールの0〜100%の線形勾配を使用して、40カラム体積において1ml/分で溶出を開始させた。溶出液を、分画あたり10mlにて分画化させた。
図3は、インスリン/凝集体精製の間に記録されたクロマトグラムを描写する。収集した分画を、非還元SDS PAGE分析に供する(
図9)。
【0086】
図10に示すとおり、PP00446樹脂は、インスリン/凝集体溶液でオーバーロードされる。測定したPP00446の動的結合容量(DBC)は、ml充填床あたりタンパク質>60mgに達した。結果から、50体積%エタノールが
脱離溶液として使用できることが判明した(回収率:96%)。この例からの精製は、ジプロピレングリコールの場合に匹敵する条件下での溶出と比較して低いDBCおよび劣った回収率をもたらす。
【0087】
例8
この実験においては、ジビニルベンゼン(PS−DVB)およびエチレングリコールジメチルアクリラート(PS−DVB−EGDMA)のコポリマーと種々の比率で架橋された、ポリ(エチル)スチレン(m)からなる粒状材料について、線形溶出勾配およびジプロピレングリコールを使用してpH8.0で、インスリンをその凝集体から分離するその能力を評価する。以下の例については、1mlのポリスチレン(PS)粒子PP00446を、10mmの直径の6.2長カラム中に、カラムを延長するための研削ビーズを使用して充填する。カラムの充填のために、20%エタノール・150mM NaCl溶液を調製する。充填カラムは、50mM TRIS、pH8.0(平衡化緩衝液)を使用して、少なくとも20カラム体積、1ml/分にて平衡化する。インスリン/凝集体溶液を、1M TRISを添加することによりpH8.0に調節する。そのうえ、インスリン/凝集体溶液の伝導度を、1M NaCl溶液によって約20mS/cmに設定する(インスリン濃度:約0.6mg/ml)。75mlの調製した溶液を、平衡化されたカラム上に1ml/分でロードし、その間にフロースルーをフラスコ中に収集した。ローディングを完了した後、カラムを15カラム体積の平衡化緩衝液を用いて1ml/分ですすぎ、結合していないインスリン分子を洗い流す。洗い流し工程の間のフロースルーを、第2のフラスコ中に収集する。続いて、50mM TRIS、pH8(溶出緩衝液)中の50%エタノールの0〜100%の線形勾配を使用して、40カラム体積において1ml/分で溶出を開始させた。溶出液を、分画あたり10mlにて分画化させる。
図5は、インスリン/凝集体精製の間に記録されたクロマトグラムを描写する。収集した分画を、非還元SDS PAGE分析に供する(
図11)。
【0088】
図12に示すとおり、P00446樹脂は、ほぼ完全にインスリンおよびその凝集体を吸着し、これはml充填床あたりタンパク質>70mgの動的結合容量に達する。しかも、線形勾配の適用によって、溶出は、凝集体からインスリンを精製することをもたらすのに対して(E2、E3)、ほとんどの凝集体は、溶出緩衝液濃度>80%で
脱離している。
【0089】
例9
この実験においては、ジビニルベンゼン(PS−DVB)およびエチレングリコールジメチルアクリラート(PS−DVB−EGDMA)のコポリマーと種々の比率で架橋された、ポリ(エチル)スチレン(m)からなる粒状材料について、段階溶出およびジプロピレングリコールを使用してpH8.0で、インスリンをその凝集体から分離するその能力を評価する。
【0090】
以下の例については、1mlのポリスチレン(PS)粒子PP00446を、10mmの直径の6.2長カラム中に、カラムを延長するための研削ビーズを使用して充填する。カラムの充填のために、20%エタノール・150mM NaCl溶液を調製する。充填カラムは、50mMグリシン/50mM酢酸緩衝液、pH3.5(平衡化緩衝液)を使用して、少なくとも20カラム体積、1ml/分にて平衡化する。インスリン/凝集体溶液を、酢酸を添加することによりpH3.5に調節する(インスリン濃度:約1.8mg/ml)。50mlの調製した溶液を、平衡化されたカラム上に1ml/分でロードし、その間にフロースルーをフラスコ中に収集した。ローディングを完了した後、カラムを15カラム体積の平衡化緩衝液を用いて1ml/分ですすぎ、結合していないインスリンを洗い流す。洗い流し工程の間のフロースルーを、第2のフラスコ中に収集する。続いて、溶出緩衝液としての50mMグリシン/50mM酢酸中の50%ジプロピレングリコールを使用した段階勾配(40カラム体積について70%、20カラム体積について100%)を使用して、1ml/分で溶出を開始させる。溶出液を、分画あたり10mlにて分画化させる。
図7は、インスリン/凝集体精製の間に記録されたクロマトグラムを描写する。収集した分画を、非還元SDS PAGE分析に供する(
図13)。
【0091】
図14に示すとおり、P00446樹脂は、インスリンおよびインスリン/凝集体を吸着した(動的結合容量:>70mg/ml)。この実験において、回収率は96%を達成した。しかも、SDS−PAGE分析によると、溶出緩衝液濃度が70%よりも高いときにほとんどのインスリン/凝集体が樹脂から
脱離することが証明される。この特性は、利用可能な段階勾配の適用によるインスリン/凝集体の分離を可能にする。
【0092】
例10
この実験においては、ジビニルベンゼン(PS−DVB)のコポリマーと架橋された、ポリ(エチル)スチレン(m)からなる粒状材料について、段階溶出およびジプロピレングリコールを使用してpH8.0で、インスリンから凝集体を除去するその能力を評価する。
【0093】
以下の例については、1mlのポリスチレン(PS)粒子PRLP-Sを、10mmの直径の6.2長カラム中に、カラムを延長するための研削ビーズを使用して充填する。カラムの充填のために、20%エタノール・150mM NaCl溶液を調製する。充填カラムは、50mM TRIS、pH8.0(平衡化緩衝液)を使用して、少なくとも20カラム体積、1ml/分にて平衡化する。インスリン/凝集体溶液を、1M TRISを添加することによりpH8.0に調節する。そのうえ、インスリン/凝集体溶液の伝導度を、1M NaCl溶液によって約20mS/cmに設定する(インスリン濃度:約1.6mg/ml)。50mlの調製した溶液を、平衡化されたカラム上に1ml/分でロードし、その間にフロースルーをフラスコ中に収集する。ローディングを完了した後、カラムを15カラム体積の平衡化緩衝液を用いて1ml/分ですすぎ、結合していないインスリンを洗い流す。洗い流し工程の間のフロースルーを、第2のフラスコ中に収集する。続いて、溶出緩衝液としての50mM TRIS、pH8.0中の50%ジプロピレングリコールを使用した段階勾配(40カラム体積について70%、20カラム体積について100%)を使用して、1ml/分で溶出を開始させる。溶出液を、分画あたり10mlにて分画化させる。
図9は、インスリン/凝集体精製の間に記録されたクロマトグラムを描写する。収集した分画を、非還元SDS PAGE分析に供する(
図15)。
【0094】
図16に示すとおり、PRLP-S樹脂は、インスリンを、ml充填床あたりタンパク質>60mgの動的結合容量測定値で結合させた。そのうえ、SDS−PAGE分析からは、70%の溶出緩衝液濃度においてインスリンモノマーが単独で樹脂から
脱離することが概説される(E1〜E4)。
図10においては、インスリン/凝集体が、溶出緩衝液の100%までの増加を通じて
脱離することが証明される(E5)。インスリン/凝集体の分離のための段階溶出は、インスリン精製プロセスを能率化する。
【0095】
インスリンの捕捉のためのポリスチレン粒子の適用
以下の例については、ポリスチレン(PS)粒子P00446を、純粋インスリン(A11382IM、life technologies)の捕捉のために、通常使用されるLiChroprep(登録商標) RP-18(113900、Merck Millipore)のビーズおよび1つのカチオン交換材料(例えばEshmuno(登録商標) S、120078、Merck Millipore)との比較において使用する。
【0096】
100μlの粒子を、1mlの50mM酢酸、pH4で洗浄する。その後、50mM酢酸、pH4中の5mg/mlのインスリンの溶液1mlを、25℃にて30分間吸着させる。遠心分離の後、上清を除去する(5μlを、5μlのゲルローディング緩衝液、NP0007、life technologiesと混合する)。粒子を、1mlの50mM酢酸、pH4で洗浄し、2つの試験管に分ける。遠心分離の後、上清を廃棄する。吸着後のビーズについて、粒子の一部を500μlのゲルローディング緩衝液中に再懸濁させる。他の部分を500μlの50mM酢酸、40体積%のDPG、pH4で、それぞれ、50mMリン酸、500mM NaCl、pH8でEshmuno(登録商標) Sについて、25℃にて30分間溶出させる。遠心分離の後、上清を除去する(5μlを、5μlのゲルローディング緩衝液と混合した)。粒子を、500μlの50mM酢酸、pH4で洗浄する。遠心分離の後、上清を廃棄する。溶出後のビーズについて、粒子を500μlのゲルローディング緩衝液中に再懸濁させる。全てのサンプルを99℃にて10分間加熱した後、10μlの上清/溶出液それぞれ5μlのビーズサンプルを4〜12%のNuPAGE(登録商標)Novex(登録商標) Bis-Trisゲル(NP0336、life technologies)上にロードする。ゲルを、200Vの定電圧で25分間通電する。純水で洗浄した後、これをSimplyBlue(商標)SafeStain(LC6065、life technologies)で染色し、純水で脱染する。
図1は、P00446、LiChroprep(登録商標) RP-18およびEshmuno(登録商標) S上の静止捕捉インスリンの非還元SDS PAGEを示す。
【0097】
条件:
1mlの5mg/mlのインスリンおよび50mM酢酸、pH4を、100μlの平衡化された粒子に添加する。吸着を温度25℃にて30分間行う。続いて、溶出を、500μlの50mM酢酸、40体積%のDPG、pH4で、それぞれ、50mMリン酸、500mM NaCl、pH8でEshmuno(登録商標) Sについて、温度25℃にて30分間行う。
レーン:M…MWマーカー
S…出発材料
SA…吸着後の上清
BA…吸着後のビーズ
E…溶出液
BE…溶出後のビーズ
【0098】
図1に示すとおり、ポリスチレンビーズP00446は、ほぼ完全にインスリンを吸着し、これはml粒子懸濁液あたりタンパク質50mgの静的結合容量に相当する。40体積%のジプロピレングリコールは、有用な脱離溶液である。新しいPS粒子の技術は、通常使用されるカチオン交換プロセスに匹敵する。
【0099】
それと比較して、LiChroprep(登録商標) RP-18(代替の逆相材料として)は、所与の条件下においてインスリンを吸着しない。
【0100】
粗製インスリンAの捕捉のためのポリスチレン粒子の適用
以下の例については、ポリスチレン(PS)粒子P00446を、10mmの直径の12mm長カラム中に、20%エタノール・150mM NaCl溶液を使用して充填する。
【0101】
充填カラムは、50mMグリシン/50mM酢酸緩衝液、pH3.5を使用して、少なくとも20カラム体積、1ml/分にて平衡化する。粗製インスリン溶液Aを、pH3.5(インスリン濃度約1.7g/L)に調節する。60mLの得られた溶液を、平衡化されたカラム上に直接1ml/分でロードして、フロースルー分画を別個のフラスコ中に収集する。ローディングの後、カラムを、平衡化溶液を使用して10CVで洗浄する。捕捉された粗製インスリンの溶出を、50mMグリシン/50mM酢酸緩衝液、pH3.5中の50%エタノールの0〜100%の勾配溶出を使用して、30CVにおいて1ml/分で行う(
図2)。分画を収集し、非還元SDS PAGE分析に供する(
図3)。
図2は、P00446ポリスチレン粒子からの捕捉された粗製インスリンの溶出ピークを示す。
図3は、P00446上の動的な粗製インスリンの捕捉の非還元SDS PAGEを示す。
【0102】
図3に示すとおり、ポリスチレンビーズP00446は、ほぼ完全にインスリンを吸着し、これはml充填床あたりタンパク質>80mgの結合容量に対応する。50体積%エタノールは、有用な脱離溶液(例えば、回収率101.33%)であり、粗製インスリン捕捉のためのイオン交換体を使用していては気付かない(データ示さず)、凝集体および標的分子の分離のためのポリスチレン粒子を使用することを可能にする。
【0103】
粗製インスリンBの捕捉のためのポリスチレン粒子の適用
以下の例については、ポリスチレン(PS)粒子P00446を、10mmの直径の12mm長カラム中に、20%エタノール・150mM NaCl溶液を使用して充填する。
【0104】
充填カラムは、50mMTRIS、100mMアルギニン緩衝液、pH7.0を使用して、少なくとも20カラム体積、1ml/分にて平衡化する。E.coli発現系に由来する粗製インスリン溶液Bを、pH3.5に調節し、30mlの得られた溶液を、平衡化されたカラム上に直接1ml/分でロードして、フロースルー分画を別個のフラスコ中に収集する。ローディングの後、カラムを、平衡化溶液を使用して10CVで洗浄する。捕捉された粗製インスリンの溶出を、50mMグリシン/50mM酢酸緩衝液、pH3.5中の60%ジプロピレングリコールの0〜100%の勾配溶出を使用して、20CVにおいて1ml/分で行う。分画を収集し、非還元SDS PAGE分析に供する(
図4)。
図4は、AKTA FPLCシステムを使用したP00446(カラム1.1ml 直径10mm)上の動的捕捉原料インスリンの非還元SDS PAGEを示す。25mM Tris、100mMアルギニン、pH7を用いて10CVの平衡化。30mlの1mg/mlの原料インスリンを、1ml/分のフロー速度でロードする。0%から100%までの60体積%DPGでの20CVにおける溶出。
レーン:M…MWマーカー
S…出発材料
FT…フロースルー
【0105】
図4に示すとおり、ポリスチレンビーズP00446は、粗製溶液からインスリンを吸着し(純度5%)、ジプロピレングリコール溶液を適用して、インスリン断片を凝集体および標的から分離して純度>40%を達成することができる。
【0106】
粗製タンパク質pSCP194の捕捉のためのポリスチレン粒子の適用
以下の例については、ポリスチレン(PS)粒子P00446を、10mmの直径の12mm長カラム中に、20%エタノール・150mM NaCl溶液を使用して充填する。
【0107】
充填カラムは、50mMTRIS、100mMアルギニン緩衝液、pH7.0を使用して、少なくとも20カラム体積、1ml/分にて平衡化する。タンパク質pSCP194を含有する粗製E.coli溶解物を、pH7.0に調節し、20mlの得られた溶液を、平衡化されたカラム上に直接1ml/分でロードして、フロースルー分画を別個のフラスコ中に収集する。ローディングの後、カラムを、平衡化溶液を使用して10CVで洗浄する。捕捉された粗製インスリンの溶出を、50mMグリシン/50mM酢酸緩衝液、pH3.5中の60%ジプロピレングリコールの0〜100%の勾配溶出を使用して、20CVにおいて1ml/分で行う。分画を収集し、非還元SDS PAGE分析に供する(
図5)。
図5は、P00446(カラム1.1ml 直径10mm)上の動的な粗製pSCP194の捕捉の非還元SDS PAGEを示す。
【0108】
図5に示すとおり、ポリスチレンビーズP00446は、粗製E.coli溶解物溶液からタンパク質pSCP194を吸着し、ジプロピレングリコール溶液を適用して、補足された標的を溶出させて純度>80%を達成することができる。
【0109】
尿素中の粗製インスリンの捕捉のためのポリスチレン粒子の適用
以下の例については、ポリスチレン(PS)粒子P00446を、10mmの直径の12mm長カラム中に、20%エタノール・150mM NaCl溶液を使用して充填する。
【0110】
充填カラムは、50mMグリシン/50mM酢酸緩衝液、pH3.5を使用して、少なくとも20カラム体積、1ml/分にて平衡化する。8M尿素溶液中でのインキュベーション後の凝集したインスリンを含有する粗製インスリン溶液を、2M尿素濃度まで純水で希釈し、pH3.5に調節する。50mlの得られた溶液を、平衡化されたカラム上に直接1ml/分でロードして、フロースルー分画を別個のフラスコ中に収集した。ローディングの後、カラムを、平衡化溶液を使用して10CVで洗浄する。捕捉された粗製インスリンの溶出を、50mMグリシン/50mM酢酸緩衝液、pH3.5中の60%ジプロピレングリコールの0〜100%の勾配溶出を使用して、20CVにおいて1ml/分で行う。分画を収集し、非還元SDS PAGE分析に供する(
図6)。
図6:は、P00446およびPS02(カラム1.1ml 直径10mm)上の動的な粗製インスリンの捕捉の非還元SDS PAGEを示す。
【0111】
図6に示すとおり、ポリスチレンビーズP00446およびPS02は、粗製2M尿素含有溶液からインスリンを吸着し、ジプロピレングリコール溶液を適用して、補足された標的を溶出させて純度>90%を達成することができる(分画A3〜A4およびA11〜A12)。