(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流路は、前記外周面及び前記内周面に平行な面内で液体試料の流通方向を変化させる屈曲部又は湾曲部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の遠心式流動場分画装置の製造方法。
前記流路部材には、それぞれ円弧状に延びる複数の分割路が径方向に並べて形成されており、各分割路が互いに連通されることにより前記流路が構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の遠心式流動場分画装置の製造方法。
前記流路部材には、前記外周面及び前記内周面に平行な同一面内に複数の前記流路が形成されており、各流路に対応付けて前記流入口及び前記流出口が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の遠心式流動場分画装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
液体試料に含まれる粒子を比重に応じて分級する方法として、流動場分画法(Field Flow Fractionation)が知られている。例えば下記特許文献1には、流路内に液体試料を流入させて当該流路を回転させることにより、液体試料中の粒子を遠心力によって分級する遠心式流動場分画装置の一例が開示されている。
【0003】
遠心式流動場分画装置は、例えばロータ、流路部材及び固定部材などを備えている。ロータは、円環状に形成され、回転軸線を中心に回転可能に保持されている。流路部材は、例えば3層構造となっており、各層が前記ロータの内周面に沿って円弧状に湾曲された状態で順次積層されている。固定部材は、流路部材の内周面(最も回転軸線側の層)に沿って円弧状に延びるC字状の部材である。
【0004】
流路部材を構成する各層は、それぞれ長尺形状を有しており、長手方向に延びる開口部が形成された中間層(特許文献1の
図5参照)と、当該中間層を挟み込んで開口部の外側及び内側を塞ぐことにより間に流路を形成する外面層及び内面層(特許文献1の
図4(a)及び(b)参照)とからなる。内面層には、それぞれ流路に連通する貫通孔からなる流入口及び流出口が形成されており、流入口を介して流路内に液体試料を流入させることができるとともに、流出口を介して流路内から液体試料を流出させることができる。
【0005】
上記のような流路部材の各層は、固定部材の外周面に沿って湾曲された状態で積層され、ボルト又はピンなどを用いて固定部材に取り付けられる。流路部材が取り付けられた固定部材は、ロータの内側の空間に挿入され、ロータとの間に流路部材を挟み込むようにしてロータの内周面に沿って固定される。このとき、C字状の固定部材の両端部間に楔状部材が取り付けられることにより、当該両端部を拡げる方向に力が加えられる(特許文献1の
図6参照)。これにより、C字状の固定部材がロータの内周面側に強く押し当てられるようにして固定され、固定部材とロータとの間に流路部材が挟持される。
【0006】
上記のようにして組み立てられた遠心式流動場分画装置においては、ロータを回転させることにより、当該ロータに取り付けられている流路部材を回転させ、流路内の液体試料に遠心力を付与することができる。その結果、流入口から流路内に流入する液体試料に含まれる粒子が、比重に応じて異なるタイミングで流出口から流出することにより、液体試料中の粒子が比重ごとに分級される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような従来の構成では、流路内の液体試料が外部に漏れ出しやすいという問題があった。すなわち、固定部材をロータの内周面に強く押し当てるように固定することで、流路部材の各層を密着させて流路を密閉しているため、例えば流路内の圧力が固定部材の押圧力よりも高くなった場合には、流路部材の各層間に隙間が生じて液体試料が漏れ出すおそれがある。
【0009】
特に、ロータの回転数が高い状態では、流路内の圧力が高くなるため、流路部材の各層間の隙間から液体試料が漏れ出しやすい。ロータの回転数が高い状態では、固定部材が流路部材をロータ側に押圧する力も大きくなるが、本願発明者が行った実験によれば、それ以上に流路内の圧力が上昇するため、ロータの回転数が高くなるほど流路内から液体試料が漏れ出しやすいという結果が得られた。
【0010】
また、従来の構成では、流路部材の各層を密着させるために、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの弾力性を有する材料で中間層が形成されている。そのため、固定部材により流路部材をロータ側に強く押圧した状態で長時間経過すると、中間層の劣化により各層間のシール性が低下し、流路内から液体試料が漏れ出しやすくなる。
【0011】
さらに、流路部材を着脱する際には、当該流路部材を構成する各層を個別に取り扱う必要がある。したがって、各層に汚れが付着しないように注意したり、各層の取付位置が互いにずれないように注意したりしながら、各層を個別に着脱しなければならないため、着脱作業が煩雑になるという問題がある。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、流路内から液体試料が漏れ出しにくく、流路部材の着脱作業が容易な遠心式流動場分画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る遠心式流動場分画装置は、円環状のロータと、円弧状の流路部材と、回転駆動部とを備える。前記ロータは、回転軸線を中心に回転する。前記流路部材は、前記ロータの内周面に沿って設けられ、前記ロータ側に形成された円弧状の外周面及び前記回転軸線側に形成された円弧状の内周面を有している。また、前記流路部材は、内部に液体試料の流路が形成されるとともに、前記流路への液体試料の流入口及び前記流路からの液体試料の流出口が形成されている。前記回転駆動部は、前記ロータを回転させることにより、前記流路内における液体試料中の粒子を遠心力によって分級させる。前記流路部材は、前記外周面及び前記内周面が一体的に形成されることにより、内部に前記流路が形成された中空状の部材からなる。
【0014】
このような構成によれば、流路部材の外周面及び内周面が一体的に形成されることにより、流路部材を内部に流路が形成された中空状の1つの部材として構成することができる。これにより、流路部材の耐圧性能が向上し、流路内の圧力が高い場合やロータの回転数が高い場合などであっても流路に隙間が生じるのを防止することができるとともに、経年変化によるシール性の低下も生じないため、流路内から液体試料が漏れ出しにくい。また、流路部材を1つの部材として取り扱うことができるため、流路内への汚れの付着などに注意することなく一度に着脱が可能であり、流路部材の着脱作業が容易である。
【0015】
前記遠心式流動場分画装置は、前記流路部材の内周面に沿って設けられ、前記流路部材を前記ロータ側に押圧して固定する固定部材をさらに備えていてもよい。
【0016】
このような構成によれば、固定部材により流路部材をロータ側に押圧して強固に固定することができる。流路部材は内部に流路が形成された1つの部材として液密構造を有しているため、流路部材に対する固定部材からの押圧力を従来ほど高くする必要がない。その結果、流路部材が変形することによりシール性が低下することもなく、流路内から液体試料が漏れ出しにくい。
【0017】
前記流路部材は、前記外周面が形成された外面層、及び、前記内周面が形成された内面層を含む複数層が、互いに接合されることにより構成された積層体からなるものであってもよい。
【0018】
このような構成によれば、外面層及び内面層を含む複数層を互いに接合することにより、内部に流路が形成された液密構造の流路部材を構成することができる。このように、複数層を組み合わせて流路を形成することにより、流路の形状についての自由度を高めることができる。
【0019】
前記複数層は、拡散接合により互いに接合されていてもよい。
【0020】
このような構成によれば、拡散接合を用いて、複数層を互いに強固に接合することができる。各層を接合する場合、各層を円弧状に変形させてから接合しようとすると、各層の形状にばらつきが生じて良好に接合することが難しいため、各層が真っ直ぐな状態で接合した後に円弧状に変形させることが好ましい。このような場合であっても、拡散接合を用いて各層を強固に接合しておけば、円弧状に変形させる際に各層が剥がれにくいため、流路内から液体試料が漏れ出しにくい。また、拡散接合を用いた場合には、接合部に不規則な形状が生じないため、接合部が流路内の液体試料の流れに影響を与えることがなく、分級性能の低下を防止することができる。
【0021】
前記複数層は、同種の材料により形成されていてもよい。
【0022】
このような構成によれば、流路の壁面を構成する各層がいずれも同種の材料により形成されているため、流路の壁面の状態が分級性能に与える影響を予測しやすい。また、同種の材料により形成された各層は、高温下での接合時に同様の態様で熱変形するため接合が容易であり、接合後に冷却されたときにも各層が剥がれにくい。したがって、流路内から液体試料がさらに漏れ出しにくい。
【0023】
前記流路は、前記外周面及び前記内周面に平行な面内で液体試料の流通方向を変化させる屈曲部又は湾曲部を有していてもよい。
【0024】
このような構成によれば、屈曲部又は湾曲部により液体試料の流通方向を変化させて、長い流路を形成することができるため、分級性能を向上させることができる。また、屈曲部又は湾曲部を有するような複雑な形状の流路を積層構造により形成しようとした場合には、各層を個別に取り扱うことが非常に難しくなるが、各層が一体的に形成された1つの部材として流路部材を構成することにより、流路部材の着脱作業が極めて容易になる。
【0025】
前記流路部材には、それぞれ円弧状に延びる複数の分割路が径方向に並べて形成されており、各分割路が互いに連通されることにより前記流路が構成されていてもよい。
【0026】
このような構成によれば、径方向に並べて形成された複数の分割路を互いに連通させることにより、長い流路を形成することができるため、分級性能を向上させることができる。流路に屈曲部又は湾曲部を有するような構成と比較すると、流路内における液体試料の流速にばらつきが生じにくいため、分離性能をより効果的に向上させることができる。
【0027】
前記流路部材には、前記外周面及び前記内周面に平行な同一面内に複数の前記流路が形成されており、各流路に対応付けて前記流入口及び前記流出口が形成されていてもよい。
【0028】
このような構成によれば、複数の流路に対して、それぞれ個別に液体試料を流入させることができる。したがって、必要に応じて使用する流路を切り替えれば、流路部材を着脱することなく異なる流路を用いて液体試料中の粒子を分級することができる。また、複数の流路を同時に使用すれば、作業効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、流路部材の耐圧性能が向上し、流路に隙間が生じるのを防止することができるとともに、経年変化によるシール性の低下も生じないため、流路内から液体試料が漏れ出しにくい。また、流路部材を1つの部材として取り扱うことができるため、流路部材の着脱作業が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る遠心式流動場分画装置1を備えた分析システムの構成例を示す概略図である。遠心式流動場分画装置1は、流動場分画法(Field Flow Fractionation)を用いて液体試料に含まれる粒子を比重に応じて分級する装置である。
図1の分析システムには、遠心式流動場分画装置1の他に、キャリア貯留部2、送液ポンプ3、ロータリーバルブ4、試料注入装置5、検出器6及びキャリア回収部7などが備えられている。
【0032】
キャリア貯留部2には、例えば水又は有機系溶媒などからなるキャリア流体が貯留されている。キャリア流体は、送液ポンプ3によりキャリア貯留部2内から送り出され、ロータリーバルブ4を介して遠心式流動場分画装置1に供給される。試料注入装置5は、ロータリーバルブ4と遠心式流動場分画装置1との間に設けられており、試料注入装置5から試料が注入されたキャリア流体が、液体試料として遠心式流動場分画装置1に供給されるようになっている。
【0033】
液体試料には、分析対象となる多数の粒子が含まれている。液体試料に含まれる粒子は、遠心式流動場分画装置1において遠心力が付与されることにより分級され、比重に応じて異なるタイミングで遠心式流動場分画装置1から流出する。遠心式流動場分画装置1から順次流出する粒子は、ロータリーバルブ4を介してキャリア流体とともに検出器6へと送られ、当該検出器6において検出された後、キャリア回収部7に回収される。遠心式流動場分画装置1に対する液体試料の供給の開始又は停止は、ロータリーバルブ4を回転させることにより切り替えることができる。
【0034】
図2は、遠心式流動場分画装置1の構成例を示す概略正面図である。遠心式流動場分画装置1は、回転軸11を中心に回転する回転部10と、回転軸11を回転可能に保持する保持台20と、回転する回転部10に作業者が接触するのを防止するための保護壁30とが組み立てられることにより構成されている。
【0035】
回転部10は、例えば円筒形状に形成されており、その中心部に取り付けられた回転軸11が水平方向に延びるように保持台20により保持されている。保護壁30は、例えば回転部10の外周面に対応する形状に湾曲したU字状の部材であり、回転部10の外周面を覆うように、当該外周面に対して微小な間隔を隔てて対向した状態で保持台20に取り付けられている。
【0036】
回転軸11は中空状に形成されており、液体試料は、例えば回転軸11の一端部から回転軸11内に供給される。回転部10には、分級前の液体試料が導入される導入部12と、分級後の液体試料が導出される導出部13とが設けられている。導入部12及び導出部13は、それぞれ配管(図示せず)を介して回転軸11内に連通している。これにより、回転軸11内に供給された液体試料は、配管を介して導入部12から回転部10に導入され、当該回転部10において試料液体中の粒子が分級された後、導出部13から配管を介して回転軸11に導かれ、検出器6へと送られるようになっている。
【0037】
回転軸11には、回転駆動部の一例であるモータ40が連結されている。このモータ40の駆動により回転部10を回転させて、回転部10内の液体試料に遠心力を付与することができる。モータ40の駆動は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む制御部50によって制御される。ただし、回転部10は、モータ40以外の回転駆動部を用いて回転させることも可能である。
【0038】
図3は、回転部10の構成例を示す分解斜視図である。回転部10は、例えばロータ14、スペーサ15、流路部材16、固定部材17及び楔状部材18などが組み立てられることにより、全体として円筒状の部材として構成されている。
【0039】
ロータ14は、円環状の部材であり、一方の端面が端面壁141により塞がれている。端面壁141は円板状に形成され、その中央部に回転軸11を挿通させるための挿通孔142が形成されている。回転軸11を挿通孔142に挿通させて端面壁141に固定することにより、回転軸11の回転に伴って、当該回転軸11と同軸上の回転軸線Lを中心にロータ14を回転させることができる。
【0040】
ロータ14の内側(回転軸線L側)の空間には、スペーサ15、流路部材16、固定部材17及び楔状部材18が収容される。スペーサ15、流路部材16及び固定部材17は、それぞれ長尺形状の部材が円弧状に湾曲された形状を有しており、ロータ14の内周面に沿って、この順序で積層された状態で固定される。スペーサ15、流路部材16及び固定部材17の曲率半径は、例えば50〜200mm程度である。
【0041】
流路部材16は、例えば厚みが1mm以下の薄板状であり、周方向の両端部が間隔を隔てて対向することによりC字状に形成されている。流路部材16の内部には、周方向に延びる流路161が形成されている。すなわち、流路部材16は、ロータ14側に形成された円弧状の外周面162と、回転軸線L側に形成された円弧状の内周面163とを有しており、外周面162と内周面163との間に流路161が形成されている。
【0042】
流路部材16の内周面163における周方向の一端部には、流路161への液体試料の流入口164が形成されている。一方、流路部材16の内周面163における周方向の他端部には、流路161からの液体試料の流出口165が形成されている。これにより、流入口164から流路161内に流入した液体試料は、流路161内を一端部から他端部まで周方向に沿って流通し、流出口165から流出するようになっている。
【0043】
液体試料中の粒子を分級する際には、まず、モータ40の駆動によって回転部10が回転し、回転部10の回転数が徐々に上昇する。そして、回転部10の回転数が一定の値(例えば5000rpm)に到達すれば、その回転数が維持された状態で流入口164から液体試料が注入される。
【0044】
流路161内に液体試料が一定時間だけ注入された後、ロータリーバルブ4の切替によって液体試料の供給が停止され、そのまま回転部10が回転されることにより、流路161内の液体試料中の粒子が遠心沈降する。その後、ロータリーバルブ4の切替によって液体試料の供給が再開され、一定時間後に回転部10の回転数が徐々に下降される。
【0045】
これにより、液体試料中の比重が小さい粒子から順に、流路161内の液体試料の流れに乗って下流側へと送られ、流出口165から順次流出する。このように、流路161内における液体試料中の粒子が遠心力によって分級され、比重に応じて異なるタイミングで流出口165から流出して検出器6へと送られるようになっている。
【0046】
固定部材17は、流路部材16よりも厚みが大きい部材であり、例えば厚みが10mm程度に形成されている。固定部材17は、流路部材16と同様に、周方向の両端部が間隔を隔てて対向することによりC字状に形成されている。固定部材17の周方向の長さは、流路部材16の周方向の長さとほぼ一致している。固定部材17は、流路部材16の内側(回転軸線L側)に、流路部材16の内周面163に沿って設けられる。
【0047】
固定部材17における周方向の両端部には、係止具の一例であるボルト19をねじ込むための複数のねじ孔171が形成されている。流路部材16における周方向の両端部には、固定部材17の各ねじ孔171に対向する位置に複数の挿通孔166が形成されている。これにより、各挿通孔166に外側からボルト19を挿通させ、各ねじ孔171にねじ込むことによって、流路部材16を固定部材17に取り付けることができる。ただし、係止具は、ボルト19に限らず、ピンなどの他の部材により構成されていてもよい。
【0048】
また、固定部材17における周方向の両端部には、流路部材16の内周面163に形成された流入口164及び流出口165に対向する位置に、それぞれ貫通孔172が形成されている。固定部材17の内周面には、各貫通孔172に連通するように導入部12及び導出部13が取り付けられている。これにより、導入部12から導入された液体試料は、一方の貫通孔172を介して流入口164から流路161内に流入し、流路161内を周方向に流通した後、流出口165から他方の貫通孔172及び導出部13を介して導出される。
【0049】
流路部材16内の流路161は、キャリア流体の種類や分析の条件などに応じて異なる高さに設定される。そのため、流路部材16は、流路161の高さに応じて異なる厚みに形成され、複数種類の流路部材16の中から最適な流路部材16が選択されて固定部材17に取り付けられることとなる。
【0050】
上記のようにして流路部材16が取り付けられた固定部材17は、ロータ14の内側の空間に挿入され、ロータ14との間に流路部材16を挟み込むようにしてロータ14の内周面に沿って固定される。このとき、C字状の固定部材17の両端部間に楔状部材18が取り付けられることにより、当該両端部を拡げる方向に力が加えられる。
【0051】
これにより、C字状の固定部材17がロータ14の内周面側に強く押し当てられ、流路部材16がロータ14側に押圧されて固定される。液体試料中の粒子を分級させる際には、ロータ14が高速で回転されることにより、流路161内が高圧(例えば1MPa程度)となり、流路161の内外の圧力差が大きくなるが、固定部材17とロータ14との間に流路部材16を挟持することにより、流路部材16の外周面162及び内周面163が上記圧力差で流路161側とは反対側に変形するのを防止することができる。
【0052】
本実施形態では、流路部材16とロータ14との間にスペーサ15が挟持されるようになっている。スペーサ15の材質は、特に限定されるものではないが、例えばPET(Polyethylene Terephthalate)などの樹脂又は金属により形成されている。スペーサ15は、流路部材16よりも若干長く形成されており、その周方向の両端部には、流路部材16の各挿通孔166に対向する位置に長孔151が形成されている。
【0053】
流路部材16の各挿通孔166に挿通されたボルト19の頭部は、スペーサ15の各長孔151内に収容される。各長孔151は、周方向に延びるように形成されている。これにより、各長孔151内に各ボルト19の頭部を収容させた状態で、楔状部材18により固定部材17の両端部が拡げられて、固定部材17がロータ14の内周面側に強く押し当てられた場合には、各長孔151内で各ボルト19の頭部が周方向にスライドしながら、固定部材17とロータ14との間にスペーサ15及び流路部材16が挟持されることとなる。
【0054】
スペーサ15は、例えば厚みが1mm以下の薄板状であり、流路部材16の厚みに応じて異なる厚みのものが選択される。すなわち、スペーサ15の厚みと流路部材16の厚みとの合計値がほぼ一定となるように、最適な厚みを有するスペーサ15が選択される。また、スペーサ15は、ロータ14の内周面の損傷を防止する機能も有している。ただし、スペーサ15は省略することも可能である。
【0055】
図4は、楔状部材18の構成例を示す斜視図である。楔状部材18は、例えば2つのナット部181と、1つのボルト部182とを備えている。ボルト部182は、軸線方向に沿って互いに逆方向に延びる2つの軸部183を有しており、一方の軸部183には右ねじが形成され、他方の軸部183には左ねじが形成されている。
【0056】
2つのナット部181は、ボルト部182を挟んで互いに対向しており、一方のナット部181にボルト部182の一方の軸部183がねじ込まれるとともに、他方のナット部181にボルト部182の他方の軸部183がねじ込まれている。したがって、ボルト部182を一方向に回転させれば、2つのナット部181を互いに接近させることができ、ボルト部182を逆方向に回転させれば、2つのナット部181を互いに離間させることができる。
【0057】
楔状部材18は、C字状の固定部材17の両端部間に設けられ、各ナット部181におけるボルト部182側とは反対側の面が、固定部材17の両端面にそれぞれ当接する当接面184を構成している。したがって、各当接面184を固定部材17の両端面に当接させた状態でボルト部182を回転させ、固定部材17の両端部の間隔を拡げたり縮めたりすることにより、ロータ14側への固定部材17の押圧力を調整したり、固定部材17を着脱したりすることができる。
【0058】
各ナット部181の当接面184は、外側(ロータ14側)に向かって徐々に先細りするテーパ面により形成されている。これらの当接面184に当接する固定部材17の両端面も、外側(ロータ14側)に向かって端面同士が徐々に接近するようなテーパ面により形成されている。
【0059】
したがって、楔状部材18を固定部材17の両端部間に設けた状態で、ボルト部182を回転させて2つのナット部181を互いに離間させることにより、固定部材17の両端部の間隔を拡げたときには、各ナット部181の当接面184によって、固定部材17の両端面が外側(ロータ14側)に向かって押し上げられる。これにより、固定部材17をより高い押圧力でロータ14側に押し当てることができる。
【0060】
各ナット部181の当接面184には、1つ又は複数の凸部185が形成されており、当該凸部185が固定部材17の両端面に形成された凹部(図示せず)に係止されることにより、楔状部材18が固定部材17の両端部間に位置決めされる。ただし、楔状部材18側に凹部が形成され、固定部材17側に凸部が形成された構成であってもよい。また、楔状部材18は、上記のような構成に限らず、固定部材17をロータ14側に押圧するように固定できるような構成であれば、他の任意の構成を採用することができる。
【0061】
図5は、流路部材16の構成例を示す分解斜視図であり、流路部材16が円弧状に湾曲される前の状態を内周面163側から見た図を示している。流路部材16は、例えば外面層61、内面層62及び中間層63が積層された3層構造の積層体からなる。中間層63は、外面層61と内面層62との間に設けられている。各層61,62,63は、例えばステンレス鋼(SUS)により形成されており、それぞれ0.25mm程度の厚みを有している。
【0062】
外面層61における中間層63側とは反対側の面は、流路部材16が円弧状に湾曲されたときに、当該流路部材16の外周面162を構成する。また、内面層62における中間層63側とは反対側の面は、流路部材16が円弧状に湾曲されたときに、当該流路部材16の内周面163を構成する。
【0063】
中間層63には、当該中間層63を貫通し、長手方向に真っ直ぐ延びる開口部631が形成されている。開口部631は、例えばエッチング又は放電加工などにより形成することができる。開口部631の長手方向の両端部は、それぞれ徐々に先細りした三角形状に形成されており、各先端が長手方向に張り出した細長いポート部632となっている。
【0064】
外面層61及び内面層62で中間層63が挟み込まれ、開口部631(ポート部632を含む。)の外側及び内側が塞がれることにより、外面層61と内面層62との間に流路161が形成される。このようにして一体的に形成された流路部材16は、ベンディングロール(板金用の曲げ加工機)などを用いて、固定部材17の外径とほぼ同じ内径を有する円弧状に湾曲される。
【0065】
内面層62における各ポート部632に対向する位置には、流入口164及び流出口165がそれぞれ形成されている。これにより、各層61,62,63が積層された状態では、流入口164及び流出口165が、それぞれポート部632から流路161に連通するようになっている。各層61,62,63の長手方向の両端部には、互いに対向する位置に貫通孔が形成されており、これらの貫通孔がボルト19を挿通させるための挿通孔166を構成している。
【0066】
本実施形態では、外面層61、内面層62及び中間層63の複数層が、互いに接合されることにより積層体が構成されている。すなわち、外面層61が中間層63に接合されるとともに、内面層62が中間層63に接合されている。これにより、流路部材16の外周面162及び内周面163が一体的に形成され、内部に流路161が形成された中空状の1つの部材として流路部材16が構成されている。
【0067】
これにより、流路部材16の耐圧性能が向上し、流路161内の圧力が高い場合やロータ14の回転数が高い場合などであっても流路161に隙間が生じるのを防止することができるとともに、経年変化によるシール性の低下も生じないため、流路161内から液体試料が漏れ出しにくい。また、流路部材16を1つの部材として取り扱うことができるため、流路161内への汚れの付着などに注意することなく一度に着脱が可能であり、流路部材16の着脱作業が容易である。
【0068】
また、本実施形態では、固定部材17により流路部材16をロータ14側に押圧して強固に固定することができる。流路部材16は内部に流路161が形成された1つの部材として液密構造を有しているため、流路部材16に対する固定部材17からの押圧力を従来ほど高くする必要がない。その結果、流路部材16が変形することによりシール性が低下することもなく、流路161内から液体試料が漏れ出しにくい。
【0069】
特に、本実施形態では、外面層61、内面層62及び中間層63の複数層を互いに接合することにより、内部に流路161が形成された液密構造の流路部材16を構成することができる。このように、複数層を組み合わせて流路161を形成することにより、流路161の形状についての自由度を高めることができる。
【0070】
各層61,62,63は、例えば拡散接合により互いに接合することができる。拡散接合とは、各層61,62,63を密着させた状態で、各層61,62,63を融点以下の温度条件で加熱しながら加圧することにより、接合面間に生じる原子の拡散を利用して接合する方法である。この拡散接合を用いることにより、原子同士の接合によって各層61,62,63を互いに強固に接合することができる。
【0071】
各層61,62,63を接合する場合、各層61,62,63を円弧状に変形させてから接合しようとすると、各層61,62,63の形状にばらつきが生じて良好に接合することが難しいため、各層61,62,63が真っ直ぐな状態で接合した後に円弧状に変形させることが好ましい。このような場合であっても、拡散接合を用いて各層61,62,63を強固に接合しておけば、円弧状に変形させる際に各層61,62,63が剥がれにくいため、流路161内から液体試料が漏れ出しにくい。
【0072】
また、拡散接合を用いた場合には、接合部に不規則な形状が生じないため、接合部が流路161内の液体試料の流れに影響を与えることがなく、分級性能の低下を防止することができる。ただし、各層61,62,63の接合は、拡散接合に限らず、ろう付け、溶接又は熱融着などの他の方法で行うことも可能である。
【0073】
本実施形態では、流路161の壁面を構成する複数層61,62,63が同種の材料(例えばステンレス鋼)により形成されているため、流路161の壁面の状態が分級性能に与える影響を予測しやすい。また、同種の材料により形成された各層61,62,63は、例えば拡散接合などのように、高温下での接合時に同様の態様で熱変形するため接合が容易であり、接合後に冷却されたときにも各層61,62,63が剥がれにくい。したがって、流路161内から液体試料がさらに漏れ出しにくい。
【0074】
ただし、各層61,62,63は、ステンレス鋼に限らず、他の金属により形成されていてもよいし、金属以外の材料により形成されていてもよい。各層61,62,63が金属により形成されている場合には、例えば拡散接合、ろう付け又は溶接により各層61,62,63を接合することができる。一方、各層61,62,63が樹脂により形成されている場合には、例えば熱融着により各層61,62,63を接合することができる。
【0075】
図6は、流路部材16の第1変形例を示す分解斜視図であり、流路部材16が円弧状に湾曲される前の状態を外周面162側から斜めに見た図を示している。この例における流路部材16は、例えば外面層61及び内面層62が積層された2層構造の積層体からなる。各層61,62は、例えばステンレス鋼(SUS)により形成されており、外面層61は0.25mm程度、内面層62は0.5mm程度の厚みを有している。
【0076】
外面層61における内面層62側とは反対側の面は、流路部材16が円弧状に湾曲されたときに、当該流路部材16の外周面162を構成する。また、内面層62における外面層61側とは反対側の面は、流路部材16が円弧状に湾曲されたときに、当該流路部材16の内周面163を構成する。
【0077】
内面層62には、長手方向に真っ直ぐ延びる凹部621が形成されている。当該凹部621は、例えばハーフエッチングにより内面層62の表面に掘り込まれており、内面層62を貫通していない。凹部621は、内面層62の厚みの半分程度(例えば0.25mm程度)の深さで形成されている。凹部621の長手方向の両端部は、それぞれ徐々に先細りした三角形状に形成されており、各先端が長手方向に張り出した細長いポート部622となっている。
【0078】
外面層61及び内面層62が互いに接合され、凹部621(ポート部622を含む。)が外面層61で塞がれることにより、外面層61と内面層62との間に流路161が形成される。このようにして一体的に形成された流路部材16は、ベンディングロールなどを用いて、固定部材17の外径とほぼ同じ内径を有する円弧状に湾曲される。
【0079】
各ポート部622の先端には、内面層62を貫通するように流入口164及び流出口165が形成されている。これにより、各層61,62が積層された状態では、流入口164及び流出口165が、それぞれポート部622から流路161に連通するようになっている。各層61,62の長手方向の両端部には、互いに対向する位置に貫通孔が形成されており、これらの貫通孔がボルト19を挿通させるための挿通孔166を構成している。
【0080】
ただし、内面層62に凹部621が形成された構成に限らず、外面層61に凹部621が形成された構成であってもよい。この場合、内面層62には、外面層61に形成された凹部621の各ポート部622に対向する位置に、流入口164及び流出口165が形成されただけの構成であってもよい。
【0081】
この
図6の例ように、流路部材16は、3層構造に限らず2層構造であってもよい。また、流路部材16を4層以上の積層体により構成することも可能である。すなわち、外面層61と内面層62との間に設けられた中間層63が、1層ではなく、複数層からなるものであってもよい。
【0082】
図7は、流路部材16の第2変形例について説明するための図であり、中間層63の構成例を平面図で示している。この例では、開口部631が長手方向に真っ直ぐ延びるような構成ではなく、開口部631の一部に湾曲部633が形成されることにより、流路161内を流れる液体試料の流通方向が変化するようになっている。
【0083】
具体的には、湾曲部633によって、外周面162及び内周面163に平行な面内(中間層63に平行な面内)で液体試料の流通方向が180°変化するように、流路161が折り返されている。開口部631の両端部に設けられた各ポート部632は、その先端が流入口164又は流出口165に対向する位置まで細長く延びている。
【0084】
これにより、液体試料の流通方向を湾曲部633で変化させて、長い流路161を形成することができるため、分級性能を向上させることができる。また、湾曲部633を有するような複雑な形状の流路161を積層構造により形成しようとした場合には、各層(この例では中間層63)を個別に取り扱うことが非常に難しくなるが、各層が一体的に形成された1つの部材として流路部材16を構成することにより、流路部材16の着脱作業が極めて容易になる。
【0085】
この例では、湾曲部633が2つ設けられているが、湾曲部633は3つ以上設けられていてもよい。また、湾曲部633は、液体試料の流通方向を180°変化させるような形状に限らず、他の角度で液体試料の流通方向を変化させるような形状であってもよい。さらに、湾曲部633ではなく、屈曲部により液体試料の流通方向を変化させても、同様の効果を奏することができる。
【0086】
図7では、3層構造からなる流路部材16の中間層63に、湾曲部633を有する開口部631が形成された構成について説明した。しかし、このような構成に限らず、例えば
図6に示すような2層構造からなる流路部材16の外面層61又は内面層62に、湾曲部又は屈曲部を有する凹部621が形成された構成などであってもよい。また、4層以上の積層体からなる流路部材16における複数の中間層63に、湾曲部又は屈曲部を有する開口部631が形成された構成などであってもよい。
【0087】
図8は、流路部材16の第3変形例を示す分解斜視図であり、流路部材16が円弧状に湾曲される前の状態を外周面162側から斜めに見た図を示している。この例における流路部材16は、例えば外面層61及び内面層62の間に、複数層からなる中間層63が積層された積層体からなる。この例では、中間層63が、3つの流路層64と、これらの流路層64の間に設けられた2つの分離層65とを有しており、流路層64及び分離層65が交互に積層されている。各層61,62,64,65は、例えばステンレス鋼(SUS)により形成されており、それぞれ0.25mm程度の厚みを有している。
【0088】
外面層61における中間層63側とは反対側の面は、流路部材16が円弧状に湾曲されたときに、当該流路部材16の外周面162を構成する。また、内面層62における中間層63側とは反対側の面は、流路部材16が円弧状に湾曲されたときに、当該流路部材16の内周面163を構成する。
【0089】
中間層63を構成する各流路層64には、それらの流路層64を貫通し、長手方向に真っ直ぐ延びる開口部631が形成されている。開口部631は、例えばエッチング又は放電加工などにより形成することができる。最も外面層61側の流路層64に形成された開口部631の長手方向の一端部は、徐々に先細りした三角形状に形成されており、先端が長手方向に張り出した細長いポート部632となっている。また、最も内面層62側の流路層64に形成された開口部631についても、最も外面層61側の流路層64のポート部632とは反対側の端部が、徐々に先細りした三角形状に形成されており、先端が長手方向に張り出した細長いポート部632となっている。
【0090】
各層61,62,64,65が積層された状態では、各流路層64の間に設けられた分離層65が、各流路層64に形成された開口部631を分離する。各分離層65には、開口部631の端部に対向する位置に貫通孔651が形成されている。具体的には、外面層61側の分離層65に形成された貫通孔651は、最も外面層61側の流路層64に形成された開口部631におけるポート部632側とは反対側の端部に対向している。また、内面層62側の分離層65に形成された貫通孔651は、最も内面層62側の流路層64に形成された開口部631におけるポート部632側とは反対側の端部に対向している。
【0091】
これにより、各流路層64に形成された開口部631により構成される複数の分割路167が、各分離層65に形成された貫通孔651を介して互いに連通され、一続きの流路161が構成されている。このようにして一体的に形成された流路部材16は、ベンディングロールなどを用いて、固定部材17の外径とほぼ同じ内径を有する円弧状に湾曲される。流路部材16が湾曲された状態では、それぞれ円弧状に延びる複数の分割路167が、径方向(各層61,62,64,65の積層方向)に並べて形成される。
【0092】
内面層62における各ポート部632に対向する位置には、流入口164及び流出口165がそれぞれ形成されている。最も外面層61側の流路層64以外の中間層63には、最も外面層61側の流路層64に形成されたポート部632に対向する位置に、それぞれ小孔168が形成されている。これらの小孔168は、例えば流出口165と同径であり、各層61,62,64,65が積層された状態では、これらの小孔168を介して、最も外面層61側の流路層64に形成されたポート部632が流出口165に連通する。これにより、各層61,62,64,65が積層された状態では、流入口164及び流出口165が、それぞれポート部632から流路161に連通するようになっている。
【0093】
この例では、径方向に並べて形成された複数の分割路167を互いに連通させることにより、長い流路161を形成することができるため、分級性能を向上させることができる。
図7のような流路161に湾曲部633を有するような構成と比較すると、流路161内における液体試料の流速にばらつきが生じにくいため、分離性能をより効果的に向上させることができる。
【0094】
ただし、最も内面層62側の流路層64に形成されたポート部632が流入口164に連通し、最も外面層61側の流路層64に形成されたポート部632が流出口165に連通するような構成に限らず、最も内面層62側の流路層64に形成されたポート部632が流出口165に連通し、最も外面層61側の流路層64に形成されたポート部632が流入口164に連通するような構成であってもよい。
【0095】
図9は、流路部材16の第4変形例について説明するための図であり、中間層63の構成例を平面図で示している。この例では、中間層63の長手方向に真っ直ぐ延びる開口部631が、1つではなく、2つ形成されている。各開口部631は、互いに平行に延びるように同一形状で形成されており、各開口部631の両端部にポート部632が設けられている。
【0096】
内面層62には、各開口部631の一端部に形成されたポート部632に対向する位置に流入口164が形成され、各開口部631の他端部に形成されたポート部632に対向する位置に流出口165が形成される。したがって、外面層61、内面層62及び中間層63を積層した状態では、外周面162及び内周面163に平行な面内(中間層63に平行な面内)に複数の流路161が形成され、内面層62には各流路161に対応付けて流入口164及び流出口165が形成される。内面層62には、流入口164及び流出口165がそれぞれ複数形成され、各流入口164にそれぞれ異なる導入部12が連通するとともに、各流出口165にそれぞれ異なる導出部13が連通する。
【0097】
この例では、複数の流路161に対して、それぞれ個別に液体試料を流入させることができる。したがって、必要に応じて使用する流路161を切り替えれば、流路部材16を着脱することなく異なる流路161を用いて液体試料中の粒子を分級することができる。また、複数の流路161を同時に使用すれば、作業効率を向上することができる。
【0098】
流路161の数は、2つに限らず、3つ以上であってもよい。また、各流路161は、同一形状からなるものに限らず、異なる形状(例えば異なる長さ又は異なる高さ)で形成されていてもよい。さらに、
図6に示すような2層構造の積層体からなる流路部材16、又は、
図8に示すような4層以上の積層体からなる流路部材16においても、
図9の例のように、外周面162及び内周面163に平行な面内に複数の流路161が形成された構成とすることができる。
【0099】
図10は、別の実施形態に係る遠心式流動場分画装置1を備えた分析システムの構成例を示す概略図である。本実施形態では、検出器6の下流側にフラクションコレクタ8が設けられている点のみが上記実施形態とは異なり、他の構成については上記実施形態と同様であるため、同様の構成については図に同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0100】
フラクションコレクタ8は、液体試料中の粒子を採取するための装置である。当該フラクションコレクタ8を検出器6の下流側に設けることにより、検出器6により検出された後の液体試料中の粒子をキャリア回収部7に廃棄することなく、フラクションコレクタ8で採取することができる。
【0101】
以上の実施形態では、複数層を接合して一体的な流路部材16を形成した後、当該流路部材16を円弧状に湾曲させるような構成について説明した。しかし、このような構成に限らず、複数層をそれぞれ円弧状に湾曲させた後、各層を接合して一体的な流路部材16を形成するような構成であってもよい。
【0102】
また、固定部材17が流路部材16と一体的に構成された構成などであってもよい。すなわち、固定部材17の外周面に、機械加工やエッチング加工により凹部を形成し、その外側を外面層61で塞ぐことにより流路161が形成されてもよい。また、外面層61の内周面に凹部を形成し、当該外面層61の内側を固定部材17で塞ぐことにより流路161が形成されてもよい。
【0103】
流路部材16は、複数層が積層された構成に限らず、例えばブロー成形を用いて、樹脂などにより1つの部材として形成されてもよい。