特許第6846384号(P6846384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6846384プラズマ処理装置及びプラズマ処理装置の高周波電源を制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846384
(24)【登録日】2021年3月3日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理装置の高周波電源を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20210315BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20210315BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   H01L21/302 101G
   H01L21/68 N
   H05H1/46 R
   H05H1/46 M
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-111973(P2018-111973)
(22)【出願日】2018年6月12日
(65)【公開番号】特開2019-216164(P2019-216164A)
(43)【公開日】2019年12月19日
【審査請求日】2020年12月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】永岩 利文
【審査官】 宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−227063(JP,A)
【文献】 特開2017−228558(JP,A)
【文献】 特開2010−283028(JP,A)
【文献】 特開2007−258417(JP,A)
【文献】 特表2010−524157(JP,A)
【文献】 特開2010−186841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/683
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
下部電極を含み、前記チャンバ内に設けられた基板支持台と、
前記下部電極にバイアス高周波電力を供給するように構成された高周波電源と、
前記高周波電源を制御するように構成された制御部と、
を備え、
前記基板支持台上には、フォーカスリングが基板を囲むように搭載され、
前記制御部は、
前記バイアス高周波電力の電力レベルと前記下部電極への該バイアス高周波電力の供給により生じる前記フォーカスリングの直流電位との関係を規定するテーブル又は関数を用いて、前記フォーカスリングの直流電位の指定値に対応する前記バイアス高周波電力の電力レベルを特定し、
前記チャンバ内でのプラズマの生成中に、特定された前記電力レベルを有する前記バイアス高周波電力を前記下部電極に供給するように前記高周波電源を制御する、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記フォーカスリングの直流電位を表す測定値を取得するよう構成された測定回路を更に備え、
前記制御部は、前記チャンバ内でのプラズマの生成中に、前記指定値と前記測定値から決定される前記フォーカスリングの直流電位との間の差を減少させるよう前記バイアス高周波電力の電力レベルを調整する、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記フォーカスリングに選択的に接続されるように構成された直流電源を更に備える、請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記プラズマ処理装置は、容量結合型のプラズマ処理装置である、請求項1〜3の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
プラズマ処理装置の高周波電源を制御する方法であって、
バイアス高周波電力の電力レベルと基板支持台の下部電極への該バイアス高周波電力の供給により生じるフォーカスリングの直流電位との関係を規定するテーブル又は関数を用いて、前記フォーカスリングの直流電位の指定値に対応するバイアス高周波電力の電力レベルを特定する工程であり、前記基板支持台は前記プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられており、前記フォーカスリングは該基板支持台上で基板を囲むように搭載される、該工程と、
前記チャンバ内でのプラズマの生成中に、特定された前記電力レベルを有するバイアス高周波電力を前記下部電極に供給するように前記高周波電源を制御する工程と、
を含む方法。
【請求項6】
前記チャンバ内でのプラズマの生成中に、前記指定値と前記フォーカスリングの直流電位を表す測定値から決定される該フォーカスリングの該直流電位との間の差を減少させるよう、前記バイアス高周波電力の電力レベルを調整する工程を更に含む、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理装置の高周波電源を制御する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの製造においてはプラズマエッチングが基板に対して実行される。プラズマエッチングは、プラズマ処理装置を用いて実行される。プラズマ処理装置は、チャンバ、支持台、及び高周波電源を備える。支持台は、下部電極を含み、チャンバ内に設けられている。高周波電源は、バイアス高周波電力を下部電極に供給するように構成されている。このようなプラズマ処理装置については、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0003】
プラズマエッチングでは、プラズマから基板に引き込まれるイオンのエネルギーが、バイアス高周波電力の電力レベルによって調整される。したがって、エッチングレートは、バイアス高周波電力の電力レベルによって調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−186994号公報
【特許文献2】特開2003−124201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラズマエッチングにおいては、エッチングレートの制御性を向上させることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持台、高周波電源、及び制御部を備える。基板支持台は、下部電極を含み、チャンバ内に設けられている。高周波電源は、下部電極にバイアス高周波電力を供給するように構成されている。制御部は、高周波電源を制御するように構成されている。基板支持台上には、フォーカスリングが基板を囲むように搭載される。制御部は、バイアス高周波電力の電力レベルと下部電極へのバイアス高周波電力の供給により生じるフォーカスリングの直流電位との関係を規定するテーブル又は関数を用いて、フォーカスリングの直流電位の指定値に対応するバイアス高周波電力の電力レベルを特定するよう構成されている。制御部は、チャンバ内でのプラズマの生成中に、特定された電力レベルを有するバイアス高周波電力を下部電極に供給するように高周波電源を制御する。
【発明の効果】
【0007】
一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、エッチングレートの制御性が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図2】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置の支持台とフォーカスリングの一部拡大断面図である。
図3】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置の高周波電源を制御する方法を示す流れ図である。
図4】バイアス高周波電力の電力レベルとエッチングレートとの関係の一例を示すグラフである。
図5】フォーカスリングの直流電位とエッチングレートとの関係の一例を示すグラフである。
図6】バイアス高周波電力の電力レベルと下部電極へのバイアス高周波電力の供給により生じるフォーカスリングの直流電位との関係の一例を示すグラフである。
図7】一つの例示的実施形態に係る、フォーカスリングの直流電位とバイアス高周波電力の電力レベルとの関係を規定するテーブル又は関数の作成方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0010】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持台、高周波電源、及び制御部を備える。基板支持台は、下部電極を含み、チャンバ内に設けられている。高周波電源は、下部電極にバイアス高周波電力を供給するように構成されている。制御部は、高周波電源を制御するように構成されている。基板支持台上には、フォーカスリングが基板を囲むように搭載される。制御部は、テーブル又は関数を用いて、フォーカスリングの直流電位の指定値に対応するバイアス高周波電力の電力レベルを特定するよう構成されている。テーブル又は関数は、バイアス高周波電力の電力レベルと下部電極へのバイアス高周波電力の供給により生じるフォーカスリングの直流電位との関係を規定する。制御部は、チャンバ内でのプラズマの生成中に、特定された電力レベルを有するバイアス高周波電力を下部電極に供給するように高周波電源を制御する。
【0011】
エッチングレートは、バイアス高周波電力の電力レベルの増加に応じて上昇する。バイアス高周波電力の電力レベルは、エッチングレートに対して非線形の関係を有する。一方、プラズマの生成中にバイアス高周波電力が供給されることにより生じるフォーカスリングの直流電位は、基板の直流電位と略同一の電位であり、エッチングレートと略線形の比例関係にある。一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置では、バイアス高周波電力の電力レベルが、エッチングレートと略線形の比例関係を有するフォーカスリングの直流電位に基づいて決定される。したがって、このプラズマ処理装置によれば、エッチングレートの制御性が向上される。
【0012】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、測定回路を更に備えていてもよい。測定回路は、フォーカスリングの直流電位を表す測定値を取得するよう構成されている。制御部は、チャンバ内でのプラズマの生成中に、指定値と測定値から決定されるフォーカスリングの直流電位との間の差を減少させるよう、バイアス高周波電力の電力レベルを調整する。同一の電力レベルを有するバイアス高周波電力が下部電極に与えられても、例えばプラズマ処理装置の状態の変化により、フォーカスリングの直流電位が変化することがある。この実施形態によれば、測定値から得られる実際のフォーカスリングの直流電位と指定値との差を減少させるように、バイアス高周波電力の電力レベルが調整される。したがって、所望のエッチングレートが高精度に実現される。
【0013】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、フォーカスリングに選択的に接続されるように構成された直流電源を更に備えていてもよい。この実施形態によれば、直流電圧をフォーカスリングに印加することが可能である。また、測定値を測定する場合には、直流電源をフォーカスリングから電気的に切り離すことが可能である。
【0014】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、容量結合型のプラズマ処理装置であってもよい。
【0015】
別の例示的実施形態において、プラズマ処理装置の高周波電源を制御する方法が提供される。この方法は、フォーカスリングの直流電位の指定値に対応するバイアス高周波電力の電力レベルを特定する工程を含む。バイアス高周波電力の電力レベルは、バイアス高周波電力の電力レベルと基板支持台の下部電極へのバイアス高周波電力の供給により生じるフォーカスリングの直流電位との関係を規定するテーブル又は関数を用いて、特定される。基板支持台はプラズマ処理装置のチャンバ内に設けられており、フォーカスリングは基板支持台上で基板を囲むように搭載される。この方法は、チャンバ内でのプラズマの生成中に、特定された電力レベルを有するバイアス高周波電力を下部電極に供給するように高周波電源を制御する工程を更に含む。
【0016】
一つの例示的実施形態において、方法は、チャンバ内でのプラズマの生成中に、バイアス高周波電力の電力レベルを調整する工程を更に含む。バイアス高周波電力の電力レベルは、指定値とフォーカスリングの直流電位を表す測定値から決定されるフォーカスリングの直流電位との間の差を減少させるように、調整される。
【0017】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0018】
図1は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図1に示すプラズマ処理装置1は、容量結合型のプラズマ処理装置である。プラズマ処理装置1は、チャンバ10を備えている。チャンバ10は、その中に内部空間10sを提供している。一実施形態において、チャンバ10は、チャンバ本体12を含んでいる。チャンバ本体12は、略円筒形状を有している。内部空間10sは、チャンバ本体12の中に提供されている。チャンバ本体12は、例えばアルミニウムから構成されている。チャンバ本体12は電気的に接地されている。チャンバ本体12の内壁面、即ち、内部空間10sを画成する壁面には、耐プラズマ性を有する膜が形成されている。この膜は、陽極酸化処理によって形成された膜又は酸化イットリウムから形成された膜といったセラミック製の膜であり得る。
【0019】
チャンバ本体12の側壁には通路12pが形成されている。基板Wは、内部空間10sとチャンバ10の外部との間で搬送されるときに、通路12pを通過する。この通路12pの開閉のために、ゲートバルブ12gがチャンバ本体12の側壁に沿って設けられている。
【0020】
内部空間10sの中には、基板支持台、即ち支持台16が設けられている。支持台16は、チャンバ10内に設けられている。支持台16は、その上に載置された基板Wを支持するように構成されている。支持台16は、支持部15によって支持されている。支持部15は、チャンバ本体12の底部から上方に延在している。支持部15は、略円筒形状を有している。支持部15は、石英といった絶縁材料から形成されている。
【0021】
支持台16は、下部電極18及び静電チャック20を有し得る。支持台16は、電極プレート21を更に有していてもよい。電極プレート21は、アルミニウムといった導電性材料から形成されており、略円盤形状を有している。下部電極18は、電極プレート21上に設けられている。下部電極18は、アルミニウムといった導電性材料から形成されており、略円盤形状を有している。下部電極18は、電極プレート21に電気的に接続されている。
【0022】
下部電極18内には、流路18fが形成されている。流路18fは、熱交換媒体用の流路である。熱交換媒体としては、液状の冷媒、或いは、その気化によって下部電極18を冷却する冷媒(例えば、フロン)が用いられる。流路18fには、熱交換媒体の循環装置(例えば、チラーユニット)が接続されている。この循環装置は、チャンバ10の外部に設けられている。流路18fには、循環装置から配管23aを介して熱交換媒体が供給される。流路18fに供給された熱交換媒体は、配管23bを介して循環装置に戻される。
【0023】
静電チャック20は、下部電極18上に設けられている。基板Wは、内部空間10sの中で処理されるときには、静電チャック20上に載置され、静電チャック20によって保持される。静電チャック20は、本体及び電極を有している。静電チャック20の本体は、誘電体から形成されている。静電チャック20の本体は、略円盤形状を有している。静電チャック20の電極は、膜状の電極であり、静電チャック20の本体内に設けられている。静電チャック20の電極には、直流電源が電気的に接続されている。直流電源から静電チャック20の電極に電圧が印加されると、静電チャック20と基板Wとの間で静電引力が発生する。発生した静電引力により、基板Wは、静電チャック20に引き付けられ、静電チャック20によって保持される。
【0024】
プラズマ処理装置1は、ガス供給ライン25を更に備え得る。ガス供給ライン25は、ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャック20の上面と基板Wの裏面(下面)との間に供給する。
【0025】
プラズマ処理装置1は、筒状部28及び絶縁部29を更に備え得る。筒状部28は、チャンバ本体12の底部から上方に延在している。筒状部28は、支持部15の外周に沿って延在している。筒状部28は、導電性材料から形成されており、略円筒形状を有している。筒状部28は、電気的に接地されている。絶縁部29は、筒状部28上に設けられている。絶縁部29は、絶縁性を有する材料から形成されている。絶縁部29は、例えば石英といったセラミックから形成されている。絶縁部29は、略円筒形状を有している。絶縁部29は、電極プレート21の外周、下部電極18の外周、及び静電チャック20の外周に沿って延在している。
【0026】
以下、図1と共に図2を参照する。図2は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置の支持台とフォーカスリングの一部拡大断面図である。支持台16は、搭載領域20rを有している。搭載領域20r上には、フォーカスリングFRが搭載される。搭載領域20rは、一例では、静電チャック20の外周領域である。フォーカスリングFRは、略環状板形状を有している。フォーカスリングFRは、導電性を有する。フォーカスリングFRは、例えばシリコン又は炭化ケイ素(SiC)から形成されている。基板Wは、円盤形状を有し、静電チャック20上、且つ、フォーカスリングFRによって囲まれた領域内に、配置される。即ち、フォーカスリングFRは、支持台16上に載置された基板Wのエッジを囲む。
【0027】
に示すように、プラズマ処理装置1は、上部電極30を更に備えている。上部電極30は、支持台16の上方に設けられている。上部電極30は、部材32と共にチャンバ本体12の上部開口を閉じている。部材32は、絶縁性を有している。上部電極30は、この部材32を介してチャンバ本体12の上部に支持されている。
【0028】
上部電極30は、天板34及び支持体36を含んでいる。天板34の下面は、内部空間10sを画成している。天板34には、複数のガス吐出孔34aが形成されている。複数のガス吐出孔34aの各々は、天板34を板厚方向(鉛直方向)に貫通している。この天板34は、限定されるものではないが、例えばシリコンから形成されている。或いは、天板34は、アルミニウム製の部材の表面に耐プラズマ性の膜を設けた構造を有し得る。この膜は、陽極酸化処理によって形成された膜又は酸化イットリウムから形成された膜といったセラミック製の膜であり得る。
【0029】
支持体36は、天板34を着脱自在に支持している。支持体36は、例えばアルミニウムといった導電性材料から形成されている。支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。ガス拡散室36aからは、複数のガス孔36bが下方に延びている。複数のガス孔36bは、複数のガス吐出孔34aにそれぞれ連通している。支持体36には、ガス導入ポート36cが形成されている。ガス導入ポート36cは、ガス拡散室36aに接続している。ガス導入ポート36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0030】
ガス供給管38には、ガスソース群40が、バルブ群41、流量制御器群42、及びバルブ群43を介して接続されている。ガスソース群40、バルブ群41、流量制御器群42、及びバルブ群43は、ガス供給部を構成している。ガスソース群40は、複数のガスソースを含んでいる。バルブ群41及びバルブ群43の各々は、複数のバルブ(例えば開閉バルブ)を含んでいる。流量制御器群42は、複数の流量制御器を含んでいる。流量制御器群42の複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。ガスソース群40の複数のガスソースの各々は、バルブ群41の対応のバルブ、流量制御器群42の対応の流量制御器、及びバルブ群43の対応のバルブを介して、ガス供給管38に接続されている。プラズマ処理装置1は、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択された一以上のガスソースからのガスを、個別に調整された流量で、内部空間10sに供給することが可能である。
【0031】
筒状部28とチャンバ本体12の側壁との間には、バッフルプレート48が設けられている。バッフルプレート48は、例えば、アルミニウム製の部材に酸化イットリウム等のセラミックを被覆することにより構成され得る。このバッフルプレート48には、多数の貫通孔が形成されている。バッフルプレート48の下方においては、排気管52がチャンバ本体12の底部に接続されている。この排気管52には、排気装置50が接続されている。排気装置50は、自動圧力制御弁といった圧力制御器、及び、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、内部空間10sの中の圧力を減圧することができる。
【0032】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、高周波電源61を更に備え得る。高周波電源61は、プラズマ生成用の高周波電力HFを発生する電源である。高周波電力HFは、27〜100MHzの範囲内の周波数、例えば40MHz又は60MHzの周波数を有する。高周波電源61は、高周波電力HFを下部電極18に供給するために、整合器63及び電極プレート21を介して下部電極18に接続されている。整合器63は、高周波電源61の出力インピーダンスと負荷側(下部電極18側)のインピーダンスを整合させるための整合回路を有している。なお、高周波電源61は、下部電極18に電気的に接続されていなくてもよく、整合器63を介して上部電極30に接続されていてもよい。
【0033】
プラズマ処理装置1は、高周波電源62を更に備えている。高周波電源62は、基板Wにイオンを引き込むためのバイアス高周波電力、即ち高周波電力LFを発生する電源である。高周波電力LFの周波数は、高周波電力HFの周波数よりも低い。高周波電力LFの周波数は、400kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数であり、例えば、400kHzである。高周波電源62は、高周波電力LFを下部電極18に供給するために、整合器64及び電極プレート21を介して下部電極18に接続されている。整合器64は、高周波電源62の出力インピーダンスと負荷側(下部電極18側)のインピーダンスを整合させるための整合回路を有している。
【0034】
このプラズマ処理装置1では、内部空間10sにガスが供給される。そして、高周波電力HF及び高周波電力LF、又は高周波電力LFが供給されることにより、内部空間10sの中でガスが励起される。その結果、内部空間10sの中でプラズマが生成される。生成されたプラズマからのイオン及び/又はラジカルといった化学種により、基板Wが処理される。
【0035】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、測定回路70を更に備え得る。測定回路70は、電圧センサ70vを有する。測定回路70は、高周波電力LFの給電ライン及び電極プレート21を介して下部電極18に電気的に接続されている。図2に示すように、下部電極18は、導体22を介してフォーカスリングFRに電気的に接続されている。なお、測定回路70は、高周波電力LFの給電ライン、電極プレート21、及び下部電極18のうち一つ以上を介さずに、フォーカスリングFRに電気的に接続されていてもよい。例えば、測定回路70は、別の電気的パスを介してフォーカスリングFRに接続されていてもよい。
【0036】
測定回路70は、電圧センサ70vを有している。測定回路70は、電流センサ70iを更に有していてもよい。一実施形態では、測定回路70は、分圧回路を有している。一例において、分圧回路は抵抗分圧回路である。電圧センサ70vは、抵抗分圧回路の二つの抵抗の間のノードに接続されている。電圧センサ70vは、当該ノードにおける電圧の測定値、即ち、フォーカスリングFRの直流電位を表す測定値(以下、「電位測定値」という)を取得するように構成されている。電圧センサ70vによって取得された電位測定値は、後述する制御部MCに送信される。
【0037】
測定回路70は、電流センサ70iを更に有し得る。電流センサ70iは、フォーカスリングFRと測定回路70とを接続する電気的パスを流れる電流の測定値(以下、「電流測定値」という)を取得するように構成されている。電流センサ70iによって取得された電流測定値は、制御部MCに送信される。
【0038】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、直流電源72を更に備え得る。直流電源72は、フォーカスリングFRに負極性の直流電圧を印加するように構成されている。直流電源72から負極性の直流電圧をフォーカスリングFRに印加することにより、フォーカスリングFRの上方におけるシース(プラズマシース)の厚みが調整される。その結果、基板Wのエッジに対するイオンの入射方向が調整される。
【0039】
測定回路70及び直流電源72は、フォーカスリングFRに選択的に接続されるように構成されている。そのために、プラズマ処理装置1は、一以上のスイッチング素子を備えている。一実施形態では、プラズマ処理装置1は、測定回路70及び直流電源72のうち一方をフォーカスリングFRに選択的に接続するために、スイッチング素子70s及びスイッチング素子72sを備えている。スイッチング素子70s及びスイッチング素子72sの各々は、例えば電界効果トランジスタであり得る。スイッチング素子70sが導通状態になると、測定回路70の分圧回路のグランドとは反対側の端部が、フォーカスリングFRに接続される。スイッチング素子72sが導通状態になると、直流電源72がフォーカスリングFRに接続される。スイッチング素子70s及びスイッチング素子72sは、スイッチング素子70s及びスイッチング素子72sのうち一方が導通状態にあるときに、他方が非道通状態になるよう、制御部MCによって制御される。
【0040】
プラズマ処理装置1は、高周波遮断フィルタ74を更に備え得る。高周波遮断フィルタ74は、測定回路70及び直流電源72に高周波電力が流入することを防止するために設けられている。高周波遮断フィルタ74は、例えばコンデンサを有する。高周波遮断フィルタ74のコンデンサの一端は、フォーカスリングFRと測定回路70の分圧回路との間、且つ、フォーカスリングFRと直流電源72との間の電気的パスに接続されている。高周波遮断フィルタ74のコンデンサの他端は、グランドに接続されている。
【0041】
プラズマ処理装置1は、制御部MCを更に備える。制御部MCは、プロセッサ、記憶装置、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、プラズマ処理装置1の各部を制御する。具体的に、制御部MCは、記憶装置に記憶されている制御プログラムを実行し、当該記憶装置に記憶されているレシピデータに基づいてプラズマ処理装置1の各部を制御する。制御部MCによる制御により、プラズマ処理装置1は、レシピデータによって指定されたプロセスを実行することができる。また、制御部MCによる制御により、プラズマ処理装置1は、種々の実施形態に係る方法を実行することができる。
【0042】
以下、図3を参照しつつ、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置の高周波電源を制御する方法について説明する。また、制御部MCによるプラズマ処理装置1の各部の制御について、説明する。図3は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置の高周波電源を制御する方法を示す流れ図である。
【0043】
図3に示す方法MTは、工程ST1で開始する。工程ST1では、制御部MCは、テーブル又は関数を用いて、フォーカスリングFRの直流電位の指定値に対応する高周波電力LFの電力レベルを特定する。フォーカスリングFRの直流電位の指定値は、制御部MCに対してオペレータによって入力されてもよい。或いは、フォーカスリングFRの直流電位の指定値は、レシピデータの一部として制御部MCの記憶装置に記憶されていてもよい。制御部MCによって用いられるテーブル又は関数は、高周波電力LFの電力レベルと下部電極18への高周波電力LFの供給により生じるフォーカスリングFRの直流電位との関係を規定する。テーブル又は関数は、予め制御部MCに与えられている。フォーカスリングFRの直流電位と高周波電力LFの電力レベルとの関係を規定するテーブル又は関数の作成方法については、後述する。
【0044】
方法MTでは、工程ST2及び工程ST3の実行中には、測定回路70がフォーカスリングFRに接続され、直流電源72はフォーカスリングFRから電気的に切り離される。工程ST2では、プラズマが生成される。工程ST2では、ガスをチャンバ10内に供給するように、ガス供給部が制御部MCによって制御される。工程ST2では、チャンバ10内の圧力を指定された圧力に設定するように、排気装置50が制御される。工程ST2では、工程ST1において特定された電力レベルを有する高周波電力LFを下部電極18に供給するように、高周波電源62が制御部MCによって制御される。工程ST2では、高周波電力HFを下部電極18(又は上部電極30)に供給するように、高周波電源61が制御部MCによって制御されてもよい。
【0045】
続く工程ST3は、プラズマの生成中に実行される。工程ST3では、工程ST2からプラズマが継続的に生成され得る。工程ST3では、測定回路70によってフォーカスリングFRの直流電位を表す電位測定値が取得される。工程ST3では、指定値と電位測定値から決定されるフォーカスリングFRの直流電位との間の差を減少させるために、高周波電力LFの電力レベルを調整するよう、高周波電源62が制御部MCによって制御される。
【0046】
以下、図4図6を参照する。図4は、バイアス高周波電力の電力レベルとエッチングレートとの関係の一例を示すグラフである。図4において、横軸は、バイアス高周波電力(高周波電力LF)の電力レベルを示しており、縦軸はエッチングレートを示している。
図5は、フォーカスリングの直流電位とエッチングレートとの関係の一例を示すグラフである。図5において、横軸は、フォーカスリングFRの直流電位を示しており、縦軸はエッチングレートを示している。図6は、バイアス高周波電力の電力レベルと下部電極へのバイアス高周波電力の供給により生じるフォーカスリングの直流電位との関係の一例を示すグラフである。
【0047】
図4及び図5に示すグラフを得るために、高周波電力LFの電力レベルを種々の値の各々に設定した状態で、プラズマ処理装置1を用いて、シリコン酸化膜に対するプラズマエッチングを実行した。高周波電力LFの周波数は、13MHzであった。プラズマエッチングにおいては、フルオロカーボンガスをチャンバ10内に供給し、チャンバ10内の圧力を20mTorr(2.7Pa)に設定した。また、プラズマエッチングにおいては、高周波電力HFの周波数、電力レベルをそれぞれ、40MHz、500Wに設定した。そして、高周波電力LFの電力レベルとシリコン酸化膜のエッチングレートとの関係を求めた。図4は、求めた高周波電力LFの電力レベルとシリコン酸化膜のエッチングレートとの関係を示している。また、プラズマエッチングの実行中に、測定回路70の電圧センサ70vを用いてフォーカスリングFRの直流電位を求めた。そして、フォーカスリングFRの直流電位とシリコン酸化膜のエッチングレートとの関係を求めた。また、高周波電力LFの電力レベルとフォーカスリングFRの直流電位との関係を求めた。図5は、求めたフォーカスリングFRの直流電位とシリコン酸化膜のエッチングレートとの関係を示している。図6は、求めた高周波電力LFの電力レベルとフォーカスリングFRの直流電位との関係を示している。
【0048】
図4に示すように、エッチングレートは、バイアス高周波電力、即ち高周波電力LFの電力レベルの増加に応じて上昇する。図4に示すように、高周波電力LFの電力レベルは、エッチングレートに対して非線形の関係を有する。一方、プラズマの生成中に高周波電力LFが供給されることにより生じるフォーカスリングFRの直流電位は、基板Wの直流電位と略同一の電位であり、図5に示すように、エッチングレートと略線形の比例関係にある。プラズマ処理装置1では、プラズマの生成時に設定される高周波電力LFの電力レベルが、図6に示すようなフォーカスリングFRの直流電位と高周波電力LFの電力レベルとの関係を表すテーブル又は関数を用いて、決定される。即ち、プラズマ処理装置1では、プラズマの生成時に設定される高周波電力LFの電力レベルが、エッチングレートと略線形の比例関係を有するフォーカスリングFRの直流電位に基づいて決定される。したがって、プラズマ処理装置1によれば、エッチングレートの制御性が向上される。
【0049】
なお、同一の電力レベルを有する高周波電力LFが下部電極18に与えられても、例えばプラズマ処理装置1の状態の変化により、フォーカスリングFRの直流電位が変化することがある。一実施形態では、プラズマの生成中に、測定回路70の電位測定値から得られる実際のフォーカスリングFRの直流電位と指定値との差を減少させるように、高周波電力LFの電力レベルが調整される。したがって、所望のエッチングレートが高精度に実現される。
【0050】
また、一実施形態では、直流電源72が選択的にフォーカスリングFRに接続され得る。この実施形態によれば、直流電圧をフォーカスリングFRに印加することが可能である。また、フォーカスリングFRの直流電位の電位測定値を測定する場合には、直流電源72をフォーカスリングFRから電気的に切り離すことが可能である。
【0051】
以下、フォーカスリングFRの直流電位と高周波電力LFの電力レベルとの関係を規定するテーブル又は関数の作成方法について説明する。図7は、一つの例示的実施形態に係る、フォーカスリングの直流電位とバイアス高周波電力の電力レベルとの関係を規定するテーブル又は関数の作成方法を示す流れ図である。
【0052】
図7に示す作成方法(以下、「方法MTF」という)は、工程ST11で開始する。工程ST11では、チャンバ10内でプラズマが生成される。工程ST11では、チャンバ10内に供給されるガス、チャンバ10内の圧力、高周波電力HFの電力レベルといった条件は、方法MTの工程ST2及び工程ST3における条件と同一である。工程ST11では、高周波電力LFの電力レベルが複数の電力レベルから順に選択される一つの電力レベルに設定される。
【0053】
続く工程ST12では、測定回路70の電位測定値からフォーカスリングFRの直流電位が特定される。工程ST12では、特定されたフォーカスリングFRの直流電位と工程ST11において設定された高周波電力LFの電力レベルとを含む一つのデータセットが取得される。
【0054】
続く工程ST13では、停止条件が満たされるか否かが判定される。停止条件は、上述した複数の電力レベルの全てについて工程ST11が既に実行されている場合に満たされる。工程ST13において停止条件が満たされないと判定される場合には、工程ST11及び工程ST12が再び実行される。工程ST11では、複数の電力レベルのうち未選択の一つの電力レベルに高周波電力LFの電力レベルが設定される。一方、工程ST13において停止条件が満たされていると判定される場合には、工程ST14に処理が移る。
【0055】
工程ST14では、工程ST11及び工程ST12を含むシーケンスの繰り返しにより得られた複数のデータセットを用いて、フォーカスリングFRの直流電位と高周波電力LFの電力レベルとの関係を表すテーブル又は関数が作成される。方法MTFによって作成されたテーブル又は関数は、上述したように、指定値から高周波電力LFの電力レベルを決定するために、制御部MCによって用いられる。
【0056】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0057】
例えば、別の実施形態では、プラズマ処理装置は容量結合型のプラズマ処理装置とは異なる任意のタイプのプラズマ処理装置であってもよい。そのようなプラズマ処理装置としては、誘導結合型のプラズマ処理装置、マイクロ波といった表面波を用いてプラズマを生成するプラズマ処理装置が例示される。
【0058】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0059】
1…プラズマ処理装置、10…チャンバ、16…支持台、18…下部電極、62…高周波電源、MC…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7