【文献】
格子パターン投影法を用いた位相およびコントラスト検出による表面形状計測,精密工学会誌,社団法人 精密工学会,2000年 1月 5日,Vol.66, No.1,p.132-136
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のシステムであって、上記パターン化照明源・上記対物系間の照明路と、上記対物系・上記検出器間の撮像路とが、双方ともそのビームスプリッタを通過する形態で、ビームスプリッタが配置されているシステム。
【背景技術】
【0002】
(関連出願への相互参照)
本願は、この参照を以てその全容が本願に繰り入れられるところの2016年2月1日付米国暫定特許出願第62/289889号に基づく優先権を主張する出願である。
【0003】
物体の表面のトポグラフィ(微細外形)についての情報は様々な製造分野で必要とされている。そうした情報への渇望がとりわけ顕著な分野の一つは、半導体デバイスを検査し適正機能を確保することが必要な半導体製造である。そうした検査には、ウェハ上のデバイスを組成する独特な構造だけでなく、デバイスの構成要素を一体保持するのに必要な要素例えば半田バンプも関わってくる。例えば、まず、ウェハから切り出されたダイをチップのピンに接触させるのに、半田バンプのアレイが用いられることがある。その後、そのチップを外部回路に接触させる際には、半田ボールを用いることができる。品質確保のためには、基板を基準とした半田バンプ及び半田ボールの高さを、半田付け終了前に検査する必要がある。
【0004】
本件技術分野では幾つかの3Dトポグラフィ計測方法が広く知られている。それらの方法のなかには、白色光干渉法、共焦点顕微鏡法、構造化照明依拠法、並びに立体視レーザ三角測量法がある。これらの方法は、いずれも、それ独特の長所及び短所を有している。
【0005】
白色光干渉法では、非常に高精度な高さ情報を得ることができる。1波長未満の長さのステップにて、その表面を干渉計内で動かすので、半導体デバイスを検査する際には、その表面を多数のフレームに亘り撮影及び処理し、その表面上で発生する高さ変動と比肩する範囲全体にそれらステップが亘るようにする必要がある。
【0006】
共焦点顕微鏡法や構造化照明依拠法では、共に、どちらかと言えば標準的な顕微鏡光学系が必要となる。両手法は、典型的な半導体デバイスのスケールでの表面トポグラフィの検査に、より良好に適合している。共焦点顕微鏡法では総じて構造化照明依拠法よりも良好な高さ分解能が得られるが、やはり、より複雑で高価な光学装備が必要になる。
【0007】
構造化照明依拠法の基本概念は、パターン例えば格子を物体の表面上へと投射することにある。これには二種類の一般的手法がある。
【0008】
その数値開口(NA)が例えば0.1未満と低く、作動距離を長め、焦点深度を大きめにすることが可能な撮像システムでは、その表面が撮像光軸に対しある角度をなすようパターンを表面上に投射することができる。ライン照明(線状照明)の位置シフトに代えフリンジ(縞)の位相シフトを用い表面高さを抽出する点で、この配置はレーザ三角測量法に類似している。この手法は位相シフトフリンジ投射法としても知られている。
【0009】
そのNAがより高く0.1超である撮像システムの場合、焦点深度及び作動距離が共に制限されるため、斜め投射も斜め撮像も容易に実現することができない。そのため、代わりにパターン例えば格子を撮像光学系を介し表面上に投射し、且つ、その撮像光学系の光軸を物体の表面、より子細にはその表面の全体的巨視的拡張により定義される平面に対し垂直にする。こうした配置であるため、高さ情報をフリンジ位相シフトから抽出することができない。その代わりに、光軸に対し平行な方向に物体を動かし、投射パターンのコントラストが最大になる同方向沿い位置シフトを見いだすことによって、高さ情報を得ることができる。
【0010】
この装備と共焦点顕微鏡との間には類似性があるが、光学系がより簡素であるし中継光学系が必要でない。しかしながら、パターン画像のコントラストを抽出するには高さ位置毎に3個以上のフレームが必要であるので、より高いデータレートが必要になる。
【0011】
そうした手法の一例であり、構造化照明が表面に対し垂直なものを、米国特許出願第13/309244号に基づき発行された特許文献1中に見いだすことができる。パターンを空間光変調器(SLM)により生成し、撮像対物系の光軸に沿い物体の表面上へと投射するものである。その物体を光軸に沿い対物系に対し動かしつつ、SLMにより投射パターンを変調し複数枚の画像を記録する。その表面上の特定位置における投射パターンの最大コントラストから、個別位置に係る高さ情報がもたらされる。
【0012】
以上言及した3Dトポグラフィ計測方法のいずれが最良であるかは、その具体的計測アプリケーションの条件次第である。半導体デバイス検査には幾つかの基本条件、即ちその表面の巨視的拡張により定義される平面での分解能が数μmであること、その平面に対し垂直な方向(法線方向)に沿い物体を位置決めする際の再現性が1μm未満であること、その法線方向に沿った合計移動範囲が数百μmであること、という条件がある。このことからすれば、構造化照明依拠法が、3Dトポグラフィ計測による半導体デバイス検査に最適であるかに見える。諸構成の的確なシステムにより、その表面で定まる平面における分解能並びにその平面に対し垂直な方向での再現性の双方について、広い範囲をカバーすることができ、またそうした方法により広い範囲の法線方向沿い相対運動をなすことができる。その光学系は比較的単純且つ低コストであり、法線方向沿い照明及び撮像装備は、鏡面反射が優勢な表面及び乱反射が優勢な表面の双方を含め、広範な種類の表面に適している。とりわけ半田バンプの検査に関しては、NAを高めにすることで、バンプが小さめでもその球状バンプ頂部での使用可能画素数を増やすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上概説し上掲の特許文献1により例示した構造化照明の基本概念によれば、必須な精度及び正確性が達成されるけれども、それら所要特性を達成するのと同時に、ますます高まりつつあるスループット条件を好ましくは低コストで、更にはスケーラブルな形態で充足させるにはどうすればよいかが、未解決問題となっている。例えば、上掲の特許文献1にてパターン化照明の生成に用いられている空間光変調器は高価であるのに、スループット向上に欠かせないはずの広視野をカバーしうる分解能及び画素数を有していない。
【0015】
本発明の目的は、物体の表面の三次元トポグラフィ計測方法であり、その実現が容易で、十分な面内分解能及び法線方向沿い再現性が提供され、且つスケーラブルなものを、提供することである。
【0016】
本発明の更なる目的は、物体の表面の三次元トポグラフィ計測システムであり、その構成が単純で、十分な面内分解能及び法線方向沿い再現性が提供され、且つスケーラブルになるようモジュール化されたコンパクトなものを、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る、物体の表面の光学的三次元トポグラフィ計測方法では、パターン化照明が対物系を介しその物体の表面上に投射される。その物体と対物系との間で相対運動が実行される。その相対運動の方向を、対物系の光軸に対しある斜め角を有する方向とする。その相対運動中に物体の表面が対物系の焦平面を通過するようにし、対物系の光軸をその焦平面に対し垂直とする。同相対運動中に、対物系を介し表面の画像が複数枚記録される。パターン化照明のパターンは対物系焦平面にて最良合焦となり、その焦平面に対し平行だが光軸に沿い焦平面からずれたところにある平面では同パターンが焦点外れとなる。表面画像においては、その表面の焦平面内部分がその画像中で最良合焦に見え、同表面のうち焦平面内にない部分が焦点外れに見える。最良合焦時には表面上のパターンがやはり最良合焦状態で撮像され高いコントラストを呈する一方、焦点外れ時には表面上のパターンがやはり焦点外れ状態で撮像され、記録された表面画像では低いコントラストを呈する。コントラストが表面構成部分の光軸沿い位置に対し呈するこの依存性は、相対運動中にその物体のそれら表面構成部分から記録される強度の変動につながる。物体の表面上の個別位置に係る高さ情報は、その個別位置から記録された強度の、上記複数枚の画像における変動から導出される。
【0020】
表面上の位置の高さとは、ある基準面に対し垂直な方向に沿った、その基準面からその位置までの距離のことである。典型的には、基準面は表面の巨視的拡張により定義される;例えば製造されたウェハの表面上には複数個の微視的構造が設けられているけれども、こうした表面は巨視的には平らな表面に見えるのでそれにより平面が定義される。本方法を実行する際、物体が正確に整列していれば、その基準面は対物系焦平面に対し平行となる。全表面上位置に係る高さからその表面のトポグラフィが求まる。相対運動方向と対物系の光軸とが斜め角をなしているため、物体表面に対するパターン化照明のパターンの位置が、その相対運動中に変化する。そのため、従来の構造化又はパターン化照明法で必要であったのと違い、パターンを個別に変調する必要がなくなるので、本方法はより容易に実行することができる。物体・対物系間相対運動は、その相対運動のコース全体に亘り、計測対象表面上の任意個別位置に入射する光の強度の変調を引き起こす。この変調は、他方では、少し上で論じたところの投射照明パターン・表面間相対運動によるものであるが、重要なことには、物体が対物系に対し動くにつれ個別位置でのパターンのコントラストが変化することによる付加的寄与分を含んでいる。これは、ひいては、複数枚の画像における、個別位置からの記録光強度の変調につながる。個別位置それぞれに係る高さはこの記録光強度変調から導出される。物体の光軸沿い個別位置、例えば基準面がその光軸と交差する光軸上位置として表現される位置であり、複数枚の画像それぞれが個別記録された位置が、高さ情報導出用の分析にて情報として用いられる。
【0021】
ある有益な実施形態、とりわけコンピュータによる本方法及びデータ分析のコンピュータ駆動実行に適した実施形態では、複数枚の画像それぞれがディジタル画像、言い換えれば画素のアレイとして記録される。それらの画像は、それぞれ、それら複数枚の画像のうちのどの画像でも物体表面上の所与位置がその画素アレイ内の単一且つ同一の画素に対応するよう、ディジタル画像処理によってシフトされる。このシフトにより、対物系の光軸に対し垂直な平面における対物系・物体間変位のうち、物体・対物系間相対運動の斜め角によるものが補償される。即ち、物体表面上の個別位置から記録された光強度の変調がその値により監視され、全ての記録済シフト済画像内にありその表面上位置を表している特定のアレイ構成画素が、上記複数枚の画像に含まれる様々な画像中にあるものと想定される。アレイ即ちディジタル画像内の画素数並びに分解能条件にもよるが、複数個の画素の値を例えば総和又は平均化により結合させ、その結果を、物体表面上のその個別位置から記録された光の強度に対応するものであると見なし、本方法の更なる実行に供することができる。複数個の画素に亘る平均化でノイズが低減される。例えばN=2、3、4又は5とし、例えばN×N画素アレイの値を平均化すればよい。
【0022】
諸実施形態では、パターン化照明がパターンマスクの非コヒーレント照明により生成される。そのパターンマスクはとりわけ格子にするとよい。より具体的には、その格子を振幅格子又は位相格子にするとよい。用いうる格子幾何の非限定的な例としては、ライン格子や正弦格子やクロスライン格子がある。格子をブレーズド格子としてもよい。より一般的には、パターンマスクは市松模様又はピンホールアレイを有するものがよいが、こうした選択肢に限られるわけではない。本件技術分野で既知ないずれの構造化照明生成向けパターンも本発明に係る方法に適している。格子は好ましくは機械的なもの、例えばエッチングされた金属シートか金属被覆ガラス基板例えばクロム(Cr)がガラス上にあるそれとする。
【0023】
原理的には空間光変調器もパターン化照明の生成向けに考慮されうる。とはいえパターンマスク又は格子が望ましい理由が幾つかあり、格子ならば空間光変調器に比べかなり高い分解能のものを入手でき画素数による制限を受けないことは、光軸に対し垂直な平面における分解能の面及び視野の面双方で有益なことである。空間光変調器の利用可能な想定画素数は、本発明の方法に従い物体の表面のディジタル画像を記録するのに用いうるカメラ、例えばCMOS式カメラの画素数に遠く及ばない。これは、ここでは空間光変調器がかなりの制限となりかねず排すべきものであることを意味している。更に、空間光変調器は(画素数により制限された)ある特定の最短波長を以て変調分を発生させうるものであり、格子の隣接ライン間距離が何桁か小さい格子に比べ遙かに高価である。
【0024】
物体表面上に投射されたパターン化照明のコントラストを改善するには、0次回折成分(diffraction order)及びある一通りの回折成分のみ、例えば0次回折成分及び一方の1次回折成分のみを等強度で含むよう、そのパターン化照明を生成するのが有益であろう。これは、例えばブレーズド格子を用いることで達成することができる。
【0025】
本発明方法の諸ステップであり、以上概述されると共に具体的諸実施形態との関連で記述されるそれは、有益にも、複数個の物体を対象に並列実行することができる。こうすることでスループットを向上させることができ、また本方法は従来技術の方法よりも実行が容易であるので、このスループット向上も容易に且つ比較的低コストで達成することができる。
【0026】
本発明に係る、物体の表面の光学的三次元トポグラフィ計測方法の更なる一般的実施形態では、パターン化照明及び均一照明が対物系を介しその物体の表面上に交互に投射される。即ち、物体表面がパターン化照明で以て照明される期間と、物体表面が均一照明で以て照明される期間とが設けられる。
【0027】
相対運動が物体・対物系間で実行される。この相対運動の方向は対物系の光軸に沿った成分を含む方向とし、その相対運動中に表面が対物系の焦平面を通過するものとする。光軸はその焦平面に対し垂直とする。その相対運動中に、対物系を介しその表面の画像が複数枚記録される。物体の表面上の個別位置に係る高さ情報が、その個別位置から記録された強度の、それら複数枚の画像における変動から導出される。
【0028】
表面上の位置の高さとは、ある基準面に対し垂直な方向に沿った、その基準面からその位置までの距離のことである。典型的には、基準面はその表面の巨視的拡張により定義されるものであり、例えば製造されたウェハの表面上には複数個の微視的構造が設けられているけれども、こうした表面は巨視的には平らな表面に見えるのでそれにより平面が定まる。本方法を実行する際、物体が正確に整列していれば、その基準面は対物系焦平面に対し平行となる。全表面上位置に係る高さからその表面のトポグラフィが求まる。その物体の光軸沿い個別位置、例えば基準面がその光軸と交差する光軸上位置として表現される位置であり、複数枚の画像それぞれが個別記録された位置が、高さ情報を導出するための分析にて情報として用いられる。
【0029】
物体・対物系間相対運動中に記録された複数枚の画像のうち、幾枚かの画像は均一照明下で記録された画像であり、幾枚かの画像はパターン化照明下で記録された画像である。ある実施形態では、それら複数枚の画像のうち均一照明下記録画像を用い表面上の鏡面構造に係る高さ情報が導出され、またそれら複数枚の画像のうちパターン化照明下記録画像を用い同表面の鏡面構造間部分に係る高さ情報が導出される。鏡面構造とは例えば表面上の半田バンプのことである。その場合、半田バンプについての高さ情報が均一照明下記録画像から導出され、半田バンプ間表面についての高さ情報がパターン化照明下記録画像から導出される。ある具体的実施形態では、鏡面構造、例えば半田バンプに類するものに係る高さ情報が、その鏡面構造の頂部の画像のサイズから導出される。このサイズは均一照明下記録画像間で変動するものであり、この変動も、諸画像にて頂部を表している画像内画素に係る強度変動の構成要素である。鏡面構造頂部の対物系光軸沿い位置をこのサイズ変動から導出することができ、ひいてはその鏡面構造に係る高さ情報を間接的に得ることができる。最良合焦時、即ち鏡面構造頂部が焦平面内に存するときには、その頂部画像のサイズが最小になる。代わりに、鏡面構造に係る高さ情報を、相対運動のコース上でのピーク画素強度から得るようにしてもよい。鏡面構造頂部から記録された強度は、従ってその鏡面構造頂部に対応する画素の値も、その鏡面構造頂部が対物系の焦平面内に存するときに最高になる。
【0030】
具体的諸実施形態では、相対運動方向が対物系の光軸に対し平行とされる。こうした実施形態では、物体が対物系の光軸に対し垂直に変位しないので、ディジタル画像の場合、記録画像を先に言及した如くシフトさせる必要は特段ない。記録ディジタル画像を構成する画素アレイ内の所与画素は、そうしたシフト無しでも、その物体の表面上の同じ位置に対応するものとなろう。
【0031】
パターン化照明下で物体の表面を記録した画像におけるパターン化照明のパターンのコントラストは、対物系の光軸に沿いその表面の任意の撮像部分又はその表面上の撮像位置が有している位置に依存するため、相対運動のコース全体に亘り変動する。コントラストが最良になるのは、そうした表面構成部分又は表面上位置が対物系の焦平面内に存している場合である。従って、その表面構成部分又は表面上位置についての高さ情報を、複数枚の画像におけるパターンのコントラストから導出することができる。
【0032】
交互照明を伴う諸実施形態でも、パターン化照明がパターンマスクの非コヒーレント照明により生成されうる。そのパターンマスクはとりわけ格子にするとよい。より具体的には、その格子を振幅格子又は位相格子にするとよい。用いうる格子幾何の非限定的な例としては、ライン格子や正弦格子やクロスライン格子がある。格子をブレーズド格子としてもよい。より一般的には、パターンマスクは市松模様又はピンホールアレイを有するものがよいが、こうした選択肢に限られるわけではない。本件技術分野で既知ないずれの構造化照明生成向けパターンも本発明に係る方法に適している。格子は好ましくは機械的なもの、例えばエッチングされた金属シートか金属被覆ガラス基板例えばクロム(Cr)がガラス上にあるそれとする。
【0033】
また、パターン化照明のみを伴う諸実施形態に倣い、物体の表面上に投射されたパターン化照明のコントラストを改善するには、0次回折成分及びある一通りの回折成分のみ、例えば0次回折成分及び一方の1次回折成分のみを等強度で含むよう、そのパターン化照明を生成するのが有益であろう。これは、例えばブレーズド格子を用いることで達成することができる。
【0034】
パターン化照明のみを伴う諸実施形態と同様、本方法の諸ステップは、有益にも、複数個の物体を対象に並列実行することができる。こうすることでスループットを向上させることができ、また本方法は従来技術の方法よりも実行が容易であるので、このスループット向上も容易に且つ比較的低コストで達成することができる。
【0035】
本発明に係る、物体の表面の光学的三次元トポグラフィ計測システムは、パターン化照明源、対物系、検出器、並びに対物系・物体間相対運動実行手段を備える。
【0036】
対物系は、パターン化照明を物体の表面に差し向けるよう配置されると共に、その物体の表面を検出器上に成像するようにも配置され、またその検出器は、その物体の表面の画像を複数枚記録するよう配置及び構成される。検出器は、例えばディジタル画像を記録するよう構成されたカメラの一部分とされよう。検出器は、例えばCMOS又はCCDテクノロジをベースにしたものとされよう。対物系・物体間相対運動実行手段は、その相対運動の方向が対物系の光軸に対しある斜め角を有する方向となるよう構成される。従って、対物系・物体間一次元並進相対運動を実行可能な手段を実現するだけで十分である。従来技術と違い、例えば物体表面の撮像に用いられる対物系の光軸に沿いその物体を動かすことや、それに加え例えば空間光変調器を用いるか格子を更に動かすかしてパターン化照明を変調することは、必要でない。
【0037】
諸実施形態では、パターン化照明源が光源及びパターンマスクを有する。その光源はとりわけ非コヒーレント光源、例えば1個又は複数個の発光ダイオード(LED)にするとよい。
【0038】
諸実施形態では、そのパターンマスクが、これに限られるものではないが、市松模様又はピンホールアレイを有するものとされる。本件技術分野で既知な他のパターン化照明生成向けパターンも遜色なく用いうる。
【0039】
パターンマスクはとりわけ格子とするのがよく、より具体的には振幅格子又は位相格子とするのがよい。格子の例としてはライン格子や正弦格子やクロスライン格子がある。格子をブレーズド格子としてもよい。格子は好ましくは機械的なもの、例えばエッチングされた金属シートか金属被覆ガラス基板例えばクロム(Cr)がガラス上にあるものとする。
【0040】
ある有益な実施形態では、パターン化照明源・対物系間の照明路と、対物系・検出器間の撮像路とが、双方ともそのビームスプリッタを通過する形態で、ビームスプリッタが配置される。とりわけ、対物系を回折限界性能に補正し、その補正にそのビームスプリッタも勘案するとよい。こうすることで、高品質な光学装備が実現されるのと同時に、その装備がややコンパクト且つ単純な構成の装備となる。結果として、その装備を低コストモジュールとして実現することができ、また複数個のモジュールを組み合わせて、複数個の物体を対象とした3Dトポグラフィ計測を並列実行する装置にすることができる。
【0041】
撮像誤差の更なる低減、ひいては計測精度の向上を、パターンマスク及び検出器を共役平面内に置くことで果たすことができる。
【0042】
更なる一般的実施形態に係る、物体の表面の光学的三次元トポグラフィ計測システムは、パターン化照明源及び均一照明源の双方、対物系、検出器、並びに対物系・物体間相対運動実行手段を備える。
【0043】
対物系は、パターン化照明及び均一照明双方を物体の表面に差し向けるようよう、且つその物体の表面を検出器上に成像するよう配置され、その検出器は、その物体の表面の画像を複数枚記録するよう配置及び構成される。検出器は、例えばディジタル画像を記録するよう構成されたカメラの一部分とされよう。検出器は、例えばCMOS又はCCDテクノロジをベースにしたものとされよう。対物系・物体間相対運動実行手段は、その相対運動の方向が、対物系の光軸に沿った少なくとも1個の成分を含む方向となるよう構成される。本システムは、パターン化照明源及び均一照明源を互いに独立に作動させうるよう構成した方がよい。
【0044】
諸実施形態では、パターン化照明源が光源及びパターンマスクを有する。その光源はとりわけ非コヒーレント光源、例えば1個又は複数個の発光ダイオード(LED)とされよう。
諸実施形態では、そのパターンマスクが、これに限られるものではないが市松模様又はピンホールアレイを有するものとされる。本件技術分野で既知な他のパターン化照明生成向けパターンも遜色なく用いうる。
【0045】
パターンマスクはとりわけ格子とするのがよく、より具体的には振幅格子又は位相格子とするのがよい。格子の例としてはライン格子や正弦格子やクロスライン格子がある。格子をブレーズド格子としてもよい。格子は好ましくは機械的なもの、例えばエッチングされた金属シートか金属被覆ガラス基板例えばクロム(Cr)がガラス上にあるものとする。
【0046】
ある有益な実施形態では、対物系・検出器間の撮像路と、パターン化照明源・対物系間の照明路並びに均一照明源・対物系間の照明路のうち少なくとも一方とが、そのビームスプリッタを通過する形態で、ビームスプリッタが配置される。とりわけ、パターン化照明源・対物系間照明路並びに均一照明源・対物系間照明路双方がビームスプリッタを通過するようにするとよい。対物系を回折限界性能に補正し、その補正にそのビームスプリッタも勘案するとよい。こうすることで、高品質な光学装備が実現されるのと同時に、その装備がややコンパクト且つ単純な構成の装備となる。結果として、その装備を低コストモジュールとして実現することができ、また複数個のモジュールを組み合わせ、複数個の物体を対象とした3Dトポグラフィ計測を並列実行する装置にすることができる。
【0047】
撮像誤差の更なる低減、ひいては計測精度の向上を、パターンマスク及び検出器を共役平面内に置くことで果たすことができる。
【0048】
ある実施形態では、物体・対物系間相対運動の方向が対物系の光軸に対し平行とされる。
【0049】
本発明に係るシステムは、総じて、物体表面の三次元トポグラフィ計測との関連でシステムを制御し及び/又はデータ分析を実行する1個又は複数個のコンピュータを有し又はそれに接続されたものとすることができる。本システムは、特に、本発明に係る方法のいずれかの実施形態を実行するのに用い且つ好適に制御することができる。当該1個又は複数個のコンピュータは、内蔵型又は非内蔵型で、シングルプロセッサ、マルチプロセッサ、シングルコア、マルチコアである任意の好適且つ既知なデータ処理装置とすることができ、複数個のコンピュータを、本システムの制御及び/又はデータ分析を実行するよう並列化動作させること並びにローカル接続又はデータネットワーク例えばインターネットを介し相互に又は本システムに接続することができる。
【0050】
以下、本発明の性質及び動作モードを、添付する模式図と併せ、本発明についての後掲の詳細記述中でより全面的に述べることにする。
【発明を実施するための形態】
【0052】
諸図を通じ、同一要素又は類似機能要素を同一参照符号で指し示してある。更に、対応する図面の記述に必要な参照符号のみを図面に記してある。図示諸実施形態は、本発明をどうすれば実行できるかについての例を提示しているに過ぎない。これを本発明を限定するものとして解すべきではない。
【0053】
図1に、物体2の表面21の3Dトポグラフィ計測システム1の実施形態を示す。本システム1はパターン化照明源3を有しており、図示実施形態におけるパターン化照明源3は光源31例えば1個又は複数個のLEDと、コンデンサ光学系32と、パターンマスク33とを有している。物体2の表面21のパターン化照明は、パターンマスク33をその表面21上へと投射することで生成される。より精密に言えば、図示実施形態では光源31からの光が、コンデンサ32及びパターンマスク33を通過したあとビームスプリッタ4に到達し、その光のうち少なくとも一部分が、そのビームスプリッタ4により対物系5へと差し向けられそこを通過して物体2の表面21に到達する。その後、表面21からの光が、対物系5を通過してビームスプリッタ4に到達し、表面21からの光の一部分が、そのビームスプリッタ4により検出器61、例えば図示の如くカメラ6の一部たるそれへと差し向けられる。対物系5により規定される光軸51及び焦平面52のうち、光軸51は焦平面52に対し垂直である。投射されたパターンマスク33はその焦平面52内で最良合焦する。
【0054】
検出器61の働きで表面21の画像複数枚が記録される一方、物体2・対物系5間相対運動が実行される。物体2・対物系5間相対運動の方向22は、光軸51に対しある斜め角23を有する方向である。その相対運動中に、物体2の表面21が対物系5の焦平面52を通過する。この図は本システム1の巨視図であるので、焦平面52が物体2の表面21と一致するように示されている。その表面21のうち焦平面内に存する部分は、検出器61の働きで記録された表面21の画像において、最良合焦に見える。相対運動の方向22と光軸51とが斜め角23をなしているため、パターン化照明のパターンが物体2の表面21に対し動くのに加え、同表面の画像中に記録されているパターンのコントラストが、方向22に沿った相対運動のコースを辿り表面21が焦平面52を通過するのにつれて変化する。結果として、表面21上の位置から記録される光強度は、複数枚の画像に含まれる諸画像間で変動する。この光強度変動から、表面21上の個別位置に係る高さ情報を得ることができる。完璧を期して言うなら、物体2・対物系5間相対運動は、例えば、物体2を動かすことでも、本システム1を動かすことでも、物体2及び本システム1の双方を動かすことでも果たすことができる。
【0055】
図2は物体2の表面21の一部分の模式的拡大図であり、表面21が全体としては平坦でなく構造、例えば隆起24に類するそれを有することが示されている。本発明に係る3Dトポグラフィ計測はそれらの構造の高さ25、ここでは隆起24に関し明示されているそれについて情報を得ることを、目的としている。隆起24の高さ25とは、いわば、基準面26に垂直な方向に沿った、その基準面26に対する隆起24の拡がりのことである。また、対物系5の光軸51及びそれに関連する焦平面52(
図1参照)も示されている。本システム1内で物体2が正しく整列している場合、焦平面52は基準面26に対し平行となり、従って光軸51が焦平面52及び基準面26の双方に対し垂直となる。
【0056】
図3は物体2の表面21の頂面図であり、パターン化照明源3(
図1参照)に発する投射パターン34が示されている。図示例では、また前出の図面によれば、物体2は対物系5に対し方向22に沿って動くので、その相対運動は基準面26内成分221を有するものとなる。結果として、パターン34は、物体2の表面21に対し、成分221とは逆の方向35に動く。これは、その相対運動中に、表面21上の所与位置に入射する光の強度が変化するであろうこと、並びに、その結果、その位置から記録される光強度が、カメラ6により記録される表面21の画像間で変化するであろうことを暗示している。
【0057】
図4aは物体2、基準面26、並びに対物系5の光軸51(
図1参照)を示すものであり、その光軸51が基準面26に対し垂直になっている。物体2は部分271及び272を有しており、基準面26に対するそれらの高さ値がある量251だけ相違しているため物体2が段差27を呈している。
図4bには、対応する強度信号であり本発明に係る方法により得られたものが、ダイアグラムの態で示されている。このダイアグラム中、横軸81は物体2の光軸51沿い位置に相当しており、縦軸82は相対運動中に物体2上の位置から記録された光強度、より精密には段差位置からのそれに相当している。その光強度は2個の顕著な変調部分273及び274を呈している。想定上、図示ケースでは横軸81沿い値の増大が物体の対物系方向への移動に相当しているので、部分271(部分272より高背で対物系に近い部分)が対物系焦平面を通過した結果として変調部分273が生じ、部分272が対物系焦平面を通過した結果として変調部分274が生じる。変調部分273及び274の最大値が横軸81上で占める位置の差が、物体2の部分271・272間の高さ差251に相当する。光強度の高周波変調分、とりわけ変調部分273及び274中に見られるそれは、パターンと物体・対物系間相対運動との複合効果によりもたらされたものである。例えばパターンがラインパターン(線状パターン)である場合、そのパターンを構成している輝線及び暗線が
図4aの物体2の段差27上方を通過する結果として、そうした高周波変調分がもたらされる。他方で、それら高周波変調分の振幅は、物体の表面上、より精密には物体2の部分271及び272それぞれの上での、そのラインパターンのコントラストにより決まる。コントラストが最高、ひいては高周波変調分の振幅が最大になるのは、部分271又は272それぞれが対物系5の焦平面52内に存しているときである(
図1及び
図2参照)。
【0058】
図5に、本発明に係る方法にて用いうる照明ブランチ向け光学的構成を示す。
図1と違いビームスプリッタ及びカメラは示されていない。本発明にとり精密な高さ計測が本質的なものであるので、
図5に示した光学的構成を用い、この分野における計測の不確定性及び改善余地について論ずることにする。
【0059】
図1と同じく、光源31、コンデンサ32、格子33、対物系5及びその光軸51、並びに物体2の表面21が示されている。対物系5は、撮像数値開口(撮像NA)54を規定する瞳53を有している。照明NA36も示されている。
【0060】
以下の議論のため、ガウス座標系、光軸51沿い座標z、並びにそれに対し垂直な座標xを導入することにする。
【0061】
光軸51に対し垂直な任意の平面では、その平面上に投射された格子の画像の強度Iを、
【数1】
と表すことができる。
【0062】
ここで、C(z)はzの関数たる強度変調振幅を指し示しており、Λは格子ピッチ、即ち格子33の隣接2ライン間距離であり、Φは位相オフセットである。コントラストを計測するため、また最終的には変調部分例えば
図4bに示した273及び274の最大値を判別するため、
図3中の矢印35からもわかるようにフリンジパターンをx方向にシフトさせ、またそれを本発明に係る方法に従い物体・対物系間の相対運動の斜め角により達成する。格子ピッチ1個分の距離に亘りこうしたフリンジパターンシフトがM回実行されるのであり、これは即ち、相対運動により格子ピッチ1個分だけパターンをシフトさせる間にM枚の画像が記録されるということである。対応する強度値は例えば
【数2】
となる;但し、mはフリンジパターンシフトの計数値であり1≦m≦Mである。Mの最小値は3であるが、好ましくはMを4以上とする。フリンジコントラストは、以下の計算ステップ
【数3】
により記述される「Mバケット」アルゴリズムで見積もることができる。
【0063】
例えば一次元正弦格子が用いられている場合、zの関数たる格子投射画像のコントラストは、ほぼ
【数4】
に従い変化する;但し、NA
iは照明の数値開口36、NAは撮像数値開口54、λは照明に用いた光の波長(又は平均波長)、C
0は最良合焦時の最大フリンジコントラストである。
【0064】
誤差伝搬論によれば、フリンジコントラストの分散に関する次の式
【数5】
から
【数6】
を得ることができる。
【0065】
ここで、<σ
i>は画素強度の平均ノイズであり、<σ
i>/I
0は、センサノイズ制限ケースでは検出器ダイナミックレンジの逆数、ショットノイズ制限ケースではセンサのフルウェルキャパシティの平方根の逆数となる。
【0066】
ピークの64%における焦点応答の勾配を用いることで計測再現性を推定し、
【数7】
を得ることができる;但しNは焦点深度内zステップ(z刻み)の個数である。そして、計測再現性を
【数8】
と表すことができ、N個のzステップそれぞれでフリンジシフトがM回であるからN
f=MNにより計測の総数が表される;但し、zステップは、物体・対物系間相対運動により格子ピッチ1個分だけ投射パターンが動く間の光軸51沿い位置の変化である。
【0067】
この誤差伝搬モデルの開発目標は、光学系パラメタが根底レベルでどのように性能に影響するかを示すことであるので、機械運動誤差及びセンサノイズが無視される理想条件下でモデルが導出される。そのモデルは最良ケースシナリオを表すものとなる。計測再現性に関する前出の等式により示される通り、
1.格子ピッチ(Λ)を小さくすること
2.フリンジコントラスト(C
0)を高めること
3.光学系により制限される照明数値開口(NA
i)を高めること
4.センサにより制限される画像ダイナミックレンジの逆数を大きくすること
5.データレート及びスループットにより制限される計測回数を増やすこと
で、計測再現性を改善することができる。
【0068】
そのため、格子ピッチを小さくし格子コントラストを高めることが望まれる。しかしながら、円形アパーチャを有する非コヒーレント撮像システムの光学的伝達関数に関し
図6に示されているように、格子ピッチを小さくするとフリンジコントラストが低まるので、格子ピッチ及びフリンジコントラストは一般に相容れない二条件とされる。
図6では、格子ピッチが、使用最高空間周波数に対し正規化された、格子の空間周波数として示されている。空間周波数が高いということは単位長当たり格子ライン本数が多いということ、従ってその格子の隣接ライン間距離即ち格子ピッチが小さいということである。
【0069】
非コヒーレント照明に関しては、格子ピッチの関数たるフリンジコントラストが
【数9】
により与えられる。
【0070】
格子ピッチの関数たる計測再現性誤差は、これらの等式とσ
zに関する前出の等式とを組み合わせることで得られるものであり、その結果が
図7中にプロットされている。最適格子ピッチは遮断ピッチΛ
minの2倍より僅かに大きいので、簡略化のため
【数10】
と記すことにする。
【0071】
従って、フルNA照明及びショットノイズ制限ケースでは、計測再現性が
【数11】
により与えられる。
【0072】
また、ショットノイズ制限ケースにおいては
【数12】
となる。
【0073】
ここに、N
eは撮像センサのフルウェルキャパシティを表している。これは最良シナリオケースであり、計測性能の基本限界を示している。実際の計測は機械ノイズ、主としてz方向位置決めの安定性に由来するそれにより、往々にして制限される。
【0074】
図6から看取しうるように、最適格子ピッチでの(遮断周波数の半分での)投射格子コントラストは約40%であり、これは非コヒーレント撮像システムの変調伝達関数(MTF)により与えられている。この低コントラストは、その上に格子が投射される物体平面における、諸回折成分の不平衡ミキシングの結果である。このことが
図8及び
図9に子細に描かれている。
【0075】
図8に、コンデンサ32、格子33、光軸51及び瞳53を有する対物系5、並びに物体2を示す。焦点深度28や、物体2上に投射され出現する格子ピッチ331も示されている。0次、+1及び−1なる指示子は、0次回折成分と二通りの1次回折成分とを指し示している。ここでは、格子のピッチが、照明用光波長を瞳53の数値開口で除したものに等しい旨、仮定している。
【0076】
図9に示すように、
図8の装備では、照明瞳上のどの所与点でも二通りある1次回折成分のうち一方だけ(即ち+1次か−1次)がその光学系を通過し、他方は回折されてその瞳外に出る。従って、物体2の表面上に格子33の画像を形成するのは、0次回折成分と+1次回折成分、或いは0次回折成分と−1次回折成分であり、それらの干渉により格子の画像が再現される。標準的な格子では一方の1次回折光の強度が0次回折光の強度よりも低いので、得られる格子画像は低コントラストになる。
【0077】
図10にコントラストの改善方法を示す。図示されているのはコンデンサ32、格子33、対物系5及びその瞳53、並びに物体2である。焦点深度28や、物体2上に現れる格子ピッチ331も、指し示されている。ここでは、格子33のピッチが照明用光波長を瞳53の数値開口で除したものに等しいものと仮定している。この格子33は、0次回折成分と一方の1次回折成分のみ、ここでは−1次回折成分のみをもたらすよう、またそれら0次回折成分及び一方の1次回折成分が等強度となるようなものである。これは例えばブレーズド格子により達成することができる。
【0078】
図11に示すように、
図10の装備では、格子画像が0次回折成分の干渉、図示例なら−1次回折成分との干渉により形成される。
図10の装備ではこれら二通りの回折成分が等強度となるので、得られる格子画像は、
図9に示した状況に比べ、そのコントラストが改善されたものとなる。実際、コントラストを100%まで改善させることができ、対応する計測精度の2倍以上の改善へと導くことができる。
図10の装備には幾通りかの改変が可能であり、例えば軸外アパーチャにすることができる。
【0079】
注記すべきことに、このコントラスト改善は、焦点深度の伸長と引き替えに得られたものではない。
図8及び
図10に示すように、格子コントラストが最大値の半分まで劣化する最良合焦位置からの距離として定義される幾何学的な焦点深度は、
図8に示す如き非コヒーレント照明の場合でも、また
図10に示した部分コヒーレント軸外照明でも、おおよそΛ/NAとなる。例えば、照明数値開口NA
iが撮像数値開口NAよりもかなり小さい近コヒーレント照明では、フリンジピッチをλ/(2NA)なる最小値(最高空間周波数に対応)にすることができ、その上でなおフリンジコントラストを100%にすることができる。投射された格子のコントラストが、実質的に無限大の焦点範囲に亘り100%に保たれるシステムは、鏡面反射面上で高さ感度を呈さないであろう。
【0080】
図12に、物体2の表面21の3Dトポグラフィ計測システム100の実施形態を示す。本システム100はパターン化照明源3を有しており、図示実施形態におけるパターン化照明源3は、光源31例えば1個又は複数個のLEDと、コンデンサ光学系32と、パターンマスク33とを有している。本システム100は均一照明源7も有しており、図示実施形態における均一照明源7は、光源71例えば1個又は複数個のLEDと、コンデンサ光学系72とを有している。均一照明源7からの光及びパターン化照明源3からの光を共にビームスプリッタ4へと差し向けるための手段73、例えば半透明ミラーのようなビームスプリッタが設けられている。ビームスプリッタ4はその光のうち少なくとも一部分を対物系5内に差し向け、その光はその対物系5を介し物体2の表面21に到達する。更にその表面21からの光が対物系5内を通過してビームスプリッタ4に到達し、表面21からの光のうち一部分がそのビームスプリッタ4により検出器61、図示例ではカメラ6の一部たるそれへと差し向けられる。対物系5により光軸51及び焦平面52が定まり、その光軸51は焦平面52に対し垂直となる。物体2の表面21上には構造、とりわけ鏡面構造たりうるそれ、具体的には半田バンプ9であるそれが示されている。
【0081】
光源31及び71を交互に動作させることにより、物体2の表面21の交互照明が行われる。光源71を動作、即ち発光させた場合、物体2の表面21の照明は均一になる。光源31を動作、即ち発光させた場合、物体2の表面21の照明がパターン化される。
【0082】
物体2・対物系5間相対運動が実行されている間に、検出器61の働きで表面21の画像複数枚が記録される。それら複数枚の画像のうち幾枚かの画像は、表面21が均一照明にさらされている間に記録されたものであり、また当該複数枚の画像のうち幾枚かの画像は、表面21がパターン化照明にさらされている間に記録されたものである。この実施形態における物体2・対物系5間相対運動の方向22は光軸51に対し平行である。その相対運動中に、物体2の表面21は対物系5の焦平面52を通過する。この図は本システム100の巨視図であるので、焦平面52が一見して物体2の表面21と一致している。
【0083】
図示実施形態では、
図1の実施形態とは対照的に、相対運動方向22が対物系5の光軸51に対し平行であるため、物体2の表面21に対する投射パターンのシフトがない。
図12の実施形態は、とりわけ、半田バンプ付の表面の検査を目的としている。通常、半田バンプは表面21上にアレイをなしてレイアウトされるが、
図12には代表として単一の半田バンプ9が示されている。半田バンプ間エリアのうち、表面上に投射されたパターン例えば格子のピッチより半田バンプ間距離が大きいところでは、半田バンプ間表面の高さを、表面に対しパターンをシフトさせることなく投射パターンのコントラストから計測することができる。これは、従来技術では必要であったのと違い、光軸51に沿った物体2・対物系5間相対位置毎に複数枚の画像を記録する必要がないことを、暗示している。
【0084】
この実施形態では、半田バンプ9間表面高さが、パターン化照明下で記録された画像から求まる一方、半田バンプ9の高さが、均一照明下で記録された画像から求まる。
【0085】
考えるに、
図12に示す実施形態ではパターン化照明源3及び均一照明源7がめいめいに光源を有しているが、これは本発明の限定事項ではない。パターン化照明源3及び均一照明源7で共通の光源が用いられる実施形態が考えられる。そうした場合には、相応な手段を設けてパターン化照明及び均一照明による物体表面の交互照明を実現すればよい。その手段を例えば伝送切替フィルタ群とし、光源からパターン化照明源,均一照明源それぞれに備わる他素子への光路が交互に遮断されるようにすることができる。各フィルタによる伝送を制御することで各照明源からの光の強度を制御することもできる。或いは、その手段を、光源から光を集めてパターン化照明源,均一照明源それぞれに備わる他素子へと交互に差し向けるものにしてもよい。
【0086】
図13は半田バンプ9、ここでは半径rのそれが撮像される光学的状況を描いたものである。おわかり頂けるように、半田バンプ9が反射性でその表面が湾曲しているため、バンプ頂部の小部分しか撮像されえない。バンプ頂部のうち検出器にとり可視な部分のサイズは、照明数値開口及び撮像数値開口の双方に依存する。フル数値開口(NA)照明では、バンプ頂部のうち検出器にとり可視な部分の半値全幅半径がD=rNAにより与えられる。光学的NAを十分に高くし、十分な光学的分解能が得られるようにしないと、アレイレイアウト内の個別バンプを正確に計測することができない。通常、バンプレイアウトにおけるバンプ間隔対バンプ直径の比は1:1であるので、隣接バンプ間光学的クロストークを回避するには撮像点拡がり関数(PSF)をバンプ半径のオーダとする必要がある。最小NAは従って
【数13】
となる。
【0087】
そしてそれに対応するバンプ頂部可視部分の最小直径は
【数14】
となる。
【0088】
デバイストポグラフィ検査で典型的なNAは0.1〜0.3付近であり、これは、視野サイズを大きくしてデバイス全体を撮像し更に高スループットを実現するため、ひいてはバンプ頂部の可視部分が光学的PSFより小さくなりその撮像システムでは点物体として扱えるようにするためである。この場合、焦点による撮像点拡がり関数の変化の仕方に密に追従することから、ピーク画素強度かバンプ頂部自体の画像のサイズかを高さ計測に用いることができる。
【0089】
図13に示すように、バンプ9の表面にある点Pがまだ瞳53を介した照明にさらされているのに、その点Pからの反射光が瞳53内を通らず、従って検出器61(
図12参照)に到達しないことがある。この場合、半田バンプ9の表面の点Pを、検出器61により記録された画像中に見いだすことができない。
図13からお察し頂くべきことに、こうして反射光が瞳53を通過し損ねる原因は、主に、その反射の鏡面的性質と併せ、バンプ9の表面の湾曲にある。
【0090】
図14は
図12に示したシステムの動作手順を示す図であり、
図12中のパターン化照明源3及び均一照明源7により生成された交互照明が描かれている。同図の横軸は位置z、即ち方向22沿い運動中に対物系5(
図12参照)の光軸51沿いで物体2がとる位置を表している。縦軸は、光源31,71それぞれにより放射された光の強度を表している。市松模様付の正方形143はパターン化照明源3の動作を象徴しており(パターンは市松模様に限られない)、無地の正方形147は均一照明源7の動作を象徴している。同図中でそれら正方形からバー144,148に向かっている矢印は、対応する照明源がアクティブになる光軸沿い運動段階を指し示している。即ち、パターン化照明源3がアクティブとなって照明を供給するのは、光軸51沿い運動段階のうち図中でバー144が示されている段階であり、均一照明源7がアクティブとなって照明を供給するのは、光軸51沿い運動段階のうち図中でバー148が示されている段階である。
【0091】
バー144は、バー148により与えられる均一照明源7内光源71の強度に比べ、パターン化照明源3内光源31の強度の方が高いことを、指し示している。このことからわかるように、それら光源の強度を、表面21のうちそれぞれ計測が実行される部分の特性に適合させることができる。鏡面的な半田バンプに対する計測では、半田バンプ間表面に対する計測に比べ低めの強度が通常は適切である。
【0092】
図15に、専ら例証目的で、均一照明下の半田バンプとパターン化照明下の半田バンプ間表面21との結合画像151を示す。2個のダイアグラムも示されている。ダイアグラム157は、z方向位置即ち光軸51に対し平行な方向22(
図12参照)に沿った位置の関数として、半田バンプ9から記録された強度を示している。ダイアグラム153は、z方向位置の関数として、半田バンプ9間表面21から計測されたコントラストを示している。ダイアグラム157に示した強度はz方向位置158にて最大値を呈し、ダイアグラム153に示したコントラストはz方向位置159にて最大値を呈している。これらz方向位置158,159即ち対応する最大値が生じている位置は、それぞれ、半田バンプ9の頂部(最大値158),表面21(最大値159)が焦平面52(
図12参照)を通過するz方向位置である。従って、それらz方向位置158・159間の差155が半田バンプ9の高さである。
【0093】
ダイアグラム153に入れるコントラスト値を決めるに当たっては、その投射パターンが検出器61(
図12参照)の画素サイズにマッチする市松模様である場合、それらコントラスト値を最少で2×2個の画素から算出することができる。より広い画素エリア、即ちN×N個の画素エリア、但しN>2も用いうる。その選択は、通常、光軸51に対し垂直な方向の空間分解能条件及びバンプ9間距離により左右されよう。画素エリア拡大は算出されるコントラストの精度向上につながるが、明らかな通り、光軸51に対し垂直な方向の空間分解能低下にもつながる。
【0094】
図16に、半田バンプのように小湾曲を有する表面に関し、本発明に係る方法における画素応答(例.検出器の対応画素により記録された光強度を表す画素値)を示す。同図の左側にある5枚の画像は、焦点165(画像のうち2枚のみに示す)に差し向けられ半球163(半田バンプ)の表面上に入射する光線164を、様々な半球163・焦点165間相対位置に関し示したものである。同図の右側では、画素応答が縦軸162上に示される一方、横軸161により半球163・焦点165間相対位置が示されている。矢印は、同図中の画素応答のうちどの部分が、左側にある5枚の画像のいずれに対応するのかを、指し示すものである。
【0095】
読み取れるように、この画素応答は2個の最大値を有している。横軸161の値が小さな方の最大値は、左側画像のうち下から2枚目のものに示されているように、光線164の焦点165が半球163の頂部にある状況に相当している。計測中にこの状況が発生するのは、半田ボールの頂部が対物系5(
図12参照)の焦平面52内にあるときである。2個目の最大値が生じるのは、左側画像のうち上から2枚目のものに示されているように、光線164の焦点165が半球163の中心に一致しているときである;実際には光線164が半球163内に入り込まずその表面で反射されることに留意されたい。計測実行時には物体2・対物系5間相対運動方向がわかっているので、半田ボール頂部であり焦平面52内にあるものにそれら2個のピークのうちいずれが対応するのかは明々白々である。他方のピークを用いることでバンプ頂部表面の湾曲を計測することができ、ひいてはそれを校正目的で用い計測の正確性を改善することができる。
【0096】
図17にパターン化照明生成用パターンマスクを数例示す。これらのパターンマスクは、
図1に示したパターン化照明専用型の実施形態でも、
図12に示したパターン化照明・均一照明交互型の実施形態でも、用いることができる。本発明はここに示した種類のパターンマスクに限定されない。図示されている具体例は正弦格子(A)、市松模様(B)、ライングリッド又はクロスライン格子(C)及びピンホールアレイ(D)である。
【0097】
図18に、物体2の表面21の3Dトポグラフィ計測システム200の実施形態を示す。図示実施形態は
図12に示した実施形態のシステム100と非常に類似しており、
図18に現れている要素の大半は既に論じたものである。本システム200では、瞳マスク74が均一照明源7内に組み込まれている。瞳マスク74は照明アパーチャとして動作する。照明アパーチャにより、様々なフィーチャ形状について画像コントラスト及び焦点応答を改善することができる。
図18には、瞳マスク74が採りうる形状について、2個の非限定的な例も示されている。瞳マスク例741はリングアパーチャ、瞳マスク例742は円形アパーチャである。
【0098】
図19に、本発明に係るシステムの実施形態であり本発明を実行するのに用いうる光学モジュール300を示す。ここに示した光学モジュール300の構成は
図1に示したシステム1の構成に類似しているが、
図12のシステム100又は
図18のシステム200の構成をベースにした光学モジュールも考えられる。
【0099】
パターン化照明源3は、光源31、コンデンサ32及びパターンマスク33を有している。パターン化照明源3からの光がビームスプリッタ4に到達すると、その光の一部分がそのビームスプリッタ4によって対物系5へと差し向けられ、そこから物体2へと到達した光により、物体2の表面21にパターン化照明が供給される。対物系5は瞳53を有している。表面21からの光は、対物系5及びビームスプリッタ4を通過した後、カメラ6内の検出器61に到達する。既に上述した通り、検出器61を用いることで、物体2及び対物系5の相対運動中に表面21の画像複数枚を記録することができる。
【0100】
モジュール300はコンパクト且つ単純であるので、複数物体並列検査での使用に適している。非常に具体的だがなお非限定的な例を提供するには、対物系5の視野直径を22mm、NAを0.2とし、通常は30nmであるLED照明波長帯幅向けにその対物系5を補正すればよい;通常は1個又は複数個のLEDが光源31として用いられるのでこうするのが望ましい。このNAは十分高いのでサブμmの計測精度を達成することができ、またその視野サイズにより検査対象物体の大抵のサイズをカバーすることができる。ビームスプリッタキューブ4の撮像側は照明路を撮像路から分岐させるところであり、レンズデザイン上一体部分となっている。これは、その対物レンズ及びチューブレンズが別体な従来の撮像顕微鏡、特に対物系・チューブレンズ間平行光化空間にて照明路及び撮像路が分岐されるため格子投射に更なるチューブレンズが必要であった従来の撮像顕微鏡に比べて、かなり単純且つコンパクトなデザインである。このデザインのもう一つの長所は、パターンマスク33及び検出器61がきっちりと共役平面に存しているため、残留視野歪みがキャンセルされ投射パターンのサンプリングエイリアシングがなくなることである。このデザインは物体側,像側の双方でテレセントリックでもあるので、スルーフォーカス信号歪みを抑えることができる。
【0101】
図20に、複数個の物体2を並列検査するシステム400を示す。物体2はピックアンドプレース装置402によりコンベア401上に載置される。コンベア401は物体2を検査モジュール404の配列403へ、またその先へと搬送するものであり、図示具体例に係るシステム400は3個の検査モジュール404を有している。各物体2は1個の検査モジュール404により検査される。各検査モジュール404は、自分が検査する物体2それぞれを対象に本発明に係る方法を実行する。検査対象物体2の個数及びスループット条件次第で検査モジュール404の個数を変えうるよう、即ち検査モジュール404を本システム400に追加し又はそこから除去することができるよう、本システム400を構成することも考えられる。
【0102】
各検査モジュール404は、例えば
図19に記したモジュール300とすればよいが、例えば
図1にて論じたシステム1、
図12にて論じたシステム100或いは
図18にて論じたシステム200としてもよい。検査モジュール404は、総じて、
図1〜
図19の文脈で論じた発明に係るシステムのいずれとしてもよく、また本発明に係る方法を実行するよう構成されたどのようなシステムであってもよい。検査モジュール404にて、パターン化照明及び物体・対物系間の相対運動に依拠していてその相対運動の方向と対物系の光軸とがある斜め角をなす発明に係る方法を用いてもよいし、或いはパターン化照明及び均一照明を交互に利用する発明に係る方法を用いてもよい。
【0103】
上掲の記述では、本発明の諸実施形態についての全般的理解を促すため数多くの具体的細部が提示されている。しかしながら、本発明の図示諸実施形態についての上掲の記述は、排他的な趣旨や被開示形態そのものに本発明を限定する趣旨のものではない。関連分野に習熟した者(いわゆる当業者)であれば、そうした具体的細部のうち1個以上を欠き或いは他の方法、部材等々で以て本発明を実施しうることを、認識されるであろう。また例えば、本発明の諸態様が不明瞭になることを避けるため、周知な構造や動作については図示又は詳細記述していない。本発明の具体的実施形態及び諸例を例証目的で本願中に記述したが、いわゆる当業者にはご認識頂けるように、本発明の技術的範囲内で様々な等価的修正を行うことができる。
【0104】
それらの修正は、上掲の詳細記述に照らし、本発明に施すことができる。後掲の特許請求の範囲中で用いられている語を以て、本発明が明細書及び特許請求の範囲中で開示された具体的実施形態に限定されるものと解すべきではない。寧ろ、本発明の技術的範囲は後掲の特許請求の範囲により決定づけられるべきものであり、また特許請求の範囲は特許請求の範囲の解釈についての確立された理論に従い解釈されるべきものである。