(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記チョーク部は、前記チャンバ本体の径方向に沿って延びる第1の部分と、前記中心軸線と平行な方向に沿って延びる第2の部分とを有している、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
前記第1の部分の前記径方向に沿った長さと前記第2の部分の前記平行な方向に沿った長さとの和は、前記ステージと前記側壁との間を伝播する電磁波を打ち消すような長さに設定されている、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととし、同一又は相当の部分に対する重複した説明は省略する。また、各図面の寸法比率は、必ずしも実際の寸法比率とは一致していない。
【0017】
一実施形態のプラズマ処理装置について説明する。
図1は、一実施形態のプラズマ処理装置10Aを概略的に示す断面図である。プラズマ処理装置10Aは、チャンバ本体12を備えている。チャンバ本体12は、例えばアルミニウムから構成されており、その表面は陽極酸化処理がされている。チャンバ本体12は、その内部にチャンバCを提供する。このチャンバ本体12は接地されている。
【0018】
一実施形態では、チャンバ本体12は、側壁12a、底部12b及び蓋部12cを含み得る。側壁12aは、略円筒形状を有している。側壁12aの中心軸線は、チャンバ本体12の中心軸線Zに一致している。底部12bは、側壁12aの下端に接続している。底部12bには、排気口12eが形成されており、当該排気口12eには、真空ポンプといった排気装置14が接続されている。排気装置14は、チャンバ本体12内の圧力が所定の圧力になるように、チャンバ本体12内のガスを排気する。蓋部12cは、側壁12aの上部に形成された開口を塞ぐように側壁12aの上端に接続されている。
【0019】
チャンバC内の下部には、ステージ20が設けられている。ステージ20の上面には、被処理体Wが支持される。
【0020】
プラズマ処理装置10Aは、上部電極30を更に備えている。上部電極30は、略円盤形状を有している。上部電極30は、ステージ20の上方に設けられており、チャンバC内の空間Sを介してステージ20と対面配置されている。一実施形態では、上部電極30は、本体部32及びシャワープレート34を含み得る。
【0021】
本体部32は、略円板形状を有しており、例えばアルミ合金から構成されている。一実施形態では、本体部32の内部には、冷媒流路32pが形成されていてもよい。冷媒流路32pには、冷媒入口配管、冷媒出口配管が接続されており、これらの冷媒入口配管及び冷媒出口配管は、チラーユニットに接続されている。冷媒は、チラーユニットから冷媒入口配管を介して冷媒流路32pに供給され、冷媒流路32pから冷媒出口配管を介してチラーユニットに戻るよう、循環する。上部電極30は、冷媒流路32pの中に適宜の冷媒、例えば冷却水等を循環させることによって、上部電極30を所定の温度に制御可能になっている。
【0022】
シャワープレート34は、本体部32の下方に設けられている。シャワープレート34は、略円板形状を有しており、例えばアルミ合金から構成されている。シャワープレート34には、複数の貫通孔34h、即ち、複数のガス吐出孔が形成されている。シャワープレート34のうちステージ20の上面に対面する表面35は、空間Sに露出している。表面35は、内側部35a及び外側部35bを含んでいる。内側部35aは、ステージ20の上方に位置している略円形の領域である。外側部35bは、表面35の径方向においてステージ20よりも外側に位置する領域であり、内側部35aの外側を取り囲む環状の領域である。表面35の外縁35cは、外側部35bの最外周に位置している。
【0023】
シャワープレート34と本体部32との間には複数のスペーサ36が設けられている。シャワープレート34と本体部32とは、当該複数のスペーサ36を介して中心軸線Z方向に互いに離間している。本体部32とシャワープレート34との間には、複数の貫通孔34hに連通するガス拡散室38が形成されている。ガス拡散室38は、チャンバ本体12の外部に設けられたガス供給部GSに接続されている。ガス供給部GSは、ガスソース、流量制御器、及びバルブを含んでいる。ガスソースは、流量制御器及びバルブを介して、ガス拡散室38に処理ガスを供給する。ガス供給部GSからガス拡散室38に供給された処理ガスは、複数の貫通孔34hを介して空間Sに供給される。
【0024】
また、側壁12aの上部には、側壁12aの内面から径方向内側に突出する環状の支持部16が形成されている。即ち、側壁12aの支持部16の形成された部分の内径は、支持部16の形成されていない部分の内径よりも小さくなっている。この支持部16は、上方に向かうにつれて径方向内側に近づくように傾斜する傾斜面16tを有し得る。
【0025】
プラズマ処理装置10Aは、絶縁リング40を更に備えている。絶縁リング40は、アルミナといった絶縁体から構成されている。絶縁リング40は、中心軸線Z周りに延在する環状体であり、支持部16上に支持されている。絶縁リング40は、表面35の外縁35cに沿って延在しており、上部電極30を下方から支持している。
【0026】
一実施形態では、絶縁リング40は、上方に向かうにつれて径方向内側に近づくように傾斜する傾斜面40tを有し得る。絶縁リング40の傾斜面40t及び支持部16の傾斜面16tは同じ傾斜角を有し、中心軸線Zを通る縦断面から見て傾斜面40t及び傾斜面16tが同一直線上に位置するように配置されていてもよい。また、絶縁リング40と上部電極30との間、及び、絶縁リング40と支持部16との間には、それぞれOリングが設けられている。これにより、チャンバCの気密性が保持されている。
【0027】
プラズマ処理装置10Aは、同軸導波管42を更に備えている。同軸導波管42は、内側導体42a及び外側導体42cを含んでいる。内側導体42aの一端は、本体部32に接続されている。内側導体42aの他端は、整合器44を介して高周波電源46に接続されている。高周波電源46は、プラズマ生成用の第1の高周波を発生する電源であり、100MHz以上1000MHz以下の範囲内の周波数を有する第1の高周波を生成する。第1の高周波は、整合器44及び内側導体42aを介して上部電極30に印加される。整合器44は、高周波電源46の負荷インピーダンスを調整するよう構成されている。
【0028】
また、内側導体42aの他端は、ローパスフィルタ47を介してバイアス電源48にも接続されている。バイアス電源48は、上部電極30に供給されるバイアス用の出力波を生成する。バイアス電源48によって生成される出力波は、第1の高周波の周波数よりも低い周波数を有する第2の高周波である。第2の高周波は、正又は負の直流成分を有する高周波であり、例えば500kHzの周波数を有する。バイアス電源48は、第2の高周波をローパスフィルタ47及び内側導体42aを介して上部電極30に印加する。即ち、第2の高周波は、第1の高周波に重畳されて上部電極30に印加される。なお、バイアス電源48は、第2の高周波に代えて直流バイアスを上部電極30に印加してもよい。
【0029】
また、同軸導波管42の外側導体42cは、蓋部12cに接続されている。内側導体42a及び外側導体42cは、後述する導波路42bの一部分を画成する。
【0030】
プラズマ処理装置10は、導波路42bを更に備えている。導波路42bは、高周波電源46からの第1の高周波に基づいて内側導体42aの周囲に生じる電磁波を空間Sに伝播する。導波路42bは、例えば絶縁体から構成されている。導波路42bは、互いに連続する第1の部分43aと第2の部分43bとを有している。第1の部分43aは、内側導体42aと外側導体42cとの間に沿って延在している。第2の部分43bは、上部電極30と蓋部12cとの間に沿って延びており、上部電極30の外側において絶縁リング40と接続している。
【0031】
プラズマ処理装置10Aは、制御部50を更に備えている。制御部50は、プロセッサ、記憶部等を備えるコンピュータ装置等から構成されている。制御部50は、バイアス電源48に接続されており、バイアス電源48に制御信号を送出することにより、バイアス電源48からのバイアス電圧(第2の高周波又は直流バイアスの直流電圧)を制御する。また、制御部50は、バイアス電源48の制御に加えて、プラズマ処理装置10Aの各部を制御する機能を有していてもよい。例えば、制御部50は、上部電極30に供給される第1の高周波、チャンバ本体12内の圧力、チャンバ本体12内に供給されるガス種並びにガス流量を制御するように、高周波電源46、排気装置14、ガス供給部GSに制御信号を供給することができる。
【0032】
図2を参照してプラズマ処理装置10Aの機能について説明する。高周波電源46から上部電極30に第1の高周波が印加されると、内側導体42aの周囲には電磁波が発生する。内側導体42aの周囲に発生した電磁波は、
図2の矢印で示すように、導波路42bの内部を反射しながら絶縁リング40に向けて伝播される。絶縁リング40は、導波路42bを伝播してきた電磁波を受け、その電磁波を空間Sに透過させる。絶縁リング40を透過した電磁波は、空間Sに生成されたプラズマと表面35との間に形成されたシースに沿って、表面35の外縁35cから表面35の中心に向かう表面波として伝播される。即ち、表面波は、金属製の表面35に沿って伝播される。この表面波は、
図2の矢印の長さで表されるように、空間Sに生成されたプラズマにエネルギーを伝えながら、表面35の径方向の内側に向かうにつれて徐々に減衰していく。
【0033】
ここで、表面波の減衰係数は、シースの厚さに依存する。シースの厚さは、上部電極30に印加するバイアス電圧により制御することができる。例えば、上部電極30に印加される負極性のバイアス電圧の絶対値が大きくなるとシースの厚さが増加する。シースの厚さが増加すると、表面波の減衰係数は小さくなる。反対に、上部電極に印加される負極性のバイアス電圧の絶対値が小さくなるとシースの厚さが減少する。シースの厚さが減少すると、表面波の減衰係数は大きくなる。プラズマ処理装置10Aでは、制御部50により上部電極30に印加される第2の高周波又は直流バイアスを制御することにより表面波の減衰係数を変化させることができるので、上部電極30の外縁35cから導入された表面波のうち表面35の径方向の中心に到達する表面波のエネルギーの割合を変化させることができる。これにより、表面波の干渉の程度を調整することができるので、プラズマ密度の径方向の分布を柔軟に制御することができる。
【0034】
図1を再び参照する。一実施形態では、プラズマ処理装置10Aは、チョーク部52を更に備えていてもよい。チョーク部52は、ステージ20と側壁12aとの間を伝播する電磁波を抑制する機能を有する。即ち、チョーク部52は、ステージ20と側壁12aとの間に不要なプラズマが生成されることを抑制する。チョーク部52は、アルミナ、窒化アルミ等からなるセラミック又は石英といった高い耐熱性を有する材料から構成されており、中心軸線Zを中心とする環状をなしている。
【0035】
一実施形態では、
図1に示すように、チョーク部52は、チャンバ本体12の
径方向に沿って延びる第1の部分52aと、中心軸線Zと平行な方向に沿って延びる第2の部分52bとを有していてもよい。第1の部分52a及び第2の部分52bは互いに連続している。このチョーク部52の第1の部分52aの
径方向に沿った長さと第2の部分の中心軸線Zと平行な方向に沿った長さとの和は、ステージ20と側壁12aとの間を伝播する電磁波を打ち消すような長さに設定される。具体的には、チョーク部52の第1の部分52aの
径方向に沿った長さと第2の部分52bの中心軸線Zと平行な方向に沿った長さとの和は、チョーク部52内を伝播する電磁波の波長の略1/4の長さを有している。チョーク部52の長さをチョーク部52内を伝播する電磁波の波長の略1/4の長さに設定することにより、チョーク部52のインピーダンスが絶縁リング40から見て無限大になるので、ステージ20と側壁12aとの間を伝播する電磁波をチョーク部52によって打ち消すことができる。ただし、チョーク部52の端面の位置を電気的な短絡面の位置と一致させるために、チョーク部52の長さは、チョーク部52内を伝播する電磁波の波長の1/4の長さよりも若干大きくなるように設計されていてもよい。なお、一実施形態では、チョーク部52が径方向にのみ延在しており、チョーク部52の径方向の長さがステージ20と側壁12aとの間を伝播する電磁波を打ち消すような長さ、即ちチョーク部52内を伝播する電磁波の波長の略1/4の長さに設定されていてもよい。また、チョーク部52と側壁12aとの間にはOリングが設けられていてもよい。
【0036】
また、一実施形態では、プラズマ処理装置10Aは、複数のセンサ60を更に備えていてもよい。複数のセンサ60は、上部電極30の径方向の異なる位置にそれぞれ設けられている。
図1に示す実施形態では、上部電極30には複数のセンサ60である2つのセンサ60a、60bが設けられている。センサ60aは、上部電極30の径方向の中心位置、即ち中心軸線Z上に設けられている。センサ60bはセンサ90aよりも径方向の外側位置に設けられている。これら複数のセンサ60は、空間Sから上部電極30に向かう熱流束に応じたパラメータを検出する。
【0037】
空間Sに生成されるプラズマ中のイオン及び高エネルギー電子は、シャワープレート34に入射し、シャワープレート34を加熱する。イオン及び電子がシャワープレート34に入射することに伴って生じる熱流束は、空間Sに生成されたプラズマの密度に比例する。したがって、複数のセンサ60によって空間Sから上部電極30に向かう熱流束の分布を検出することにより、空間Sに生成されたプラズマの密度分布を推定することができる。
【0038】
複数のセンサ60は、本体部32とシャワープレート34との間の温度差を計測することで熱流束に応じたパラメータを取得する。以下、
図3を参照して、複数のセンサ60について詳細に説明する。
図3は、センサ60bを拡大して示す断面図である。なお、センサ60aはセンサ60bと同じ構成を有している。
【0039】
図3に示すように、センサ60bは、ペルチェ素子62を備えている。ペルチェ素子62は、第1の電極62a及び第2の電極62bを含んでおり、ゼーベック効果により第1の電極62aと第2の電極62bとの温度差に応じた電圧を出力する。第1の電極62aは、金属パイプ64を介してシャワープレート34に接触している。金属パイプ64は、例えばステンレス等の金属から構成されている。したがって、第1の電極62aは、シャワープレート34と熱的に接続され、且つ、シャワープレート34及び本体部32と電気的に接続されている。なお、表面35の温度をより正確に取得するために、金属パイプ64は、
図3に示すように、シャワープレート34の上面の高さ位置よりも低い位置、即ち表面35に近い位置においてシャワープレート34と接触していてもよい。さらに、金属パイプ64の上部と本体部32との間にはOリングが設けられていてもよい。
【0040】
第2の電極62bは、絶縁パイプ66を介して本体部32に接触している。絶縁パイプ66は、窒化アルミ等の熱伝導率の高い絶縁体から構成されている。したがって、第2の電極62bは、本体部32と熱的に接続されているが、電気的には本体部32と絶縁されている。金属パイプ64と絶縁パイプ66との間には、エポキシ樹脂等の熱伝導率の低い絶縁体からなる充填材68が充填されている。これにより、金属パイプ64と絶縁パイプ66とが電気的及び熱的に絶縁されている。
【0041】
また、第2の電極62bには、金属棒70が接続されている。金属棒70は、銅等の熱伝導率の高い金属から構成されている。なお、一実施形態では、本体部32の上面の一部には凹部が形成されており、当該凹部が複数のセンサ60の一部及び後述する電圧計測回路78を収容する収容空間HSを画成していてもよい。金属棒70は、本体部32に形成された貫通孔THを通って収容空間HSまで延在している。金属棒70の上部は、ナット74によって本体部32に対して締結されている。ナット74と本体部32の上面との間には、絶縁ワッシャ72が設けられている。絶縁ワッシャ72は、例えば窒化アルミ等の絶縁体から構成されている。また、絶縁ワッシャ72とナット74との間には、圧着端子76が設けられている。圧着端子76は、金属棒70を介して第2の電極62bに電気的に接続されており、本体部32には電気的に絶縁されている。
【0042】
図1に示すように、収容空間HSには、電圧計測回路78が設けられ得る。電圧計測回路78は、配線77を介して複数のセンサ60の圧着端子76に電気的に接続されている。電圧計測回路78は、配線77と本体部32と間の電圧、即ち、ペルチェ素子62の出力電圧を測定し、複数のセンサ60の各々からの出力電圧に応じた出力信号を制御部50に送出する。
【0043】
制御部50は、電圧計測回路78からの出力信号に基づいてバイアス電源48を制御する。例えば、センサ60aからの出力電圧がセンサ60bからの出力電圧よりも大きい場合には、空間Sの径方向内側に生成されたプラズマの密度が径方向外側に生成されたプラズマの密度よりも高いことが推測される。したがって、この場合には、制御部50は、バイアス電源48から上部電極30に印加される負極性のバイアス電圧の絶対値が小さくなるようにバイアス電源48を制御する。これにより、シースが薄くなり、表面波の減衰係数が大きくなるので、表面35の外縁35cから供給された表面波のエネルギーのうち表面35の径方向の中心位置に到達する表面波のエネルギーの割合が小さくなる。その結果、空間Sの径方向内側に生成されるプラズマの密度が低下するので、プラズマの面内均一性が向上する。反対に、センサ60aからの出力電圧がセンサ60bからの出力電圧よりも小さい場合には、空間Sの径方向内側に生成されたプラズマの密度が径方向外側に生成されたプラズマの密度よりも低いことが推測される。したがって、この場合には、制御部50は、バイアス電源48から上部電極30に印加される負極性のバイアス電圧の絶対値が大きくなるようにバイアス電源48を制御する。これにより、シースが厚くなり、表面波の減衰係数が小さくなるので、表面35の外縁35cから供給された表面波のエネルギーのうち表面35の径方向の中心位置に到達する表面波のエネルギーの割合が大きくなる。その結果、空間Sの径方向の内側位置に生成されるプラズマの密度が増加するので、プラズマ密度の面内均一性が向上する。
【0044】
次に、別の実施形態に係るプラズマ処理装置について説明する。
図4に示すプラズマ処理装置10Bは、複数のセンサ60に代えて複数のセンサ80を備えている。以下では、
図1に示すプラズマ処理装置10Aとの相違点を中心に説明し、重複する説明は省略する。
【0045】
複数のセンサ80は、上部電極30の径方向の異なる位置にそれぞれ設けられている。
図4に示す実施例では、上部電極30には複数のセンサ80として2つのセンサ80a、80bが設けられている。センサ80aは、上部電極30の径方向の中心位置、即ち中心軸線Z上に設けられている。センサ80bはセンサ80aよりも径方向外側に設けられている。センサ80a及びセンサ80bは、熱電対82及び電圧計測回路84をそれぞれ含んでいる。熱電対82は、一端及び他端を有し、一端と他端との間の温度差に応じた電圧を発生させる。熱電対82の一端は、シャワープレート34に接している。熱電対82の他端は、本体部32内に配置されている。電圧計測回路84は、熱電対82と電気的に接続されており、熱電対82において発生した電圧を取得する。電圧計測回路84によって取得された電圧は制御部50に送出される。制御部50は、電圧計測回路84からの出力に基づいてバイアス電源48からの第2の高周波又は直流バイアスを制御する。
【0046】
例えば、センサ80aからの出力電圧がセンサ80bからの出力電圧よりも大きい場合には、空間Sの径方向内側に生成されたプラズマの密度が径方向外側に生成されたプラズマの密度よりも高いことが推測される。したがって、この場合には、制御部50は、バイアス電源48から上部電極30に印加される負極性のバイアス電圧の絶対値が小さくなるようにバイアス電源48を制御する。これにより、シースが薄くなり、表面波の減衰係数が大きくなるので、表面35の外縁35cから供給された表面波のエネルギーのうち表面35の径方向の中心位置に到達する表面波のエネルギーの割合が小さくなる。その結果、空間Sの径方向内側に生成されるプラズマの密度が低下するので、プラズマの面内均一性が向上する。反対に、センサ80aからの出力電圧がセンサ80bからの出力電圧よりも小さい場合には、空間Sの径方向内側に生成されたプラズマの密度が径方向外側に生成されたプラズマの密度よりも低いことが推測される。したがって、この場合には、制御部50は、バイアス電源48から上部電極30に印加される負極性のバイアス電圧の絶対値が大きくなるようにバイアス電源48を制御する。これにより、シースが厚くなり、表面波の減衰係数が小さくなるので、表面35の外縁35cから供給された表面波のエネルギーのうち表面35の径方向の中心位置に到達する表面波のエネルギーの割合が大きくなる。その結果、空間Sの径方向の内側位置に生成されるプラズマの密度が増加するので、プラズマ密度の面内均一性が向上する。
【0047】
このプラズマ処理装置10Bにおいても、プラズマ処理装置10Aと同じ作用効果を奏する。即ち、プラズマ処理装置10Bでは、複数のセンサ80からの出力に基づいて、空間Sに生成されたプラズマの密度分布を検出することができる。そして、複数のセンサ80からの出力に応じて上部電極30に印加されるバイアス電圧を制御することにより、プラズマの密度分布を制御することができる。
【0048】
次に、更に別の実施形態に係るプラズマ処理装置について説明する。
図5に示すプラズマ処理装置10Cは、複数のセンサ60に代えて複数のセンサ90を備えている。以下では、
図1に示すプラズマ処理装置10Aとの相違点を中心に説明し、重複する説明は省略する。
【0049】
複数のセンサ90は、上部電極30の径方向の異なる位置にそれぞれ設けられている。
図5に示す実施例では、上部電極30には、複数のセンサ90として3つのセンサ90a、90b、90cが設けられている。センサ90aは上部電極30の径方向の中心位置近傍、即ち中心軸線Zの近傍に設けられており、センサ90cはセンサ90aよりも径方向外側に設けられている。センサ90bは、上部電極30の径方向において、センサ90aとセンサ90cとの間の位置に設けられている。複数のセンサ90a、90b、90cは、対象物からの熱放射(赤外線)に基づいて対象物の温度を検出する放射温度計である。
【0050】
本実施形態では、蓋部12c及び本体部32のセンサ90a、90b、90cに対応する位置には、穴92a、92b、92cがそれぞれ形成されている。穴92a及び穴92cは、蓋部12cの上面からシャワープレート34まで中心軸線Z方向に平行な方向に沿って延びている。穴92bは、蓋部12cの上面から本体部32内まで中心軸線Z方向に平行な方向に沿って延びている。
【0051】
センサ90a及びセンサ90cは、それぞれ穴92a及び穴92cを介して取得される放射熱に基づいて、シャワープレート34の温度を検知する。センサ90bは、穴92bを介して取得される放射熱に基づいて、本体部32の温度を検知する。センサ90a、90b、90cは、検知したシャワープレート34及び本体部32の温度を制御部50に送出する。制御部50は、センサ90aが検知したシャワープレート34の温度とセンサ90bが検知した本体部32の温度との温度差、及び、センサ90cが検知したシャワープレート34の温度とセンサ90bが検知した本体部32の温度との温度差を算出する。そして、2つの温度差に基づいてバイアス電源48からの第2の高周波又直流バイアスを制御する。
【0052】
例えば、センサ90aが検知したシャワープレート34の温度とセンサ90bが検知した本体部32の温度との温度差がセンサ90cが検知したシャワープレート34の温度とセンサ90bが検知した本体部32の温度との温度差よりも大きい場合には、空間Sの径方向内側に径方向外側よりも高い密度のプラズマが生成されていることが推測される。したがって、この場合には、制御部50は、バイアス電源48から上部電極30に印加される負極性のバイアス電圧の絶対値が小さくなるようにバイアス電源48を制御する。これにより、シースが薄くなり、表面波の減衰係数が大きくなるので、表面35の外縁35cから供給される表面波のエネルギーのうち表面35の径方向の中心位置に到達する表面波のエネルギーの割合が小さくなる。その結果、空間Sの径方向内側に生成されるプラズマの密度が低下するので、プラズマ密度の面内均一性が向上する。反対に、センサ90aが検知したシャワープレート34の温度とセンサ90bが検知した本体部32の温度との温度差がセンサ90cが検知したシャワープレート34の温度とセンサ90bが検知した本体部32の温度との温度差よりも小さい場合には、空間Sの径方向外側に径方向内側よりも高い密度のプラズマが生成されていることが推測される。したがって、この場合には、制御部50は、バイアス電源48から上部電極30に印加される負極性のバイアス電圧の絶対値が大きくなるようにバイアス電源48を制御する。これにより、シースが厚くなり、表面波の減衰係数が小さくなるので、表面35の外縁35cから供給される表面波のエネルギーのうち表面35の径方向の中心位置に到達する表面波のエネルギーの割合が大きくなる。その結果、空間Sの径方向内側に生成されるプラズマの密度が増加するので、プラズマ密度の面内均一性が向上する。
【0053】
プラズマ処理装置10Cにおいても、プラズマ処理装置10Aと同じ作用効果を奏する。即ち、プラズマ処理装置10Cでは、複数のセンサ90からの出力に基づいて、空間Sに生成されたプラズマの密度分布を検出することができる。そして、複数のセンサ90からの出力に応じて上部電極30に印加されるバイアス電圧を制御することにより、プラズマの密度分布を制御することができる。
【0054】
以下、実験例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0055】
図1に示すプラズマ処理装置10Aを用いて空間Sにプラズマを生成したときに、シースに沿って上部電極30の外縁35cから表面35の中心に向かって伝播するシース波の電界強度分布をシミュレーションにより計算した。表面35の半径は200mmとした。高周波電源46から上部電極30に印加する第1の高周波の周波数は500MHzとした。また、プラズマの比誘電率は−50とし、プラズマの誘電損失は−0.3とした。
図6は、シースの厚さを0.2mm、0.3mm、0.5mm、0.9mmに変化させたときのシース中の電界強度の分布を表すシミュレーション結果である。なお、
図6の横軸の0mmの位置は表面35の径方向の中心位置を表しており、200mmの位置は上部電極30の外縁35cの位置を表している。
【0056】
図6に示すように、シースの厚さが0.2mmである場合には、表面35の径方向内側から径方向外側に向かうにつれてシース中の電界強度が大きくなることが確認された。この状態では、空間Sの径方向内側において密度が低く、径方向外側において密度が高い偏りのあるプラズマが生成されることとなる。一方、シースの厚さが大きくなるほど、表面35の径方向内側における電界強度が径方向外側における電界強度よりも大きくなることが確認された。特に、シースの厚さが0.9mmである場合には、表面35の径方向の中心における電界強度は、表面35の外縁35cにおける電界強度の4倍となった。この場合には、空間Sの径方向内側において密度が高く、空間Sの径方向外側において密度が低い偏りのあるプラズマが生成されることとなる。
図6に示す結果から、バイアス電圧によってシースの厚さを制御することにより、プラズマ密度の径方向の分布を制御することができることが確認された。
【0057】
また、
図6に示すように、シース中の電界強度は径方向に沿って所定の周期で変動することが確認された。この電界強度の変動は、表面35の径方向の外側から内側に向かって減衰しながら伝播するシース波と表面35の径方向の外側から内側に向かって伝播するシース波とが互いに干渉して定在波を形成するために生じたものであると考えられる。
【0058】
また、シースが厚いときほど電界強度の変動量が大きく、且つ、変動の周期が大きくなることが確認された。シースが薄い場合には、シース波のエネルギーの大部分がプラズマ中に存在するので、シース波の伝播中にシース波のエネルギーの大部分が減衰により失われることとなる。これにより、大きな定在波が生じにくくなるので電界強度の変動が小さくなると考えられる。また、シースが薄い場合には、シース波の波長が短いので変動の周期が短くなると考えられる。反対に、シースが厚い場合には、シース波のエネルギーがプラズマ中に存在する割合が相対的に小さくなるので、シース波の伝播中にエネルギーが減衰により失われにくくなる。これにより、大きな定在波が生じやすくなるので電界強度の変動が大きくなると考えられる。また、シースが厚い場合には、シース波の波長が長いので変動の周期が長くなると考えられる。なお、
図6に示すように、定在波の発生によりプラズマの密度分布にむらが生じるが、被処理体Wの直上に至るまでにプラズマが拡散するので処理の均一性はある程度保たれることとなる。
【0059】
また、チョーク部52の効果について検討を行った。
図7は、チョーク部52の長さと、入射波強度に対する透過波強度の比との関係を表すシミュレーション結果である。このシミュレーションでは、高周波電源46からの第1の高周波の周波数を1GHzとし、チョーク部52の材料をアルミナ(比誘電率:9.8)とした。ここで、チョーク部52内を伝播する電磁波の波長λ
gは、下記式(1)で表される。
【0061】
式(1)において、λ
0は真空中を伝播する電磁波の波長であり、ε
rはチョーク部52を構成するアルミナの比誘電率であり、μ
rはチョーク部52を構成するアルミナの比透磁率である。第1の高周波の周波数が1GHzである場合にはλ
0は300mmとなるので、λ
gの1/4の長さは24.0mmとなる。
図7に示すように、チョーク部52の長さを24.0mm程度にするとチョーク部52を透過する透過波強度が小さくなり、電磁波を抑制することができることが確認された。ただし、透過波強度が最小となるチョーク部52の長さは、24.0mmよりも僅かに長い25.7mmであった。この結果は、チョーク部52の端面の位置が電気的な短絡点の位置と一致しないためであると考えられる。
【0062】
以上、一実施形態に係るプラズマ処理装置について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。例えば、上述のプラズマ処理装置では、高周波電源46からの第1の高周波と、バイアス電源48からの第2の高周波又は直流バイアスとが内側導体42aを介して上部電極30に印加されているが、第2の高周波又は直流バイアスは内側導体42aとは異なる別の導体、即ち第1の高周波とは別の経路を介して上部電極30に印加されてもよい。