特許第6846941号(P6846941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846941
(24)【登録日】2021年3月4日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】塗布装置、および塗布方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20210315BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20210315BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20210315BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20210315BHJP
   G01G 19/52 20060101ALI20210315BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210315BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20210315BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20210315BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   B05C11/10
   B05C5/00 101
   B41J2/165 207
   B41J2/17 201
   G01G19/52 Z
   H05B33/14 A
   H05B33/10
   B05D1/26 Z
   B05D3/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-17053(P2017-17053)
(22)【出願日】2017年2月1日
(65)【公開番号】特開2018-122254(P2018-122254A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】三根 陽介
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 一仁
【審査官】 河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−045546(JP,A)
【文献】 特開2007−136450(JP,A)
【文献】 特開2009−022915(JP,A)
【文献】 特開2004−177262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 7/00 −21/00
B05C 5/00 − 5/04
B05D 1/00 − 7/26
G01G19/00 −19/64
H05B33/00 −33/28
B41J 2/165− 2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に機能液の描画パターンを描く塗布装置であって、
前記基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持されている前記基板に前記機能液の液滴を吐出する液滴吐出部と、
主走査方向および副走査方向に、前記基板保持部と前記液滴吐出部とを相対的に移動させる移動部と、
前記液滴吐出部によって吐出される液滴を受けるカップ、および前記カップの内部に溜まる前記機能液の質量を測定する質量測定器とを含む質量測定部と、
前記カップの内部に溜まる前記機能液を前記カップから排出する排液部とを備え
前記排液部は、前記カップの内部に差し込まれ前記カップの内部に溜まる前記機能液を吸引する吸引ノズルと、前記吸引ノズルを昇降させる昇降機構とを有する、塗布装置。
【請求項2】
前記移動部は、前記基板保持部および前記質量測定部をベースに対し前記主走査方向に移動させる主走査方向移動部を有する、請求項に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記ベースの前記主走査方向の一端部の上方において前記副走査方向に延びるビームをさらに備え、
前記排液部は、前記ビームに設けられる、請求項に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記移動部は、前記液滴吐出部を前記ベースに対し前記副走査方向に移動させる副走査方向移動部をさらに有し、
前記副走査方向移動部は、前記ベースの上方において前記副走査方向に延びるガイドビーム、および前記ガイドビームに設けられるガイドを有し、
前記液滴吐出部は、前記ガイドに沿って移動するものであり、
前記排液部は、前記ガイドビームに設けられる、請求項に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記排液部は、前記吸引ノズルを前記ベースに対し前記副走査方向にスライドさせるスライド機構をさらに有する、請求項のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記液滴吐出部は、複数種類の前記機能液の液滴を吐出し、
前記カップは、複数種類の前記機能液を混ぜて溜め、
前記吸引ノズルは、複数種類の前記機能液を混ぜて溜めたものを吸引する、請求項のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記液滴吐出部は、複数種類の前記機能液の液滴を吐出し、
前記カップは、複数種類の前記機能液を、前記機能液の種類ごとに分けて溜め、
前記吸引ノズルは、複数設けられ、それぞれ、予め定められた一種類の前記機能液を吸引する、請求項のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の塗布装置を用いて、前記基板に前記機能液の描画パターンを描く、塗布方法。
【請求項9】
前記機能液は、有機発光ダイオードの製造に用いられるものである、請求項に記載の塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置、および塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL(Electroluminescence)の発光を利用した発光ダイオードである有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)が知られている。有機発光ダイオードを用いた有機ELディスプレイは、薄型軽量かつ低消費電力であるうえ、応答速度や視野角、コントラスト比の面で優れているといった利点を有している。このため、次世代のフラットパネルディスプレイ(FPD)として近年注目されている。
【0003】
有機発光ダイオードは、基板上に形成される陽極と、陽極を基準として基板とは反対側に設けられる陰極と、陽極と陰極の間に設けられる有機層とを有する。有機層は、例えば陽極側から陰極側に向けて、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入層をこの順で有する。発光層などの形成には、インクジェット方式の塗布装置が用いられる。
【0004】
特許文献1に記載の塗布装置は、機能液滴吐出ヘッドから吐出した機能液を受ける受け容器と、受け容器の内部に溜まる機能液の質量を測定する電子天秤とを有する。電子天秤の測定結果は、機能液滴吐出ヘッドの駆動電力(電圧値)の調整に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−177262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、吐出ヘッドから吐出した機能液を受けるカップが満杯になると、手作業によってカップの交換がなされており、その際に、電子天秤などの質量測定器に荷重がかかり、質量測定器が破損することがあった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、質量測定器の破損を抑制できる、塗布装置の提供を主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
基板に機能液の描画パターンを描く塗布装置であって、
前記基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持されている前記基板に前記機能液の液滴を吐出する液滴吐出部と、
主走査方向および副走査方向に、前記基板保持部と前記液滴吐出部とを相対的に移動させる移動部と、
前記液滴吐出部によって吐出される液滴を受けるカップ、および前記カップの内部に溜まる前記機能液の質量を測定する質量測定器とを含む質量測定部と、
前記カップの内部に溜まる前記機能液を前記カップから排出する排液部とを備え
前記排液部は、前記カップの内部に差し込まれ前記カップの内部に溜まる前記機能液を吸引する吸引ノズルと、前記吸引ノズルを昇降させる昇降機構とを有する、塗布装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、質量測定器の破損を抑制できる、塗布装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態による有機ELディスプレイを示す平面図である。
図2】一実施形態による有機ELディスプレイの要部を示す断面図である。
図3】一実施形態による有機発光ダイオードの製造方法を示すフローチャートである。
図4】一実施形態による塗布層が形成された基板を示す断面図である。
図5図4の塗布層を減圧乾燥した基板を示す断面図である。
図6】一実施形態による基板処理システムを示す平面図である。
図7】一実施形態による塗布装置を示す平面図である。
図8】一実施形態による塗布装置を示す側面図である。
図9】一実施形態による吐出ヘッドの配列、および吐出量測定対象の吐出ヘッドから液滴を受ける時のカップの位置を示す平面図である。
図10】一実施形態によるカップの構造を示す断面図である。
図11図10のXI−XI線に沿ったカップの断面図である。
図12】第1変形例による塗布装置を示す側面図である。
図13】第2変形例による塗布装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
【0012】
<有機ELディスプレイ>
図1は、一実施形態による有機ELディスプレイを示す平面図である。図1において、一の単位回路11の回路を拡大して示す。
【0013】
有機ELディスプレイは、基板10と、基板10上に配列される複数の単位回路11と、基板10上に設けられる走査線駆動回路14と、基板10上に設けられるデータ線駆動回路15とを有する。走査線駆動回路14に接続される複数の走査線16と、データ線駆動回路15に接続される複数のデータ線17とで囲まれる領域に、単位回路11が設けられる。単位回路11は、TFT層12と、有機発光ダイオード13とを含む。
【0014】
TFT層12は、複数のTFT(Thin Film Transistor)を有する。一のTFTはスイッチング素子としての機能を有し、他の一のTFTは有機発光ダイオード13に流す電流量を制御する電流制御用素子としての機能を有する。TFT層12は、走査線駆動回路14およびデータ線駆動回路15によって作動され、有機発光ダイオード13に電流を供給する。TFT層12は単位回路11毎に設けられており、複数の単位回路11は独立に制御される。尚、TFT層12は、一般的な構成であればよく、図1に示す構成には限定されない。
【0015】
尚、有機ELディスプレイの駆動方式は、本実施形態ではアクティブマトリックス方式であるが、パッシブマトリックス方式であってもよい。
【0016】
図2は、一実施形態による有機ELディスプレイの要部を示す断面図である。基板10としては、ガラス基板や樹脂基板などの透明基板が用いられる。基板10上には、TFT層12が形成されている。TFT層12上には、TFT層12によって形成される段差を平坦化する平坦化層18が形成されている。
【0017】
平坦化層18は、絶縁性を有している。平坦化層18を貫通するコンタクトホールには、コンタクトプラグ19が形成されている。コンタクトプラグ19は、平坦化層18の平坦面に形成される画素電極としての陽極21と、TFT層12とを電気的に接続する。コンタクトプラグ19は、陽極21と同じ材料で、同時に形成されてよい。
【0018】
有機発光ダイオード13は、平坦化層18の平坦面上に形成される。有機発光ダイオード13は、画素電極としての陽極21と、画素電極を基準として基板10とは反対側に設けられる対向電極としての陰極22と、陽極21と陰極22との間に形成される有機層23とを有する。TFT層12を作動させることで、陽極21と陰極22との間に電圧が印加され、有機層23が発光する。
【0019】
陽極21は、例えばITO(Indium Tin Oxide)などによって形成され、有機層23からの光を透過する。陽極21を透過した光は、基板10を透過し、外部に取り出される。陽極21は、単位回路11毎に設けられる。
【0020】
陰極22は、例えばアルミニウムなどによって形成され、有機層23からの光を有機層23に向けて反射する。陰極22で反射した光は、有機層23や陽極21、基板10を透過し、外部に取り出される。陰極22は、複数の単位回路11に共通のものである。
【0021】
有機層23は、例えば、陽極21側から陰極22側に向けて、正孔注入層24、正孔輸送層25、発光層26、電子輸送層27および電子注入層28をこの順で有する。陽極21と陰極22との間に電圧がかかると、陽極21から正孔注入層24に正孔が注入されると共に、陰極22から電子注入層28に電子が注入される。正孔注入層24に注入された正孔は、正孔輸送層25によって発光層26へ輸送される。また、電子注入層28に注入された電子は、電子輸送層27によって発光層26へ輸送される。そうして、発光層26内で正孔と電子が再結合して、発光層26の発光材料が励起され、発光層26が発光する。
【0022】
発光層26として、例えば、赤色発光層、緑色発光層、および青色発光層が形成される。赤色発光層は赤色に発光する赤色発光材料で形成され、緑色発光層は緑色に発光する緑色発光材料で形成され、青色発光層は青色に発光する青色発光材料で形成される。赤色発光層、緑色発光層、および青色発光層は、バンク30の開口部31に形成される。
【0023】
バンク30は、赤色発光層の材料液、緑色発光層の材料液、および青色発光層の材料液を隔てることで、これらの材料液の混合を防止する。バンク30は、絶縁性を有しており、平坦化層18を貫通するコンタクトホールを埋める。
【0024】
<有機発光ダイオードの製造方法>
図3は、一実施形態による有機発光ダイオードの製造方法を示すフローチャートである。
【0025】
先ず、ステップS101では、画素電極としての陽極21の形成を行う。陽極21の形成には、例えば蒸着法が用いられる。陽極21は、平坦化層18の平坦面に、単位回路11毎に形成される。陽極21と共に、コンタクトプラグ19が形成されてよい。
【0026】
続くステップS102では、バンク30の形成を行う。バンク30は、例えばフォトレジストを用いて形成され、フォトリソグラフィ処理によって所定のパターンにパターニングされる。バンク30の開口部31において、陽極21が露出する。
【0027】
続くステップS103では、正孔注入層24の形成を行う。正孔注入層24の形成には、インクジェット法などが用いられる。インクジェット法によって正孔注入層24の材料液を陽極21上に塗布することで、図4に示すように塗布層Lが形成される。その塗布層Lを乾燥、焼成することで、図5に示すように正孔注入層24が形成される。
【0028】
続くステップS104では、正孔輸送層25の形成を行う。正孔輸送層25の形成には、正孔注入層24の形成と同様に、インクジェット法などが用いられる。インクジェット法によって正孔輸送層25の材料液を正孔注入層24上に塗布することで、塗布層が形成される。その塗布層を乾燥、焼成することで、正孔輸送層25が形成される。
【0029】
続くステップS105では、発光層26の形成を行う。発光層26の形成には、正孔注入層24や正孔輸送層25の形成と同様に、インクジェット法などが用いられる。インクジェット法によって発光層26の材料液を正孔輸送層25上に塗布することで、塗布層が形成される。その塗布層を乾燥、焼成することで、発光層26が形成される。
【0030】
発光層26として、例えば赤色発光層、緑色発光層、および青色発光層が形成される。赤色発光層、緑色発光層、および青色発光層は、バンク30の開口部31に形成される。バンク30は、赤色発光層の材料液、緑色発光層の材料液、および青色発光層の材料液を隔てることで、これらの材料液の混合を防止する。
【0031】
続くステップS106では、電子輸送層27の形成を行う。電子輸送層27の形成には、例えば蒸着法などが用いられる。電子輸送層27は、複数の単位回路11に共通のものでよいので、バンク30の開口部31内の発光層26上だけではなく、バンク30上にも形成されてよい。
【0032】
続くステップS107では、電子注入層28の形成を行う。電子注入層28の形成には、例えば蒸着法などが用いられる。電子注入層28は、電子輸送層27上に形成される。電子注入層28は、複数の単位回路11に共通のものでよい。
【0033】
続くステップS108では、陰極22の形成を行う。陰極22の形成には、例えば蒸着法などが用いられる。陰極22は、電子注入層28上に形成される。陰極22は、複数の単位回路11に共通のものでよい。
【0034】
尚、有機ELディスプレイの駆動方式が、アクティブマトリックス方式ではなく、パッシブマトリックス方式である場合、陰極22は、所定のパターンにパターニングされる。
【0035】
以上の工程により、有機発光ダイオード13が製造される。有機層23のうち、正孔注入層24、正孔輸送層25および発光層26の形成に、基板処理システム100が用いられる。
【0036】
<基板処理システム>
図6は、一実施形態による基板処理システムを示す平面図である。基板処理システム100は、図3のステップS103〜S105に相当する各処理を行い、陽極21上に正孔注入層24、正孔輸送層25および発光層26を形成する。基板処理システム100は、搬入ステーション110と、処理ステーション120と、搬出ステーション130と、制御装置140とを有する。
【0037】
搬入ステーション110は、複数の基板10を収容するカセットCを外部から搬入させ、カセットCから複数の基板10を順次取り出す。各基板10には、予めTFT層12や平坦化層18、陽極21、バンク30などが形成されている。
【0038】
搬入ステーション110は、カセットCを載置するカセット載置台111と、カセット載置台111と処理ステーション120との間に設けられる搬送路112と、搬送路112に設けられる基板搬送体113とを備える。基板搬送体113は、カセット載置台111に載置されたカセットCと処理ステーション120との間で基板10を搬送する。
【0039】
処理ステーション120は、陽極21上に、正孔注入層24、正孔輸送層25および発光層26を形成する。処理ステーション120は、正孔注入層24を形成する正孔注入層形成ブロック121と、正孔輸送層25を形成する正孔輸送層形成ブロック122と、発光層26を形成する発光層形成ブロック123を備える。
【0040】
正孔注入層形成ブロック121は、正孔注入層24の材料液を陽極21上に塗布して塗布層を形成し、その塗布層を乾燥、焼成することで、正孔注入層24を形成する。正孔注入層24の材料液は、有機材料および溶剤を含む。その有機材料は、ポリマー、モノマーのいずれでもよい。モノマーの場合、焼成によって重合され、ポリマーとされてもよい。
【0041】
正孔注入層形成ブロック121は、塗布装置121aと、バッファ装置121bと、減圧乾燥装置121cと、熱処理装置121dと、温度調節装置121eとを備える。塗布装置121aは、正孔注入層24の材料液の液滴を、バンク30の開口部31に向けて吐出する。バッファ装置121bは、処理待ちの基板10を一時的に収容する。減圧乾燥装置121cは、塗布装置121aで塗布された塗布層を減圧乾燥し、塗布層に含まれる溶剤を除去する。熱処理装置121dは、減圧乾燥装置121cで乾燥された塗布層を加熱処理する。温度調節装置121eは、熱処理装置121dで加熱処理された基板10の温度を、所定の温度、例えば常温に調節する。
【0042】
塗布装置121a、バッファ装置121b、熱処理装置121d、および温度調節装置121eは、内部が大気雰囲気に維持される。減圧乾燥装置121cは、内部の雰囲気を、大気雰囲気と減圧雰囲気とに切り替える。
【0043】
尚、正孔注入層形成ブロック121において、塗布装置121a、バッファ装置121b、減圧乾燥装置121c、熱処理装置121dおよび温度調節装置121eの、配置や個数、内部の雰囲気は、任意に選択可能である。
【0044】
また、正孔注入層形成ブロック121は、基板搬送装置CR1〜CR3と、受渡装置TR1〜TR3とを備える。基板搬送装置CR1〜CR3は、それぞれ隣接する各装置へ基板10を搬送する。例えば、基板搬送装置CR1は、隣接する塗布装置121aおよびバッファ装置121bへ基板10を搬送する。基板搬送装置CR2は、隣接する減圧乾燥装置121cへ基板10を搬送する。基板搬送装置CR3は、隣接する熱処理装置121dおよび温度調節装置121eへ基板10を搬送する。受渡装置TR1〜TR3は、それぞれ順に、搬入ステーション110と基板搬送装置CR1の間、基板搬送装置CR1と基板搬送装置CR2の間、基板搬送装置CR2と基板搬送装置CR3の間に設けられ、これらの間で基板10を中継する。基板搬送装置CR1〜CR3や受渡装置TR1〜TR3は、内部が大気雰囲気に維持される。
【0045】
正孔注入層形成ブロック121の基板搬送装置CR3と、正孔輸送層形成ブロック122の基板搬送装置CR4との間には、これらの間で基板10を中継する受渡装置TR4が設けられる。受渡装置TR4は、内部が大気雰囲気に維持される。
【0046】
正孔輸送層形成ブロック122は、正孔輸送層25の材料液を正孔注入層24上に塗布して塗布層を形成し、その塗布層を乾燥、焼成することで、正孔輸送層25を形成する。正孔輸送層25の材料液は、有機材料および溶剤を含む。その有機材料は、ポリマー、モノマーのいずれでもよい。モノマーの場合、焼成によって重合され、ポリマーとされてもよい。
【0047】
正孔輸送層形成ブロック122は、塗布装置122aと、バッファ装置122bと、減圧乾燥装置122cと、熱処理装置122dと、温度調節装置122eとを備える。塗布装置122aは、正孔輸送層25の材料液の液滴を、バンク30の開口部31に向けて吐出する。バッファ装置122bは、処理待ちの基板10を一時的に収容する。減圧乾燥装置122cは、塗布装置122aで塗布された塗布層を減圧乾燥し、塗布層に含まれる溶剤を除去する。熱処理装置122dは、減圧乾燥装置122cで乾燥された塗布層を加熱処理する。温度調節装置122eは、熱処理装置122dで加熱処理された基板10の温度を、所定の温度、例えば常温に調節する。
【0048】
塗布装置122aおよびバッファ装置122bは、内部が大気雰囲気に維持される。一方、熱処理装置122dおよび温度調節装置122eは、正孔輸送層25の有機材料の劣化を抑制するため、内部が低酸素かつ低露点の雰囲気に維持される。減圧乾燥装置122cは、内部の雰囲気を、低酸素かつ低露点の雰囲気と、減圧雰囲気とに切り替える。
【0049】
ここで、低酸素の雰囲気とは、大気よりも酸素濃度が低い雰囲気、例えば酸素濃度が10ppm以下の雰囲気をいう。また、低露点の雰囲気とは、大気よりも露点温度が低い雰囲気、例えば露点温度が−10℃以下の雰囲気をいう。低酸素かつ低露点の雰囲気は、例えば窒素ガス等の不活性ガスで形成される。
【0050】
尚、正孔輸送層形成ブロック122において、塗布装置122a、バッファ装置122b、減圧乾燥装置122c、熱処理装置122dおよび温度調節装置122eの、配置や個数、内部の雰囲気は、任意に選択可能である。
【0051】
また、正孔輸送層形成ブロック122は、基板搬送装置CR4〜CR6と、受渡装置TR5〜TR6とを備える。基板搬送装置CR4〜CR6は、それぞれ隣接する各装置へ基板10を搬送する。受渡装置TR5〜TR6は、それぞれ順に、基板搬送装置CR4と基板搬送装置CR5の間、基板搬送装置CR5と基板搬送装置CR6の間に設けられ、これらの間で基板10を中継する。
【0052】
基板搬送装置CR4の内部は、大気雰囲気に維持される。一方、基板搬送装置CR5〜CR6の内部は、低酸素かつ低露点の雰囲気に維持される。基板搬送装置CR5に隣接される減圧乾燥装置122cの内部が、低酸素かつ低露点の雰囲気と、減圧雰囲気とに切り替えられるためである。また、基板搬送装置CR6に隣設される熱処理装置122dや温度調節装置122eの内部が、低酸素かつ低露点の雰囲気に維持されるためである。
【0053】
受渡装置TR5は、その内部の雰囲気を、大気雰囲気と、低酸素かつ低露点の雰囲気との間で切り替えるロードロック装置として構成される。受渡装置TR6の下流側に減圧乾燥装置122cが隣設されるためである。一方、受渡装置TR6の内部は、低酸素かつ低露点の雰囲気に維持される。
【0054】
正孔輸送層形成ブロック122の基板搬送装置CR6と、発光層形成ブロック123の基板搬送装置CR7との間には、これらの間で基板10を中継する受渡装置TR7が設けられる。基板搬送装置CR6の内部は低酸素かつ低露点の雰囲気に維持され、基板搬送装置CR7の内部は大気雰囲気に維持される。そのため、受渡装置TR7は、その内部の雰囲気を、低酸素かつ低露点の雰囲気と、大気雰囲気との間で切り替えるロードロック装置として構成される。
【0055】
発光層形成ブロック123は、発光層26の材料液を正孔輸送層25上に塗布して塗布層を形成し、形成した塗布層を乾燥、焼成することで、発光層26を形成する。発光層26の材料液は、有機材料および溶剤を含む。その有機材料は、ポリマー、モノマーのいずれでもよい。モノマーの場合、焼成によって重合され、ポリマーとされてもよい。
【0056】
発光層形成ブロック123は、塗布装置123aと、バッファ装置123bと、減圧乾燥装置123cと、熱処理装置123dと、温度調節装置123eとを備える。塗布装置123aは、発光層26の材料液の液滴を、バンク30の開口部31に向けて吐出する。バッファ装置123bは、処理待ちの基板10を一時的に収容する。減圧乾燥装置123cは、塗布装置123aで塗布された塗布層を減圧乾燥し、塗布層に含まれる溶剤を除去する。熱処理装置123dは、減圧乾燥装置123cで乾燥された塗布層を加熱処理する。温度調節装置123eは、熱処理装置123dで加熱処理された基板10の温度を、所定の温度、例えば常温に調節する。
【0057】
塗布装置123aおよびバッファ装置123bは、内部が大気雰囲気に維持される。一方、熱処理装置123dおよび温度調節装置123eは、発光層26の有機材料の劣化を抑制するため、内部が低酸素かつ低露点の雰囲気に維持される。減圧乾燥装置123cは、内部の雰囲気を、低酸素かつ低露点の雰囲気と、減圧雰囲気とに切り替える。
【0058】
尚、発光層形成ブロック123において、塗布装置123a、バッファ装置123b、減圧乾燥装置123c、熱処理装置123dおよび温度調節装置123eの、配置や個数、内部の雰囲気は、任意に選択可能である。
【0059】
また、発光層形成ブロック123は、基板搬送装置CR7〜CR9と、受渡装置TR8〜TR9とを備える。基板搬送装置CR7〜CR9は、それぞれ隣接する各装置へ基板10を搬送する。受渡装置TR8〜TR9は、それぞれ順に、基板搬送装置CR7と基板搬送装置CR8の間、基板搬送装置CR8と基板搬送装置CR9の間に設けられ、これらの間で基板10を中継する。
【0060】
基板搬送装置CR7の内部は、大気雰囲気に維持される。一方、基板搬送装置CR8〜CR9の内部は、低酸素かつ低露点の雰囲気に維持される。基板搬送装置CR8に隣接される減圧乾燥装置123cの内部が、低酸素かつ低露点の雰囲気と、減圧雰囲気とに切り替えられるためである。また、基板搬送装置CR9に隣設される熱処理装置123dや温度調節装置123eの内部が、低酸素かつ低露点の雰囲気に維持されるためである。
【0061】
受渡装置TR8は、その内部の雰囲気を、大気雰囲気と、低酸素かつ低露点の雰囲気との間で切り替えるロードロック装置として構成される。受渡装置TR8の下流側に減圧乾燥装置123cが隣設されるためである。受渡装置TR9の内部は、低酸素かつ低露点の雰囲気に維持される。
【0062】
発光層形成ブロック123の基板搬送装置CR9と、搬出ステーション130との間には、これらの間で基板10を中継する受渡装置TR10が設けられる。基板搬送装置CR9の内部は低酸素かつ低露点の雰囲気に維持され、搬出ステーション130の内部は大気雰囲気に維持される。そのため、受渡装置TR7は、その内部の雰囲気を、低酸素かつ低露点の雰囲気と、大気雰囲気との間で切り替えるロードロック装置として構成される。
【0063】
搬出ステーション130は、複数の基板10を順次カセットCに収納し、カセットCを外部に搬出させる。搬出ステーション130は、カセットCを載置するカセット載置台131と、カセット載置台131と処理ステーション120との間に設けられる搬送路132と、搬送路132に設けられる基板搬送体133とを備える。基板搬送体133は、処理ステーション120と、カセット載置台131に載置されたカセットCとの間で基板10を搬送する。
【0064】
制御装置140は、CPU(Central Processing Unit)141と、メモリなどの記憶媒体142とを含むコンピュータで構成され、記憶媒体142に記憶されたプログラム(レシピとも呼ばれる)をCPU141に実行させることにより各種処理を実現させる。
【0065】
制御装置140のプログラムは、情報記憶媒体に記憶され、情報記憶媒体からインストールされる。情報記憶媒体としては、例えば、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどが挙げられる。尚、プログラムは、インターネットを介してサーバからダウンロードされ、インストールされてもよい。
【0066】
次に、上記構成の基板処理システム100を用いた基板処理方法について説明する。複数の基板10を収容したカセットCがカセット載置台111上に載置されると、基板搬送体113が、カセット載置台111上のカセットCから基板10を順次取り出し、正孔注入層形成ブロック121に搬送する。
【0067】
正孔注入層形成ブロック121は、正孔注入層24の材料液を陽極21上に塗布して塗布層を形成し、形成した塗布層を乾燥、焼成することで、正孔注入層24を形成する。正孔注入層24が形成された基板10は、受渡装置TR4によって、正孔注入層形成ブロック121から正孔輸送層形成ブロック122に受け渡される。
【0068】
正孔輸送層形成ブロック122は、正孔輸送層25の材料液を正孔注入層24上に塗布して塗布層を形成し、形成した塗布層を乾燥、焼成することで、正孔輸送層25を形成する。正孔輸送層25が形成された基板10は、受渡装置TR7によって、正孔輸送層形成ブロック122から発光層形成ブロック123に受け渡される。
【0069】
発光層形成ブロック123は、発光層26の材料液を正孔輸送層25上に塗布して塗布層を形成し、形成した塗布層を乾燥、焼成することで、発光層26を形成する。発光層26が形成された基板10は、受渡装置TR10によって、発光層形成ブロック123から搬出ステーション130に受け渡される。
【0070】
搬出ステーション130の基板搬送体133は、受渡装置TR10から受取った基板10を、カセット載置台131上の所定のカセットCに収める。これにより、基板処理システム100における一連の基板10の処理が終了する。
【0071】
基板10は、カセットCに収められた状態で、搬出ステーション130から外部に搬出される。外部に搬出された基板10には、電子輸送層27や電子注入層28、陰極22などが形成される。
【0072】
<塗布装置および塗布方法>
次に、発光層形成ブロック123の塗布装置123aについて、図7図8を参照して説明する。図7は、一実施形態による塗布装置を示す平面図である。図8は、一実施形態による塗布装置を示す側面図である。以下の図面において、X方向は主走査方向、Y方向は副走査方向、Z方向は鉛直方向である。X方向およびY方向は、互いに直交する水平方向である。尚、X方向とY方向とは、交差していればよく、直交していなくてもよい。
【0073】
塗布装置123aは、基板10における機能液(例えば発光層26の材料液)の液滴の着弾位置をX方向およびY方向に移動させて、基板10に機能液の描画パターンを描く。塗布装置123aは、例えば、基板10を保持する基板保持部150と、基板保持部150で保持されている基板10に機能液の液滴を吐出する液滴吐出部160と、X方向およびY方向に基板保持部150と液滴吐出部160とを相対的に移動させる移動部170とを備える。また、塗布装置123aは、液滴吐出部160の機能を維持するための処理を行うメンテナンス部180とを備える。
【0074】
基板保持部150は、基板10の液滴を塗布する塗布面を上に向けて、基板10を保持する。基板保持部150としては、例えば真空チャックが用いられるが、静電チャックなどが用いられてもよい。
【0075】
液滴吐出部160は、基板保持部150で保持されている基板10に向けて機能液の液滴を吐出する。液滴吐出部160は、Y方向に複数(例えば図7では10個)並んでいる。複数の液滴吐出部160は、独立にY方向に移動されてもよいし、一体にY方向に移動されてもよい。
【0076】
各液滴吐出部160は、複数の吐出ヘッド161(図8参照)を有する。各吐出ヘッド161は、その下面に、Y方向に並ぶ複数の吐出ノズルからなる吐出ノズル列を有する。各吐出ヘッド161は、その下面に、複数の吐出ノズル列を有してもよい。
【0077】
各吐出ヘッド161は、吐出ノズルごとにピエゾ素子を有する。ピエゾ素子に電圧をかけると、ピエゾ素子が変形して吐出ノズルから液滴が吐出される。ピエゾ素子の代わりに、ヒータなどが用いられてもよい。ヒータに電圧をかけると、バブルが発生し、発生したバブルの圧力によって吐出ノズルから液滴が吐出される。
【0078】
各液滴吐出部160は、複数種類の機能液を吐出するものであってよい。複数種類の機能液としては、例えば、赤色発光層の材料液、緑色発光層の材料液、および青色発光層の材料液などが挙げられる。同一の吐出ヘッド161に設けられる複数の吐出ノズルは、同一の種類の機能液の液滴を吐出する。
【0079】
図9は、一実施形態による吐出ヘッドの配列などを示す平面図である。各液滴吐出部160は、Y方向に並ぶ2つの吐出ヘッド列162を有する。各吐出ヘッド列162は、X方向に階段状に並ぶ6つの吐出ヘッド161で構成される。各吐出ヘッド列162は、赤色発光層の材料液の液滴を吐出する吐出ヘッド161R、緑色発光層の材料液の液滴を吐出する吐出ヘッド161G、および青色発光層の材料液の液滴を吐出する吐出ヘッド161Bを、それぞれ2つずつ有する。
【0080】
移動部170(図7参照)は、X方向およびY方向に基板保持部150と液滴吐出部160とを相対的に移動させる。
【0081】
例えば、移動部170は、ベース171に対し基板保持部150をX方向に移動させるX方向移動部172を有する。X方向移動部172は、例えば、ベース171に敷設される一対のX軸ガイド173と、一対のX軸ガイド173に沿って基板保持部150を移動させる一対のX軸リニアモータとを有する。
【0082】
また、移動部170は、ベース171に対し基板保持部150をY方向に移動させる第1のY方向移動部174(図8参照)と、基板保持部150の中心部を通る鉛直線を中心に基板保持部150を回転させるθ方向移動部175(図8参照)とを有する。
【0083】
また、移動部170は、ベース171に対し液滴吐出部160をY方向に移動させる第2のY方向移動部176を有する。第2のY方向移動部176は、例えば、ベース171の上方に架け渡される一対のY軸ビーム177と、一対のY軸ビーム177上に敷設される一対のY軸ガイド178と、一対のY軸ガイド178に沿って液滴吐出部160を移動させる一対のY軸リニアモータとを有する。
【0084】
第2のY方向移動部176は、液滴吐出部160を、基板保持部150に保持されている基板10に機能液の液滴を吐出する位置と、メンテナンス部180による機能維持のための処理を受け付ける位置との間で移動させる。
【0085】
メンテナンス部180は、液滴吐出部160の機能を維持する処理を行い、液滴吐出部160の吐出不良を解消する。メンテナンス部180は、吐出ノズルの吐出口の周囲を払拭するワイピングユニット181と、吐出ノズルの吐出口から液滴を吸引する吸引ユニット182とを有する。吸引ユニット182は、休止状態の吐出ノズルの吐出口を塞ぎ、乾燥による目詰まりを抑制する役割をも果たす。
【0086】
次に、上記構成の塗布装置123aを用いた塗布方法について説明する。塗布装置123aの下記の動作は、制御装置140によって制御される。制御装置140は、図6では塗布装置123aとは別に設けられるが、塗布装置123aの一部として設けられてもよい。
【0087】
先ず、ロボット(不図示)が塗布装置123aの外部から塗布装置123aの内部に基板10を搬入すると、塗布装置123aは基板保持部150の上面からリフトピンを突出させてリフトピンで基板10をロボットから受け取る。その後、塗布装置123aは、リフトピンを下降させ、基板保持部150の上面で基板10を保持する。
【0088】
続いて、移動部170は、基板保持部150で保持されている基板10のアライメントマークを撮像した画像に基づき、基板10の位置補正を行う。基板10の位置補正は、基板保持部150をZ軸の周りに回動させること、基板保持部150をX方向やY方向へ平行移動させることなどにより行われる。
【0089】
その後、移動部170は、基板保持部150で保持されている基板10をX方向に移動させることにより、液滴吐出部160の下を通過させる。基板10が液滴吐出部160の下を通過する間、液滴吐出部160は基板10に向けて液滴を吐出する。
【0090】
続いて、移動部170は、基板保持部150で保持されている基板10をY方向に移動させる。基板10をY方向に移動させるのは、例えば図9に示すように、同じ種類の機能液を吐出する複数の吐出ヘッド161同士の間に隙間ΔYが存在しているためである。基板10をY方向に移動させることで、基板10のY方向全体に特定の種類の機能液の液滴を着弾させることが可能になる。また、液滴吐出部160ではなく基板10をY方向に移動させるのは、液滴吐出部160の内部に収容される機能液の揺れを防止するためである。
【0091】
その後、再び、移動部170は、基板保持部150で保持されている基板10をX方向に移動させて、液滴吐出部160の下を通過させる。基板10が液滴吐出部160の下を通過する間、液滴吐出部160は基板10に向けて液滴を吐出する。
【0092】
このように、塗布装置123aは、移動部170による基板10のX方向移動および液滴吐出部160による液滴の滴下と、移動部170による基板10のY方向移動とを交互に繰り返すことで、基板10に機能液の描画パターンを描く。
【0093】
描画終了後、塗布装置123aは、基板保持部150による基板10の保持を解除し、リフトピンで基板保持部150から基板10を持ち上げ、ロボットに受け渡す。その後、ロボットが基板10を塗布装置123aの内部から塗布装置123aの外部に搬出する。
【0094】
その後、ロボットが次の基板10を塗布装置123aの外部から塗布装置123aの内部に搬入し、塗布装置123aが基板10に機能液の描画パターンを描き、ロボットが基板10を塗布装置123aの内部から塗布装置123aの外部に搬出することが繰り返し行われる。
【0095】
尚、メンテナンス部180によって液滴吐出部160の機能を維持する処理は、基板10の入れ換えの合間などに、適宜行われる。
【0096】
尚、上記構成の移動部170は、基板10上に所定のパターンを描画するため、基板保持部150を移動させるが、液滴吐出部160を移動させてもよいし、基板保持部150と液滴吐出部160の両方を移動させてもよい。
【0097】
<質量測定部>
塗布装置123aは、図7図8に示すように、液滴吐出部160の吐出量の測定に用いられる質量測定部190を有する。図8において、液滴吐出部160によって吐出される機能液の液滴をカップ191で受ける時の質量測定部190の位置を破線で示し、カップ191の内部に溜まる機能液の質量を測定する時の質量測定部190の位置を二点鎖線で示し、カップ191の内部に溜まる機能液をカップ191から排出する時の質量測定部190の位置を実線で示す。
【0098】
質量測定部190は、吐出ヘッド列162(図9参照)ごとに設けられ、吐出ヘッド列162を構成する複数(例えば6個)の吐出ヘッド161を1つずつ順番に測定する。尚、各吐出ヘッド161が吐出ノズル列を複数有する場合、吐出ノズル列単位で、吐出量測定が行われてもよい。
【0099】
質量測定部190は、Y方向に複数(例えば図7では20個)並んでいる。Y方向に並ぶ複数の質量測定部190は、一体化されており、一対のX軸ガイド173に沿って移動自在とされる。一対のX軸ガイド173は、質量測定部190と基板保持部150とに共通のガイドである。質量測定部190と基板保持部150とは、独立にX方向に移動されてもよいし、一体にX方向に移動されてもよい。
【0100】
各質量測定部190は、吐出ヘッド161によって吐出される機能液の液滴を受けるカップ191と、カップ191の内部に溜まる機能液の質量を測定する質量測定器192とを有する。カップ191は、上方に開放されており、上方から落下する液滴を内部に溜める。カップ191の開口部には、上方から落下する液滴の跳ね返りを防止するため、樹脂製の多孔質体193(図10図11参照)が設けられている。質量測定器192としては、例えば電子天秤などが用いられる。
【0101】
カップ191が液滴吐出部160によって吐出される機能液の液滴を受ける時には、図8に破線で示すように質量測定部190は液滴吐出部160の下方に移動させられる。カップ191は、吐出量測定対象である1つの吐出ヘッド161から液滴を受ける。カップ191のX方向両側には、残りの吐出量測定対象外の吐出ヘッド161からの捨て吐出を受けるフラッシングボックス194、195が設けられてよい。これらのフラッシングボックス194、195は、吐出量測定時以外の時に、吐出ヘッド161からの捨て吐出を受けてもよい。
【0102】
一方、質量測定器192がカップ191の内部に溜まる機能液の質量を測定する時には、図8に二点鎖線で示すように質量測定部190は風防部材198の下方に移動させられる。風防部材198は、塗布装置123aの内部に形成されるダウンフローなどが質量測定部190に当たるのを防止する。これにより、正確に質量を測定することができる。
【0103】
質量測定器192は、その測定結果を制御装置140に送信する。制御装置140は、質量測定器192の測定結果から、吐出ヘッド161の吐出量を測定し、測定した吐出量に基づいて吐出ヘッド161の駆動電圧を調整する。吐出量測定および駆動電圧調整は、描画前に行われてもよいし、定期的に行われてもよい。以下、吐出量測定および駆動電圧調整のための塗布装置123aの動作について説明する。塗布装置123aの下記の動作は、制御装置140による制御下で行われる。
【0104】
先ず、X方向移動部172が、各質量測定部190の各カップ191を、各吐出ヘッド列162の1番目の吐出ヘッド161の真下に移動させる。続いて1番目の吐出ヘッド161は、その全ての吐出ノズルから液滴を吐出する。その後、X方向移動部172が各カップ191を風防部材198の真下に移動させる。この状態で、各質量測定器192が1番目の吐出ヘッド161の吐出量を測定する。
【0105】
1番目の吐出ヘッド161の吐出量が目標範囲内の場合には、制御装置140は1番目の吐出ヘッド161の駆動電圧を補正しない。一方、1番目の吐出ヘッド161の吐出量が目標範囲外の場合には、1番目の吐出ヘッド161の駆動電圧を補正し、補正後の駆動電圧で吐出を再度行い、吐出量測定を再度行う。吐出量測定および駆動電圧補正は、吐出量の測定結果が目標範囲内になるまで、繰り返し行なわれる。
【0106】
尚、各質量測定部190は、上述の如く吐出ノズル列単位で吐出量測定を行ってもよい。その場合、1番目の吐出ヘッド161は吐出ノズル列単位で液滴を吐出し、各質量測定器192は吐出ノズル列単位で吐出量を測定し、制御装置140は吐出ノズル列単位で駆動電圧の補正を行う。
【0107】
その後、X方向移動部172が、各質量測定部190の各カップ191を、各吐出ヘッド列162の2番目の吐出ヘッド161の真下に移動させる。以下、同様にして、2番目の吐出ヘッド161の吐出量測定および駆動電圧調整が行われる。3番目〜6番目の吐出ヘッド161の吐出量測定および駆動電圧調整について同様である。
【0108】
各吐出ヘッド列162は、赤色発光層の材料液の液滴を吐出する吐出ヘッド161R、緑色発光層の材料液の液滴を吐出する吐出ヘッド161G、および青色発光層の材料液の液滴を吐出する吐出ヘッド161Rを含む。そのため、各カップ191は、複数種類の機能液を混ぜて溜める。
【0109】
<排液部>
塗布装置123aは、図7図8に示すように、カップ191の内部に溜まる機能液をカップ191から排出する排液部200を有する。以下、排液部200によるカップ191からの機能液の排出を「排液処理」とも呼ぶ。
【0110】
本実施形態によれば、排液部200が排液処理を行うため、従来必要であったカップ191を交換する手作業が不要になる。そのため、カップ191の交換作業時に誤って荷重を質量測定器192にかけることがなくなるので、質量測定器192の破損を防止できる。
【0111】
また、本実施形態によれば、カップ191を質量測定器192にねじ等で強固に結合できるので、カップ191と質量測定器192との結合不足による振動を抑制でき、正確に質量を測定できる。尚、従来は、ねじの代わりに、板バネなどでカップ191を質量測定器192に取外し可能に結合していたため、塗布装置123aの内部に形成されるダウンフローなどによって振動が生じやすかった。
【0112】
さらに、本実施形態によれば、カップ191の交換作業用のスペースが不要になる分、カップ191の容量を増やすことができ、排液処理の頻度を下げることができる。これにより、排液処理のために描画処理を停止させる時間を短縮でき、塗布装置123aの稼働率を向上できる。尚、詳しくは後述するが、排液処理は、メンテナンス処理中に行われてもよい。メンテナンス処理とは、メンテナンス部180による液滴吐出部160の機能を維持する処理のことである。
【0113】
さらにまた、本実施形態によれば、カップ191の交換作業の度に、吐出ヘッド161とカップ191との衝突を回避すべく、カップ191の位置を確認する必要がなくなる。よって、カップ191の位置を確認する位置センサなどが不要になる。また、その位置センサの故障による吐出ヘッド161とカップ191との衝突を回避できる。
【0114】
排液部200は、例えば、カップ191の内部に差し込まれカップ191の内部に溜まる機能液を吸引する吸引ノズル201と、吸引ノズル201を昇降させる昇降機構202とを有する。カップ191の代わりに吸引ノズル201に排液用の配管203を接続でき、カップ191の移動を考慮せずに配管203を設計できる。尚、カップ191に配管203を接続することも可能である。
【0115】
吸引ノズル201は、配管203を介してタンク204と接続されている。配管203の途中には、吸引ポンプ205が設けられている。制御装置140が吸引ポンプ205を作動させると、吸引ノズル201がカップ191の内部に溜まる機能液を吸引し、タンク204に機能液が回収される。
【0116】
昇降機構202は、例えば空気圧シリンダで構成される。昇降機構202は、サーボモータと、サーボモータの回転運動を吸引ノズル201の直線運動に変換する運動変換機構とで構成されてもよい。運動変換機構としては、例えばボールねじなどが用いられる。
【0117】
X方向移動部172が質量測定部190を図8に実線で示す位置とその他の位置(例えば図8に破線で示す位置または図8に二点鎖線で示す位置)との間で移動させるとき、昇降機構202は吸引ノズル201をカップ191の内部から上方に退避させる。
【0118】
排液部200は、例えば、ベース171のX方向一端部の上方においてY方向に延びるビーム210に設けられる。排液部200が設けられるビーム210をY軸ビーム177から離すことで、排液部200の振動が液滴吐出部160に伝達することを抑制でき、描画精度を向上できる。
【0119】
排液部200は、吸引ノズル201をベース171に対しY方向にスライドさせるスライド機構206をさらに有してもよい。排液部200がビーム210に設けられる場合、スライド機構206はビーム210に沿って吸引ノズル201をスライドさせる。
【0120】
スライド機構206は、例えば、サーボモータと、サーボモータの回転運動を吸引ノズル201の直線運動に変換する運動変換機構とを有してよい。運動変換機構としては、ラックアンドピニオン機構、タイミングベルト・プーリ機構などが用いられる。
【0121】
スライド機構206が吸引ノズル201をY方向にスライドさせることで、吸引ノズル201はY方向に並ぶ複数のカップ191から順番に機能液を吸引できる。よって、吸引ノズル201をY方向にスライドさせない場合に比べて、吸引ノズル201の本数を低減できる。
【0122】
各カップ191は複数種類の機能液を混ぜて溜め、吸引ノズル201は複数種類の機能液を混ぜて溜めたものを吸引する。各カップ191が複数種類の機能液を機能液の種類ごとに分けて溜め、機能液の種類ごとに吸引ノズル201が設けられる場合に比べて、吸引ノズル201の本数を低減できる。
【0123】
排液部200による排液処理は、例えばメンテナンス部180によるメンテナンス処理の間に行われる。メンテナンス処理の間、塗布装置123aは基板10に機能液を描画しないため、描画処理の途中や描画処理の直前に、排液処理を行う場合に比べて、塗布装置123aの稼働率の低下を防止できる。以下、塗布装置123aの排液処理について説明する。塗布装置123aの下記の動作は、制御装置140による制御下で行われる。
【0124】
先ず、X方向移動部172が、Y方向に並ぶ複数の質量測定部190をビーム210の直下に移動させる。続いて、スライド機構206が1番目の質量測定部190のカップ191の真上まで吸引ノズル201を移動させ、昇降機構202が吸引ノズル201を1番目のカップ191の内部に差し込む。吸引ノズル201は、図11に示すように、カップ191や多孔質体193と接触しないように、カップ191の内部に差し込まれる。次いで、制御装置140が吸引ポンプ205を作動させると、吸引ノズル201が1番目のカップ191の内部に溜まる機能液を吸引し、タンク204に機能液が回収される。
【0125】
その後、昇降機構202が、吸引ノズル201を、1番目のカップ191の内部から上方に引き抜く。続いて、スライド機構206が2番目の質量測定部190のカップ191の真上まで吸引ノズル201を移動させ、昇降機構202が吸引ノズル201を2番目のカップ191の内部に差し込む。以下、同様にして、2番目のカップ191から機能液が排出される。3番目以降のカップ191からの機能液の排出について同様である。
【0126】
制御装置140は、質量測定器192の測定結果に基づいて、排液処理のタイミングを設定してもよい。排液処理のタイミングは、カップ191の内部における機能液の液面の高さを所定値以下に維持できるように設定され、稼働率の低下を防止できるように設定される。カップ191の内部における機能液の液面の高さは、機能液の質量、機能液の密度、カップ191の底面積などから算出できる。
【0127】
排液処理の後から、次の排液処理の前までの間、吸引ノズル201の下端部は待機バスに差し込まれてよい。待機バスは、例えばビーム210のY方向一端部の下方に設置される。待機バスは、吸引ノズル201の内部に残留する機能液の乾燥を抑制するため、吸引ノズル201の内部を溶剤の蒸気雰囲気で保持する。
【0128】
<まとめ>
以上説明したように、本実施形態によれば、塗布装置123aは、液滴吐出部160によって吐出される液滴を受けるカップ191と、カップ191の内部に溜まる機能液の質量を測定する質量測定器192と、カップ191の内部に溜まる機能液をカップ191から排出する排液部200とを備える。よって、下記(1)〜(4)の効果が得られる。
【0129】
(1)排液部200が排液処理を行うため、従来必要であったカップ191を交換する手作業が不要になる。そのため、カップ191の交換作業時に誤って荷重を質量測定器192にかけることがなくなるので、質量測定器192の破損を防止できる。
【0130】
(2)カップ191を質量測定器192にねじ等で強固に結合できるので、カップ191と質量測定器192との結合不足による振動を抑制でき、正確に質量を測定できる。尚、従来は、ねじの代わりに、板バネなどでカップ191を質量測定器192に取外し可能に結合していたため、塗布装置123aの内部に形成されるダウンフローなどによって振動が生じやすかった。
【0131】
(3)カップ191の交換作業用のスペースが不要になる分、カップ191の容量を増やすことができ、排液処理の頻度を下げることができる。これにより、排液処理のために描画処理を停止させる時間を短縮でき、塗布装置123aの稼働率を向上できる。
【0132】
(4)カップ191の交換作業の度に、吐出ヘッド161とカップ191との衝突を回避すべく、カップ191の位置を確認する必要がなくなる。よって、カップ191の位置を確認する位置センサなどが不要になる。また、その位置センサの故障による吐出ヘッド161とカップ191との衝突を回避できる。
【0133】
本実施形態によれば、排液部200は、カップ191の内部に差し込まれカップ191の内部に溜まる機能液を吸引する吸引ノズル201と、吸引ノズル201を昇降させる昇降機構202とを有する。よって、カップ191の代わりに吸引ノズル201に排液用の配管203を接続でき、カップ191の移動を考慮せずに配管203を設計できる。尚、カップ191に配管203を接続することも可能である。
【0134】
本実施形態によれば、移動部170は、基板保持部150および質量測定部190をベース171に対しX方向に移動させるX方向移動部172を有する。X方向移動部172が基板保持部150のX方向の移動と質量測定部190のX方向の移動とを両方行うので、X軸ガイド173などの部品を共通化でき、塗布装置123aの製造コストを削減できる。
【0135】
本実施形態によれば、塗布装置123aはベース171のX方向一端部の上方においてY方向に延びるビーム210をさらに備え、排液部200はビーム210に設けられる。排液部200が設けられるビーム210をY軸ビーム177から離すことで、排液部200の振動が液滴吐出部160に伝達することを抑制でき、描画精度を向上できる。
【0136】
本実施形態によれば、排液部200は、吸引ノズル201をベース171に対しY方向にスライドさせるスライド機構206をさらに有する。排液部200がビーム210に設けられる場合、スライド機構206はビーム210に沿って吸引ノズル201をスライドさせる。吸引ノズル201はY方向に並ぶ複数のカップ191から順番に機能液を吸引できる。よって、吸引ノズル201をY方向にスライドさせない場合に比べて、吸引ノズル201の本数を低減できる。
【0137】
本実施形態によれば、液滴吐出部160は複数種類の機能液の液滴を吐出し、カップ191は複数種類の機能液を混ぜて溜め、吸引ノズル201は複数種類の機能液を混ぜて溜めたものを吸引する。各カップ191が複数種類の機能液を機能液の種類ごとに分けて溜め、機能液の種類ごとに吸引ノズル201が設けられる場合に比べて、吸引ノズル201の本数を低減できる。
【0138】
<変形、改良>
以上、塗布装置などの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0139】
上記実施形態では、液滴吐出部160は複数種類の機能液の液滴を吐出し、カップ191は複数種類の機能液を混ぜて溜め、吸引ノズル201は複数種類の機能液を混ぜて溜めたものを吸引するが、本発明はこれに限定されない。図12に示すように、カップ191は複数設けられ複数種類の機能液を機能液の種類ごとに分けて溜め、吸引ノズル201は複数設けられそれぞれ予め定められた一種類の機能液を吸引してもよい。例えば、赤色発光層の材料液を溜めるカップ191と、緑色発光層の材料液を溜めるカップ191と、青色発光層の材料液を溜めるカップ191とが別々に設けられる。そうして、赤色発光層の材料液を吸引する吸引ノズル201と、緑色発光層の材料液を吸引する吸引ノズル201と、青色発光層の材料液を吸引する吸引ノズル201とが別々に設けられる。複数の機能液が混ざることで、ゲル化や固化などが生じる場合に有効である。
【0140】
上記実施形態の排液部200は、図8に示すようにビーム210に設けられるが、図13に示すようにY軸ビーム177に設けられてもよい。排液部200がY軸ビーム177に設けられる場合、専用のビーム210が不要になる。排液部200がY軸ビーム177に設けれられる場合、スライド機構206はY軸ビーム177に沿って吸引ノズル201をスライドさせる。
【0141】
上記実施形態では、本発明を発光層形成ブロック123の塗布装置123aに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明の塗布装置は、基板に機能液の描画パターンを描くものであればよい。例えば、本発明は、正孔注入層形成ブロック121の塗布装置121aや正孔輸送層形成ブロック122の塗布装置122aにも適用可能である。また、正孔輸送層形成ブロック122の塗布装置122aは、複数種類の発光層26に対応する複数種類の正孔輸送層25を形成してもよい。発光層26と正孔輸送層25との相性を向上できる。同様に、正孔注入層形成ブロック121の塗布装置121aは、複数種類の発光層26に対応する複数種類の正孔注入層24を形成してもよい。発光層26と正孔注入層24との相性を向上できる。
【0142】
上記実施形態では、発光層26の種類は、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層の3つであるが、本発明はこれに限定されない。例えば、これらの3つの発光層に加えて、赤色と緑色の中間色である黄色に発光する黄色発光材料を含む黄色発光層、および/または、緑色と青色の中間色であるシアン色に発光するシアン色発光材料を含む発光層などが用いられてもよい。発光色の組合せの数が大きいほど、表示できる色座標の範囲が広がる。
【0143】
例えば、有機ELディスプレイは、上記実施形態では発光層26からの光を基板10側から取り出すボトムエミッション方式であるが、発光層26からの光を基板10とは反対側から取り出すトップエミッション方式でもよい。
【0144】
トップエミッション方式の場合、基板10は、透明基板ではなくてもよく、不透明基板であってもよい。発光層26からの光は、基板10とは反対側から取り出されるためである。
【0145】
トップエミッション方式の場合、透明電極である陽極21が対向電極として用いられ、陰極22が単位回路11毎に設けられる画素電極として用いられる。この場合、陽極21と陰極22の配置が逆になるので、陰極22上に、電子注入層28、電子輸送層27、発光層26、正孔輸送層25および正孔注入層24が、この順で形成される。
【0146】
有機層23は、上記実施形態では、陽極21側から陰極22側に向けて、正孔注入層24、正孔輸送層25、発光層26、電子輸送層27、電子注入層28をこの順で有するが、少なくとも発光層26を有していればよい。有機層23は、図2に示す構成には限定されない。
【符号の説明】
【0147】
10 基板
13 有機発光ダイオード
100 基板処理システム
123a 塗布装置
140 制御装置
150 基板保持部
160 液滴吐出部
170 移動部
171 ベース
172 X方向移動部(主走査方向移動部)
173 X軸ガイド
174 第1のY方向移動部
175 θ方向移動部
176 第2のY方向移動部(副走査方向移動部)
177 Y軸ビーム(ガイドビーム)
178 Y軸ガイド(ガイド)
180 メンテナンス部
190 質量測定部
200 排液部
201 吸引ノズル
202 昇降機構
203 配管
204 タンク
205 吸引ポンプ
206 スライド機構
210 ビーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13