【実施例】
【0068】
(実施例1)
実施例1として、触媒金属元素として鉄を用い、助触媒金属元素としてイリジウムを用い、合金化補助物質としてクエン酸及びポリビニルアルコール(PVA)を用いて、CNT集合体製造用触媒基材を作製した。まず、基材としてシリコンウエハ(縦40mm×横40mm)を準備し、シリコンエハの表面に酸化シリコン(SiO
2)膜を500nm形成した。触媒を配置する基材の面のSiO
2膜上にアルミナをスパッタリング法により堆積させ、40nm以上の下地層を形成した。下地層を形成した基材をアセントで超音波洗浄した後に、イソプロピルアルコール(IPA)で更に超音波洗浄した。その後、触媒前駆体層の塗工性を向上させるため、下地層をO
2プラズマで処理した。
【0069】
70mM FeCl
3、10mM イリジウム(Ir)、80mM クエン酸及び1wt% PVAを含む塗布溶液を調製した。基材の下地層を形成した面に塗布溶液をスピンコート法により塗布した。その後、基材を200℃で1分間加熱して、塗布溶液を乾燥させることにより、膜厚10μmの触媒前駆体層を形成し、CNT集合体製造用触媒基材を作製した。
【0070】
CNT集合体製造用触媒基材を合成炉に搬入し、Heを500sccm供給しながら、750℃で6分間加熱して、触媒金属元素と助触媒金属元素とを合金化及び微粒子化して、金属触媒微粒子を形成した。
【0071】
合成炉にHeを500sccm、20% アセチレン(C
2H
2)(ヘリウムで20%に希釈したアセチレンを100sccm導入)を10sccm、触媒賦活物質として、窒素でバブリングした水を50sccm導入し、CNT集合体を合成した。
【0072】
また、金属触媒微粒子を形成した段階で基材を合成炉から取り出し、基材の表面に形成された金属触媒微粒子を原子間力顕微鏡(AFM)により観察した像を
図3(A)に示す。粒子径が5nm、個数密度が2×10
11個/cm
2の金属触媒微粒子が形成されているのが確認できた。
【0073】
合成されたCNT集合体のラマンスペクトルを
図3(B)に示す。ラマンスペクトルは、ラマン分光測定装置(サーモエレクトロン社)を使用して、532nmの励起波長を用いた。実施例1のCNT集合体は、1560cm
−1以上1600cm
−1以下の範囲内での最大のピーク強度をG、1310cm
−1以上1350cm
−1以下の範囲内での最大のピーク強度をDとしたときに、G/D比が2.0であった。また、CNT集合体の収量は、0.621mg/cm
2、CNT集合体の高さの平均は、345μmであった。
【0074】
(実施例2)
実施例2として、70mM FeCl
3、18mM イリジウム、88mM クエン酸及び1wt% PVAを含む塗布溶液を調製したこと以外は実施例1と同様にCNT集合体製造用触媒基材を作製した。なお、形成した触媒前駆体層の膜厚は10μmであった。
【0075】
実施例1と同様の条件で、金属触媒微粒子を形成した。その後、実施例1と同様の条件で、CNT集合体を合成した。
【0076】
金属触媒微粒子を形成した段階で基材を合成炉から取り出し、CNT集合体製造用触媒基材に形成された金属触媒微粒子のAFM像を
図4(A)に示す。CNT集合体製造用触媒基材上に、粒子径が4nm、個数密度が3×10
11個/cm
2の金属触媒微粒子が形成されているのが確認できた。
【0077】
実施例1と同様の条件で測定した実施例2のCNT集合体のラマンスペクトルを
図4(B)に示す。実施例2のCNT集合体のG/D比は2.8であった。このことから、実施例2のCNT集合体は、グラファイト化度が高く、高品質であることが確認された。また、CNT集合体の収量は、0.489mg/cm
2、CNT集合体の高さの平均は、149μmであった。
【0078】
(実施例3)
実施例3として、70mM FeCl
3、10mM イリジウム及び1wt% PVAを含む塗布溶液を調製したこと以外は実施例1と同様にCNT集合体製造用触媒基材を作製した。なお、形成した触媒前駆体層の膜厚は10μmであった。
【0079】
実施例1と同様の条件で、金属触媒微粒子を形成した。その後、実施例1と同様の条件で、CNT集合体を合成した。
【0080】
金属触媒微粒子を形成した段階で基材を合成炉から取り出し、CNT集合体製造用触媒基材に形成された金属触媒微粒子のAFM像を
図5(A)に示す。CNT集合体製造用触媒基材上に、粒子径が4nm、個数密度が4×10
11個/cm
2の金属触媒微粒子が形成されているのが確認できた。
【0081】
実施例1と同様の条件で測定した実施例3のCNT集合体のラマンスペクトルを
図5(B)に示す。実施例3のCNT集合体のG/D比は2.3であった。このことから、実施例3のCNT集合体は、グラファイト化度が高く、高品質であることが確認された。また、CNT集合体の収量は、0.408mg/cm
2、CNT集合体の高さの平均は、92μmであった。
【0082】
(実施例4)
実施例4として、酸素存在下での金属触媒の微粒子化を行った。実施例4として、実施例2と同様にCNT集合体製造用触媒基材を作製した。
【0083】
実施例4のCNT集合体製造用触媒基材を合成炉に搬入し、酸素(O
2)を500sccm、窒素(N
2)を1500sccm供給しながら、750℃で5分間加熱して、触媒金属元素と助触媒金属元素とを合金化及び微粒子化して、金属触媒微粒子を形成した。
【0084】
その後、合成炉にHeを500sccm供給しながら、750℃で6分間加熱して、合成炉内から、O
2及びN
2を除去した。合成炉にHeを500sccm、20% アセチレン(C
2H
2)(ヘリウムで20%に希釈したアセチレンを100sccm導入)を10sccm、触媒賦活物質として、窒素でバブリングした水を50sccm導入し、CNT集合体を合成した。
【0085】
金属触媒微粒子を形成した段階で基材を合成炉から取り出し、CNT集合体製造用触媒基材に形成された金属触媒微粒子のAFM像を
図6(A)に示す。CNT集合体製造用触媒基材上に、粒子径が1.5nm、個数密度が7×10
11個/cm
2の金属触媒微粒子が形成されているのが確認できた。したがって、本実施例の結果から、本発明に係るCNT集合体製造用触媒基材は、酸素存在下においても金属触媒の微粒子化が可能であることが実証された。
【0086】
実施例1と同様の条件で測定した実施例4のCNT集合体のラマンスペクトルを
図6(B)に示す。実施例4のCNT集合体のG/D比は38.0であった。このことから、実施例4のCNT集合体は、グラファイト化度が高く、高品質であることが確認された。また、CNT集合体の収量は、0.009mg/cm
2、CNT集合体の高さの平均は、16μmであった。
【0087】
(実施例5)
実施例5として、70mM FeCl
3、7mM ルテニウム(Ru)、77mM クエン酸及び1wt% PVAを含む塗布溶液を調製したこと以外は実施例1と同様にCNT集合体製造用触媒基材を作製した。なお、形成した触媒前駆体層の膜厚は10μmであった。
【0088】
実施例1と同様の条件で、金属触媒微粒子を形成した。その後、実施例1と同様の条件で、CNT集合体を合成した。
【0089】
金属触媒微粒子を形成した段階で基材を合成炉から取り出し、CNT集合体製造用触媒基材に形成された金属触媒微粒子のAFM像を
図7(A)に示す。CNT集合体製造用触媒基材上に、粒子径が2nm、個数密度が2×10
11個/cm
2の金属触媒微粒子が形成されているのが確認できた。
【0090】
実施例1と同様の条件で測定した実施例5のCNT集合体のラマンスペクトルを
図7(B)に示す。実施例5のCNT集合体のG/D比は6.1であった。このことから、実施例5のCNT集合体は、グラファイト化度が高く、高品質であることが確認された。また、実施例5で製造したCNT集合体の走査型電子顕微鏡(SEM)像を
図8に示す。CNT集合体の収量は、0.694mg/cm
2、CNT集合体の高さの平均は、370μmであった。
【0091】
(実施例6)
実施例6として、70mM FeCl
3、10mM イリジウム、80mM クエン酸、及び1wt% グリセリンを含む塗布溶液を調製したこと以外は実施例1と同様にCNT集合体製造用触媒基材を作製した。なお、形成した触媒前駆体層の膜厚は約100nmであった。本実施例において、グリセリンは300℃以下の低温で蒸発することから、クエン酸のみが合金化補助物質として働いている。
【0092】
実施例1と同様の条件で、金属触媒微粒子を形成した。その後、実施例1と同様の条件で、CNT集合体を合成した。
【0093】
金属触媒微粒子を形成した段階で基材を合成炉から取り出し、CNT集合体製造用触媒基材に形成された金属触媒微粒子のAFM像を
図9(A)に示す。CNT集合体製造用触媒基材上に、粒子径が2nm、個数密度が6×10
10個/cm
2の金属触媒微粒子が形成されているのが確認できた。
【0094】
実施例1と同様の条件で測定した実施例6のCNT集合体のラマンスペクトルを
図9(B)に示す。実施例6のCNT集合体のG/D比は15.2であった。このことから、実施例6のCNT集合体は、グラファイト化度が高く、高品質であることが確認された。また、CNT集合体の収量は、0.142mg/cm
2、CNT集合体の高さの平均は、76μmであった。
【0095】
(比較例1)
比較例1として、助触媒金属元素を用いずに、CNT集合体製造用触媒基材を作製した。比較例1として、70mM FeCl
3、70mM クエン酸及び1wt% PVAを含む塗布溶液を調製したこと以外は実施例1と同様にCNT集合体製造用触媒基材を作製した。なお、形成した触媒前駆体層の膜厚は10μmであった。
【0096】
実施例1と同様の条件で、金属触媒微粒子を形成した。その後、実施例1と同様の条件で、CNT集合体を合成した。
【0097】
金属触媒微粒子を形成した段階で基材を合成炉から取り出し、CNT集合体製造用触媒基材に形成された金属触媒微粒子のAFM像を
図10(A)に示す。CNT集合体製造用触媒基材上に、粒子径が5nm、個数密度が1×10
11個/cm
2の金属触媒微粒子が形成されているのが確認できた。
【0098】
実施例1と同様の条件で測定した比較例1のCNT集合体のラマンスペクトルを
図10(B)に示す。比較例1のCNT集合体のG/D比は3.3であった。しかし、CNT集合体の収量は、0.029mg/cm
2、CNT集合体の高さの平均は、6μmとなり、実施例1に比してCNT合成量が著しく低下した。
【0099】
(比較例2)
比較例2として、触媒金属元素及び助触媒金属元素をスパッタリング法により成膜して、CNT集合体製造用触媒基材を作製した。触媒を配置する基材の面のSiO
2膜上にアルミナをスパッタリング法により堆積させ、40nm以上の下地層を形成し後に、鉄(Fe)をスパッタリング法により2.5nm堆積させた。さらに、Irをスパッタリング法により0.4nm堆積させた。
【0100】
実施例1と同様の条件で、金属触媒微粒子を形成した。その後、実施例1と同様の条件で、CNT集合体を合成した。
【0101】
金属触媒微粒子を形成した段階で基材を合成炉から取り出し、CNT集合体製造用触媒基材に形成された金属触媒微粒子のAFM像を
図11(A)に示す。CNT集合体製造用触媒基材上に、粒子径が0.9nm、個数密度が6×10
11個/cm
2の金属触媒微粒子が形成されているのが確認できた。
【0102】
実施例1と同様の条件で測定した比較例2のCNT集合体のラマンスペクトルを
図11(B)に示す。比較例2のCNT集合体のG/D比は10.4であった。しかし、CNT集合体の収量は、0.007mg/cm
2、CNT集合体の高さの平均は、7μmとなり、実施例1に比してCNT合成量が著しく低下した。
【0103】
(比較例3)
比較例3として、助触媒金属元素を用いずに、CNT集合体製造用触媒基材を作製し、酸化雰囲気で金属触媒微粒子形成工程を行った。比較例3として、70mM FeCl
3、70mM クエン酸及び1wt% PVAを含む塗布溶液を調製したこと以外は実施例4と同様にCNT集合体製造用触媒基材を作製した。なお、形成した触媒前駆体層の膜厚は10μmであった。
【0104】
実施例4と同様の条件で、金属触媒微粒子を形成した。その後、実施例4と同様の条件で、CNT集合体を合成した。
【0105】
金属触媒微粒子を形成した段階で基材を合成炉から取り出し、CNT集合体製造用触媒基材に形成された金属触媒微粒子のAFM像を
図12(A)に示す。CNT集合体製造用触媒基材上には粒子径1nm以上の構造が観察できず、金属触媒微粒子の形成は確認できなかった。
【0106】
実施例4と同様の条件で測定した比較例3のラマンスペクトルを
図12(B)に示す。比較例3においてはCNTの存在を示すGバンドのピークが観察されなかった。また、CNT集合体の収量は、0mg/cm
2であった。
【0107】
(参考例1)
参考例1として、従来のCNT集合体製造用触媒基材を水素で還元して微粒子化した例を示す。参考例1として、SiO
2膜を500nm形成したシリコンエハにアルミナをスパッタリング法により堆積させ、40nm以上の下地層を形成した。
【0108】
下地層に鉄(Fe)をスパッタリング法により1.8nm堆積させた。
【0109】
CNT集合体製造用触媒基材を合成炉に搬入し、水素(H
2)を500sccm供給しながら、750℃で6分間加熱して、触媒金属元素を微粒子化して、金属触媒微粒子を形成した。その後、実施例1と同様の条件で、CNT集合体を合成した。
【0110】
金属触媒微粒子を形成した段階で基材を合成炉から取り出し、CNT集合体製造用触媒基材に形成された金属触媒微粒子のAFM像を
図13(A)に示す。CNT集合体製造用触媒基材上に、粒子径が2.8nm、個数密度が6×10
11個/cm
2の金属触媒微粒子が形成されているのが確認できた。
【0111】
実施例1と同様の条件で測定した参考例1のCNT集合体のラマンスペクトルを
図13(B)に示す。参考例1のCNT集合体のG/D比は8.0であった。このことから、参考例1のCNT集合体は、グラファイト化度が高く、高品質であることが確認された。また、CNT集合体の収量は、2.208mg/cm
2、CNT集合体の高さの平均は、914μmであった。この結果から、上述した実施例の示したCNT集合体製造用触媒基材は、参考例1と同様に、CNTの合成に有効であることが示された。