(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
環状のフレーム、該環状のフレームの開口に張られた粘着テープ及び該粘着テープの上面に支持された被加工物を有するフレームユニットを保持面上で吸引保持して、該保持面に垂直な軸の周りに回転できるチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された該フレームユニットの該被加工物に切削液を供給しながら該被加工物を切削加工する切削ユニットと、
該チャックテーブルを該保持面と平行な加工送り方向に移動させる加工送りユニットと、
該チャックテーブルに保持された該フレームユニットの下面の該チャックテーブルからはみ出す第1の領域に対面する位置から該第1の領域に向かってエアーを噴出するエアーノズルを有し、該被加工物の切削加工後に該第1の領域に向けてエアーを噴出することで該第1の領域に付着した切削液を除去できる切削液除去ユニットと、
を備えることを特徴とする切削装置。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造プロセスにおいては、シリコンや化合物半導体からなるウェーハの表面にストリートと呼ばれる格子状の分割予定ラインが設定され、該分割予定ラインによって区画される各領域にIC、LSI等のデバイスが形成される。これらのウェーハは分割予定ラインに沿って切削され、個々のデバイスチップに分割される。
【0003】
ウェーハのような被加工物に対する切削加工は、例えば、切削ブレードを備える切削ユニットを有する切削装置により実施される。切削ユニットは、回転の軸となる円柱状のスピンドルと、切削ブレードと、を備える。切削ブレードは、中央に孔を有する円環形状であり該孔に該スピンドルを挿入されて該スピンドルに装着される。
【0004】
切削加工時は、該スピンドルを回転させることで切削ブレードを回転させる。回転する切削ブレードが被加工物に接触すると被加工物が切削される。切削加工時には、切削ブレードと、被加工物と、に切削液が供給される。該切削液は、被加工物の切削加工により発生する切削屑や熱を除去する。
【0005】
ところで、被加工物が切削されて個々のチップ等に分割された後も被加工物を容易に取り扱えるように、被加工物は予め環状のフレームに張られた粘着テープで支持される。切削加工時には、被加工物は、該環状のフレーム及び該粘着テープと一体となったフレームユニットの状態で切削装置が備えるチャックテーブルの上に保持される。そして、切削加工が終了した後、該フレームユニットを該チャックテーブルから離脱させる。
【0006】
このとき、該フレームユニットには、切削加工時に供給されて切削屑を取り込んだ切削液が付着しているが、フレームユニットの搬送中に該切削液が落下すると搬送経路を汚染してしまう。そこで、切削加工が終了したフレームユニットの上面に対して洗浄液を噴射する洗浄ノズルを切削装置に設ける(特許文献1参照)。該洗浄ノズルによりウォーターカーテンを形成し、該ウォーターカーテンに該フレームユニット通過させると、該上面に付着した切削液を除去できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
切削装置のチャックテーブルの上面(保持面)の外径はフレームユニットの外径よりも小さい。そのため、チャックテーブルにフレームユニットが吸引保持されるときフレームユニットの下面の外周部分は該チャックテーブルからはみ出して露出する。すると、切削加工時に切削ブレードや被加工物に供給されて切削屑を含んで飛散する切削液は、該フレームユニットの上面だけでなく、チャックテーブルから露出した下面にも付着する。
【0009】
該フレームユニットの下面に付着した切削液は、上述のウォーターカーテンでは除去できないので、フレームユニットの下面に切削液が残留し、その後、該フレームユニットの搬送経路に落下して該搬送経路を汚す場合がある。
【0010】
また、切削加工が実施されたフレームユニットは最終的に切削装置に設置されたカセットに収容される。該カセットには、複数のフレームユニットが収容される。そのため、下面に切削液が付着したフレームユニットがカセットに収容されると、カセットの下方に収容された他のフレームユニットに該切削液が落下して、該他のフレームユニットの被加工物を汚す場合がある。
【0011】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フレームユニットの下面のチャックテーブルから露出した部分に付着した切削液を除去できる切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、環状のフレーム、該環状のフレームの開口に張られた粘着テープ及び該粘着テープの上面に支持された被加工物を有するフレームユニットを保持面上で吸引保持でき、該保持面に垂直な軸の周りに回転できるチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された該フレームユニットの該被加工物に切削液を供給しながら該被加工物を切削加工する切削ユニットと、該チャックテーブルを該保持面と平行な加工送り方向に移動させる加工送りユニットと、該チャックテーブルに保持された該フレームユニットの下面の該チャックテーブルからはみ出す第1の領域に対面する位置から該第1の領域に向かってエアーを噴出するエアーノズルを有し、該被加工物の切削加工後に該第1の領域に向けてエアーを噴出することで該第1の領域に付着した切削液を除去できる切削液除去ユニットと、を備えることを特徴とする切削装置が提供される。
【0013】
本発明の一態様において、該切削ユニットで切削加工された該フレームユニットの該被加工物を洗浄する洗浄ユニットと、該チャックテーブルと、該洗浄ユニットと、の間で該フレームユニットを搬送する搬送ユニットと、を更に備え、該チャックテーブルの該保持面は、該フレームユニットに負圧を作用させるポーラス部材の上面と、該ポーラス部材を囲繞する枠体の上面と、により構成され、該洗浄ユニットは、該フレームユニットを保持する洗浄保持面を有し、該洗浄保持面に垂直な軸の周りに回転できる洗浄テーブルと、該洗浄テーブルに保持された該フレームユニットの該被加工物に洗浄液を供給する洗浄ノズルと、を備え、該洗浄テーブルの洗浄保持面は、該チャックテーブルの該ポーラス部材の該上面に収まる大きさに形成され、該洗浄ユニットは、該フレームユニットが該チャックテーブルに吸引保持された際に該フレームユニットの下面のうち該枠体により支持された第2の領域を該フレームユニットを該洗浄テーブルに保持した際に露出でき、該洗浄テーブルの回転による遠心力で該第2の領域に付着した該切削液を除去できてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係る切削装置は、チャックテーブルに保持されたフレームユニットの下面の該チャックテーブルからはみ出す第1の領域に対面する位置から該第1の領域に向かってエアーを噴出するエアーノズル有する切削液除去ユニットを備える。該切削液除去ユニットによると、被加工物の切削加工後に該第1の領域に向けてエアーを噴出することで該第1の領域に付着した切削液を除去できる。
【0015】
該切削装置では、被加工物の切削加工を実施した後に、該エアーノズルからエアーを噴出させながら加工送りユニットを作動させてチャックテーブルを加工送り方向に移動させる。該エアーノズルの上方を該フレームユニットの下面の第1の領域の一部が通過すると、該エアーにより該一部に付着した切削液が除去される。
【0016】
そして、チャックテーブルを保持面に垂直な軸の周りに回転させた後、該加工送りユニットを作動させて該エアーノズルの上方に該フレームユニットの下面の第1の領域の他の一部を通過させ、該他の一部に付着した切削液を除去する。このように、チャックテーブルの回転と、チャックテーブルの移動と、を複数回行うことで、フレームユニットの下面のチャックテーブルから露出した該第1の領域の全域において切削液が除去される。
【0017】
以上のように、本発明によりフレームユニットの下面のチャックテーブルから露出した部分に付着した切削液を除去できる切削装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る切削装置2の構成例を模式的に示す図である。
図1に示すように、切削装置2は、各構造を支持する基台4を備えている。
【0020】
基台4の前方の角部には、矩形の開口4aが形成されており、この開口4a内には、昇降するカセット支持台6が設けられている。カセット支持台6の上面には、複数のフレームユニット1を収容するカセット8が載せられる。なお、
図1では、説明の便宜上、カセット8の輪郭のみを示している。
【0021】
フレームユニット1は、環状のフレーム3と、該環状のフレーム3の開口に張られた粘着テープ5と、該粘着テープ5の上面に支持された被加工物7と、を有する。被加工物7は、例えば、シリコン等の半導体材料でなる円形のウェーハであり、その表面側は、中央のデバイス領域と、デバイス領域を囲む外周余剰領域とに分けられる。デバイス領域は、格子状に配列された分割予定ライン(ストリート)でさらに複数の領域に区画されており、各領域には、IC、LSI等のデバイスが形成されている。
【0022】
被加工物7の裏面側には、被加工物7よりも径の大きい粘着テープ5が貼付されている。粘着テープ5の外周部分は、環状のフレーム3に固定されている。すなわち、被加工物7は、粘着テープ5を介して環状のフレーム3に支持されている。
【0023】
なお、被加工物7はシリコン等の半導体材料でなる円形のウェーハ以外でもよく、被加工物7の材質、形状、構造等に制限はない。例えば、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる矩形の基板を被加工物7として用いることもできる。デバイスの種類、数量、配置等にも制限はない。
【0024】
切削装置2には、該カセット支持台6に載せられたカセット8に収容されたフレームユニット1を取り出して、該フレームユニット1を後述のチャックテーブル14の上に載せる搬送機構(不図示)が設けられている。該搬送機構によると、切削加工が終了した後に該フレームユニット1を該カセット8に収容することもできる。
【0025】
カセット支持台6の側方には、X軸方向(前後方向、加工送り方向)に長い矩形の開口4bが形成されている。この開口4b内には、X軸移動テーブル10、X軸移動テーブル10をX軸方向に移動させるX軸移動機構(不図示)及びX軸移動機構を覆う防塵防滴カバー12が設けられている。
【0026】
X軸移動機構は、X軸方向に平行な一対のX軸ガイドレール(不図示)を備えており、X軸ガイドレールには、X軸移動テーブル10がスライド可能に取り付けられている。X軸移動テーブル10の下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレールに平行なX軸ボールネジ(不図示)が螺合されている。
【0027】
X軸ボールネジの一端部には、X軸パルスモータ(不図示)が連結されている。X軸パルスモータでX軸ボールネジを回転させることで、X軸移動テーブル10は、X軸ガイドレールに沿ってX軸方向に移動する。
【0028】
X軸移動テーブル10の上方には、フレームユニット1を保持するためのチャックテーブル14が設けられている。チャックテーブル14は、上方に円形の開口部が形成された枠体14c(
図2(A)参照)と、該枠体14cの開口部に収容されたポーラス部材14b(
図2(A)参照)と、を有する。該ポーラス部材14bが該開口部に収容された状態で、枠体14cの上面と、該開口物に収容されたポーラス部材14bの上面と、が同一の高さとなるように該ポーラス部材14bが形成される。
【0029】
該枠体14cの上面と、該ポーラス部材14bの上面と、がフレームユニット1を保持する保持面14aとなる。該ポーラス部材14bは、チャックテーブル14の内部に形成された吸引路14d(
図2(A)参照)を介して吸引源14e(
図2(A)参照)に接続されている。該保持面14aの上にフレームユニット1を載せ、吸引源14eを作動させて該吸引路14d及び該ポーラス部材14bを通じて該フレームユニット1に負圧を作用させると、フレームユニット1がチャックテーブル14に吸引保持される。
【0030】
チャックテーブル14は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、該保持面14aに垂直な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル14は、上述のX軸移動機構でX軸方向に加工送りされる。すなわち、該X軸移動機構は加工送りユニットを構成する。
【0031】
開口4bに近接する位置には、上述したフレームユニット1をチャックテーブル14へと搬送する搬送ユニット(不図示)が設けられている。搬送ユニットで搬送されたフレームユニット1は、例えば、上面側が上方に露出するようにチャックテーブル14の保持面14aに載せられる。
【0032】
基台4の上面には、2組の切削ユニット22a,22bを支持するための門型の支持構造24が、開口4bを跨ぐように配置されている。支持構造24の前面上部には、切削ユニット22a,22bをY軸方向(左右方向、割り出し送り方向)及びZ軸方向に移動させる2組の切削ユニット移動機構26が設けられている。
【0033】
各切削ユニット移動機構26は、支持構造24の前面に配置されY軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール28を共通に備えている。Y軸ガイドレール28には、各切削ユニット移動機構26を構成するY軸移動プレート30がスライド可能に取り付けられている。
【0034】
各Y軸移動プレート30の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール28に平行なY軸ボールネジ32がそれぞれ螺合されている。各Y軸ボールネジ32の一端部には、Y軸パルスモータ34が連結されている。Y軸パルスモータ34でY軸ボールネジ32を回転させれば、Y軸移動プレート30は、Y軸ガイドレール28に沿ってY軸方向に移動する。
【0035】
各Y軸移動プレート30の表面(前面)には、Z軸方向に平行な一対のZ軸ガイドレール36が設けられている。Z軸ガイドレール36には、Z軸移動プレート38がスライド可能に取り付けられている。
【0036】
各Z軸移動プレート38の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール36に平行なZ軸ボールネジ40がそれぞれ螺合されている。各Z軸ボールネジ40の一端部には、Z軸パルスモータ42が連結されている。Z軸パルスモータ42でZ軸ボールネジ40を回転させれば、Z軸移動プレート38は、Z軸ガイドレール36に沿ってZ軸方向に移動する。
【0037】
各Z軸移動プレート38の下部には、それぞれ切削ユニット22a,22bが設けられている。この切削ユニット22a,22bは、回転軸となるスピンドルの一端側に装着された円環状の切削ブレードを備えている。切削ユニット22a,22bには該切削ブレード及びチャックテーブル14に保持されたフレームユニット1に切削液を供給する切削液供給手段が備えられている。該切削液は、例えば、純水である。
【0038】
また、切削ユニット22a,22bに隣接する位置には、被加工物11等を撮像する撮像カメラ(撮像ユニット)48が設けられている。各切削ユニット移動機構26でY軸移動プレート30をY軸方向に移動させれば、切削ユニット22a,22b及び撮像カメラ48は、Y軸方向に割り出し送りされる。また、各切削ユニット移動機構26でZ軸移動プレート38をZ軸方向に移動させれば、切削ユニット22a,22b及び撮像カメラ48は、昇降する。
【0039】
基台4の上面には、開口4bをX軸方向に垂直なY軸方向(割り出し送り方向)に跨ぐように、上面側ウォーターノズル16と、上面側エアーノズル18と、が配設される。該上面側ウォーターノズル16と、該上面側エアーノズル18と、はそれぞれパイプ状の本体を有する。それぞれの該本体には、該本体の伸長方向に沿って並ぶ下方に向いた複数の噴出口(不図示)が形成されている。
【0040】
上面側ウォーターノズル16の該本体の一端は、図示しない給水源に接続されている。上面側ウォーターノズル16は、該給水源から供給された洗浄液(例えば、純水)を該複数の噴出口から下方に噴出してウォーターカーテンを形成できる。また、上面側エアーノズル18の該本体の一端は、図示しないエアー供給源に接続されている。上面側エアーノズル18は、該エアー供給源から供給されたエアーを該複数の噴出口から下方に噴出してエアカーテンを形成できる。
【0041】
また、上面側ウォーターノズル16及び上面側エアーノズル18の下方には、X軸方向に加工送りされるチャックテーブル14を挟むように一対のエアーノズル20が配設される。該一対のエアーノズル20は、該開口4b内において基台4の該Y軸方向に垂直な2つの壁面のそれぞれから該Y軸方向に突出しており、加工送りされるチャックテーブル14に接触しない長さで伸長している。
【0042】
該一対のエアーノズル20は、それぞれ先端が閉じられたパイプ状の本体を有する。それぞれの該本体には、それぞれの本体の伸長方向に沿って並ぶ上方に向いた複数の噴出口(不図示)が形成されている。該一対のエアーノズル20は、それぞれ図示しないエアー供給源に接続されており、該エアー供給源から供給されたエアーを該複数の噴出口から上方に噴出できる。
【0043】
切削装置2において、上面側ウォーターノズル16、上面側エアーノズル18、及び、該一対のエアーノズル20は、チャックテーブル14に付着した切削液を除去する切削液除去ユニットとして機能する。
【0044】
開口4bに対して開口4aと反対側の位置には、円形の開口4cが形成されている。開口4c内には、切削加工後のフレームユニット1等を洗浄するための洗浄ユニット50が設けられている。基台4の上方には、チャックテーブル14に載るフレームユニット1を洗浄ユニット50に搬送する搬送ユニット44が配設されている。
【0045】
該搬送ユニット44は、フレームユニット1の環状のフレーム3の形状に対応した複数の吸盤46を下面に有している。該搬送ユニット44は、該環状のフレーム3を吸盤46で吸着保持することで該フレームユニット1を洗浄ユニット50に搬送できる。また、搬送ユニット44は、洗浄ユニット50で洗浄されたフレームユニット1を洗浄ユニット50から搬出できる。
【0046】
開口4cの内部に設けられた洗浄ユニット50は、フレームユニット1を保持する洗浄テーブル52と、該洗浄テーブル52に保持されたフレームユニット1の上方から該フレームユニット1に洗浄液を吐出する洗浄ノズル54と、を備える。該洗浄液は、例えば、純水である。
【0047】
洗浄ノズル54は、洗浄テーブル52の外周側から上方に伸長する軸部と、該軸部の先端から水平方向に伸長するパイプ状の本体と、を有する。該軸部は給水源に接続されており、該給水源は該軸部を通じて該本体に洗浄液を供給できる。該パイプ状の本体の先端には吐出口が設けられており、該本体に供給された洗浄液は該吐出口から下方に吐出される。該洗浄ノズル54は、該軸部を軸に回転移動できる。該洗浄ノズル54が回転すると該洗浄テーブル52の上方に該吐出口を移動できる。
【0048】
洗浄テーブル52の内部には、一端が洗浄テーブル52の上面の洗浄保持面52aに通じた吸引路52d(
図2(B)参照)が設けられ、該吸引路52dの他端には吸引源52c(
図2(B)参照)が接続される。フレームユニット1を洗浄テーブル52の洗浄保持面52aの上に載せ、該吸引源52cを作動させて該フレームユニット1に負圧を作用させると、フレームユニット1は該洗浄テーブル52に吸引保持される。
【0049】
なお、洗浄テーブル52の洗浄保持面52aは、チャックテーブル14のポーラス部材14bの上面に収まる大きさに形成される。つまり、洗浄保持面52aの径は、ポーラス部材14bの上面の径よりも小さい。すると、フレームユニット1が洗浄テーブル52上に保持されたとき、フレームユニット1の下面のうち切削加工時にチャックテーブル14の枠体14cに支持されていた領域が該洗浄テーブル52から露出される。また、洗浄テーブル52は、図示しない回転駆動源に接続されており、保持面52に垂直な軸の周りに回転できる。
【0050】
次に、本実施形態に係る切削装置におけるフレームユニット1の被加工物7の切削加工について説明する。
【0051】
まず、カセット支持台6上のカセット8に収容されたフレームユニット1を、切削装置2の搬送機構(不図示)により取り出して搬送し、チャックテーブル14の保持面14a上に載せる。そして、チャックテーブル14の吸引源14e(
図2(A)参照)を作動させて該吸引路14d及び該ポーラス部材14bを通じて該フレームユニット1に負圧を作用させると、フレームユニット1がチャックテーブル14に吸引保持される。
【0052】
次に、フレームユニット1の被加工物7の切削加工を実施する。まず、切削ユニット22a,22bのスピンドルを回転させることで切削ブレードを回転させるとともに、該切削ブレードを所定の高さに位置付けて、チャックテーブル14を加工送り方向に加工送りさせると、回転する切削ブレードが被加工物7に接触して被加工物7が切削される。
【0053】
切削加工時には、切削ユニット22a,22bの洗浄液供給手段(不図示)から切削ブレードと、被加工物7と、に切削液が供給される。該切削液は、被加工物7の切削加工により発生する切削屑や熱を除去する。
【0054】
切削加工の終了直後のフレームユニット1の上面や下面には、該切削液が付着している。該上面に該切削液が付着したまま該切削液が気化すると、該切削液に含まれている切削屑等が該上面に固着して問題となる。そこで、切削加工の終了後にフレームユニット1に付着した切削液を除去する。切削液の除去について
図2(A)を用いて説明する。
図2(A)は、切削液の除去時の切削装置2の切削液除去ユニットと、チャックテーブル14に保持されたフレームユニット1と、を模式的に示す部分断面図である。
【0055】
切削加工の終了後、チャックテーブル14を加工送り方向に移動させて、上面側ウォーターノズル16及び上面側エアーノズル18の下方を通過させる。このとき、上面側ウォーターノズル16及び上面側エアーノズル18からは、それぞれ洗浄液や高圧エアーが噴出される。すなわち、該洗浄液や高圧エアーによりウォーターカーテンやエアカーテンを形成し、該ウォーターカーテンや該エアカーテンにフレームユニット1を通すとフレームユニット1の上面に付着した切削液を除去できる。
【0056】
また、切削加工時に切削ブレードやフレームユニット1に供給された切削液は、フレームユニット1の下面のうち、該チャックテーブル14の保持面14aからはみ出した領域にも回り込んで付着する。例えば、フレームユニット1の下面に付着した切削液を除去しない場合、搬送等において該切削液がフレームユニット1から落下すると、切削装置2を汚す場合がある。また、切削液が下面に付着したフレームユニット1をカセット8に収納したときに落下して、下方に収納された他のフレームユニット1に付着する場合がある。
【0057】
そこで、本実施形態に係る切削装置2では、エアーノズル20からフレームユニット1の下面の該領域にも高圧エアーを供給して、該領域に付着した切削液を該高圧エアーにより吹き飛ばす。エアーノズル20から高圧エアーが供給されている状態でチャックテーブル14を加工送り方向に移動させると、フレームユニット1の下面に付着した切削液の一部が除去される。
【0058】
該チャックテーブル14を一度加工送り方向に移動させただけでは該高圧エアーを該領域の全域に作用させにくい。そこで、該チャックテーブル14を保持面14aに垂直な軸の周りに所定の角度回転させて高圧エアーを受ける箇所を変更し、再び該チャックテーブル14を加工送り方向に移動させる。これを繰り返して、該領域の全域において該高圧エアーにより付着した切削液を除去する。すると、該領域に付着した切削液が搬送等において落下しなくなり、切削装置2の内部の汚染が抑制される。
【0059】
切削加工時及び洗浄液の除去時には、フレームユニット1はチャックテーブル14の保持面14a上に吸引保持されている。そして、チャックテーブル14の枠体14cと、フレームユニット1の下面と、の間の微細な隙間等から負圧がリークする。そのため、該微細な隙間から切削液がチャックテーブル14のポーラス部材14b側に進入する場合がある。
【0060】
該微細な隙間に進入した切削液が該ポーラス部材14bに到達すると、該負圧により該ポーラス部材14bへと吸い込まれるが、該微細な隙間から進入した切削液の一部は、該枠体14cと、フレームユニット1の下面と、の間に留まる場合がある。つまり、チャックテーブル14への吸引保持を解除してフレームユニット1を搬送するとき、フレームユニット1の下面のうち該枠体14cに支えられていた領域に切削液が残留するおそれがある。
【0061】
そこで、本実施形態に係る切削装置2では、フレームユニット1を洗浄ユニット50に搬送して被加工物7を洗浄する際に、フレームユニット1の下面の該枠体14cに支えられていた領域に残留する切削液を除去する。
【0062】
切削加工が実施された被加工物7を含むフレームユニット1は、搬送ユニット44により該チャックテーブル14から洗浄ユニット50の洗浄テーブル52の洗浄保持面52a上に搬送される。次に、吸引源52c(
図2(B)参照)を作動させて該吸引路52dを通じて該フレームユニット1に負圧を作用させると、フレームユニット1が洗浄テーブル14に吸引保持される。
【0063】
次に、洗浄ノズル54の吐出口から洗浄液を吐出させながら軸部を軸に洗浄ノズル54を回転させて、該吐出口を洗浄テーブル52に吸引保持されたフレームユニット1の上方に移動させる。また、洗浄テーブル52を該洗浄保持面52aに垂直な軸の周りに回転させる。すると、洗浄液が該フレームユニット1の上面に供給されてフレームユニット1の上面が洗浄され、洗浄テーブル52の回転による遠心力で該洗浄液が該上面から排出される。
【0064】
なお、本実施形態に係る切削装置2では、洗浄テーブル52の洗浄保持面52aは、チャックテーブル14のポーラス部材14bの上面に収まる大きさに形成される。すると、フレームユニット1が洗浄テーブル52上に保持されたとき、フレームユニット1の下面のうち切削加工時にチャックテーブル14の枠体14cに支持されていた領域が該洗浄テーブル52から露出される。そのため、洗浄テーブル52の回転により生じる遠心力は、該フレームユニット1の該領域に付着した切削液にも作用して、該切削液も排出される。
【0065】
該フレームユニット1の下面のうち、チャックテーブル14の保持面14aからはみ出した領域に付着した切削液は、一対のエアーノズル20の作用により除去される。また、該下面のうち、チャックテーブル14のポーラス部材14bに支えられていた領域に進入した切削液は、該ポーラス部材14b側に吸引される。そして、該下面の残りの領域、すなわちチャックテーブル14の枠体14cに支えられていた領域に付着した切削液は、洗浄テーブル52の回転により生じる遠心力の作用により排出される。
【0066】
すなわち、切削加工時にフレームユニット1の下面に付着した切削液は、その下面の全域において排除される。洗浄されたフレームユニット1は該洗浄テーブル52からカセット8に搬送されて収納されるが、フレームユニット1の下面には切削液が残留しないため、該カセット8内に収容された他のフレームユニットを汚染することもない。
【0067】
なお、本発明は、上記の実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記の実施形態において、洗浄テーブル52の吸引源52dにより生じさせる負圧(吸引力)を、チャックテーブル14の吸引源14eにより発生する負圧(吸引力)よりも大きくしてもよい。
【0068】
上記の実施形態に係る切削装置2において、洗浄テーブル52の洗浄保持面52aは、チャックテーブル14の保持面14aよりも小さい。その上、該洗浄テーブル52が該洗浄保持面52aに垂直な軸の周りに回転している状態でフレームユニット1の洗浄が実施される。そのため、吸引源52dにより生じさせる負圧(吸引力)を、吸引源14eにより発生する負圧(吸引力)よりも大きくすることで、フレームユニット1がより確実に吸引保持される。
【0069】
また、上記の実施形態に係る切削装置2では、フレームユニット1の下面に付着した切削液を除去するためにエアーノズル20が備えられるが、例えば、該切削装置2は、該エアーノズルに代えて該下面に洗浄液を供給する洗浄ノズルを備えてもよい。
【0070】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。