(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1のスピンドルの先端に固定されたフランジに第1の切削ブレードが挟持され装着される第1の切削ユニットと、第2のスピンドルの先端に固定されたフランジに第2の切削ブレードが挟持され装着される第2の切削ユニットと、該切削ブレードに加工される被加工物を保持するチャックテーブルと、装着する該切削ブレードの品種を登録するブレード情報登録部を含み各構成要素を制御する制御ユニットと、を備える切削装置であって、
該切削ユニットは、
該スピンドルを回転自在に支持するスピンドルハウジングに固定され、該切削ブレードを覆って加工液を供給するブレードカバーを備え、
該ブレードカバーは、
該スピンドルハウジングに固定された固定部と、
加工液ノズルを該固定部に開閉可能に装着し、該加工液ノズルが該切削ブレードに近接した近接位置と、該切削ブレードから離間し該フランジに該切削ブレードを着脱する離間位置と、に選択的に位置付け可能な可動部と、を備え、
該制御ユニットは、
該第1の切削ブレードを装着する際に該第1の切削ブレードの品種が登録されると、該第2の切削ユニットの該ブレードカバーの可動部は離間位置に設定されないが、該第1の切削ユニットの該ブレードカバーの可動部は離間位置に設定され、
該第2の切削ブレードを装着する際に該第2の切削ブレードの品種が登録されると、該第1の切削ユニットの該ブレードカバーの可動部は離間位置に設定されないが、該第2の切削ユニットの該ブレードカバーの可動部は離間位置に設定されることを特徴とする切削装置。
該制御ユニットは、該切削ブレードと該スピンドルの組合せを含む加工条件を登録する加工条件登録部を備え、登録された該切削ブレードの該品種と該スピンドルの組合せから、該ブレードカバーの可動部を離間位置に設定する該切削ユニットを決定する請求項1に記載の切削装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る切削装置を図面に基いて説明する。
図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
【0014】
実施形態1に係る切削装置1は、被加工物201を切削加工する装置である。実施形態1では、被加工物201は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。被加工物201は、表面202に格子状に形成された複数の分割予定ライン203によって格子状に区画された領域にデバイス204が形成されている。本発明の被加工物201は、中央部が薄化され、外周部に厚肉部が形成された所謂TAIKOウエーハでもよく、ウエーハの他に、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス板、ガラス板等でも良い。被加工物201は、裏面205に保護部材である粘着テープ206が貼着されている。粘着テープ206は、外周に環状フレーム207が取り付けられている。
【0015】
図1に示された切削装置1は、被加工物201をチャックテーブル10で保持し分割予定ライン203に沿って切削ブレード21(
図2に示す)で切削する装置である。切削装置1は、
図1に示すように、被加工物201を吸引保持する保持面11を備えたチャックテーブル10と、チャックテーブル10に保持された被加工物201をスピンドル22(
図2に示す)に装着した切削ブレード21で切削する切削ユニット20と、制御ユニット100とを備える。
【0016】
また、切削装置1は、チャックテーブル10を保持面11と平行な加工送り方向であるX軸方向に移動させる図示しない加工送りユニットと、切削ユニット20を保持面11と平行でかつX軸方向に直交する割り出し方向であるY軸方向に移動させる図示しない割り出し送りユニットと、切削ユニット20をX軸方向とY軸方向との双方と直交する鉛直方向に平行なZ軸方向に移動させる図示しない切り込み送りユニットとを備える。また、切削装置1は、切削前後の被加工物201を複数収容するカセット111が載置されかつカセット111をZ方向に移動させるカセットエレベータ110と、カセット111に被加工物201を出し入れするとともに被加工物201を搬送する図示しない搬送ユニットとを備える。
【0017】
なお、切削装置1は、
図1に示すように、切削ユニット20を2つ備え、かつ切削ブレード21同士が対面する位置に配置された、即ち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置である。
【0018】
チャックテーブル10は、円盤形状であり、被加工物201を保持する保持面11がポーラスセラミック等から形成されている。また、チャックテーブル10は、加工送りユニットにより移動自在で図示しない回転駆動源によりZ方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。チャックテーブル10は、図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、切削ユニット20の切削ブレード21により切削加工される被加工物201を吸引、保持する。また、チャックテーブル10の周囲には、エアーアクチュエータにより駆動して被加工物201の周囲の環状フレーム207を挟持するクランプ部12が複数設けられている。
【0019】
次に、切削ユニット20を図面に基いて説明する。
図2は、
図1に示された切削装置の切削ユニットのスピンドルユニットを示す斜視図である。
図3は、
図2に示すスピンドルユニットのスピンドルとフランジとを示す斜視図である。
図4は、
図2に示すスピンドルユニットのスピンドルと切削ブレードとを示す斜視図である。
図5は、
図2に示すスピンドルユニットのY軸方向の断面図である。
図6は、
図5に示されたスピンドルユニットのスピンドルがロックされた状態を示す断面図である。
図7は、
図1に示された切削装置の切削ユニットの正面図である。
図8は、
図7に示された切削装置の切削ユニットのブレードカバーの可動部が離間位置に位置付けられた状態を示す正面図である。
【0020】
切削ユニット20は、
図2に示すように、スピンドル22の先端に固定されたフランジ29に切削ブレード21が挟持されて装着される。切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物201を切削ブレード21で切削するものである。切削ユニット20は、それぞれ、チャックテーブル10に保持された被加工物201に対して、割り出し送りユニットによりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、切り込み送りユニットによりZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0021】
切削ユニット20は、
図2に示すスピンドルユニット27と、
図7に示すブレードカバー30とを備える。スピンドルユニット27は、
図2、
図3及び
図4に示すように、スピンドル22と、スピンドルハウジング23と、第1のフランジ部材24(
図3及び
図4に示す)と、切削ブレード21と、円環状の第2のフランジ部材25(
図2及び
図7に示す)とを備える。
【0022】
スピンドル22は、
図5及び
図6に示すスピンドルモータ223によりY軸方向と平行な軸心回りに回転される。スピンドルモータ223は、スピンドル22に連結されたロータ224と、ロータ224を回転させるステータ225とを備える。スピンドル22の先端部には、
図3に示すように、先端に向かうに従って徐々に小径となるテーパ部221と、テーパ部221よりも先端側に設けられた雄ねじ222が形成されている。スピンドルハウジング23は、割り出し送りユニットによりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ切り込み送りユニットによりZ軸方向に移動自在に設けられた略円筒状に形成されている。スピンドルハウジング23は、雄ねじ222が形成された先端部を露出させた状態でスピンドル22を収容している。スピンドルハウジング23は、スピンドル22を軸心回りに回転自在に支持している。
【0023】
第1のフランジ部材24は、スピンドル22の先端部の外周に取り付けられる円筒状の円筒部241と、円筒部241の外周面から径方向外向きに延出したフランジ部242とを備える。円筒部241のフランジ部242よりも先端側には、雄ねじ243が形成されている。第1のフランジ部材24は、円筒部241内にスピンドル22の先端部が嵌め込まれ、ナット28がスピンドル22の先端部に設けられた雄ねじ222の外周に螺合することにより、
図4に示すように、スピンドル22に固定される。
【0024】
切削ブレード21は、いわゆるハブブレードであり、円盤状の支持基台211の外周に固定されて、被加工物201を切削する円環状の切り刃212を備える。切り刃212は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。なお、切削ブレード21として、切り刃212のみで構成されたワッシャーブレードを用いてもよい。
【0025】
切削ブレード21は、第1のフランジ部材24の円筒部241を内側に通して、フランジ部242の表面上に重ねられ、第2のフランジ部材25が円筒部241に形成された雄ねじ243の外周に螺合して、第1のフランジ部材24と第2のフランジ部材25との間に保持されて、スピンドル22に固定される。第1のフランジ部材24と第2のフランジ部材25とは、互いの間に切削ブレード21を挟んで把持し、第1のフランジ部材24がスピンドル22の一端部に固定され、第2のフランジ部材25が第1のフランジ部材24に固定されることで、切削ブレード21をスピンドル22に固定するフランジ29を構成する。こうして、切削ユニット20のスピンドルユニット27は、スピンドル22の先端に固定されたフランジ29に切削ブレード21が挟持され装着される。
【0026】
また、スピンドルユニット27は、
図5及び
図6に示すように、スピンドル22の回転を規制するロック機構271を備えている。このロック機構271は、例えば特開2004−235250号公報中に示されるロック装置と同一構成でよく、詳細構成は省略する。ロック機構271は、スピンドル22の所定位置の同一円周上に形成された複数(例えば、3個)の係合穴272に係脱自在に係合するようにスピンドルハウジング23に径方向にスライド自在に設けられたシャフトロックピン273を備える。
【0027】
シャフトロックピン273は、コイルばね274により係合穴272から離脱する方向に付勢されている。ロック機構271は、
図6に示すように、制御ユニット100により制御される切換弁275を介して、加圧気体供給源276から加圧された気体がシャフトロックピン273に供給されると、シャフトロックピン273がコイルばね274の付勢力に抗してスライドして、係合穴272内に係合してスピンドル22の回転を規制する(即ちスピンドル22をロックする)。ロック機構271は、
図5に示すように、切換弁275を介して、加圧気体供給源276から加圧された気体がシャフトロックピン273に供給されないと、シャフトロックピン273がコイルばね274の付勢力により係合穴272内から離脱してスピンドル22の回転を許容する。
【0028】
ブレードカバー30は、スピンドルハウジング23に固定され、切削ブレード21の上方及びX軸方向の両側を覆って、切削加工中に加工液である切削水を切削ブレード21に供給するものである。ブレードカバー30は、
図7及び
図8に示すように、固定部31と、可動部32とを備える。
【0029】
固定部31は、スピンドルハウジング23に固定される。固定部31は、切削ブレード21の上方及びX軸方向の一方側を覆う。固定部31は、ブレード破損検出器50を取り付けているとともに、切削加工中に切削ブレード21に切削水を供給する切削水噴射口311が設けられている。ブレード破損検出器50は、切削ブレード21の回転中に切削ブレード21の破損又は磨耗を検出するものである。ブレード破損検出器50は、検出結果を制御ユニット100に出力する。
【0030】
可動部32は、加工液ノズルである切削水ノズル321を固定部31に開閉可能に装着しているものであり、固定部31のX軸方向の他方側に取り付けられている。可動部32は、固定部31にX軸方向に移動自在に支持されている。可動部32は、固定部31に収容されたエアーシリンダ312のロッド313(
図8に示す)が伸縮することにより、固定部31に対してX軸方向に移動される。また、可動部32は、下端に切削水ノズル321を装着している。切削水ノズル321は、可動部32の下端から切削水噴射口311に向かって延びており、切削加工中に切削ブレード21及び切削ブレード21が切削する被加工物201の切削箇所に切削水を供給する切削水供給孔(図示せず)を複数設けている。
【0031】
可動部32は、エアーシリンダ312のロッド313が伸縮することにより、切削水ノズル321が切削ブレード21に近接した
図7に示す近接位置と、切削ブレード21から離間しスピンドル22に切削ブレード21を着脱可能とする
図8に示す離間位置と、に選択的に位置付け可能である。近接位置は、スピンドル22への切削ブレード21の着脱を切削水ノズル321等が規制する位置であり、離間位置は、スピンドル22への切削ブレード21の着脱を許容する位置である。
【0032】
次に、切削ユニット20の切削ブレード21を交換する手順を図面に基いて説明する。
図9は、
図1に示された切削装置の切削ブレードを交換する際に用いられる着脱治具を示す斜視図である。
図10は、
図9に示された着脱治具を回転するためのトルクドライバを示す平面図である。
図11は、
図1に示された切削装置の切削ブレードを交換する状態を示す正面図である。
図12は、
図1に示された切削装置の切削ブレードを交換する状態を一部断面で示す側面図である。
【0033】
切削ユニット20の切削ブレード21を交換する際には、ブレードカバー30の可動部32を離間位置に位置付けて、第2のフランジ部材25を第1のフランジ部材24の円筒部241の外周に着脱する。
図9に示す着脱治具40及び
図10に示すトルクドライバ41は、第2のフランジ部材25を第1のフランジ部材24の円筒部241の外周に着脱するためのものである。
【0034】
着脱治具40は、
図9に示すように、円形凹部401を有しており、円形凹部401の内周面に周方向に等間隔離間して4個の固定ナット把持爪402が配設されている。円形凹部401は、離間位置に位置付けられている切削ユニット20の第2のフランジ部材25の外側に被さることができる。なお、円形凹部401は、着脱治具40が切削水ノズル321等と接触して、近接位置に位置付けられている切削ユニット20の第2のフランジ部材25の外側には被さることができない。固定ナット把持爪402は、半径方向に弾性変形可能に配設され、互いの間に円形凹部401が被さった第2のフランジ部材25を外側から把持可能である。円形凹部401の中央部には、トルクドライバ41の先端の差し込み用の貫通孔403が形成されている。貫通孔403の平面形状は、正六角形である。
【0035】
トルクドライバ41は、
図10に示すように、着脱治具40の貫通孔403中に挿入される断面6角形状の係合部411と、トルクドライバ回転用のハンドル412とを有している。トルクドライバ41は、第2のフランジ部材25の外側に被さった着脱治具40の貫通孔403に係合部411が挿入されて、ハンドル412が回転されることにより、第2のフランジ部材25を第1のフランジ部材24に対して回転させる。
【0036】
切削ユニット20の切削ブレード21を交換する際には、ブレードカバー30の可動部32を離間位置に位置付けて、
図11及び
図12に示すように、円形凹部401を第2のフランジ部材25の外側に被せ、貫通孔403内にハンドル412の係合部411を挿入する。ハンドル412を回転して、第2のフランジ部材25を第1のフランジ部材24に対して回転させて、第2のフランジ部材25を第1のフランジ部材24から取り外す。切削ブレード21を交換し、その後、第2のフランジ部材25を着脱治具40の円形凹部401内に収容し、第2のフランジ部材25を雄ねじ243の外周に螺合し、貫通孔403内にハンドル412の係合部411を挿入する。ハンドル412を回転して、第2のフランジ部材25を第1のフランジ部材24に対して回転させて、第2のフランジ部材25を第1のフランジ部材24に固定して、フランジ部材24,25間に交換後の切削ブレード21を挟持する。なお、着脱治具40及びトルクドライバ41は、円形凹部401が近接位置に位置付けられている切削ユニット20の第2のフランジ部材25の外側には被さることができないので、近接位置に位置付けられている切削ユニット20の第2のフランジ部材25を第1のフランジ部材24に対して回転させることができない。
【0037】
また、実施形態1において、交換用の切削ブレード21は、
図13及び
図14に示すケース60に収容されている。
図13は、
図1に示された切削装置の交換用の切削ブレードをケース内に収容するところを示す分解斜視図である。
図14は、
図1に示された切削装置の交換用の切削ブレードを収容するケースの平面図である。
【0038】
ケース60は、合成樹脂により構成され、透明であるのが好ましい。ケース60は、
図13に示すように、本体ケース61と、本体ケース61にヒンジ部62で開閉可能に取り付けられたカバー63とから構成される。ヒンジ部62は、本体ケース61及びカバー63よりも厚みが薄く形成されて可撓性を有する、所謂セルフヒンジである。本体ケース61は、切削ブレード21の中央に設けられた孔が嵌合される円形凸部64を備えている。
【0039】
カバー63は、本体ケース61の外側に係止可能なフック65が一体的に形成されており、フック65を本体ケース61に形成された係合突起66に係止することにより、カバー63が、
図14に示すように本体ケース61に対して閉じた状態で保持される。
【0040】
ケース60のカバー63は、外表面の所定箇所に切削ブレード21の品種情報である種類を特定する着脱シール70が貼着(設置)されている。着脱シール70は、切削ブレード21の種類を特定するための品種情報を含む識別コードであるバーコード71が印刷されている。また、実施形態1において、着脱シール70は、切削ブレード21の種類を示す文字列72も印刷されている。バーコード71は、切削ブレード21の種類を示す。
【0041】
また、切削装置1は、バーコード71を読み取る
図15に示す読み取りユニット80を備える。
図15は、
図1に示された切削装置の読み取りユニットを示す斜視図である。実施形態1において、読み取りユニット80は、バーコード71を光学的に読み取るバーコードリーダである。読み取りユニット80は、読み取ったバーコード71が示す切削ブレード21の種類を制御ユニット100に出力する。
【0042】
前述した切削装置1は、2つの切削ユニット20のスピンドル22に互いに異なる種類の切削ブレード21を装着し、一方の切削ユニット20の切削ブレード21で分割予定ライン203の厚み方向の途中まで切削した後、他方の切削ユニット20の切削ブレード21で被加工物201をデバイス204に分割する、所謂ステップカットを行う装置である。
【0043】
以下、一方の切削ユニット20を第1の切削ユニット20−1と記し、第1の切削ユニット20−1のスピンドル22を第1のスピンドル22−1、切削ブレード21を第1の切削ブレード21−1と記す。また、他方の切削ユニット20を第2の切削ユニット20−2と記し、第2の切削ユニット20−2のスピンドル22を第2のスピンドル22−2、切削ブレード21を第2の切削ブレード21−2と記す。また、第1の切削ユニット20−1と第2の切削ユニット20−2とを区別する必要がない場合には、単に切削ユニット20と記し、第1のスピンドル22−1と第2のスピンドル22−2とを区別する必要がない場合には、単にスピンドル22と記し、第1の切削ブレード21−1と第2の切削ブレード21−2とを区別する必要がない場合には、単に切削ブレード21と記す。切削装置1が、所謂ステップカットを行うために、第1の切削ユニット20−1の第1のスピンドル22−1に装着される第1の切削ブレード21−1の種類は、予め定められ、かつ第2の切削ユニット20−2の第2のスピンドル22−2に装着される第2の切削ブレード21−2の種類は、予め定められ、かつ第1の切削ブレード21−1の種類と異なる。
【0044】
制御ユニット100は、切削装置1の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物201に対する加工動作を切削装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、コンピュータである。制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニット200及びオペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない入力装置と接続されている。入力装置は、表示ユニット200に設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
図16は、
図1に示された切削装置の制御ユニットの機能ブロック図である。
【0045】
また、制御ユニット100は、
図1及び
図16に示すように、ブレード情報登録部101と、加工条件登録部102と、決定部103とを備える。ブレード情報登録部101は、各切削ユニット20−1,20−2のスピンドル22−1,22−2に装着する切削ブレード21−1,21−2の品種である種類を登録するものである。ブレード情報登録部101には、読み取りユニット80によって読み取られた品種情報である切削ブレード21の種類が登録される。
【0046】
加工条件登録部102は、切削ブレード21−1,21−2とスピンドル22−1,22−2の組合せを含む加工条件104を登録するものである。加工条件登録部102に登録される加工条件104は、
図16に示すように、第1の切削ユニット20−1の条件を登録する第1の切削条件登録部104−1と、第2の切削ユニット20−2の条件を登録する第2の切削条件登録部104−2と、被加工物201の加工条件を登録する被加工物条件登録部104−3とを備える。
【0047】
第1の切削条件登録部104−1は、第1の切削ユニット20−1の第1のスピンドル22−1に装着される第1の切削ブレード21−1の種類、切削可能な分割予定ライン203の数、及び切削可能な長さが入力装置などから登録される。第2の切削条件登録部104−2は、第2の切削ユニット20−2の第2のスピンドル22−2に装着される第2の切削ブレード21−2の種類、切削可能な分割予定ライン203の数、及び切削可能な長さが入力装置などから登録される。
【0048】
被加工物条件登録部104−3は、被加工物201の外径、厚さ、粘着テープ206の厚さ、切削加工時の第1の切削ブレード21−1の保持面11からの高さ、第1のスピンドル22−1の回転数、切削加工時の第2の切削ブレード21−2の保持面11からの高さ、第2のスピンドル22−2の回転数、及び加工送り速度が入力装置などから登録される。
【0049】
決定部103は、ブレード情報登録部101に登録された切削ブレード21の種類と、加工条件登録部102に登録されているスピンドル22−1,22−2の組合せから、ブレードカバー30の可動部32を離間位置に設定する切削ユニット20を切削ユニット20−1,20−2のうちの一方に決定するものである。決定部103は、ブレード情報登録部101に読み取りユニット80が読み取った切削ブレード21の種類が登録されると、第1の切削条件登録部104−1と第2の切削条件登録部104−2とを参照する。
【0050】
決定部103は、第1の切削条件登録部104−1と第2の切削条件登録部104−2とのうちブレード情報登録部101に登録された切削ブレード21の種類と、同じ切削ブレード21の種類が登録されているものを特定し、特定した切削条件登録部104−1,104−2が対応する切削ユニット20−1,20−2を特定する。決定部103は、特定した切削ユニット20−1,20−2のスピンドルモータ223を停止し、ロック機構271のシャフトロックピン273に加圧された気体を供給して。ロック機構271にスピンドル22−1,22−2の回転を規制させる即ちスピンドル22−1,22−2をロックする。決定部103は、特定した切削ユニット20−1,20−2のブレードカバー30内のエアーシリンダ312のロッド313を伸張させて、可動部32を離間位置に設定し、特定しなかった切削ユニット20−1,20−2のブレードカバー30内のエアーシリンダ312のロッド313を縮小させたままにして可動部32を近接位置に維持する。
【0051】
こうして、決定部103は、第1の切削ブレード21−1を装着する際に、ブレード情報登録部101に第1の切削ブレード21−1の種類が登録されると、第2の切削ユニット20−2のブレードカバー30の可動部32は近接位置に維持されて離間位置に設定されないが、第1の切削ユニット20−1の第1のスピンドル22−1をロックし、第1の切削ユニット20−1のブレードカバー30の可動部32は離間位置に設定される。また、決定部103は、第2の切削ブレード21−2を装着する際に、ブレード情報登録部101に第2の切削ブレード21−2の種類が登録されると、第1の切削ユニット20−1のブレードカバー30の可動部32は近接位置に維持されて離間位置に設定されないが、第2の切削ユニット20−2の第2のスピンドル22−2をロックし、第2の切削ユニット20−2のブレードカバー30の可動部32は離間位置に設定される。
【0052】
次に、実施形態1に係る切削装置1の加工動作を説明する。実施形態1に係る切削装置1の加工動作は、オペレータが加工内容情報を制御ユニット100に登録し、オペレータが切削加工前の被加工物201を収容したカセット111をカセットエレベータ110に載置し、オペレータから加工動作の開始指示があると、制御ユニット100により開始される。
【0053】
加工動作において、制御ユニット100は、被加工物201を搬送ユニットに取り出させ、粘着テープ206を介して被加工物201を保持面11に吸引保持する。制御ユニット100は、第2の切削ユニット20−2に取り付けられた図示しない撮像ユニットが撮像した画像に切削ユニット20−1,20−2の切削ブレード21−1,21−2との位置合わせを行なうためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、チャックテーブル10に保持された被加工物201と切削ユニット20−1,20−2との相対位置を調整する。
【0054】
そして、制御ユニット100は、加工内容情報に基づいて、加工送りユニットと割り出し送りユニットと切り込み送りユニットと回転駆動源により、切削ブレード21−1,21−2と被加工物201とを分割予定ライン203に沿って相対的に移動させて、被加工物201の分割予定ライン203を切削する。
【0055】
制御ユニット100は、すべての分割予定ライン203を切削して、被加工物201を個々のデバイス204に分割すると、被加工物201をカセット111内に搬入し、カセット111内に収容した被加工物201を順に切削加工して、カセット111内の全ての被加工物201の切削加工が完了すると加工動作を終了する。
【0056】
以上のように、実施形態1に係る切削装置1によれば、第1の切削ブレード21−1を装着する際には、第1の切削ユニット20−1のブレードカバー30の可動部32のみが離間位置に設定され、第2の切削ブレード21−2を装着する際には、第2の切削ユニット20−2のブレードカバー30の可動部32のみが離間位置に設定される。このために、切削装置1は、着脱治具40を用いて離間位置に位置付けられた切削ユニット20−1,20−2のスピンドル22−1,22−2に切削ブレード21−1,21−2を装着することができる。また、切削装置1は、着脱治具40等が近接位置に位置付けられている切削ユニット20の第2のフランジ部材25を回転させることができないので、近接位置に位置付けられている切削ユニット20のスピンドル22に切削ブレード21を装着したくても物理的に装着することができない。その結果、切削装置1は、オペレータの注意力が散漫になったとしても、スピンドル22に装着する切削ブレード21の種類を間違えることなく、スピンドル22に切削ブレード21を装着することができる。
【0057】
また、切削装置1は、切削ブレード21を収容するケース60に設置されたバーコード71を読み取る読み取りユニット80を備え、ブレード情報登録部101に読み取りユニット80が読み取った切削ブレード21の種類が登録される。このために、切削装置1は、読み取りユニット80でバーコード71を読み取ることにより、スピンドル22に装着する切削ブレード21の種類を間違えることなく、スピンドル22に切削ブレード21を装着することができる。
【0058】
また、切削装置1は、制御ユニット100の加工条件登録部102の切削条件登録部104−1,104−2に各切削ユニット20−1,20−2のスピンドル22−1,22−2に装着する切削ブレード21−1,21−2の種類を登録している。このために、切削装置1は、ブレード情報登録部101に登録された切削ブレード21の種類と切削条件登録部104−1,104−2に登録された切削ブレード21−1,21−2の種類とを照合することができる。その結果、ブレード情報登録部101に登録された種類の切削ブレード21を装着する切削ユニット20のブレードカバー30の可動部32のみを確実に離間位置に位置付けることができる。
【0059】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る切削装置を図面に基いて説明する。
図17は、実施形態2に係る切削装置の切削ユニットに装着される切削ブレードとケースとを示す斜視図である。
図17は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
実施形態2に係る切削装置1は、切削ブレード21の支持基台211の所定箇所に切削ブレード21の種類を特定する着脱シール70が貼着(設置)されていること以外、実施形態1と同じである。実施形態2に係る切削装置1の読み取りユニット80は、切削ブレード21に設置された着脱シール70のバーコード71を読み取る。
【0061】
実施形態2に係る切削装置1は、実施形態1と同様に、離間位置に位置付けられた切削ユニット20のスピンドル22に切削ブレード21を装着することにより、スピンドル22に装着する切削ブレード21の種類を間違えることなく、スピンドル22に切削ブレード21を装着することができる。
【0062】
また、実施形態2に係る切削装置1は、切削ブレード21の支持基台211の所定箇所に切削ブレード21の種類を特定する着脱シール70が貼着されているので、ケース60から切削ブレード21を取り外して、時間などが経過し、切削ブレード21を取り出したケース60が不明となっても、切削ブレード21の貼着されたバーコード71を読み取ることで、種類を誤ることなく切削ブレード21をスピンドル22に装着することができる。
【0063】
前述した実施形態1及び実施形態2に係る切削装置1の制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して切削装置1の上述した構成要素に出力する。また、制御ユニット100のブレード情報登録部101の機能は、読み取りユニット80が読み取った切削ブレード21の種類を演算処理装置が記憶装置に書き込むことにより実現される。制御ユニット100の加工条件登録部102の機能は、加工条件を演算処理装置が記憶装置に書き込むことにより実現される。即ち、制御ユニット100のブレード情報登録部101及び加工条件登録部102の機能は、記憶装置により実現される。制御ユニット100の決定部103の機能は、演算処理装置が記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。実施形態1及び実施形態2に示された切削装置1は、読み取りユニット80がバーコード71を読み取って、ブレード情報登録部101に読み取りユニット80が読み取った切削ブレード21−1,21−2の種類が登録されるが、本発明では、オペレータが入力装置を操作して、ブレード情報登録部101に切削ブレード21−1,21−2の種類が登録されても良い。