(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜
図3を参照して、本発明の一実施形態による熱電変換モジュール100について、例示的に説明する。
図1は、熱電変換モジュール100の全体を示す概略斜視図である。
図2(a)は、高温側電極(第1電極)20の配置を示す概略平面図であり、
図2(b)は、低温側電極(第2電極)30の配置を示す概略平面図である。
図3は、熱源200上に取り付けられた熱電変換モジュール100を示す概略側面図である。
【0011】
熱電変換モジュール100は、熱電変換素子10の一方側の面が相対的に高温に曝され、他方側の面が相対的に低温に曝される環境下で使用され、高温側と低温側との温度差を電力に変換する発電装置であり、複数の熱電変換素子10と、複数の高温側電極(第1電極)20と、複数の低温側電極(第2電極)30とを有する。高温側電極20は、熱電変換素子10が高温に曝される側、つまり熱電変換素子10に対して熱源200側(
図1では下方側)に配置され、低温側電極30は、熱電変換素子10が低温に曝される側、つまり熱電変換素子10に対して熱源200側と反対側(
図1では上方側)に配置される。複数の熱電変換素子10は、高温側電極20と低温側電極30とを交互に介して、電気的に直列に接続されている。以下、電気的な接続を、単に、接続と表現することがある。なお、後述の電極線50を、熱電変換モジュール100の構成に含めて捉えてもよい。
【0012】
複数の熱電変換素子10は、p型およびn型の一方の導電型を有する熱電変換素子10aと、p型およびn型の他方の導電型を有する熱電変換素子10bとを含み、熱電変換素子10aと熱電変換素子10bとが、直列接続内で交互に並ぶように、行列状に配置されている。熱電変換素子10としては、公知のものを耐熱性等の要求に応じ適宜選択して用いることができ、例えばビスマステルル(BiTe)素子を用いることができる。
【0013】
熱電変換素子10と高温側電極20との接続、および、熱電変換素子10と低温側電極30との接続には、それぞれ、はんだを用いることができる。はんだ材料としては、公知のものを耐熱性等の要求に応じ適宜選択して用いることができ、例えば錫アンチモンを用いることができる。
【0014】
高温側電極20および低温側電極30は、銅材料で形成されており、好ましくは、5mass ppm以上55mass ppm以下の濃度のチタンと、3mass ppm以上12mass ppm以下の濃度の硫黄と、2mass ppm以上30mass ppm以下の濃度の酸素と、残部が銅と不可避的不純物である銅材料で形成されている。この銅材料は、半軟化温度が150℃以下(例えば130℃程度)であり、無酸素銅(OFC)の半軟化温度(220℃程度)よりも低い半軟化温度を有し、高純度銅の半軟化温度(130℃程度)と同程度の半軟化温度を有する。また、この銅材料は、例えば半軟化温度以上で熱処理された場合の伸び率が、同一温度で熱処理された無酸素銅の伸び率および高純度銅の伸び率と比べて高く、軟らかい銅材料である。このような銅材料を、軟質希薄銅合金材と呼ぶこととする。本実施形態において、高温側電極20および低温側電極30のうち、少なくとも高温側電極20は、軟質希薄銅合金材で形成されている。
【0015】
ここでいう半軟化温度とは、加工ひずみの蓄積された銅材と、完全に焼鈍された銅材の引張強度のちょうど、半分の引張強度を示す焼鈍温度のことである。例えば、加工度90%の伸線加工を行い、焼鈍を行っていない状態で引張強度を測定する。次に400℃1時間などの焼鈍を行い、完全に再結晶させた状態で引張強度を測定する。そして、焼鈍を行っていない状態での引張強度と完全に再結晶させた状態の引張強度とから平均引張強度を求める。次に200℃、150℃などの温度で1時間の熱処理を行い、各温度で熱処理した後の引張強度を測定し、先程求めた平均引張強度に一致する熱処理温度を求める。この熱処理温度が半軟化温度となる。また、ここでいう伸び率とは、引張強度を測定する際に、引張試験前の元の試験片長さをL0、引張試験後の試験片長さをL1とすると、(L1−L0)/L0×100で与えられ、破断後の永久伸びを原評点距離に対して百分率で表した値(%)として定義される。
【0016】
軟質希薄銅合金材は、700℃以上950℃以下の条件での熱処理により、圧延方向の結晶方位を<111>方向とすることができる。高温側電極20および低温側電極30のうち、少なくとも高温側電極20は、圧延方向の結晶方位が<111>方向である軟質希薄銅合金材で形成されて、複数の高温側電極20の結晶方位(<111>方向)が互いに平行になるように配置されていることが好ましい。
【0017】
複数の熱電変換素子10は、行列状に配置され、かつ直列接続されているため、隣接する熱電変換素子10同士を接続する電極として、行方向に隣接する熱電変換素子10同士を接続する行方向電極60、および、列方向に隣接する熱電変換素子10同士を接続する列方向電極61の両方が必要となる。行方向電極60は、行方向に隣接する2つの熱電変換素子10に亘るように行方向に延在する形状を有し、列方向電極61は、列方向に隣接する2つの熱電変換素子10に亘るように列方向に延在する形状を有する。
【0018】
本実施形態において、複数の高温側電極20は、行方向電極60および列方向電極61のうち、行方向電極60のみを含むように構成されており、複数の低温側電極30は、行方向電極60および列方向電極61の両方を含むように構成されている。つまり、隣接する行間での熱電変換素子10同士の接続は、高温側電極20では行われず、低温側電極30で行われる接続構造が構成されている。
【0019】
なお、複数の熱電変換素子10が構成する行列状配置の行と列のどちらを行と呼びどちらを列と呼ぶかについては任意性があるが、本実施形態では、高温側電極20により接続される熱電変換素子10が並ぶ方向を行方向と定義し、行方向に並ぶ熱電変換素子10の配置を行と呼ぶ。行方向と交差する方向を列方向と呼び、列方向に並ぶ熱電変換素子10の配置を列と呼ぶ。なお、
図1等では、行方向と列方向とが直交する配置を例示するが、行方向と列方向とは、直交していなくともよい。なお、
図1等では、4行、6列の配置を例示するが、行数および列数は、必要に応じて適宜選択することができる。
【0020】
詳細は後述するように、高温側電極20および低温側電極30は、それぞれ、行方向または列方向に延在する形状を有する導電部材を、必要に応じて適当な長さに切断することで形成できる。導電部材としては、軟質希薄銅合金材で形成され、延在方向の(圧延方向の)結晶方位が<111>方向とされたものを用いることが好ましく、例えば平角線が用いられる。
【0021】
行方向電極60は、導電部材を、延在方向が(圧延方向が)行方向と平行になるように配置することで形成され、列方向電極61は、導電部材を、延在方向が(圧延方向が)列方向と平行になるように配置することで形成される。このため、行方向電極60では、軟質希薄銅合金材の結晶方位(<111>方向)が、行方向と平行になっており、列方向電極61では、軟質希薄銅合金材の結晶方位(<111>方向)が、列方向と平行になっている。
【0022】
図2(a)および
図2(b)において、軟質希薄銅合金材の結晶方位(<111>方向)を、矢印70で示す。複数の高温側電極20は、行方向電極60および列方向電極61のうち、行方向電極60のみを含む。これにより、複数の高温側電極20における結晶方位(<111>方向)は、すべて行方向と平行になっている。つまり、複数の高温側電極20における結晶方位(<111>方向)は、互いに平行になっている。なおここで、「平行」とは、厳密に平行である場合に限定されず、実質的に平行であればよく、実質的に平行とは、平均的な方向に対する誤差が±5°以内であることをいう。
【0023】
一方、複数の低温側電極30は、行方向電極60および列方向電極61の両方を含む。このため、複数の低温側電極30における結晶方位(<111>方向)は、行方向と平行なものと、列方向と平行なものとが、混在している。
【0024】
熱電変換モジュール100は、複数の高温側電極20を共通に支持するセラミックス基板のような硬い高温側支持基板を有さず、また、複数の低温側電極30を共通に支持するセラミックス基板のような硬い低温側支持基板を有さない。
【0025】
これにより、複数の高温側電極20のそれぞれ、および、複数の低温側電極30のそれぞれは、独立して変形することができる。このように、硬い高温側支持基板および硬い低温側支持基板を有さない構造とすることで、曲面状の表面を持つ部材上への熱電変換モジュール100の取り付けが容易になる。
【0026】
例えば、
図3に示すように、曲面状の表面を持つ熱源200上に、高温側電極20を熱源200の表面形状に沿うよう湾曲させて配置することで、熱電変換モジュール100を取り付けることができる。熱源200としては、例えば、円筒状等の表面を持つボイラー、焼却炉、自動車のマフラー等が挙げられ、熱電変換モジュール100によって、このような熱源からの排熱を回収することができる。
【0027】
なお、低温側電極30は、熱源200に対して相対的に低温となる部材上に配置されていてもよいし、このような部材上に配置されていないくてもよい(つまり空冷であってもよい)。
【0028】
なお、必要に応じて、高温側電極20および低温側電極30のそれぞれの外側(熱電変換素子10と反対側)の表面や、隣接する高温側電極20同士、隣接する低温側電極30同士が対向する表面を、ガラス、樹脂等の絶縁材料でコーティングしてもよい。
【0029】
熱源200の運転と停止とに伴うヒートサイクルに起因して、高温側電極20および低温側電極30は、熱膨張と収縮とを繰り返す。また、熱源200は振動するものが多く、これに起因して、高温側電極20および低温側電極30は、振動に曝されることが多い。
【0030】
この結果、高温側電極20および低温側電極30を形成する銅材料に歪が蓄積し、銅材料が硬化することが懸念される。そして、銅材料の硬化により、高温側電極20および低温側電極30と、熱電変換素子10との熱膨張差による熱応力が大きくなり、熱電変換素子10、あるいは、高温側電極20および低温側電極30が割れて、排熱回収の効率低下等が生じることが懸念される。特に高温側電極20は、熱源200と接しているため、低温側電極30と比べて、このような問題が生じやすい。
【0031】
本実施形態では、少なくとも高温側電極20を形成する銅材料として、上述のような軟質希薄銅合金材、つまり半軟化温度が150℃以下の銅材料を用いている。このため、高温側電極20を、好ましくは150℃以上より好ましくは180℃以上となるような熱源200上に配置して使用することで、高温側電極20を形成する銅材料の焼鈍効果が得られる。つまり、熱電変換モジュール100で発電を行うと同時に、焼鈍により高温側電極20の銅材料の歪を低減させて、高温側電極20の軟らかさを維持することができる。これにより、熱電変換素子10や高温側電極20の割れを抑制し、排熱回収の効率低下等を抑制して、熱電変換モジュール100の信頼性を高めることができる。
【0032】
なお、低温側電極30も軟質希薄銅合金材で形成されて、低温側電極30についても好ましくは150℃以上より好ましくは180℃以上となるような環境で使用される場合、低温側電極30を形成する銅材料についても、焼鈍効果が得られる。
【0033】
ここで、第1の比較形態として、高温側電極20および低温側電極30を(少なくとも高温側電極20を)形成する銅材料として無酸素銅を用いる場合について考える。本実施形態で用いる軟質希薄銅合金材は、無酸素銅に比べて半軟化温度が低く、また、軟らかい。このため、本実施形態は、無酸素銅を用いた第1の比較形態と比べて、高温側電極20および低温側電極30を(少なくとも高温側電極20を)焼鈍しやすい利点を有し、また、高温側電極20および低温側電極30が(少なくとも高温側電極20が)変形しやすく、曲面状の表面を持つ熱源200上に熱電変換モジュール100を取り付けやすい利点を有する。
【0034】
第2の比較形態として、高温側電極20および低温側電極30を(少なくとも高温側電極20を)形成する銅材料として高純度銅を用いる場合について考える。本実施形態で用いる軟質希薄銅合金材は、高純度銅に比べて軟らかい。このため、本実施形態は、高純度銅を用いた第2の比較形態と比べて、高温側電極20および低温側電極30が(少なくとも高温側電極20が)変形しやすく、曲面状の表面を持つ熱源200上に熱電変換モジュール100を取り付けやすい利点を有する。
【0035】
軟質希薄銅合金材は、結晶方位(<111>方向)に直交する方向に曲げやすいという性質を有する。本実施形態では、複数の高温側電極20の結晶方位(<111>方向)が互いに平行になっていることで、複数の高温側電極20を共通の方向に曲げやすい構造が構成されている。より具体的に説明すると、複数の高温側電極20が、行方向と直交する方向であって、熱電変換素10が行列状に配置されている面(
図2(a)における紙面)と直交する方向に(つまり高温側電極20の厚さ方向に)曲げやすい構造が構成されている。これによりさらに、曲面状の表面(例えば特に、列方向と平行な軸を有する円筒状の表面)を持つ熱源200上への熱電変換モジュール100の取り付けが容易になる。
【0036】
熱電変換モジュール100は、直列接続の一端部および他端部にそれぞれ配置された端部電極に接続される電極線(ワイヤ)50を介して、外部の回路と接続される。なお、熱電変換素子10の配置等に応じて、端部電極は、高温側電極20となることも、低温側電極30となることもある。つまり、電極線50は、高温側電極20および低温側電極30のどちら側に接続されていてもよい。
図1は、端部電極が低温側電極30で構成される場合を例示する。
図7(a)は、変形例として、端部電極が高温側電極20で構成される場合を例示する。なお、端部電極の一方が高温側電極20で構成され、他方が低温側電極30で構成されていてもよい。
【0037】
電極線50は、接続される高温側電極20または低温側電極30との熱膨張率の差を抑制して接続部の破壊を抑制するために、銅材料で形成されていることが好ましく、高温側電極20または低温側電極30と溶接で接続されることが好ましい。なお、電極線50を信頼性に優れた溶接法で接続する観点からは、高温側電極20または低温側電極30の銅材料として、タフピッチ銅を用いることは好ましくない。タフピッチ銅は、亜酸化銅を多く含んでおり、溶接によりガスが発生し、溶接部に欠陥を多く含む。この溶接欠陥を低減するには、銅中の酸素を減らすか、酸素をあらかじめ添加元素と反応させて、溶接時に熱分解しないような強固な酸化物としておく必要がある。これに対して、本実施形態の軟質希薄銅合金材によれば、溶接部に欠陥を作りにくい性質を持っているため好適である。
【0038】
なお、電極線50が接続される端部電極としては、行方向に延在する形状のものを用いることも、列方向に延在する形状のものを用いることもできる。端部電極は、隣接する熱電変換10同士を接続する電極ではないが、端部電極についても、行方向に延在する形状のものを行方向電極60と呼び、列方向に延在する形状のものを列方向電極61と呼ぶ。
【0039】
次に、
図4(a)〜
図6(b)を参照して、熱電変換モジュール100の製造方法について、例示的に説明する。
図4(a)〜
図4(c)および
図6(a)、
図6(b)は、熱電変換モジュール100の製造方法を示す概略平面図である。
図5(a)〜
図5(c)は、熱電変換モジュール100の製造方法を示す概略断面図である。
【0040】
図4(a)および
図5(a)を参照する。下側治具300上に、複数の高温側電極20を構成する材料となる高温側導電部材(第1導電部材)21を配置し、真空吸着等で固定する。高温側導電部材21、および後述の低温側導電部材(第2導電部材)31としては、上述のように例えば、軟質希薄銅合金材で形成された平角線を用いることができる。平角線の長さ方向(延在方向)は、圧延方向と平行であり、圧延方向の結晶方位は、<111>方向となっている。なお、
図4(a)(および
図4(b)、
図4(c))では、下側治具300の図示は省略している。
【0041】
複数の高温側電極20が、行方向電極60と列方向電極61のうち行方向電極60のみ含むことに対応して、各行に、行方向に延在する向きで高温側導電部材21(平角線)を配置する。つまり、高温側導電部材21として、行方向に延在する形状を有し、結晶方位(<111>方向)が行方向と平行である行方向高温側導電部材(行方向第1導電部材)22を配置する。行方向高温側導電部材22は、いくつかの高温側電極20同士(行方向電極60同士)がつながった状態で配置され、後の工程で切断される。
【0042】
図4(b)および
図5(b)を参照する。高温側導電部材21上の、それぞれの熱電変換素子10が配置される位置に、メタルマスク等を用いて、はんだペースト40を印刷する。はんだペースト40上に(はんだペースト40を介して高温側導電部材21上に)、マウンターを用いて、熱電変換素子10を配置する。さらに、それぞれの熱電変換素子10の上面上に、メタルマスク等を用いて、はんだペースト41を印刷する。
【0043】
はんだペースト40、41としては、例えば錫アンチモンはんだが用いられる。熱電変換素子10としては、例えばBiTe素子が用いられる。それぞれの熱電変換素子10の行方向の寸法は例えば5mm程度であり、列方向の寸法は例えば5mm程度であり、厚さ(高さ)は例えば10mm程度である。行方向または列方向に隣接する熱電変換素子10同士の間隙は、例えば3mm程度である。
【0044】
図4(c)および
図5(c)を参照する。はんだペースト41を介して熱電変換素子10上に、複数の低温側電極30を構成する材料となる低温側導電部材(第2導電部材)31を配置する。例えば、低温側導電部材31を上側治具301に予め真空吸着等で固定しておき、上側治具301をガイドピン等により下側治具300と位置合わせすることで、低温側導電部材31を配置することができる。なお、
図4(c)では、上側治具301の図示は省略している。
【0045】
複数の低温側電極30が、行方向電極60および列方向電極61の両方を含むことに対応して、行方向の(少なくとも)中間部には、各行に、行方向に延在する向きで低温側導電部材31(平角線)を配置し、行方向の両端部には、それぞれ、列方向に延在する向きで低温側導電部材31(平角線)を配置する。つまり、低温側導電部材31として、行方向の中間部に、行方向に延在する形状を有し、結晶方位(<111>方向)が行方向と平行である行方向低温側導電部材(行方向第2導電部材)32を配置し、行方向の端部に、列方向に延在する形状を有し、結晶方位(<111>方向)が列方向と平行である列方向低温側導電部材(列方向第2導電部材)33を配置する。行方向低温側導電部材32は、いくつかの低温側電極30同士(行方向電極60同士)がつながった状態で配置され、後の工程で切断される。また、(少なくとも1つの)列方向低温側導電部材33は、いくつかの低温側電極30同士(列方向電極61同士)がつながった状態で配置され、後の工程で切断される。
【0046】
高温側導電部材21や低温側導電部材31に用いる平角線の厚さは例えば1mm程度であり、幅は例えば7mm程度である。高温側導電部材21や低温側導電部材31に用いる平角線の長さは、各部材が亘って配置される熱電変換素子10の個数等に応じて、適宜選択される。例えば、
図4(a)に示す下端の行に配置される行方向高温側導電部材22の長さは、6個の熱電変換素子10に亘るように選択される。また例えば、
図4(c)に示す右端の列に配置される列方向低温側導電部材33の長さは、4個の熱電変換素子10に亘るように選択される。
【0047】
高温側導電部材21および低温側導電部材31が熱電変換素子10を挟む積層構造が形成された後、治具300、301の全体を加熱し、はんだペースト40、41を溶融させて、はんだペースト40を介して高温側導電部材21と熱電変換素子10とを接続し、はんだペースト41を介して低温側導電部材31と熱電変換素子10とを接続する。
【0048】
図6(a)および
図6(b)を参照する。
図6(a)に示すように、ダイサーにより、高温側導電部材21を、つまり行方向高温側導電部材22を、つながった状態の高温側電極20間(行方向電極60間)が分離されるように、行方向の所定位置25、26において列方向に切断する。このようにして、複数の高温側電極20が形成される。
【0049】
図6(b)に示すように、ダイサーにより、低温側導電部材31のうち、行方向低温側導電部材32を、つながった状態の低温側電極30間(行方向電極60間)が分離されるように、行方向の所定位置35、36において列方向に切断する。このようにして、複数の低温側電極30のうち、行方向電極60の部分が形成される。また、ダイサーにより、低温側導電部材31のうち、(少なくとも1つの)列方向低温側導電部材33を、つながった状態の低温側電極30間(列方向電極61間)が分離されるように、列方向の所定位置37において行方向に切断する。このようにして、複数の低温側電極30のうち、列方向電極61の部分が形成される。以上のようにして、複数の低温側電極30が形成される。
【0050】
なお、隣接する高温側電極20同士の間隙、隣接する低温側電極30同士の間隙は、それぞれ、例えば1mm程度であり、ダイサーにより、間隙に相当する幅の導電部材を切り落とすことで形成される。
【0051】
その後、電極線50を溶接により接続する。以上のようにして、熱電変換モジュール100が作製される。
【0052】
本実施形態では、いくつかの高温側電極20同士がつながった状態で配置された高温側導電部材21を切断して複数の高温側電極20を形成することにより、高温側電極20を個々に配置する方法と比べて、複数の高温側電極20を効率的に配置することができる。このような利点は、低温側電極30についても同様である。
【0053】
なお、ここでは、電極線50と接続される端部電極となる低温側電極30を、行方向低温側導電部材32により形成して、行方向電極60として構成する場合を例示した。これに対応して、
図4(c)に示す行方向の左端部に配置される列方向低温側導電部材33は、切断されない工程の例となっている。端部電極は、構造を適宜変更することができ、例えば
図7(b)に示す他の変形例のように、列方向低温側導電部材33により形成して、列方向電極61として構成するようにしてもよい。このような場合は、行方向の左端部に配置される列方向低温側導電部材33を切断することで、端部電極を形成することができる。
【0054】
なお、高温側導電部材21上に熱電変換素子10を配置し、熱電変換素子10上に低温側導電部材31を配置する組立手順を例示したが、低温側導電部材31上に熱電変換素子10を配置し、熱電変換素子10上に高温側導電部材21を配置する組立手順としてもよい。
【0055】
また、高温側電極20を形成するための切断と、低温側電極30を形成するための切断とは、どちらを先に行ってもよい。また、低温側電極30を形成するための切断において、列方向の切断と、行方向の切断とは、どちらを先に行ってもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、高温側電極20および低温側電極30のうち、少なくとも高温側電極20を形成する銅材料として軟質希薄銅合金材を用いることで、少なくとも高温側電極20について、熱源200の熱を利用した焼鈍により、発電動作をさせながら銅材料の歪を低減させて、軟らかさを維持することができる。
【0057】
さらに、少なくとも高温側電極20について、延在方向の結晶方位が<111>方向である軟質希薄銅合金材で形成し、複数の高温側電極20の結晶方位(<111>方向)を互いに平行にすることで、複数の高温側電極20を共通の方向に曲げやすい構造が構成されて、曲面状の表面を持つ熱源200上への熱電変換モジュール100の取り付けが容易になる。
【0058】
行方向電極60および列方向電極61のうち行方向電極60のみを含むように、複数の高温側電極20を配置することで、複数の高温側電極20の結晶方位(<111>方向)を行方向と平行になるように揃えて配置することができる。
【0059】
以上、実施形態に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0060】
以下、本発明の好ましい形態について付記する。
【0061】
(付記1)
複数の熱電変換素子と、
前記熱電変換素子に対して熱源側に配置される複数の第1電極と、
前記熱電変換素子に対して前記熱源側と反対側に配置される複数の第2電極と、
を有し、
前記第1電極および前記第2電極のうち、少なくとも前記第1電極は、5mass ppm以上55mass ppm以下の濃度のチタンと、3mass ppm以上12mass ppm以下の濃度の硫黄と、2mass ppm以上30mass ppm以下の濃度の酸素と、残部が銅と不可避的不純物からなり、半軟化温度が150℃以下である銅材料で形成されている熱電変換モジュール。
【0062】
(付記2)
前記銅材料は、延在方向の結晶方位が<111>方向であり、
前記複数の第1電極は、前記銅材料の前記結晶方位が互いに平行になるように配置されている付記1に記載の熱電変換モジュール。
【0063】
(付記3)
前記複数の熱電変換素子は、行列状に配置されており、
前記複数の第1電極は、行方向に隣接する前記熱電変換素子同士を電気的に接続する行方向電極、および、列方向に隣接する前記熱電変換素子同士を電気的に接続する列方向電極のうち、行方向電極のみを含み、
前記複数の第2電極は、前記行方向電極および前記列方向電極の両方を含み、
前記複数の第1電極は、前記銅材料の結晶方位が前記行方向と平行になるように配置されている付記2に記載の熱電変換モジュール。
【0064】
(付記4)
さらに、前記第1電極または前記第2電極と溶接で接続された電極線を有する付記1〜3のいずれか1つに記載の熱電変換モジュール。
【0065】
(付記5)
前記第1電極および前記第2電極は、前記銅材料で形成された平角線で構成されている付記1〜4のいずれか1つに記載の熱電変換モジュール。
【0066】
(付記6)
前記複数の第1電極は、曲面状の表面を持つ前記熱源上に取り付けられている付記1〜5のいずれか1つに記載の熱電変換モジュール(熱電変換モジュールの取り付け構造)。
【0067】
(付記7)
複数の熱電変換素子と、
前記熱電変換素子に対して熱源側に配置される複数の第1電極と、
前記熱電変換素子に対して前記熱源側と反対側に配置される複数の第2電極と、
を有し、
前記第1電極および前記第2電極のうち、少なくとも前記第1電極は、5mass ppm以上55mass ppm以下の濃度のチタンと、3mass ppm以上12mass ppm以下の濃度の硫黄と、2mass ppm以上30mass ppm以下の濃度の酸素と、残部が銅と不可避的不純物からなり、半軟化温度が150℃以下である銅材料で形成されている熱電変換モジュールの製造方法であって、
前記複数の第1電極を構成する材料となる第1導電部材を、いくつかの第1電極同士がつながった状態で配置する工程と、
前記複数の熱電変換素子を配置する工程と、
前記複数の第2電極を構成する材料となる第2導電部材を、いくつかの第2電極同士がつながった状態で配置する工程と、
つながった状態の第1電極間が分離されるように、前記第1導電部材を切断する工程と、
つながった状態の第2電極間が分離されるように、前記第2導電部材を切断する工程と、
を有する熱電変換モジュールの製造方法。
【0068】
(付記8)
前記銅材料は、延在方向の結晶方位が<111>方向であり、
前記複数の第1電極は、前記銅材料の前記結晶方位が互いに平行になるように配置されており、
前記複数の熱電変換素子は、行列状に配置されており、
前記複数の第1電極は、行方向に隣接する前記熱電変換素子同士を電気的に接続する行方向電極、および、列方向に隣接する前記熱電変換素子同士を電気的に接続する列方向電極のうち、行方向電極のみを含み、
前記複数の第2電極は、前記行方向電極および前記列方向電極の両方を含み、
前記複数の第1電極は、前記銅材料の結晶方位が前記行方向と平行になるように配置されており、
前記第1導電部材を配置する工程では、前記第1導電部材として、前記行方向に延在する形状を有し、前記結晶方位が前記行方向と平行である行方向第1導電部材を配置し、
前記第1導電部材を切断する工程では、前記行方向第1導電部材を前記列方向に切断する、
付記7に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
【0069】
(付記9)
前記第2導電部材を配置する工程では、前記第2導電部材として、行の中間部に、前記行方向に延在する形状を有し、前記結晶方位が前記行方向と平行である行方向第2導電部材を配置し、行方向の端部に、前記列方向に延在する形状を有し、前記結晶方位が前記列方向と平行である列方向第2導電部材を配置し、
前記第2導電部材を切断する工程では、前記行方向第2導電部材を前記列方向に切断し、前記列方向第2導電部材を前記行方向に切断する、
付記8に記載の熱電変換モジュールの製造方法。