【実施例】
【0065】
以下、実施例および比較例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例および比較例に限定されるものではない。
【0066】
実施例1〜3および比較例1〜2では、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の特性評価方法によって、ラミネートセルをそれぞれ作製した後、ラミネートセルの充電容量および放電容量をそれぞれ評価した。以下、詳細について示す。
【0067】
(実施例1)
実施例1では、負極は、三菱化学製のリチウムイオン二次電池用負極材(天然黒鉛系)とPVDF(バインダー)を質量比90:10となるように混合し、NMP中に分散させてスラリー化した。このスラリーを、厚さ15μmの銅箔(負極集電体)にアプリケーターを用い、単位面積当たり3.1mg/cm
2に塗工した。その後、送風乾燥機で120℃×30分乾燥し、乾燥後の電極を、ロールプレスを用いて線圧390kgf/cmで圧延して、負極シートを得た。得られた負極シートを3.2cm×5.2cmで一角が幅10mmの帯状部(端子)が出た長方形に切り出した。そして、その帯状部から上記負極活物質層を除去し、銅箔を露出させて負極端子部を形成し、端子付きの負極シートを得た。
【0068】
正極は、正極活物質LiNi
0.5Mn
1.5O
4をアセチレンブラック(導電材)とPVDF(バインダー)を質量比85:10:5となるように混合し、NMP中に分散させてスラリー化した。このスラリーを、厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)にアプリケーターを用い、単位面積当たり5mg/cm
2に塗工した。その後、送風乾燥機で120℃×30分乾燥し、ロールプレスにて線圧180kgf/cmの荷重で圧延して、正極シートを得た。得られた正極シートを3cm×5cmで一角が幅10mmの帯状部(端子)が出た長方形に切り出した。そして、その帯状部から上記正極活物質層を除去し、アルミニウム箔を露出させて、正極端子部を形成し、端子付きの正極シートを得た。
【0069】
セパレーターは、リチウムイオン二次電池で一般的に用いられる厚さ20μmのポリプロピレン製微多孔膜セパレーターシートを5.8cm×3.4cmにカットしたものを、セパレーターシートとして負極側に用いた。また、正極側には、6cm×7cmにカットしたセルロースセパレーターシートを用いた。
【0070】
非水系電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)を容積比でEC/DMC=4:6の混合液にLiPF
6(1mol/L)を溶解した電解液を用いた。
【0071】
上述した材料を80℃で8時間減圧乾燥した後、露点−60℃未満のドライルームに持ち込み、外装サイズ80mm×90mmのラミネートセル型電池を組み立てた。
【0072】
コンディショニング処理として、25℃に制御された恒温槽の中で、電極部に対し、1.96×10
4Pa(0.2kgf/cm
2)の荷重をかけた状態で拘束し、12時間保管した。
【0073】
その後、充放電試験装置(会社名:北斗電工製、製品名:HJ1001SD8)を用いて0.2Cのレート(5時間で満充電となる電流値)で5Vまで充電する操作と、0.2Cのレートで3.5Vまで放電させる操作を行った。なお、充電、放電後間の休止時間は、10分とした。
【0074】
初期充放電容量として、25℃に制御された恒温槽の中で、電極部に対し、1.96×10
4Pa(0.2kgf/cm
2)の荷重をかけた状態で拘束し、充放電試験装置を用いて0.2Cのレート(5時間で満充電となる電流値)で4.8Vまで充電する操作と、0.2Cのレートで3.5Vまで放電させる操作を行った。なお、充電、放電後間の休止時間は、10分とした。
【0075】
実施例1で作製されたラミネートセルの初期充放電容量を評価した結果、表1に示すように、充電容量が119.5mAh/gであり、放電容量が117.9mAh/gであった。
【0076】
次に、充放電サイクル特性(耐久特性)の評価として、60℃に制御された恒温槽の中で、電極部に対し、1.96×10
4Pa(0.2kgf/cm
2)の荷重をかけた状態で拘束し、充放電試験装置を用いて2Cのレート(30分で満充電となる電流値)で4.9Vまで充電する操作と2Cのレートで3.5Vまで放電させる操作を200回(200cyc)繰り返した。なお、充電、放電後間の休止時間は、10分とした。
【0077】
実施例1で作製されたラミネートセルのサイクル特性(耐久特性)を評価した結果、表1に示すように、200cyc後の放電容量は、69.1mAh/gであった。
【0078】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様に、ラミネートセル型電池を作製した。
【0079】
コンディショニング処理として、25℃に制御された恒温槽の中で、電極部に対し、3.92×10
4Pa(0.4kgf/cm
2)の荷重をかけた状態で拘束し、12時間保管した。
【0080】
その後、充放電試験装置を用いて0.2Cのレート(5時間で満充電となる電流値)で5Vまで充電する操作と、0.2Cのレートで3.5Vまで放電させる操作を行った。なお、充電、放電後間の休止時間は、10分とした。
【0081】
初期充放電容量として、25℃に制御された恒温槽の中で、電極部に対し、3.92×10
4Pa(0.4kgf/cm
2)の荷重をかけた状態で拘束し、充放電試験装置を用いて0.2Cのレート(5時間で満充電となる電流値)で4.8Vまで充電する操作と、0.2Cのレートで3.5Vまで放電させる操作を行った。なお、充電、放電後間の休止時間は、10分とした。
【0082】
実施例2で作製されたラミネートセルの初期充放電容量を評価した結果、表1に示すように、充電容量が121.3mAh/gであり、放電容量が119.6mAh/gであった。
【0083】
次に、充放電サイクル特性(耐久特性)の評価として、60℃に制御された恒温槽の中で、電極部に対し、3.92×10
4Pa(0.4kgf/cm
2)の荷重をかけた状態で拘束し、充放電試験装置を用いて2Cのレート(30分で満充電となる電流値)で4.9Vまで充電する操作と2Cのレートで3.5Vまで放電させる操作を200回(200cyc)繰り返した。なお、充電、放電後間の休止時間は、10分とした。
【0084】
実施例2で作製されたラミネートセルのサイクル特性(耐久特性)を評価した結果、表1に示すように、200cyc後の放電容量は、68.2mAh/gであった。
【0085】
(実施例3)
実施例3では、実施例1と同様に、ラミネートセル型電池を作製した。
【0086】
コンディショニング処理として、25℃に制御された恒温槽の中で、電極部に対し、8.83×10
4Pa(0.9kgf/cm
2)の荷重をかけた状態で拘束し、12時間保管した。
【0087】
その後、充放電試験装置を用いて0.2Cのレート(5時間で満充電となる電流値)で5Vまで充電する操作と、0.2Cのレートで3.5Vまで放電させる操作を行った。なお、充電、放電後間の休止時間は、10分とした。
【0088】
初期充放電容量として、25℃に制御された恒温槽の中で、電極部に対し、8.83×10
4Pa(0.9kgf/cm
2)の荷重をかけた状態で拘束し、充放電試験装置を用いて0.2Cのレート(5時間で満充電となる電流値)で4.8Vまで充電する操作と、0.2Cのレートで3.5Vまで放電させる操作を行った。なお、充電、放電後間の休止時間は、10分とした。
【0089】
実施例3で作製されたラミネートセルの初期充放電容量を評価した結果、表1に示すように、充電容量が120.9mAh/gであり、放電容量が119.3mAh/gであった。
【0090】
次に、充放電サイクル特性(耐久特性)の評価として、60℃に制御された恒温槽の中で、電極部に対し、8.83×10
4Pa(0.9kgf/cm
2)の荷重をかけた状態で拘束し、充放電試験装置を用いて2Cのレート(30分で満充電となる電流値)で4.9Vまで充電する操作と2Cのレートで3.5Vまで放電させる操作を200回(200cyc)繰り返した。なお、充電、放電後間の休止時間は、10分とした。
【0091】
実施例3で作製されたラミネートセルのサイクル特性(耐久特性)を評価した結果、表1に示すように、200cyc後の放電容量は、79.1mAh/gであった。
【0092】
(比較例1)
比較例1では、実施例1と同様に、ラミネートセル型電池を作製した。
【0093】
コンディショニング処理として、25℃に制御された恒温槽の中で、電極部に対し、0.39×10
4Pa(0.04kgf/cm
2)の荷重をかけた状態で拘束し、12時間保管した。
【0094】
その後、充放電試験装置を用いて0.2Cのレート(5時間で満充電となる電流値)で5Vまで充電する操作と、0.2Cのレートで3.5Vまで放電させる操作を行った。なお、充電、放電後間の休止時間は、10分とした。
【0095】
初期充放電容量として、25℃に制御された恒温槽の中で、電極部に対し、0.39×10
4Pa(0.04kgf/cm
2)の荷重をかけた状態で拘束し、充放電試験装置を用いて0.2Cのレート(5時間で満充電となる電流値)で4.8Vまで充電する操作と、0.2Cのレートで3.5Vまで放電させる操作を行った。なお、充電、放電後間の休止時間は、10分とした。
【0096】
比較例1で作製されたラミネートセルの初期充放電容量を評価した結果、表1に示すように、充電容量が106.5mAh/gであり、放電容量が103.3mAh/gであった。
【0097】
次に、充放電サイクル特性(耐久特性)の評価として、60℃に制御された恒温槽の中で、電極部に対し、0.39×10
4Pa(0.04kgf/cm
2)の荷重をかけた状態で拘束し、充放電試験装置を用いて2Cのレート(30分で満充電となる電流値)で4.9Vまで充電する操作と2Cのレートで3.5Vまで放電させる操作を200回(200cyc)繰り返した。なお、充電、放電後間の休止時間は、10分とした。
【0098】
比較例1で作製されたラミネートセルのサイクル特性(耐久特性)を評価した結果、表1に示すように、200cyc後の放電容量は、52.9mAh/gであった。
【0099】
(比較例2)
比較例2では、実施例1と同様に、ラミネートセル型電池を作製した。
【0100】
コンディショニング処理として、25℃に制御された恒温槽の中で、電極部に対し、0.98×10
4Pa(0.1kgf/cm
2)の荷重をかけた状態で拘束し、12時間保管した。
【0101】
その後、充放電試験装置を用いて0.2Cのレート(5時間で満充電となる電流値)で5Vまで充電する操作と、0.2Cのレートで3.5Vまで放電させる操作を行った。なお、充電、放電後間の休止時間は、10分とした。
【0102】
初期充放電容量として、25℃に制御された恒温槽の中で、電極部に対し、0.98×10
4Pa(0.1kgf/cm
2)の荷重をかけた状態で拘束し、充放電試験装置を用いて0.2Cのレート(5時間で満充電となる電流値)で4.8Vまで充電する操作と、0.2Cのレートで3.5Vまで放電させる操作を行った。なお、充電、放電後間の休止時間は、10分とした。
【0103】
比較例2で作製されたラミネートセルの初期充放電容量を評価した結果、表1に示すように、充電容量が101.9mAh/gであり、放電容量が100.1mAh/gであった。
【0104】
次に、充放電サイクル特性(耐久特性)の評価として、60℃に制御された恒温槽の中で、電極部に対し、0.98×10
4Pa(0.1kgf/cm
2)の荷重をかけた状態で拘束し、充放電試験装置を用いて2Cのレート(30分で満充電となる電流値)で4.9Vまで充電する操作と2Cのレートで3.5Vまで放電させる操作を200回(200cyc)繰り返した。なお、充電、放電後間の休止時間は、10分とした。
【0105】
実施例3で作製されたラミネートセルのサイクル特性(耐久特性)を評価した結果、表1に示すように、200cyc後の放電容量は、68.5mAh/gであった。
【0106】
実施例1〜3および比較例1〜2で評価したラミネートセルの充電容量および放電容量、200cyc後放電容量の値について、下記の基準に基づいて3段階に分けて評価した。得られた結果を表1に示した。
【0107】
初期充放電容量 判定 基準
○: 充電容量および放電容量が、それぞれ110mAh/g以上である場合
△: 充電容量および放電容量のいずれかが、110mAh/g以上である場合
×: 充電容量および放電容量が、それぞれ110mAh/g未満である場合
【0108】
サイクル特性(耐久特性) 200cyc後放電容量 判定 基準
○: 放電容量が70mAh/g以上である場合
△: 放電容量が60mAh/g以上、70mAh/g未満である場合
×: 放電容量が60mAh/g未満である場合
【0109】
総合判定
○:初期充放電容量評価結果の判定およびサイクル特性評価結果の判定が、いずれも○である場合
△:初期充放電容量評価結果の判定およびサイクル特性評価結果の判定が、いずれにも×がなく、かつ、いずれかが△である場合
×:初期充放電容量評価結果の判定およびサイクル特性評価結果の判定が、いずれかが×である場合
【0110】
【表1】
【0111】
初期充放電容量について、実施例1〜3では、ラミネートセルを評価する際、ラミネートセルの電極部を1.96×10
4Pa(0.2kgf/cm
2)以上の圧力を維持することにより、充電容量と放電容量がともに115mAh/gを超えていた。
【0112】
以上より、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の特性評価方法(初期充放電容量評価)は、より正確な正極活物質の充電容量や放電容量を観察することができたので、有用であることが確認された。
【0113】
一方、比較例1〜2では、実施例1〜3と比較し、充放容量および放電容量が低い値が得られた。この結果により、5V級正極活物質の初期充放電容量評価には、電極部における低い拘束力が適さないことが確認された。
【0114】
サイクル特性(耐久特性)について、実施例3では、ラミネートセルを評価する際に、ラミネートセルの電極部を8.83×10
4Pa(0.9kgf/cm
2)以上の圧力を維持することにより、200cyc後の放電容量が70mAh/gを超えていた。
【0115】
以上より、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の特性評価方法(サイクル特性(耐久特性)評価)は、より正確な正極活物質の充電容量や放電容量を観察することができたので、有用であることが確認された。
【0116】
一方、実施例1〜2および比較例1〜2では、実施例3と比較し、200cyc後の放電容量が低い値が得られた。この結果により、5V級正極活物質のサイクル特性(耐久特性)評価には、8.83×10
4Pa以上の拘束力がより適していることが確認された。
【0117】
実施例1〜3では、初期充放電容量の評価には、1.96×10
4Pa以上の圧力を維持することが有効であることが確認された。実施例3によれば、サイクル特性(耐久特性)評価には8.83×10
4Pa以上の圧力を維持することが更に有効であることが確認された。