(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848515
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】シール水用配管の止水構造
(51)【国際特許分類】
F16L 55/17 20060101AFI20210315BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20210315BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
F16L55/17
F16J15/06 L
F16J15/10 G
F16J15/10 Y
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-31287(P2017-31287)
(22)【出願日】2017年2月22日
(65)【公開番号】特開2018-135962(P2018-135962A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】山内 伸一
【審査官】
渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−068661(JP,A)
【文献】
特開2015−129444(JP,A)
【文献】
実開昭62−167995(JP,U)
【文献】
実開平05−036193(JP,U)
【文献】
実開昭62−191995(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3012087(JP,U)
【文献】
特表2014−533344(JP,A)
【文献】
特開2007−024283(JP,A)
【文献】
特開2010−127342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/17
F16J 15/06
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メカニカルシールにシール水を供給するためのシール水用配管に生じた水漏れ箇所を止水する、シール水用配管の止水構造であって、
内圧が1000KPaG以上7000KPaG以下である前記シール水用配管の前記水漏れ箇所を覆うように配置される第1シートと、
前記第1シートの外側に配置される第2シートと、
前記第2シートの外側に配置される第3シートと、
前記第2シートおよび前記第3シートを介して前記第1シートを前記シール水用配管の前記水漏れ箇所に押し付けるクランプと、を備え、
前記第1シートは、前記第2シートよりも高い耐圧性で前記シール水用配管を流れるシール水に対する耐圧性を有するとともに、前記シール水用配管の外周面に沿って湾曲可能に構成され、
前記第2シートは、前記第1シートよりも高い弾性を有し、
前記第3シートは、前記第2シートよりも高い剛性を有する
シール水用配管の止水構造。
【請求項2】
前記第1シートは、フッ素樹脂シートで構成されている
請求項1に記載のシール水用配管の止水構造。
【請求項3】
前記第2シートは、ゴムシートで構成されている
請求項1または2に記載のシール水用配管の止水構造。
【請求項4】
前記第3シートは、金属シートで構成されている
請求項1〜3のいずれか1項に記載のシール水用配管の止水構造。
【請求項5】
前記クランプは、両端に雄ネジが形成されたU字形のボルトと、前記雄ネジの部分を挿通可能な貫通孔を有する座金と、前記雄ネジに螺合可能なナットと、を有し、
前記ボルトと前記座金との間に、前記シール水用配管、前記第1シート、前記第2シートおよび前記第3シートを挟んで前記ナットを締め付けてなる
請求項1〜4のいずれか1項に記載のシール水用配管の止水構造。
【請求項6】
前記フッ素樹脂シートの厚み寸法が、2mm以上4mm以下である
請求項2に記載のシール水用配管の止水構造。
【請求項7】
前記ゴムシートの厚み寸法が、2mm以上4mm以下である
請求項3に記載のシール水用配管の止水構造。
【請求項8】
前記シール水用配管の呼び径が、3/8インチ以上1インチ以下である
請求項1〜7のいずれか1項に記載のシール水用配管の止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール水用配管の止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラントで使用する機器(ポンプ、オートクレーブの撹拌部等)において、プロセスの気体や液体の漏れを嫌う場合や、機器内の圧力が高い場合は、回転機器の軸封部にメカニカルシールが使用される。また、メカニカルシールには、シール面の潤滑と冷却に寄与し、かつ機器内の気体や液体が外部に漏れないよう、シール媒体として水(以下、「シール水」という。)が使用される(たとえば、特許文献1)。
【0003】
シール水を使用するメカニカルシールには様々なタイプのものがある。一例を挙げると、(1)メカニカルシールの入口から出口へとシール水を排出するタイプ、(2)メカニカルシールの入口から入って出口に出たシール水を再び入口に戻して循環させる再利用タイプ、(3)メカニカルシールの入口側に一定の圧力を加えて軸封部にシール水を保持するタイプなど、多種多様のものがある。
【0004】
いずれのタイプのメカニカルシールでも、機器内の気体や液体の漏れを防ぐために、シール水の圧力を機器内の運転圧力よりも高く保持する必要がある。また、機器の運転中は、シール水の圧力を常に規定レベルに保持する必要がある。シール水の圧力が規定レベルから外れると、シール面の潤滑性の低下や冷却効果の低下などによりメカニカルシールが損傷する可能性がある。その結果、機器内の気体や液体が外部に漏れ出して機器を運転できなくなるおそれがある。また、機器内の液体や気体が外部に漏れると、周辺の環境にも影響を与えるおそれがある。
【0005】
したがって、何らかの原因でシール水の圧力を規定レベルに保持することが困難になった場合は、機器の運転を一旦停止し、メカニカルシールの交換などの補修を行う必要がある。また、メカニカルシールにシール水を供給するために用いる配管(以下、「シール水用配管」という。)に何らかの原因で水漏れが発生した場合も、シール水の圧力を規定レベルに保持することが困難になるため、上記同様に機器の運転を一旦停止し、シール水用配管の交換などの補修を行う必要がある。
【0006】
発電プラントや化学プラント等の配管から内部を流れる流体が漏洩した場合の補修方法としては、内部流体を抜き取り漏洩箇所を乾燥させた後に充填材や接着剤で補修するものがある(たとえば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−129444号公報
【特許文献2】特開2006−329249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に記載の技術では、配管内の流体を抜き取ってから補修するため、設備の運転を停止する必要がある。これに対し、連続運転のプラントでは、そこで使用している機器の運転を停止すると、設備の稼働率や生産性が低下してしまう。
【0009】
そこで本発明においては、軸封部にメカニカルシールを用いた機器の運転を停止させなくても、シール水用配管の水漏れを補修することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、
メカニカルシールにシール水を供給するためのシール水用配管に生じた水漏れ箇所を止水する、シール水用配管の止水構造であって、
前記シール水用配管の前記水漏れ箇所を覆うように配置される第1シートと、
前記第1シートの外側に配置される第2シートと、
前記第2シートの外側に配置される第3シートと、
前記第2シートおよび前記第3シートを介して前記第1シートを前記シール水用配管の前記水漏れ箇所に押し付けるクランプと、を備え、
前記第1シートは、前記第2シートよりも高い耐圧性を有し、
前記第2シートは、前記第1シートよりも高い弾性を有し、
前記第3シートは、前記第2シートよりも高い剛性を有する
シール水用配管の止水構造である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軸封部にメカニカルシールを用いた機器の運転を停止させなくても、シール水用配管の水漏れを補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るシール水用配管の止水構造の構成例を示す要部断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の実施形態においては、次の順序で説明を行う。
1.発明者の知見
2.シール水用配管の止水構造
3.シール水用配管の止水方法
4.実施形態の効果
5.変形例等
【0014】
<1.発明者の知見>
メカニカルシールにシール水を供給するためのシール水用配管には、メカニカルシールの入口に接続される配管や出口に接続される配管などがある。各々の配管は、配管サポートと呼ばれる金具で支持される。メカニカルシールを使用するポンプなどの機器は稼働中に振動するため、その影響で配管サポートと配管が擦れる。その結果、配管の一部が擦れて薄くなり、ピンホールが発生することがある。配管にピンホールが発生すると、そこからシール水が漏れ出すため、シール水用配管を流れるシール水の圧力が下がる。その結果、シール水の圧力を規定レベルに保持することが困難になる。その際、機器の稼働を一旦停止してから配管の交換や補修を行うと、設備の稼働率や生産性が低下してしまう。
【0015】
そこで本発明者は、メカニカルシールのシール水用配管にピンホールなどの孔があき、そこから水漏れが発生した場合、機器の運転を停止しなくても水漏れを補修しようと、次のような止水処理を施した。まず、シール水用配管にゴムシートを押し当てピンホールを塞ぎ、次いで、シール水用配管とゴムシートをクランプで挟み込んだ。そうしたところ、シール水用配管からシール水が漏れ出さなくなった。
【0016】
ところが、上記の止水処理を施してから数10分ほど経過した段階で、シール水用配管から徐々にシール水が漏れ出すようになった。そこで本発明者は、水漏れが再発した原因を調べてみた。その結果、ゴムシートに孔があいて水漏れが生じていることが判明した。また、使用するゴムシートの厚さを厚くした場合、あるいは複数枚のゴムシートを重ねて使用した場合は、補修してから水漏れが再発するまでの期間が延びるものの、いずれの場合も最終的にはゴムシートに孔があいてしまうことが判明した。
【0017】
このような知見に基づき、本発明者は、軸封部にメカニカルシールを用いた機器の運転を停止させなくても、シール水用配管の水漏れを補修することができるとともに、補修後の水漏れの再発を有効に抑制することができる止水構造について鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
【0018】
<2.シール水用配管の止水構造>
図1は本発明の実施形態に係るシール水用配管の止水構造の構成例を示す要部断面概略図である。
【0019】
図示した止水構造は、シール水用配管1に生じたピンホールなどの水漏れ箇所2を止水するための構造であって、第1シート11と、第2シート12と、第3シート13と、クランプ14と、を備える。
【0020】
(シール水用配管)
シール水用配管1は、断面円形の配管である。メカニカルシールに供給されるシール水は、このシール水用配管1の内部を流れる。シール水用配管1内を流れるシール水の圧力は、メカニカルシールを使用した機器のガス漏れや液漏れを防止するために、機器内の圧力よりも高い圧力に保持される。具体的には、シール水の圧力は、一般的な水道の水圧にくらべてその数倍から十数倍と非常に高い圧力レベルに保持される。このため、シール水用配管1の材質には金属が用いられている。
【0021】
本実施形態に係る止水構造は、好ましくは、呼び径が3/8インチ以上1インチ以下のシール水用配管1の止水に適用される。また、本実施形態に係る止水構造は、シール水用配管1のように配管の内圧(シール水の圧力)が非常に高い場合、好ましくは、1000KPaG以上7000KPaG以下の場合に適用される。
【0022】
(第1シート)
第1シート11は、シール水用配管1の水漏れ箇所2を覆うように配置される。第1シート11は、シール水用配管1の外周面に直接、接触するように取り付けられる。また、第1シート11は、シール水用配管1の外周面に沿うように湾曲状(C字形)に曲げられる。
【0023】
第1シート11は、第2シート12よりも高い耐圧性を有するシートで構成される。第1シート11は、好ましくは、フッ素樹脂シートで構成される。フッ素樹脂シートは、耐圧性の他にも、引っ張り強さ、伸び、衝撃強さに優れる。このため、フッ素樹脂シートで第1シート11を構成すれば、水漏れ箇所2においてシール水用配管1内を流れる高圧のシール水に押されても、シートに孔があきにくくなる。また、フッ素樹脂シートは、シール水用配管1の外周面に沿って湾曲状に折り曲げることが可能である。ちなみに、フッ素樹脂シート以外の樹脂シート(たとえば、ノンアスベストタイプのガスケットシートなど)で第1シート11を構成した場合は、シール水用配管1の外周面に沿ってシートを折り曲げる際にシートにクラックが入るおそれがある。また、シートにクラックが入らなくても、高圧のシール水に押されてシートに孔があくおそれがある。
【0024】
フッ素樹脂シートの厚み寸法は、次に述べる理由により、2mm以上、4mm以下が好ましい。フッ素樹脂シートの厚み寸法が2mm未満の場合は、高圧のシール水に押されてシートに孔があくおそれがある。また、フッ素樹脂シートの厚み寸法が4mmを超える場合は、シール水用配管1の外周面に沿ってシートを折り曲げる際にシートにクラックが入るおそれがある。
【0025】
フッ素樹脂シートとしては、たとえば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ECTFE(クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体)等のシートを使用することができる。
【0026】
(第2シート)
第2シート12は、第1シート11の外側に配置される。本実施形態においては、シール水用配管1の直径方向において、シール水用配管1の中心に近い側を内側、シール水用配管1の中心から遠い側を外側とする。第2シート12は、第1シート11に密着するように取り付けられる。また、第2シート12は、上記第1シート11と同様に湾曲状に曲げられる。
【0027】
第2シート12は、第1シート11よりも高い弾性を有するシートで構成される。ここで記述する「弾性」は「弾力性」と同義である。第2シート12は、好ましくは、ゴムシートで構成される。ゴムシートは、フッ素樹脂シートからなる第1シート11に比べて柔軟性に優れる。このため、第1シート11と第3シート13との間に第2シート12を挟んでクランプ14により加圧した場合に、第1シート11と第3シート13との間で両者の密着性を高める密着シートとして第2シート12を機能させることができる。また、第2シート12の介在により、クランプ14の締め付け力を第1シート11に効率良く伝達させることができる。なお、上記の「密着」とは、第1シート11と第3シート13との間に隙間が生じない態様をいう。
【0028】
ゴムシートの厚み寸法は、次に述べる理由により、2mm以上、4mm以下が好ましい。ゴムシートの厚み寸法が2mm未満の場合は、第1シート11と第3シート13の密着度合にバラツキが生じてクランプ14の締め付け力が第1シート11に確実に伝達されないおそれがある。また、ゴムシートの厚み寸法が4mmを超える場合は、クランプ14の締め付け力がゴムシートに吸収されて第1シート11に効率良く伝達されないおそれがある。
【0029】
ゴムシートとしては、たとえば、ブチルゴム、天然ゴム(NR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレン/ネオプレンゴム(CR)、シリコーンゴム(Si/SR/VMQ/Q)、フッ素ゴム/バイトン(FKM/FPM)、アフラス/フッ素ゴム(FKM)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EP/EPT/EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム/ハイパロン(CSM)、ウレタンゴム(PUR/U)等のシートを使用することができる。
【0030】
(第3シート)
第3シート13は、第2シート12の外側に配置される。第3シート13は、第2シート12に密着するように取り付けられる。また、第3シート13は、上記第1シート11および第2シート12と同様に湾曲状に曲げられる。
【0031】
第3シート13は、第2シート12よりも高い剛性を有するシートで構成される。第3シート13は、好ましくは、金属シート(たとえば、ステンレス、カーボンスチール、チタンなど)で構成される。金属シートは、ゴムシート等にくらべて変形しづらい。このため、第1シート11と第3シート13との間に第2シート12を挟んでクランプ14により加圧した場合に、クランプ14の締め付け力をほとんど減衰させることなく第2シート12に伝えることができる。また、第2シート12と第3シート13は互いに面で接触するため、クランプ14の締め付け力を面圧(単位面積あたりの接触圧)として第3シート13から第2シート12に伝えることができる。
【0032】
(クランプ)
クランプ14は、第2シート12および第3シート13を介して第1シート11をシール水用配管1の水漏れ箇所2に押し付けるものである。クランプ14は、両端に雄ネジ15aが形成されたU字形のボルト15と、ボルト15の雄ネジ15aの部分を挿通可能な貫通孔16aを有する座金16と、ボルト15の雄ネジ15aに螺合可能なナット17と、を有する。ここで記述する「挿通」とは挿し通すことをいい、「螺合」とはネジ同士を回転によってかみ合わせることをいう。
【0033】
ボルト15は、シール水用配管1とボルト15との間に、第1シート11と第2シート12と第3シート13を挟むように配置される。ボルト15の両端の雄ネジ15aは、それぞれに対応する座金16の貫通孔16aに挿通される。座金16は、平らな金属製の板で構成されている。座金16は、シール水用配管1の外周方向において、第1シート11や水漏れ箇所2とは反対側に配置される。ナット17は、六角ナット等で構成される。ナット17は、座金16の貫通孔16aを挿通される雄ネジ15aに螺合される。
【0034】
<3.シール水用配管の止水方法>
次に、本発明の実施形態に係るシール水用配管の止水方法について説明する。
まず、シール水用配管1にピンホールなどが発生し、そこからシール水が漏れている場合は、水漏れ箇所2を塞ぐように第1シート11を取り付け、さらにその上から第2シート12を重ねて取り付ける。その際、水漏れ箇所2からシール水が勢いよく噴出している場合は、水漏れ箇所2から少しずらした位置で第1シート11をシール水用配管1の外周面に接触(密着)させ、その状態で第1シート11をシール水用配管1の長さ方向にずらして水漏れ箇所2を塞ぐとよい。
【0035】
次に、第2シート12の外側に第3シート13を重ねて取り付けた後、それら3つのシート(11,12,13)をシール水用配管1と共にクランプ14によって挟み込む。その際、ボルト15のU字形の曲がった部分を第3シート13の外側に接触させる。また、ボルト15の両端に形成された雄ネジ15aをそれぞれに対応する座金16の貫通孔16aに挿通する。そして、座金16から突出する雄ネジ15aにナット17を螺合させて締め付ける。
【0036】
これにより、シール水用配管1と3つのシート(11,12,13)がクランプ14によって挟み込まれる。また、ナット17の締め付け力が、ボルト15のU字形の部分に接触する第3シート13とその内側の第2シート12を介して111に伝達される。その結果、第1シート11がシール水用配管1の水漏れ箇所2に押し付けられる。これにより、シール水の漏れを止めることができる。
【0037】
<4.実施形態の効果>
本発明の実施形態によれば、シール水用配管1の水漏れ箇所2を覆うように第1シート11を配置し、その外側から、クランプ14の力により、第2シート12および第3シート13を介して第1シート11をシール水用配管1の水漏れ箇所2に押し付けて止水する構成を採用している。これにより、軸封部にメカニカルシールを用いた機器の運転を停止させなくても、シール水用配管1の水漏れを補修することができる。また、第2シート12よりも耐圧性の高い第1シート11で水漏れ箇所2を直接塞ぐようにしているため、弾性の高い第2シート12で水漏れ箇所2を直接塞ぐ場合に比べて、シートに孔があきにくくなる。また、第1シート11と第3シート13との間に弾性の高い第2シート12を配置する一方、第2シート12の外側にこれよりも剛性の高い第3シート13を配置しているため、クランプ14の力を効率良く第1シート11に伝えることができる。これにより、補修後の水漏れの再発を有効に抑制することができる。
【0038】
<実施例および比較例>
(実施例)
シール水用配管に生じたピンホールをフッ素樹脂シートで覆うとともに、フッ素樹脂シートの外側にゴムシートと金属シートを順に配置した。そして、それら3つのシートをシール水用配管と共にクランプで締め付けた。シール水用配管の径(呼び径)は1/2インチ、シール水の圧力は7000KPaG、フッ素樹脂シートの厚み寸法は3mm、ゴムシートの厚み寸法は3mm、金属シートの厚み寸法を4mmとした。クランプには、U字形のボルトと、座金と、2つのナットとを使用し、ナットの締め付けによってフッ素樹脂シートをシール水用配管に押し付けた。その結果、シール水用配管の水漏れは止まり、補修から2ヶ月が経過した段階でも水漏れは再発しなかった。
【0039】
(比較例)
シール水用配管に生じたピンホールをゴムシートで覆うとともに、ゴムシートの外側に金属シートを配置した。そして、それら2つのシートをシール水用配管と共にクランプで締め付けた。シール水用配管の径(呼び径)は1/2インチ、シール水の圧力は7000KPaG、ゴムシートの厚み寸法は3mm、金属シートの厚み寸法を4mmとした。クランプには、U字形のボルトと、座金と、2つのナットとを使用し、ナットの締め付けによってゴムシートをシール水用配管に押し付けた。その結果、シール水用配管の水漏れは一時的に止まったものの、補修から20分ほど経過した時点でゴムシートに孔があいて水漏れが再発した。
【0040】
<5.変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0041】
たとえば、上記実施形態においては、シール水用配管1に生じたピンホールによる水漏れを補修する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、たとえばシール水用配管1に生じたクラックなど、他の要因で発生する水漏れを補修する場合にも適用可能である。
【0042】
また、上記実施形態においては、ボルト15と座金16と2つのナット17を用いて、クランプ14を構成したが、たとえば緩み止めを目的として、座金16とナット17との間に平座金またはバネ座金などを取り付けた構成を採用してもよいし、ナット17を2つ重ねて使用するダブルナット構造を採用してもよい。また、ナット17の締め付けによる座金16の変形を抑制するために、板状の座金16を複数枚重ねて使用してもよい。また、クランプ14は、上述のように第1シート11をシール水用配管1に押し付けることが可能であれば、どのような構成を採用してもかまわない。
【符号の説明】
【0043】
1…シール水用配管
2…水漏れ箇所
11…第1シート
12…第2シート
13…第3シート
14…クランプ
15…ボルト
16…座金
17…ナット