特許第6848539号(P6848539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6848539水酸基を含有する環状アミン化合物が固定化された担持物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848539
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】水酸基を含有する環状アミン化合物が固定化された担持物
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/22 20060101AFI20210315BHJP
   B01J 23/04 20060101ALI20210315BHJP
   C07D 487/08 20060101ALN20210315BHJP
【FI】
   B01J20/22 A
   B01J23/04 Z
   !C07D487/08
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-40638(P2017-40638)
(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公開番号】特開2017-164737(P2017-164737A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2020年2月12日
(31)【優先権主張番号】特願2016-45864(P2016-45864)
(32)【優先日】2016年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤原 裕志
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−198166(JP,A)
【文献】 特開2012−002606(JP,A)
【文献】 国際公開第81/002256(WO,A1)
【文献】 特開2012−149225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
[上記一般式(1)中、R,Rは各々独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。mは1又は2である。但し、上記一般式(1)で表される化合物に光学活性体、ジアステレオマー、幾何異性体が存在する場合は、それぞれの混合物及びそれらが単離された異性体の双方を包含する。]
又は、下記一般式(2)
【化2】
[上記一般式(2)中、R〜R10は各々独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。但し、上記式(2)で表される化合物に光学活性体、ジアステレオマー、幾何異性体が存在する場合は、それぞれの混合物及びそれらが単離された異性体の双方を包含する。]
で表されるアミン化合物の少なくとも一種が担体に固定化された担持物。
【請求項2】
担体が、活性炭、シリカ、シリカゲル、アルミナ、アルミノシリケート、ゼオライト、マグネシア、チタニア、ジルコニア、セリア、珪藻土、ヒドロキシアパタイトからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の担持物。
【請求項3】
担体が活性炭であることを特徴とする請求項1に記載の担持物。
【請求項4】
上記一般式(1)中のR,Rが全て水素原子であり、かつmが1であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の担持物。
【請求項5】
上記一般式(2)中のR〜R10が全て水素原子であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の担持物。
【請求項6】
上記一般式(1)で表されるアミン化合物と上記一般式(2)で表されるアミン化合物とが担体に固定化された担持物であって、上記一般式(1)で表されるアミン化合物に対して、上記一般式(2)で表されるアミン化合物を1〜30重量%含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の担持物。
【請求項7】
担体に対するアミン化合物の固定化量が0.1〜20重量%であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の担持物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の担持物からなる化学物質の吸着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸基を含有する環状アミン化合物が固定化された担持物に関する。
【背景技術】
【0002】
産業界では多様な化学物質が使用され、その中には有害、有毒な化学物質も多く存在する。これら有害、有毒な化学物質の漏洩や流出を防ぐことは、周辺の環境や地域の安全を維持する上で重要なことである。
【0003】
例えば、工業、農業、医療分野で幅広く使用されるヨウ素は、揮発性が高く、反応性が大きいことから、プラント等より漏洩や流出が起きると空気汚染を引き起こす。特に、原子力発電所で発生する放射性ヨウ素は、上記に加え、人体に対して重篤な影響を与えることから、被害は甚大になる。
【0004】
このような背景から、ヨウ素の漏洩や流出による被害を阻止するため、これらを吸着により除去することが行われている。ヨウ素の吸着には、環状アミン化合物が固定化された担持物(代表的なものでは、トリエチレンジアミンが固定化された活性炭)が有効であることが知られている。トリエチレンジアミンが固定化された活性炭は、ヨウ素吸着に関して、高い選択性と吸着量を示す(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、有害、有毒な化学物質の漏洩時には、作業者の吸入による化学物質の暴露を防止するため、防毒マスクに代表される保護具が用いられる。本用途においても、環状アミン化合物が固定化された担持物は効果を発揮することが知られている。例としては、塩化シアンの除去(例えば、特許文献2参照)、二酸化窒素の除去(例えば、特許文献3参照)が挙げられる。このように、環状アミン化合物が固定化された担持物は種々の化学物質の吸着、除去に有用である。
【0006】
しかし、トリエチレンジアミンに代表される環状アミン化合物は、揮発性が高い物質であり、使用時に担体から脱離し、固定化量が減少することによる性能低下や、揮発した環状アミン化合物による人体への悪影響が起きる恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4111833号
【特許文献2】特公平4−74031号公報
【特許文献3】特開2007−38076公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、担体からの環状アミン化合物の脱離が抑制された、環状アミン化合物が固定化された担持物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、環状アミン化合物として、水酸基を含有する環状アミン化合物を用いると、担体からの環状アミン化合物の脱離を抑制することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりの水酸基を含有する環状アミン化合物が固定化された担持物に関する。
【0011】
[1]下記一般式(1)
【0012】
【化1】
【0013】
[上記一般式(1)中、R,Rは各々独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。mは1又は2である。但し、上記一般式(1)で表される化合物に光学活性体、ジアステレオマー、幾何異性体が存在する場合は、それぞれの混合物及びそれらが単離された異性体の双方を包含する。]
又は、下記一般式(2)
【0014】
【化2】
【0015】
[上記一般式(2)中、R〜R10は各々独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。但し、上記式(2)で表される化合物に光学活性体、ジアステレオマー、幾何異性体が存在する場合は、それぞれの混合物及びそれらが単離された異性体の双方を包含する。]
で表されるアミン化合物の少なくとも一種が担体に固定化された担持物。
【0016】
[2]担体が、活性炭、シリカ、シリカゲル、アルミナ、アルミノシリケート、ゼオライト、マグネシア、チタニア、ジルコニア、セリア、珪藻土、ヒドロキシアパタイトからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記[1]に記載の担持物。
【0017】
[3]担体が活性炭であることを特徴とする上記[1]に記載の担持物。
【0018】
[4]上記一般式(1)中のR,Rが全て水素原子であり、かつmが1であることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の担持物。
【0019】
[5]上記一般式(2)中のR〜R10が全て水素原子であることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の担持物。
【0020】
[6]上記一般式(1)で表されるアミン化合物と上記一般式(2)で表されるアミン化合物とが担体に固定化された担持物であって、上記一般式(1)で表されるアミン化合物に対して、上記一般式(2)で表されるアミン化合物を1〜30重量%含むことを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の担持物。
【0021】
[7]担体に対するアミン化合物の固定化量が0.1〜20重量%であることを特徴とする上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の担持物。
【0022】
[8]上記[1]乃至[7]のいずれかに記載の担持物からなる化学物質の吸着剤。
【発明の効果】
【0023】
本発明の担持物は、担体からの環状アミン化合物の脱離を抑制することができるため、作業環境を悪化させることなく、種々の化学物質の吸着、除去に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
本発明の水酸基を含有する環状アミン化合物を固定化した担持物は、上記一般式(1)又は、上記一般式(2)で表されるアミン化合物の少なくとも一種が担体に固定化された担持物であることをその特徴とする。
【0026】
本発明において、上記一般式(1)で表される化合物に光学活性体、ジアステレオマー、幾何異性体が存在する場合は、上記一般式(1)で表される化合物には、それぞれの混合物及びそれらが単離された異性体の双方が包含される。また、上記一般式(2)で表される化合物に光学活性体、ジアステレオマー、幾何異性体が存在する場合は、上記一般式(2)で表される化合物には、それぞれの混合物及びそれらが単離された異性体の双方が包含される。
【0027】
上記一般式(1)において、置換基R,Rは上記の定義に該当すれば良く、特に限定するものではないが、例えば、水素原子、水酸基、ヒドロキシメチル基、炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基)、炭素数1〜4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基等)を挙げることができる。これらのうち、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシ基である。
【0028】
本発明において好ましい化合物としては、上記一般式(1)において、置換基R,Rが各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又はヒドロキシメチル基を表す化合物が挙げられる(但し、RとRが水素原子を除いて全て同じ置換基を表すことはない)。さらに好ましい化合物としては、上記一般式(1)において、置換基R,Rの全てが水素原子である化合物が挙げられる。
【0029】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
【化3】
【0031】
また、上記一般式(2)において、置換基R〜R10は上記の定義に該当すれば良く、特に限定するものではないが、例えば、水素原子、水酸基、ヒドロキシメチル基、炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基)、炭素数1〜4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基等)を挙げることができる。これらのうち、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシ基である。
【0032】
本発明において好ましい化合物としては、上記一般式(2)において、置換基R〜R10が各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又はヒドロキシメチル基を表す化合物(但し、置換基R〜R10が水素原子を除いて全て同じ置換基を表すことはない)が挙げられる。さらに好ましい化合物としては、上記一般式(2)において、置換基R〜R10の全てが水素原子である化合物が挙げられる。
【0033】
上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
【化4】
【0035】
上記一般式(1)で表される化合物の製造方法は、特に限定するものではないが、例えば、Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinenil,10,1404(1980)や、国際公開第95/18104号パンフレットに記載の方法により製造可能である。また、Journal of Medicinal Chemistry(1993),36(15),2075−2083や、特開2010−120887号公報に記載の方法等によって誘導されるヒドロキシアルキルピペラジン類のエチレンオキサイド付加物を分子内環化することによっても製造可能である。さらには、例えば、特開2010−37325号公報に記載の方法、すなわちジヒドロキシアルキルピペラジン類の環化反応により製造することができる。これらの方法のうち、反応工程及び生産効率の観点から、ジヒドロキシアルキルピペラジン類の環化反応によって製造する方法が望ましい。
【0036】
上記一般式(2)で表されるアミン化合物の製造方法は、特に限定するものではないが、例えば、上記した方法と同様の方法、すなわち、ジヒドロキシアルキルピペラジン類の環化反応によって、上記一般式(1)で表されるアミン化合物と併産する方法が特に好ましい。
【0037】
このジヒドロキシアルキルピペラジン類の環化反応は、気相で行っても液相で行っても良いが、反応温度が高温であることから、気相反応が好ましい。また、反応は懸濁床による回分、半回分、連続式でも、また固定床流通式でも実施できるが、工業的には、固定床流通式が操作、装置、経済性の面から有利である。
【0038】
ジヒドロキシアルキルピペラジン類の環化反応は、通常、触媒存在下に行われる。使用される触媒としては、特に限定するものではないが、例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライト、ゼオラム、チタニア、ジルコニア、リン酸アルミニウム等の無機担体に、無機塩を含浸させることによって調製可能である。無機塩としては、特に限定するものではないが、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含む塩や、無機リン化合物が好適に使用される。
【0039】
置換基を有する上記一般式(1)及び上記一般式(2)で表される化合物の製造方法については、対応する置換ピペラジンを使用することで製造可能である。置換ピペラジンの製造方法は、上記したヒドロキシアルキルピペラジン類の合成に関する公知技術等によって製造可能である。
【0040】
本発明において、必要であれば、上述したアミン化合物以外に、他のアミンを用いることができる。他のアミンとしては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、上記一般式(1)又は、上記一般式(2)以外の環状アミンが挙げられる。
【0041】
本発明の担体としては、特に限定するものではないが、例えば、活性炭、シリカ、シリカゲル、アルミナ、アルミノシリケート、ゼオライト、マグネシア、チタニア、ジルコニア、セリア、珪藻土、ヒドロキシアパタイトを挙げることができる。これらのうち、好ましくは、活性炭である。また、これらの担体を2種以上組み合わせても良く、その種類及び比率は任意に変更することができる。
【0042】
担体の原材料、合成法、表面積、細孔径等は従来公知のものを使用することができる。また、担体の形状としては、特に限定するものではないが、例えば、球状(球状粒子等)、粒状、繊維状、顆粒状、モノリスカラム、中空糸、膜状(平膜等)等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、球状、膜状、粒状、繊維状である。
【0043】
本発明のアミン化合物を担体に固定化させる方法としては、特に限定するものではないが、例えば、物理的に固定化させる方法、化学的に固定化させる方法が挙げられる。
【0044】
物理的に固定化させる方法としては、例えば、含浸法が挙げられる。本発明の含浸法において、アミン化合物は、通常、溶媒に溶解させた溶液の状態で用いられる。溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、水、メタノール、エタノール等が挙げられる。これらの溶媒に溶解させたアミン化合物の溶液を、以下、「アミン溶液」と略す。
【0045】
含浸法の手法としては、例えば、平衡吸着法、インシピエントウェットネス法、蒸発乾固法が挙げられる。平衡吸着法は、過剰量のアミン溶液に担体を浸漬し、アミン化合物を担体に吸着させた後、担体を濾過や遠心分離等の操作によって回収し、乾燥させる方法である。インシピエントウェットネス法は、担体の細孔容積に等しい量のアミン溶液を、担体を撹拌しながら、担体の表面に少しずつ加え、担体表面が均一に濡れた状態にして、アミン化合物を担体に固定化させる方法である。蒸発乾固法は、アミン溶液に担体を浸漬し、溶媒を蒸発させて、アミン化合物を担体に固定化させる方法である。
【0046】
化学的に固定化させる方法としては、例えば、アミン化合物が持つ水酸基を、担体が持つ水酸基と反応する置換基と反応させ、化学的結合を形成し、固定化させる方法が挙げられる。
【0047】
本発明において担持物が、上記一般式(1)で表されるアミン化合物と上記一般式(2)で表されるアミン化合物とが担体に固定化された担持物である場合、上記一般式(1)で表されるアミン化合物に対して、上記一般式(2)で表されるアミン化合物を1〜30重量%含むことが好ましい。
【0048】
担体に対するアミン化合物の固定化量は、特に限定するものではないが、通常、0.1〜20重量%であり、好ましくは1〜10重量%の範囲である。固定化量が0.1重量%未満では、化学物質の吸着、除去において、十分な効果を発揮できない恐れがある。一方、固定化量が20重量%を超えても、化学物質の吸着、除去において、効果への影響はほとんどない。
【実施例】
【0049】
本発明を以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0050】
(活性炭担持アミン化合物の調製)
実施例1.
100mLのビーカーに、例示化合物1の1.0重量%メタノール溶液33.4g、活性炭粉末(和光純薬工業社製、活性炭素、粉末)10.0gを仕込み、室温で30分間撹拌した。その後、吸引ろ過し、固体分を回収した。回収した固体分を100mLビーカーに入れ、例示化合物1の1.0重量%メタノール溶液33.4gを仕込み、室温で30分間撹拌した。その後、吸引ろ過し、固体分を回収した。回収した固体分を100mLビーカーに入れ、例示化合物1の1.0重量%メタノール溶液33.4gを仕込み、室温で30分間撹拌した。その後、吸引ろ過し、固体分を回収した。300mLナスフラスコに、回収した固体分を仕込み、50℃で30分間減圧乾燥し、残存しているメタノールを除去した。このようにして、活性炭担持アミン化合物の黒色粉末8.1gを得た。
【0051】
実施例2.
100mLのビーカーに、例示化合物1と例示化合物9からなり、例示化合物1に対して例示化合物9を10重量%含むアミン化合物の1.0重量%メタノール溶液33.4g、活性炭顆粒(和光純薬工業社製、活性炭素、顆粒)10.0gを仕込み、室温で30分間撹拌した。その後、吸引ろ過し、固体分を回収した。回収した固体分を100mLビーカーに入れ、例示化合物1と例示化合物9からなり、例示化合物1に対して例示化合物9を10重量%含むアミン化合物の1.0重量%メタノール溶液33.4gを仕込み、室温で30分間撹拌した。その後、吸引ろ過し、固体分を回収した。回収した固体分を100mLビーカーに入れ、例示化合物1と例示化合物9からなり、例示化合物1に対して例示化合物9を10重量%含むアミン化合物の1.0重量%メタノール溶液33.4gを仕込み、室温で30分間撹拌した。その後、吸引ろ過し、固体分を回収した。300mLナスフラスコに、回収した固体分を仕込み、50℃で30分間減圧乾燥し、残存しているメタノールを除去した。このようにして、活性炭担持アミン化合物の黒色顆粒9.1gを得た。
【0052】
比較例1.
100mLのビーカーに、トリエチレンジアミンの1.0重量%メタノール溶液33.4g、活性炭粉末(和光純薬工業社製、活性炭素、粉末)10.0gを仕込み、室温で30分間撹拌した。その後、吸引ろ過し、固体分を回収した。回収した固体分を100mLビーカーに入れ、例示化合物1の1.0重量%メタノール溶液33.4gを仕込み、室温で30分間撹拌した。その後、吸引ろ過し、固体分を回収した。回収した固体分を100mLビーカーに入れ、例示化合物1の1.0重量%メタノール溶液33.4gを仕込み、室温で30分間撹拌した。その後、吸引ろ過し、固体分を回収した。300mLナスフラスコに、回収した固体分を仕込み、50℃で30分間減圧乾燥し、残存しているメタノールを除去した。このようにして、活性炭担持アミン化合物の黒色粉末8.9gを得た。
【0053】
(活性炭担持アミン化合物中のアミン化合物担持量の測定)
実施例3.
100mLのビーカーに、実施例1で調製した活性炭担持アミン化合物の黒色粉末0.50g、純水50.0gを仕込んだ。これらを撹拌しながら、0.01mol/Lの塩酸水溶液で滴定した。なお、滴定の終点はph電極により測定した。その後、消費された塩酸水溶液量から、活性炭に担持されているアミン化合物量を計算し、担持量を求めた。アミン化合物の担持量は活性炭に対して4.0重量%であった。
【0054】
実施例4.
100mLのビーカーに、実施例2で調製した活性炭担持アミン化合物の黒色顆粒0.50g、純水50.0gを仕込んだ。これらを撹拌しながら、0.01mol/Lの塩酸水溶液で滴定した。なお、滴定の終点はph電極により測定した。その後、消費された塩酸水溶液量から、活性炭に担持されているアミン化合物量を計算し、担持量を求めた。アミン化合物の担持量は活性炭に対して2.7重量%であった。
【0055】
比較例2.
100mLのビーカーに、比較例1で調製した活性炭担持アミン化合物の黒色粉末0.50g、純水50.0gを仕込んだ。これらを撹拌しながら、0.01mol/Lの塩酸水溶液で滴定した。なお、滴定の終点はph電極により測定した。その後、消費された塩酸水溶液量から、活性炭に担持されているアミン化合物量を計算し、担持量を求めた。アミン化合物の担持量は活性炭に対して5.8重量%であった。
【0056】
(活性炭担持アミン化合物からのアミン化合物脱着温度の測定)
実施例5.
実施例1で調製した活性炭担持アミン化合物の黒色粉末について、熱重量−示差熱測定(セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6300)を行った。測定は窒素雰囲気で行い、50℃から10℃/分で昇温し、400℃まで加熱した。アミン化合物の活性炭からの脱離温度は270℃であった。
【0057】
実施例6.
実施例2で調製した活性炭担持アミン化合物の黒色顆粒について、熱重量−示差熱測定(セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6300)を行った。測定は窒素雰囲気で行い、50℃から10℃/分で昇温し、400℃まで加熱した。アミン化合物の活性炭からの脱離温度は285℃であった。
【0058】
比較例3.
比較例1で調製した活性炭担持アミン化合物の黒色粉末について、熱重量−示差熱測定(セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6300)を行った。測定は窒素雰囲気で行い、50℃から10℃/分で昇温し、400℃まで加熱した。アミン化合物の活性炭からの脱離温度は240℃であった。
【0059】
実施例3、6と比較例3の比較より、例示化合物1、又は例示化合物1と例示化合物9を担持した活性炭担持アミン化合物の方が、トリエチレンジアミンを担持した活性炭担持アミン化合物よりも、アミン化合物の脱離が抑えられることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の担持物は、従来の担持物(例えば、トリエチレンジアミンが固定化された活性炭)と同様、ヨウ素、塩化シアン、二酸化窒素等の化学物質の吸着、除去において有用である。