【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
<ポリエステル組成物より、ポリエステル粒状体(A)とポリエステル微粉(B)の分離>
ポリエステル組成物試料1kgをタイラー4メッシュで篩分し、該タイラー4メッシュを通過したポリエステル組成物試料を更にタイラー16メッシュで篩分した。篩分後、該タイラー16メッシュ上にあるポリエステル組成物試料をタイラー100メッシュ上に移し、水2Lを5回に分割してタイラー100メッシュ上のポリエステル組成物試料を洗浄した。その後ポリエステル組成物試料を乾燥し、ポリエステル粒状体(A)とし、重量を測定した。
前記洗浄に供した水は該タイラー100メッシュ下で回収した。次いで、該濾過した水は更に目開き10μmのニッケルスクリーンにより濾過し、該目開き10μmのニッケルスクリーンを120℃で4時間乾燥し、該目開き10μmのニッケルスクリーン上にある固形物を回収し、ポリエステル微粉(B)を得、重量を測定し、ポリエステル粒状体(A)量に対するポリエステル微粉(B)量の割合を計算した。
【0031】
<ポリエステル粒状体(A)の各ジカルボン酸及び各ジオールの定量>
ポリエステル粒状体(A)サンプル約100mgを重クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール=7/3(体積比)の混合溶媒1mlに溶解後、重ピリジン36μLを添加し、測定溶液とした。該測定溶液を日本電子(株)製「α−400」又は「JMN270]NMR測定装置により、50℃で
1H−NMRを測定し、ポリエステル粒状体(A)の各ジカルボン酸及び各ジオールを定量した。
【0032】
<ポリエステル微粉(B)の各ジカルボン酸及び各ジオールの定量>
ポリエステル微粉(B)サンプル約100mgを重クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール=7/3(体積比)の混合溶媒1mlに溶解後、重ピリジン36μLを添加し、測定溶液とした。該測定溶液を日本電子(株)製「α−400」又は「JMN270]NMR測定装置により、50℃で
1H−NMRを測定し、ポリエステル微粉(B)の各ジカルボン酸及び各ジオールを定量した。
【0033】
<ポリエステル粒状体(A)表面のラマンスペクトル>
次の条件により、ポリエステル粒状体(A)表面のラマンスペクトル測定を行った。
装置:ナノフォトン製レーザーラマン顕微鏡(RAMANtouch)
励起レーザ波長:532nm
回折格子:1200gr/mm
スペクトルレンジ:1670-1800cm-1
【0034】
<固有粘度(IV)>
ポリエステル粒状物(A)、ポリエステル微粉(B)それぞれ試料約0.25gを、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒約25mLに、濃度が1.00g/dLとなるように溶解させた後、30℃まで冷却し、30℃において全自動溶液粘度計(センテック社製、「DT553」)にて、試料溶液の落下速度、溶媒のみの落下秒数それぞれを測定し、以下の式により、固有粘度(IV)を算出した。
IV=((1+4KHη
sp)
0.5−1)/(2KHC)
ここで、 η
sp=η/η
0−1 であり、ηは試料溶液の落下秒数、η
0は溶媒のみ
の落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。なお試料の溶解条件は、110℃で30分間とした。
【0035】
<ポリエステル組成物の計量時間変動評価>
ポリエステル組成物を窒素雰囲気下140℃で4時間乾燥し、射出成形機(日精樹脂工業社製「FE-80」)を用い、次の条件により射出成形を行い、計量時間変動を評価した。
すなわち、縦110mm×横110mm×厚み1mmのフィルムシートを連続100回射出成形し、各々の計量時間を計測し、その最大値、最小値、平均値及び標準偏差を求めた。平均値が小さくまた標準偏差が小さいほどポリエステル組成物のスクリューへの食い込み性に変動がなく、優れていることを示している。
シリンダー温度(ノズル−ホッパー下):245℃−250℃−240℃−180℃
スクリュー回転数:75rpm
計量:1回当たり約80g
背圧:0.15MPa
射出時間:10秒
冷却時間:20秒
金型温度:30℃
【0036】
<フィッシュアイ(FE)数の測定>
ポリエステル組成物を窒素雰囲気下140℃で4時間乾燥し、フィルム成形装置(ME-20/26V2&CR-7&FS-5)(OCS社製)により、次の条件でフィルム成形を行い、フィッシュアイ(個/m
2)を測定した。フィッシュアイ数は、フィルムを製膜しつつ装置付属のCCDカメラにより、1m
2の面積中に存在する長径16μm以上のサイズの個数を自動的にカウントして測定した。この値が小さいほど、成形外観に優れることを示している。シリンダー温度(ノズル−ホッパー下):250℃−250℃−250℃−250℃
スクリュー回転数:100rpm
樹脂圧:75MPa
チルロール温度:50℃
フィルム厚み:50μm
【0037】
(実施例1)
テレフタル酸1モルに対して1,4−ブタンジオールを1.8モルの割合とした出発原料を原料供給口からスラリー調製槽に供給し、撹拌、混合してスラリーを調製した。該スラリーを温度230℃、圧力78.7kPaに調整したエステル化反応槽に1,836重量部/時間で連続的に供給すると共に、該エステル化反応槽に具備された触媒供給口からテトラ−n−ブチルチタネートを1.06重量部/時間で連続的に供給し、撹拌下、滞留時間3時間としてエステル化反応させて、エステル化反応率97.5%の低重合体を得た。
該低重合体を温度250℃、圧力2.66kPaに調整した第1重合反応槽に連続的に
供給し、撹拌下、滞留時間2時間で重合反応させ、プレポリマーAを得た。該プレポリマーAの固有粘度は0.250dL/gであった。該プレポリマーAを温度250℃、圧力0.133kPaに調整した第2重合反応槽に連続的に供給し、撹拌下、滞留時間3時間で重合反応を更に進めて、プレポリマーBを得た。該プレポリマーBの固有粘度は0.872dL/gであった。次いで、該プレポリマーBを温度250℃、圧力0.133kPaに調整した第3重合反応槽に連続的に供給し、撹拌下、滞留時間2時間で重合反応を更に進めて、ポリマーを得た。
該ポリマーを第3重合反応槽より抜き出しダイに移送し、円柱状のストランドとしてポリマーを押し出し、20℃の冷却水で0.9秒間冷却した後、カッティングしてポリマー粒状体とした。該ポリマー粒状体の固有粘度は1.26dL/gであった。又、該ポリマー粒状体1個当たりの重量は平均22mgであった。
該ポリマー粒状体をプラスチック粒状体表面処理機PBA25A(株式会社サタケ製作所社製)により使用電流65Aにて表面処理を実施した。
表面処理したポリマー粒状体1kgをタイラー4メッシュで篩分し、通過したポリマー粒状体を更にタイラー16メッシュで篩分した。篩分後、該タイラー16メッシュ上にあるポリマー粒状体をタイラー100メッシュ上に移し、水2Lを5回に分割してタイラー100メッシュ上のポリマー粒状体を洗浄した。その後乾燥し、ポリエステル粒状体(A)とし、重量を測定した。
前記洗浄に供した水は該タイラー100メッシュ下で回収した。次いで、該回収した水は更に目開き10μmのニッケルスクリーンにより濾過し、該目開き10μmのニッケルスクリーンを120℃で4時間乾燥し、該目開き10μmのニッケルスクリーン上にある固形物を回収し、ポリエステル微粉(B)を得た。
該ポリエステル粒状体(A)量に対するポリエステル微粉(B)量は750質量ppmであった。次いで、分取したポリエステル粒状体(A)1000重量部に対してポリエステル微粉(B)0.06重量部を添加し、均一となるように混合し、ポリエステル組成物を調整した。該ポリエステル組成物について測定、評価を行った結果を表1にまとめた。
【0038】
(比較例1)
ポリエステル粒状体(A)1000重量部に対してポリエステル微粉(B)0.03重量部を添加した以外は実施例1と同様にしてポリエステル組成物を得た。結果を表1に示
す。
【0039】
(比較例2)
ポリエステル粒状体(A)1000重量部に対してポリエステル微粉(B)0.10重量部を添加した以外は実施例1と同様にしてポリエステル組成物を得た。結果を表1に示
す。
【0040】
(比較例3)
実施例1と同様にして製造した、ポリマー粒状体1kgをタイラー4メッシュで篩分し、通過したポリマー粒状体を更にタイラー16メッシュで篩分した。篩分後、該タイラー16メッシュ上にあるポリマー粒状体をタイラー100メッシュ上に移し、水2Lを5回に分割してタイラー100メッシュ上のポリマー粒状体を洗浄した。その後乾燥し、ポリエステル粒状体(A)とし、重量を測定した。
前記洗浄に供した水は該タイラー100メッシュ下で回収した。次いで、該回収した水は更に目開き10μmのニッケルスクリーンにより濾過し、該目開き10μmのニッケルスクリーンを120℃で4時間乾燥し、該目開き10μmのニッケルスクリーン上にある固形物を回収し、ポリエステル微粉(B)を得た。
該ポリエステル粒状体(A)量に対するポリエステル微粉(B)量は10質量ppmであった。次いで、分取したポリエステル粒状体(A)1000重量部に対してポリエステル微粉(B)0.03重量部を添加し、均一となるように混合し、ポリエステル組成物を
調整した。該ポリエステル組成物について測定、評価を行った結果を表1にまとめた。
【0041】
(比較例4)
ポリエステル粒状体(A)1000重量部に対してポリエステル微粉(B)0.06重量部を添加した以外は比較例3と同様にしてポリエステル組成物を得た。結果を表1に示
す。
【0042】
(比較例5)
テレフタル酸1モルに対して1,4−ブタンジオールを1.8モルの割合とした出発原料を原料供給口からスラリー調製槽に供給し、撹拌、混合してスラリーを調製した。該スラリーを温度230℃、圧力78.7kPaに調整したエステル化反応槽に1,836重量部/時間で連続的に供給すると共に、エステル化反応槽に具備された触媒供給口からテトラ−n−ブチルチタネートを1.06重量部/時間で連続的に供給し、撹拌下、滞留時間3時間としてエステル化反応させて、エステル化反応率97.5%の低重合体を得た。
該低重合体を温度250℃、圧力2.66kPaに調整した第1重合反応槽に連続的に
供給し、撹拌下、滞留時間2時間で重合反応させ、プレポリマーAを得た。該プレポリマーAの固有粘度は0.250dL/gであった。該プレポリマーAを温度250℃、圧力0.133kPaに調整した第2重合反応槽に連続的に供給し、撹拌下、滞留時間3時間で重合反応を更に進めて、プレポリマーBを得た。該プレポリマーBを第2重合反応槽より抜き出しダイに移送し、円柱状のストランドとして押し出し、20℃の冷却水で0.9秒間冷却した後、カッティングしてプレポリマーB粒状体とした。該プレポリマーB粒状体50kgを、温度195℃、圧力133Pa以下10時間で回分式の撹拌式固相重合装置を用いて固相重合を行った。
固相重合後のポリマー粒状体1kgをタイラー4メッシュで篩分し、通過したポリマー粒状体を更にタイラー16メッシュで篩分した。篩分後、該タイラー16メッシュ上にあるポリマー粒状体をタイラー100メッシュ上に移し、水2Lを5回に分割してタイラー100メッシュ上のポリマー粒状体を洗浄した。その後乾燥し、ポリエステル粒状体(A)とし、重量を測定した。
前記洗浄に供した水は該タイラー100メッシュ下で回収した。次いで、該回収した水は更に目開き10μmのニッケルスクリーンにより濾過し、該目開き10μmのニッケルスクリーンを120℃で4時間乾燥し、該目開き10μmのニッケルスクリーン上にある固形物を回収し、ポリエステル微粉(B)を得た。
該ポリエステル粒状体(A)量に対するポリエステル微粉(B)量は150質量ppmであった。次いで、分取したポリエステル粒状体(A)1000重量部に対してポリエステル微粉(B)0.03重量部を添加し、均一となるように混合し、ポリエステル組成物を調整した。該ポリエステル組成物について測定、評価を行った結果を表1にまとめた。
【0043】
(比較例6)
ポリエステル粒状体(A)1000重量部に対してポリエステル微粉(B)0.06重量部を添加した以外は比較例5と同様にしてポリエステル組成物を得た。結果を表1に示
す。
【0044】
【表1】
【0045】
本発明のポリエステル組成物は実施例で示されている通り、射出成形評価において平均計量時間が短かく、且つ、30も短かいことより、射出成形機や連続押出フィルム成形機等による成形品の製造を短時間でムラなく実施することができ、又、フィルム評価結果よりフィッシュアイが少ない等成形外観が良好な成形品とすることができる。前記した短時間でムラなく成形できるということは、成形時の熱履歴のバラつきが小さくなり、且つ複数の成形品を成形しても該複数の成形品で機械物性等にばらつきがなく安定することを示唆している。よって要求される特性がきわめて厳しい電気電子部品、自動車用コネクター、繊維、フィルム、ボトル等の射出成形用又は押出フィルム成形用に本発明のポリエステル組成物は適用することができる。