(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のサイフォン式散気管は、気泡のサイズや間欠時間を調整することができないため、高い洗浄性を必要としない状況においても巨大気泡を放出し続けてしまう。そのため、上記のサイフォン式散気管を適用したMBR法による処理では、エネルギー効率が低くなることがあった。また、気泡のサイズが大きくなるほど水への溶解効率は低くなるため、生物処理に必要な酸素が不足し、汚泥の性状や処理水の水質が悪化することがあった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、気泡のサイズや間欠時間を調整することができるサイフォン式散気管および膜分離活性汚泥装置、ならびに水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]曝気を行うサイフォン式散気管であって、
第一サイフォン室、および前記第一サイフォン室の下流側の第二サイフォン室を含む、空気を貯留するサイフォン室、ならびに前記第一サイフォン室と前記第二サイフォン室とを連通している連通部が内部に形成され、前記サイフォン室の下流に散気穴が形成され、前記サイフォン室の上流に処理水流入口が形成された管本体部と、
前記サイフォン室に空気を供給する空気供給手段と、
前記処理水流入口の開口量を調節する開口量調節手段と、を備える、サイフォン式散気管。
[2]前記処理水流入口が前記管本体部の底部に形成され、
前記開口量調節手段が、前記管本体部を昇降させる昇降手段を備え、
前記昇降手段により前記管本体部が降下された状態で、前記処理水流入口が、該サイフォン式散気管が設置されている槽の底面部で塞がれ、
前記昇降手段により前記管本体部が上昇された状態で、前記処理水流入口が前記槽の底面部から離間して開放される、[1]に記載のサイフォン式散気管。
[3]前記処理水流入口が前記管本体部の底部に形成され、
前記開口量調節手段が、前記処理水流入口を塞ぐ蓋部材と、前記管本体部を昇降させる昇降手段を備え、
前記昇降手段により前記管本体部が降下された状態で、前記処理水流入口が前記蓋部材で塞がれ、
前記昇降手段により前記管本体部が上昇された状態で、前記処理水流入口が前記蓋部材から離間して開放される、[1]に記載のサイフォン式散気管。
[4]前記開口量調節手段が、前記処理水流入口を塞ぐ蓋部材と、
前記蓋部材を駆動させる駆動部とを備える、[1]に記載のサイフォン式散気管。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載のサイフォン式散気管と、
活性汚泥を含む汚泥含有処理水を膜分離する膜モジュールと、
前記サイフォン式散気管および前記膜モジュールが設置されている膜分離槽を備える膜分離活性汚泥装置。
[6]活性汚泥を用いて原水を活性汚泥処理する活性汚泥処理工程と、
前記活性汚泥処理工程で得られた汚泥含有処理水を膜分離処理する膜分離工程と、を有し、
前記膜分離工程において[5]に記載の膜分離活性汚泥装置を用いる水処理方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のサイフォン式散気管および膜分離活性汚泥装置を用いれば、気泡のサイズや間欠時間を調整することができる。
本発明の水処理方法によれば、気泡のサイズや間欠時間を調整しながら水処理を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0012】
[水処理装置]
以下、本発明の水処理方法に用いる水処理装置の一例について、
図1に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の水処理装置1000は、活性汚泥処理槽11と、活性汚泥処理槽11の後段に設けられた膜分離活性汚泥装置100(以下、「MBR装置100」と称することがある。)と、MBR装置100の後段に設けられた処理水槽41とを備えている。さらに、水処理装置1000は、図示を省略するが、活性汚泥処理槽11に流入する原水の流量を調整する流量調整槽、MBR装置100から余剰汚泥を引く抜く引抜ポンプ、MBR装置100に薬液や希釈水を送液する送液手段、および処理水槽41から工場や河川等に処理水を放流する放流手段等を備えている。
【0013】
活性汚泥処理槽11は、活性汚泥処理を行うために活性汚泥を充填するものである。
活性汚泥処理槽11には、第一の流路12と第二の流路13とが接続されている。第一の流路12は、工場や家庭等から排出された原水を活性汚泥処理槽11に流入させる流路である。第二の流路13は、活性汚泥処理槽11から排出された汚泥含有処理水(被処理水)をMBR装置100に流入させる流路である。
【0014】
活性汚泥処理槽11内には槽内を好気条件に維持するために散気装置14が設置されている。
散気装置14は、空気を活性汚泥処理槽11内に散気する散気管14aと、散気管14aに空気を供給する導入管14bと、空気を送気するブロア14cとを備えている。
散気管14aとしては、ブロア14cから供給される空気を上方へ吐出できるものであれば特に限定されず、例えば、穴あきの単管やメンブレンタイプのものが挙げられる。
【0015】
処理水槽41は、汚泥含有処理水を膜分離した後の処理水を貯留するものである。
【0016】
(膜分離活性汚泥装置)
MBR装置100は、膜分離槽21と、膜モジュール22と、膜モジュール22の下方に設けられたサイフォン式散気管1とを備えている。また、更に、検出部26と、検出部26と接続した制御部28と、を備えていることが好ましい。第二の流路13は、膜分離槽21に接続されている。膜モジュール22とサイフォン式散気管1は、膜分離槽21内に配置されている。
【0017】
膜分離槽21は、活性汚泥処理槽11から送られてきた、活性汚泥および生物処理水を含む汚泥含有処理水を溜めるものである。
【0018】
膜分離槽21と活性汚泥処理槽11には汚泥返送手段30が接続されている。汚泥返送手段30は、膜分離槽21から活性汚泥処理槽11に、汚泥含有処理水の一部を返送するものである。
汚泥返送手段30は、第四の流路31を備えている。第四の流路31は、汚泥含有処理水の一部を膜分離槽21から排出し、活性汚泥処理槽11に流入させる流路である。
第四の流路31には、ポンプ31aが設置されている。これにより、膜分離槽21内の汚泥含有処理水の一部を膜分離槽21から活性汚泥処理槽11に返送することができる。
【0019】
膜モジュール22は、活性汚泥を含む汚泥含有処理水を膜分離するものである。膜モジュール22は分離膜を備え、この分離膜により汚泥含有処理水が生物処理水と活性汚泥とに固液分離(膜分離)される。
【0020】
分離膜としては、分離能を有するものであれば特に限定されず、例えば、中空糸膜、平膜、チューブラ膜、モノリス型膜などが挙げられる。これらの中でも、容積充填率が高いことから、中空糸膜が好ましい。
【0021】
分離膜として中空糸膜を用いる場合、その材質としては、例えば、セルロース、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデンフロライド(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)などが挙げられる。これらの中でも、中空糸膜の材質としては、耐薬品性やpH変化に強い点から、PVDF、PTFEが好ましい。
分離膜としてモノリス型膜を用いる場合は、セラミック製の膜を用いることが好ましい。
【0022】
分離膜に形成される微細孔の平均孔径としては、一般に限外分離膜と呼ばれる膜で0.001〜0.1μm程度であり、一般に精密分離膜と呼ばれる膜で0.1〜1μm程度である。本実施形態においては平均孔径が上記範囲内である分離膜を用いることが好ましい。
【0023】
膜モジュール22には、第三の流路33が接続されている。第三の流路33は、分離膜を透過した処理水を膜分離槽21から排出し、処理水槽41に流入させる流路である。
第三の流路33には、ポンプ33aが設置されている。これにより、膜モジュール22の分離膜を透過した処理水を膜分離槽21から排出できるようになっている。
【0024】
図1〜3に示すように、サイフォン式散気管1は、管本体部50と、空気供給手段52と、開口量調節手段54とを備えている。
管本体部50は、複数の板状部材を組み合わせてなる箱状の筐体であり、いずれも平面視形状が矩形状である上板1Aと、4枚の側板1Bと、底板1Cと、第一仕切壁4aと、第二仕切壁4bと、を有している。
【0025】
4枚の側板1Bは、上板1Aの四辺それぞれから下方に延びるように設けられている。上板1Aにおける1つの側板1B寄りの部分には、その側板1Bに沿うように延びる散気穴6が形成されている。第一仕切壁4aは、散気穴6を挟んで側板1Bと互いの面が向かい合うようにして、上板1Aから下方に延びるように設けられている。
【0026】
底板1Cの長さは、上板1Aよりも小さくなっている。底板1Cは、散気穴6が形成されている側の側板1Bの下端部から内側に延びるように、4枚の側板1Bで形成された筒状部分の下方の開口端のほぼ半分を塞ぐように設けられている。管本体部50の下側の開口部分における底板1Cで塞がれていない部分が処理水流入口7となっている。
第二仕切壁4bは、底板1Cにおける第一仕切壁4aの散気穴6とは反対側に位置する端部から上方に延びるように設けられている。第一仕切壁4aと第二仕切壁4bとは互いの面が対向している。
管本体部50においては、処理水流入口7から散気穴6へ向かう廃水の流れを想定したとき処理水流入口7側を「上流」とし、散気穴6側を「下流」とする。
【0027】
サイフォン室2は、空気を貯留するものである。サイフォン室2は、管本体部50内の第一仕切壁4aよりも処理水流入口7側における、第二仕切壁4bの上端4b
1から第一仕切壁4aの下端4a
1までの高さを有する空間を指す。サイフォン室2は、第二仕切壁4bにより第一サイフォン室2Aと第二サイフォン室2Bとに区切られている。
【0028】
第一サイフォン室2Aの上方、および第二サイフォン室2Bの上方は、連通部5で連通されている。管本体部50内の第二サイフォン室2Bから散気穴6までの部分が経路4となっている。第一仕切壁4aの一部は、サイフォン室2と経路4とに面している。換言すると、第一仕切壁4aの一部は、サイフォン室2と経路4とを仕切っている。また、第二仕切壁4bの一部はサイフォン室2に面している。第二仕切壁4bの上端4b
1は、少なくとも第一仕切壁4aの下端4a
1よりも上方に位置している。処理水流入口7は、管本体部50の底部に形成され、第一仕切壁4aの下端4a
1よりも下方に位置している。
【0029】
このように管本体部50の内部には、上流から下流に向かって、第一サイフォン室2A、連通部5、第二サイフォン室2B、経路4がこの順に形成されている。そして、管本体部50におけるサイフォン室2の下流には散気穴6が形成され、サイフォン室2の上流には処理水流入口7が形成されている。処理水流入口7により、サイフォン式散気管1の外部とサイフォン室2とが連通されている。
【0030】
散気穴6の平面視形状は、長尺の矩形状である。散気穴6の平面視形状の面積は、好ましくは25cm
2以下であり、より好ましくは20cm
2以下である。また、平面視形状の長手方向の長さは好ましくは25cm以下であり、より好ましくは20cm以下である。
【0031】
サイフォン式散気管1は、膜分離槽21を平面視したときに、膜モジュール22における隣り合う分離膜の間と散気穴6とが重なり合う位置に設けられている。
【0032】
空気供給手段52は、サイフォン室2に空気を供給する手段である。空気供給手段52は、管本体部50内のサイフォン室2に空気を供給する導入管1aと、空気を送気するブロア1bとを備えている。
導入管1aは、上板1Aの第二仕切壁4bよりも第一サイフォン室2A側において、上板1Aの厚み方向に貫通している。導入管1aの下端には空気供給口3が形成されている。導入管1aに形成された空気供給口3は、第一仕切壁4aの下端4a
1よりも下方に位置している。すなわち、空気供給口3は、空気を貯留可能なサイフォン室2の外側に配置されている。
【0033】
導入管1aの断面形状は、特に制限されない。例えば、導入管1aの断面形状が円形である場合、導入管1aの内径は、4mm以上25mm以下が好ましく、4.5mm以上15mm以下がより好ましく、5mm以上10mm以下がさらに好ましく、5.5mm以上8.5mm未満がとりわけ好ましい。導入管1aの内径が4mm以上であると、汚泥が詰まりにくいため好ましい。本実施形態において、導入管1aの内径は一定になっている。
【0034】
開口量調節手段54は、処理水流入口7の開口量を調節する手段である。この例の開口量調節手段54は、管本体部50を昇降させる昇降手段55を備えている。
昇降手段55における管本体部50を昇降させる機構は、管本体部50を所望の通りに昇降させることができるものであれば特に限定されない。
【0035】
本実施形態では、膜分離槽21の底面部21aが、管本体部50の底部に形成された処理水流入口7を塞ぐ蓋の役割を果たす。
図4に示すように、開口量調節手段54により管本体部50を膜分離槽21の底面部21aまで降下させた状態では、膜分離槽21の底面部21aによって管本体部50の処理水流入口7が塞がれる。また、
図5に示すように、開口量調節手段54により管本体部50を上昇させた状態では、管本体部50の処理水流入口7が膜分離槽21の底面部21aから離間して開放される。
【0036】
以下、サイフォン式散気管1の作動機構について説明する。
図5に示すように、開口量調節手段54により管本体部50を上昇させ、管本体部50の処理水流入口7が膜分離槽21の底面部21aから離間して開放された状態とする。この状態の作動開始前においては、
図6(a)に示すように、管本体部50内におけるサイフォン室2、連通部5および経路4は汚泥含有処理水B(被処理水)で満たされている。
【0037】
空気供給手段52における導入管1aの空気供給口3からサイフォン室2に空気Aを連続的に供給する。空気供給口3から空気Aを供給し続けると、
図6(b)に示すように、サイフォン室2内の汚泥含有処理水Bが、散気穴6や処理水流入口7から押し出されて、サイフォン室2の液面Sが次第に降下する。さらに空気供給口3から空気Aを供給し続け、液面Sの高さが第一仕切壁4aの下端4a
1よりも低くなると、
図6(c)に示すように、処理水流入口7から汚泥含有処理水Bが管本体部50内に流入すると同時に、サイフォン室2および連通部5に貯留していた空気Aが経路4へと移動して散気穴6から一気に放出される。これにより、
図6(a)に示すように、管本体部50内におけるサイフォン室2、連通部5および経路4は汚泥含有処理水Bで満たされた状態に戻る。そして、
図6(a)〜(c)の状態が繰り返し行われる。
【0038】
このように、開口量調節手段54により管本体部50を上昇させ、管本体部50の処理水流入口7が開放された状態のサイフォン式散気管1では、サイズの大きな気泡が間欠的に放出される。貯留する空気の量は、サイフォン室2および連通部5の体積と理論上等しく、形成する気泡のサイズや間欠時間は一定である。
【0039】
また、
図4に示すように、開口量調節手段54により管本体部50を降下させ、サイフォン式散気管1が設置されている槽、すなわち膜分離槽21の底面部21aにより管本体部50の処理水流入口7が塞がれた状態とする。この状態の作動開始前においては、
図7(a)に示すように、管本体部50内におけるサイフォン室2、連通部5および経路4は汚泥含有処理水Bで満たされている。
【0040】
空気供給手段52における導入管1aの空気供給口3からサイフォン室2に空気Aを連続的に供給する。空気供給口3から空気Aを供給し続けると、
図7(b)に示すように、サイフォン室2内の汚泥含有処理水Bが散気穴6から押し出されて、サイフォン室2の液面Sが次第に降下する。さらに空気供給口3から空気Aを供給し続け、液面Sの高さが第一仕切壁4aの下端4a
1よりも低くなると、
図7(c)に示すように、処理水流入口7からは汚泥含有処理水Bが流入しないためにサイフォン室2および連通部5に貯留されていた空気Aが連続的に細かい気泡となって経路4へと移動し、散気穴6から連続的に放出される。このように、開口量調節手段54により管本体部50を下降させ、管本体部50の処理水流入口7が閉塞された状態のサイフォン式散気管1では、サイズの小さい気泡が連続的に放出される。
【0041】
サイフォン式散気管1では、前記したように、管本体部50を上昇させて処理水流入口7が開放された状態としたり、管本体部50を下降させて処理水流入口7が閉塞された状態としたりすることで、サイズの大きい気泡を間欠的に放出させたり、サイズの小さい気泡を連続的に放出させたりすることができる。このように、サイフォン式散気管1では、気泡のサイズや間欠時間を調整することができる。
【0042】
検出部26は、膜モジュール22における膜間差圧、または汚泥含有処理水の溶存酸素濃度の少なくとも一方を検出するものである。検出部26としては、特に限定されず、公知の検出器を用いることができる。
【0043】
制御部28は、検出部26の検出結果に基づいて処理水流入口7の開口量を決定し、開口量調節手段54の動きを制御するものである。
【0044】
[水処理方法]
以下、本発明の水処理方法の一例として、前記した水処理装置1000を用いた水処理方法について説明する。本実施形態の水処理方法は、活性汚泥を用いて原水を活性汚泥処理する活性汚泥処理工程と、活性汚泥処理工程で得られた汚泥含有処理水を膜分離する膜分離工程と、を有している。
【0045】
(活性汚泥処理工程)
水処理装置1000による水処理方法では、工場や家庭等から排出された工業廃水や生活廃水等の廃水(原水)を第一の流路12を通じて活性汚泥処理槽11に流入させ、活性汚泥処理槽11で活性汚泥処理し、生物処理水とする。処理後の汚泥含有処理水(被処理水)は、第二の流路13を通じてMBR装置100の膜分離槽21に流入させる。
【0046】
(膜分離工程)
MBR装置100の膜分離槽21では、膜モジュール22により、活性汚泥および生物処理水を含む汚泥含有処理水(被処理水)を膜分離処理する。膜分離処理中においては、サイフォン式散気管1により曝気を行う。
【0047】
例えば検出部26によって検出した汚泥含有処理水Bの溶存酸素濃度が所定の濃度よりも低い場合には、制御部28において膜分離槽21内を適切な好気条件にすることを優先するために処理水流入口7を閉じる決定がされる。そして、開口量調節手段54の昇降手段55により管本体部50を下降させて処理水流入口7が閉塞された状態とし、酸素溶解効率の高いサイズの小さい気泡を連続的に放出させる。
【0048】
また、例えば検出部26によって検出した膜モジュール22における膜間差圧が所定の差圧よりも大きい場合には、制御部28において膜モジュール22の分離膜表面への有機物等の堆積を抑制することを優先するために処理水流入口7を開放する決定がされる。そして、開口量調節手段54の昇降手段55により管本体部50を上昇させて処理水流入口7が開放された状態とし、サイズの大きな気泡を間欠的に放出させる。
【0049】
このように、サイフォン式散気管1では、処理状況に応じて気泡のサイズや間欠時間を調整しながら膜分離処理を行うことができる。
開口量調節手段54の昇降手段55により管本体部50を上昇又は下降させる場合には、管本体部50と共に膜モジュール22を同時に上昇又は下降させてもよく、膜モジュールの位置は固定した状態で管本体部50を上昇又は下降させてもよい。
【0050】
汚泥含有処理水Bの一部は、汚泥返送手段30によって膜分離槽21から活性汚泥処理槽11に返送する。膜モジュール22により汚泥含有処理水Bを膜分離した後の処理水は、第三の流路33を通じて処理水槽41に送って貯留する。処理水槽41で貯留する処理水は、工業用水として再利用したり、河川等に放流したりすることができる。
【0051】
以上説明したように、本発明では、サイフォン式散気管が管本体部に形成された処理水流入口の開口量を調節する開口量調節手段を備えている。開口量調節手段によってサイフォン式散気管の処理水流入口の開口量を調節することで、サイズの大きな気泡を間欠的に放出させたり、サイズの小さい気泡を連続的に放出させたりすることができる。このように本発明では、例えば膜モジュールの分離膜表面への有機物等の堆積を抑制することを優先するか、槽内を適切な好気条件にすることを優先するかといった事情によって、気泡のサイズや間欠時間を調整することができるため、水処理を安定して行うことができる。
【0052】
なお、本発明のサイフォン式散気管は、前記したサイフォン式散気管1には限定されない。サイフォン式散気管は、膜分離槽21の底面部21aを利用して処理水流入口7を塞ぐものには限定されず、例えば、昇降手段に加えて、蓋部材をさらに備える開口量調節手段とし、管本体部を上昇又は下降させることで該蓋部材により処理水流入口を閉塞したり開放したりするサイフォン式散気管であってもよい。
【0053】
具体的には、本発明のサイフォン式散気管は、
図8に例示したサイフォン式散気管8であってもよい。
図8における
図4と同じ部分は同符合を付して説明を省略する。
サイフォン式散気管8は、管本体部50と、空気供給手段52と、開口量調節手段54Aとを備えている。サイフォン式散気管8は、開口量調節手段54の代わりに開口量調節手段54Aを備える以外は、サイフォン式散気管1と同じ態様である。開口量調節手段54Aは、昇降手段55に加えて、管本体部50の処理水流入口7の下方に配置された、処理水流入口7を塞ぐ蓋部材53を備える以外は、開口量調節手段54と同じである。
【0054】
サイフォン式散気管8では、昇降手段55によって管本体部50を上昇させ、処理水流入口7を蓋部材53から離間させて開放した場合には、サイフォン式散気管1と同様の機構でサイズの大きな気泡が間欠的に放出される。また、昇降手段55によって管本体部50を下降させ、処理水流入口7を蓋部材53で閉塞した場合には、サイフォン式散気管1と同様の機構でサイズの小さい気泡が連続的に放出される。
このように、サイフォン式散気管8を用いる場合も、処理状況に応じて気泡のサイズや間欠時間を調整しながら膜分離処理を行うことができる。
【0055】
また、本発明のサイフォン式散気管においては、開口量調節手段は管本体部を昇降させる昇降手段を備えるものには限定されず、処理水流入口を塞ぐ蓋部材と、該蓋部材を駆動させる駆動部とを備えるものであってもよい。具体的には、
図9に例示したサイフォン式散気管9であってもよい。
図9における
図3と同じ部分は同符合を付して説明を省略する。
【0056】
サイフォン式散気管9は、管本体部50と、空気供給手段52と、開口量調節手段54Bとを備えている。サイフォン式散気管9は、開口量調節手段54の代わりに開口量調節手段54Bを備える以外は、サイフォン式散気管1と同じ態様である。
【0057】
開口量調節手段54Bは、処理水流入口7の開口量を調節する手段であり、処理水流入口7を塞ぐ蓋部材56と、蓋部材56を駆動させる駆動部58とを備えている。
【0058】
サイフォン式散気管9では、開口量調節手段54Bにおいて駆動部58により蓋部材56を駆動させ、蓋部材56によって処理水流入口7の開口量を調節することができる。サイフォン式散気管9では、処理水流入口7を完全に開放した場合には、サイフォン式散気管1と同様の機構でサイズの大きな気泡が間欠的に放出される。処理水流入口7の全部を蓋部材56で閉塞した場合には、サイフォン式散気管1と同様の機構でサイズの小さい気泡が連続的に放出される。また、処理水流入口7の一部だけが蓋部材56で閉塞されるようにした場合には、処理水流入口7を完全に開放した状態と全部を閉塞した状態との間の範囲で、処理水流入口7の開口量に応じて気泡のサイズと間欠時間が変化する。
このように、サイフォン式散気管9を用いる場合も、処理状況に応じて気泡のサイズや間欠時間を調整しながら膜分離処理を行うことができる。
【0059】
また、本発明のサイフォン式散気管においては、空気供給手段の導入管は、管本体部において第二仕切壁4bと対向するように第一サイフォン室側に配置されている側板の厚み方向に貫通していてもよい。導入管1aの内径は、一定には限定されず、上板1Aから遠ざかる方向に漸減していてもよい。この場合、導入管1a内に汚泥が流入しにくくなり、導入管1a内に汚泥が詰まることを抑制しやすくなる。
また、膜分離活性汚泥装置は、制御部を備えていなくてもよい。
また、水処理装置は、活性汚泥処理槽11の中に膜分離槽21が設けられているものであってもよい。