特許第6848685号(P6848685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6848685近赤外線遮蔽超微粒子分散体、近赤外線遮蔽中間膜、近赤外線遮蔽合わせ構造体、および近赤外線遮蔽超微粒子分散体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848685
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】近赤外線遮蔽超微粒子分散体、近赤外線遮蔽中間膜、近赤外線遮蔽合わせ構造体、および近赤外線遮蔽超微粒子分散体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20210315BHJP
   C01G 41/00 20060101ALI20210315BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20210315BHJP
   C03C 17/32 20060101ALI20210315BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20210315BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20210315BHJP
   C09D 5/32 20060101ALI20210315BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20210315BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20210315BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20210315BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20210315BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20210315BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20210315BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20210315BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20210315BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20210315BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20210315BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   C09K3/00 105
   C01G41/00 A
   C03C27/12 L
   C03C27/12 D
   C03C27/12 F
   C03C17/32 A
   C09D201/00
   C09D7/12
   C09D5/32
   B32B27/20 Z
   B32B27/36
   B32B27/36 102
   B32B27/30 A
   B32B17/10
   C08L101/00
   C08K3/22
   C08K5/29
   C08K5/07
   C08K5/3492
   C08J7/04 R
   G02B5/22
   C08J7/04
【請求項の数】18
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2017-103971(P2017-103971)
(22)【出願日】2017年5月25日
(65)【公開番号】特開2018-199758(P2018-199758A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2019年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏
(72)【発明者】
【氏名】藤田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】常松 裕史
(72)【発明者】
【氏名】長南 武
【審査官】 齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−532822(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/008587(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
B32B 17/10
B32B 27/20
B32B 27/30
B32B 27/36
C01G 41/00
C03C 17/32
C03C 27/12
C08K 3/22
C08K 5/07
C08K 5/29
C08K 5/3492
C08L 101/00
C09D 5/32
C09D 201/00
G02B 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線遮蔽特性を有する超微粒子(A)が固体媒体に分散された近赤外線遮蔽超微粒子分散体であって、
前記超微粒子(A)が、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、Li、Na、Rb、Cs、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表される複合タングステン酸化物超微粒子(A)であり、シリコン粉末標準試料の(220)面のXRDピーク強度の値を1とした時の、前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)のXRDピークのトップ強度との比の値が0.13以上であり、且つ、単相であり、
前記固体媒体は、樹脂バインダー(B)と、耐候性改良剤(C)とを含んでおり、
前記耐候性改良剤(C)の添加量が、前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)1質量部に対して、0.1〜10質量部であり、
前記耐候性改良剤(C)は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤から選択される1種類以上を含むことを特徴とする近赤外線遮蔽超微粒子分散体。
【請求項2】
前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)の分散粒子径が、1nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体。
【請求項3】
前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)が、六方晶の結晶構造を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体。
【請求項4】
前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)に含まれる揮発成分の含有率が、2.5質量%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体。
【請求項5】
前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)を、0.001質量%以上80質量%以下含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体。
【請求項6】
前記樹脂バインダー(B)が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂、シリコーン樹脂という樹脂群から選択される1種の樹脂、または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体、のいずれかから選択される媒体樹脂であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体。
【請求項7】
前記近赤外線遮蔽超微粒子分散体が、シート状、ボード状、または、フィルム状のいずれかになっていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体。
【請求項8】
透明基材上に、厚さ1μm以上10μm以下のコーティング層として前記近赤外線遮蔽超微粒子分散体が設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体。
【請求項9】
前記透明基材が、ポリエステルフィルム、あるいは、ガラスであることを特徴とする請求項8に記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体。
【請求項10】
2枚以上の透明基材と、前記2枚以上の透明基材に挟持された中間層とを備えた近赤外線遮蔽合わせ構造体において前記中間層を構成する近赤外線遮蔽中間膜であって、
前記中間膜として、請求項1から9のいずれかに記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体が用いられていることを特徴とする近赤外線遮蔽中間膜。
【請求項11】
2枚以上の透明基材と、前記2枚以上の透明基材に狭持された中間層とを備えた近赤外線遮蔽合わせ構造体であって、
前記中間層は1層以上の中間膜で構成され、前記中間膜の少なくとも1層が請求項10に記載の近赤外線遮蔽中間膜であり、
前記透明基材が、板ガラス、プラスチック、近赤外遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックから選ばれるいずれかであることを特徴とする近赤外線遮蔽合わせ構造体。
【請求項12】
前記中間層を構成する中間膜の少なくとも1層が、請求項11に記載の近赤外線遮蔽中間膜であり、前記中間膜が、ポリビニルアセタール樹脂、または、エチレン・酢酸ビニル(EVA)共重合体樹脂を用いて形成された樹脂シートからなる、2枚の中間膜で挟持されていることを特徴とする請求項11に記載の近赤外線遮蔽合わせ構造体。
【請求項13】
前記近赤外線遮蔽中間膜の厚さが、50μm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項11または12に記載の近赤外線遮蔽合わせ構造体。
【請求項14】
前記近赤外線遮蔽合わせ構造体において、可視光透過率を70%以上に設定した時のヘイズ値が5%以下であることを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の近赤外線遮蔽合わせ構造体。
【請求項15】
近赤外線遮蔽特性を有する超微粒子(A)が、固体媒体に分散された近赤外線遮蔽超微粒子分散体の製造方法であって、
前記近赤外線遮蔽特性を有する超微粒子(A)が、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、Li、Na、Rb、Cs、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表される複合タングステン酸化物微粒子(A)であり、
シリコン粉末標準試料の(220)面のXRDピーク強度の値を1とした時の、前記超微粒子(A)のXRDピークのトップ強度との比の値が0.13以上である複合タングステン酸化物超微粒子(A)を、樹脂バインダー(B)と、耐候性改良剤(C)とを含む固体媒体に分散させる際、前記耐候性改良剤(C)の添加量を、前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)1質量部に対して、0.1〜10質量部とし、且つ、単相とすることを特徴とする近赤外線遮蔽超微粒子分散体の製造方法。
【請求項16】
前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)の分散粒子径が1nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項15に記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体の製造方法。
【請求項17】
前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)が、六方晶の結晶構造を含むことを特徴とする請求項15または16に記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体の製造方法。
【請求項18】
前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)の揮発成分の含有率が、2.5質量%以下であることを特徴とする請求項15から17のいずれかに記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光透過性が良好で、且つ近赤外線領域の光を吸収する特性を有する近赤外線遮蔽超微粒子分散体、当該近赤外線遮蔽超微粒子分散体を用いた近赤外線遮蔽中間膜、当該近赤外線遮蔽中間膜を用いた近赤外線遮蔽合わせ構造体、および近赤外線遮蔽超微粒子分散体の製造方法に関し、より詳しくは、建築物の窓材、自動車、電車、航空機などの窓材等に広く適用され、優れた近赤外線遮蔽機能等の光学的特性を有し、且つ屋外使用時における色調の変化が改善された、近赤外線遮蔽超微粒子分散体、当該近赤外線遮蔽超微粒子分散体を用いた近赤外線遮蔽中間膜、当該近赤外線遮蔽中間膜を用いた近赤外線遮蔽合わせ構造体、および近赤外線遮蔽超微粒子分散体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
良好な可視光透過率を発揮して透明性を保ちながら、日射透過率を低下させる近赤外線遮蔽技術として、これまでさまざまな技術が提案されてきた。なかでも、無機物である導電性微粒子を用いた近赤外線遮蔽技術は、その他の技術と比較して近赤外線遮蔽特性に優れ低コストである上、電波透過性が有りさらに耐候性が高い等のメリットがある。
【0003】
例えば、特許文献1では、少なくとも2枚の板ガラス間にSn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W、V、Moの金属、これらの酸化物、これらの窒化物、これらの硫化物、もしくは、これらへのSbやFのドープ物、の各単独物、または、これらの中から選択される少なくとも2種以上からなる複合物、または、前記各単独物もしくは前記複合物と有機樹脂物を含む混合物、または、前記各単独物もしくは前記複合物へ有機樹脂物を被覆した被膜物、を分散させた中間層を設けた合わせガラスが提案されている。
【0004】
しかしながら本出願人らの検討によると、特許文献1に係る合わせガラスにおいては、近赤外線遮蔽性能を確保するために、近赤外線遮蔽性能を有する粒子を多量に添加する必要があることが知見された。そして、近赤外線遮蔽性能を有する粒子の添加量の増大に伴って、可視光線透過性能が低下してしまうという課題を有していることを知見した。
一方、当該課題を解決しようとして、近赤外線遮蔽性能を有する粒子の添加量を少なくすると、可視光線透過性能は高まるものの、今度は近赤外線遮蔽性能が低下してしまうため、近赤外線遮蔽性能と可視光透過性能とを同時に満足させることが困難であることを知見した。
【0005】
このような技術背景下、本出願人らは、日射遮蔽性能を有する中間層を2枚の板ガラス間に介在させて成り、この中間層が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.0<z/y<3.0)で表記されるタングステン酸化物の微粒子および/または一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子とビニル系樹脂を含有する中間層を有する日射遮蔽用合わせ構造体を特許文献2として開示している。
【0006】
当該特許文献2に開示した中間層を有する日射遮蔽用合わせ構造体は、高い日射遮蔽特性を有しヘイズ値は小さく生産コストの安価な日射遮蔽用合わせ構造体である。さらに、当該日射遮蔽用合わせ構造体は、中間層を、板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板間に介在させ、且つ前記中間層またはプラスチックの少なくともいずれか1つが日射遮蔽機能を有する微粒子を含んでなる合わせ構造体である。そして、当該合わせ板の形態例として、板ガラスや前記のプラスチックをそのまま用いる形態と、前記プラスチックに日射遮蔽機能を有する微粒子を含有させて用いる形態とがある。さらに所望により、当該中間膜へ、紫外線カット、色調調整、等の効果を有する適宜な添加剤を自在且つ容易に添加することが出来るという、多機能を有する日射遮蔽用合わせ構造体となる。
【0007】
さらに本出願人らは、前記一般式MxWyOzで表される複合タングステン酸化物微粒子を含む近赤外線遮蔽微粒子分散体は高い近赤外線遮蔽特性を示し、可視光透過率が70%のときの日射透過率は50%を下回るまでに改善されていることを知見した。とりわけM元素としてCsやRb、Tlなど特定の元素から選択される少なくとも1種類を採用し、結晶構造を六方晶とした複合タングステン酸化物微粒子を用いた近赤外線遮蔽微粒子分散体は卓越した近赤外線遮蔽特性を示し、可視光透過率が70%のときの日射透過率は37%を下回るまでに改善された。
【0008】
本出願人らはこの成果を得て、当該近赤外線遮蔽微粒子分散体にハードコート処理等を加え、窓ガラスやプラズマディスプレイパネル等の用途へ適用することを検討した。
一方、これらの用途においては、近赤外線遮蔽特性と共に高い透明性(低いヘイズ値)が要求されているため、ヘイズ値を低下させることを目的として前記複合タングステン酸化物微粒子の粒子径を更に微細化する試みを行ったところ、当該微粒子の微細化によりヘイズ値を低下させることが出来た。
本出願人らは、以上の成果を特許文献3として開示した。
【0009】
しかし、前記複合タングステン酸化物微粒子が分散された近赤外線遮蔽微粒子分散体においては、太陽光やスポットライト光、等の光が照射されたときに青白色に変色する現象(所謂、ブルーヘイズ現象)が確認された。この現象のため、当該複合タングステン酸化物微粒子を用いた近赤外線遮蔽微粒子分散体を車両等のフロントガラス等に用いた場合、太陽光を受けると青白く変色して視界不良となるため安全上問題となることが懸念された。また、当該複合タングステン酸化物微粒子を建材用の窓ガラス等に用いた場合は、当該ブルーヘイズ現象の発生により美観を損ねてしまうことが懸念された。さらに、当該複合タングステン酸化物微粒子をプラズマディスプレイパネル等に用いた場合では、当該ブルーヘイズ現象の発生によりコントラストが大きく低下し、鮮やかさや見易さを損ねてしまうという課題の発生が懸念された。
【0010】
他方、特許文献4は、タングステン化合物を用いた熱線遮蔽フィルムにおける青変を伴う透過率変化の現象に関して検討を行った。そして、当該フィルムが屋外で使用される等した場合、当該タングステン化合物が長時間に亘り太陽光、特に紫外線に照射されることにより酸化劣化して5価タングステンを生成し、これにより青色に変色するのではないかと考察した。そして、紫外線吸収剤の中でもベンゾフェノン系紫外線吸収剤をタングステン化合物と併用することにより、長期間に亘り変色を防止出来ることを提案している。
【0011】
特許文献5は、タングステン化合物への紫外線吸収剤添加により、タングステン化合物の酸化劣化による青色への変色は抑制出来るものの、さらに長期間に亘り使用した場合に黄色に変色する場合があることを知見した。そして、当該変色が当該紫外線吸収剤自体の紫外線による劣化に起因すること考察している。そして、変色劣化が大きく抑制された熱線遮蔽フィルムを得る為に、当該フィルムに、UV−A領域の紫外線をカット出来る紫外線吸収剤と、UV−B領域の紫外線をカット出来る紫外線吸収剤とを併用して添加することを提案している。
【0012】
一方、本出願人らは、近赤外線遮蔽材料として用いられている複合タングステン酸化物における粒度分布分析を行なった。そして、複合タングステン酸化物微粒子の平均粒径を小さくしても、当該微粒子の分散液中には粗大粒子が残存していることを確認した。そして、残存する粗大粒子に起因するレイリー散乱によりブルーヘイズ現象が発生し、且つ、改善が困難となっていることを知見した。
【0013】
当該知見に基づき本発明者らは、特許文献3で開示した複合タングステン酸化物の粉末と溶媒と分散剤とを混合したスラリーを、イットリア安定化ジルコニアビーズと共に媒体攪拌ミルに投入し、所定粒度になるまで粉砕分散処理を行うことに想到した。そして当該粉砕分散処理を行うことで近赤外線遮蔽材料微粒子から粗大粒子を削除し、ブルーヘイズ現象を抑制した近赤外線遮蔽微粒子分散液および近赤外線遮蔽分散体等が得られることを知見し、特許文献6として開示した。
【0014】
しかしながら、特許文献6において近赤外線遮蔽材料として用いた複合タングステン酸化物粉体の粒子径は1〜5μmと大きいものであった。この為、ブルーヘイズ現象を抑制出来る近赤外線遮蔽微粒子分散液を得る為には、媒体攪拌ミルを用いて前記複合タングステン酸化物粉体を長時間粉砕し、粒子を微細化する必要があった。この長時間の粉砕工程は、前記近赤外線遮蔽微粒子分散液における生産性低下の原因となることが懸念された。
【0015】
ここで本出願人らはさらに研究を行い、プラズマ反応を用いて粒径100nm以下の複合タングステン酸化物超微粒子を製造することに想到した。この結果、プラズマ反応を用いて製造された粒径が小さな複合タングステン酸化物超微粒子を原料として用いることで、長時間の粉砕処理を施す必要がなくなり、低コストかつ高い生産性をもって近赤外線遮蔽超微粒子分散液が製造可能となった。
本出願人らは、以上の成果を特許文献7として開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平8−259279号公報
【特許文献2】国際公開第WO2005/087680号
【特許文献3】国際公開第WO2005/037932号
【特許文献4】特開2010−17854号公報
【特許文献5】特開2010−99979号公報
【特許文献6】特開2009−215487号公報
【特許文献7】特開2010−265144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら本出願人のさらなる研究の結果、特許文献7にて開示した方法で製造した複合タングステン酸化物超微粒子の粒子径は100nm以下と小さいものの、当該超微粒子の結晶性は低いものであることを知見した。当該知見より、本発明者らは、当該複合タングステン酸化物超微粒子を用いた分散液の近赤外線遮蔽特性が、さらに向上可能であることに想到した。
【0018】
本発明は、上述の状況の下でなされたものであり、その解決しようとする課題は、可視光領域で透明性があり、優れた近赤外線遮蔽特性を有し、高い生産性をもって製造される近赤外線遮蔽超微粒子を用いて、優れた近赤外線遮蔽機能を有しながら、ヘイズ値が低く意匠性に優れ、さらには屋外使用時における色調の変化、ブルーヘイズ現象が抑制された近赤外線遮蔽超微粒子分散体、当該近赤外線遮蔽超微粒子分散体を用いた近赤外線遮蔽用中間膜、当該近赤外線遮蔽中間膜を用いた近赤外線遮蔽合わせ構造体、および近赤外線遮蔽超微粒子分散体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、前記課題を解決することを目的とし、複合タングステン酸化物超微粒子(本発明において「複合タングステン酸化物超微粒子(A)」と記載する場合がある。)の結晶性と近赤外線遮蔽性能との関係について鋭意検討を行った。その結果、複合タングステン酸化物超微粒子のX線回折(本発明において「XRD」と記載する場合がある。)パターンにおいて、ピークトップ強度が所定の範囲にある複合タングステン酸化物超微粒子は、可視光領域で透明性があり、結晶性が高いことによって優れた近赤外線遮蔽特性を有することを知見した。具体的には、シリコン粉末標準試料の(220)面に係るXRDピーク強度の値を1とした時の、前記複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークのトップ強度との比の値が0.13以上である複合タングステン酸化物超微粒子(本発明において「複合タングステン酸化物超微粒子(A)」と記載する場合がある。)である。
【0020】
当該ピークトップ強度が所定の範囲にある複合タングステン酸化物超微粒子(A)は、可視光領域で透明性があり、結晶性が高いことによって優れた近赤外線遮蔽特性を有しており、当該複合タングステン酸化物超微粒子(A)を含む分散液が高い生産性をもって製造可能であり、汎用性のある優れた近赤外線遮蔽機能を有しながら、ヘイズ値が低く意匠性に優れた近赤外線遮蔽超微粒子分散体、当該近赤外線遮蔽超微粒子分散体を用いた近赤外線遮蔽用中間膜、当該近赤外線遮蔽用中間膜を用いた近赤外線遮蔽合わせ構造体が得られることに想到した。
さらに、当該複合タングステン酸化物超微粒子(A)を用いた分散液において、複合タングステン酸化物超微粒子(A)の分散粒子径を200nm以下とすることによって、ブルーヘイズ現象を抑制出来ることも知見した。
【0021】
そして当該複合タングステン酸化物超微粒子(A)を樹脂バインダー(本発明において「樹脂バインダー(B)」と記載する場合がある。)と共に、特定の構造を有する耐候性改良剤(本発明において「耐候性改良剤(C)」と記載する場合がある。)を含有する固体媒体に分散させ、それらの添加量を最適化することにより、屋外使用時における色調の変化が抑制された近赤外線遮蔽超微粒子分散体が得られ、当該近赤外線遮蔽超微粒子分散体を用いた近赤外線遮蔽用中間膜、近赤外線遮蔽合わせ構造体が得られることを見出した。
【0022】
また、近赤外線遮蔽超微粒子分散体をシート状、ボード状、または、フィルム状のいずれかに加工して、透明基材上にコーティング層として形成した可視光領域で透明性があり優れた近赤外線遮蔽特性を有する近赤外線遮蔽超微粒子分散体が得られることに想到した。さらに当該近赤外線遮蔽超微粒子分散体を近赤外線遮蔽中間膜として用い、2枚以上の透明基材に狭持された中間層に前記近赤外線遮蔽中間膜を備えた近赤外線遮蔽合わせ構造体を得ることが出来ることに想到して本発明を完成した。
【0023】
即ち、上述の課題を解決する第1の発明は、
近赤外線遮蔽特性を有する超微粒子(A)が固体媒体に分散された近赤外線遮蔽超微粒子分散体であって、
前記超微粒子(A)が、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、Li、Na、Rb、Cs、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表される複合タングステン酸化物超微粒子(A)であり、シリコン粉末標準試料の(220)面のXRDピーク強度の値を1とした時の、前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)のXRDピークのトップ強度との比の値が0.13以上であり、且つ、単相であり、
前記固体媒体は、樹脂バインダー(B)と、耐候性改良剤(C)とを含んでおり、
前記耐候性改良剤(C)の添加量が、前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)1質量部に対して、0.1〜10質量部であり、
前記耐候性改良剤(C)は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤から選択される1種類以上を含むことを特徴とする近赤外線遮蔽超微粒子分散体である。
第2の発明は、
前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)の分散粒子径が、1nm以上200nm以下であることを特徴とする第1の発明に記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体である。
第3の発明は、
前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)が、六方晶の結晶構造を含むことを特徴とする第1または第2の発明に記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体である。
第4の発明は、
前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)に含まれる揮発成分の含有率が、2.5質量%以下であることを特徴とする第1から第3の発明のいずれかに記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体である。
第5の発明は、
前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)を、0.001質量%以上80質量%以下含むことを特徴とする第1から第4の発明のいずれかに記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体である。
第6の発明は、
前記樹脂バインダー(B)が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂、シリコーン樹脂という樹脂群から選択される1種の樹脂、または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体、のいずれかから選択される媒体樹脂であることを特徴とする第1から第5の発明のいずれかに記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体である。
第7の発明は、
前記近赤外線遮蔽超微粒子分散体が、シート状、ボード状、または、フィルム状のいずれかになっていることを特徴とする第1から第6の発明のいずれかに記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体である。
第8の発明は、
透明基材上に、厚さ1μm以上10μm以下のコーティング層として前記近赤外線遮蔽超微粒子分散体が設けられていることを特徴とする第1から第7の発明のいずれかに記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体である。
第9の発明は、
前記透明基材が、ポリエステルフィルム、あるいは、ガラスであることを特徴とする第8の発明に記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体である。
第10の発明は、
2枚以上の透明基材と、前記2枚以上の透明基材に挟持された中間層とを備えた近赤外線遮蔽合わせ構造体において前記中間層を構成する近赤外線遮蔽中間膜であって、
前記中間膜として、第1から第9の発明のいずれかに記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体が用いられていることを特徴とする近赤外線遮蔽中間膜である。
第11の発明は、
2枚以上の透明基材と、前記2枚以上の透明基材に狭持された中間層とを備えた近赤外線遮蔽合わせ構造体であって、
前記中間層は1層以上の中間膜で構成され、前記中間膜の少なくとも1層が第10の発明に記載の近赤外線遮蔽中間膜であり、
前記透明基材が、板ガラス、プラスチック、近赤外遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックから選ばれるいずれかであることを特徴とする近赤外線遮蔽合わせ構造体である。
第12の発明は、
前記中間層を構成する中間膜の少なくとも1層が、第11の発明に記載の近赤外線遮蔽中間膜であり、前記中間膜が、ポリビニルアセタール樹脂、または、エチレン・酢酸ビニル(EVA)共重合体樹脂を用いて形成された樹脂シートからなる、2枚の中間膜で挟持されていることを特徴とする第11の発明に記載の近赤外線遮蔽合わせ構造体である。
第13の発明は、
前記近赤外線遮蔽中間膜の厚さが、50μm以上1000μm以下であることを特徴とする第11または第12の発明に記載の近赤外線遮蔽合わせ構造体である。
第14の発明は、
前記近赤外線遮蔽合わせ構造体において、可視光透過率を70%以上に設定した時のヘイズ値が5%以下であることを特徴とする第11から第13の発明のいずれかに記載の近赤外線遮蔽合わせ構造体である。
第15の発明は、
近赤外線遮蔽特性を有する超微粒子(A)が、固体媒体に分散された近赤外線遮蔽超微粒子分散体の製造方法であって、
前記近赤外線遮蔽特性を有する超微粒子(A)が、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、Li、Na、Rb、Cs、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表される複合タングステン酸化物微粒子(A)であり、
シリコン粉末標準試料の(220)面のXRDピーク強度の値を1とした時の、前記超微粒子(A)のXRDピークのトップ強度との比の値が0.13以上である複合タングステン酸化物超微粒子(A)を、樹脂バインダー(B)と、耐候性改良剤(C)とを含む固体媒体に分散させる際、前記耐候性改良剤(C)の添加量を、前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)1質量部に対して、0.1〜10質量部とし、且つ、単相とすることを特徴とする近赤外線遮蔽超微粒子分散体の製造方法である。
第16の発明は、
前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)の分散粒子径が1nm以上200nm以下であることを特徴とする第15の発明に記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体の製造方法である。
第17の発明は、
前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)が、六方晶の結晶構造を含むことを特徴とする第15または第16の発明に記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体の製造方法である。
第18の発明は、
前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)の揮発成分の含有率が、2.5質量%以下であることを特徴とする第15から第17の発明のいずれかに記載の近赤外線遮蔽超微粒子分散体の製造方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、可視光領域において透明性があり、優れた近赤外線遮蔽特性を有し、耐候性が高く、ヘイズ値が低く意匠性に優れ、ブルーヘイズ現象が抑制された近赤外線遮蔽超微粒子分散体、当該近赤外線遮蔽超微粒子分散体を用いた近赤外線遮蔽用中間膜、当該近赤外線遮蔽中間膜を用いた近赤外線遮蔽合わせ構造体を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に用いられる高周波プラズマ反応装置の概念図である。
図2】実施例1に係る超微粒子のX線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、
[a]複合タングステン酸化物超微粒子
(1)組成、(2)結晶構造、(3)XRDピークトップ強度、(4)分散粒子径、(5)BET比表面積、(6)揮発成分、
[b]複合タングステン酸化物超微粒子の合成方法、
(1)熱プラズマ法、(2)固相反応法、(3)合成された複合タングステン酸化物超微粒子、
[c]複合タングステン酸化物超微粒子の揮発成分とその乾燥処理方法、
(1)大気乾燥機による乾燥処理、(2)真空流動乾燥機による乾燥処理、(3)噴霧乾燥機による乾燥処理、
[d]複合タングステン酸化物超微粒子分散液
(1)溶媒、(2)分散剤、(3)耐候性改良剤、(4)分散方法、(5)分散粒子径、(6)バインダー、その他の添加剤、
[e]近赤外線遮蔽超微粒子分散体
(1)固体媒体、(2)製造方法、(3)添加剤、
[f]近赤外線遮蔽超微粒子分散体の一例であるシート状、ボード状またはフィルム状の近赤外線遮蔽超微粒子分散体、近赤外線遮蔽中間膜、
[g]近赤外線遮蔽超微粒子分散体の一例であるコーティング層として用いた近赤外線遮蔽超微粒子分散体、近赤外線遮蔽中間膜、
[h]近赤外線遮蔽中間膜を用いた近赤外線遮蔽合わせ構造体、
の順に説明する。
【0027】
[a]複合タングステン酸化物超微粒子(本明細書において便宜の為、「(A)」という符号を付記する場合がある。)
本発明に用いる複合タングステン酸化物超微粒子(A)について、(1)組成、(2)結晶構造、(3)XRDピークトップ強度、(4)分散粒子径、(5)BET比表面積、(6)揮発成分、(7)まとめ、の順に説明する。
【0028】
(1)組成
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)は、近赤外線遮蔽効果を発現する成分であり、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表記される、複合タングステン酸化物超微粒子である。
【0029】
当該一般式MxWyOzで示される複合タングステン酸化物超微粒子(A)について説明する。
一般式MxWyOz中のM元素、x、y、zおよびその結晶構造は、複合タングステン酸化物超微粒子の自由電子密度と密接な関係があり、近赤外線遮蔽特性に大きな影響を及ぼす。
【0030】
一般に、三酸化タングステン(WO)中には有効な自由電子が存在しないため近赤外線遮蔽特性が低い。ここで、本発明者らは、当該タングステン酸化物へ、M元素(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種以上の元素)を添加して複合タングステン酸化物とすることで、当該複合タングステン酸化物中に自由電子が生成され、近赤外線領域に自由電子由来の吸収特性が発現し、波長1000nm付近の近赤外線遮蔽材料として有効なものとなることを知見した。そして、当該複合タングステン酸化物は化学的に安定な状態を保ち、優れた近赤外線遮蔽材料として有効なものとなることを知見したものである。さらに、当該M元素は、Cs、Rb、K、Tl,Ba、Cu、Al、Mn、Inがより好ましいこと、なかでも、M元素がCs、Rbであると、当該複合タングステン酸化物が六方晶構造を取り易くなり、可視光線を透過し近赤外線を吸収し遮蔽することから、後述する理由により特に好ましいことも知見したものである。
【0031】
ここで、M元素の添加量を示すxの値について説明する。
x/yの値が0.001以上であれば、十分な量の自由電子が生成され目的とする近赤外線遮蔽特性を得ることが出来る。そして、M元素の添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、近赤外線遮蔽特性も上昇するが、x/yの値が1程度で当該効果も飽和する。また、x/yの値が1以下であれば、複合タングステン超微粒子に不純物相が生成されるのを回避出来るので好ましい。六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物超微粒子が均一な結晶構造を有するとき、添加M元素の添加量は、x/yの値で0.2以上0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.29≦x/y≦0.39である。更に好ましくは0.33付近が好ましい。これは六方晶の結晶構造から理論的に算出されるx/yの値が0.33であり、この前後の添加量で好ましい光学特性が得られるからである。
【0032】
次に、酸素量の制御を示すzの値について説明する。
一般式MxWyOzで示される複合タングステン酸化物超微粒子において、z/yの値は2.0<z/y≦3.0であることが好ましく、より好ましくは2.2≦z/y≦3.0であり、さらに好ましくは2.6≦z/y≦3.0、最も好ましくは2.7≦z/y≦3.0である。このz/yの値が2.0以上であれば、当該複合タングステン酸化物中に目的以外の化合物であるWOの結晶相が現れるのを回避することが出来ると共に、材料としての化学的安定性を得ることが出来るので、有効な近赤外線遮蔽材料として適用出来るためである。一方、z/yの値が3.0以下であれば当該タングステン酸化物中に必要とされる量の自由電子が生成され、効率よい近赤外線遮蔽材料となる。
典型的な例としてはCs0.33WO、Rb0.33WO、K0.33WO、Ba0.33WOなどを挙げることが出来るが、x,y,zの値が前記の範囲に収まるものであれば、有用な近赤外線吸収特性を得ることが出来る。
【0033】
(2)結晶構造
複合タングステン酸化物超微粒子は、六方晶以外に、正方晶、立方晶のタングステンブロンズの構造をとるが、いずれの構造をとるときも近赤外線遮蔽材料として有効である。しかしながら、当該複合タングステン酸化物超微粒子がとる結晶構造によって、近赤外線領域における光の吸収位置が変化する。すなわち、近赤外線領域における光の吸収位置は、立方晶よりも正方晶のときが長波長側に移動し、六方晶のときは正方晶のときよりも、さらに長波長側へ移動する。また、当該吸収位置の変動に付随して、可視光領域の吸収は六方晶が最も少なく、次に正方晶であり、立方晶はこの中では最も大きい。
【0034】
以上の知見から、可視光領域の光をより透過させ、近赤外線領域の光をより遮蔽する用途には、六方晶のタングステンブロンズを用いることが好ましい。複合タングステン酸化物超微粒子が六方晶の結晶構造を有する場合、当該微粒子の可視光領域の透過性が向上し、近赤外領域の吸収が向上する。また、複合タングステン酸化物超微粒子が、マグネリ相と呼ばれるWO2.72と同様の単斜晶の結晶構造をとっている場合や、斜方晶の結晶構造をとっている場合も、近赤外線吸収に優れ、近外線遮蔽材料として有効なことがある。
【0035】
「(1)組成」の項でも説明したように、六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物超微粒子が均一な結晶構造を有するとき、添加M元素の添加量は、x/yの値で0.2以上0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.29≦x/y≦0.39である。理論的にはz/y=3の時、x/yの値が0.33となることで、添加M元素が六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。
【0036】
さらに、複合タングステン酸化物超微粒子においては、各超微粒子体積の50%以上が単結晶であることが望ましい。換言すれば、各超微粒子は、アモルファス相の体積比率が50%未満である単結晶で構成されていることが好ましい。
【0037】
後述するように、複合タングステン酸化物超微粒子の分散粒子径は、当該複合タングステン酸化物超微粒子が分散している分散液や分散体の透明性を確保する上から、200nm以下であることが好ましい。一方、上述したように、優れた光学的特性を発揮するためには、複合タングステン酸化物超微粒子の結晶性が高いことが好ましい。
従って、複合タングステン酸化物超微粒子の分散粒子径が1nm以上200nm以下であることから、結晶子径は200nm以下となっていることが好ましくなる。
そして、上述したように各超微粒子体積の50%以上が単結晶であることが満たされていると、複合タングステン酸化物超微粒子は優れた近赤外線遮蔽特性を有し、シリコン粉末標準試料の(220)面に係るXRDピーク強度の値を1とした時の、前記複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークのトップ強度との比の値が0.13以上となる。
この時さらに、複合タングステン酸化物超微粒子の結晶子径が200nm以下10nm以上であることがより好ましい。結晶子径が200nm以下10nm以上の範囲であれば、XRDピークトップ強度比の値が0.13を超え、さらに優れた近赤外線遮蔽特性が発揮されるからである。
【0038】
これに対し、複合タングステン超微粒子において、分散粒子径が1nm以上200nm以下ではあるが、各超微粒子においてアモルファス相が体積比率で50%以上存在する場合や、複合タングステン酸化物超微粒子が多結晶の場合、当該複合タングステン超微粒子のXRDピークのトップ強度比の値が0.13未満となり、結果的に、近赤外線吸収特性が不十分で近赤外線遮蔽特性の発現が不十分となる場合がある。
【0039】
尚、後述する複合タングステン酸化物超微粒子分散液中に含まれる、解砕、粉砕または分散された後の複合タングステン酸化物超微粒子のX線回折パターンは、近赤外線遮蔽超微粒子分散体や近赤外線遮蔽合わせ構造体中に含まれることとなった複合、タングステン酸化物超微粒子のX線回折パターンにおいても維持される。
従って、近赤外線遮蔽超微粒子分散液や分散体に含まれる複合タングステン酸化物超微粒子のXRDパターン、XRDピークのトップ強度、結晶子径などで示される値が上述した本発明の範囲を満たし、本発明で用いる複合タングステン酸化物超微粒子が所定の結晶性を保有していれば、本発明に係る優れた近赤外線遮蔽特性が発揮される。
【0040】
(3)XRDピークトップ強度
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークトップ強度について、さらに詳細に説明する。
上述したように、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子は、優れた近赤外線遮蔽特性を有し、シリコン粉末標準試料の(220)面に係るXRDピーク強度の値を1とした時の、前記複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークのトップ強度との比の値が0.13以上のものである。
【0041】
本発明者らは、上述した複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークトップ強度が、当該超微粒子の結晶性と密接な関係があり、さらには当該超微粒子における自由電子密度と密接な関係があり、結果として、当該複合タングステン酸化物超微粒子の近赤外線遮蔽特性に大きく影響を及ぼしていることを知見したことにより、着目したものである。
具体的には、前記XRDピークトップ強度比の値が0.13以上となっていれば、当該超微粒子における自由電子密度が担保され、所望の近赤外線遮蔽特性が得られるのである。具体的には、当該XRDピークトップ強度比の値が0.13以上であれば良く、0.7以下であることが好ましい。
【0042】
尚、XRDピークのトップ強度とは、上述した複合タングステン酸化物超微粒子や標準試料の粉末X線回折パターン(横軸:回折角度(2θ)vs.縦軸:回折強度)において、最も回折強度が強い回折ピークにおける回折強度を言う。本発明に係る複合タングステン酸化物の場合では、例えば、六方晶のCs複合タングステン酸化物やRb複合タングステン酸化物において、X線回折パターンにおける回折強度の最大ピークは2θ=25°〜31°の範囲に出現する。
【0043】
上述した複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークのトップ強度の測定には、粉末X線回折法を用いる。このとき、複合タングステン酸化物超微粒子の試料間において、測定結果に客観的な定量性を持たせるため、標準試料を定めて、当該標準試料の特定面指数のピーク強度を測定し、当該標準試料の特定面指数のピーク強度の値に対する当該超微粒子試料のXRDピークのトップ強度との比の値をもって、各超微粒子試料のXRDピークトップ強度を表記することとした。
【0044】
ここで標準試料は、当業界にて普遍性のあるシリコン粉末標準試料(NIST製、640c)を使用することとし、複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークと重なり合わない、前記シリコン粉末標準試料における(220)面に係るXRDピークを基準とすることとした。
【0045】
さらに客観的な定量性を担保するため、その他の測定条件も常に一定にすることとした。
まず、深さ1.0mmの試料ホルダーへ、X線回折測定の際における公知の操作によって超微粒子試料を充填する。具体的には、充填される超微粒子試料において優先方位(結晶の配向)が生じるのを回避する為、ランダム且つ徐々に充填し、尚且つムラなく、出来るだけ密に充填することが好ましい。
X線源として、陽極のターゲット材質がCuであるX線管球を45kV/40mAの出力設定で使用し、ステップスキャンモード(ステップサイズ:0.0165°(2θ)および計数時間:0.022秒/ステップ)のθ−2θの粉末X線回折法で測定することとした。
【0046】
このとき、X線管球の使用時間によってXRDピーク強度が変化するので、X線管球の使用時間は試料間で殆ど同じであることが望ましい。客観的な定量性を確保するため、X線管球使用時間の試料間の差は、最大でもX線管球の予測寿命の20分の1以下に収めることが必要である。
本発明においては、上述したように、各超微粒子試料のXRDピークトップ強度の定量性を確保するために、複合タングステン酸化物超微粒子のX線回折パターンの測定毎に、上述したシリコン粉末標準試料の測定を実施して、前記XRDピークトップ強度の比を算出する方法を採用している。
一方、市販のX線装置のX線管球予測寿命は数千時間以上あり、且つ1試料当たりの測定時間は数時間以下のものが殆どである。従って、上述の望ましい測定方法を実施することで、X線管球使用時間によるXRDピークトップ強度の比への影響を無視出来るほど小さくすることが出来る。
また、X線管球の温度を一定とするため、X線管球用の冷却水温度も一定とすることが望ましい。
【0047】
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークトップ強度について、異なる観点からも説明する。
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークトップ強度比の値が0.13以上であることは、異相が殆ど含まれていない結晶性の良い複合タングステン酸化物超微粒子が得られていること、さらに、当該複合タングステン酸化物超微粒子において、XRDピークがブロード化することなくアモルファス化が進んでいないことを示すものである。
さらに、XRDピークトップ強度を測定する際に得られるXRDパターンを解析することで、同時に、本発明で好ましいとしている複合タングステン酸化物以外の化合物相の存在が無いことも確認される。
この結果、当該複合タングステン酸化物超微粒子は、結晶性が良く、アモルファス相を有しておらず、本発明には好ましくはない化合物相が存在しないことが確認される。
この結果、当該複合タングステン酸化物超微粒子を、可視光を透過する樹脂などの固体媒体に分散させることにより、優れた近赤外線遮蔽特性を有する近赤外線遮蔽超微粒子分散体が得られるものと考えられる。尚、本発明において、本発明に係る複合タングステン酸化物以外の化合物相を「異相」と記載する場合がある。
【0048】
(4)分散粒子径
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子の分散粒子径は、1nm以上200nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、分散粒子径は、10nm以上200nm以下である。複合タングステン酸化物超微粒子の分散粒子径が、200nm以下であることが好ましいことは、複合タングステン酸化物超微粒子分散液中の複合タングステン酸化物超微粒子においても同様である。
【0049】
複合タングステン酸化物超微粒子の分散粒子径が1nm以上200nm以下であることは、粒子による光の散乱を低減するために肝要である。その理由は、分散液中に分散している粒子の分散粒子径が小さければ、幾何学散乱もしくはミー散乱による、波長400nm〜780nmの可視光線領域における光の散乱が低減されるからである。
当該光の散乱が低減される結果、近赤外線遮蔽膜が曇りガラスのようになって鮮明な透明性が得られなくなるのを回避出来る。即ち、分散粒子の分散粒子径が200nm以下になると、前記幾何学散乱もしくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になるからである。当該レイリー散乱領域では、散乱光強度は分散粒子径の6乗に比例するため、分散粒子径の減少に伴い散乱は低減し、透明性が向上するからである。さらに、分散粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。一方、当該複合タングステン酸化物超微粒子の近赤外線吸収特性の観点から、分散粒子径は1nm以上であることが好ましく、より好ましくは10nm以上である。尚、粒子径が1nm以上あれば工業的な製造は容易である。
【0050】
(5)BET比表面積
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子のBET比表面積は、当該超微粒子の粒度分布に密接な関係がある。そして当該BET比表面積の値は、当該複合タングステン酸化物超微粒子を原料とする近赤外線遮蔽超微粒子分散液の製造コスト、生産性、さらに、当該超微粒子自体の近赤外線遮蔽特性や光着色を抑制する耐光性に影響を与える。
【0051】
当該複合タングステン酸化物超微粒子のBET比表面積が小さいことは、当該超微粒子の粒子径が大きいことを表している。従って、当該複合タングステン酸化物超微粒子のBET比表面積が30m/g以上であれば、可視光領域で透明性がある上、上述したブルーヘイズ現象を抑制出来る近赤外線遮蔽超微粒子分散液を製造するために、当該超微粒子を、媒体攪拌ミルで長時間粉砕して粒子をより微細化する必要が無く、本発明に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散液の製造コスト低減と生産性向上を実現出来る。
【0052】
一方、当該複合タングステン酸化物超微粒子のBET比表面積が、例えば200m/g以下であることは、当該超微粒子の粒子形状を真球状と仮定したときのBET粒径が2nm以上になることを示しており、近赤外線遮蔽特性に寄与しない結晶子径1nm以下の超微粒子が殆ど存在していないことを意味している。よって、複合タングステン酸化物超微粒子のBET比表面積が200m/g以下である場合は、当該超微粒子の近赤外線遮蔽特性や耐光性が担保されると考えられる。
【0053】
上述した複合タングステン酸化物超微粒子のBET比表面積の測定には、吸着に用いるガスとして、窒素ガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスなどが使用される。尤も、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子のように、測定試料が粉体で、比表面積が0.1m/g以上の場合は、比較的取扱いに容易で低コストな窒素ガスを使用することが望ましい。
複合タングステン酸化物超微粒子のBET比表面積は30.0m/g以上200m/g以下であることが好ましいが、30.0m/g以上120.0m/g以下とするのがより良い。さらに好ましくは、30.0m/g以上90.0m/g以下、最も好ましくは35.0m/g以上70.0m/g以下とするのが良い。
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子のBET比表面積は、複合タングステン酸化物超微粒子分散液を得る際の粉砕分散前後においても、上述の値を担保することが好ましい。
【0054】
これは、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子のBET比表面積が200m/g以下であることに加え、上述したXRDピークトップ強度の比の値が所定値以上である場合には、近赤外線遮蔽特性に寄与しない結晶子径1nm以下の超微粒子が殆ど存在せず、且つ結晶性の良い超微粒子が存在することになるので近赤外線遮蔽特性や耐光性が担保されると考えられることによる。
【0055】
(6)揮発成分
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子は、加熱により揮発する成分(本発明において「揮発成分」と記載する場合がある。)を含む場合がある。当該揮発成分は、複合タングステン酸化物超微粒子が、保管雰囲気や大気中に暴露された際や、合成工程途中において吸着する物質に起因するものである。ここで、当該揮発成分の具体例としては、水分である場合や、後述する分散液の溶媒である場合がある。そして、例えば150℃またはそれ以下の加熱により、当該複合タングステン酸化物超微粒子から揮発する成分である。
【0056】
複合タングステン酸化物超微粒子における揮発成分とその含有率は、当該超微粒子を樹脂(媒体樹脂)等に分散させる際の分散性に関して影響を与える場合がある。例えば、後述する近赤外線遮蔽超微粒子分散体に使用される樹脂と、当該超微粒子に吸着されている揮発成分との相溶性が悪い場合であって、さらに当該超微粒子において当該揮発成分含有率が高い場合に、製造される近赤外線遮蔽超微粒子分散体のヘイズ発生(透明性悪化)の原因となる場合がある。また、製造された近赤外線遮蔽超微粒子分散体が、長期間室外に設置され太陽光や風雨に暴露されたときに、含有されている複合タングステン酸化物超微粒子が近赤外線遮蔽超微粒子分散体外へと脱離したり、当該近赤外線遮蔽超微粒子分散体の膜の剥がれが生じたりする場合がある。
これは、当該複合タングステン酸化物超微粒子と樹脂との相溶性悪化が、製造される当該近赤外線遮蔽超微粒子分散体の劣化の原因となるからである。従って、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子において揮発成分含有率が所定量以下であれば、ヘイズ発生(透明性悪化)や屋外使用時における特性劣化などが抑制され、広い汎用性が発揮される。
【0057】
本発明者らの検討によれば、複合タングステン酸化物超微粒子において、揮発成分の含有率が2.5質量%以下であれば、当該超微粒子は殆どの分散媒に対して分散可能となり、汎用性のある複合タングステン酸化物超微粒子分散液となる。この結果、前記複合タングステン酸化物超微粒子は、過度に二次凝集している等の問題がなければ、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサーなどの混合機、および、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、一軸押出機、二軸押出機などの混練機を用いて、均一に混合、混錬(溶融混合も含む)することにより、所望の媒体樹脂等へ分散可能である。
【0058】
複合タングステン酸化物超微粒子における揮発成分の含有率は、熱分析により測定出来る。具体的には、複合タングステン酸化物超微粒子が熱分解する温度より低く、且つ、揮発成分が揮発するよりも高い温度に、複合タングステン酸化物超微粒子試料を保持して重量減少を測定すればよい。また、揮発成分を特定したい場合には、ガス質量分析機を併用して当該揮発成分を分析すればよい。
【0059】
[b]複合タングステン酸化物超微粒子の合成方法、
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子の合成方法について説明する。
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子の合成方法としては、熱プラズマ中にタングステン化合物出発原料を投入する熱プラズマ法や、タングステン化合物出発原料を還元性ガス雰囲気中で熱処理する固相反応法が挙げられる。
以下、(1)熱プラズマ法、(2)固相反応法、(3)合成された複合タングステン酸化物超微粒子、の順に説明する。
【0060】
(1)熱プラズマ法
熱プラズマ法について(i)熱プラズマ法に用いる原料、(ii)熱プラズマ法とその条件、の順に説明する。
【0061】
(i)熱プラズマ法に用いる原料
本発明に係る一般式MxWyOz(但し、Mは前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物超微粒子を熱プラズマ法で合成する際には、タングステン化合物と、M元素化合物との混合粉体を原料として用いることが出来る。
タングステン化合物としては、タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、から選ばれる1種以上であることが好ましい。
また、M元素化合物としては、M元素の酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩、から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0062】
上述したタングステン化合物と、上述したM元素化合物とを含む水溶液とを、M元素とW元素の比が、MxWyOzのM元素とW元素の比となるように湿式混合する。そして、得られた混合液を乾燥することによって、M元素化合物とタングステン化合物との混合粉体が得られる、そして、当該混合粉体は熱プラズマ法の原料とすることが出来る。
また、当該混合粉体を、不活性ガス単独または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下にて、1段階目の焼成によって得られる複合タングステン酸化物を、熱プラズマ法の原料とすることも出来る。他にも、1段階目で不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下で焼成し、当該1段階目の焼成物を、2段階目にて不活性ガス雰囲気下で焼成する、という2段階の焼成によって得られる複合タングステン酸化物を、熱プラズマ法の原料とすることも出来る。
【0063】
(ii)熱プラズマ法とその条件
本発明で用いる熱プラズマとして、例えば、直流アークプラズマ、高周波プラズマ、マイクロ波プラズマ、低周波交流プラズマ、のいずれか、または、これらのプラズマの重畳したもの、または、直流プラズマに磁場を印加した電気的な方法により生成するプラズマ、大出力レーザーの照射により生成するプラズマ、大出力電子ビームやイオンビームにより生成するプラズマが適用出来る。尤も、いずれの熱プラズマを用いるにしても、10000〜15000Kの高温部を有する熱プラズマであり、特に、超微粒子の生成時間を制御出来るプラズマであることが好ましい。
【0064】
当該高温部を有する熱プラズマ中に供給された、前記原料は、当該高温部において瞬時に蒸発する。そして、当該蒸発した原料は、プラズマ尾炎部に至る過程で凝縮し、プラズマ火炎外で急冷凝固されて、複合タングステン酸化物超微粒子を生成する。
【0065】
高周波プラズマ反応装置を用いる場合を例として、図1を参照しながら合成方法について説明する。
【0066】
先ず、真空排気装置により、水冷石英二重管内と反応容器6内で構成される反応系内を約0.1Paまで真空引きする。反応系内を真空引きした後、今度は、当該反応系内をアルゴンガスで満たし、1気圧のアルゴンガス流通系とする。その後、反応容器内にプラズマガスとして、アルゴンガス、アルゴンとヘリウムの混合ガス(Ar−He混合ガス)、またはアルゴンと窒素の混合ガス(Ar−N混合ガス)から選択されるいずれかのガスを例えば、30〜45L/minの流量で導入する。一方、プラズマ領域のすぐ外側に流すシースガスとして、Ar−He混合ガスを例えば60〜70L/minの流量で導入する。そして、高周波コイル2に交流電流をかけて、高周波電磁場(周波数4MHz)により熱プラズマを発生させる。このとき、プレート電力は30〜40kWとする。
【0067】
原料粉末供給ノズル5より、前記合成方法で得たM元素化合物とタングステン化合物との混合粉体、または、複合タングステン酸化物の原料を、ガス供給装置から供給するアルゴンガスをキャリアガスとして、例えば供給速度25〜50g/minの割合で、熱プラズマ中に導入して所定時間反応を行う。反応後、生成した複合タングステン酸化物超微粒子は、フィルター8に堆積するので、これを回収する。
【0068】
上述した熱プラズマ法において、キャリアガス流量と原料供給速度は、超微粒子の生成時間に大きく影響する。そこで、キャリアガス流量と原料供給速度は、所望する複合タングステン酸化物超微粒子の結晶性が得られるよう適宜調整することが肝要である。
また、プラズマガスは10000〜15000Kの高温部を有する熱プラズマ領域を保つ機能があり、シースガスは反応容器内における石英トーチの内壁面を冷やし、石英トーチの溶融を防止する機能がある。
【0069】
シースガス流量は、プラズマガス流量と共にプラズマ領域の形状に影響を及ぼすため、それらのガスの流量はプラズマ領域の形状制御に重要なパラメータとなる。
例えば、プラズマガスとシースガスとの流量を上げる程、プラズマ領域の形状がガスの流れ方向に延び、プラズマ尾炎部の温度勾配が緩やかなる。この結果、生成する超微粒子の生成時間が長くなり、結晶性の高い超微粒子が生成出来るようになる。
逆に、プラズマガスとシースガスとの流量を下げる程、プラズマ領域の形状がガスの流れ方向に縮み、プラズマ尾炎部の温度勾配が急になる。この結果、生成する超微粒子の生成時間が短くなり、BET比表面積の大きい超微粒子が生成出来るようになる。
【0070】
上述したプラズマガスとシースガスのガス供給条件、原料供給条件を制御することで、超微粒子の生成時間を制御し、得られる超微粒子の結晶性を制御して、本発明に係る所定のXRDピークのトップ強度を有する複合タングステン酸化物超微粒子を製造出来る。
尤も、プラズマ反応装置を用いて超微粒子を生成する最適条件は、詳細には、プラズマを発生させる領域の構造、プラズマガスを供給して誘導的に形成されるプラズマフレームの形状、および、前記プラズマフレーム内へ、活性ガスまたは不活性ガスと共に処理物質を供給する供給管の形状、さらに、当該供給管の先端部に取付けられる処理物質を搬送する分散ノズルの流路形状などによって、異なってくるものである。この結果、各装置のプラズマ発生領域に合わせ、供給するプラズマガスやシースガスのガス供給条件、キャリアガス供給条件、原料供給条件を制御することで、微粒子の生成時間を制御し、得られる微粒子の結晶性を制御することになる。
【0071】
図1に示す高周波プラズマ反応装置(住友金属鉱山(株)製、高周波プラズマ発生部;日本高周波(株)製;水冷二石英重管の内径70mm 長さ213mm)を用いた場合には、上述したように、真空排気装置により反応系内を約0.1Paまで真空引きした後、アルゴンガスで完全に置換して1気圧の流通系とする。その後、反応容器内にプラズマガスとしてアルゴンガスを30L/minの流量で導入し、シースガス供給口よりシースガスとして螺旋状にアルゴンガス55L/minとヘリウムガス5L/minとを導入した。そして、高周波プラズマ発生用の水冷銅コイルに高周波電力40kWを印加し、高周波プラズマを発生させた。当該条件を標準的な条件として、プラズマガスやシースガスのガス供給条件、キャリアガス供給条件、原料供給条件を変更して、生成された超微粒子の特性評価を繰り返し、所望の特性が得られる超微粒子の製造条件を見出している。
【0072】
上述した複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークのトップ強度やBET比表面積は、上述した製造方法において、所定の製造条件を選択することによって制御可能である。具体的には、熱プラズマ法や固相反応法などで当該複合タングステン酸化物超微粒子が生成される際の温度(焼成温度)、生成時間(焼成時間)、生成雰囲気(焼成雰囲気)、前駆体原料の形態、生成後のアニール処理、不純物元素のドープなどの製造条件の適宜な設定によって制御可能である。
具体的には、近赤外線遮蔽微粒子分散体中の複合タングステン酸化物超微粒子の平均粒子径と結晶子径との差が20%以下となるようにすれば、本発明の効果が発揮される。
【0073】
(2)固相反応法
固相反応法について(i)固相反応法に用いる原料、(ii)固相反応法における焼成とその条件、の順に説明する。
【0074】
(i)固相反応法に用いる原料
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子を固相反応法で合成する際には、原料としてタングステン化合物およびM元素化合物を用いる。
タングステン化合物は、タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後、溶媒を蒸発させたタングステンの水和物から選ばれる1種以上であることが好ましい。また、前記タングステン化合物に替えて、三酸化タングステンを用いても良い。
また、M元素化合物には、M元素の酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩、から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0075】
また、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子を固相反応法で合成する際には、Si、Al、Zrから選ばれる1種以上の不純物元素を含有する化合物(本発明において「不純物元素化合物」と記載する場合がある。)を原料として含んでもよい。
当該不純物元素化合物は、後の焼成工程において前記タングステン化合物と反応せず、複合タングステン酸化物の結晶成長を抑制して、結晶の粗大化を防ぐ働きをするものである。不純物元素を含む化合物としては、酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩、から選ばれる1種以上であることが好ましく、粒径が500nm以下のコロイダルシリカやコロイダルアルミナが特に好ましい。
【0076】
前記タングステン化合物と、前記M元素化合物を含む水溶液とを、M元素とW元素の比が、上述したMxWyOzのM元素とW元素の比となるように湿式混合する。不純物元素化合物を原料として含有する場合は、不純物元素化合物が0.5質量%以下になるように湿式混合する。そして、得られた混合液を乾燥することによって、M元素化合物とタングステン化合物との混合粉体、もしくは不純物元素化合物を含むM元素化合物とタングステン化合物との混合粉体が得られる。
【0077】
(ii)固相反応法における焼成とその条件
前記湿式混合して製造した、M元素化合物とタングステン化合物との混合粉体、もしくは不純物元素化合物を含むM元素化合物とタングステン化合物との混合粉体を、不活性ガス単独または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下、1段階で焼成する。このとき、焼成温度は複合タングステン酸化物超微粒子が結晶化し始める温度に近いことが好ましい。焼成温度は、具体的には1000℃以下であることが好ましく、800℃以下であることがより好ましく、800℃以下500℃以上の温度範囲がさらに好ましい。 この焼成温度の制御により、得られる超微粒子の結晶性を制御して、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークのトップ強度を所定の範囲とすることが出来る。
【0078】
(3)合成された複合タングステン酸化物超微粒子
上述した熱プラズマ法や固相反応法で得られた複合タングステン酸化物超微粒子の粒子径が200nmを超える場合や、当該複合タングステン酸化物超微粒子を用いて、後述する複合タングステン酸化物超微粒子分散液を製造したとき、当該分散液に含有されている複合タングステン酸化物超微粒子の分散粒子径が200nmを超える場合がある。
このような場合は、後述する複合タングステン酸化物超微粒子分散液を製造する工程において粉砕・分散処理の程度を制御して、分散粒子径が200nm以下となるようにすればよい。このとき、当該粉砕・分散処理を経て得られた複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークのトップ強度の比の値が、本発明の範囲を実現出来ていれば、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子やその分散液から得られる複合タングステン酸化物超微粒子分散体は、優れた近赤外線遮蔽特性を発揮することが出来る。
【0079】
[c]複合タングステン酸化物超微粒子の揮発成分とその乾燥処理方法
上述したように、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子は、揮発成分を含む場合がある。このような場合、当該揮発成分の含有率は2.5質量%以下であることが好ましい。しかし、複合タングステン酸化物超微粒子が大気中に暴露されるなどして、揮発成分の含有率が2.5質量%を超えた場合は、乾燥処理により当該揮発成分の含有率を低減させることが出来る。
具体的には、上述の方法で合成された複合タングステン酸化物を、粉砕・分散処理して微粒化し、複合タングステン酸化物超微粒子を溶媒中で分散させる工程(粉砕・分散処理工程)と、その後、乾燥処理して溶媒を除去して複合タングステン酸化物超微粒子を得る工程(乾燥工程)とを経ることで、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子を製造することが出来る。
【0080】
乾燥処理の設備としては、加熱および/または減圧が可能で、当該超微粒子の混合や回収がし易いという観点から、大気乾燥機、万能混合機、リボン式混合機、真空流動乾燥機、振動流動乾燥機、凍結乾燥機、リボコーン、ロータリーキルン、噴霧乾燥機、パルコン乾燥機、等が好ましいが、これらに限定されない。
以下、その一例として、(i)大気乾燥機による乾燥処理、(ii)真空流動乾燥機による乾燥処理、(iii)噴霧乾燥機による乾燥処理、について説明する。
【0081】
(i)大気乾燥機による乾燥処理
後述する方法と同様にして得られる、複合タングステン酸化物超微粒子を溶媒に分散させた分散液を大気乾燥機によって乾燥処理して、当該分散液中の揮発成分を除去する処理方法である。この場合、複合タングステン酸化物超微粒子から当該揮発成分が揮発するよりも高温であって、元素Mが脱離しない温度で乾燥処理することが望ましく、150℃以下であることが望ましい。
大気乾燥機により乾燥処理して得られた複合タングステン酸化物超微粒子は、弱い二次凝集体となっている場合がある。その状態でも、当該複合タングステン酸化物超微粒子を樹脂等に分散させることは可能であるが、より分散し易くするために、当該超微粒子を擂潰機等によって解砕することも好ましい構成である。
【0082】
(ii)真空流動乾燥機による乾燥処理
複合タングステン酸化物超微粒子を溶媒に分散させた分散液中から揮発成分を除去する場合、真空流動乾燥機により乾燥処理を行うことが好ましい。当該真空流動乾燥機は、減圧雰囲気下で乾燥と解砕の処理を同時に行うため、乾燥速度が速い上に、上述した大気乾燥機での乾燥処理品に見られるような凝集体を形成しないという特徴があるからである。また、減圧雰囲気下での乾燥のため、比較的低温でも揮発成分を除去することが出来、残存する揮発成分量も限りなく少なくすることが出来る。乾燥温度は複合タングステン酸化物超微粒子から元素Mが脱離しない温度で乾燥処理することが望ましく、当該揮発成分が揮発するよりも高温であって、150℃以下であることが望ましい。
【0083】
(iii)噴霧乾燥機による乾燥処理
噴霧乾燥機により乾燥処理を行い、複合タングステン酸化物超微粒子を溶媒に分散させた分散液から揮発成分を除去する場合、当該噴霧乾燥機では、乾燥処理における揮発成分除去の際に、揮発成分の表面力に起因する二次凝集が発生し難いという特徴がある。従って、解砕処理を施さずとも二次凝集していない複合タングステン酸化物超微粒子が得られ易く、好ましい。
【0084】
上述した(i)〜(iii)の乾燥処理を施した複合タングステン酸化物超微粒子を、適宜な方法で樹脂等に分散させることで、高い可視光透過性と優れた近赤外線遮蔽特性が発現すると共に、ヘイズ値が低いという光学特性を有する近赤外線遮蔽材料微粒子分散体を形成することが出来る。
【0085】
以上説明したように、複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークのトップ強度やBET比表面積は、上述した製造方法において、所定の製造条件を選択することによって制御可能である。
具体的には、熱プラズマ法や固相反応法などで当該複合タングステン酸化物超微粒子が生成される際の温度(焼成温度)、生成時間(焼成時間)、生成雰囲気(焼成雰囲気)、前駆体原料の形態、生成後のアニール処理、不純物元素のドープなどの製造条件の適宜な設定によって制御可能である。
一方、複合タングステン酸化物超微粒子における揮発成分の含有率は、当該超微粒子の保存方法や保存雰囲気、当該超微粒子分散液を乾燥させる際の温度、乾燥時間、乾燥方法などの製造条件を適宜に設定することによって制御可能である。尚、複合タングステン酸化物超微粒子の揮発成分の含有率は、当該複合タングステン酸化物超微粒子の結晶構造や、熱プラズマ法や固相反応等の複合タングステン酸化物超微粒子の合成方法には依存しない。
【0086】
[d]複合タングステン酸化物超微粒子分散液
次に、本発明に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体を製造するために用いる、複合タングステン酸化物超微粒子分散液について説明する。
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液は、上述した合成方法で得られた複合タングステン酸化物超微粒子と、
水、有機溶媒、油脂、媒体樹脂用の液状可塑剤、高分子単量体、または、これらの混合物から選択される溶媒と、
適量の分散剤と、さらに耐候性改良剤(C)とを混合して混合物を得、当該混合物を、媒体攪拌ミル等を用いて粉砕、分散させたものである。
【0087】
上述した複合タングステン酸化物超微粒子分散液には、上述した原料以外に、カップリング剤、界面活性剤等を添加することも出来る。そして、上述した複合タングステン酸化物超微粒子分散液において、溶媒中における当該複合タングステン酸化物超微粒子の分散状態が良好であり、その分散粒子径が1nm以上200nm以下であることを特徴としている。
また、前記複合タングステン酸化物超微粒子分散液に含有されている複合タングステン酸化物超微粒子の量は0.01質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
以下、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液について、(1)溶媒、(2)分散剤、(3)耐候性改良剤、(4)分散方法、(5)分散粒子径、(6)バインダー、その他の添加剤、の順に説明する。
【0088】
(1)溶媒
本発明で用いる複合タングステン酸化物超微粒子分散液に用いられる溶媒は特に限定されるものではなく、複合タングステン酸化物超微粒子分散液の塗布条件、塗布環境、および、適宜添加される無機バインダーや樹脂バインダーなどに合わせて適宜選択すればよい。また、近赤外線遮蔽超微粒子が、溶媒としての可塑剤に分散された分散液を得て、当該分散液を樹脂バインダー(B)に添加して樹脂組成物を調製する。
この樹脂組成物をシート状、ボード状、またはフィルム状のいずれかに成形して近赤外線遮蔽超微粒子分散体を得る場合においても、使用される溶媒は特に限定されるものではなく、当該分散体に用いる樹脂バインダー(B)、当該分散体の成形条件、使用環境等を考慮して適宜選択すればよい。
溶媒としては、例えば、水、有機溶媒、油脂、媒体樹脂用の液状可塑剤、高分子単量体、または、これらの混合物から選択されるものである。
【0089】
ここで、有機溶媒としては、アルコール系、ケトン系、炭化水素系、グリコール系、水系など、種々のものを選択することが可能である。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;3−メチル−メトキシ−プロピオネートなどのエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;フォルムアミド、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;エチレンクロライド、クロルベンゼンなどが使用可能である。そして、これらの有機溶媒中でも、特に、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n−ブチルなどが好ましい。
【0090】
油脂としては、植物油脂または植物由来油脂が好ましい。植物油としては、アマニ油、ヒマワリ油、桐油、エノ油等の乾性油、ゴマ油、綿実油、菜種油、大豆油、米糠油、ケシ油等の半乾性油、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、脱水ヒマシ油等の不乾性油が用いられる。植物油由来の化合物としては、植物油の脂肪酸とモノアルコールを直接エステル反応させた脂肪酸モノエステル、エーテル類などが用いられる。また、市販の石油系溶剤も油脂として用いることが出来、アイソパーE、エクソールHexane、エクソールHeptane、エクソールE、エクソールD30、エクソールD40、エクソールD60、エクソールD80、エクソールD95、エクソールD110、エクソールD130(以上、エクソンモービル製)等を挙げることが出来る。
【0091】
また、媒体樹脂用の液状可塑剤としては、例えば一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤や、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤が挙げられ、いずれも室温で液状であるものが好ましい。なかでも、多価アルコールと脂肪酸から合成されたエステル化合物である可塑剤が好ましい。
【0092】
多価アルコールと脂肪酸から合成されたエステル化合物は特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られた、グリコール系エステル化合物が挙げられる。また、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールと、前記一塩基性有機とのエステル化合物等も挙げられる。なかでも、トリエチレングリコールジヘキサネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−オクタネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノネート等のトリエチレングリコールの脂肪酸エステルが好適である。トリエチレングリコールの脂肪酸エステルが望ましい。
【0093】
また、高分子単量体とは重合等により高分子を形成する単量体であるが、本発明で用いる好ましい高分子単量体としては、メチルメタクリレート単量体、アクレリート単量体やスチレン樹脂単量体などが挙げられる。
【0094】
以上、説明した溶媒は、1種または2種以上を組み合わせて用いることが出来る。さらに、必要に応じて、これらの溶媒へ酸やアルカリを添加してpH調整してもよい。
【0095】
(2)分散剤
さらに、当該複合タングステン酸化物超微粒子分散液中における複合タングステン酸化物超微粒子の分散安定性を一層向上させ、再凝集による粒子粗大化による分散粒子径の増大を回避するために、各種の分散剤、界面活性剤、カップリング剤などの添加も好ましい。
当該分散剤、カップリング剤、界面活性剤は用途に合わせて適宜選定可能であるが、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基を官能基として有するものであることが好ましい。
これらの官能基は、複合タングステン酸化物超微粒子の表面に吸着して凝集を防ぎ、近赤外線遮蔽超微粒子分散体中においても、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子を均一に分散させる効果を持つ。これらの官能基のいずれかを分子中にもつ高分子系分散剤がさらに望ましい。
【0096】
(3)耐候性改良剤
本発明で用いる複合タングステン酸化物超微粒子分散液に用いられる耐候性改良剤(C)は、ベンゾトリアゾール系紫外吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびトリアジン系紫外線吸収剤から選ばれる1種類以上を含んでいることを特徴とする。
【0097】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(ヒドロキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−(ヒドロキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(ヒドロキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−オクチル−5’−(ヒドロキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−オクチル−5’−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−オクチル−5’−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール等、あるいは2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(ヒドロキシメチル)フェノール〕、2,2’;−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(5−ブロモ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(5−ブロモ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(4−ヒドロキシブチル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(4−ヒドロキシブチル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(5−ブロモ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(4−ヒドロキシブチル)フェノール〕、3,3−{2,2’−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−1−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕}プロパン、2,2−{2,2’−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−1−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕}ブタン、2,2’−オキシビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2’−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕スルフィド、2,2’−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕スルホキシド、2,2’−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕スルホン、2,2’−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕アミン等が挙げられる。
【0098】
また、トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブチル)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブチル)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等が挙げられる。
【0099】
また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジ(2−ヒドロキシエチル)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメトキシ−5,5’−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメトキシ−5,5’−ジ(2−ヒドロキシエチル)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(ヒドロキシメチル)−5,5’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(2−ヒドロキシエチル)−5,5’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4,4−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0100】
前記耐候性改良剤(C)の添加量は、近赤外線遮蔽超微粒子分散体において、複合タングステン酸化物微粒子1質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜5質量部、さらに好ましくは、0.6〜5質量部であるので、前記添加量となることを見込み、複合タングステン酸化物超微粒子分散液作製時に添加混合すれば良い。
【0101】
(4)分散方法
後述する近赤外線遮蔽超微粒子分散体を製造するための複合タングステン酸化物超微粒子分散液は、複合タングステン酸化物超微粒子と、水、有機溶媒、油脂、媒体樹脂用の液状可塑剤、高分子単量体、または、これらの混合物から選択される溶媒、および適量の分散剤、本発明においては、さらに耐候性改良剤(C)を混合し、その後、粉砕、分散させることにより得られる。前記複合タングステン酸化物超微粒子分散液には、上述した以外に、カップリング剤、界面活性剤等を添加することも出来る。
【0102】
複合タングステン酸化物超微粒子の分散方法は、当該微粒子を分散液中において、凝集させることなく均一に分散出来る方法であれば特に限定されない。
当該分散方法として、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザーなどの装置を用いた粉砕・分散処理方法が挙げられる。その中でも、ビーズ、ボール、オタワサンドといった媒体メディアを用いる、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー等の媒体攪拌ミルで粉砕、分散させることは、所望とする分散粒子径を得るまでに要する時間が短いことから好ましい。
前記媒体攪拌ミルを用いた粉砕・分散処理によって、複合タングステン酸化物超微粒子の分散液中への分散と同時に、複合タングステン酸化物超微粒子同士の衝突や媒体メディアの当該超微粒子への衝突などによる微粒子化も進行し、複合タングステン酸化物超微粒子をより微粒子化して分散させることが出来る(即ち、粉砕・分散処理される)。
【0103】
複合タングステン酸化物超微粒子を可塑剤へ分散させる際、所望により、さらに120℃以下の沸点を有する有機溶剤を添加することも好ましい構成である。120℃以下の沸点を有する有機溶剤として、具体的にはトルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール、エタノールが挙げられる。尤も、沸点が120℃以下であり、複合タングステン酸化物超微粒子を均一に分散可能なものであれば、任意に選択出来る。
但し、当該有機溶剤を添加した場合は、分散完了後に乾燥工程を加えて、近赤外線遮蔽超微粒子分散体として後述す近赤外線遮蔽中間膜を得る場合、当該近赤外線遮蔽中間膜中に残留する有機溶剤を5質量%以下とすることが好ましい。当該近赤外線遮蔽中間膜の残留溶媒が5質量%以下であれば、後述する近赤外線遮蔽合わせ構造体において、気泡が発生せず、外観や光学特性が良好に保たれるからである。
【0104】
(5)分散粒子径
前記複合タングステン酸化物超微粒子分散液中に分散して存在している複合タングステン酸化物超微粒子の分散粒子径は、1nm以上200nm以下であれば、幾何学散乱またはミー散乱によって波長380nm〜780nmの可視光線領域の光を散乱することがなく、曇り(ヘイズ)が減少し、可視光透過率の増加を図ることが出来るので好ましい。さらに、分散粒子径が200nm以下になると、レイリー散乱領域となり、当該レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に比例するため、分散粒子径の減少に伴い散乱は低減し透明性が向上する。これにより、分散粒子径が200nm以下となると散乱光は非常に少なくなり、ブルーヘイズ現象を抑制出来るため、より透明性が増すことになり好ましい。
【0105】
ここで、複合タングステン酸化物超微粒子分散液中における、当該複合タングステン酸化物超微粒子の分散粒子径について簡単に説明する。複合タングステン酸化物超微粒子の分散粒子径とは、溶媒中に分散している複合タングステン酸化物超微粒子の単体粒子や、当該複合タングステン酸化物超微粒子が凝集した凝集粒子の粒子径を意味するものであり、市販されている種々の粒度分布計で測定することが出来る。例えば、当該複合タングステン酸化物超微粒子分散液のサンプルを採取し、当該サンプルを、動的光散乱法を原理とした大塚電子株式会社製ELS−8000を用いて測定することが出来る。
【0106】
また、前記合成方法で得られる複合タングステン酸化物超微粒子の含有量が0.01質量%以上80質量%以下である複合タングステン酸化物超微粒子分散液は、液安定性に優れており好ましい。複合タングステン酸化物超微粒子の状態に相応しい好適な溶媒や、分散剤、カップリング剤、界面活性剤が選択されていれば、温度40℃の恒温槽に6ヶ月以上載置しても当該分散液ではゲル化や粒子の沈降が発生せず、分散粒子径を1〜200nmの範囲に維持出来る。
尚、複合タングステン酸化物超微粒子分散液の分散粒子径と、近赤外線遮蔽材料微粒子分散体に分散された複合タングステン酸化物超微粒子の平均粒子径が異なる場合がある。これは、複合タングステン酸化物超微粒子分散液中では複合タングステン酸化物超微粒子が凝集していても、複合タングステン酸化物超微粒子分散液を固体媒体に添加して近赤外線遮蔽材料微粒子分散体に加工成形される際に複合タングステン酸化物超微粒子の凝集が解凝されることがあるからである。
【0107】
(6)バインダー、その他の添加剤
当該複合タングステン酸化物超微粒子分散液には、適宜、樹脂バインダー(B)から選ばれる1種以上を含有させることが出来る。当該複合タングステン酸化物超微粒子分散液に含有させる樹脂バインダー(B)の種類は特に限定されるものではないが、樹脂バインダー(B)としては、紫外線硬化樹脂、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などが適用出来る。
【0108】
また、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散体の近赤外線遮蔽特性を向上させるために、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液に、一般式XBm(但し、Xはアルカリ土類元素、またはイットリウムを含む希土類元素から選ばれた金属元素、4≦m≦6.3)で表されるホウ化物超微粒子を、所望とする近赤外線遮蔽特性に応じて適宜添加することも好ましい構成である。このときの添加割合は、所望とする近赤外線遮蔽特性に応じて適宜選択すればよい。
また、複合タングステン酸化物超微粒子分散体の色調を調整する為に、カーボンブラックや弁柄等の公知の無機顔料や公知の有機顔料も添加出来る。複合タングステン酸化物超微粒子分散液には、公知の紫外線吸収剤や有機物の公知の近赤外線遮蔽材やリン系の着色防止剤を添加してもよい。
【0109】
[e]近赤外線遮蔽超微粒子分散体
近赤外線遮蔽特性を有する複合タングステン酸化物超微粒子が分散している、本発明に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体について説明する。
本発明に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体は、上述の製造方法で得られた複合タングステン酸化物超微粒子分散液を用いて形成されたものである。
即ち、本発明に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体は、近赤外線遮蔽特性を有する複合タングステン酸化物超微粒子(A)が、固体媒体に分散されているものである。前記複合タングステン酸化物超微粒子は、一般式MxWyOzで表される複合タングステン酸化物微粒子であり、シリコン粉末標準試料の(220)面のXRDピーク強度の値を1とした時の、前記複合タングステン酸化物超微粒子のXRDピークのトップ強度との比の値が0.13以上である。前記固体媒体は、樹脂バインダー(B)、耐候性改良剤(C)を含んでいる。前記耐候性改良剤(C)は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、およびベンゾフェノン系紫外線吸収剤から選択される1種類以上を含むことを特徴としている。
【0110】
本発明に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体は、複合タングステン酸化物超微粒子(A)を、0.001質量%以上80質量%以下含むことを特徴としている。複合タングステン酸化物超微粒子(A)が0.001質量%以上含有していれば、近赤外線遮蔽超微粒子分散体に必要な近赤外線遮蔽効果を容易に得ることが出来る。また、複合タングステン酸化物超微粒子(A)が80質量%以下であれば、近赤外線遮蔽超微粒子分散体において樹脂バインダー(B)成分の割合を稼ぐことが出来、分散体として強度を担保することが出来る。
【0111】
以下、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散体について、(1)固体媒体、(2)製造方法、(3)添加剤、の順に説明する。
【0112】
(1)固体媒体
本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散体に用いる固体媒体は、主たる構成物である樹脂バインダー(B)に加えて、本発明では耐候性改良剤(C)を含んでいる。
以下、固体媒体について、(i)樹脂バインダー、(ii)耐候性改良剤、の順に説明する。
【0113】
(i)樹脂バインダー
樹脂バインダー(B)としては、熱可塑性樹脂や熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂等を挙げることが出来る。具体的には、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル系樹脂、アリルエステル系樹脂等の紫外線硬化樹脂などが利用出来る。
前記樹脂バインダー(B)として、より具体的な樹脂種類からみると、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂、シリコーン樹脂という樹脂群から選択される1種の樹脂、または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体、のいずれでもよい。
これら樹脂バインダー(B)に、主骨格にアミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基を官能基として備えた高分子分散剤を添加することも好ましい。
【0114】
本発明で用いる樹脂バインダー(B)の例として、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂およびシリコーン系樹脂について説明する。尤も、本発明において、これらの樹脂バインダー(B)に限定されるわけではない。
【0115】
アクリル系樹脂としては、アクリル樹脂のモノマー、これらモノマーの単独重合体又は2種以上の共重合体、当該モノマーと他の共重合性単量体との共重合体を挙げることが出来る。
具体的には、アクリル樹脂のモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等を挙げることが出来る。
【0116】
フッ素樹脂の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、フルオロエチレンビニルエーテル(FEVE)およびエチレンクロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、下記構造:
(n=10〜1000)

を有する重合体Aを挙げることが出来る。これらの中で、前記重合体A、フルオロエチレンビニルエーテル(FEVE)が好ましい。これらの(共)重合体は、さらに官能基(例、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、(メタ)アクリロイロキシ基、エポキシ基、カルボキシル基、スルホニル基、アクリレート型イソシアヌレート基、硫酸塩基)を有していても良い。市販されているフッ素樹脂の好ましい例としては、ルミフロン(登録商標、旭硝子(株)製)、サイトップ(登録商標、旭硝子(株)製)、ゼッフル(登録商標、ダイキン化学(株)製)、オプツール(登録商標、ダイキン化学(株)製)を挙げることが出来る。
【0117】
また、シリコーン樹脂の例としては、ストレートシリコーンワニスおよび変性シリコーンワニスを挙げることが出来る。ストレートシリコーンワニスは、通常、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシランの加水分解重合により製造される(使用時は、一般に塗布後、100℃以上で硬化される)。変性シリコーンワニスは、シリコーンワニスにアルキド、ポリエステル、アクリル、エポキシ等の樹脂を反応させたものである。市販されているシリコーン樹脂の好ましい例としては、シリコーンワニスKRシリーズ(信越化学(株)製)を挙げることが出来る。
【0118】
(ii)耐候性改良剤
本発明においては、上述した固体媒体において主たる構成物である前記樹脂バインダー(B)に加えて、上述した耐候性改良剤(C)を含んでいる。
上述したように、耐候性改良剤(C)は、本発明に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散体を作製するために用いる複合タングステン酸化物超微粒子分散液に含有させておくことが好ましい。そして耐候性改良剤(C)は、ベンゾトリアゾール系紫外吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびトリアジン系紫外線吸収剤から選ばれる1種類以上を含んでいる。
【0119】
前記耐候性改良剤(C)の添加量は、前記複合タングステン酸化物超微粒子1質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。耐候性改良剤(C)の添加量が0.1質量部以上である場合は、色調変化抑制効果を十分に得ることが出来るので好ましい。また、10質量部以下である場合は、近赤外線遮蔽超微粒子分散体のヘイズが抑制され、意匠性が担保されるので好ましいからである。さらに好ましくは、前記耐候性改良剤(C)の添加量は、前記複合タングステン酸化物超微粒子1質量部に対して0.1〜1.67質量部であることが良い。これは、前記耐候性改良剤自体が可視光域の短波長光を僅かに吸収するので、耐候性改良剤の添加量が少なくなるほど近赤外線遮蔽超微粒子分散体の透明性が高くなるからである。
近赤外線遮蔽超微粒子分散体の透明性と意匠性が求められる場合に、前記耐候性改良材の添加量とすることにより、透明性と意匠性に優れた所望の近赤外線遮蔽超微粒子分散体を得ることが出来る。
【0120】
(2)製造方法
近赤外線遮蔽超微粒子分散体の製造方法を、以下に説明する。
まず上述したように、複合タングステン酸化物超微粒子と、溶媒と、分散剤と、本発明においては、さらに耐候性改良剤(C)とを混合し、媒体攪拌ミルで粉砕、分散させて複合タングステン酸化物超微粒子分散液を得る。そして当該複合タングステン酸化物超微粒子分散液を、固体媒体中に分散させることにより複合タングステン酸化物超微粒子分散樹脂組成物を得る。そして、当該樹脂組成物をペレット化することで、マスターバッチを得ることが出来る。
【0121】
また、上述した複合タングステン酸化物超微粒子と、固体媒体の粉粒体またはペレットと、必要に応じて他の添加剤とを均一に混合した後、ベント式の一軸または二軸の押出機で混練し、一般的な溶融押出されたストランドをカットする方法によりペレット状に加工することによっても、マスターバッチを得ることが出来る。この場合、マスターバッチの形状として円柱状や角柱状のものを挙げることが出来る。また、溶融押出物を直接カットするいわゆるホットカット法を採ることも可能である。この場合、マスターバッチは球状に近い形状をとることが一般的である。
【0122】
上述したマスターバッチの製造工程において、複合タングステン酸化物超微粒子分散液に含まれる溶媒を、当該マスターバッチに残留が許容される量まで除去することは好ましい構成である。
得られた前記マスターバッチに、複合タングステン酸化物超微粒子分散液作製に用いられる樹脂バインダー(B)を追加して混練する。これにより、複合タングステン酸化物超微粒子分散樹脂組成物に含まれる複合タングステン酸化物超微粒子の分散状態が維持されたまま、その分散濃度が調整された、近赤外線遮蔽材料微粒子分散体を得ることが出来る。
【0123】
尚、複合タングステン酸化物超微粒子の分散粒子径については「[d]複合タングステン酸化物超微粒子分散液の(5)分散粒子径」にて説明したものと同様であり、複合タングステン酸化物超微粒子分散体においても、当該分散体中に分散して存在している複合タングステン酸化物超微粒子の分散粒子径は、1nm以上200nm以下であることが好ましい。分散粒子径が200nm以下になると、レイリー散乱領域となり、当該レイリー散乱領域では、散乱光は非常に少なくなり、ブルーヘイズ現象を抑制出来るため、より透明性が増すことになり好ましい。
【0124】
他方、樹脂バインダー(B)のモノマー、オリゴマーおよび未硬化で液状の媒体樹脂前駆体と、前記複合タングステン酸化物超微粒子とを混合して、複合タングステン酸化物超微粒子分散液を得てから、当該モノマー等を縮合や重合等の化学反応によって硬化させてもよい。
例えば、樹脂バインダー(B)としてアクリル樹脂を用いる場合、アクリルモノマーやアクリル系の紫外線硬化樹脂と、前記複合タングステン酸化物超微粒子とを混合して、複合タングステン酸化物超微粒子分散液を得て、当該複合タングステン酸化物超微粒子分散液を所定の鋳型などに充填しラジカル重合を行えば、アクリル樹脂を用いた複合タングステン酸化物超微粒子分散体が得られる。
樹脂バインダー(B)としてアイオノマー樹脂等の、架橋により硬化する樹脂を用いる場合も、上述したアクリル樹脂を用いた場合と同様に、複合タングステン酸化物超微粒子分散液に架橋反応させることで分散体を得ることが出来る。
【0125】
さらに、複合タングステン酸化物超微粒子と液状媒体とを混合することで、複合タングステン酸化物超微粒子分散液を得ることが出来る。ここで、液状媒体には公知の液状可塑剤も用いることが出来る。得られた前記複合タングステン酸化物超微粒子分散液を媒体樹脂と混合し公知の加熱処理等により、液状媒体を近赤外線遮蔽材料微粒子分散体に残留が許容される量まで除去することで、近赤外線遮蔽超微粒子分散体を得ることが出来る。尚、液状媒体に液状可塑剤を用いた場合は、当該液状可塑剤の全量が近赤外線遮蔽超微粒子分散体に残留してもよい。
【0126】
また、上述した複合タングステン酸化物超微粒子分散液を、樹脂などの固体媒体または高分子単量体と混合して塗布液を作製し、公知の方法で透明基材上にコーティング膜を形成することにより近赤外線遮蔽コーティング層を得ることが出来る。当該近赤外線遮蔽コーティング層は、複合タングステン超微粒子が個体媒体に分散されている近赤外線遮蔽超微粒子分散体である。このとき、近赤外線遮蔽コーティング層の厚さは特に限定されないが、厚さが1μm以上10μm以下のコーティング層として前記近赤外線遮蔽超微粒子分散体が設けられていることが好ましい。
【0127】
(3)添加剤
固体媒体として樹脂バインダー(B)を用いる場合には、通常、これらの樹脂バインダー(B)に、可塑剤、難燃剤、着色防止剤およびフィラー等の公知の添加物を添加することが出来る。尤も、固体媒体は樹脂バインダー(B)に限定されず、金属アルコキシドを用いた無機バインダー(B)の利用も可能である。当該金属アルコキシドとしては、Si、Ti、Al、Zr等のアルコキシドが代表的である。これら金属アルコキシドを用いた無機バインダー(B)を加熱等により加水分解・縮重合させることで、酸化物膜からなる分散体を形成することが可能である。
【0128】
[f]近赤外線遮蔽超微粒子分散体の一例であるシート状、ボード状またはフィルム状の近赤外線遮蔽超微粒子分散体、近赤外線遮蔽中間膜
本発明に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体として、シート状、ボード状またはフィルム状の近赤外線遮蔽超微粒子分散体の形態をとることは好ましい構成である。
【0129】
上述したシート状、ボード状またはフィルム状の近赤外線遮蔽超微粒子分散体は、例えば、上述した複合タングステン酸化物超微粒子、複合タングステン酸化物超微粒子分散液、マスターバッチから選択されるいずれかと、熱可塑性樹脂と、所望に応じて可塑剤その他添加剤とを加えて混練し混練物を得た後、当該混練物を公知の押出成形法、射出成形法、カレンダーロール法、キャスティング法、インフレーション法等の方法により、平面状や曲面状に成形することにより製造することが出来る。
【0130】
本発明に係る、シート状、ボード状またはフィルム状の近赤外線遮蔽超微粒子分散体を製造する場合、当該シートやフィルム、ボードを主として構成する樹脂バインダー(B)には、多様な樹脂を用いることが出来る。尤も、当該シート状、ボード状またはフィルム状の近赤外線遮蔽超微粒子分散体が、近赤外線遮蔽体や光学フィルターとして適用されることを考えれば、十分な透明性を持った熱可塑性樹脂や熱硬化樹脂等の樹脂バインダー(B)を選択することが好ましい。
【0131】
シート状、ボード状またはフィルム状に加工された近赤外線遮蔽超微粒子分散体は、様々な用途に適用出来る。当該近赤外線遮蔽超微粒子分散体の一態様として近赤外線遮蔽中間膜が挙げられる。
少なくとも可視光を透過する、例えば板ガラス、透明プラスチック等から選択される2枚以上の透明基材によって、中間層が挟持される合わせ構造体において、上述したシート状、ボード状またはフィルム状に成形された近赤外線遮蔽超微粒子分散体を、近赤外線遮蔽機能を発揮する中間膜として用いることが出来る。そして当該構成を採ることで、可視光線を透過しつつ近赤外線遮蔽機能を備えた、近赤外線遮蔽合わせ構造体を得ることが出来る。
【0132】
前記透明基材としては、可視光領域において透明な板ガラス、または、板状のプラスチック、またはフィルム状のプラスチックが用いられる。プラスチックの材質は、特に限定されるものではなく用途に応じて選択可能である。具体的には、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アイオノマー樹脂、フッ素樹脂、等が使用可能である。
【0133】
また、本発明に係る近赤外線遮蔽合わせ構造体の他の実施形態として、本発明に係るシート状、ボード状またはフィルム状の近赤外線遮蔽超微粒子分散体を近赤外線遮蔽中間膜として用いることが出来る。具体的には、まず当該近赤外線遮蔽中間膜を複数枚の透明基材で挟持した合わせ構造体を得、当該合わせ構造体と、対向する他の合わせ構造体または透明基材とを、熱圧着等の公知の方法で貼り合わせ一体化することによって得られる。
【0134】
尚、前記近赤外線遮蔽中間膜は、本発明に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体の一態様である。そこで用途によっては、前記近赤外線遮蔽中間膜を近赤外線遮蔽超微粒子分散体として、前記可視光を透過する2枚以上の透明基材によって挟持されることなく使用することが出来ることはもちろんである。
【0135】
[g]近赤外線遮蔽超微粒子分散体の一例であるコーティング層として用いた近赤外線遮蔽超微粒子分散体、近赤外線遮蔽中間膜
「(2)製造方法」にて説明した複合タングステン酸化物超微粒子分散液を、そのまま塗布液として用いて透明基材上に塗布し乾燥した後、硬化させることで当該透明基材上に塗布膜を形成し、当該塗布膜を近赤外線遮蔽超微粒子分散体のコーティング層として用いることが出来る。
この場合、当該塗布膜が設けられた透明基材の全体を、近赤外線遮蔽コーティング層が積層された近赤外線遮蔽超微粒子分散体とみなすことが出来る。そして、当該近赤外線遮蔽コーティング層を積層した近赤外線遮蔽超微粒子分散体を、可視光を透過する2枚以上の透明基材によって挟持される中間層を備える合わせ構造体における、中間層として用いることで、可視光線を透過しつつ近赤外線遮蔽機能を備えた近赤外線遮蔽合わせ構造体を得ることが出来る。
【0136】
上述した近赤外線遮蔽コーティング層は、樹脂フィルム上に形成されるのが好ましい。好ましい樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリエチレンブチレートフィルムを挙げることが出来、その中でもPETフィルムが好ましい。前記樹脂フィルムの厚さは、特に限定されないが、一般的には、10〜400μmが好ましく、特に、20〜200μmであることが好ましい。また、樹脂フィルム表面には、接着性を向上させるために、予めコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー層コート処理などの接着処理を施してもよい。
【0137】
上述した近赤外線遮蔽コーティング層の樹脂バインダー(B)としては、上述した樹脂バインダー(B)から適宜選択して用いることが出来る。例えば、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、電子線硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑樹脂等が目的に応じて選定可能である。
具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、フッ素樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、PET樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂が挙げられる。また、これら樹脂を主骨格にもちアミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基を官能基として備えた高分子分散剤を媒体樹脂に用いてもよい。これらの樹脂は、単独使用であっても混合使用であっても良い。尤も、当該コーティング層用の樹脂バインダー(B)の中でも、生産性や装置コストなどの観点から紫外線硬化性樹脂バインダー(B)を用いることが特に好ましい。
また、金属アルコキシドやオルガノシラザンを用いた無機バインダー(B)の利用も可能である。当該金属アルコキシドとしては、Si、Ti、Al、Zr等のアルコキシドが代表的である。これら金属アルコキシドを用いた無機バインダー(B)は、加熱等により加水分解・縮重合させることで、酸化物膜からなるコーティング層を形成することが可能である。
【0138】
透明基材である、基板フィルム上または基板ガラス上へ前記近赤外線遮蔽コーティング層を設ける方法は、当該基板表面へ近赤外線遮蔽超微粒子分散液が均一に塗布出来る方法であればよく、特に限定されない。例えば、バーコート法、グラビヤコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スピンコート法、スクリーン印刷、ロールコート法、流し塗り、等を挙げることが出来る。
【0139】
例えば、紫外線硬化樹脂を用いたバーコート法によれば、適度なレベリング性を持つよう液濃度および添加剤を適宜調整した塗布液を、近赤外線遮蔽超微粒子(A)の含有量を満たすことの出来るコーティング膜厚を確保出来るバー番号のワイヤーバーを用いて基板フィルムまたは基板ガラス上に塗布して、塗布膜を形成することが出来る。そして塗布膜中に含まれる溶媒を乾燥により除去した後、紫外線を照射して塗布膜を硬化させることで、基板フィルムまたは基板ガラス上にコーティング層を形成することが出来る。このとき、塗布膜の乾燥条件としては、各成分、溶媒の種類や使用割合によっても異なるが、通常では60℃〜140℃の温度で20秒〜10分間程度である。紫外線の照射には特に制限はなく、例えば超高圧水銀灯などの紫外線露光機を好適に用いることが出来る。
【0140】
また、上述した近赤外線遮蔽コーティング層を形成する際に、所定の前後工程を実施することで、基板とコーティング層との密着性向上、コーティング時の塗布膜の平滑性向上、有機溶媒の乾燥性向上、等を図ることも出来る。当該前後工程としては、例えば基板の表面処理工程、プリベーク(基板の前加熱)工程、ポストベーク(基板の後加熱)工程などが挙げられ、適宜選択することが出来る。プリベーク工程および/あるいはポストベーク工程における加熱温度は80℃〜200℃、加熱時間は30秒〜240秒であることが好ましい。
【0141】
上述した塗布膜を硬化させる際には、塗布液に重合開始剤をあらかじめ添加しておくことが好ましい。例えば、塗布膜を熱硬化させる場合には、前記塗布液へ熱重合開始剤を添加することが好ましく、紫外線硬化させる場合には、前記塗布液へ光重合開始剤を添加することが好ましい。
【0142】
熱重合開始剤としては、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジーt−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、クミルパーオキシオクトエートなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル等のアゾ化合物などを挙げられる。
【0143】
光重合開始剤としては、樹脂の性質に適した任意の化合物を使用することが出来る。例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレート等が使用出来る。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0144】
これらの光重合開始剤は、必要に応じて4−ジメチルアミノ安息香酸のような安息香酸系または第3級アミン系等の公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上と、任意の割合で混合して使用することが出来る。また、光重合開始剤は、1種単独でまたは2種以上の混合で使用することが出来る。特に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)が好ましい。
前記光重合開始剤の添加量は、前記塗布液に対して一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0145】
[h]近赤外線遮蔽中間膜を用いた近赤外線遮蔽合わせ構造体
本発明に係る近赤外線遮蔽合わせ構造体は、2枚以上の透明基材と、当該2枚以上の透明基材に狭持された中間層とを備えた近赤外線遮蔽合わせ構造体であって、
前記中間層は1層以上の中間膜で構成され、前記中間膜の少なくとも1層が上述したシート状またはフィルム状の本発明の近赤外線遮蔽中間膜を用いたものであり、
前記透明基材が、板ガラス、プラスチック、近赤外遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックから選ばれるいずれかである合わせ構造体である。
また、本発明に係る近赤外線遮蔽合わせ構造体の他の態様として、前記中間層が、中間膜の少なくとも1層が上述した本発明の近赤外線遮蔽中間膜であり、当該中間膜が本発明に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体であって、ポリビニルアセタール樹脂、または、エチレン・酢酸ビニル(EVA)共重合体樹脂を用いて形成された2枚の樹脂シートで挟持されている合わせ構造体がある。
【0146】
上述した透明基材としては、可視光領域において透明な板ガラス、または、板状のプラスチック、またはフィルム状のプラスチックが用いられる。プラスチックの材質は、特に限定されるものではなく用途に応じて選択可能であり、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、PET樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アイオノマー樹脂、フッ素樹脂、等が使用可能である。さらに、前記透明基材には近赤外線遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックを用いてもよい。
【0147】
本発明に係る近赤外線遮蔽合わせ構造体は、中間層として、本発明に係るシート状またはフィルム状の近赤外線遮蔽中間膜を用いており、前記中間層を、対向する複数枚の透明基材で、熱圧着等の公知の方法で貼り合わせ一体化することによって得られる。熱圧着の方法は、特に限定されることはなく従来公知の方法よく、例えばオートクレーブなどを用い行うことが出来る。
【0148】
前記中間層は、複数の中間膜からなる積層構造としてもよい。中間層を複数の中間膜で構成する場合、少なくとも1層が本発明に係る近赤外線遮蔽中間膜であればよい。また、
前記中間膜の少なくとも1層に、紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤としては、マロン酸エステル構造を有する化合物、シュウ酸アニリド構造を有する化合物、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物、ベンゾフェノン構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、ベンゾエート構造を有する化合物、ヒンダードアミン構造を有する化合物等が挙げられる。
尚、前記中間層を、本発明に係る近赤外線遮蔽中間膜のみで構成しても良い。
【0149】
本発明に係る近赤外線遮蔽合わせ構造体に用いられる、近赤外線遮蔽中間膜の厚さは、50μm〜1000μmであることが好ましい。
【0150】
また、本発明に係る近赤外線遮蔽合わせ構造体は、上述したように優れた可視光透過性を有する材料を用いて構成されており、可視光透過率を70%以上に設定した時のヘイズ値は5%以下であることを特徴としている。ここで、ヘイズ値の評価方法としては、例えば市販のヘイズメーターを使用し、JISK7105に基づき測定すればよい。
これにより、本発明に係る近赤外線遮蔽合わせ構造体は、建築物の窓材、自動車、電車、航空機などの窓材等に広く適用される優れた熱線遮蔽性能を有するに加えて、意匠性を付与することが出来るため、幅広い分野で利用することが出来る。
【実施例】
【0151】
以下、本発明について実施例を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら制限されることはない。
尚、実施例および比較例における分散液や塗布膜の光学特性は、分光光度計(日立製作所株式会社製U−4100)を用いて測定した。可視光透過率と近赤外線透過率とは、JISR3106に従って算出した。
また、分散粒子径は、動的光散乱法に基づく粒径測定装置(大塚電子株式会社製ELS−8000)により測定した平均値をもって示した。
また、実施例および比較例における複合タングステン酸化物超微粒子(A)に含まれる揮発成分の含有率は、水分計(島津製作所株式会社製 MOC63u)を用いて測定した。測定は、測定試料を測定開始から1分間で、室温から温度125℃まで昇温させ、温度125℃で9分間保持した。そして、測定開始から10分後における測定試料の重量減少率を揮発成分の含有率とした。
近赤線遮蔽材料微粒子分散体中や近赤線遮蔽中間膜中に分散された複合タングステン酸化物超微粒子(A)の分散粒子径は、当該分散体や中間膜の断面の透過型電子顕微鏡像を観察することによって測定した。透過型電子顕微鏡像は、透過型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製HF−2200)を用いて観察した。当該透過型電子顕微鏡像を画像処理装置にて処理し、複合タングステン酸化物超微粒子(A)100個の分散粒子径を測定して、平均値を平均分散粒子径とした。
X線回折パターンは、粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社PANalytical製X‘Pert−PRO/MPD)を用いて粉末X線回折法(θ―2θ法)により測定した。また、客観的な定量性を確保するため、複合タングステン酸化物超微粒子(A)のX線回折パターンの測定毎に、シリコン粉末標準試料(NIST製、640c)の測定を実施して、(220)面のX線回折パターンのXRDピーク強度の値を1として、都度複合タングステン酸化物超微粒子(A)のXRDピークのトップ強度との比をとり、ピーク強度の比を算出した。
【0152】
(実施例1)
<複合タングステン酸化物超微粒子の製造>
水0.330kgにCsCO0.216kgを溶解し、これをHWO1.000kgに添加して十分攪拌した後、乾燥し、Cs元素とW元素との比が、狙いの組成であるCs0.33WOにおけるCs元素とW元素の比となっている混合粉体を得た。
次に、図1に示す高周波プラズマ反応装置(住友金属鉱山(株)製、高周波プラズマ発生部;日本高周波(株)製;水冷二石英重管の内径70mm 長さ213mm)を用い、真空排気装置により反応系内を約0.1Paまで真空引きした後、アルゴンガスで完全に置換して1気圧の流通系とした。その後、反応容器内にプラズマガスとしてアルゴンガスを30L/minの流量で導入し、シースガスとしてシースガス供給口より螺旋状にアルゴンガス55L/minとヘリウムガス5L/minの流量で導入した。そして、高周波プラズマ発生用の水冷銅コイルに高周波電力を印加し、高周波プラズマを発生させた。このとき、10000〜15000Kの高温部を有している熱プラズマを発生させるため、高周波電力は40kWとした。
【0153】
高周波プラズマを発生させた後、キャリアガスとしてアルゴンガスをガス供給装置から9L/minの流量で供給しながら、前記混合粉体を50g/minの割合で熱プラズマ中に供給した。
その結果、混合粉体は熱プラズマ中にて瞬時に蒸発し、プラズマ尾炎部に至る過程で急冷凝固して超微粒子化した。生成した超微粒子(A)は、回収フィルターに堆積した。これらの製造条件を表1に記載する。
【0154】
当該堆積した超微粒子(A)を回収し、粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社PANalytical製X‘Pert−PRO/MPD)を用いて粉末X線回折法(θ―2θ法)によりX線回折パターンを測定した。
【0155】
得られた超微粒子(A)のX線回折パターンを図2に示す。相の同定を行った結果、得られた超微粒子(A)は六方晶Cs0.33WO単相と同定された。尚、異相は観測されなかった。
さらに当該X線回折パターンを用いて、リートベルト解析法による結晶構造解析を行ったところ、得られた超微粒子(A)の結晶子径は18.8nmであった。さらに得られた超微粒子(A)のX線回折パターンのピークのトップ強度の値は4200カウントであった。
得られた超微粒子(A)の組成を、ICP発光分析法により調べた。その結果、Cs濃度が13.6質量%、W濃度が65.3質量%であり、Cs/Wのモル比は0.29であった。CsとW以外の残部は酸素であり、1質量%以上含有されるその他不純物元素は存在していないことを確認した。
【0156】
得られた超微粒子(A)のBET比表面積を、BET比表面積測定装置(株式会社Mountech製HMmodel−1208)を用いて測定したところ、60.0m/gであった。尚、BET比表面積の測定には純度99.9%の窒素ガスを使用した。
【0157】
また、実施例1に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)における揮発成分の含有率を測定したところ1.6質量%であった。
【0158】
<複合タングステン酸化物超微粒子分散液>
得られた複合タングステン酸化物超微粒子(A)を20質量部と、
有機溶媒:メチルイソブチルケトン(MIBK)64質量部と、
官能基としてアミンを含有する基を有するアクリル系高分子分散剤(アミン価48mgKOH/g、分解温度250℃のアクリル系分散剤)(以下、「分散剤a」と記載する。)16質量部とを混合し、3kgのスラリーを調製した。
このスラリーをビーズと共に媒体攪拌ミルに投入し、1時間粉砕分散処理を行った。
尚、媒体攪拌ミルは横型円筒形のアニュラータイプ(アシザワ株式会社製)を使用し、ベッセル内壁とローター(回転攪拌部)の材質はジルコニアとした。また、ビーズには、直径0.1mmのYSZ(Yttria−Stabilized Zirconia:イットリア安定化ジルコニア)製のビーズを使用した。ローターの回転速度は14rpm/秒とし、スラリー流量0.5kg/minにて粉砕分散処理を行い、実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散液を得た。当該実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散液の組成を表2に記載する。
【0159】
得られた近赤外線遮蔽超微粒子分散液に含まれる複合タングステン酸化物超微粒子(A)、すなわち粉砕分散処理後の複合タングステン酸化物超微粒子(A)のX線回折パターンのピークトップ強度の値は3000カウント、ピーク位置は2θ=27.8°であった。一方、シリコン粉末標準試料(NIST製640c)を準備し、当該シリコン粉末標準試料の(220)面のXRDピーク強度の値を測定したところ、19800カウントであった。従って、当該標準試料のピーク強度の値を1としたときの、粉砕分散処理後の前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)のXRDピーク強度の比の値は0.15であった。
また、実施例1に係る粉砕分散処理後の複合タングステン酸化物超微粒子(A)の結晶子径は16.9nmであった。
さらに、実施例1に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液の分散粒子径を、動的光散乱法に基づく粒径測定装置を用いて測定したところ70nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドは、メチルイソブチルケトンを用いて測定し、溶媒屈折率は1.40とした。当該測定結果を表3に示す。
【0160】
<コーティング層として用いた近赤外線遮蔽超微粒子分散体>
上述した実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散液100質量部に、
樹脂バインダー(B):アクリル系紫外線硬化樹脂:商品名アロニックスUV3701(東亜合成製)50質量部、
耐候性改良剤(C):ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 2−(2−ヒドロキシ−5−メチジルフェニル)ベンゾトリアゾール 住友化学株式会社 商品名スミソーブ200(スミソーブは登録商標)60質量部、
溶媒のメチルイソブチルケトン適量とを混合し、近赤外線遮蔽層形成用塗布液を調整した。当該実施例1に係る近赤外線遮蔽層形成用塗布液の組成を、表2に記載する。
このとき、後述する近赤外線遮蔽合わせ構造体の可視光透過率が70%になるように、溶媒のメチルイソブチルケトンによる希釈で近赤外線遮蔽形成用塗布液の濃度を調整した。
【0161】
得られた近赤外線遮蔽層形成用塗布液を、バーコーター(井元製作所製IMC−700)を用いて、厚さ50μmの延伸ポリエステルフィルム上に塗布して塗布膜を形成した。
得られた塗布膜から溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用い紫外線を照射することで硬化させ、実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体である、近赤外線遮蔽層を得た。
【0162】
得られた実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体中に分散された複合タングステン酸化物超微粒子(A)の分散粒子径(平均粒子径)を、透過型電子顕微鏡像を用いた画像処理装置によって算出したところ、17nmであり、上述した結晶子径16.9nmとほぼ同値であった。
また、得られた実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体のヘイズ値を、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製HM−150)を用いて、JISK7105に基づき測定したところ、1.3%であった。
また、人工太陽照明灯(セリック株式会社製XC−100)を用いて疑似太陽光を実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体に照射して、ブルーヘイズ現象の有無を目視で確認し、ブルーヘイズ現象がないことを確認した。
また、得られた実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体の光学特性:可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を、分光光度計U−4000(日立製作所製)を使用して測定した。上述したように、可視光透過率は70%になるように調整しており、得られた透過プロファイルから日射透過率を求めたところ38.7%であった。
続けて、屋外での耐候性評価のため、紫外線照射装置を用いて前記近赤外線遮蔽超微粒子分散体に紫外線を1時間照射した後、光学特性:ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を、分光光度計U−4000(日立製作所製)を使用して測定した。すると可視光透過率T、日射透過率ST、ヘイズ値Hは、それぞれ69%、38.0%、1.3%となった。当該測定結果を表4に示す。
【0163】
<近赤外線遮蔽合わせ構造体>
上述した実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体である近赤外線遮蔽層を、2枚のポリビニルブチラールシート(厚さ0.38mm)で挟持した後、プレス成形機にて120℃、100kg/cmの条件下で30分間プレス成形し、近赤外線遮蔽中間膜を得た。そして、前記近赤外線遮蔽中間膜を2枚の板状ソーダ石灰ガラス(厚さ3mm)で挟持した後、80℃に加熱して仮接着し、オートクレーブ中で、120℃、14kg/cmの条件で本接着して実施例1に係る近赤外線遮蔽合わせ構造体を得た。
【0164】
(実施例2〜6)
キャリアガス流量、プラズマガス流量、シースガス流量、原料供給速度を、それぞれ所定値へ変更したこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例2〜6に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)と複合タングステン酸化物超微粒子分散液を製造した。変更したキャリアガス流量条件と原料供給速度条件、およびその他の条件を表1に示す。
【0165】
得られた実施例2〜6に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)と複合タングステン酸化物超微粒子分散液に対して、実施例1と同様の評価を行った。当該評価結果を表2、3に示す。
また、実施例2〜6に係る複合タングステン酸化物超微粒子分散液を用いた以外は、実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体を得たのと同様の条件で、それぞれ実施例2〜6に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体である近赤外線遮蔽層を得て、同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0166】
(実施例7)
実施例1に記載のCsCOとHWOとの混合粉体を、窒素ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下、800℃で焼成したCs0.33WOで表される複合タングステン酸化物に変更して、高周波プラズマ反応装置に投入する原料とした。
それ以外の複合タングステン酸化物超微粒子(A)の製造条件は実施例1と同様として、実施例7に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)を得た。
【0167】
得られた複合タングステン酸化物超微粒子(A)を用いて、実施例1と同じ条件で、実施例7に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散液を製造した。得られた複合タングステン酸化物超微粒子(A)とその分散液に対して、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1〜3に示す。
また、実施例7に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散液を用いた以外は、実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体を得たのと同様の条件で、実施例7に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体を得て、同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0168】
(実施例8)
キャリアガス流量を6L/minとし、原料供給速度を25g/minの割合で供給することに変更した以外は、実施例7と同様の操作をすることで、実施例8に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)を得た。
【0169】
得られた複合タングステン酸化物超微粒子(A)を用いて、実施例1と同じ条件で、実施例8に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散液を製造した。得られた複合タングステン酸化物超微粒子(A)とその分散液に対して、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1〜3に示す。
また、実施例8に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散液を用いた以外は、実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体を得たのと同様の条件で、実施例8に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体を得て、同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0170】
(実施例9)
水0.330kgにRbCO0.148kgを溶解し、これをHWO1.000kgに添加して十分攪拌した後、乾燥し、Rb元素とW元素の比が、狙いの組成であるRb0.32WOのRb元素とW元素の比となっている混合粉体を得た。
実施例1に記載のCsCOとHWOとの混合粉体に変えて、前記得られたRbCOとHWOとの混合粉体を、高周波プラズマ反応装置に投入する原料とした。それ以外は実施例1と同様の方法で実施例9に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)を得た。
【0171】
得られた複合タングステン酸化物超微粒子(A)は、X線回折パターンから、六方晶Rb0.33WO単相と同定された。尚、異相は観測されなかった。
得られた複合タングステン酸化物超微粒子(A)を用いて、実施例1と同じ条件で実施例9に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散液を製造した。得られた超微粒子(A)とその分散液に対して、実施例1と同様の評価を行った。当該製造条件と評価結果を表1〜3に示す。
また、実施例9に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散液を用いた以外は、実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体を得たのと同様の条件で、実施例9に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体を得て、同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0172】
(実施例10)
実施例3で作製した近赤外線遮蔽超微粒子分散液100質量部と、
樹脂バインダー(B):アクリル系紫外線硬化樹脂:商品名アロニックスUV3701(東亜合成製)50質量部と、
耐候性改良剤(C):ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 2−(2−ヒドロキシ−5−メチジルフェニル)ベンゾトリアゾール 住友化学株式会社 商品名スミソーブ200(スミソーブは登録商標)2質量部と、
溶媒のメチルイソブチルケトン適量とを混合し、実施例10に係る近赤外線遮蔽層形成用塗布液を調整した。
このとき、後述する近赤外線遮蔽合わせ構造体の可視光透過率が70%になるように、溶媒のメチルイソブチルケトンによる希釈で近赤外線遮蔽形成用塗布液の濃度を調整した。
【0173】
得られた近赤外線遮蔽層形成用塗布液を用いて、実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体を得たのと同様の条件で、実施例10の近赤外線遮蔽超微粒子分散体、すなわち、近赤外線遮蔽層、近赤外線遮蔽中間膜、近赤外線遮蔽合わせ構造体を得て、同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0174】
(実施例11)
実施例3で作製した近赤外線遮蔽超微粒子分散液100質量部と、
樹脂バインダー(B):アクリル系紫外線硬化樹脂:商品名アロニックスUV3701(東亜合成製)50質量部と、
耐候性改良剤(C):ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 2−(2−ヒドロキシ−5−メチジルフェニル)ベンゾトリアゾール 住友化学株式会社 商品名スミソーブ200(スミソーブは登録商標)200質量部と、
溶媒のメチルイソブチルケトン適量とを混合し、実施例11に係る近赤外線遮蔽層形成用塗布液を調整した。
このとき、後述する近赤外線遮蔽合わせ構造体の可視光透過率が70%になるように、溶媒のメチルイソブチルケトンによる希釈で近赤外線遮蔽形成用塗布液の濃度を調整した。
【0175】
得られた近赤外線遮蔽層形成用塗布液を用いて、実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体を得たのと同様の条件で、実施例11の近赤外線遮蔽層、近赤外線遮蔽中間膜、近赤外線遮蔽合わせ構造体を得て、同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0176】
(実施例12)
実施例3で作製した近赤外線遮蔽超微粒子分散液100質量部と、
樹脂バインダー(B):アクリル系紫外線硬化樹脂:商品名アロニックスUV3701(東亜合成製)50質量部と、
耐候性改良剤(C):ベンゾフェノン系紫外線吸収剤 2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン 住友化学株式会社 商品名スミソーブ130(スミソーブは登録商標)60質量部と、
溶媒のメチルイソブチルケトン適量とを混合し、実施例12に係る近赤外線遮蔽層形成用塗布液を調整した。
このとき、後述する近赤外線遮蔽合わせ構造体の可視光透過率が70%になるように、溶媒のメチルイソブチルケトンによる希釈で近赤外線遮蔽形成用塗布液の濃度を調整した。
【0177】
得られた近赤外線遮蔽層形成用塗布液を用いて、実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体を得たのと同様の条件で、実施例12の近赤外線遮蔽層、近赤外線遮蔽中間膜、近赤外線遮蔽合わせ構造体を得て、同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0178】
(実施例13)
耐候性改良剤(C)を、B−3:トリアジン系紫外線吸収剤 2,4−ビス「2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン BASF社 商品名チヌビン460(チヌビンは登録商標)に変更したこと以外は、実施例12と同様にして、実施例13に係る近赤外線遮蔽層形成用塗布液を調整した。
このとき、後述する近赤外線遮蔽合わせ構造体の可視光透過率が70%になるように、溶媒のメチルイソブチルケトンによる希釈で近赤外線遮蔽形成用塗布液の濃度を調整した。
【0179】
得られた近赤外線遮蔽層形成用塗布液を用いて、実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体を得たのと同様の条件で、実施例12の近赤外線遮蔽層、近赤外線遮蔽中間膜、近赤外線遮蔽合わせ構造体を得て、同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0180】
(実施例14)
耐候性改良剤(C)を、
B−1:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 2−(2−ヒドロキシ−5−メチジルフェニル)ベンゾトリアゾール 住友化学株式会社 商品名スミソーブ200(スミソーブは登録商標)30質量部と、
B−2:ベンゾフェノン系紫外線吸収剤 2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン 住友化学株式会社 商品名スミソーブ130(スミソーブは登録商標)30質量部とに変更した以外は、実施例12と同様にして、実施例14に係る近赤外線遮蔽層形成用塗布液を調整した。
このとき、後述する近赤外線遮蔽合わせ構造体の可視光透過率が70%になるように、溶媒のメチルイソブチルケトンによる希釈で近赤外線遮蔽形成用塗布液の濃度を調整した。
【0181】
得られた近赤外線遮蔽層形成用塗布液を用いて、実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体を得たのと同様の条件で、実施例14の近赤外線遮蔽層、近赤外線遮蔽中間膜、近赤外線遮蔽合わせ構造体を得て、同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0182】
(実施例15)
耐候性改良剤(C)を、
B−1:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 2−(2−ヒドロキシ−5−メチジルフェニル)ベンゾトリアゾール 住友化学株式会社 商品名スミソーブ200(スミソーブは登録商標)30質量部と、
B−3:トリアジン系紫外線吸収剤 2,4−ビス「2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン BASF社 商品名チヌビン460(チヌビンは登録商標)30質量部とに変更した以外は、実施例12と同様にして、実施例15に係る近赤外線遮蔽層形成用塗布液を調整した。
このとき、後述する近赤外線遮蔽合わせ構造体の可視光透過率が70%になるように、溶媒のメチルイソブチルケトンによる希釈で近赤外線遮蔽形成用塗布液の濃度を調整した。
【0183】
得られた近赤外線遮蔽層形成用塗布液を用いて、実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体を得たのと同様の条件で、実施例15の近赤外線遮蔽層、近赤外線遮蔽中間膜、近赤外線遮蔽合わせ構造体を得て、同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0184】
(実施例16)
耐候性改良剤(C)を、
B−2:ベンゾフェノン系紫外線吸収剤 2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン 住友化学株式会社 商品名スミソーブ130(スミソーブは登録商標)30質量部と、
B−3:トリアジン系紫外線吸収剤 2,4−ビス「2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン BASF社 商品名チヌビン460(チヌビンは登録商標)30質量部とに変更した以外は、実施例12と同様にして、実施例16に係る近赤外線遮蔽層形成用塗布液を調整した。
このとき、後述する近赤外線遮蔽合わせ構造体の可視光透過率が70%になるように、溶媒のメチルイソブチルケトンによる希釈で近赤外線遮蔽形成用塗布液の濃度を調整した。
【0185】
得られた近赤外線遮蔽層形成用塗布液を用いて、実施例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体を得たのと同様の条件で、実施例16の近赤外線遮蔽層、近赤外線遮蔽中間膜、近赤外線遮蔽合わせ構造体を得て、同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0186】
(比較例1)
<複合タングステン酸化物超微粒子の製造>
キャリアガス流量をアルゴンガス3L/minとし、原料供給速度を15g/minと変更したこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、比較例1に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)を調製した。変更したキャリアガス流量条件と原料供給速度条件、およびその他の条件を表1、2に記載する。
【0187】
<複合タングステン酸化物超微粒子分散液>
得られた複合タングステン酸化物超微粒子(A)を用いて、実施例1と同様の条件で、比較例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散液を得た。
得られた複合タングステン酸化物超微粒子(A)とそれを用いた分散液に対して、実施例1と同様の評価を実施した。当該評価結果を表3に示す。
【0188】
<コーティング層として用いた近赤外線遮蔽超微粒子分散体>
比較例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散液100質量部と、
樹脂バインダー(B):アクリル系紫外線硬化樹脂:商品名アロニックスUV3701(東亜合成製)50質量部と、
耐候性改良剤(C)は添加せず、
溶媒のメチルイソブチルケトン適量とを混合し、比較例1に係る近赤外線遮蔽層形成用塗布液を調製した。
このとき、後述する近赤外線遮蔽合わせ構造体の可視光透過率が70%になるように、溶媒のメチルイソブチルケトンによる希釈で近赤外線遮蔽形成用塗布液分散液の濃度を調整した。
【0189】
得られた比較例1に係る近赤外線遮蔽層形成用塗布液を用いて、実施例1と同様にして、塗布膜、近赤外線遮蔽層、更に、近赤外線遮蔽中間膜を得た。そして、実施例1と同様にして、前記近赤外線遮蔽中間膜を用いて比較例1に係る近赤外線遮蔽合わせ構造体を得た。
得られた比較例1に係る近赤外線遮蔽合わせ構造体について、光学特性を評価した。評価結果を表4に示す。
【0190】
(比較例2)
<複合タングステン酸化物超微粒子の製造>
プラズマガス流量をアルゴンガス15L/minと変更したこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、比較例2に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)を調製した。変更したプラズマガス流量条件、およびその他の条件を表1、2に記載する。
【0191】
<複合タングステン酸化物超微粒子分散液>
得られた比較例2に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)を用いて、実施例1と同様の操作により、比較例2に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散液を得た。
得られた比較例2に係る近赤外線遮蔽超微粒子(A)とそれを用いた複合タングステン酸化物超微粒子分散液に対して、実施例1と同様の評価を実施した。当該評価結果を表3に示す。
【0192】
<コーティング層として用いた近赤外線遮蔽超微粒子分散体>
比較例2に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散液100質量部と、
樹脂バインダー(B):アクリル系紫外線硬化樹脂:商品名アロニックスUV3701(東亜合成製)50質量部と、
耐候性改良剤(C):ベンゾフェノン系紫外線吸収剤 2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン 住友化学株式会社 商品名スミソーブ130(スミソーブは登録商標)1質量部と、
溶媒のメチルイソブチルケトン適量とを混合し、近赤外線遮蔽層形成用塗布液を調製した。
このとき、後述する近赤外線遮蔽合わせ構造体の可視光透過率が70%になるように、溶媒のメチルイソブチルケトンによる希釈で近赤外線遮蔽形成用塗布液分散液の濃度を調整した。
【0193】
得られた比較例2に係る近赤外線遮蔽層形成用塗布液を用いて、実施例1と同様にして、塗布膜、近赤外線遮蔽層、更に、近赤外線遮蔽中間膜を得た。更に、実施例1と同様にして、前記近赤外線遮蔽中間膜を用いて近赤外線遮蔽合わせ構造体を得た。
得られた比較例2に係る近赤外線遮蔽合わせ構造体について、光学特性を評価した。結果を表4に示す。
【0194】
(比較例3)
<複合タングステン酸化物超微粒子の製造>
高周波プラズマを発生させるための高周波電力を15kWとした以外は、実施例1と同様の条件として、比較例3に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)を調製した。
【0195】
<複合タングステン酸化物超微粒子分散液>
得られた複合タングステン酸化物超微粒子(A)を用いて、実施例1と同様の条件で、比較例3に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散液を得た。
得られた比較例3に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)と、それを用いた分散液とに対して、実施例1と同様の評価を実施した。当該評価結果を表3に示す。
【0196】
<コーティング層として用いた近赤外線遮蔽超微粒子分散体>
比較例3に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散液100質量部と、
樹脂バインダー(B):アクリル系紫外線硬化樹脂:商品名アロニックスUV3701(東亜合成製)50質量部と、
耐候性改良剤(C):トリアジン系紫外線吸収剤 2,4−ビス「2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン BASF社 商品名チヌビン460(チヌビンは登録商標)400質量部と、
溶媒としてメチルイソブチルケトン適量とを混合し、比較例3に係る近赤外線遮蔽層形成用塗布液を調整した。
このとき、後述する近赤外線遮蔽合わせ構造体の可視光透過率が70%になるように、溶媒のメチルイソブチルケトンによる希釈で比較例3に係る近赤外線遮蔽形成用塗布液分散液の濃度を調整した。
【0197】
得られた比較例3に係る近赤外線遮蔽層形成用塗布液を用いて、実施例1と同様にして、塗布膜、近赤外線遮蔽層、更に、近赤外線遮蔽中間膜を得た。そして、実施例1と同様に操作して、比較例3に係る近赤外線遮蔽合わせ構造体を得た。
得られた比較例3に係る近赤外線遮蔽合わせ構造体について、光学特性を評価した。結果を表4に示す。
【0198】
(まとめ)
実施例1〜6においては、CsCOとHWOとを原料混合粉体として用いた。そして、高周波プラズマ反応装置を用いて、好適な原料混合粉体の供給速度、プラズマガス流量、キャリアガス流量を選択することにより、原料混合粉体を熱プラズマ中にて瞬時に蒸発させ、プラズマ尾炎部に至る過程で急冷凝固して、本発明に係る超微粒子化した複合タングステン酸化物超微粒子(A)を得ることが出来た。
【0199】
得られた複合タングステン酸化物超微粒子(A)は表3に示すように、近赤外線遮蔽特性に優れる六方晶Cs0.33WO単相であった。そして、当該複合タングステン酸化物超微粒子(A)のX線回折パターンにおいては、シリコン粉末標準試料の(220)面に係るXRDピーク強度の値を1とした時の、前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)のXRDピークのトップ強度との比の値が0.13以上であり、結晶性が高く、可視光領域で透明性が高いものであった。
【0200】
当該実施例1〜6に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)を、樹脂バインダー(B)と共に、特定の構造を有する耐候性改良剤(C)を含有する固体媒体に分散させ、その添加量を最適化することによって、屋外使用時における色調の変化が抑制された、実施例1〜6に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体が得られた。
当該実施例1〜6に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体を用いて、実施例1〜6に係る近赤外線遮蔽用中間膜、近赤外線遮蔽合わせ構造体が得られることが確認された。そして、当該実施例1〜6に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)を用いた実施例1〜6に係る合わせ構造体において、優れた近赤外線遮蔽特性を有することが確認された。
【0201】
実施例7、8においては、実施例1に記載のCsCOとHWOとの混合粉体を、窒素ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下800℃で焼成して得たCs0.33WOで標記される複合タングステン酸化物を、高周波プラズマ反応装置に投入する原料として用いた。そして、複合タングステン酸化物を投入原料として用いた場合も、実施例1〜6と同様に、原料の供給速度、キャリアガス流量を選択することにより、本発明に係る超微粒子化した複合タングステン酸化物超微粒子(A)を得ることが出来ることが確認された。
【0202】
得られた実施例7、8に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)は、表3に示すように、近赤外線遮蔽特性に優れる六方晶Cs0.33WO単相であり、当該複合タングステン酸化物超微粒子(A)のX線回折パターンにおいては、シリコン粉末標準試料の(220)面に係るXRDピーク強度の値を1とした時の、前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)のXRDピークのトップ強度との比の値が0.13以上であり、実施例1〜6と同様に、可視光領域で透明性が高く、結晶性が高いものであった。
そして、当該複合タングステン酸化物超微粒子(A)を用いた合わせ構造体において、優れた近赤外線遮蔽特性を有することが確認された。
さらに、実施例1〜6と同様に、当該複合タングステン酸化物超微粒子(A)を、樹脂バインダー(B)と共に、耐候性改良剤(C)を含有する固体媒体に分散させ、その添加量を最適化することによって、屋外使用時における色調の変化が抑制された近赤外線遮蔽超微粒子分散体が得られ、当該近赤外線遮蔽超微粒子分散体を用いた近赤外線遮蔽用中間膜、近赤外線遮蔽合わせ構造体が得られることが確認された。
【0203】
実施例9は、複合タングステン酸化物超微粒子(A)として六方晶Rb0.33WOを用いた実施例である。実施例9に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)は、実施例1〜8に係る六方晶Cs0.33WOと同様に、当該複合タングステン酸化物超微粒子(A)のX線回折パターンにおいては、シリコン粉末標準試料の(220)面に係るXRDピーク強度の値を1とした時の、前記複合タングステン酸化物超微粒子(A)のXRDピークのトップ強度との比の値が0.13以上である。この結果、実施例1〜8と同様に、可視光領域で透明性が高く、結晶性が高いことによって、当該複合タングステン酸化物超微粒子(A)を用いた合わせ構造体において、優れた近赤外線遮蔽特性を有することが確認された。
【0204】
さらに、実施例1〜8と同様に、当該実施例9に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)を樹脂バインダー(B)と共に、耐候性改良剤(C)を含有する固体媒体中に分散させ、その添加量を最適化することによって、屋外使用時における色調の変化が抑制された近赤外線遮蔽超微粒子分散体が得られた。そして、当該近赤外線遮蔽超微粒子分散体を用いた近赤外線遮蔽用中間膜、近赤外線遮蔽合わせ構造体が得られることが確認された。
【0205】
実施例10〜16では、実施例3と同様の操作で調製された複合タングステン酸化物超微粒子(A)を準備し、当該複合タングステン酸化物超微粒子(A)を、樹脂バインダー(B)と共に、耐候性改良剤(C)を含有する固体媒体に分散させたものである。当該耐候性改良剤(C)の種類、その添加量を最適化することによって、屋外使用時における色調の変化が抑制された近赤外線遮蔽超微粒子分散体が得られ、当該近赤外線遮蔽超微粒子分散体を用いた近赤外線遮蔽用中間膜、近赤外線遮蔽合わせ構造体が得られることが確認された。
【0206】
比較例1は、高周波プラズマ反応装置における原料の供給速度、キャリアガス流量が好適な条件から外れている場合である。得られた複合タングステン酸化物超微粒子(A)は比表面積が大きく、結晶子径も低下した結晶性の低い超微粒子となっており、本発明の求める、XRDピークのトップ強度との比の値が0.13以上を満たしていなかった。
【0207】
さらに当該比較例1に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)を用いて得た比較例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体は、本発明に係る耐候性改良剤(C)を含有していないものであった。
当該比較例1に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体は、紫外線照射試験後の可視光透過率が大きく低下して、当該近赤外線遮蔽超微粒子分散体は色調が暗色に変化しており、本発明の特徴である、屋外使用時における色調の変化が抑制された近赤外線遮蔽超微粒子分散体とはなっていないことが確認された。
【0208】
比較例2は、高周波プラズマ反応装置におけるプラズマガス流量が好適な条件から外れている場合である。得られた複合タングステン酸化物超微粒子(A)は微粒子化して比表面積が大きく、結晶子径も低下した結晶性の低い超微粒子となっており、本発明の求めるXRDピークのトップ強度との比の値が0.13以上を満たしていなかった。
【0209】
さらに当該比較例2に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)を用いて得た比較例2に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体は、本発明に係る耐候性改良剤(C)の含有量が低い近赤外線遮蔽超微粒子分散体となっているものであった。
当該比較例2に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体は、紫外線照射試験後の可視光透過率が大きく低下して、当該近赤外線遮蔽超微粒子分散体は色調が暗色に変化しており、本発明の特徴である、屋外使用時における色調の変化が抑制された近赤外線遮蔽超微粒子分散体とはなっていないことが確認された。
【0210】
比較例3は、高周波プラズマ反応装置におけるプラズマ発生の高周波電力が低く好適な条件から外れている場合である。得られた複合タングステン酸化物超微粒子(A)は六方晶Cs0.33WO単相となっておらず、WOやWなどの他相が混在したものとなっており、本発明の求めるXRDピークのトップ強度との比の値が0.13以上を満たしていなかった。
【0211】
さらに当該比較例3に係る複合タングステン酸化物超微粒子(A)を用いて得た比較例3に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体は、本発明に係る耐候性改良剤(C)を過多に含有しているものであった。
当該比較例3に係る近赤外線遮蔽超微粒子分散体はヘイズ値が大きく、外観が曇った近赤外線遮蔽超微粒子分散体であることが確認された。
【0212】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
図1
図2