(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(3)又は(3')と(4)との間に、保護基を有するポリアルキレングリコール誘導体を、水又はアルコール溶媒中、酸と反応させて脱保護する工程を含む、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリアルキレングリコール誘導体の製造方法。
工程(4)において、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を用いて、式(V)で表されるポリアルキレングリコール誘導体の脱保護と同時に、水溶性不純物を除去し、目的とするポリアルキレングリコール誘導体を精製する、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリアルキレングリコール誘導体の製造方法。
前記陽イオン交換樹脂が、スチレン系H型強酸性陽イオン交換樹脂であり、前記陰イオン交換樹脂が、スチレン系OH型強塩基性陰イオン交換樹脂である請求項1〜9のいずれか1項記載のポリアルキレングリコール誘導体の製造方法。
前記陽イオン交換樹脂が、ゲル型又は架橋度が10以上のポーラス型のスチレン系H型強酸性陽イオン交換樹脂である請求項1〜10のいずれか1項記載のポリアルキレングリコール誘導体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のポリアルキレングリコール誘導体の製造方法は、下記工程(3)又は(3')、及び(4)を含むものである。なお、各工程の詳細については、後述する。
(3)下記式(III−I)で表される化合物を、必要に応じて塩基性化合物存在下、下記式(IV)で表される求電子剤と反応させ、下記式(V)で表されるポリアルキレングリコール誘導体を合成する工程、又は
(3')下記式(III−II)で表される化合物を、塩基性化合物存在下、下記式(IV)で表される求電子剤と反応させ、下記式(V)で表されるポリアルキレングリコール誘導体を合成する工程;及び
(4)陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを用いて水溶性不純物を除去し、目的とするポリアルキレングリコール誘導体を精製する工程。
【化7】
【0017】
式中、R
1及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の1価炭化水素基、アジド基、シアノ基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するヒドロキシ基、又はアセタール基である。
【0018】
前記1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、イソへキシル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基及びシクロエイコシル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、メシチル基等のアリール基、ビニル基、アリル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基等が挙げられる。
【0019】
前記保護基を有するアミノ基、保護基を有するヒドロキシ基及びアセタール基は、それぞれ、下記式(IV−I)、(IV−II)及び(IV−III)で表されるものである。
【化8】
【0020】
式(IV−I)中、R
a1及びR
a2は、それぞれ独立に、水素原子又はアミノ基の保護基であるが、少なくとも一方はアミノ基の保護基である。また、R
a1及びR
a2が、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。
破線は、結合手である。
【0021】
前記アミノ基の保護基としては、−Si(R
d)
3で表されるシリル系保護基、−OCOR
eで表されるカーボネート系保護基、環状保護基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、p−トルエンスルホニル基、2−ニトロベンゼンスルホニル基、(2−トリメチルシリル)エタンスルホニル基、アリル基、ピバロイル基、メトキシメチル基、ジ(4−メトキシフェニル)メチル基、5−ジベンゾスベリル基、トリニルメチル基、(4−メトキシフェニル)ジフェニルメチル基、9−フェニルフルオレニル基、[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル基、N−3−アセトキシプロピル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
式−Si(R
d)
3において、R
dは、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜6の1価炭化水素基である。R
dとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
式−OCOR
eにおいて、R
eは、炭素数1〜20の1価炭化水素基であり、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子又はホウ素原子を含んでいてもよい。−OCOR
eで表されるカーボネ−ト系保護基としては、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル基、2−トリメチルシリルエチルオキシカルボニル基、フェニルエチルオキシカルボニル基、1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2−ハロエチルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2,2−ジブロモエチルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル基、1−メチル−1−(4−ビフェニルイル)エチルオキシカルボニル基、1−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−1−メチルエチルオキシカルボニル基、2−(2'−ピリジル)エチルオキシカルボニル基、2−(4'−ピリジル)エチルオキシカルボニル基、2−(N,N−ジシクロヘキシルカルボキシアミド)エチルオキシカルボニル基、1−アダマンチルオキシカルボニル基、ビニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、1−イソプロピルアリルオキシカルボニル基、シンナミルオキシカルボニル基、4−ニトロシンナミルオキシカルボニル基、8−キノリルオキシカルボニル基、N−ヒドロキシピペリジニルオキシカルボニル基、アルキルジチオカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、p−ブロモベンジルオキシカルボニル基、p−クロロベンジルオキシカルボニル基、2,4−ジクロロベンジルオキシカルボニル基、4−メチルスルフィニルベンジルオキシカルボニル基、9−アントリルメチルオキシカルボニル基、ジフェニルメチルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、9−(2,7−ジブロモ)フルオレニルメチルオキシカルボニル基、2,7−ジ−tert−ブチル−[9−(10,10−ジオキソ−チオキサンチル)]メチルオキシカルボニル基、4−メトキシフェナシルオキシカルボニル基、2−メチルチオエチルオキシカルボニル基、2−メチルスルホニルエチルオキシカルボニル基、2−(p−トルエンスルホニル)エチルオキシカルボニル基、[2−(1,3−ジチアニル)]メチルオキシカルボニル基、4−メチルチオフェニルオキシカルボニル基、2,4−ジメチルチオフェニルオキシカルボニル基、2−ホスホニオエチルオキシカルボニル基、2−トリフェニルホスホニオイソプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2−シアノエチルオキシカルボニル基、m−クロロ−p−アシロキシベンジルオキシカルボニル基、p−(ジヒドロキシボリル)ベンジルオキシカルボニル基、5−ベンゾイソオキサゾリルメチルオキシカルボニル基、2−(トリフルオロメチル)−6−クロモニルメチルオキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、m−ニトロフェニルオキシカルボニル基、3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、o−ニトロベンジルオキシカルボニル基、3,4−ジメトキシ−6−ニトロベンジルオキシカルボニル基やフェニル(o−ニトロフェニル)メチルオキシカルボニル基等が挙げられる。中でも、tert−ブチルオキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基が好ましい。
【0024】
前記環状保護基は、式(IV−I)中のR
a1及びR
a2が、互いに結合してアミノ基の窒素原子と共に環を形成したものである。このような環状保護基としては、N−フタロイル基、N−テトラクロロフタロイル基、N−4−ニトロフタロイル基、N−ジチアスクシロイル基、N−2,3−ジフェニルマレオイル基、N−2,5−ジメチルピロリル基、N−2,5−ビス(トリイソプロピルシロキシ)ピロリル基、N−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシライソインドイル基、3,5−ジニトロ−4−ピリドニル基、1,3,5−ジオキサジニル基、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、N−フタロイル基が好ましい。
【0025】
式(IV−I)で表される保護基を有するアミノ基としては、下記式(IV−I−I)で表される基が好ましい。
【化9】
【0026】
式(IV−I−I)中、R
d1及びR
d2は、それぞれ独立に、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜6の1価炭化水素基である。また、R
d1及びR
d2が、互いに結合してこれらが結合するケイ素原子と該ケイ素原子間の窒素原子と共に環を形成していてもよい。R
d1及びR
d2としては、R
dとして前述したものと同様のものが挙げられる。
【0027】
式(IV−II)中、R
bは、ヒドロキシ基の保護基である。前記ヒドロキシ基の保護基としては、炭素数1〜10の1価炭化水素基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、テトラヒドロピラニル基、炭素数2〜10のアシル基、−Si(R
d)
3で表されるシリル系保護基、−OCOR
eで表されるカーボネート系保護基が挙げられるが、これらに限定されない。
破線は、結合手である。
【0028】
前記炭素数1〜10の1価炭化水素基としては、前述した1価炭化水素基のうち炭素数1〜10のものが挙げられる。
【0029】
前記アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシエチル基、ベンジルオキシエチル基、メトキシメトキシエチル基、2−メトキシエトキシメチル基、エトキシメトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基等が挙げられる。
【0030】
前記アシル基は、飽和脂肪族アシル基、不飽和脂肪族アシル基及び芳香族アシル基のいずれであってもよく、具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ピバロイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、ベンゾイル基、シンナモイル基等が挙げられる。
【0031】
前記式−Si(R
d)
3で表されるシリル系保護基及び式−OCOR
eで表されるカーボネート系保護基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
【0032】
式(IV−III)中、R
c1及びR
c2は、それぞれ独立に、炭素数1〜6の1価炭化水素基であり、該炭化水素基は酸素原子を含んでいてもよい。また、R
c1及びR
c2が、互いに結合して環状アセタール基を形成していてもよい。
破線は、結合手である。
【0033】
R
c1及びR
c2としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メトキシエチル基が好ましい。
【0034】
式(III−I)、(III−II)及び(V)中、R
2は、炭素数1〜6の2価炭化水素基、オキシアルキレン基又はポリオキシアルキレン基である。
【0035】
前記2価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基から、水素原子が1つ脱離した基が挙げられる。
【0036】
前記オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が挙げられ、前記ポリオキシアルキレン基としてはポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等が挙げられる。
【0037】
式(III−I)、(III−II)及び(V)中、R
3は、炭素数2〜8の2価炭化水素基である。中でも、炭素数2又は3のアルキレン基、特に、エチレン基又はプロピレン基が好ましい。繰り返し単位部分(−R
3−O−)は、1種のオキシアルキレン基のみで構成されていてもよく、2種以上のオキシアルキレン基が混在していてもよい。前記オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基等が挙げられる。2種以上のオキシアルキレン基が混在している場合、繰り返し単位部分は、2種以上の異なるアルキレンオキシドがランダム重合したものであってもよく、ブロック重合したものであってもよい。
【0038】
式(IV)及び(V)中、R
5は、炭素数1〜6の2価炭化水素基である。前記2価炭化水素基の具体例としては、R
2として前述したものと同様のものが挙げられる。
【0039】
式(III−I)中、Mは、アルカリ金属である。前記アルカリ金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。
【0040】
式(IV)中、Xは、脱離基である。前記脱離基としては、−Cl、−Br、−I、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基(TfO)、p−トルエンスルホニルオキシ基(TsO)、メタンスルホニルオキシ基(MsO)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
式(III−I)、(III−II)及び(V)中、nは、1〜450の整数であり、好ましくは10〜400の整数であり、更に好ましくは20〜350の整数である。なお、本発明の製造方法によって得られるポリアルキレングリコール誘導体の重量平均分子量(Mw)は、500〜18,000が好ましく、1,000〜16,000がより好ましい。また、前記ポリアルキレングリコール誘導体は狭分散であることが好ましく、その分散度(Mw/Mn)は1.10以下が好ましく、1.05以下がより好ましい。本発明において、Mw及びMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算測定値である。
【0042】
式(III−I)又は(III−II)で表される化合物は、公知の方法で合成することができる。
【0043】
本発明の別の態様によれば、式(V)で表されるポリアルキレングリコール誘導体は、出発原料として下記式(I)で表される化合物を用いて、下記工程(1)、(2−1)、(3)及び(4)を含む方法によって製造することができる。
(1)下記式(I)で表される化合物を、M、M
+H
-、R
X-M
+、[R
Y]
・-M
+及びR
ZO
-M
+から選択されるアルカリ金属又はアルカリ金属化合物(式中、Mはアルカリ金属であり、R
xは炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数7〜20のアラルキル基であり、R
Yは置換基を有していてもよい芳香族化合物であり、R
Zは炭素数1〜6のアルキル基である。)と反応させ、下記式(II)で表される化合物を合成する工程;
(2−1)式(II)で表される化合物を、重合溶媒中で、アルキレンオキシドと反応させ、下記式(III−I)で表される化合物を合成する工程;
(3)式(III−I)で表される化合物を、必要に応じて塩基性化合物存在下、下記式(IV)で表される求電子剤と反応させ、下記式(V)で表されるポリアルキレングリコール誘導体を合成する工程;及び
(4)陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを用いて水溶性不純物を除去し、目的とするポリアルキレングリコール誘導体を精製する工程。
【化10】
(式中、R
1〜R
5、M、X及びnは、前記と同じ。)
【0044】
また、本発明の更に別の態様によれば、式(V)で表されるポリアルキレングリコール誘導体は、出発原料として下記式(I)で表される化合物を用いて、下記工程(1)、(2−1)、(2−2)、(3')及び(4)を含む方法によっても製造することができる。
(1)下記式(I)で表される化合物を、M、M
+H
-、R
X-M
+、[R
Y]
・-M
+及びR
ZO
-M
+から選択されるアルカリ金属又はアルカリ金属化合物(式中、M、R
x、R
Y及びR
Zは、前記と同じ。)と反応させ、下記式(II)で表される化合物を合成する工程;
(2−1)式(II)で表される化合物を、重合溶媒中で、アルキレンオキシドと反応させ、下記式(III−I)で表される化合物を合成する工程;
(2−2)式(III−I)で表される化合物を、酸性化合物と反応させ、下記式(III−II)で表される化合物を得る工程;
(3')式(III−II)で表される化合物を、塩基性化合物存在下、下記式(IV)で表される求電子剤と反応させ、下記式(V)で表されるポリアルキレングリコール誘導体を合成する工程;及び
(4)陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを用いて水溶性不純物を除去し、目的とするポリアルキレングリコール誘導体を精製する工程。
【化11】
(式中、R
1〜R
5、M、X及びnは、前記と同じ。)
【0045】
以下、各工程について、時系列に沿って順に説明する。
【0046】
[工程(1)]
工程(1)は、式(I)で表される化合物を、M、M
+H
-、R
X-M
+、[R
Y]
・-M
+及びR
ZO
-M
+から選択されるアルカリ金属又はアルカリ金属化合物と反応させ、下記式(II)で表される化合物を合成する工程である。
【化12】
【0047】
式中、R
1及びR
2は、前記と同じ。Mは、アルカリ金属である。R
xは、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数7〜20のアラルキル基である。R
Yは、置換基を有していてもよい芳香族化合物である。R
Zは、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1〜6のアルキル基である。
【0048】
Mで表されるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ナトリウム−カリウム合金等が挙げられる。
【0049】
M
+H
-で表されるアルカリ金属化合物としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム等が挙げられる。
【0050】
R
Xとしては、前記炭素数1〜20の1価炭化水素基として例示したアルキル基と同様のものが挙げられる。R
X-M
+で表されるアルカリ金属化合物としては、エチルリチウム、エチルナトリウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、1,1−ジフェニルメチルカリウム、クミルナトリウム、クミルカリウム、クミルセシウム等が挙げられる。
【0051】
[R
Y]
・-M
+で表されるアルカリ金属化合物としては、リチウムナフタレニド、ナトリウムナフタレニド、カリウムナフタレニド、アントラセンリチウム、アントラセンナトリウム、アントラセンカリウム、ビフェニルナトリウム、ナトリウム2−フェニルナフタレニド、フェナントレンナトリウム、ナトリウムアセナフチレニド、ナトリウムベンゾフェノンケチル、ナトリウム1−メチルナフタレニド、カリウム1−メチルナフタレニド、ナトリウム1−メトキシナフタレニド、カリウム1−メトキシナフタレニド等が挙げられる。
【0052】
R
Zとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられるが、これらに限定されない。R
ZO
-M
+で表されるアルカリ金属化合物としては、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等が挙げられる。
【0053】
中でも、アルカリ金属又はアルカリ金属化合物としては、副反応を抑制する観点から、ナトリウム、カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムが好ましく、また反応性の高さの観点から、ナトリウムナフタレニド、カリウムナフタレニド、アントラセンナトリウム、アントラセンカリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドが好ましい。アルカリ金属又はアルカリ金属化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
工程(1)において、アルカリ金属又はアルカリ金属化合物の使用量は、式(I)で表される化合物1当量に対し、0.5〜3.0当量が好ましく、0.8〜2.0当量がより好ましく、0.9〜1.0当量が更に好ましい。ただし、使用するアルカリ金属化合物が後の工程(2−1)で重合開始剤としても働きうる場合には、アルカリ金属化合物の使用量を1.0当量以下とする必要がある。また、例えばカリウムメトキシドのように式(I)で表される化合物と反応した後にアルコールを生成するアルカリ金属化合物を使用する場合には、工程(1)で生成するアルコールを式(II)で表される化合物の合成後に減圧留去する必要もあり、カリウムメトキシドが残存して工程(2−1)において重合開始剤として働かないようにする必要がある。
【0055】
工程(1)において、式(II)で表される化合物を合成する際には、例えば、適切な溶媒に、式(I)で表される化合物とアルカリ金属又はアルカリ金属化合物とを添加し、混合することにより反応させてもよい。また、式(I)で表される化合物中に、アルカリ金属又はアルカリ金属化合物を適切な溶媒中に混合したものを滴下してもよい。更に、アルカリ金属又はアルカリ金属化合物を適切な溶媒中に混合したものに、式(I)で表される化合物を滴下してもよい。
【0056】
工程(1)において使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。特に、後述する工程(2−1)で重合溶媒として用いる溶媒と同じものを使用することが好ましい。また、前記溶媒は、金属ナトリウム等の脱水剤を用いて蒸留したものが好ましい。溶媒の使用量は、特に限定されないが、前記式(I)で表される化合物の質量に対し、好ましくは1〜50倍量、より好ましくは2〜10倍量、更に好ましくは2〜5倍量である。
【0057】
また、工程(1)の反応は、好ましくは−78〜150℃、より好ましくは0℃〜用いた溶媒の還流温度(例えば、0℃〜THFの還流温度である66℃)で行う。必要に応じて、反応系の冷却や加熱を行ってもよい。
【0058】
なお、工程(1)で使用した式(I)で表される原料アルコールの物質量と工程(1)終了後の反応溶液の全体の重さから、工程(1)終了後の反応溶液(重合開始剤合成後の反応溶液)中の、重合開始剤として働きうる物質の濃度(mmol/g)を求めることができる。すなわち、工程(1)終了後の反応溶液中の、重合開始剤として働きうる物質の濃度は、「使用した原料アルコール(I)の物質量(mmol)/工程(1)終了後の反応溶液全体の重さ(g)」で求めることができる。工程(1)終了後の反応溶液中に式(I)で表される原料アルコールが残っている場合には、その原料アルコールも重合開始剤として働くためである(次工程(2−1)における反応は平衡反応であるため、式(II)で表される化合物が重合開始剤として作用し、生成したポリマー末端アルコキシドが原料アルコール(I)のプロトンを引き抜き、アルコキシド(重合開始剤)として働かせる。)。
【0059】
そのため、工程(1)の終了後の反応溶液中の原料アルコール残量はできるだけ少ないことが望ましい。工程(1)の終了後の反応溶液は、そのまま次の工程(2−1)における重合開始剤溶液として用いることができる。
【0060】
[工程(2−1)]
工程(2−1)は、式(II)で表される化合物(重合開始剤)を、重合溶媒中で、下記式(VI)で表されるアルキレンオキシドと反応させ、下記式(III−I)で表される化合物を合成する工程である。
【化13】
(式中、R
1、R
2、R
3、M及びnは、前記と同じ。)
【0061】
前記アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。中でも、重合しやすいエチレンオキシド及びプロピレンオキシドが好ましい。
【0062】
工程(2−1)で使用する重合溶媒としては、重合開始剤との相溶性が高いという観点から、炭素数4〜10の環状エーテル化合物や、炭素数4〜10の直鎖状又は分岐状のエーテル化合物が好ましい。
【0063】
環状エーテル化合物の具体例としては、フラン、2,3−ジヒドロフラン、2,5−ジヒドロフラン、2,3−ジメチルフラン、2,5−ジメチルフラン、THF、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2,4−ジメチル−1,3−ジオキサン、1,4−ベンゾジオキサン、1,3,5−トリオキサン、オキセパンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
直鎖状又は分岐状のエーテル化合物としては、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
また、前記エーテル化合物以外の有機溶媒を使用することも可能であり、その具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
前記重合溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合する場合、溶媒の組み合わせやその混合比は、特に限定されない。
【0067】
前記重合溶媒の使用量は、特に限定されないが、前記アルキレンオキシドの質量に対し、好ましくは1〜50倍量、より好ましくは2〜30倍量、更に好ましくは3〜20倍量である。重合溶媒は、必要に応じて金属ナトリウム等の脱水剤を用いて蒸留したものを使用することが好ましい。重合溶媒の含水率は、50ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、5ppm以下が更に好ましい。
【0068】
工程(2−1)においては、式(II)で表される化合物を重合溶媒に溶解させた反応系に、アルキレンオキシドを一括添加してもよいし、アルキレンオキシドを重合溶媒に溶解させた溶液を前記反応系に滴下してもよい。重合反応は、好ましくは30〜60℃、より好ましくは40〜60℃、更に好ましくは45〜60℃の温度で実施する。重合反応の進行度はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で追跡し、アルキレンオキシドの転化率に変化がなくなった時点を終点とすることができる。本発明で重合開始剤として用いる式(II)で表される化合物を用いると、重合に際しては高温や高圧等の厳しい反応条件を必要とせず、温和な条件下での重合が可能である。
【0069】
工程(2−1)の終了後の反応溶液は、そのまま次工程(3)における求電子剤との反応に用いることができる。
【0070】
[工程(2−2)]
あるいは、工程(2−1)で得られる式(III−I)で表される化合物を酸性化合物により反応停止させ、これにより得られた下記式(III−II)で表される化合物を調製してから次工程に進んでもよい。このとき、式(III−II)で表される化合物を調製してから精製して次工程に進むとよい。
【化14】
(式中、R
1、R
2、R
3、M及びnは、前記と同じ。)
【0071】
この精製を経る態様では、反応停止後、得られる式(III−II)で表される化合物について、例えば
1H−NMRによる分析を行い、工程(2−1)の重合により所望のとおりに生成物を合成できたかどうか確認することができる。また、重合で生成した低分子化合物を貧溶媒への滴下による晶析により反応系から除去した後に求電子剤との反応を行うため、低分子化合物が求電子剤と反応することを防ぐことができる。
【0072】
反応停止に使用される酸性化合物としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸類、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸類、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、ダウ・ケミカル社製アンバーリスト(登録商標)シリーズ等の固体酸が挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸性化合物の使用量は、式(III−I)で表される化合物1当量に対し、好ましくは1〜10当量、より好ましくは1〜5当量、更に好ましくは1〜2当量である。これらの酸性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の酸性化合物を組み合わせて用いる場合、混合比に関しては特に限定されない。
【0073】
反応停止後、そのまま貧溶媒で晶析を行ってもよいし、良溶媒に置換してから晶析を行ってもよい。その場合の良溶媒の具体例としては、THF、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上の良溶媒を混合して用いる場合、混合比に関しては特に限定されない。溶媒置換後の式(III−II)で表される化合物の濃度は、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは15〜45質量%、更に好ましくは20〜40質量%である。
【0074】
貧溶媒としては、式(III−II)で表される化合物の溶解性が低いものが用いられる。貧溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル等のエーテル類が好ましい。貧溶媒の使用量は、特に限定されないが、式(III−II)で表される化合物の質量に対し、好ましくは5〜100倍量、より好ましくは5〜50倍量、更に好ましくは5〜20倍量である。貧溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、他の溶媒と混合して使用することも可能である。混合することができる溶媒としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、THF、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、DMSO、DMF、アセトニトリル等が挙げられるが、これらに限定されない。貧溶媒として2種以上の溶媒を混合して用いる場合、混合比に関しては特に限定されない。
【0075】
晶析により、式(III−II)で表される化合物の固体を析出させた後、必要に応じて固体の洗浄を行い、精製を行ってもよい。洗浄に用いる溶媒は、前述と同じ貧溶媒であることが望ましいが、洗浄溶媒の使用量も含めて特に限定されない。得られた固体を減圧下で乾燥させることにより、式(III−II)で表される化合物を固体として取り出すことができる。
【0076】
[工程(3)]
工程(3)は、式(III−I)で表される化合物を、必要に応じて塩基性化合物存在下、下記式(IV)で表される求電子剤と反応させ、式(V)で表されるポリアルキレングリコール誘導体を合成する工程である。
【化15】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、M、X及びnは、前記と同じ。)
【0077】
工程(3)では、工程(2−1)で得られた式(III−I)で表される化合物を、精製することなく、そのまま式(IV)で表される求電子剤との反応に使用することが好ましい。これにより、分離精製工程の簡略化に伴うコスト抑制が実現するだけでなく、精製作業に伴う収率の低下(ポリマーの製造設備への付着や貧溶媒への溶解等による収率の低下)を抑えられるといった利点をもたらす。
【0078】
工程(3)では、工程(2−1)終了後の反応液をそのまま使用してもよく、また、濃縮して使用することも可能である。反応液を濃縮する場合、式(III−I)で表される化合物の濃度が、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは15〜45質量%、更に好ましくは20〜40質量%となるまで濃縮する。工程(3)の反応では、工程(2−1)終了後の反応液又はその濃縮液中に、式(IV)で表される求電子剤を添加して反応させることが好ましい。式(IV)で表される求電子剤の反応系への添加方法としては、反応系に一括添加してもよく、適切な溶媒に式(IV)で表される求電子剤を溶解させた溶液を反応系に滴下してもよい。この際に使用する溶媒としては、例えば、工程(2−1)で重合溶媒として例示したものと同じものが挙げられる。式(IV)で表される求電子剤の使用量は、式(III−I)で表される化合物1当量に対し、好ましくは1〜20当量、より好ましくは1〜5当量、更に好ましくは1〜3当量である。
【0079】
工程(3)の反応は、触媒なしに進行するが、更に反応を加速するために塩基性化合物を反応系に添加してもよい。その場合、用いられる塩基性化合物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムtert−ブトキシドが挙げられるが、これらに限定されない。塩基性化合物の添加量は、式(III−I)で表される化合物1当量に対し、好ましくは1〜10当量、より好ましくは1〜5当量、更に好ましくは1〜2当量である。
【0080】
工程(3)の反応は、好ましくは30〜60℃、より好ましくは30〜50℃、更に好ましくは30〜45℃の温度で実施することができる。反応は、
1H−NMRによって追跡し、転化率に変化がなくなった時点を終点とすることができる。
【0081】
工程(3)の反応終了後は、析出した塩をろ過するのみで次の工程に進むことができる。
【0082】
また、工程(3)の反応生成物である式(V)で表される化合物を、次工程に移る前に固体として反応系から取り出してもよい。その場合、工程(3)終了後の反応液を、そのまま又は濃縮後、貧溶媒に滴下して式(V)で表される化合物の晶析を行えばよい。濃縮する際は、式(V)で表される化合物の濃度が、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは15〜45質量%、更に好ましくは20〜40質量%となるように調製する。また、晶析を行う前に、エーテル化反応で生じた塩をろ過により反応液から除去することにより、不純物含量の少ない式(V)で表される化合物を取り出すことができる。
【0083】
[工程(3')]
工程(2−1)後、工程(2−2)を経て式(III−II)で表される化合物を調製した場合は、式(III−II)で表される化合物を適切な溶媒に溶解した後、塩基性化合物存在下、式(IV)で表される求電子剤と反応させ、式(V)で表されるポリアルキレングリコール誘導体を合成する。
【化16】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、X及びnは、前記と同じ。)
【0084】
この場合、前記溶媒としては、工程(2−1)で述べた重合溶媒と同様のものが挙げられる。
【0085】
式(III−II)で表される化合物と求電子剤(IV)との反応時に使用される塩基性化合物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムtert−ブトキシド等が挙げられるが、これらに限定されない。塩基性化合物の添加量は、式(III−II)で表される化合物1当量に対し、好ましくは1〜10当量、より好ましくは1〜5当量、更に好ましくは1〜2当量である。
【0086】
式(III−II)で表される化合物と求電子剤(IV)との反応時の反応温度等の条件は、工程(3)における、式(III−I)で表される化合物と求電子剤(IV)との反応条件と同様である。また、式(III−II)で表される化合物と求電子剤(IV)との反応により得られる式(V)で表される化合物は、次工程に移る前に固体として反応系から取り出して使用することができるが、その方法も、工程(3)における、式(V)で表される化合物を取り出す方法と同様である。
【0087】
[脱保護工程]
式(V)で表される化合物においてR
1及びR
4の少なくとも1つが酸性条件で脱保護可能な保護基を含むアミノ基若しくはヒドロキシ基、又はアセタール基である場合、工程(3)又は(3')で得られた式(V)で表される化合物の脱保護を行ってから工程(4)に進むこともできる。
【0088】
脱保護可能な保護基としては、トリアルキルシリル基、tert−ブチル基、メトキシメチル基、tert−ブチルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
この脱保護を経る様態では、工程(3)又は(3')で得られた式(V)で表される化合物を溶媒中に溶解させ、酸と反応させた後、後処理をすることなく、工程(4)のイオン交換樹脂精製を行うことが好ましい。
【0090】
使用する溶媒としては、式(V)で表される化合物の溶解性が高く、工程(4)のイオン交換樹脂精製にも適用可能であるという観点から炭素数1〜6のアルコール、若しくは水が用いられる。具体例としてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブチルアルコール等が挙げられる。これらのうち、式(V)で表される化合物の溶解性が高く、後工程での溶媒除去が容易な、メタノール、エタノールが好ましい。
【0091】
酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸類、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸類、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、陽イオン交換樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸の使用量は、式(V)で表される化合物1当量に対し、好ましくは0.01〜1,000当量、より好ましくは0.1〜100当量、更に好ましくは1〜10当量である。これらの酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせる場合、混合比は、特に限定されない。
【0092】
酸触媒として陽イオン交換樹脂を用いる場合は、陽イオン交換樹脂を充填したカラムに工程(3)又は(3')で得られた式(V)で表される化合物の溶液を通液する。通液の方法については、カラム内に溶液を掛け流すだけでもよく、カラム内を循環させてもよい。溶液をカラムに循環通液させる場合、少ない樹脂量で効率的に脱保護を進行させることができる。循環にて脱保護を行う際は2回以上循環することが好ましく、より好ましくは6回以上である
【0093】
脱保護に用いる陽イオン交換樹脂の具体例としては、ダウ・ケミカル社製アンバーライト(登録商標)シリーズ(IR120B、IR124B、200CT、252)、ダウ・ケミカル社製アンバージェット(登録商標)シリーズ(1020、1024、1060、1220)、三菱化学(株)製ダイヤイオン(登録商標)シリーズ(例えば、SK104、SK1B、SK110、SK112、PK208、PK212、PK216、PK218、PK220、PK228、UBK08、UBK10、UBK12、UBK510L、UBK530、UBK550)、ダウ・ケミカル(株)製DOWEX(登録商標)シリーズ(50W×2 50-100、50W×2 100-200、50W×4 100-200、50W×8 50-100、50W×8 100-200、50W×8 200-400、HCR-S、HCR-W2(H))等のスチレン系の強酸性陽イオン交換樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、式(V)で表される化合物及びその脱保護体を吸着しにくいという観点から、ゲル型又は架橋度が10以上のポーラス型の強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。これらのうち、ゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂の具体例としては、ダウ・ケミカル社製アンバーライト(登録商標)シリーズ(IR120B、IR124B)、ダウ・ケミカル社製アンバージェット(登録商標)シリーズ(1020、1024、1060、1220)、三菱化学(株)製ダイヤイオン(登録商標)シリーズ(SK104、SK1B、SK110、SK112、UBK08、UBK10、UBK12、UBK510L、UBK530、UBK550)が挙げられる。架橋度が10以上のポーラス型の強酸性陽イオン交換樹脂の具体例としては、ダウ・ケミカル社製アンバーライト(登録商標)シリーズ(200CT)、三菱化学(株)製ダイヤイオン(登録商標)シリーズ(PK220、PK228)が挙げられる。
【0094】
Na型の陽イオン交換樹脂を用いる場合、事前に陽イオン交換樹脂を酸性化合物で処理してから使用する必要がある。この場合、用いられる酸性化合物としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸類が挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸性化合物の使用量は、陽イオン交換樹脂の質量に対し、好ましくは1〜15倍量、より好ましくは1〜10倍量、更に好ましくは1〜8倍量である。陽イオン交換樹脂を酸性化合物で処理した後、水洗によって樹脂中から酸性化合物を分離し、必要に応じてメタノールやエタノール等の水溶性有機溶媒で水を分離してから使用する。そのため、工程簡略化のためには、予め再生されたH型の陽イオン交換樹脂を用いることが好ましい。
【0095】
脱保護反応は、0℃から用いた溶媒の還流温度までの範囲で行い、好ましくは20℃〜40℃で行う。
【0096】
[工程(4)]
工程(4)は、工程(3)又は(3')で得られた反応液から、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを用いて水溶性不純物を除去し、目的とするポリアルキレングリコール誘導体を精製する工程である。具体的には、工程(3)又は(3')で生じた水溶性不純物、すなわち、副生成物と塩基性化合物と必要に応じて脱保護に用いた酸とをイオン交換樹脂に吸着させ、除去する工程である。なお、副生成物は、式(IV)で表される求電子剤の脱離基に由来するアニオンと、式(III−I)で表される化合物や塩基性化合物に由来するカチオンとから形成される塩である。
【0097】
工程(4)で使用する陽イオン交換樹脂の具体例としては、ダウ・ケミカル社製アンバーライトシリーズ(IR120B、IR124B、200CT、252)、ダウ・ケミカル社製アンバージェットシリーズ(1020、1024、1060、1220)、三菱化学(株)製ダイヤイオンシリーズ(例えば、SK104、SK1B、SK110、SK112、PK208、PK212、PK216、PK218、PK220、PK228、UBK08、UBK10、UBK12、UBK510L、UBK530、UBK550)、ダウ・ケミカル(株)製DOWEXシリーズ(50W×2 50-100、50W×2 100-200、50W×4 100-200、50W×8 50-100、50W×8 100-200、50W×8 200-400、HCR-S、HCR-W2(H))等のスチレン系の強酸性陽イオン交換樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、式(V)で表される化合物及びその脱保護体を吸着しにくいという観点から、ゲル型又は架橋度が10以上のポーラス型の強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。
【0098】
前記陽イオン交換樹脂の使用量は、式(V)で表される化合物の質量に対し、好ましくは0.1〜50倍量、より好ましくは0.2〜5倍量、更に好ましくは0.2〜1倍量である。
【0099】
Na型の陽イオン交換樹脂を用いる場合、事前に陽イオン交換樹脂を酸性化合物で処理してから使用する必要がある。この場合、用いられる酸性化合物としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸類が挙げられるが、これらに限定されない。前記酸性化合物の使用量は、陽イオン交換樹脂の質量に対し、好ましくは1〜15倍量、より好ましくは1〜10倍量、更に好ましくは1〜8倍量である。陽イオン交換樹脂を酸性化合物で処理した後、水洗によって樹脂中から酸性化合物を分離し、必要に応じてメタノールやエタノール等の水溶性有機溶媒で水を分離してから使用する。そのため、工程簡略化のためには、予め再生されたH型の陽イオン交換樹脂を用いることが好ましい。
【0100】
工程(4)で使用する陰イオン交換樹脂の具体例としては、ダウ・ケミカル社製アンバーライトシリーズ(IRA400J、IRA402BL、IRA404J、IRA900J、IRA904、IRA458RF、IRA958、IRA410J、IRA411、IRA910CT)、ダウ・ケミカル社製アンバージェットシリーズ(4400、4002、4010)、三菱化学(株)製ダイヤイオンシリーズ(SA10A、SA12A、SA11A、NSA100、UBA120、PA306S、PA308、PA316、PA316、PA318L、HPA25、SA20A、SA21A、PA408、PA412、PA418)、ダウ・ケミカル(株)製DOWEXシリーズ(1×2 50-100、1×2 100-200、1×4 20-50、1×4 50-100、1×4 100-200、1×8 50-100、1×8 100-200、1×8 200-400、SBR-P C、MARATHON A、MARATHON MSA、MONOSPHERE 550A、22、MSA-2、MARATHON A2)等のスチレン系の強塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。陰イオン交換樹脂の使用量は、式(V)で表される化合物の質量の、好ましくは0.1〜50倍量、より好ましくは0.2〜5倍量、更に好ましくは0.5〜2倍量である。
【0101】
Cl型の陰イオン交換樹脂を用いる場合、事前に陰イオン交換樹脂を塩基性化合物で処理してから使用する必要がある。この場合、用いられる塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基類等が挙げられるが、これらに限定されない。前記塩基性化合物の使用量は、陰イオン交換樹脂の質量に対し、好ましくは1〜15倍量、より好ましくは1〜10倍量、更に好ましくは1〜8倍量である。陰イオン交換樹脂を塩基性化合物で処理した後、水洗によって樹脂中から塩基性化合物を分離し、必要に応じてメタノールやエタノール等の水溶性有機溶媒で水を分離してから使用する。そのため、工程簡略化のためには、予め再生されたOH型の陰イオン交換樹脂を用いることが好ましい。
【0102】
工程(3)又は(3')で得られた反応生成物をイオン交換樹脂と反応させる方法としては、イオン交換樹脂を充填したカラムに生成物溶液を流す方法、及び生成物溶液にイオン交換樹脂を添加して攪拌混合する方法が挙げられる。好ましくはイオン交換樹脂を充填したカラムに生成物溶液を通液する方法で、通液の方法については、カラム内に溶液を掛け流すだけでもよく、カラム内を循環させてもよい。効率よく水溶性不純物を除去するという観点から、循環通液させる方法がより好ましい。循環にてイオン交換樹脂精製を行う際は、2回以上循環することが好ましく、より好ましくは6回以上である。陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂は、それぞれ別のカラムに充填してもよく、混合して同一のカラムに充填してもよい。
【0103】
また、式(V)で表される化合物のR
1及びR
4の少なくとも1つが酸性条件で脱保護可能な保護基を含むアミノ基若しくはヒドロキシ基、又はアセタール基である場合、陽イオン交換樹脂を充填したカラムの下流に陰イオン交換樹脂を充填したカラムをセットして、工程(3)又は(3')で得られた式(V)で表される化合物の溶液を通液することで脱保護と工程(4)の精製工程を同時に行うことができる。
【0104】
使用する溶媒としては、式(V)で表される化合物の溶解性が高く、イオン交換樹脂精製に適しているという観点から炭素数1〜6のアルコール、又は水が用いられる。前記アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブチルアルコール等が挙げられる。これらのうち、特に式(V)で表される化合物との溶解性が高く、後工程での溶媒除去が容易な、メタノール、エタノールが好ましい。
【0105】
イオン交換樹脂処理後の溶液は、そのまま貧溶媒で晶析を行ってもよいし、他の良溶媒に置換してから晶析を行ってもよい。前記良溶媒の具体例としては、THF、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、DMSO、NDMF、アセトニトリル等が挙げられるが、これらに限定されない。前記溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合して用いる場合、混合比に関しては特に限定されない。溶媒置換後の式(V)で表される化合物の濃度は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
【0106】
貧溶媒としては、式(V)で表される化合物の溶解性が低いものが用いられる。貧溶媒の具体例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル等のエーテル類が好適に用いられる。貧溶媒の使用量は、特に限定されないが、式(V)で表される化合物の質量に対し、好ましくは5〜100倍量、より好ましくは5〜50倍量、更に好ましくは5〜20倍量である。貧溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、他の溶媒と混合して使用することも可能である。混合することができる他の溶媒としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、THF、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、DMSO、DMF、アセトニトリル等が挙げられるが、これらに限定されない。貧溶媒として2種以上を混合して用いる場合、混合比に関しては特に限定されない。
【0107】
晶析により、式(V)で表される化合物の固体を析出させた後、必要に応じて固体の洗浄を行い、精製を行ってもよい。洗浄に用いる溶媒は、前述したものと同じ貧溶媒であることが望ましいが、洗浄溶媒の使用量も含めて特に限定されない。得られた固体を減圧下で乾燥させることにより、式(V)で表される化合物を固体として取り出すことができる。
【0108】
なお、工程(4)の操作において水を溶媒として用いた場合、その水溶液を凍結乾燥させることにより式(V)で表される化合物を取り出してもよい。ただし、凍結乾燥を行うためには特殊な設備が必要であり、完全に水を除去するには長時間を必要とするため、工業的な規模で製造を行うことが難しい場合がある。本発明では、好ましくは前述したように晶析を行うことにより、設備や工程の簡略化を実現することができる。
【0109】
本発明の方法で得られるポリアルキレングリコール誘導体中の重金属不純物含有量は、100ppb以下が好ましく、10ppb以下がより好ましい。重金属不純物含有量測定は、高周波誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)を用いて行うのが一般的だが、この測定方法に限定されない。ICP−MSにより分析を行う際は、ポリマーサンプルを溶媒で希釈して測定を行う。用いる溶媒は、ポリマーが溶解し、かつ金属を含まないものであることが必須である。超純水や電子工業用N−メチル−2−ピロリドン等が特に好ましいが、これらに限定されない。希釈率は、特に限定されないが、好ましくは10〜100,000倍、更に好ましくは50〜1,000倍である。
【0110】
本発明の方法で得られるポリアルキレングリコール誘導体中の、工程(1)又は工程(3)若しくは(3')で使用したアルカリ金属又はアルカリ金属化合物由来のアルカリ金属イオンの含量は、50ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましい。ここで、アルカリ金属イオン含量は、コンパクトナトリウムイオンメーター、コンパクトカリウムイオンメーター((株)堀場製作所製)等の市販のアルカリ金属イオンメーターを用いて測定される。工程(3)又は(3')で得られる反応液中のアルカリ金属イオン含量は2,000ppm以上であり、本発明の精製方法(工程(4))によって、少ないイオン交換樹脂にて効率よくアルカリ金属イオンを除去することができる。
【実施例】
【0111】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPCによりポリエチレングリコール換算値として測定したものである。GPCの測定条件は、以下のとおりである。
カラム:PL−gel MIXED−D 2本
移動相:DMF(臭化リチウム0.01mol/L溶液)
カラムオーブン温度:65℃
サンプル濃度:0.20質量%
サンプル注入量:100μL
流量:0.7mL/min
【0112】
[1]求電子剤の合成
[合成例1]求電子剤(IVa)の合成
(1)中間体(IVa−1)の合成
【化17】
【0113】
10L四口フラスコに、3−アミノ−1−プロパノール237.6g、トリエチルアミン1183.0g及びトルエン711.8gを仕込み、窒素雰囲気下でトリエチルシリルトリフルオロメタンスルホナート(TESOTf)3,008.9gを滴下した。80℃で16時間攪拌した後、反応液を分液ロートに移して、下層を分離した。その後、上層を冷水と飽和食塩水で洗浄し、NaSO
4、活性炭及び酸化アルミニウムを加えて1時間攪拌した。セライトろ過を行った後、減圧蒸留により中間体(IVa−1)を1,225.8g(収率92%)得た。
中間体(IVa−1)
無色液体
沸点:152℃/30Pa
1H-NMR(500MHz, CDCl
3): δ= 0.60(18H, q), 0.94(27H, t), 1.62(2H, m), 2.83(2H, m), 3.54(2H, t)
【0114】
(2)中間体(IVa−2)の合成
【化18】
【0115】
5Lフラスコに、シリル保護体(IVa−1)1,254.7g、メタノール1,000.0g及び28質量%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液28.9gを仕込み、60℃で5時間攪拌した。その後、トリエチルメトキシシランを減圧留去し、メタノール850.0gを入れて再び60℃で攪拌した。同様の操作を繰り返し、反応が完結した後炭酸水素ナトリウムでクエンチし、トルエンに溶媒置換した後、塩をろ過で取り除いた。その後、活性炭及び酸化アルミニウムを加えて1時間攪拌し、セライトろ過を行った後、トルエンを減圧留去して中間体(IVa−2)を893.3g(粗収率99%)得た。この粗生成物は中間体として十分な純度を有しており、このまま次の工程に用いた。
中間体(IVa−2)
無色液体
1H-NMR(500MHz, CDCl
3): δ= 0.60(12H, q), 0.93(18H, t), 1.67(2H, m), 2.85(2H, m), 3.59(2H, m)
【0116】
(3)求電子剤(IVa)の合成
【化19】
【0117】
10L四口フラスコに、中間体(IVa−2)760.7g、トリエチルアミン761g及びアセトニトリル880.0gを仕込み、窒素雰囲気下で、パラトルエンスルホニルクロリド(TsCl)717.2gをアセトニトリル1,440.0gに溶解させた溶液を氷冷しながら滴下した。氷冷下で3.5時間攪拌した後、水でクエンチし、反応液を分液ロートに移して、トルエンで抽出した。その後有機層を水と飽和食塩水で洗浄し、NaSO
4で乾燥した後、溶媒を減圧留去した。その後、得られた粗生成物をヘキサンに溶解し、活性炭、酸化アルミニウムを加えて1時間攪拌した後、セライトろ過し、ヘキサンを減圧留去して求電子剤(IVa)を1,067.1g(粗収率93%)得た。この粗生成物は十分な純度を有しており、このまま次の工程に用いた。
求電子剤(IVa)
薄黄色液体
1H-NMR(500MHz, CDCl
3): δ= 0.54(12H, q), 0.89(18H, t), 1.68(2H, m), 2.45(3H, s), 2.71(2H, m), 3.98(2H, t)
【0118】
[2]重合開始剤の合成
[実施例1]重合開始剤(IIa)の合成
【化20】
【0119】
(1)ジエチレングリコールモノメチルエーテルの蒸留
500mL二口ナスフラスコに、攪拌子を投入し、精留管、温度計、リービッヒ冷却器、分留管、50mLナスフラスコ(2個)及び300mL二口フラスコ(1個)を接続し、蒸留装置を組み立てた。装置内の真空度を10Pa以下に保った後、オイルバス及びヒートガンを使って装置内を加温し、系内の水分を除去した。その後、窒素気流下でジエチレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業(株)製)を500mL二口ナスフラスコ内に投入し、減圧蒸留を行った。カールフィッシャー水分計によって蒸留後の含水率を測定した結果、水分は1ppm以下であった。
【0120】
(2)テトラヒドロフラン(THF)の蒸留
3L二口ナスフラスコ中に、攪拌子を投入し、精留管、温度計、ジムロート冷却器、分留管、200mLナスフラスコ及び2L二口フラスコを接続し、蒸留装置を組み立てた。装置内の真空度を10Pa以下に保った後、オイルバス及びヒートガンを使って装置内を加温し、系内の水分を除去した。その後、窒素気流下で無水THF(関東化学(株)製)、金属ナトリウム片(関東化学(株)製)、ベンゾフェノン(東京化成工業(株)製)を3L二口ナスフラスコ内に投入し、常圧下で5時間還流を行った。3L二口ナスフラスコ内が青紫色になったことを確認後、2L二口フラスコ中に蒸留THFを取り出した。カールフィッシャー水分計によって蒸留後の含水率を測定した結果、水分は1ppm以下であった。
【0121】
(3)重合開始剤(IIa)の合成
窒素雰囲気下のグローブボックス内で、水素化カリウム15.98g(関東化学(株)製、ミネラルオイル状)を秤量し、温度計、滴下ロート及びジムロート冷却器を接続した500mL四口フラスコに、窒素気流下で投入した。ヘキサン洗浄によりミネラルオイルを分離後、約2時間真空乾燥し、6.193g(154mmol)の水素化カリウムを得た。フラスコ内にシリンジで蒸留THF127.65gを添加した。滴下ロートに蒸留ジエチレングリコールモノメチルエーテル18.737g(156mmol)を入れ、少量ずつ滴下した。熟成を2時間実施し、重合開始剤(IIa)のTHF溶液148.62g(1.05mmol/g)を得た。このとき、塩の析出及び白濁は観測されなかった。前記反応により合成された重合開始剤(IIa)と開始剤原料アルコールの物質量比率は、99:1であった。
【0122】
(4)重合開始剤(IIa)の別法による合成
【化21】
【0123】
グローブボックス内で、ナフタレン128.8gを秤量し、200mL二口フラスコに入れ、2時間真空乾燥した。その後、真空乾燥したナフタレン128.3gを1L四口フラスコに移し、蒸留THF643.5gに溶解させた後、カリウム37.3gを添加し、グローブボックス内で7時間攪拌して、カリウムナフタレニドのTHF溶液を調製した(1.18mmol/g)。その後、1L四口フラスコに前記カリウムナフタレニドのTHF溶液802.5gを移し、グローブボックス内で、滴下ロートに入れた蒸留ジエチレングリコールモノメチルエーテル119.0gを氷冷しながら滴下した。その後、THF及びナフタレンを減圧留去し、得られた残渣196.8gを蒸留THFに溶解し、重合開始剤(IIa)のTHF溶液965.1g(0.98mmol/g)を得た。このとき、塩の析出及び白濁は観測されなかった。
【0124】
[実施例2]重合開始剤(IIb)の合成
(1)中間体(Ib)の合成
【化22】
【0125】
100mL三口フラスコに、エチレングリコール6.78g、N−メチルピロリドン(NMP)10g及びカリウムtert−ブトキシド(t−BuOK)1.35gを仕込み、30分攪拌後、求電子剤(IVa)5.0gをNMP15gに溶かした溶液を常温にて滴下した。60℃まで昇温し、5時間攪拌した後、炭酸水素ナトリウム0.18gを用いて反応停止した。続いてジフェニルエーテルに溶媒置換した後、析出した塩をろ過で取り除いた。その後減圧蒸留して、中間体(Ib)を3.16g(収率65.7%)得た。蒸留後の含水率を測定した結果、水分は1ppm以下であった。
中間体(Ib)
無色液体
沸点:118−122℃/10Pa
1H-NMR(500MHz, CDCl
3): δ= 0.60(12H, q), 0.93(18H, t), 1.68(2H, m), 1.96(1H, bs), 2.82(2H, m), 3.40(2H, t), 3.50(2H, m), 3.73(2H, m)
【0126】
(2)重合開始剤(IIb)の合成
【化23】
【0127】
窒素雰囲気下のグローブボックス内で、50mL三口フラスコに水素化カリウム(関東化学(株)製、ミネラルオイル状)を投入し、ヘキサン洗浄によりミネラルオイルを分離後、約2時間真空乾燥し、0.50g(12.5mmol)の水素化カリウムを得た。フラスコ内にシリンジで蒸留THFを7.71g添加し、中間体(Ib)4.44g(12.8mmol)を常温で滴下した。常温で1時間攪拌した後、50℃で2時間攪拌を行い、式(IIb)で表される化合物のTHF溶液12.40g(1.02mmol/g)を得た。このとき塩の析出及び白濁は観測されなかった。前記反応により合成された重合開始剤(IIb)と開始剤原料アルコール(Ib)の物質量比率は、98:2であった。
【0128】
(3)重合開始剤(IIb)の別法による合成
【化24】
【0129】
窒素雰囲気下のグローブボックス内で、ナフタレン2.02g及びカリウム0.68gを秤量し、100mL三口フラスコに入れ、1時間真空乾燥した。その後窒素雰囲気下に戻し、フラスコ内にシリンジで蒸留THF19.65gを添加した。1時間攪拌し、カリウムナフタレニドのTHF溶液を調製した(0.71mmol/g)。一方、窒素雰囲気下、50mL三口フラスコに、中間体(Ib)1.96g(5.64mmol)をシリンジで入れた。そこに、前記カリウムナフタレニドのTHF溶液を常温で7.85g滴下した。熟成を1時間実施し、重合開始剤(IIb)のTHF溶液9.77g(0.58mmol/g)を得た。このとき塩の析出及び白濁は観測されなかった。前記反応により合成された重合開始剤(IIb)と開始剤原料アルコール(Ib)の物質量比率は、98:2であった。
【0130】
[3]ポリマーの合成
[実施例3]ポリマー(Va)の合成
【化25】
【0131】
乾燥させた200mL三口フラスコに、メトキシポリエチレングリコール(Aldrich社製)10gを入れ、THF40gに溶解した。窒素気流下で求電子剤(IVa)0.793g及びt−BuOKのTHF溶液(1mol/L)0.173mLを添加し、40℃に保ちながら5時間熟成を行った。反応終了後、40℃のままろ過を行い、析出した塩を取り除いた。攪拌子の入った300mLビーカーにヘキサン150gを投入し、その中にろ液を滴下後、10分間熟成を行った。生成した白色粉末をろ過後、粉末を元のビーカーに戻し、ヘキサン100gで10分間洗浄を行い、更に同様の洗浄操作を1回実施した。得られた白色粉末を真空乾燥した結果、7.12gのポリマー(Va)を得た。
【0132】
なお、
1H−NMRより、得られたポリマーには、反応副生成物であるp−トルエンスルホン酸カリウムが、該ポリマーに対し等モル量以上含まれていることが確認された。また、コンパクトカリウムイオンメーター((株)堀場製作所製)より、2,000ppm以上のカリウムイオンを含んでいることがわかった。
【0133】
[実施例4]ポリマー(Va)の別法による合成
(1)ポリマー(III−Ia)の合成
【化26】
【0134】
温度計、滴下ロート、ジムロート冷却器を接続した2L四口フラスコ中に攪拌子を投入した。装置内の真空度を10Pa以下に保った後、オイルバス及びヒートガンを使って装置内を加温し、系内の水分を除去した。その後、窒素気流下で2L四口フラスコ内に、重合開始剤(IIa)のTHF溶液4.59g(0.98mmol/g)と蒸留THF420gを添加した。
【0135】
滴下ロートにエチレンオキシド63g及び蒸留THF120gを投入し、2L四口フラスコ内に少しずつ滴下した。2L四口フラスコ内の温度が安定したことを確認後、45℃に温度を保ったオイルバスに2L四口フラスコを浸し、6時間熟成を行った。反応終了後、オイルバスを外し、反応系を室温まで冷却し、ポリマー(III−Ia)を含む溶液を得た。
【0136】
(2)ポリマー(Va)の合成
【化27】
【0137】
前記ポリマー(III−Ia)を含む溶液に、求電子剤(IVa)6.2g及びt−BuOKのTHF溶液(1mol/L)9mLを添加し、40℃で5時間熟成を行った。反応終了後、40℃のままろ過を行い、析出した塩を取り除いた。攪拌子の入った2,000mLビーカーにヘキサン1,260gを入れ、滴下ロートを使って得られたろ液を5分かけて滴下した後、10分間熟成を行った。生成した白色粉末をろ別後、粉末を元のビーカーに戻し、ヘキサン440gで10分間洗浄を行い、更に同様の洗浄操作を1回実施した。
得られた白色粉末を真空乾燥した結果、57.2gのポリマー(Va)を得た。GPC測定を行った結果、Mw=12,200、Mw/Mn=1.03であった。
【0138】
なお、
1H−NMRより、得られたポリマーには、反応副生成物であるp−トルエンスルホン酸カリウムが、該ポリマーに対し等モル量以上含まれていることが確認された。また、コンパクトカリウムイオンメーター((株)堀場製作所製)より、2,000ppm以上のカリウムイオンを含んでいることがわかった。
【0139】
[実施例5]開始剤(IIb)を使用したポリマー(Vb)の合成
(1)ポリマー(III−Ib)の合成
【化28】
【0140】
温度計、滴下ロート、ジムロート冷却器を接続した500mL四口フラスコ中に攪拌子を投入した。装置内の真空度を10Pa以下に保った後、オイルバス及びヒートガンを使って装置内を加温し、系内の水分を除去した。その後、窒素気流下で2L四口フラスコ内に重合開始剤(IIb)のTHF溶液1.69g(1.02mmol/g)と蒸留THF140gを添加した。滴下ロートにエチレンオキシド20gと蒸留THF40gを投入し、500mL四口フラスコ内に少しずつ滴下した。500mL四口フラスコ内の温度が安定したことを確認後、45〜50℃で8時間熟成を行った。
【0141】
反応終了後、オイルバスを外し、反応系を室温まで冷却し、ポリマー(III−Ib)を含む溶液を得た。得られた溶液を少量サンプリングし、酢酸で反応停止してGPC測定を行った結果、Mw=8,000、Mw/Mn=1.04であった。
【0142】
(2)ポリマー(Vb)の合成
【化29】
【0143】
前記工程で得られたポリマー(III−Ib)を含む溶液中に、2−メトキシエチルp−トルエンスルホネートを2.05g、t−BuOK0.50gを添加し、40℃で5時間攪拌した。反応液中の塩をろ過により取り除いた後、25質量%まで濃縮し、濃縮液を滴下ロートに移した。攪拌子の入った500mLビーカー中ヘキサンを200g投入し、その中に濃縮液を10分かけて滴下後、10分間熟成を行った。生成した白色粉末をろ過後、粉末を元のビーカーに戻し、ヘキサン100gで10分間洗浄を行い、更に同様の洗浄操作を1回実施した。
得られた白色粉末を真空乾燥した結果、18.6gのポリマー(Vb)を得た。GPC測定を行った結果、Mw=8,000、Mw/Mn=1.05であった。
【0144】
なお、
1H−NMRより、得られたポリマーには、反応副生成物であるp−トルエンスルホン酸カリウムが、該ポリマーに対し等モル量以上含まれていることが確認された。また、コンパクトカリウムイオンメーター((株)堀場製作所製)より、2,000ppm以上のカリウムイオンを含んでいることがわかった。
【0145】
[4]ポリマーのイオン交換樹脂精製による脱保護及び精製
[実施例6]ポリアルキレングリコール誘導体(Va−2)の調製
【化30】
【0146】
陽イオン交換樹脂アンバーライト200CT(ダウ・ケミカル社製)20gをカラムに充填し、メタノール200gで洗浄を行った。100mL二口ナスフラスコ中で、ポリマー(Va)10gをメタノール40gに溶解し、得られたポリマー溶液を前述のカラム内にポンプを使って移送した。カラムから出てきたポリマー溶液を前述の二口ナスフラスコに戻し、3時間循環を行った。その後、ポリマー溶液をナスフラスコに抜出し、メタノール20gでカラム内の樹脂を洗浄してポリマーの回収を行った。
【0147】
次に、陰イオン交換樹脂アンバーライトIRA900(ダウ・ケミカル社製)40gをカラムに充填し、メタノール400gで洗浄を行った。先の工程で得られたポリマー溶液をポンプを使ってカラム内に移送し、カラムから出てきたポリマー溶液を再度同ナスフラスコに戻すことで循環を行った。3時間循環させた後、ポリマー溶液をナスフラスコに抜出し、メタノール40gでカラム内の樹脂を洗浄してポリマーの回収を行った。得られた反応液を濃縮してメタノールを飛ばした後、トルエン67gに溶解し、ヘキサン150gの入った300mLビーカーに滴下した。生成した白色粉末をろ過後、粉末を元のビーカーに戻し、ヘキサン75gで10分間洗浄を行い、更に同様の洗浄操作を1回実施した。
【0148】
得られた白色粉末を真空乾燥し、7.4gのポリアルキレングリコール誘導体(Va−2)を得た。GPC測定を行った結果、Mw=12,500、Mw/Mn=1.03であった。なお、得られたポリマーは、コンパクトカリウムイオンメーターよりカリウムイオン含量が0ppmであることがわかった。すわなち、副生成物及び塩基性化合物を除去できていることが確認された。
【0149】
[実施例7]ポリアルキレングリコール誘導体(Va−2)の別法による調製
【化31】
【0150】
200mL三口フラスコに、ポリマー(Va)8.0g、メタノール32g及び酢酸0.2gを投入し、35℃で3時間攪拌した。陽イオン交換樹脂アンバーライト200CT4.0gと陰イオン交換樹脂アンバーライトIRA900 8.0gをカラムに充填し、メタノール170gで洗浄した後、前述の反応溶液をカラム内にポンプを使って移送した。カラムから出てきたポリマー溶液を三口フラスコに戻し、3時間循環した後、ナスフラスコに抜出し、カラム内の樹脂をメタノール25gで洗浄した。得られた反応液を濃縮してメタノールを飛ばした後、トルエン54gに溶解し、ヘキサン120gの入った300mLビーカーに滴下した。生成した白色粉末をろ過後、粉末を元のビーカーに戻し、ヘキサン60gで10分間洗浄を行い、更に同様の洗浄操作を1回実施した。
【0151】
得られた白色粉末を真空乾燥した結果、7.2gのポリアルキレングリコール誘導体(Va−2)を得た。GPC測定を行った結果、Mw=12,500、Mw/Mn=1.03であった。なお、得られたポリマーは、コンパクトカリウムイオンメーターよりカリウムイオン含量が0ppmであることがわかった。すわなち、副生成物及び塩基性化合物を除去できていることが確認された。また、
1H−NMR測定より、酢酸の残留が見られないことが確認された。
【0152】
[5]ポリマーのイオン交換樹脂精製による脱保護及び精製
[比較例1]吸着処理によるポリマー(Va−2)の合成
100mL三口フラスコに、ポリマー(Va)2.5g、メタノール10g及び酢酸64mgを投入し、35℃で3時間攪拌した後、カリウムメトキシドを113mg添加して更に1.5時間攪拌した。得られた反応液を濃縮してメタノールを飛ばした後、トルエン23gに溶解し、吸着剤であるKW2000(協和化学工業(株)製)を加えて2時間攪拌した後、ろ過によりKW2000を除いた。得られたろ液をヘキサン38gで晶出し、生成した白色粉末をろ過後、粉末を元のビーカーに戻し、ヘキサン19gで10分間洗浄を行い、更に同様の洗浄操作を1回実施した。
【0153】
得られた白色粉末を真空乾燥した結果、1.8gのポリマー(Va−2)を得た。GPC測定を行った結果、Mw=12,400、Mw/Mn=1.03であった。なお、得られたポリマーはコンパクトカリウムイオンメーターよりカリウムイオン含量が63ppmであることがわかった。
【0154】
コンパクトカリウムイオンメーターを用いたカリウムイオン含量の分析結果から、比較例1では水溶性不純物の除去が不十分であるのに対し、実施例6及び7では水溶性不純物を完全に除去できることがわかった。