(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第4の筺体に対して気流の風上側に第3のケミカルフィルタを設置して、前記第4の筺体の内部を、ウェーハ暴露法によって測定される有機物の濃度が0.05ng/cm2以下となる雰囲気とした、請求項2に記載のSPV測定装置。
【背景技術】
【0002】
p型シリコンウェーハがFeで汚染されていると、該ウェーハから作製したデバイスの特性に悪影響を及ぼす。そのため、p型シリコンウェーハ中のFe濃度を簡易的に評価する手法が開発されてきた。その手法の一つとして、SPV法により少数キャリアの拡散長を電気的に測定し、その測定結果からp型シリコンウェーハ中のFe濃度を求める方法が知られている。
【0003】
SPV法では、特定の波長の光をp型シリコンウェーハに照射し、その時のウェーハの表面起電力(SPV信号)を測定し、ウェーハ中の少数キャリアの拡散長を求める。これを以下、単に「SPV測定」とも称する。SPV法は、他の方法に比べて測定時間が短い上に、非接触かつ非破壊での測定が可能な優れた方法である。
【0004】
SPV測定には、測定モードとして、Standard ModeとUltimate Modeの二種類があることが知られている。SPV法では、互いに異なる複数種類の波長の光を用いて上記SPV測定を行う必要がある。Standard modeは、ある波長を用いたSPV測定を行い、その後順次、別の波長を用いたSPV測定を行う、一般的な方法である。Ultimate modeは、互いに異なる複数種類の波長の光を同期間に照射し、一度にSPV測定を行う、特殊な方法である。
【0005】
特許文献1には、SPV測定をUltimate modeで行い、さらに、Time Between Readings、Time Constant及びNumber of Readingsという3つの測定パラメータを所定の数値範囲とすることによって、Fe濃度の検出下限を低くし、かつ、短時間で測定を行うことを可能とする技術が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなSPV測定を行う際のSPV測定装置の設置環境は、従来、温度:24±2℃、相対湿度:30〜50%、及び清浄度:クラス7(JIS規格)とすることが推奨されており、これは一般的なSPV測定装置のメーカー仕様書に記載されている。従来、SPV測定は、この推奨環境下で行うことが一般的であった。ここで本発明者らは、以下のような問題があることを認識するに至った。
【0008】
すなわち、上記推奨環境下でSPV測定を行う限り、1×10
9/cm
3オーダーや1×10
10/cm
3オーダーのFe濃度の定量においては十分な測定精度が得られていた。しかしながら、1×10
9/cm
3以下のFe濃度の定量においては、上記推奨環境下でSPV測定を行ったとしても、同一ウェーハを複数回SPV測定した際の測定値がばらついてしまう、すなわち十分な測定精度が得られないことが判明した。従来の推奨環境は、温度、湿度及びエアーパーティクル(清浄度)のみを考慮したものであり、これら以外の条件について何ら規定するものではない。また、特許文献1においても、SPV測定装置の設置環境については何ら考慮されていない。
【0009】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、1×10
9/cm
3以下のFe濃度の測定精度を向上させることが可能なSPV法によるp型シリコンウェーハ中のFe濃度測定方法及びSPV測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明者は、温度、湿度及びエアーパーティクル(清浄度)以外の観点から、SPV測定を行う際のSPV測定装置の設置環境を最適化することで、1×10
9/cm
3以下といった低濃度領域でのFe濃度の測定精度を向上させることができないか鋭意検討した。その結果、SPV測定装置の設置環境の有機物濃度がFe濃度の測定精度に影響を及ぼすこと、当該有機物濃度を所定値以下とすることによって、1×10
9/cm
3以下のFe濃度の測定精度を向上させることができることを見出した。
【0011】
上記知見に基づき完成した本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1)p型シリコンウェーハに対して行うSPV法による測定に基づいて、該p型シリコンウェーハ中のFe濃度を求めるにあたり、
前記測定は、ウェーハ暴露法によって測定される有機物の濃度が0.05ng/cm
2以下となる雰囲気下にて行うことを特徴とする、p型シリコンウェーハ中のFe濃度測定方法。
【0012】
(2)SPV法による測定に基づいてp型シリコンウェーハ中のFe濃度を求めるSPV測定装置であって、
SPV測定の際にp型シリコンウェーハを載置する測定ステージと、
前記p型シリコンウェーハに光を照射する光モジュールと、
先端に設けられた静電容量センサーと前記p型シリコンウェーハの表面との間に生じる静電容量を測定するプローブと、
前記プローブで測定された静電容量に対応するSPV信号を増幅し、検出するロックインアンプと、
測定誤差を低減するための校正用キャリブレーションチップと、
前記p型シリコンウェーハ中のFe−Bペアを乖離させる処理をする際に前記p型シリコンウェーハを載置する乖離ステージと、
前記p型シリコンウェーハ中のFe−Bペアを乖離させるためのフラッシュランプと、
前記p型シリコンウェーハを前記測定ステージ及び前記乖離ステージに対して搬送及び搬出するロボットアームと、
前記ロボットアームを制御するロボットコントローラと、
を有し、
前記測定ステージ、前記プローブ及び前記校正用キャリブレーションチップを収容する第1の筺体と、
前記光モジュール及び前記ロックインアンプを収容する第2の筺体と、
前記乖離ステージ及び前記フラッシュランプを収容する第3の筺体と、
前記ロボットアーム及び前記ロボットコントローラを収容する第4の筺体と、
をさらに有し、
前記第1の筺体及び前記第3の筺体に対して気流の風上側にそれぞれ第1のケミカルフィルタ及び第2のケミカルフィルタを設置して、前記第1の筺体及び前記第3の筺体の内部を、ウェーハ暴露法によって測定される有機物の濃度が0.05ng/cm
2以下となる雰囲気としたことを特徴とするSPV測定装置。
【0013】
(3)前記第4の筺体に対して気流の風上側に第3のケミカルフィルタを設置して、前記第4の筺体の内部を、ウェーハ暴露法によって測定される有機物の濃度が0.05ng/cm
2以下となる雰囲気とした、上記(2)に記載のSPV測定装置。
【0014】
(4)前記第1のケミカルフィルタ及び前記第2のケミカルフィルタは、それぞれ前記第1の筺体及び前記第3の筺体の上方に設置される、上記(2)に記載のSPV測定装置。
【0015】
(5)前記第3のケミカルフィルタは前記第4の筺体の上方に設置される、上記(3)に記載のSPV測定装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明のSPV法によるp型シリコンウェーハ中のFe濃度測定方法及びSPV測定装置によれば、1×10
9/cm
3以下のFe濃度の測定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態は、p型シリコンウェーハに対して行うSPV法による測定(SPV測定)に基づいて、該シリコンウェーハ中のFe濃度を求める方法に関する。
【0019】
まず、p型シリコンウェーハの面内の特定箇所での、Fe濃度の求め方を説明する。p型シリコンウェーハ中に存在するFeは、通常の状態ではドーパント(例えばボロン)と静電力で結合して、Fe−Bペアを形成している。一方で、ウェーハに強い光を照射すると、FeがBと乖離した状態となる。SPV測定の結果得られる少数キャリアの拡散長は、SPV測定の際に照射される光によって発生した少数キャリアが消滅するまでに移動できる距離を意味する。この少数キャリアは、例えばウェーハ中のFeの形成するトラップ準位によってトラップされて消滅する。p型シリコンウェーハ中にFeが形成する準位は、通常存在するFe−B(鉄ボロンペア)や、光照射により形成されるFei(格子間鉄)がある。それぞれが作るトラップ準位は、少数キャリアの捕捉しやすさが違う。そのため、上記通常状態よりも上記乖離状態の方が、Feが少数キャリアをトラップしやすく、拡散長は小さくなる。この差を利用して、以下のように、ウェーハ中のFe濃度を求めることができる。
【0020】
まず、通常状態でSPV測定を行い、少数キャリアの拡散長L
FeBを求める。次に、乖離状態でSPV測定を行い、少数キャリアの拡散長L
Feiを求める。Fe濃度[Fe]は、以下の式(1)により算出できる。
[Fe]=C×(1/L
Fei2 − 1/L
FeB2) ・・・(1)
ただし、Cは定数である。
【0021】
そのため、ウェーハ面内の複数の箇所において、通常状態および乖離状態でSPV測定を行うことによって、ウェーハ中のFe濃度のマップを得ることができる。Fe−Bペアを乖離させるための処理は、定法であり特に限定されないが、例えば、フラッシュランプを照射することなどを挙げることができる。
【0022】
次に、
図2を参照して、本発明の一実施形態によるSPV測定装置100について、SPV測定に関連する構成を説明する。SPV測定装置100は、光モジュール10と、プローブ18と、ロックインアンプ20と、測定ステージ22と、を有する。光モジュール10は、光源12と、チョッパー14と、フィルターホイール16と、を有する。
【0023】
光源12は、例えば白色LEDであり、そこから発せられる光が、測定ステージ22上に載置されたp型シリコンウェーハWの表面上に照射されるように光路が設定される。チョッパー14は、複数の孔を円周状に有する円盤部材であり、これが回転することによって、光源12から発せされる光に周波数を与える。すなわち、光が間欠的にp型シリコンウェーハWの表面に照射されることになる。ここで与えられる光の周波数は、「チョッピング周波数(Chopping Frequency:CF)」と定義され、測定パラメータのうちの一つである。CFは、通常500〜3000Hz程度に設定される。
【0024】
フィルターホイール16は、各々の孔16A〜16Dに、互いに異なる波長の光のみを通過させるフィルターが設置されており、これにより、特定の波長の光をp型シリコンウェーハWの表面に照射できる。
【0025】
ここで、
図2には、光モジュール10がアナログ式である場合を示したが、デジタル式でもよい。デジタル式の場合、互いに異なる発光波長を有する複数の単色LEDをモジュール化し、各LEDを点滅させることによって、特定波長の光を特定周波数で、p型シリコンウェーハWの表面に照射できる。
【0026】
照射光の波長は、780〜1004nmの間の複数種類の波長であれば特に限定されないが、2種類の波長の光でSPV測定を行う場合には、780nmと1004nmの組み合わせにすることが例示でき、4種類の波長の光でSPV測定を行う場合には、780nm、914nm、975nm、1004nmの組み合わせにすることが例示できる。
【0027】
照射光の強度(光量)は、Injection Levelとして設定され、測定パラメータのうちの一つである。一般的に、Level2の光量は2×10
12(atoms/cc)であり、Level3の光量は3×10
12(atoms/cc)であり、このどちらかが用いられる。
【0028】
プローブ18は、先端に静電容量センサーを有しており、p型シリコンウェーハW表面とプローブ18との間に生じる静電容量を常に測定する。SPV測定に先立ち、p型シリコンウェーハW表面にはHF処理が施され、表面が正に帯電している。光源12からの光がウェーハWに照射されると、ウェーハ内で少数キャリア(p型なので電子)が発生し、正に帯電している表面へ向かって移動する。電子は表面まで到達すると、表面の正電荷と打ち消し合うため、表面の電位が下がり、その結果、静電容量も下がる。このときの静電容量の差がSPV信号として検出される。p型シリコンウェーハ中のFeにトラップされる電子が多いほど、表面電位は下がらない。
【0029】
ロックインアンプ20は、プローブ18で測定された静電容量に対応するSPV信号を増幅し、検出する。このようにして、SPV信号を得ることができる。測定ステージ22を動かすことによって、p型シリコンウェーハW面内の複数の箇所においてSPV測定を行うことができる。
【0030】
SPV装置としては、公知のSPV装置、例えば、Semilab-SDi LLC製のFAaST330、StrategicDiagnostics社製のSPV-Station-1020を挙げることができる。
【0031】
次に、SPV測定の方法と拡散長の求め方を説明する。まず、第1の波長(例えば780nm)の光を用いてSPV測定を行い、当該光に対応するSPV信号を得る。ここで、照射光の波長に依存する「侵入長」をX軸にとり、「光量/SPV信号」をY軸にとり、測定結果をプロットする。続いて、第1の波長とは異なる第2の波長(例えば1004nm)の光を用いてSPV測定を行い、当該光に対応するSPV信号を得る。そして、同様に測定結果をプロットする。こうして得た2つのプロットを直線で結んだ際のX切片を「拡散長」とすることができる。なお、3種類以上の波長でSPV測定を行う場合には、3つ以上のプロットが得られるため、最小二乗法等の近似処理により、X切片を求める。
【0032】
ここで、測定モードは、Standard ModeとUltimate Modeの二種類がある。Standard modeでは、ある波長を用いたSPV測定を行い、その後順次、別の波長を用いたSPV測定を行うため、上記のプロットが順次得られることになる。これに対し、Ultimate modeでは、互いに異なる複数種類の波長の光を同期間に照射し、一度にSPV測定を行うため、上記のプロットが一度の測定で得られることになる。この場合、波長ごとに光のチョッピング周波数を異ならせることによって、ロックインアンプ20において、周波数が異なるSPV信号が得られるため、各波長に対応したSPV信号を分離して得ることができる。本実施形態において測定モードは特に限定されない。
【0033】
ここで本実施形態では、SPV測定を、ウェーハ暴露法によって測定される有機物の濃度が0.05ng/cm
2以下となる雰囲気下にて行うことが肝要である。すなわち、本実施形態では、SPV測定雰囲気の有機物濃度を少なくすることにより、1×10
9/cm
3以下のFe濃度の測定精度を向上させることができる。
【0034】
このような効果が得られるメカニズムとしては、以下が考えられる。既述のとおり、p型シリコンウェーハのSPV測定では、HF洗浄などの前処理にて表面を正にパッシベーションする必要がある。ここで、表面のパッシベーション(微弱なチャージ)に有機物が付着すると、チャージが弱まり拡散長の測定値にバラツキを生じる。そして、1×10
9/cm
3以下のFe濃度の測定の場合、乖離前後の拡散長の差が小さくなる(L
FeB≒L
Fei)ため、拡散長の測定バラツキの影響が大きくなるのである。よって、有機物を除去することで、拡散長の測定が安定し、Fe−B準位密度の定量性を改善できるものと考えられる。
【0035】
シリコンウェーハ製造工程において、ウェーハ洗浄後にイソプロピルアルコール(IPA)、等のアルコール系の溶剤が使用されることがある。また、特に埋め込み拡散層付きのエピタキシャルウェーハを製造する工程では、フォトレジストを使用するため、レジストの密着性を上げるためのヘキサメチルジシラザン(HMDS)や、現像液として水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、等の有機系の液体が用いられる。さらに、外気には自工場も含めた工場からの排気が原因とした有機物が存在していることがあり、クリーンルームに外気を取り込む際に持ち込まれてしまう。そこで本実施形態では、これらの有機物を除去することにより、1×10
9/cm
3以下のFe濃度の測定精度を向上させる。
【0036】
SPV測定雰囲気の有機物濃度を上記のとおりとする一態様としては、SPV測定装置の設置環境の有機物濃度を上記のとおりとすることが挙げられる。具体的には、SPV測定装置を設置するクリーンルームに、有機物を除去するケミカルフィルタを設置して、クリーンルーム内の雰囲気の有機物濃度を上記のとおりとする。有機物を除去するケミカルフィルタとしては、日本ピュアテックス社製「ピュアライト」PF592FN(MAF)などを例示することができる。クリーンルームに対するケミカルフィルタの設置場所は、クリーンルーム内の雰囲気の有機物濃度を好適に低減する観点から適宜決定すればよい。一般的にクリーンルーム内のエアーは、循環エアーと、圧力損失分を補うための外気取り込みエアーとからなる。循環エアーは、循環ファンによって形成される気流の途中(好適にはクリーンルームの天井)に設置されるHEPAフィルタを通過することで清浄化されて、クリーンルーム内に導入される。外気取り込み口から導入されたエアーも循環ファンへと導かれるように設計されている。そのため、ケミカルフィルタは、外気取り込み口に設置し、さらに循環ファンとHEPAフィルタとの間に設置されることが好ましい。
【0037】
SPV測定雰囲気の有機物濃度を上記のとおりとする他の態様としては、測定に用いるSPV測定装置100の特定空間の雰囲気を、上記有機物濃度とすることが挙げられる。以下、
図1を参照して当該態様について説明する。
【0038】
SPV測定装置100は、複数の筺体によって複数の空間に区分されている。第1の筺体38には、
図2を参照して既に記載した測定ステージ22及びプローブ18と、測定誤差を低減するための校正用キャリブレーションチップ24とが収容される。第2の筺体40には、
図2を参照して既に記載した光モジュール10及びロックインアンプ20が収容される。第3の筺体42には、p型シリコンウェーハ中のFe−Bペアを乖離させる処理をする際にp型シリコンウェーハを載置する乖離ステージ26と、p型シリコンウェーハ中のFe−Bペアを乖離させるためのフラッシュランプ28とが収容される。第4の筺体44には、p型シリコンウェーハを測定ステージ22及び乖離ステージ26に対して搬送及び搬出するロボットアーム30と、このロボットアーム30を制御するロボットコントローラ32と、p型シリコンウェーハのノッチの位置を揃えるためのアライナー34と、が収容される。第5の筺体46には、装置全体を制御するための制御用コンピュータ36が収容される。
【0039】
p型シリコンウェーハWは、以下のとおりに搬送され、SPV測定に供される。まず、図示していないロードポートに収容された複数のp型シリコンウェーハWは、第4の筺体44内に設置されたロボットアーム30に一枚ずつ搭載され、アライナー34でノッチの位置を揃えられる。次に、ロボットアーム30で第1の筺体38内に搬送され、測定ステージ22上に載置される。次に、測定ステージ22上で、通常状態でSPV測定される。次に、ロボットアーム30で第1の筺体38から搬出され、第3の筺体42内に搬送され、乖離ステージ26上に載置される。次に、乖離ステージ26上でフラッシュランプ28で照射されることにより乖離処理されて、乖離状態にされる。次に、ロボットアーム30で第3の筺体42から搬出され、第1の筺体38内に再度搬送され、測定ステージ22上に載置される。次に、測定ステージ22上で、乖離状態でSPV測定される。最後に、ロボットアーム30で第1の筺体38から搬出され、SPV測定装置100からアンロードされロードポートに戻る。
【0040】
ここで、第1の筺体38及び第3の筺体42に対して気流の風上側にそれぞれ第1のケミカルフィルタ48及び第2のケミカルフィルタ50を設置して、第1の筺体38及び第3の筺体42の内部を、ウェーハ暴露法によって測定される有機物の濃度が0.05ng/cm
2以下となる雰囲気とすることが肝要である。SPV測定において、測定を実際に行う第1の筺体38内の雰囲気と乖離処理を行う第3の筺体42内の雰囲気は、最低限コントロールする必要がある。このように、第1及び第3の筺体内の雰囲気を制御することによって、有機物が測定ステージ22や乖離ステージ26に堆積して、ウェーハの裏面に付着するようなことがないために、測定値に悪影響を及ぼさない。第1のケミカルフィルタ48及び第2のケミカルフィルタ50としては、既述のケミカルフィルタを好適に用いることができる。
【0041】
また、測定精度をさらに向上させる観点から、第4の筺体44に対して気流の風上側に第3のケミカルフィルタ52を設置して、第4の筺体44の内部も上記雰囲気とすることが好ましい。これにより、有機物が第4の筺体44内のロボットアーム30に堆積して、ウェーハの裏面に付着するようなことがないために、測定精度がさらに向上する。
【0042】
なお、第1の筺体38、第3の筺体42及び第4の筺体44は、1つの測定空間(測定領域、乖離処理領域、及び搬送領域)を区画するように一体化されていてもよい。
【0043】
また、気流に乱流が発生しにくいことから、第1、第2及び第3のケミカルフィルタ48,50,52は、それぞれ第1、第3及び第4の筺体38,42,44の上方に設置することが好ましい。
【実施例】
【0044】
(発明例)
SPV測定装置(Semilab-SDi LLC製のFAaST330(デジタル型))をクリーンルーム内に設置した。当該クリーンルームには、有機物除去ケミカルフィルタ(日本ピュアテック社製:ピュアライト PF-592FN(MAF))を設置して、有機物濃度を低減させた。表1には、以下の方法で測定した有機物濃度を示した。なお、有機物濃度以外の環境条件としては、メーカー推奨の温度:24±2℃、相対湿度:30〜50%、及び清浄度:クラス7(JIS規格)とした。
【0045】
<有機物濃度測定方法>
有機物濃度の測定は、ウェーハ暴露法にて行った。直径300mmのシリコンウェーハをクリーンルーム雰囲気に5時間暴露した。その後、暴露したウェーハを加熱し、遊離したガス全体の質量をGC−MSによって分析した。得られた分析値(ng)をウェーハ面積(cm
2)あたりに換算して有機物濃度(ng/cm
2)とした。
【0046】
Fe濃度が10
8/cm
3オーダーのp型シリコンウェーハを3枚、Fe濃度が10
9/cm
3前半オーダーのp型シリコンウェーハを3枚、Fe濃度が10
9/cm
3後半〜10
10/cm
3オーダーのp型シリコンウェーハを3枚の計9枚を用意した。表1に記載の有機物濃度の雰囲気下において、上記SPV測定装置を用いて各ウェーハの面内177点におけるFe濃度を3回測定した。測定条件はメーカー推奨条件とし、照射波長は780nmと1004nmとした。
【0047】
<測定精度の評価>
各ウェーハについて、面内177点の平均Fe濃度の3回のばらつき(3回の平均Fe濃度の分散値/3回の平均Fe濃度の平均値×100)をCV値として求めた。
図3に、各ウェーハについて、3回の平均Fe濃度の平均値を横軸に、CV値を縦軸にプロットしたグラフを示す。CV値が10%以下であることが好ましい。
【0048】
また、上記のSPV測定とは別に、Fe濃度が10
8/cm
3オーダーのp型シリコンウェーハのセンター1点を、毎日1回、10日間、繰り返し測定したSPV信号値の変化率を、1回目の測定値を1として
図4に示す。また、SPV信号値の変化を更に詳細に確認するため、発明例と比較例1については、引き続き100日目まで測定し、
図4と同様に、1日目の測定値を1として変化率を
図5に示す。
【0049】
(比較例1)
ケミカルフィルタを設置せず、かつクリーンルームへの外気取り込みが少なく、循環を多くした環境としたこと以外は、発明例と同様の方法で、測定精度の評価を行った。結果を表1及び
図3〜5に示す。
【0050】
(比較例2)
ケミカルフィルタを設置せず、かつクリーンルームへの外気取り込みが多く、循環を少なくした環境としたこと以外は、発明例と同様の方法で、測定精度の評価を行った。結果を表1及び
図3〜5に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
<評価結果>
図3に示すように、雰囲気中に有機物が少ない発明例では1×10
9/cm
3以下のFe濃度であってもCV値が10%以下に抑えられている。これに対し、雰囲気中に有機物が多い比較例1,2では、1×10
9/cm
3以下のFe濃度ではCV値が10%を超えている。このことから、Fe濃度が1×10
9/cm
3以下の場合、ウェーハ暴露法により測定される有機物が0.05ng/cm
2より多い環境では、測定の繰り返し再現性が悪化してしまうことがわかる。
【0053】
また、
図4から、比較例2ではSPV信号の値が測定毎に低下してしまっていること、さらに、
図5からは比較例1における環境においても長期的にはSPV信号の値が少しずつ低下し、100日後においては25%もの低下が見られていることがわかる。一方、発明例ではSPV信号の値の低下は見られない。以上のことから、有機物の多い環境では、同じ測定をしていても測定強度が弱くなってしまうため、測定値の信頼性が低下してしまうと言える。以上より、有機物が多い環境では有機物が表面電荷を打消し、または電気的ノイズとなり、SPV測定の微小な電気信号に影響を与えているものと考えられる。