(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記Gで表されるジアミン由来の2価の基において、ジアミンが、テトラメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、および2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンから選ばれる請求項1〜3のいずれか1項記載のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物。
前記(A)成分の式(1)で示されるシリコーン変性ポリイミド樹脂の重量平均分子量が、10,000〜100,000である請求項1〜4のいずれか1項記載のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、塗布性に優れるとともに、各種金属フレームとの接着性が良好で、防湿性が高く、低弾性、高耐熱性を発揮する硬化物を与えるシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物、この組成物からなる接着剤およびコーティング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリイミド樹脂にシリコーン単位を導入することで、低弾性で、防湿性を有するシリコーン変性ポリイミド樹脂が得られること、およびそのイミド骨格中にアリーレンアルキル部位を導入することで、耐熱性により優れたシリコーン変性ポリイミド樹脂が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. (A)下記式(1)で示されるシリコーン変性ポリイミド樹脂:100質量部、
Ee−Ff−Gg (1)
{式(1)中、E、FおよびGは、ランダムに結合する繰り返し単位であり、Eは、式(2)で示されるジアミノ変性シリコーン由来の2価の基であり、Fは、式(3)で示されるテトラカルボン酸二無水物由来の2価の基であり、Gは、ジアミン由来の2価の基である。ただし、f+e+g=100mol%であり、f/(e+g)のmol比は、0.9〜1.1であり、前記eとgの和を100とすると前記eは30〜90である。
【化1】
(式(2)中、R
Aは、互いに独立して炭素原子数8〜12のアリーレンアルキレン基を表し、R
1およびR
2は、互いに独立して脂肪族不飽和結合を有しない置換または非置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基を表し、R
3およびR
4は、互いに独立して、置換または非置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基を表すが、R
3およびR
4の少なくとも一方は、脂肪族不飽和結合を有し、mは、0〜20、nは、1〜20、かつ、m+n=1〜40を満たす整数を表す。なお、m、nが付された括弧内のシロキサン単位の配列は、ランダム、交互またはブロックのいずれであってもよい。)
−Im−X−Im− (3)
〔式(3)中、Imは、環状イミド構造を端に含む環状の基を表し、Xは、単結合、−O−、−S−、−S(→O)−、−S(=O)
2−、−C(=O)−、−NR
N−(R
Nは、炭素原子数1〜12の1価炭化水素基を表す。)、−CR
B2−(R
Bは、互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜12の1価炭化水素基を表す。)、−R
Arh−(R
Arは、炭素原子数6〜12の2価のアリーレン基を表し、hは、1〜6の整数を表す。hが2以上のとき、R
Arは互いに同一でも異なっていてもよい。)、−R
Arh−(OR
Ar)
i−(R
Arおよびhは、前記と同じ意味を表し、iは、1〜5の整数を表す。)、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルキレン基、炭素原子数5〜12のシクロアルキレン基、および炭素原子数7〜12のアリーレンアルキレン基から選択される2価の基を表す。〕}
(B)硬化剤:0.1〜10質量部、および
(C)溶剤:100〜700質量部
を含むことを特徴とするシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物、
2. 前記R
Aが、下記の基から選ばれる1のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物、
【化2】
(式中、Jは、炭素原子数2〜6のアルキレン基を表し、波線を付した線は結合手を表す。Jに結合している結合手はケイ素原子に結合し、他の結合手はImに結合する。)
3. 前記Imが、下記の基から選ばれる1または2のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物、
【化3】
(式中、波線を付した線は結合手を示す。窒素原子に結合している結合手はEまたはGに結合し、他の結合手はXに結合する。)
4. 前記Gで表されるジアミン由来の2価の基において、ジアミンが、テトラメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4'−ジアミノジシクロヘキシルメタン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、および2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンから選ばれる1〜3のいずれかのシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物、
5. 前記(A)成分の式(1)で示されるシリコーン変性ポリイミド樹脂の重量平均分子量が、10,000〜100,000である1〜4のいずれかのシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物、
6. 前記(B)成分の硬化剤が、熱分解性ラジカル開始剤である1〜5のいずれかのシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物、
7. さらに、(D)嵩密度が1g/mL未満、平均一次粒子径が1〜100nm、かつ、BET比表面積が100〜300m
2/gである疎水性フュームドシリカを(A)成分100質量部に対して3〜50質量部含む1〜6のいずれかのシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物、
8. 25℃における粘度が、100〜100,000mPa・sである1〜7のいずれかのシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物、
9. 1〜8のいずれかのシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物の硬化物、
10. (α)25℃における貯蔵弾性率が100〜1,000MPa、(β)ガラス転移点(Tg)が100〜200℃、(γ)40℃での水蒸気透過度が20g/m
2・day以下、かつ、(δ)5%重量減少温度が420℃以上である9の硬化物、
11. 1〜8のいずれかのシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物からなる接着剤、
12. 1〜8のいずれかのシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物からなるコーティング剤、
13. 下記(i)〜(iii)の工程を含む下記式(4)
【化4】
〔式中、R
1およびR
2は、互いに独立して脂肪族不飽和結合を有しない置換または非置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基を表し、
R
3およびR
4は、互いに独立して、置換または非置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基を表すが、R
3およびR
4の少なくとも一方は、脂肪族不飽和結合を有し、
R
Cは、下記の基から選ばれる2価の基を表し、
【化5】
(式中、Jは、炭素原子数2〜6のアルキレン基を表し、波線を付した線は結合手を表す。Jに結合している結合手はケイ素原子に結合し、他の結合手は
窒素原子に結合する。)
mは、0〜20、nは1〜20、かつ、m+n=1〜40を満たす整数を表す。なお、m、nが付された括弧内のシロキサン単位の配列は、ランダム、交互またはブロックのいずれであってもよい。〕
で示されるジアミノ変性シリコーンの製造方法、
(i)(E)下記式(5)で示される化合物、
【化6】
(式中、R
1およびR
2は、前記と同じ意味を表し、Kは、末端に不飽和基を有する炭素原子数2〜6の1価の脂肪族不飽和炭化水素基である。)
(F)下記式(6)または下記式(7)で示される化合物:前記式(5)で示される化合物に対して2.0〜2.5モル当量、
【化7】
(式中、LGは、互いに独立して脱離基として機能する1価の官能基を表す。)
(G)遷移金属有機錯体触媒:前記式(5)で示される化合物に対して金属の含有量として0.01〜5モル%、
(H)塩基:前記式(5)で示される化合物に対して2.0〜3.0モル当量、および
(I)溶剤:前記式(5)で示される化合物の濃度が0.1〜5.0モル/Lとなる量
の存在下で反応を行い、下記式(8)
【化8】
(式中、R
1、R
2およびR
Cは、前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物を得る工程;
(ii)(J)前記工程(i)で得られた前記式(8)で示される化合物、および
(K)遷移金属触媒:前記式(8)で示される化合物に対して金属の含有量として0.001〜1モル%
の存在下で水素添加反応を行い、下記式(9)
【化9】
(式中、R
1、R
2、およびR
Cは、前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物を得る工程;
(iii)(N)前記工程(ii)で得られた前記式(9)で示される化合物、
(O)−[R
1R
2SiO]−単位からなる環状シロキサン(式中、R
1およびR
2は前記と同じ意味を表す。):前記式(9)で示される化合物に対して−[R
1R
2SiO]−単位が0〜5モル当量となる量、
(P)−[R
3R
4SiO]−単位からなる環状シロキサン(式中、R
3およびR
4は前記と同じ意味を表す。):前記式(9)で示される化合物に対して−[R
3R
4SiO]−単位が0.25〜5モル当量となる量、および
(Q)有機塩基触媒:前記式(9)で示される化合物に対して0.01〜5質量%
の存在下で反応を行い、前記式(4)で示されるジアミノ変性シリコーンを得る工程
14. 前記(ii)工程が、
(J)前記工程(i)で得られた前記式(8)で示される化合物、
(K)遷移金属触媒:前記式(8)で示される化合物に対して金属の含有量として0.001〜1モル%
(L)第3級アルキル
アミン化合物:前記式(8)で示される化合物に対して0モル当量より多く2モル当量未満、および
(M)ギ酸またはギ酸塩:反応混合液がpH7以上となる量
の存在下で、大気圧において行われる13のジアミノ変性シリコーンの製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物は、塗布性に優れているためプライマーとして好適である。
また、上記組成物から得られた硬化物は、低弾性であるとともに、各種金属フレームやエポキシ系封止材に対して良好な接着性を示し、耐水性、防湿性(低水蒸気透過性)および耐熱性に優れている。
したがって、本発明のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物は、電子材料、光学材料および車載機器等の接着剤やコーティング剤として好適に利用でき、特に、高信頼性が必要な半導体デバイスを使用するための接着剤やコーティング剤として好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係るシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物は、(A)シリコーン変性ポリイミド樹脂、(B)硬化剤、および(C)溶剤を含むものである。
【0011】
(1)(A)成分
(A)成分のシリコーン変性ポリイミド樹脂は、本組成物の主剤(ベースポリマー)であって、本発明では下記式(1)で表されるものを用いる。
Ee−Ff−Gg (1)
【0012】
式(1)中、E、FおよびGは、ランダムに結合する繰り返し単位(ただし、E−E、F−F、G−G、およびE−Gで表される隣接単位の組み合わせは除く)であり、Eは、下記式(2)で示されるジアミノ変性シリコーン由来の2価の基であり、Fは、下記式(3)で示されるテトラカルボン酸二無水物由来の2価の基であり、Gは、ジアミン由来の2価の基である。ただし、f+e+g=100mol%であり、f/(e+g)のmol比は、0.9〜1.1であり、eとgの和を100とするとeは30〜90である。
【0014】
式(2)において、R
Aは、互いに独立して炭素原子数8〜12のアリーレンアルキレン基を表し、R
1およびR
2は、互いに独立して脂肪族不飽和結合を有しない置換または非置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基を表し、R
3およびR
4は、互いに独立して、置換または非置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基を表すが、R
3およびR
4の少なくとも一方は、脂肪族不飽和結合を有し、mは、0〜20、nは、1〜20、かつ、m+n=1〜40を満たす整数を表す。なお、m、nが付された括弧内のシロキサン単位の配列は、ランダム、交互またはブロックのいずれであってもよい。
【0015】
−Im−X−Im− (3)
式(3)中、Imは、環状イミド構造を端に含む環状の基を表し、Xは、単結合、−O−、−S−、−S(→O)−、−S(=O)
2−、−C(=O)−、−NR
N−(R
Nは、炭素原子数1〜12の1価炭化水素基を表す。)、−CR
B2−(R
Bは、互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜12の1価炭化水素基を表す。)、−R
Arh−(R
Arは、炭素原子数6〜12の2価のアリーレン基を表し、hは、1〜6の整数を表す。hが2以上のとき、R
Arは互いに同一でも異なっていてもよい。)、−R
Arh−(OR
Ar)
i−(R
Arおよびhは、上記と同じ意味を表し、iは、1〜5の整数を表す。)、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルキレン基、炭素原子数5〜12のシクロアルキレン基、および炭素原子数7〜12のアリーレンアルキレン基から選択される2価の基を表す。
【0016】
式(2)において、R
Aの炭素原子数8〜12の2価アリーレンアルキレン基の具体例としては、2−(1,4−フェニレン)−1−エチレン、2−(1,3−フェニレン)−1−エチレン、1−(1,4−フェニレン)−1−エチレン、1−(1,3−フェニレン)−1−エチレン、3−(1,4−フェニレン)−1−プロピレン、3−(1,3−フェニレン)−1−プロピレン、2−(1,4−フェニレン)−1−プロピレン、2−(1,3−フェニレン)−1−プロピレン、2−メチル−3−(1,4−フェニレン)−1−プロピレン、2−メチル−3−(1,3−フェニレン)−1−プロピレン、2−メチル−2−(1,4−フェニレン)−1−プロピレン、2−メチル−2−(1,3−フェニレン)−1−プロピレン、4−(1,4−フェニレン)−1−ブチレン、4−(1,3−フェニレン)−1−ブチレン、3−(1,4−フェニレン)−1−ブチレン、3−(1,3−フェニレン)−1−ブチレン、3−メチル−4−(1,4−フェニレン)−1−ブチレン、3−メチル−4−(1,3−フェニレン)−1−ブチレン、3−メチル−3−(1,4−フェニレン)−1−ブチレン、3−メチル−3−(1,3−フェニレン)−1−ブチレン、5−(1,4−フェニレン)−1−ペンチレン、5−(1,3−フェニレン)−1−ペンチレン、4−(1,4−フェニレン)−1−ペンチレン、4−(1,3−フェニレン)−1−ペンチレン、2,2−ジメチル−4−(1,4−フェニレン)−1−ブチレン、2,2−ジメチル−4−(1,3−フェニレン)−1−ブチレ
ン、2,2−ジメチル−3−(1,4−フェニレン)−1−ブチレン、2,2−ジメチル−3−(1,3−フェニレン)−1−ブチレン、6−(1,4−フェニレン)−1−ヘキシレン、6−(1,3−フェニレン)−1−ヘキシレン、5−(1,4−フェニレン)−1−ヘキシレン、5−(1,3−フェニレン)−1−ヘキシレン、2−(1,9−ナフチレン)−1−エチレン、2−(1,5−ナフチレン)−1−エチレン基等が挙げられる。
これらの中でも、入手の容易性から2−(1,4−フェニレン)−1−エチレン基、2−(1,3−フェニレン)−1−エチレン基が好ましい。
【0017】
R
1およびR
2の脂肪族不飽和結合を有しない炭素原子数1〜10の1価炭化水素基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、デカリル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基;ビニル、1−プロペニル、アリル(2−プロペニル)、ヘキセニル、オクテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル基等の炭素原子数2〜10のアルケニル基;フェニル、ナフチル基等の炭素原子数6〜10のアリール基;トリル、キシリル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル基等の炭素原子数7〜10のアルキルアリール基;ベンジル、フェネチル基等の炭素原子数7〜10のアラルキル基などが挙げられるが、炭素原子数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基がより一層好ましく、R
1およびR
2がいずれもメチル基またはエチル基がさらに好ましい。
【0018】
R
3およびR
4の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基としては、上記R
1およびR
2で例示した脂肪族不飽和結合を有しない炭素原子数1〜10の1価炭化水素基に加え、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、オクテニル基等のアルケニル基などの脂肪族不飽和結合を有する炭素原子数2〜10の1価炭化水素基が挙げられる。
中でも、R
3およびR
4としては、炭素素原子数1〜10のアルキル基または炭素原子数2〜10アルケニル基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基または炭素原子数2〜6のアルケニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基がより一層好ましい。
特に、R
3、R
4のいずれか一方または双方が炭素原子数2〜10のアルケニル基であることが好ましく、したがって、R
3,R
4の組み合わせとしては、メチル基とビニル基、エチル基とビニル基、プロピル基とビニル基、ビニル基とビニル基が好適である。
なお、上記R
1〜R
4の1価炭化水素基は、それらの水素原子の一部または全部がフッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0019】
また、式(2)において、mは、0〜20、nは、1〜20、かつ、m+n=1〜40を満たす整数を表すが、mは、4〜15の整数が好ましく、nは、4〜10の整数が好ましく、m+nは5〜40の整数が好ましい。
【0020】
式(2)で表される基の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
【化11】
(式中、波線を付した線は結合手を示す。結合手は上記式(3)中のImに結合する。m、nは上記と同じ意味を表す。)
【0022】
式(3)において、テトラカルボン酸二無水物由来の環状イミド構造を持つImは、環状イミド構造を端に含む基であり、例えば、下記式から選択される基が挙げられる。
【0023】
【化12】
(式中、波線が付された手は結合手を示す(以下、同じ)。なお、窒素原子から出ている結合手以外の環上炭素原子から出ている結合手はXとの結合に使用される。)
【0024】
式(3)中、Xの−NR
N−において、R
Nの炭素原子数1〜12、好ましくは炭素原子数1〜8の1価炭化水素基としては、上記R
1〜R
4で例示した1価炭化水素基等が挙げられるが、特に、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル基等の炭素原子数1〜8の直鎖状または環状のアルキル基が好適であり、メチル基が最適である。
Xの−CR
B2−において、R
Bのハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜12の1価炭化水素基としては、上記R
1〜R
4で例示した1価炭化水素基等が挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子等が挙げられるが、中でも、メチル、エチル、n−プロピル、トリフルオロメチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、シクロヘキシル基等のフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基;フェニル基等のアリール基が好ましい。
特に、R
Bとしては、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基が好適である。
【0025】
Xの−R
Arh−において、R
Arの炭素原子数6〜12の2価のアリーレン基の具体例としては、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン基等が挙げられる。なお、R
Arのアリーレン基は、その水素原子の一部が、水酸基、スルフィド基、2,3−オキソ−1−プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、N,N−ジメチルアミノ基、シアノ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ホルミル基、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、フッ素原子等で置換されていてもよい。
また、hは1〜6の整数である。
好適なR
Arとしては、下記で示される基が挙げられる。
【0026】
【化13】
(式中、subは水素原子、または水酸基、スルフィド基、2,3−オキソ−1−プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、N,N−ジメチルアミノ基、シアノ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ホルミル基、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、およびフッ素原子から選択される置換基を表し、置換数は1〜4個の範囲内である。)
【0027】
Xの−R
Arh(OR
Ar)
i−において、R
Arとhは上記と同様の意味を表し、iは1〜5の整数を表す。
−R
Arh(OR
Ar)
iの具体例としては、下記のような基が挙げられる。下記式において、−O−はどの位置に結合されていてもよく、結合数も1〜4個の範囲内である。
【0029】
Xの炭素原子数1〜12の直鎖状又は分岐状アルキレン基および炭素原子数5〜12のシクロアルキレン基の具体例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、1,3−ブチレン、テトラメチレン、1,3−ペンチレン、1,4−ペンチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−シクロヘプチレン、1,4−シクロヘプチレン基等が挙げられる。
炭素原子数7〜12のアリーレンアルキレン基の具体例としては、2−(4−(2−エタ−1−イレン)−1−フェニレン)エタ−1−イレン基等が挙げられる。
【0030】
上記式(1)中のGで表されるジアミン由来の2価の基は、特に限定されるものではないが、本発明では耐熱性により優れるジアミン由来の2価の基が好ましい。
そのような2価の基を与えるジアミンの具体例としては、テトラメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂肪族ジアミン;o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香族ジアミンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上記式(1)で示されるシリコーン変性ポリイミド樹脂は、末端が酸無水物により封鎖されていることが好ましい。
また、f+e+gのmolの和が100mol%で、f/(e+g)のmol比が0.9〜1.1であるが、適度な分子量を維持するために、f/(e+g)のmol比は0.95〜1.05が好ましく、0.98〜1.02がより好ましい。
さらに、eとgの和を100とするとeは30〜90であるが、防湿性を考慮すると30〜70が好ましい。
【0032】
(A)成分のシリコーン変性ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、当該樹脂を含む組成物から得られる皮膜の靭性を高めるとともに、硬化剤等の他成分との相溶性や溶剤への溶解性を高めることを考慮すると、10,000〜100,000が好ましく、15,000〜70,000がより好ましい。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略すこともある)によるポリスチレン換算値である(以下、同じ)。
【0033】
(A)成分のシリコーン変性ポリイミド樹脂は、公知の方法で製造することができる。
例えば、まず、テトラカルボン酸二無水物、ジアミンおよび上記式(2)で表される化合物の両末端にそれぞれアミノ基が結合したジアミノ変性シリコーンを溶剤中に仕込み、低温、即ち20〜50℃程度で反応させて、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸を製造する。次に、得られたポリアミック酸の溶液を、好ましくは80〜200℃、より好ましくは140〜180℃の温度に昇温し、ポリアミック酸の酸アミドを脱水閉環反応させることにより、シリコーン変性ポリイミド樹脂の溶液を得、この溶液を水、メタノール、エタノール、アセトニトリル等の溶剤に投入して沈殿させ、沈殿物を乾燥することにより、シリコーン変性ポリイミド樹脂を得ることができる。
【0034】
なお、上記f/(e+g)は、原料の物質量から換算した、テトラカルボン酸二無水物のモル数に対するジアミンおよびジアミノ変性シリコーンのモル数の合計の割合(モル比)であり、反応に際して、[テトラカルボン酸二無水物(モル)/(ジアミン+ジアミノ変性シリコーン(モル))]を、通常0.9〜1.1、好ましくは0.95〜1.05、より好ましくは0.98〜1.02の範囲に調節する。
【0035】
(A)成分の製造に使用できる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。また、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類を併用し、イミド化の際に生成する水を共沸により除去しやすくすることも可能である。これらの溶剤は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
なお、シリコーン変性ポリイミド樹脂の分子量を調整するために、無水フタル酸、無水マレイン酸、ヘキサヒドロ−1,3−イソベンゾフランジオン、無水コハク酸、グルタル酸無水物、ケイ素数が10〜60の酸無水物変性シリコーン等の酸無水物や、アニリン、ベンジルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン等の炭素原子数3〜6の直鎖状、分岐状または環状アルキルアミン等のアミン化合物の一官能性原料を添加することも可能である。
また、アルデヒド化合物として、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチロアルデヒド等の炭素原子数2〜6のアルキルを含むアルデヒド化合物を添加することもできる。
この場合の添加量は、原料の酸無水物に対し、目的の分子量に合わせ、1〜10モル%の範囲で使用することが好ましい。
【0037】
また、イミド化過程において、脱水剤およびイミド化触媒を添加し、必要に応じて50℃前後に加熱してイミド化させる方法を用いてもよい。
上記脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ピバル酸、無水トリフルオロ酢酸、無水安息香酸等の酸無水物が挙げられる。脱水剤の使用量は、ジアミン1モルに対して1〜10モルとするのが好ましい。
イミド化触媒の具体例としては、トリエチルアミン(Et
3N)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−へプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペラジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N−メチルイミダゾール(NMI)、ピリジン、2,6−ルチジン、1,3,5−コリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、ピラジン、キノリン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]オクタン(DABCO)等の第3級アミンが挙げられる。イミド化触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.5〜10モルとするのが好ましい。
本イミド化手法は工程中で反応液が高温にさらされることが無く、得られる樹脂が着色しにくいという点で有効である。
【0038】
ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物の少なくとも一方を複数種使用する場合も、反応方法は特に限定されるものではなく、例えば、原料を予め全て混合した後に共重縮合させる方法や、用いる2種以上のジアミンまたはテトラカルボン酸二無水物を個別に反応させながら順次添加する方法等を採用できる。
【0039】
(2)(B)成分
本発明の(B)成分である硬化剤としては、熱でラジカルを発生して樹脂を重合させて硬化物を形成することができる熱分解性ラジカル開始剤が好ましい。
熱分解性ラジカル開始剤としては、アゾ化合物や有機過酸化物を用いることができる。
【0040】
アゾ化合物(有機アゾ系化合物)としては、和光純薬工業(株)製のV−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70、V−501、V−601等のアゾニトリル化合物類;VA−080、VA−085、VA−086、VF−096、VAm−110、VAm−111等のアゾアミド化合物類;VA−044、VA−061等の環状アゾアミジン化合物類;V−50、VA−057等のアゾアミジン化合物類;2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシブチル)プロピオンアミド]、2,2−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオ
ンアミド)、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジヒドレート、2,2−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラヒドレート、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられ、これらの中でもV−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70、V−501、V−601、VA−080、VA−085、VA−086、VF−096、VAm−110、VAm−111が好ましく、V−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70、V−501、V−601がより好ましい。
【0041】
有機過酸化物としては、日本油脂(株)製のパーヘキサH等のケトンパーオキサイド類;パーヘキサTMH等のパーオキシケタール類;パーブチルH−69等のハイドロパーオキサイド類;パークミルD、パーブチルC、パーブチルD、パーブチルO等のジアルキルパーオキサイド類;ナイパーBW等のジアシルパーオキサイド類;パーブチルZ、パーブチルL等のパーオキシエステル類;パーロイルTCP等のパーオキシジカーボネート類;ジイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチル
シクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド
、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ[4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル]プロパン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ジーt−ブチルパーオキシバレレート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパー
オキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3−イン、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、2,4,4−トリメチルペンチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、ジ‐3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコールビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエートや、化薬アクゾ(株)製のトリゴノックス36−C75、ラウロックス、パーカドックスL−W75、パーカドックスCH−50L、トリゴノックスTMBH、カヤクメンH、カヤブチルH−70、パーカドックスBC−FF、カヤヘキサAD、パーカドックス14、カヤブチルC、カヤブチルD、パーカドックス12−XL25、トリゴノックス22−N70(22−70E)、トリゴノックスD−T50、トリゴノックス423−C70、カヤエステルCND−C70、トリゴノックス23−C70、トリゴノックス257−C70、カヤエステルP−70、カヤエステルTMPO−70、トリゴノックス121、カヤエステルO、カヤエステルHTP−65W、カヤエステルAN、トリゴノックス42、トリゴノックスF−C50、カヤブチルB、カヤカルボンEH、カヤカルボンI−20、カヤカルボンBIC−75、トリゴノックス117、カヤレン6−70等が挙げられる。
なお、上述した硬化剤は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜10質量部であるが、好ましくは1〜5質量部である。配合量が0.1質量部未満であると硬化性が不十分となり、10質量部を超えると硬化剤由来のアウトガスが多量に発生し、硬化収縮が起こったり、想定より樹脂が硬くなったりする。
【0043】
(3)(C)成分
本発明の(C)成分である溶剤は、組成物の粘度を下げ、基板などへの塗布性や、作業性を改善するために用いられる。
溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス−2−(2−メトキシエトキシ)エチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、γ−バレロラクトン、(株)ダイセル製のセルトールシリーズの3−メトキシブチルアセテート(MBA)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BMGAC)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BDGAC)、シクロヘキサノールアセテート(CHXA)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM)、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル(DPMNP)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)、1,4−ブタンジオールジアセテート(1,4−BDDA)、1,3−ブチレングリコールアセテート(1,3−BGDA)、1,6−ヘキサンジオールジアセテート(1,6−HDDA)等のエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系溶剤などの有機溶剤が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(C)溶剤は、(A)成分のシリコーン変性ポリイミド樹脂の溶解性を損なわない範囲で用いることができ、通常、(A)成分に対し、100〜700質量部で用いることができる。
【0044】
(4)(D)成分
(D)成分の疎水性フュームドシリカは、液ダレの防止、塗布時の気泡の入り込みならびにムラの防止、成形性の維持、チキソ性の付与、および硬化物の低弾性率化等の目的で添加される任意成分である。
特に、調製時のシリカの沈降を防止して、上記各効果を効率的に発揮させるためには、嵩密度が1g/mL未満であることが好ましい。
また、フュームドシリカの平均一次粒子径は1〜100nmが好ましい。平均一次粒子径がこの範囲内であると、シリコーン変性ポリイミド含有組成物の硬化物のフュームドシリカによる光散乱が抑えられるため、硬化物の透明性を損なうことがない。なお、この平均粒子径は、レーザー光回折法等の分析手段を使用した粒度分布計により、体積基準の粒度分布におけるメジアン径(d50)として求めることができる。
さらに、フュームドシリカのBET比表面積は、100〜300m
2/gが好ましい。
【0045】
(D)成分の疎水性フュームドシリカは、ハロゲン化珪素を酸素−水素炎中で加水分解して作られる乾式シリカが好ましい。
疎水性フュームドシリカは、市販品を用いてもよい。市販品の具体例としては、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性乾式シリカ(比表面積160m
2/g、吸着炭素量3.0質量%、嵩密度0.14mg/L、日本アエロジル(株)製、商品名:AEROSIL R8200)、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性乾式シリカ(比表面積140m
2/g、吸着炭素量2.3質量%、嵩密度0.05g/mL、日本アエロジル(株)製、商品名:RX200)、表面処理された疎水性乾式フュームドシリカ(比表面積190m
2/g、嵩密度0.05g/mL、平均一次粒子径15nm、(株)トクヤマ製、商品名:レオロシールDM−10)、表面処理された疎水性乾式フュームドシリカ(比表面積230m
2/g、嵩密度0.05g/mL、平均一次粒子径7nm、(株)トクヤマ製、商品名:レオロシールDM−30)、表面処理された疎水性乾式フュームドシリカ(比表面積230m
2/g、嵩密度0.05g/mL、平均一次粒子径7nm、(株)トクヤマ製、商品名:レオロシールDM−30S)、表面処理された疎水性乾式フュームドシリカ(比表面積230m
2/g、嵩密度0.05g/mL、平均一次粒子径7nm、(株)トクヤマ製、商品名:レオロシールDM−30S)、商品名「レオロシールHM20S」((株)トクヤマ製、平均一次粒子径12nm)、商品名「レオロシールHM30S」((株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)、商品名「レオロシールHM40S」((株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)、商品名「レオロシールZD30S」((株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)等が挙げられる。
【0046】
(D)成分を配合する場合の添加量は、好ましくは(A)成分の100質量部に対して、3〜50質量部であり、より好ましくは3〜30質量部、より一層好ましくは3〜20質量部である。このような範囲であれば、増粘性、チキソ性、流動性を有し、作業性に優れた組成物とすることができる。
【0047】
本発明のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物は、疎水性ヒュームドシリカの添加量を調整することで、塗布方法に応じた好適な粘度に調整することができる。
例えば、ディスペンサーで塗布する場合や、ディッピングを使用する場合は、粘度500〜10,000mPa・s(25℃)程度が好ましく、スクリーン印刷等では液垂れが起こりにくい粘度10,000〜100,000mPa・s(25℃)が好ましい。
ただし、塗布装置等により使用可能な粘度は異なるため、上記の粘度に限定されるものではない。
【0048】
本発明のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物は、例えば、(A)シリコーン変性ポリイミド樹脂を(C)溶剤で溶解し、シリコーン変性ポリイミド樹脂溶液を調製した後、そこに(B)硬化剤、必要に応じて追加の(C)溶剤および(D)疎水性ヒュームドシリカを添加し、撹拌して製造することができる。
【0049】
このようにして得られるシリコーン変性ポリイミド組成物は、キャスト法等によりフィルム成形が可能である。
本発明のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物の硬化条件としては、特に限定されるものではないが、硬化温度は好ましくは40〜200℃、より好ましくは50〜150℃、硬化時間は好ましくは1〜300分、より好ましくは10〜240分である。
【0050】
本発明のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物は、上述のとおり、各種金属フレームとの接着性が良好で、防湿性が高く、低弾性、高耐熱性を発揮する硬化物を与えるものであり、具体的には、(α)25℃における貯蔵弾性率が100〜1,000MPa、(β)ガラス転移点(Tg)が100〜200℃、(γ)40℃での水蒸気透過度が20g/m
2・day以下、かつ、(δ)5%重量減少温度が420℃以上という優れた特性を有する硬化物が得られる場合もある。
このような硬化物を与える本発明のシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物は、接着剤やコーティング剤として好適に利用できる。
この接着剤やコーティング剤は、電子材料、光学材料および車載機器等に使用でき、特に、高信頼性が必要な半導体デバイスを使用する分野に好適に使用できる。
【0051】
(5)ジアミノ変性シリコーンの製造方法
本発明の組成物に式(1)で示されるシリコーン変性ポリイミド樹脂の原料となる上記ジアミノ変性シリコーンとしては、上記式(2)の両末端にそれぞれアミノ基が結合した下記式(4)で示されるジアミノ変性シリコーン等が挙げられる。
【0052】
【化15】
(式中、R
1〜R
4、mおよびnは上記と同じ意味を表し、R
Cは、下記の基から選ばれる2価の基を表す。なお、m、nが付された括弧内のシロキサン単位の配列は、ランダム、交互またはブロックのいずれであってもよい。)
【0053】
【化16】
(式中、Jは、炭素原子数2〜6のアルキレン基を表し、波線を付した線は結合手を表す。Jに結合している結合手はケイ素原子に結合し、他の結合手はImに結合する。)
【0054】
上記炭素原子数2〜6のアルキレン基としては、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン基等が挙げられるが、エチレン基が好ましい。
【0055】
上記式(4)で示されるジアミノ変性シリコーンは、工程(i)溝呂木−ヘック反応、工程(ii)水素添加反応、工程(iii)シロキサンの開裂と再結合を伴う重合反応を経て製造できる。
【0056】
工程(i)は
(E)下記式(5)で示される化合物(以下、化合物(5)という)、
(F)下記式(6)または下記式(7)で示される化合物(以下、化合物(6)または(7)という):2.0〜2.5モル当量
(G)遷移金属有機錯体触媒:0.01〜5モル%、
(H)塩基:2.0〜3.0モル当量、および
(I)溶剤:化合物(5)の濃度が0.1〜5.0モル/Lとなる量
の存在下で反応を行い、下記式(8)で示される化合物(以下、化合物(8)という)を得る工程である。
なお、(F)および(G)の使用量は、化合物(5)に対する割合である。
【0057】
【化17】
(式中、R
1およびR
2は上記と同じ意味を表し、Kは、末端に不飽和基を有する炭素原子数2〜6の1価の脂肪族不飽和炭化水素基を表す。)
【0058】
【化18】
(式中、LGは脱離基として機能する1価の官能基
を表す。)
【0059】
【化19】
(式中、R
1、R
2およびR
Cは上記と同じ意味を表す。)
【0060】
式(5)において、Kの末端に不飽和基を含む炭素原子数2〜6の1価の不飽和炭化水素基の具体例としては、ビニル、プロプ−2−エン−1−イル基(prop−2−en−1−yl)、ブタ−3−エン−1−イル基(but−3−en−1−yl)、ペンタ−4−エン−1−イル基(pent−4−en−1−yl)、ヘキサ−5−エン−1−イル基(hex−5−en−1−yl)等が挙げられ、ビニル基がより好ましい。
式(7)中の脱離基LGは、公知の脱離基として機能する置換基であればよく、例えば、クロロ、ブロモ、ヨウ素、メシル、トシル、トリフルオロメタンスルホニル、ノシル基等が挙げられる。
【0061】
(G)遷移金属有機錯体触媒における遷移金属としては、鉄、ニッケル、銅、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、タングステン、イリジウム、白金等が挙げられるが、ニッケルまたはパラジウムが好ましい。
遷移金属錯体触媒の配位子としては、二座の中性ホスフィン配位子、単座の中性ホスフィン配位子、中性π配位子、一価のアニオン性配位子、二価のアニオン性配位子、単座の中性アミン配位子、二座の中性アミン配位子、中性ニトリル配位子、中性スルフィニル配位子、二座の中性のカルボニル−オレフィンから構成される配位子等からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられ、場合によっては、系中で配位子交換を行ってもよい。
特に、ニッケルまたはパラジウムの価数が0価または2価となるように配位構成されているニッケルまたはパラジウム錯体が好ましい。
【0062】
好適な配位子としては例えば、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
二座の中性ホスフィン配位子:1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等
単座の中性ホスフィン配位子:トリ(n−ブチル)ホスフィン、トリ(t−ブチル)ホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(m−トリル)ホスフィン、トリ(p−トリル)ホスフィン、トリ(2−フルフリル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン等
中性π配位子:ベンゼン、シクロブタジエン、シクロオクタジエン等
一価のアニオン性配位子:メチル、フェニル、ヘキサメチルシクロペンタジエニル、ペンタメチルシクロペンタジエニル、アリル、シクロペンタジエニル、アルコキシ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシラート、アセチルアセトナート、トリフルオロメタンスルフォネート、1,3−ビス(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾ−ル−2−リデン、1,3−ビス(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)イミダゾ−ル−2−リデン、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−リデン等
二価のアニオン性配位子:フタロシアニン、ナフタロシアニン、ポルフィリン等
単座の中性アミン配位子:アンモニア、ピリジン、3−クロロピリジン等
二座の中性アミン配位子:N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,10−フェナンソロリン、2,2’−ビピリジル等
中性ニトリル配位子:アセトニトリル、ベンゾニトリル等
中性スルフィニル配位子:1,2−ビス(フェニルスルフィニル)エタン等
二座の中性のカルボニル−オレフィンから構成される配位子:ジベンジリデンアセトン等
【0063】
(G)遷移金属有機錯体触媒の使用量は、(E)化合物(5)に対して0.01〜5モル%であり、(F)化合物(6)または(7)は、(E)化合物(5)に対して理論的に2モル当量反応するため、(F)化合物(6)または(7)の使用量は、2〜2.5モル当量であるが、2.05〜2.2モル当量以下が好ましい。
【0064】
(H)塩基としては、有機塩基でも無機塩基でもよい。
有機塩基の具体例としては、トリエチルアミン(Et
3N)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−へプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N−メチルイミダゾール(NMI)、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]オクタン(DABCO)、ピリジン、2,6−ルチジン、1,3,5−コリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ピラジン、キノリン等が挙げられる。
無機塩基の具体例としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の第2族金属の炭酸塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物塩;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の第2族金属の水酸化物塩などが挙げられる。
これらの中でも、(H)塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。
(H)成分の使用量は、(E)化合物(5)に対し、2.0〜3.0モル当量であり、好ましくは2.1〜2.6モル当量である。
【0065】
(I)溶剤としては、副反応を抑えるために非プロトン性の極性溶剤が好ましい。
極性溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス−2−(2−メトキシエトキシ)エチルエーテル
、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、γ−バレロラクトン、3−メトキシブチルアセテート(MBA)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BMGAC)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGACC)、シクロヘキサノールアセテート(CHXA)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM)、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル(DPMNP)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)、1,4−ブタンジオールジアセテート(1,4−BDDA)、1,3−ブチレングリコールアセテート(1,3−BGDA)、1,6−ヘキサンジオールジアセテート(1,6−HDDA)等のエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系溶剤などが挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドが好ましい。
(I)溶剤は、(E)化合物(5)の濃度が0.1〜5.0モル/Lとなる量で用いる。
【0066】
工程(ii)は、
(J)工程(i)で得られた化合物(8)、および
(K)遷移金属触媒:化合物(8)に対し、金属の含有量として0.001〜1モル%
の存在下で水素添加反応を行って下記式(9)で示される化合物(以下、化合物(9)という)を得る工程である。
【0067】
【化20】
(式中、R
1、R
2、及びR
Cは、上記と同じ意味を表す。)
【0068】
(K)遷移金属触媒は、反応終了後、ろ過などの操作で容易に取り除くことが可能な点、および回収・再利用の観点から、担体に固定されたものが好ましい。
固定化用の担体としては、含水または乾燥された活性炭(C)、アルミナ(Al
2O
3)、シリカ(SiO
2)等が挙げられる。これらの担体は、反応系の不純物や着色を吸着し除去する効果を兼ねる。
【0069】
活性炭(C)に担持された遷移金属触媒の具体例としては、Ni/C、Pd/C、Pd(OH)
2/C、Pt/C、Co/C、Rh/C、Ir/C、Ru/C、Cu/C、Ag/C、Au/C、Pt−Co/C、Pt−Pd/C等が挙げられる。
アルミナ(Al
2O
3)に担持された遷移金属触媒の具体例としては、Ni/Al
2O
3、Pd/Al
2O
3、Pt/Al
2O
3、Co/Al
2O
3、Rh/Al
2O
3、Ir/Al
2O
3、Ru/Al
2O
3、Cu/Al
2O
3、Ag/Al
2O
3、Au/Al
2O
3等が挙げられる。
シリカ(SiO
2)に担持された遷移金属触媒の具体例としては、Ni/SiO
2、Pd/SiO
2、Pt/SiO
2、Co/SiO
2、Rh/SiO
2、Ir/SiO
2、Ru/SiO
2、Cu/SiO
2、Ag/SiO
2、Au/SiO
2等が挙げられる。
【0070】
これらの中でも、Pd/C、Pd(OH)
2/C、Pt/C、Rh/C、Ir/C、Ru/C、Pt−Pd/C、Pd/Al
2O
3、Pt/Al
2O
3、Pd/SiO
2、Pt/SiO
2が好ましく、入手容易性から、Pd/C、Pt/C、Rh/C、Pt−Pd/C、Pd/Al
2O
3、Pt/Al
2O
3がより好ましく、反応性の観点から、Pd/C、Pt/Al
2O
3がより一層好ましい。
【0071】
なお、これらの固定化された遷移金属触媒は、エヌ・イーケムキャット(株)、川研ファインケミカル(株)、Sigma−Aldrich Japan合同会社、和光純薬工業(株)、東京化成工業(株)、エボニック ジャパン(株)等から市販品として入手可能であり、これらは単独で、または混合もしくは複合触媒の形態で使用することができる。
【0072】
(K)遷移金属触媒の使用量は、(J)化合物(8)に対して金属の含有量として0.001〜1モル%であり、濾過性や触媒コストを考慮すると0.001〜0.1モル%が好ましい。
【0073】
また、工程(ii)では、下記(J)〜(M)の存在下で、大気圧下で水素添加反応を行うこともできる。
(J)工程(i)で得られた化合物(8)、
(K)遷移金属触媒:金属の含有量として0.001〜1モル%
(L)第3級アルキル
アミン化合物:2モル当量未満、および
(M)ギ酸またはギ酸塩:反応混合液がpH7以上となる量
なお、(K)および(L)の使用量は、化合物(8)に対する割合である。
【0074】
(L)第3級アルキルアミン化合物の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン(Et
3N)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−へプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N−メチルイミダゾール(NMI)、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]オクタン(DABCO)等が挙げられるが、中でもトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)が好ましく、トリエチルアミンがより好ましい。
【0075】
(L)第3級アルキルアミン化合物の添加量は、化合物(8)に対して0モル当量より多く、2モル当量未満であるが、0.5〜1.5モル当量が好ましく、1モル当量がより好ましい。0モル当量では反応が進行せず、0.5モル当量より少ない場合は反応が遅くなるおそれがあり、2モル当量より多い場合は触媒を被毒して反応が進行し難くなるおそれがある。
【0076】
(M)ギ酸またはギ酸塩の具体例としては、ギ酸、ギ酸アンモニウム、ギ酸ピリジニウム、ギ酸リチウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸セシウム、ギ酸マグネシウム、ギ酸カルシウム、ギ酸タリウム、ギ酸銅、ギ酸カドミウム、ギ酸鉛、ギ酸亜鉛、ギ酸ニッケル、ギ酸マンガン等が挙げられ、これらの中でも、ギ酸、ギ酸アンモニウム、ギ酸ナトリウムが好ましく、ギ酸がより好ましい。これらのギ酸およびギ酸塩は、市販品として和光純薬工業(株)などから入手可能である。
【0077】
(M)ギ酸またはギ酸塩は、反応混合液のpHが酸性側にならない量で用いる。すなわち、(M)ギ酸またはギ酸塩は、反応混合液がpH7以上、好ましくはpH7〜pH10、より好ましくはpH7〜pH9となる量で用いられる。過剰に加えた場合は反応系中が酸性になり、非置換または置換アルケニルエーテルが酸で分解することによってアルデヒドが発生するおそれがある。
特に、(L)第3級アルキルアミン化合物に対して等モル当量以下で添加することが好ましいが、水素添加反応中にギ酸またはギ酸塩は分解・揮散などによって消費されるため、反応途中で反応溶液がpH7より酸性側にならない量の(M)ギ酸またはギ酸塩を追加してもよい。
【0078】
工程(ii)において、溶剤を使用する場合は、極性有機溶剤を用いることが好ましい。
極性有機溶剤としては、炭素原子数1〜8個のアミド化合物、ニトリル化合物、ケトン化合物、アルコール化合物、炭素原子数1〜8の直鎖、分岐または環状の飽和または不飽和炭化水素化合物の炭素原子のうち1〜3個が酸素原子で置換されたエーテル化合物等が挙げられ、中でも、炭素原子数1〜6の直鎖、分岐または環状のニトリル化合物、アルコール化合物がより好ましい。
【0079】
このような極性有機溶剤の具体例としては、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジメチルホルムアセトアミド(DMAc)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロオクタノン、メチルシクロペンチルケトン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、ジフェニルエーテル、ジメトキシメタン(DMM)、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン、2−エチルテトラヒドロフラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(IPA)、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ジヒドロキシプロパン、2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール等が挙げられ、これらの中でも、DMF、アセトン、THF、IPAが好ましい。
【0080】
ただし、工程(i)からイン・サイチュ(in situ)で反応を行う場合、工程(i)の溶剤をそのまま使用することが可能である。また、水素添加反応は極性溶剤中で反応が加速されるため、上記の極性溶剤をさらに添加してもよい。
【0081】
上記水素添加反応の水素源としては、水素ガスを用いることができる。
水素添加反応は、1気圧で反応を行うことが好ましい。
水素ガス
を安全に貯めながら使用する場合は、シグマ−アルドリッチ ジャパン合同会社製のQ−Tube(TM)ガラス製プレッシャーチューブの使用や(株)スギヤマゲン社製のガス圧調整バブラーを使用することが好適である。
反応温度は、20〜60℃が好ましく、30〜50℃がより好ましい。
【0082】
工程(iii)は、
(N)工程(ii)で得られた化合物(9)、
(O)−[R
1R
2SiO]−単位からなる環状シロキサン(R
1およびR
2は上記と同じ。):−[R
1R
2SiO]−単位が0〜5モル当量となる量、
(P)−[R
3R
4SiO]−単位からなる環状シロキサン(R
3およびR
4は上記と同じ。):−[R
3R
4SiO]−単位が0.25〜5モル当量、および
(Q)有機塩基触媒:0.01〜5質量%
の存在下で反応を行い式(4)で示されるジアミノ変性シリコーンを得る工程である。
なお、(O)、(P)および(Q)の使用量は、化合物(9)に対する割合である。
【0083】
(O)−[R
1R
2SiO]−単位からなる環状シロキサンの具体例としては、ヘキサメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルペンタシロキサン等が挙げられる。
(P)−[R
3R
4SiO]−単位からなる環状シロキサンの具体例としては、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7
,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0084】
(Q)有機塩基触媒としては、四級アルキルアンモニウム塩等が挙げられる。
四級アルキルアンモニウム塩の具体例としては、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド等が挙げられる。
有機塩基触媒の使用量は、化合物(9)に対し0.01〜5質量%であり、反応途中で総添加量5質量%を超えない量で、追加してもよい。
【0085】
以上の製法で得られる上記式(4)で示されるジアミノ変性シリコーンの具体例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
【0086】
【化21】
(式中、mおよびnは、上記と同じ意味を表す。)
【実施例】
【0087】
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
また、本実施例において、分子量測定は、東ソー(株)製GPC装置HLC−8320GPCを用い、移動相としてテトラヒドロフラン(THF)を使用し、ポリスチレン換算で行った。赤外線吸収スペクトル(IR)測定には、NICOLET6700(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)を使用した。
1H NMR測定にはブルカー・バイオスピン社製AVANCE IIIを使用した。ガラス転移点測定には、(株)日立ハイテクサイエンス製DMS7100を使用し、tanδが最大になったときの温度をガラス転移点とした。5%重量減少温度測定には、TAインスツルメンツ社製のTGA Q−500を使用した。25℃における粘度は、回転粘度計により測定した。
なお、下記例で「部」は質量部を示す。
【0088】
[1]原料化合物の合成
[合成例1]
温度計、窒素導入管および撹拌子を備えた反応容器に、1−ブロモ−4−ニトロベンゼン212g(1.05mol、東京化成工業(株)製)、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン93g(0.5mol、東京化成工業(株)製)、炭酸カリウム165g(1.2mol、和光純薬工業(株)製)、およびN,N−ジメチルホルムアミド1,000mL(0.5M、和光純薬工業(株)製)を添加し、アルゴン置換後、トリス(ベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)45mg(0.01mol%、シグマアルドリッチジャパン合同会社)を添加した。反応混合液を、100℃まで昇温し、6時間そのままの温度で反応を行った。
1H NMRより、5.2ppmのビニル基由来のピークが消失していることを確認後、25℃に戻し、No.2濾紙を用いて濾過を行い、1M硫酸水素カリウム水溶液と酢酸ブチルを加えて中和を行った。その後、酢酸ブチル層を分離し、水層をさらに酢酸ブチルで2回抽出を行った。得られた酢酸ブチル層を合わせた後、1Mチオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水と続けて洗浄を行い、無水硫酸ナトリウム、およびシリカゲルと撹拌子を添加し、25℃にて12時間撹拌を行った。その後、No.2濾紙を用いて濾過を行い、溶剤を留去後、析出した固形分(1−ブロモ−4−ニトロベンゼン)を取り除き、ヘキサン−酢酸ブチル混合溶液により再結晶を行い1−ブロモ−4−ニトロベンゼンを取り除いた。溶剤を留去し、減圧乾燥後に褐色固体状の下式で表されるジニトロ変性ジシロキサン193g(収率90%)を得た。
1H NMR(δ:ppm)、0.1(s,12H)、5.9(d,2H)、7.1(d、2H)、8.0(d,4H)、8.4(d,4H).
【0089】
【化22】
【0090】
[合成例2]
温度計、窒素導入管および撹拌子を備えた反応容器に、合成例1で得られたジニトロ変性ジシロキサン193gおよびTHF300mLを添加し、溶解後、アルゴン置換を行った。そこに5%Pd/C(50%ウェット品、和光純薬工業(株))181mg(0.01mol%)を添加し、水素ガス置換を行った。25℃で12時間水素添加反応を行い、
1H NMRよりオレフィンのシグナルの消失および芳香族環上のプロトンのシフトを確認して反応を停止させた。
反応混合液から触媒を濾別し、溶剤を留去して、黄色オイル状の下式で示されるジアミノ変性ジシロキサン159g(収率95%)を得た。
1H NMR(δ:ppm)、0.2(s,12H)、0.9(t,4H)、2.4(t,4H)、6.5(d,2H)、6.9(d,4H).
【0091】
【化23】
【0092】
[合成例3]
温度計、窒素導入管および撹拌子を備えた反応容器に、合成例2で得られたジアミノ変性ジシロキサン37g(0.1mol)、オクタメチルシクロテトラシロキサン30g(0.1mol、東京化成工業(株)製)、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン34g(0.1mol、東京化成工業(株)製)を添加し、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド3.7g(0.10部、東京化成工業(株)製)を添加し、100℃で12時間撹拌した。25℃に冷却した後、揮発成分を減圧留去し、淡黄色の下式(i)で示されるジアミノ変性シリコーン79g(収率78%)を得た。得られたジアミノ変性シリコーンのアミン当量は998mol/gであった。
【化24】
(式中、括弧内のシロキサン単位の配列順は不定である。)
【0093】
[合成例4]
温度計、窒素導入管および撹拌子を備えた反応容器に、2,2−ビス(3,4−アンハイドロジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン44.4g(0.1mol、東京化成工業(株)製)、4,4’−(4,4’−イソプロピルジエンジフェニル−1,1’−ジイルジオキシ)ジアニリン(2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン)12.3g(0.03mol、東京化成工業(株)製)、無水フタル酸1.48g(0.01mol、和光純薬工業(株)製)、およびシクロヘキサノン396gを添加し、25℃で2時間撹拌後、合成例3で得られた上記式(i)で示されるジアミノ変性シリコーン139.7g(0.07mol)を25℃にて滴下し、滴下終了後、25℃にて12時間撹拌した。撹拌終了後、反応容器にトルエン40gを添加し、145℃にて共沸脱水を行った。
得られた反応溶液をメタノールに滴下し、再沈殿によりシリコーン変性ポリイミド樹脂を得た。この樹脂の赤外線吸光スペクトルにおいて未反応のポリアミック酸に基づく吸収は観測されず、1,780cm
-1および1,720cm
-1にイミド基の吸収を確認した。また、GPCによるこの樹脂の重量平均分子量は26,500であった。
【0094】
[合成例5]
撹拌羽、温度計および窒素導入管を取り付けた反応容器に、2,2−ビス(3,4−アンハイドロジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン44.4g(0.1mol)、4,4’−(4,4’−イソプロピルジエンジフェニル−1,1’−ジイルジオキシ)ジアニリン14.4g(0.035mol)、無水フタル酸1.48g(0.01mol)、およびシクロヘキサノン380gを仕込み、25℃で2時間撹拌後、合成例3で得られた上記式(i)で示されるジアミノ変性シリコーン129.7g(0.065mol)を25℃にて滴下し、滴下終了後、25℃にて12時間撹拌した。撹拌終了後、反応容器にトルエン38gを添加し、145℃にて共沸脱水を行った。
得られた反応溶液をメタノールに滴下して再沈殿を行い、シロキサン量が55質量%のシリコーン変性ポリイミド樹脂を得た。この樹脂の赤外線吸光スペクトルにおいて未反応のポリアミック酸に基づく吸収は観測されず、1,780cm
-1および1,720cm
-1にイミド基に吸収を確認した。また、GPCによるこの樹脂の重量平均分子量は24,500であった。
【0095】
[合成例6]
撹拌羽、温度計および窒素導入管を取り付けた反応容器に、2,2−ビス(3,4−アンハイドロジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン44.4g(0.1mol)、4,4’−(4,4’−イソプロピルジエンジフェニル−1,1’−ジイルジオキシ)ジアニリン(2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン)12.3g(0.03mol)、無水フタル酸1.48g(0.01mol)、およびシクロヘキサノン336gを仕込み、25℃で2時間撹拌後、下記式(ii)で示されるジアミノ変性シリコーン112.0g(0.07mol)を25℃にて滴下し、滴下終了後、25℃にて12時間撹拌した。撹拌終了後、反応容器にトルエン56gを添加し、145℃にて共沸脱水を行った。得られた反応溶液をメタノールに滴下して再沈殿を行い、シロキサン量が79質量%のシリコーン変性ポリイミド樹脂を得た。この樹脂の赤外線吸光スペクトルにおいて未反応のポリアミック酸に基づく吸収は観測されず、1,780cm
-1および1,720cm
-1にイミド基の吸収を確認した。また、GPCによるこの樹脂の重量平均分子量は36,000であった。
【0096】
【化25】
(式中、括弧内のシロキサン単位の配列順は不定である。)
【0097】
[2]シリコーン変性ポリイミド樹脂組成物の製造
[実施例1]
合成例4で得られたシリコーン変性ポリイミド樹脂100部に対し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)236部を加えて溶解・撹拌し、溶解物を得た。この溶解物に、カヤレン6−70(化薬アクゾ(株)製)1部を添加して混合撹拌し、シリコーン変性ポリイミド樹脂組成物を得た。
【0098】
[実施例2〜7および比較例1〜4]
表1に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリコーン変性ポリイミド樹脂を製造した。
【0099】
上記各実施例および比較例の組成および組成物の25℃における粘度を表1に示す。
なお、表中の各成分の略称等は以下のとおりである。
・パーブチルO:日本油脂(株)製t−ブチル パーオキシ−2−エチルヘキサノエート
・V−601:和光純薬工業(株)製ジメチル 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)
・カヤレン6−70:化薬アクゾ(株)製1,6−ビス(t−ブチル−パーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン
・レオロシールDM−30S:(株)トクヤマ製疎水性乾式フュームドシリカ
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0100】
【表1】
【0101】
上記各実施例および比較例で調製した組成物の硬化物について、密着性、貯蔵弾性率を下記手法にて測定、評価した。これらの結果をガラス転移点、5%重量減少温度とともに表2に示す。
(1)密着性
シリコーン変性ポリイミド樹脂組成物を各種基材上に厚さ80μmとなるように塗布し、50℃で30分、100℃で60分、150℃で120分の順で熱硬化させて硬化皮膜を得た。
この皮膜の密着性を碁盤目剥離試験(JIS K5400)の方法で評価し、100マス中に残存したマス目の数Xを(X/100)で示した。
ガラス板:松浪硝子工業(株)製
無酸素銅板:スタンドテストピース社製
(2)貯蔵弾性率
シリコーン変性ポリイミド樹脂組成物をフッ素系コーティングが施された鉄板上に塗布し、50℃で30分、100℃で60分、150℃で120分の順で熱硬化させて厚さ0.3mmのシートを作製した。このシートについて、(株)日立ハイテクサイエンス製DMS7100を使用し、貯蔵弾性率を測定した。
【0102】
【表2】
【0103】
さらに、上記実施例1,4,5および7で調製した組成物の硬化物について、下記手法にて水蒸気透過度を測定した。結果を表3に示す。
(3)水蒸気透過性
実施例1,4,5,および7で調製したシリコーン変性ポリイミド樹脂組成物を、フッ素系コーティングが施された鉄板上に塗布し、50℃で30分、100℃で60分、150℃で120分の順で熱硬化させて厚さ1mmのシートを作製した。このシートについて、L80−5000型水蒸気透過度計(Systech Instruments社製)を使用し、40℃(JIS K7129A)の条件にて水蒸気透過度を測定した。結果を表3に示す。
【0104】
【表3】
【0105】
表2に示されるように、各実施例で得られた組成物から作製した硬化物は、ガラス板および銅板に対する密着性に優れるとともに、比較例の組成物から作製した硬化物に比べ、弾性率が高く、耐熱性に優れていることがわかる。
また、表3に示されるように、実施例1,4,5,7の組成物から作製した硬化物は、水蒸気透過度が低いことがわかる。