(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2溝構造形成工程は、それぞれが前記第4の幅よりも小さな第5の幅を有する複数の第3溝を形成することによって前記第2溝構造を形成する第3溝形成工程を含み、
前記第2凹部の直径は、前記第5の幅よりも大きい、請求項9に記載の配線基板の製造方法。
前記第2溝構造形成工程は、それぞれが前記第4の幅よりも小さな第5の幅を有する複数の第3溝を形成することによって前記第2溝構造を形成する第3溝形成工程を含み、
前記複数の第3溝のピッチは、前記第2凹部の中心間距離の10%以上100%以下の範囲である、請求項9に記載の配線基板の製造方法。
前記第2溝構造形成工程は、それぞれが前記第4の幅よりも小さな第5の幅を有する複数の第3溝を形成することによって前記第2溝構造を形成する第3溝形成工程を含み、
前記第2照射工程は、それぞれが前記第4の幅よりも小さな第6の幅を有する複数の第4溝を前記第2溝構造の内部に形成する第4溝形成工程を含む、
請求項8に記載の配線基板の製造方法。
前記第2溝構造形成工程と前記第2照射工程との間に、レーザ光の照射により、前記第2主面側の前記第2溝構造と前記第1主面側の前記第1溝構造とを結ぶ貫通孔を形成する貫通孔形成工程をさらに含み、
前記第2配線パターン形成工程は、
前記第2導電材料としての導電性ペーストを前記貫通孔の内部に配置する第2導電材料配置工程と、
前記貫通孔の内部に配置された前記導電性ペーストを硬化させることにより、前記第1主面側の前記第1配線パターンを前記第2主面側の前記第2配線パターンに接続するビアを形成するビア形成工程と、
を含む、請求項8から12のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態は、例示であり、本開示による配線基板およびその製造方法は、以下の実施形態に限られない。例えば、以下の実施形態で示される数値、形状、材料、ステップ、そのステップの順序などは、あくまでも一例であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の改変が可能である。
【0010】
図面が示す構成要素の寸法、形状等は、わかり易さのために誇張されている場合があり、実際の透光性部材、発光装置、および、製造装置における、寸法、形状および構成要素間の大小関係を反映していない場合がある。また、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略することがある。
【0011】
以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。以下の説明では、特定の方向または位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」およびそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向または位置をわかり易さのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」等の用語による相対的な方向または位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品、製造装置等において、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。本開示において「平行」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面等が0°から±5°程度の範囲にある場合を含む。また、本開示において「垂直」または「直交」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面等が90°から±5°程度の範囲にある場合を含む。
【0012】
(配線基板の製造方法の実施形態1)
図1は、本開示のある実施形態による、配線基板の例示的な製造方法を示す。
図1に示す配線基板の製造方法は、概略的には、レーザ光の走査によって基台の主面に溝構造を形成する工程(ステップS1)と、溝構造形成の工程における照射パターンとは異なる照射パターンで溝構造の内部をレーザ光でさらに照射する工程(ステップS2)と、溝構造を第1導電材料で充填して第1配線パターンを第1導電材料から形成する工程(ステップS3)とを含む。以下、それぞれの工程の詳細を説明する。
【0013】
(第1溝構造形成工程(A))
まず、主面を有する基台を準備する。ここでは、
図2に示すような、第1主面としての上面100aを有する基台100Sを例示する。なお、
図2には、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印があわせて図示されている。本開示の他の図面においてもこれらの方向を示す矢印を図示することがある。
【0014】
この例では、上面100aに垂直に基台100Sを見たときの基台100Sの外形は、矩形状であり、矩形状の辺は、図中に示すX方向およびY方向に一致している。しかしながら、基台100Sの外形が矩形状であることは必須ではなく、基台100Sは、任意の形状を有していてよい。以下では、基台100Sとして、上面100aの反対側に位置する第2主面としての下面100bを有する板状の部材を用いる例を説明する。基台100Sの上面100aおよび下面100bは、典型的には平坦面である。しかしながら、基台100Sの上面100aおよび下面100bは、平坦面に限定されず、上面100aおよび下面100bの一方または両方が、少なくとも一部に曲面を含んでいたり、段差を有していたりしていてもかまわない。
【0015】
基台100Sとしては、例えば、ANSI・NEMA規格において規定されている各種の基板を適用し得る。特に、ガラス繊維強化樹脂基板(ガラスエポキシ基板)等の樹脂基板、および、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シリコーン等の樹脂フィルムで構成されたフレキシブル基板、ならびに、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等のセラミック基板を基台100Sとして好適に用いることができるが、基台100Sは、これらの例に限定されない。基台100Sは、購入によって準備されてもよいし、グリーンシートの焼成等によって準備されてもよい。
【0016】
次に、基台の主面をレーザ光で照射し、レーザ光の走査によって基台の主面に溝構造を形成する(
図1のステップS1)。レーザ光の照射には、公知のレーザアブレーション装置を適用できる。
図2では、レーザ光源310およびガルバノミラー320を含むレーザアブレーション装置300を適用した例を模式的に示している。レーザアブレーション装置300中のガルバノミラーの個数は、2以上であり得る。レーザ光源310の例は、CO
2レーザ、Nd:YAGレーザ、Nd:YVO
4レーザ等である。あるいは、532nmの波長を有するレーザを出力する、グリーンレーザと呼ばれるレーザ光源をレーザ光源310として用いることも可能である。
【0017】
この工程において、基台100Sの上面100aをレーザ光のビームLBで走査する。レーザ光のビームLBの走査により、基台100Sの上面100a側の一部が除去され、
図2に模式的に示すように、第1の幅W1を有する第1溝構造110が上面100aに形成される。このとき、レーザ光を吸収する材料が基台100S中に分散されていると、レーザ光を効率的に基台100Sに吸収させて基台100Sの表面の部分的な除去を効率的に行い得るので有益である。レーザ光を吸収する材料の典型例は、着色材である。例えば、レーザ光源310として、中心波長が紫外域にあるUVレーザを用いる場合、二酸化チタン、カーボン、硫酸バリウム、酸化亜鉛等のフィラーを、レーザ光を吸収する材料として基台100S中に分散させ得る。レーザ光源310にグリーンレーザを適用した場合には、カーボン、酸化ニッケル、酸化鉄(III)等をフィラーに用いることができ、中心波長が赤外域にあるIRレーザを適用した場合には、カーボン、硫酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化アルミニウム、タングステン複合酸化物等をフィラーに用い得る。
【0018】
ここでは、ビームLBをある方向(第1方向)に走査することにより、基台100Sの上面100a側に、それぞれが第1方向に沿って延びる複数の第1溝111を形成することにより、上述の第1溝構造110を形成する。なお、
図2は、第1溝構造110の形成の途中の状態を模式的に示している。ビームLBの走査には、
図2の例のようにガルバノミラーを利用してもよいし、石英ガラス等のステージ上に基台100Sを配置して、ステージをXY面内で移動させながらレーザ光の照射を実行してもよい。
図2に示す例では、第1方向は、図中のX方向およびY方向のいずれとも異なる。しかしながら、ビームLBの走査方向は、任意であり、第1方向がX方向またはY方向に一致していてもよい。
【0019】
適当なピッチで複数の第1溝111を形成することにより、
図2に模式的に示すように、基台100Sの上面100aに、複数の第1溝111の集合によって規定される底部を有する第1溝構造110を形成することができる。
図2に示す例では、第1溝構造110は、第1方向とは異なる方向に延び、かつ、第1の幅W1を有する部分を含む。ここで、第1の幅W1は、第1溝構造110のうち、着目した部分が延びる方向に直交する方向に測った長さである。第1溝構造110の形成の上記の原理から理解されるように、第1の幅W1は、複数の第1溝111のそれぞれの幅である第2の幅よりも大きい。
【0020】
図3は、第1溝構造110の形成後の基台100Sの一例を示す。
図3に示す例では、第1溝構造110は、3つの分枝を有する第1の部分110Aと、Y字形の第2の部分110Bとを含む形で基台100Sの上面100aに形成されている。基台100Sの上面100aの法線方向から見たときの第1溝構造110の形状は、任意である。第1溝構造110は、
図3に示す例えば第1の部分110Aのように、分岐、屈曲等を含んでいてもよいし、第1溝構造110の延びる方向に沿って幅の異なる領域を含んでいてもよい。
図3に示す例のように、第1溝構造110が複数の部分を含む場合には、各部分の形状、配置、および、それら複数の部分の数も任意である。
図3に例示する第1溝構造110の形状は、あくまで説明のための例示に過ぎず、第1溝構造110の形状が、図示された形状に限定されないことは、言うまでもない。
【0021】
上述したように、第1溝構造110の底部を構成する複数の第1溝111の各々は、第1方向に沿って延びる。
図3では、この第1方向を両矢印d1で示している。第1溝111の各々は、典型的には、レーザスポットの一部を重ねるようにしてレーザ光を第1方向に沿ってパルス照射することによって形成される。したがって、第1溝構造110の延びる方向は、第1方向、すなわち、第1溝111の延びる方向による制約を受けない。なお、隣接する2つの第1溝111の間で、これらの形成時におけるレーザスポットの移動の方向は、共通であってもよいし、反平行(すなわち、往復動)であってもよい。
【0022】
(第1照射工程(B))
次に、第1溝構造形成の工程における照射パターンとは異なる照射パターンで第1溝構造の内部をレーザ光でさらに照射する(
図1のステップS2)。例えば、第1溝構造110の底部にレーザ光のビームLBをパルス照射することにより、第1溝構造110の底部に複数の凹部を形成する。
【0023】
図4は、
図3に示す状態から第1溝構造110の内部をレーザ光でさらに照射した後の状態を模式的に示す。この例では、第1溝構造110の底部に対するレーザ光の照射により、第1溝構造110の底部にドット状の複数の凹部を形成している。以下では、これらの複数の凹部を「第1凹部111d」と呼ぶ。
【0024】
このように、第1溝構造110の底部を構成する複数の第1溝111の集合に重ねてレーザ光のビームLBをパルス照射することにより、第1溝構造110の内部に例えば複数の第1凹部111dを形成することができる。
図4に模式的に示すように、第1凹部111dは、各第1溝111の幅(第2の幅)よりも大きい直径を有し得る。なお、
図4では、説明の便宜のために第1凹部111dを誇張して大きく描いている。以降の図においても第1凹部111d等を誇張して図示することがある。
【0025】
ここでは、複数の第1凹部111dを三角格子状に配置している。もちろん、複数の第1凹部111dの配置は、任意である。典型的には、第1凹部111dは、均一な密度となるように第1溝構造110の底部に形成される。2つの第1凹部111dの中心間距離に対して、上述の複数の第1溝111は、例えば10%以上100%以下の範囲のピッチを有し得る。
【0026】
第1溝構造110の底部へのさらなるレーザ光の照射の工程における照射パターンは、第1溝構造110の形成の際の照射パターンとは異なる。例えば、上述の第1方向に交差する第2方向(
図4中に両矢印d2で示す)に沿って第1溝構造110の底部をレーザ光で間欠的に照射することにより、第2方向に並ぶ複数の第1凹部111dを第1溝構造110の底部に形成することができる。この走査を繰り返すことにより、第1溝構造110の底部に例えば三角格子状に複数の第1凹部111dを形成できる。第2方向としては例えば第1方向に直交する方向を選ぶことができる。ただし、第2方向が第1方向に直交していることは必須ではない。
【0027】
なお、この工程におけるレーザ光の走査の方向は、上述の第1方向とは異なる方向に限定されない。すなわち、複数の第1凹部111dの形成におけるレーザ光の走査の方向は、第1方向に一致していてもよい。本明細書における「照射パターンが異なる」とは、レーザスポットの移動の軌跡が異なるような動作に限定されず、1回目のレーザ光照射の工程と2回目のレーザ光照射の工程との間でレーザスポットの移動の軌跡(あるいはステージに対するレーザヘッドの相対的な移動の軌跡)を共通としながら、レーザの出力、パルス間隔等を互いに異ならせるような動作をも包含するように広く解釈される。
【0028】
図5は、
図4に示す基台100Sの一部の断面を拡大して模式的に示す。
図4に示す断面は、複数の第1溝111の延びる第1方向に垂直な平面で基台100Sを切断したときの断面に相当する。
図5に模式的に示すように、第1溝構造110は、複数の第1溝111の集合によって形成される第1底面110bを含む。複数の第1溝111の各々は、第2の幅W2を有する。ここで、第2の幅W2は、第1溝構造110の第1の幅W1よりも小さい。
【0029】
第1溝構造110の第1底面110bの位置は、互いに隣接する2つの第1溝111の間に形成される複数の頂部の位置に概ね一致する。第1溝構造110の第1底面110bから基台110Sの上面100aまでの距離、換言すれば、第1溝構造110の深さDp1は、例えば5μm以上50μm以下程度の範囲であり得る。
【0030】
例えば1以上の第1溝111に重ねてレーザ光を照射することにより、第1底面110bの一部をさらに除去でき、より深い部分として複数の第1凹部111dを第1底面110bに形成し得る。なお、複数の第1凹部111d形成の工程におけるレーザの出力は、第1溝構造110形成の工程におけるレーザの出力に一致していてもよいし、より高くてもよい。
【0031】
複数の第1凹部111dに、深さの異なる凹部を混在させてもよい。例えば、深さの異なるドット状の凹部を交互に二次元に形成することにより、後述する導電材料に対してより強力なアンカー効果を発揮させ得る。
【0032】
(第1配線パターン形成工程(C))
次に、第1溝構造を第1導電材料で充填して第1配線パターンを第1導電材料から形成する(
図1のステップS3)。ここでは、
図6に模式的に示すように、第1溝構造110を第1導電材料としての導電ペースト130rで充填する。
図6では、スキージ190を用いた印刷によって第1溝構造110の内部に導電ペースト130rを配置する例を示している。導電ペースト130rとしては、エポキシ樹脂等の母材にAu、Ag、Cu等の粒子を分散させた材料を用いることができる。例えば、公知のAuペースト、AgペーストまたはCuペーストを導電ペースト130rとして用い得る。導電ペースト130rは、溶剤を含んでいてもかまわない。導電ペースト130rに代えて、導電ペースト130rに代えて、例えば、Sn−Bi系はんだに銅粉が含有された合金材料を第1導電材料として用いてもよい。
【0033】
まず、第1溝構造110の内部あるいは基台110Sの上面100a上に導電ペースト130rを付与し、
図6に太い矢印MVで示すようにスキージ190を上面100a上で移動させる。このとき、導電ペースト130rの一部が第1溝111の内部および第1凹部111dの内部に入り込む。すなわち、第1溝111の内部および第1凹部111dの内部が導電ペースト130rで充填される。
【0034】
スキージ190の移動により、基台100S上に付与された導電ペースト130rのうち基台100Sの上面100aよりも盛り上がった部分が除去される。導電ペースト130rのうち不要な部分を除去することにより、導電ペースト130rの表面130raを基台100Sの上面100aに概ね揃えることができる。
【0035】
基台100Sへの導電ペースト130rの付与の方法は、スキージを用いた方法に限定されない。導電ペースト130rの付与には、スピンコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、マイクロコンタクト法、インクジェット法、ノズルプリンティング法、エアロゾルジェット法等の各種の印刷法を適用し得る。もちろん、印刷法以外の方法により、基台100Sに導電ペースト130rを付与してもよい。
【0036】
その後、第1溝構造110の内部に配置された導電ペースト130rを加熱または光の照射によって硬化させる。導電ペースト130rの硬化により、
図7に模式的に示すように、基台100Sの上面100aの法線方向から見たときの第1溝構造110の形状に整合した形状を有する第1配線パターン131を導電ペースト130rから形成することができる。以上の工程により、第1配線パターン131を上面100a側に有する配線基板100Aが得られる。
【0037】
導電ペースト130rを硬化させた状態で導電ペースト130rの表面が基台100Sの上面100aから盛り上がっている場合等には、必要に応じて、導電ペースト130rの硬化後に付加的に研磨工程を実施してもよい。
図8に示す例では、グラインダ装置等に取り付けられた研削砥石200を用いて、硬化後の導電ペースト130rの表面および基台100Sの上面100aを研磨している。研磨により、研磨面である第1配線パターン131の上面131aを基台100Sの上面100aに整合させ得る。また、基台100Sの上面100aに付着した導電ペースト130rの残渣を除去することができる。必要に応じて、硬化後の導電ペースト130r上に銅めっきの層またはニッケル−金めっきの層を形成してもよい。
【0038】
本実施形態によれば、任意の形状を有する配線パターンが形成された配線基板を比較的簡易な工程によって得ることができる。上記から明らかなように、第1配線パターン131の形状は、第1溝構造110の形状によって決定される。第1溝構造110は、レーザ光の照射によって形成されるので、第1配線パターン131の形状に関して高い自由度が得られる。5μm以上50μm以下程度の比較的深い第1溝構造を形成することもできるので、エッチングを伴うパターニングと比較して、配線パターンの厚さに関する制御が容易であり、特に、高アスペクト比を有する配線を形成することができる。アスペクト比の増大は、配線抵抗の低減に有利である。本実施形態の手法によれば、高精度の細線の形での配線の形成も比較的容易である。また、第1導電材料としての導電ペーストの硬化によって第1配線パターン131を形成できるので、エッチングの工程を不要とできる。したがって、廃液の処理に関するコストが生じない。
【0039】
さらに、上記の例では、第1溝構造110の形成の工程における照射パターンとは異なる照射パターンで第1溝構造110の内部をレーザ光でさらに照射している。2回目のレーザ光の照射により、複数の第1溝111を含む第1底面110bに複数の第1凹部111d等の凹凸をさらに形成することができる。上述したように、典型的には、複数の第1凹部111dの内部に第1導電材料が配置されるので、第1配線パターン131も、一般に、その一部が複数の第1凹部111dの内部に位置するような断面形状を有する。第1底面110bよりも深い複数の第1凹部111dの内部に第1配線パターン131の一部が位置することにより、第1配線パターン131および基台100Sの界面の面積が増大する。第1配線パターン131および基台100Sの界面面積の増大によって、より強力なアンカー効果が得られる。これにより、基台100Sからの第1配線パターン131の剥離を抑制できる。すなわち、より信頼性が向上された配線基板を提供することが可能になる。なお、第1導電材料の配置の前に第1溝構造110の内部にシランカップリング剤を付与することにより、第1配線パターン131の剥離を抑制する効果をさらに向上させることができる。
【0040】
図8を参照しながら説明したように、導電性ペーストの硬化後に付加的に研磨工程を実施することにより、第1配線パターン131の上面131aを基台100Sの上面100aに整合させ得る。したがって、基台100Sの上面100aからの配線の盛り上がりが回避された、より薄い配線基板を提供することができる。導体膜のエッチングにより形成される従来のプリント配線板の配線が、配線を支持する基板の表面から突出していることに対し、本開示の典型的な実施形態では、配線パターンの表面は、基台の表面と同じか、さらに低い位置にある。すなわち、高アスペクトかつ微細な配線を有する薄型の配線基板を有利に提供し得る。第1配線パターン131の上面131aおよび基台100Sの上面100aをほぼ同一平面内とすることも容易であり、実装性に優れた配線基板を提供することができる。
【0041】
(変形例)
図4等を参照しながら説明した前述の例では、第1溝構造110の第1底面110bへのさらなるレーザ光の照射により、第1底面110bにドット状の複数の第1凹部111dを形成している。しかしながら、第1底面110bへのさらなるレーザ光の照射の工程における照射パターンは、前述の例に限定されず、例えば、第2方向に沿った走査により、第1底面110bに複数の第2溝を形成してもよい。
【0042】
図9は、前述の実施形態1の変形例を示す図であり、第1溝構造110を形成した後、第1溝構造110の形成時とは異なる照射パターンで第1溝構造110の内部をレーザ光のビームLBで照射した後の状態を模式的に示す。
図9に示す例では、第1底面110b上でレーザ光のビームLBを第2方向に走査することにより、それぞれが第2方向に延びる、前述の第1溝111と同様の複数の第2溝112を第1溝構造110の内部にさらに形成している。
【0043】
ここで、第2方向は、第1方向とは異なる方向であり、典型的には、第1方向に直交する方向である。ただし、第2方向は、第1方向に直交する方向に限定されず、第2方向としては第1方向以外の任意の方向を選択し得る。複数の第1溝111に重ねて複数の第2溝112を形成することにより、結果として、第1溝111と第2溝112とが交差する位置に、より深い部分を形成することができる。これら相対的に深い部分は、複数の第1凹部111dに似たドット状の凹部であり得る。
【0044】
図10は、
図9に示す基台100Sの一部の断面を拡大して示す図であり、複数の第2溝112の延びる第2方向に垂直な平面で基台100Sを切断したときの断面を模式的に示している。第1溝構造110が、複数の第1溝111の集合によって形成される第1底面110bを含む点は、前述の例と同様であるが、ここでは、レーザ光の走査を利用した基台100Sの部分的な除去により、第1底面110bに複数の第2溝112がさらに形成されている。この例では、複数の第1溝111に重ねて複数の第2溝112を形成することにより、第1溝111と第2溝112とが交差する位置に、より深い部分が形成されている。以下では、これらのより深い部分を、便宜的に「第1凹部112d」と呼ぶことがある。
【0045】
複数の第2溝112の各々は、第3の幅W3を有する。第3の幅W3は、第1溝構造110の第1の幅W1よりも小さい。複数の第2溝112形成の工程におけるレーザの出力、パルスの間隔等の設定値は、複数の第1溝111形成の工程における設定値と共通であってもよいし、異なっていてもよい。第2溝112の配置ピッチも、第1溝111の配置ピッチと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
第2方向に沿って間隔をあけてレーザ光のビームLBを照射することによって複数の第1凹部111dを形成することに代えて、この例のように、さらなるレーザ光の照射により、複数の第1溝111の延びる方向(すなわち、第1方向)とは異なる方向に延びる複数の第2溝112を形成してもよい。本実施形態によれば、照射パターンを変えたレーザ光の照射により、第1溝構造110の底部に任意のパターンを比較的容易に形成することができる。この例のように、それぞれが第1の幅W1よりも小さな幅を有する複数の第2溝112を第1底面110bに形成して、底部にグリッド状の凹凸を有する第1溝構造110を得ることにより、アンカー効果の向上が期待できる。すなわち、基台100Sからの第1配線パターン131の剥離を抑制して、配線基板の信頼性を向上させ得る。
【0047】
特に、
図10に示すように、複数の第1溝111に重ねて、これらに交差する複数の第2溝112を第1底面110bに形成することにより、第1溝111および第2溝112の交差する部分に、これらの溝よりも深い第1凹部112dを形成可能である。このような第1凹部112dの形成により、ドット状の複数の第1凹部111dを形成した場合と同様に、アンカー効果をより向上させ得る。また、この例でも第1導電材料の配置の前に第1溝構造110の内部にシランカップリング剤を付与しておくことにより、第1配線パターン131の剥離を抑制するの効果を向上させることができる。
【0048】
複数の第2溝112の形成後の工程は、
図6および
図7を参照しながら説明した前述の例と同様であり得る。すなわち、複数の第2溝112の形成後、
図11に模式的に示すように、第1溝構造110の内部を第1導電材料、例えば導電ペースト130rで充填する。このとき、第1凹部112dの内部が導電ペースト130rで充填される。
【0049】
基台100Sへの導電ペースト130rの付与後、導電ペースト130rを硬化させることにより、
図7の例と同様に、第1溝構造110に整合した形状を有する第1配線パターン131を含む配線基板100Bを得ることができる(
図12参照)。配線基板100Bにおいて、第1溝構造110の第1底面110bは、複数の第1溝111に加えて、それぞれが複数の第1溝111の延びる方向とは異なる方向に延びる複数の第2溝112を含む。
図8を参照して説明した例と同様に、必要に応じて、硬化後の導電ペースト130rの表面および基台100Sの上面100aを研磨してもよい。
【0050】
なお、上述の各例では、第1方向に沿ったレーザ光の走査により、複数の第1溝111を形成している。しかしながら、第1溝構造110の形成におけるレーザスポットの移動の軌跡は、単一の方向に沿った直線的な移動の繰り返しに限定されない。例えば、
図13に破線の円および実線の矢印で模式的に示すように、レーザスポットがジグザグに移動するようにレーザ光を走査することによって基台100Sの表面の部分的な除去を実行し、第1溝構造110を形成してもよい。また、第1溝111は、互いに平行な直線状の複数の溝の形に限定されず、平面視において同心円状、同心の多重の多角形状、渦巻き状等の溝の形であってもよい。
【0051】
(配線基板の製造方法の実施形態2)
基台100Sの上面100a側に第1配線パターン131を形成した後、上記と同様の方法により、基台100Sの下面100b側にさらに配線パターンを形成してもよい。基台100Sの下面100b側にさらに配線パターンを形成することにより、例えば、両面基板を得ることができる。
【0052】
図14は、本開示の他のある実施形態による、配線基板の例示的な製造方法の一部を示す。
図14に例示する配線基板の製造方法は、レーザ光の走査によって基台の他方の主面に第2溝構造を形成する工程(ステップS4)と、第2溝構造形成の工程における照射パターンとは異なる照射パターンで第2溝構造の内部をレーザ光でさらに照射する工程(ステップS5)と、第2溝構造を第2導電材料で充填して第2配線パターンを第2導電材料から形成する工程(ステップS6)とを含む。以下、それぞれの工程の詳細を説明する。
【0053】
(第2溝構造形成工程(D))
図14に示す各ステップは、
図1を参照して説明したステップS1〜S3の実行後に実行され得る。例えば、上述の手順に従い作製された配線基板100Aを準備する。配線基板100Aに代えて、
図12に示す配線基板100Bを用いてもよい。
【0054】
次に、
図2を参照して説明した例と同様にして、基台100Sの他方の主面である下面100b(第2主面)をレーザ光で照射し、レーザ光の走査によって下面100bに第2溝構造を形成する(
図14のステップS4)。例えば、
図2を参照して説明した例と同様にレーザアブレーション装置300を用い、基台100Sの下面100bをレーザ光のビームLBで走査する。レーザ光のビームLBの走査により、基台100Sの下面100b側の一部が除去され、
図15に模式的に示すように、第4の幅W4を有する第2溝構造120が下面100bに形成される。ここで、第2溝構造120に関する第4の幅W4は、第2溝構造120のうち、着目した部分が延びる方向に直交する方向に測った長さを意味する。
【0055】
基台100Sの下面100b上でビームLBをある方向、例えば、第3方向に走査することにより、
図15に模式的に示すように、それぞれが第3方向に沿って延びる複数の第3溝123を基台100Sの下面100b側に形成することができる。
図15は、第2溝構造120の形成の途中の状態を模式的に示している。複数の第3溝123の形成の工程におけるビームLBの走査の方向である第3方向は、上述の第1方向または第2方向と平行であってもよいし、これらのいずれとも異なる方向であってもよい。
【0056】
ここでは、基台100Sの上面100a側への第1溝構造110の形成と同様に、レーザ光のビームLBの走査によって複数の第3溝123を形成する。それぞれが第3方向に沿って延びる複数の第3溝123を適当なピッチで形成することにより、複数の第3溝123の集合によって規定される底部を有する第2溝構造120を形成することができる。
【0057】
図15に示す例では、第2溝構造120は、第3方向とは異なる方向に延び、かつ、第4の幅W4を有する部分を含む。第2溝構造120の形成の原理から容易に理解されるように、各第3溝123が第5の幅W5を有するとすれば(後述の
図18を参照)、第5の幅W5は、第2溝構造120の第4の幅W4よりも小さい。
【0058】
図16は、第2溝構造120の形成後の基台100Sの一例を示す。
図16では、複数の第3溝123の延びる第3方向を両矢印d3で模式的に示す。
図16に例示する構成において、第2溝構造120は、上述の第3方向とは異なる方向に延びる概ね直線状の形状を有する。
図16に模式的に示すように、この例では、基台100Sの下面100b側の第2溝構造120の一部は、基台100Sの上面100a側に位置する第1溝構造110に重なっている。もちろん、第2溝構造120の平面視における形状は、上述の第1溝構造110と同様に任意である。第2溝構造120が複数の部分を含む場合には、各部分の形状および配置、ならびに、それら複数の部分の数も任意である。
【0059】
本実施形態では、レーザ光を用いて複数の第3溝123を形成することによって第2溝構造120を形成するので、第2溝構造120の形状に関しても高い自由度が得られる。第2溝構造120の形成の工程におけるレーザ光の照射条件は、第1溝構造110の形成の工程におけるレーザ光の照射条件と共通であってもよいし、異なっていてもよい。
【0060】
(第2照射工程(E))
次に、第2溝構造形成の工程における照射パターンとは異なる照射パターンで第2溝構造の内部をレーザ光でさらに照射する(
図14のステップS5)。例えば、第2溝構造120の底部にレーザ光のビームLBをパルス照射することにより、第1溝構造110の底部に複数の第1凹部111dを形成したことと同様にして、第2溝構造120の底部に複数の凹部を形成することができる。
【0061】
図17は、
図16に示す状態から第2溝構造120の内部をレーザ光でさらに照射した後の状態を模式的に示す。この例では、第2溝構造120の底部に対するレーザ光の照射により、第2溝構造120の底部にドット状の複数の第2凹部123dを形成している。
図17に模式的に示すように、第2凹部123dの直径は、典型的には、各第3溝123の幅(第5の幅)よりも大きい。
【0062】
第2溝構造120の底部へのさらなるレーザ光の照射の工程における照射パターンは、第2溝構造120の形成の際の照射パターンとは異なる。この例では、上述の第3方向に交差する第4方向(
図17中に両矢印d4で示す)に沿って第2溝構造120の底部をレーザ光で間欠的に照射することにより、第4方向に並ぶ複数の第2凹部123dを第2溝構造120の底部に形成している。第4方向は、上述の第1方向、第2方向および第3方向のいずれかと平行な方向であってもかまわない。あるいは、第4方向が、第1方向、第2方向および第3方向のいずれとも異なる方向であってもかまわない。
【0063】
ここで、第2凹部123dの形成の工程における、レーザの出力等の照射条件は、基台100Sの上面100a側への第1凹部111dの形成時のレーザ光の照射条件と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、ここでは、基台100Sの上面100a側の第1凹部111dと同様に、複数の第2凹部123dを第2溝構造120の底部に三角格子状に配置しているが、複数の第2凹部123dの数および配置は、もちろん任意である。なお、上述の複数の第3溝123のピッチは、2つの第2凹部123dの中心間距離に対して例えば10%以上100%以下の範囲であり得る。複数の第2凹部123dに、深さの異なる複数の凹部を混在させてもよい。
【0064】
(第2配線パターン形成工程(F))
次に、第2溝構造を第2導電材料で充填して第2配線パターンを第2導電材料から形成する(
図14のステップS6)。
図18に模式的に示すように、例えば、スキージ190を用いた印刷によって第2溝構造120を第2導電材料で充填する。なお、
図18は、基台100Sの一部の断面を拡大して模式的に示す図であり、
図18では、わかり易さのために、基台100Sの上面100a側の第1溝構造110と、下面100b側の第2溝構造120とが重なる位置で基台100Sを切断したときの断面の一例を示している。
【0065】
第2導電材料は、上述の第1導電材料と共通であってもよいし、第1導電材料と異なっていてもよい。ここでは、上述の導電ペースト130rを第2導電材料として用いている。基台100Sの下面100b上でスキージ190を移動させることにより、導電ペースト130rの、基台100Sの下面100b側の表面130rbの位置を基台100Sの下面100bに概ね揃えることができる。第2溝構造120内への導電ペースト130rの配置の際、第3溝123の内部および第2凹部123dの内部は、導電ペースト130rで充填される。もちろん、基台100Sへの導電ペースト130rの付与の方法は、印刷法に限定されない。
【0066】
図18から理解されるように、第2溝構造120は、複数の第3溝123の集合によって形成される第2底面120bを含む。1以上の第3溝123に重ねてレーザ光を照射することにより、第2底面120bの一部をさらに除去でき、より深い部分として複数の第2凹部123dを第2底面120bに形成し得る。ここで、第2溝構造120は、例えば5μm以上50μm以下程度の範囲の深さを有し得る。第2溝構造120の深さDp2は、互いに隣接する2つの第3溝123の間に形成される複数の頂部の位置から基台110Sの下面100bまでの距離として定義される。
【0067】
次に、第2溝構造120の内部に配置された第2導電材料を加熱または光の照射によって硬化させる。ここでは、第2導電材料としての導電ペースト130rを硬化させることにより、
図19に模式的に示すように、基台100Sの下面100bの法線方向から見たときの第2溝構造120の形状に整合した形状を有する第2配線パターン132を導電ペースト130rから形成することができる。
【0068】
導電ペースト130rの硬化後、必要に応じて、
図8に示す例と同様にして、硬化後の導電ペースト130rの表面および基台100Sの下面100bを研磨する研磨工程を付加的に実施してもよい。研磨により、
図20に模式的に示すように、第2配線パターン132の表面132bを基台100Sの下面100bに整合させ得る。
【0069】
以上の工程により、第1配線パターン131を上面100a側に有し、かつ、第2配線パターン132を下面100b側に有する配線基板100Cが得られる。
【0070】
本実施形態によれば、基台100Sの下面100b側にも任意の形状を有する第2配線パターン132を比較的簡易な工程によって形成することができる。第1溝構造110と同様に第2溝構造120をレーザ光の照射によって形成するので、第2配線パターン132の形状に関しても高い自由度が得られ、高精度の細線の形での配線の形成も比較的容易である。また、高アスペクト比の配線を実現し得る。すなわち、本実施形態によれば、比較的簡易な工程により、基台100Sの両面に高アスペクト比のファインな配線パターンを有する配線基板を提供可能である。
【0071】
図20に示す例では、第1配線パターン131の表面(上面131a)は、基台100Sの上面100aに整合しており、第2配線パターン132の表面132bも、基台100Sの下面100bに整合している。このように、本実施形態によれば、基台100Sの表面からの配線の盛り上がりが回避された、より薄い両面基板が提供される。
【0072】
さらに、本実施形態では、基台100Sの上面100a側における第1配線パターン131の形成と同様に基台100Sの下面100b側についても、第2溝構造120の形成後に、第2溝構造120の形成の工程における照射パターンとは異なる照射パターンで第2溝構造120の内部をレーザ光でさらに照射している。これにより、複数の第3溝123を含む第2底面120bにさらなる凹凸形状を付与することができる。例えば、
図17を参照して説明したように、ドット状の複数の第2凹部123dを第2底面120bに形成し得る。例えば複数の第2凹部123dの形でより深い部分を第2底面120bに形成することにより、第2配線パターン132および基台100Sの界面の面積が増大し、より強力なアンカー効果が得られる。すなわち、基台100Sからの第2配線パターン132の剥離が抑制され、配線基板の信頼性がより向上し得る。
【0073】
(変形例)
第1配線パターン131の形成に関して
図9〜
図12を参照しながら説明した例と同様に、第2溝構造120の第2底面120bへのさらなるレーザ光の照射によって第2底面120bにドット状の複数の第2凹部123dを形成することに代えて、以下に説明するように、複数の第4溝を形成してもよい。
【0074】
図21は、第2溝構造120を形成した後、第2溝構造120の形成時とは異なる照射パターンで第2溝構造120の内部をレーザ光のビームLBで照射した後の状態を模式的に示す。
図21に示す例では、例えば、上述の第4方向に沿った走査により、それぞれが第4方向に延びる、第3溝123と同様の複数の第4溝124を第2溝構造120の内部にさらに形成している。ここでは、第4方向としては、第3方向と異なる方向が選ばれる。すなわち、複数の第4溝124のそれぞれは、複数の第3溝123とは異なる方向に延びる。
【0075】
図22は、
図21に示す基台100Sの一部の断面を拡大して示す。第2溝構造120の第2底面120bへのレーザ光のビームLBの走査の方向である照射における第4方向は、複数の第3溝123が延びる第3方向とは異なる方向である。この例では、第2溝構造120の第2底面120bに対するさらなるレーザ光の照射によって第2底面120bが部分的に除去され、その結果、第2底面120bに複数の第4溝124が形成されている。
【0076】
図22に模式的に示すように、複数の第4溝124の各々は、第6の幅W6を有する。第6の幅W6は、第2溝構造120の第4の幅W4(
図15参照)よりも小さい。複数の第4溝124形成の工程におけるレーザの出力、パルスの間隔等の設定値は、複数の第3溝123形成の工程における設定値と共通であってもよいし、異なっていてもよい。第4溝124の配置ピッチも、第3溝123の配置ピッチと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0077】
複数の第3溝123に重ねて複数の第4溝124を形成することにより、第3溝123と第4溝124とが交差する位置に、より深い部分が形成される。これら相対的に深い部分は、複数の第2凹部123dに似たドット状の凹部であり得る。以下では、これらのより深い部分を、便宜的に「第2凹部124d」と呼ぶことがある。
【0078】
図23は、
図22に示す状態から第2配線パターンを形成した状態を模式的に示す。
図18を参照しながら説明した例と同様にして第2溝構造120の内部を第2導電材料で充填することにより、第2溝構造120の形状に整合した形状を有する第2配線パターン132を形成することができる。
【0079】
図23に示す配線基板100Dは、上述の配線基板100Cと同様に、基台100Sの下面100b側の第2溝構造120内に配置された第2配線パターン132を有する。この例のように、複数の第3溝123の形成時とは照射パターンを変えたレーザ光の照射によって、複数の第3溝123と交差する複数の第4溝124を形成することにより、第2溝構造120の内部に複数の第2凹部124dをさらに形成してもよい。ドット状の複数の第2凹部123dの形成に代えて、複数の第3溝123に重ねて複数の第4溝124を形成することによっても、基台100Sの両面に高アスペクト比のファインな配線パターンを有する、信頼性の向上された配線基板を提供可能である。
【0080】
複数の第2凹部124dの形成により、第2配線パターン132の一部を、複数の第3溝123および第4溝124の内部だけでなく第2凹部124dの内部にも位置させ得る。したがって、第2溝構造120の第2底面120bに第2溝構造120よりも細い複数の第4溝124をさらに形成することにより、第2配線パターン132および基台100Sの界面の面積が増大し、アンカー効果がより向上する。これにより、基台100Sからの第2配線パターン132の剥離を抑制して、配線基板の信頼性を向上させる効果が期待できる。
【0081】
図24は、本開示の実施形態2による配線基板のさらなる変形例を示す。
図24に示す配線基板100Eは、上面100a側および下面100b側に第1溝構造110および第2溝構造120をそれぞれ有する基台100Sと、第1溝構造110の内部に配置された第1配線パターン131と、第2溝構造120の内部に配置された第2配線パターン132と、基台100Sの内部に形成された少なくとも1つのビア150とを含む。
【0082】
図24に例示する構成において、第1溝構造110は、複数の第1溝111の集合によって構成された第1底面110bを有し、第1底面110bには、
図8等に示す配線基板100Aの例と同様に複数の第1凹部111dが形成されている。また、第2溝構造120は、複数の第3溝123の集合によって構成された第2底面120bを有し、第2底面120bには、
図20等に示す配線基板100Cの例と同様に複数の第2凹部123dが形成されている。
【0083】
図24に模式的に示すように、ビア150の一端は、基台100Sの上面100a側の第1配線パターン131に接続されており、ビア150の他端は、下面100b側の第2配線パターン132に接続されている。すなわち、基台100Sを貫通するビア150は、第1配線パターン131と第2配線パターン132とを互いに電気的に接続している。なお、
図24では、図面が過度に複雑となることを避けるために、ビア150を1つだけ図示しているが、ビア150の数およびその配置は、任意である。上面100aまたは下面100bに平行に配線基板を切断したときのビア150の断面形状は、特定の形状に限定されない。
【0084】
既に説明したように、本開示の実施形態では、第1溝構造110および第2溝構造120は、レーザ光のビームLBの走査によって形成され、平面視における形状に高い自由度を有している。また、第1溝構造110内に形成される第1配線パターン131および第2溝構造120内に形成される第2配線パターン132は、それぞれ、第1溝構造110および第2溝構造120に応じた平面視形状に形成される。つまり、レーザ光の照射パターンを適切に決定することにより、任意の平面視形状を有する第1配線パターン131および第2配線パターン132を容易に得ることができる。したがって、本実施形態によれば、工程の複雑化を回避しながら、基台の両面に任意の形状の配線パターンを有し、かつ、基台の内部にこれらの配線パターンを結ぶ導電経路を有するインターポーザを提供することが可能である。
【0085】
以下、
図24に示す配線基板100Eの例示的な製造方法の概略を説明する。まず、
図2〜
図7を参照して説明した例と同様にして、基台100Sの上面100a側に第1配線パターン131を形成する。次に、例えば、
図15および
図16を参照して説明した例と同様にして、基台100Sの下面100b側に第2溝構造120を形成する。
図25は、第2溝構造120が設けられた状態の基台100Sを模式的に示す。
【0086】
(貫通孔形成工程(G))
次に、レーザ光の照射により、基台100Sの上面100a側の第1溝構造110と、下面100b側の第2溝構造120とを結ぶ貫通孔を形成する。例えばCO
2レーザを用いる場合であれば、複数の第3溝123の形成時と比較してレーザの出力を上げて第2底面120bをレーザ光のビームLBで照射することにより、
図26に模式的に示すように、第2底面120bから第1溝構造110に達する貫通孔150pを基台100Sの内部に形成することができる。あるいは、YAGレーザを用いる場合には、第2底面120bのうち、貫通孔150pを形成すべき領域の中心の周りに円を描くようにレーザスポットを移動させるような加工により、貫通孔150pを形成し得る。貫通孔150pを設ける位置は、上面視において第1溝構造110と第2溝構造120とが重なる位置であれば任意であり、貫通孔150pの数も任意に決定してよい。
【0087】
次に、上述の第2照射工程(E)を実行する。つまり、
図17を参照して説明した例と同様にして、第2溝構造120の内部をレーザ光でさらに照射することにより、第2底面120bに例えばドット状の複数の第2凹部123dを形成する。
図27は、第2底面120bに複数の第2凹部123dが設けられた状態の基台100Sを模式的に示す。なお、複数の第2凹部123dに代えて、
図21および
図22を参照しながら説明した例のように、複数の第3溝123に交差する複数の第4溝124を第2底面120bに形成することにより、第3溝123と第4溝124との交点の位置に複数の第2凹部124dを形成してもよい。また、ここでは、第1溝構造110の底部に複数の第1凹部111dが設けられた例を示しているが、複数の第1凹部111dに代えて、複数の第2溝112を第1底面110bに形成することにより、第1溝111と第2溝112との交点の位置に複数の第1凹部112dを形成してもよい。このように、本明細書に示す種々の構成は、技術的に矛盾が生じない限りにおいて任意に組み合わせることが可能である。
【0088】
次に、上述の第2配線パターン形成工程(F)を実行する。ただし、ここでは、第2溝構造120の内部だけでなく、貫通孔150pの内部にも第2導電材料を配置する。
図28に示す例では、スキージ190を用いた印刷によって第2溝構造120および貫通孔150pを第2導電材料としての導電ペースト130rで充填している。真空印刷工法と呼ばれる、真空引きを行いながら充填を実行する手法によれば、気泡の混入を抑制しながら貫通孔150pに導電ペースト130rを充填できる。この工程において、導電ペースト130rは、典型的には、
図28に示すように、貫通孔150pの内側面によって規定される空間の全体を占める。ただし、この例に限定されず、
図29に模式的に示すように、貫通孔150pの内側面に選択的に導電ペースト130rを付与してもよい。この場合、貫通孔150p内に筒状に形成された導電ペースト130rの膜の内側の空間は、樹脂等によって埋められ得る。
【0089】
次に、第2溝構造120の内部および貫通孔150pの内部に配置された、第2導電材料としての導電ペースト130rを硬化させる。導電ペースト130rの硬化により、導電ペースト130rのうち貫通孔150pの内部に位置する部分からビア150を形成して、基台100Sの上面100a側の第1配線パターン131を下面100b側の第2配線パターン132にビア150によって接続することができる。以上の工程により、
図24に示す配線基板100Eが得られる。
【0090】
ここで説明した例によれば、基台100Sの上面100a側と下面100b側との間の導電経路を比較的容易に形成できる。基台100Sの上面100a側の第1配線パターン131と、下面100b側の第2配線パターン132とは、ビア150によって電気的に接続されるだけでなく、物理的にも結合されるので、ビア150の形成により、基台からの配線パターンの剥離をより効果的に抑制可能である。すなわち、工程の複雑化を回避しながら、基台からの配線パターンの剥離が抑制された両面基板を提供することが可能になる。
【0091】
ここで説明した例では、上述の第2溝構造形成工程(D)と、第2照射工程(E)との間に、貫通孔150pの形成の工程を実行している。しかしながら、貫通孔の形成の工程を実行するタイミングは、この例に限定されない。貫通孔の形成の工程は、例えば、第2溝構造120の第2底面120bを構成する複数の第3溝123の形成のための第2溝構造形成工程(D)と同時に実行されてもよいし、複数の第2凹部123dまたは複数の第4溝124の形成の後に実行されてもよい。あるいは、
図30に示すように、第2溝構造120の形成の前に、レーザ加工、パンチング、NC旋盤を用いた加工等により基台100Sに予め貫通孔を形成してもかまわない。貫通孔形成に適用する加工方法は、基台100Sの材料に応じて適宜選択されればよい。
【0092】
図30に示す例では、第1溝構造110の第1底面110bから基台100Sの下面100bに向かって延びる貫通孔150qの一方の開口は、基台100Sの下面100bに位置している。貫通孔150qの内部への導電材料の配置は、第1溝構造110の内部への第1導電材料の充填の段階で実行されてもよいし、第2溝構造120の内部への第2導電材料の充填の段階で実行されてもよい。
【0093】
基台100Sとしてセラミック基板を適用する場合、焼成前のグリーンシートの状態でパンチング等によってグリーンシートの表面および裏面を結ぶ貫通孔を設けておいてもよい。内部に予めビアが形成された基台を準備してこの基台に対して第1溝構造110を形成してもよいし、第1溝構造110の形成の前に基台100Sに予めビアを形成しておいてもよい。この場合、ビアの一部は、レーザ光の照射によって除去され得る。
【実施例】
【0094】
以下、実施例により、本開示の実施形態による配線基板をより詳細に説明する。もちろん、本開示の実施形態は、以下の実施例によって特定される形態に限定されない。
【0095】
(溝構造の底部の形状に関する評価1)
白色の樹脂板に対するレーザ光のビームの走査により樹脂板の一方の主面に溝構造を形成し、照射パターンを変えて溝構造の底部をレーザ光でさらに照射した複数のサンプルを作製し、これらのサンプルについて溝構造の底部の形状に関する評価を行った。
【0096】
(実施例1−1)
まず、母材としてのシリコーン樹脂に二酸化チタンの粒子が分散された樹脂板を準備した。次に、この樹脂板の一方の主面上でレーザ光のビームをある方向(第1方向)に走査することにより、それぞれが第1方向に沿って延びる複数の第1溝を樹脂板に形成した(上述の第1溝構造形成工程に相当)。ここでは、樹脂板の主面上の相異なる5つの領域に対してレーザ光のビームの走査を実行することにより、それぞれが複数の第1溝の集合によって規定される第1底面を有する5つの部分を含む第1溝構造を樹脂板に形成した。このときのレーザ光の照射条件を以下に示す。
レーザ光のピーク波長:532nm
レーザ出力:2.4W
パルス幅:100ナノ秒
周波数:50kHz
送り速度:200mm/s
デフォーカス:0μm
第1溝のピッチ:15μmまたは30μm
【0097】
次に、第1溝構造に含まれる5つの部分のうちから、第1溝のピッチが15μmとされた1つを無作為に選び、第1方向と交差する第2方向にレーザ光のビームを走査して、ここで選び出された部分(以下、第1部分と呼ぶ)の底部をレーザ光のビームで照射した(上述の第1照射工程に相当)。これにより、第1部分の底部に、
図4および
図5に示す例と同様にドット状の複数の第1凹部を形成し、実施例1−1のサンプルとした。なお、ここでは、第2方向として第1方向に直交する方向を選んだ。上面視において各第1凹部は、およそ0.1mmの直径を有していた。このときのレーザ光の照射条件を以下に示す。
レーザ光のピーク波長:532nm
レーザ出力:2.4W
パルス幅:100ナノ秒
周波数:50kHz
送り速度:200mm/s
デフォーカス:0μm
第1凹部の中心間距離:15μm
【0098】
図31は、実施例1−1のサンプルの第1底面を拡大して示す顕微鏡画像である。
図32は、レーザー顕微鏡によって得られた、実施例1−1のサンプルに関する断面プロファイルを示し、
図31のXXXII−XXXII断面図に相当する。
図32中の水平の白い一点鎖線は、第1溝構造の形成前における樹脂板の表面の位置を示している。
図31に示すように、ここでは、第1部分の底部に、紙面の水平方向に並ぶ3つの第1凹部が形成されている。
図32に示す断面プロファイル中の3つの第1凹部の深さの平均値は、およそ120μmであった。
【0099】
(実施例1−2)
第1溝構造に含まれる5つの部分のうち、第1溝のピッチが15μmとされた他の1つを無作為に選び、レーザ光の照射条件のうちレーザ出力を1.2Wとし、第1凹部の中心間距離が60μmとなるように周波数を変更したこと以外は実施例1−1と同様にして、ここで選び出された部分(以下、第2部分と呼ぶ)の底部をレーザ光のビームで照射した。これにより、第2部分の底部にドット状の複数の第1凹部を形成し、実施例1−2のサンプルとした。
【0100】
図33は、実施例1−2のサンプルの第1底面を拡大して示す顕微鏡画像である。
図34は、レーザー顕微鏡によって得られた、実施例1−2のサンプルに関する断面プロファイルを示し、
図33のXXXIV−XXXIV断面図に相当する。
図32と同様に、
図34中の水平の白い一点鎖線は、第1溝構造の形成前における樹脂板の表面の位置を示している。
図33からは確認しにくいが、ここでは、
図31に示す例と同様に、XXXIV−XXXIV線に沿って3つの第1凹部が形成されている。
図34に示す断面プロファイル中の3つの第1凹部の深さの平均値は、およそ50μmであった。
【0101】
(実施例1−3)
第1溝構造に含まれる5つの部分のうち、第1溝のピッチが30μmとされた1つを無作為に選び、レーザ光の照射条件のうち第1凹部の中心間距離が30μmとなるように周波数を変更したこと以外は実施例1−2と同様にして、ここで選び出された部分(以下、第3部分と呼ぶ)の底部をレーザ光のビームで照射した。これにより、第3部分の底部にドット状の複数の第1凹部を形成し、実施例1−3のサンプルとした。
【0102】
図35は、実施例1−3のサンプルの第1底面を拡大して示す顕微鏡画像である。
図36は、レーザー顕微鏡によって得られた、実施例1−3のサンプルに関する断面プロファイルを示し、
図35のXXXVI−XXXVI断面図に相当する。
図36中の水平の白い一点鎖線は、第1溝構造の形成前における樹脂板の表面の位置を示している。
図35からは確認しにくいが、
図31および
図33に示す例と同様に、この例においても、XXXVI−XXXVI線に沿って3つの第1凹部が形成されている。
図36に示す断面プロファイル中の3つの第1凹部の深さの平均値は、およそ40μmであった。
【0103】
(実施例1−4)
第1溝構造に含まれる5つの部分のうち、第1溝のピッチが30μmとされた他の1つを無作為に選び、レーザ光の照射条件のうち第1凹部の中心間距離が60μmとなるように周波数を変更したこと以外は実施例1−3と同様にして、ここで選び出された部分(以下、第4部分と呼ぶ)の底部をレーザ光のビームで照射した。これにより、第4部分の底部にドット状の複数の第1凹部を形成し、実施例1−4のサンプルとした。
【0104】
図37は、実施例1−4のサンプルの第1底面を拡大して示す顕微鏡画像である。
図38は、レーザー顕微鏡によって得られた、実施例1−4のサンプルに関する断面プロファイルを示し、
図37のXXXVIII−XXXVIII断面図に相当する。
図38中の水平の白い一点鎖線は、第1溝構造の形成前における樹脂板の表面の位置を示している。
図37からは確認しにくいが、
図31、
図33および
図35に示す例と同様に、この例においても、XXXVIII−XXXVIII線に沿って3つの第1凹部が形成されている。
図38に示す断面プロファイル中の3つの第1凹部の深さの平均値は、およそ38μmであった。
【0105】
(参考例1−1)
レーザ光の照射条件のうち送り速度を500mm/sに変更したこと以外は実施例1−2と同様にして、第1溝構造に含まれる5つの部分のうち、残りの1つ(以下、第5部分と呼ぶ)の底部をレーザ光のビームで照射した。これにより、第5部分の底部にドット状の複数の第1凹部を形成し、参考例1−1のサンプルとした。
【0106】
図39は、参考例1−1のサンプルの第1底面を拡大して示す顕微鏡画像である。
図40は、レーザー顕微鏡によって得られた、参考例1−1のサンプルに関する断面プロファイルを示し、
図39のXL−XL断面図に相当する。
図40中の水平の白い一点鎖線は、第1溝構造の形成前における樹脂板の表面の位置を示している。
図39からは確認しにくいが、
図31、
図33、
図35および
図37に示す例と同様に、この例においても、XL−XL線に沿って3つの第1凹部が形成されている。
図40に示す断面プロファイル中の3つの第1凹部の深さの平均値は、およそ22μmであった。
【0107】
実施例1−1〜実施例1−4の各サンプルに関する断面プロファイル(
図32、
図34、
図36および
図38)および参考例1−1のサンプルに関する断面プロファイル(
図40)から、互いに隣接する2つの第1溝の間に形成される複数の頂部は、第1溝構造の形成前における樹脂板の表面よりも低い位置にあることがわかった。すなわち、これらのサンプルでは、第1底面の位置は、第1溝構造の形成前における樹脂板の表面よりも低い。そのため、第1溝構造の内部に第1導電材料を配置した場合、第1導電材料が第1溝構造の底部だけでなく、底部と樹脂板の表面との間に位置する第1溝構造の側面にも接触することになり、第1溝構造の側面と第1導電材料との界面でのアンカー効果の発揮が期待される。
【0108】
実施例1−1〜実施例1−4の各サンプルに関する断面プロファイルと、参考例1−1のサンプルに関する断面プロファイルとを比較すればわかるように、参考例1−1のサンプルでは、レーザ光を照射した領域にあまり大きな凹凸は形成されていない。すなわち、第1照射工程において第1底面にドット状の複数の第1凹部を形成する場合、第1底面に適当な深さの第1凹部を形成する観点からは、送り速度を極端に大きくしないことが有益であるとわかった。また、実施例1−1のサンプルに関する断面プロファイルと、実施例1−2〜実施例1−4の各サンプルに関する断面プロファイルとの比較から、同じ送り速度であれば、レーザ出力をある程度の範囲に抑える方が、より細かい形状の凹凸を得やすいことがわかった。
【0109】
(第1配線パターンの形状の評価1)
次に、第1溝構造を導電ペーストで充填して導電ペーストを硬化させることによって第1溝構造内に第1配線パターンを形成し(上述の第1配線パターン形成工程に相当)、断面観察により、第1配線パターンが第1溝構造の底部の形状に追従した形状を有しているかどうかを調べた。
【0110】
(実施例1−5)
以下の手順により、実施例1−2のサンプルの第2部分を導電ペーストで充填して導電ペーストを硬化させ、実施例1−5のサンプルを作製した。ここでは、まず、スキージを用いた印刷法により、第2部分を導電ペーストで充填し、その後、導電ペーストが充填された樹脂板を130℃の温度下に30分置くことにより、導電ペーストを硬化させて第2部分の内部に第1配線パターンを形成した。
【0111】
図41は、導電ペーストの充填前の第2部分を示す顕微鏡画像である。紙面において斜め方向に走る複数の第1溝と、複数の第1凹部とを確認できる。
図42は、第2部分に導電ペーストを充填し、導電ペーストを硬化させた後の断面を示す。以降の説明において、導電ペーストを硬化させた後の断面に関する図は、およそ4mm□の範囲を切断したときの断面を示している。
【0112】
(実施例1−6)
実施例1−3のサンプルの第3部分を導電ペーストで充填したこと以外は実施例1−5のサンプルと同様にして、実施例1−6のサンプルを作製した。
図43は、導電ペーストの充填前の第3部分を示す顕微鏡画像である。
図44は、第3部分に導電ペーストを充填し、導電ペーストを硬化させた後の断面を示す。
【0113】
(実施例1−7)
実施例1−4のサンプルの第4部分を導電ペーストで充填したこと以外は実施例1−5のサンプルと同様にして、実施例1−7のサンプルを作製した。
図45は、導電ペーストの充填前の第4部分を示す顕微鏡画像である。
図46は、第4部分に導電ペーストを充填し、導電ペーストを硬化させた後の断面を示す。
【0114】
実施例1−5〜実施例1−7の各サンプルに関する断面画像(
図42、
図44および
図46)から、いずれのサンプルについても、第1配線パターンの一部が第1溝および第1凹部の内部に入り込んでいることがわかった。すなわち、第1配線パターンは、第1溝構造の底部の形状に良く追従しており、第1配線パターンと第1溝構造の底部との間にボイド等は生じていなかった。
【0115】
(溝構造の底部の形状に関する評価2)
第1照射工程においてドット状の複数の第1凹部を形成することに代えて、第1方向とは異なる第2方向にレーザ光のビームを走査して第1溝構造の底部をレーザ光で照射することにより、第1溝構造の底部に、それぞれが第2方向に延びる複数の第2溝を有する複数のサンプルを作製した。これらのサンプルについて、第1溝構造の底部の形状に関する評価を行った。
【0116】
(実施例2−1)
まず、上述の実施例1−1のサンプルの作製時と同様にして、それぞれが複数の第1溝の集合によって規定される第1底面を有する5つの部分を含む第1溝構造を樹脂板に形成した。ただし、ここでは、第1溝のピッチが50μmとなるようにレーザ光の照射条件を適宜に変更している。以下、これらの5つの部分を第6部分〜第10部分と呼ぶ。
【0117】
次に、第1方向と交差する第2方向にレーザ光のビームを走査して、第1溝構造のうち第6部分の底部をレーザ光のビームで照射した(上述の第1照射工程に相当)。これにより、
図9に示す例と同様にそれぞれが第2方向に延びる複数の第2溝を、第1溝に重ねて第6部分の底部に形成し、実施例2−1のサンプルとした。なお、ここでも、第2方向として第1方向に直交する方向を選んでいる。このときのレーザ光の照射条件を以下に示す。
レーザ光のピーク波長:532nm
レーザ出力:2.4W
パルス幅:100ナノ秒
周波数:50kHz
送り速度:200mm/s
デフォーカス:0μm
第2溝のピッチ:50μm
【0118】
図47は、実施例2−1のサンプルの第1底面を拡大して示す顕微鏡画像である。
図48は、レーザー顕微鏡によって得られた、実施例2−1のサンプルに関する断面プロファイルを示し、
図47のXLVIII−XLVIII断面図に相当する。
図48中の水平の白い一点鎖線は、第1溝構造の形成前における樹脂板の表面の位置を示している。
図48に示すように、ここでは、第6部分の底部に、紙面の水平方向に沿って8つの第1凹部が形成されていた。
図48に示す断面プロファイル中の8つの第1凹部の深さの平均値は、およそ50μmであった。
【0119】
(実施例2−2)
レーザ光の照射条件のうちレーザ出力を1.2Wとしたこと以外は実施例2−1と同様にして、第1溝構造のうち第7部分の底部をレーザ光のビームで照射した。これにより、それぞれが第2方向に延びる複数の第2溝を、第1溝に重ねて第7部分の底部に形成し、実施例2−2のサンプルとした。
【0120】
図49は、実施例2−2のサンプルの第1底面を拡大して示す顕微鏡画像である。
図50は、レーザー顕微鏡によって得られた、実施例2−2のサンプルに関する断面プロファイルを示し、
図49のL−L断面図に相当する。
図48と同様に、
図50中の水平の白い一点鎖線は、第1溝構造の形成前における樹脂板の表面の位置を示している。この例においても、
図48に示す例と同様に、L−L線に沿って8つの第1凹部が形成されていた。
図50に示す断面プロファイル中の8つの第1凹部の深さの平均値は、およそ35μmであった。
【0121】
(実施例2−3)
レーザ光の照射条件のうちレーザ出力を1.6Wとしたこと以外は実施例2−1と同様にして、第1溝構造のうち第8部分の底部をレーザ光のビームで照射した。これにより、それぞれが第2方向に延びる複数の第2溝を、第1溝に重ねて第8部分の底部に形成し、実施例2−3のサンプルとした。
【0122】
図51は、実施例2−3のサンプルの第1底面を拡大して示す顕微鏡画像である。
図52は、レーザー顕微鏡によって得られた、実施例2−3のサンプルに関する断面プロファイルを示し、
図51のLII−LII断面図に相当する。
図52中の水平の白い一点鎖線は、第1溝構造の形成前における樹脂板の表面の位置を示している。
図48および
図50に示す例と同様に、この例においても、LII−LII線に沿って8つの第1凹部が形成されていた。
図52に示す断面プロファイル中の8つの第1凹部の深さの平均値は、およそ37μmであった。
【0123】
(実施例2−4)
レーザ光の照射条件のうちレーザ出力を2Wとしたこと以外は実施例2−1と同様にして、第1溝構造のうち第9部分の底部をレーザ光のビームで照射した。これにより、それぞれが第2方向に延びる複数の第2溝を、第1溝に重ねて第9部分の底部に形成し、実施例2−4のサンプルとした。
【0124】
図53は、実施例2−4のサンプルの第1底面を拡大して示す顕微鏡画像である。
図54は、レーザー顕微鏡によって得られた、実施例2−4のサンプルに関する断面プロファイルを示し、
図53のLIV−LIV断面図に相当する。
図54中の水平の白い一点鎖線は、第1溝構造の形成前における樹脂板の表面の位置を示している。
図48、
図50および
図52に示す例と同様に、この例においても、LIV−LIV線に沿って8つの第1凹部が形成されていた。
図54に示す断面プロファイル中の8つの第1凹部の深さの平均値は、およそ42μmであった。
【0125】
(参考例2−1)
レーザ光の照射条件のうち送り速度を500mm/sとしたこと以外は実施例2−1と同様にして、第1溝構造のうち第10部分の底部をレーザ光のビームで照射した。これにより、それぞれが第2方向に延びる複数の第2溝を、第1溝に重ねて第10部分の底部に形成し、参考例2−1のサンプルとした。
【0126】
図55は、レーザー顕微鏡によって得られた、参考例2−1のサンプルに関する断面プロファイルを示す。
図55中の水平の白い一点鎖線は、第1溝構造の形成前における樹脂板の表面の位置を示している。
図48、
図50、
図52および
図54に示す例と同様に、この例においても、断面視において8つの第1凹部の形成が確認された。
図55に示す断面プロファイル中の8つの第1凹部の深さの平均値は、およそ30μmであった。
【0127】
実施例2−1〜実施例2−4の各サンプルに関する断面プロファイル(
図48、
図50、
図52および
図54)から、実施例1−1〜実施例1−4および参考例1−1のサンプルと同様に、これらのサンプルにおいても、互いに隣接する2つの第1溝の間に形成される複数の頂部は、第1溝構造の形成前における樹脂板の表面よりも低い位置にあることがわかった。したがって、これらのサンプルについても、第1溝構造の側面と第1導電材料との界面でのアンカー効果の発揮が期待される。
【0128】
これに対し、参考例2−1のサンプルに関する断面プロファイル(
図55)を参照すると、参考例2−1のサンプルでは、第1底面の位置は、第1溝構造の形成前における樹脂板の表面の位置に概ね一致している。これは、アスペクト比の大きな第1配線パターンの形成が比較的難しいことを意味する。このことから、第1溝構造の内部に第1導電材料を配置して第1導電材料から第1配線パターンを形成する観点からは、送り速度を極端に大きくしないことが有益であるといえる。
【0129】
(第1配線パターンの形状の評価2)
次に、第1溝構造の底部に複数の第1溝および第2溝を設けた構成に関しても、第1配線パターンが第1溝構造の底部の形状に追従した形状を有するかどうかを調べた。
【0130】
(実施例2−5)
実施例1−5のサンプルと同様にして、第1溝構造のうちの第6部分を導電ペーストで充填して導電ペーストを硬化させた。これにより、導電ペーストから形成された第1配線パターンを第6部分の内部に有する実施例2−5のサンプルを得た。
【0131】
図56は、導電ペーストの充填前の第6部分を示す顕微鏡画像である。
図56では、第1溝構造の底部にジグザグ状の複数の溝を形成したように見えるが、実際には、第1方向に沿ったレーザ光のビームの走査による複数の第1溝の形成と、第2方向に沿ったレーザ光のビームの走査による複数の第2溝の形成とを順次に実行している。
図56中の両矢印d1および両矢印d2は、第1方向および第2方向をそれぞれ表している。
図57は、第6部分に導電ペーストを充填し、導電ペーストを硬化させた後の断面を示す。
図57中の白い点線は、第1溝構造の第1底面のおおよその位置を示している。
【0132】
(実施例2−6)
実施例2−3のサンプルの第8部分を導電ペーストで充填したこと以外は実施例2−5のサンプルと同様にして、実施例2−6のサンプルを作製した。
図58は、導電ペーストの充填前の第8部分を示す顕微鏡画像である。第1方向に沿ったレーザ光のビームの走査による複数の第1溝の形成と、第2方向に沿ったレーザ光のビームの走査による複数の第2溝の形成とを順次に実行した点は、実施例2−5のサンプルと同様である。
図59は、第8部分に導電ペーストを充填し、導電ペーストを硬化させた後の断面を示す。
図57と同様に、
図59中の白い点線は、第1溝構造の第1底面のおおよその位置を示している。
【0133】
(実施例2−7)
実施例2−4のサンプルの第9部分を導電ペーストで充填したこと以外は実施例2−5のサンプルと同様にして、実施例2−7のサンプルを作製した。
図60は、導電ペーストの充填前の第9部分を示す顕微鏡画像である。実施例2−5のサンプルおよび実施例2−6のサンプルと同様に、この例においても、第1方向に沿ったレーザ光のビームの走査による複数の第1溝の形成と、第2方向に沿ったレーザ光のビームの走査による複数の第2溝の形成とを順次に実行した。
図61は、第9部分に導電ペーストを充填し、導電ペーストを硬化させた後の断面を示す。
図61中の白い点線は、第1溝構造の第1底面のおおよその位置を示している。
【0134】
実施例2−5〜実施例2−7の各サンプルに関する断面画像(
図57、
図59および
図61)から、いずれのサンプルについても、第1配線パターンの一部が第1溝および第2溝の内部に入り込んでいることがわかった。すなわち、第1配線パターンは、第1溝構造の底部の形状に良く追従しており、第1配線パターンと第1溝構造の底部との間にボイド等は生じていなかった。
【0135】
(第1配線パターンの密着性に関する評価)
次に、JIS K 5600−5−6(1999)に規定されるクロスカット試験に準じた方法で塗膜の機械的性質の評価と同様にして、第1配線パターンの密着性に関する簡易な評価を行った。
【0136】
(実施例3−1)
まず、複数の第1溝の集合によって規定される第1底面を有する7つの矩形状の部分を含む第1溝構造を樹脂板に形成した。このときのレーザ光の照射条件を以下に示す。
レーザ光のピーク波長:532nm
レーザ出力:0.3W〜2.8W
パルス幅:100ナノ秒
周波数:50kHz
送り速度:200mm/s
デフォーカス:0μm
第1溝のピッチ:15μm
【0137】
以下では、ここで形成された7つの部分を第11部分〜第17部分と呼ぶ。ここでは、第11部分〜第17部分の間で第1溝の深さが互いに異なるようにレーザ出力を調整した。第11部分の形成時におけるレーザ出力は、0.3Wであった。第11部分〜第17部分の上面視における寸法は、およそ300μm□〜500μm□の範囲であった。
【0138】
次に、第1方向と交差する第2方向にレーザ光のビームを走査して、第1溝構造のうち第11部分の底部をレーザ光のビームで照射した。これにより、
図9に示す例と同様にそれぞれが第2方向に延びる複数の第2溝を、第1溝に重ねて第11部分の底部に形成した。なお、ここでも、第2方向として第1方向に直交する方向を選んでいる。このときのレーザ光の照射条件を以下に示す。
レーザ光のピーク波長:532nm
レーザ出力:0.3W
パルス幅:100ナノ秒
周波数:50kHz
送り速度:200mm/s
デフォーカス:0μm
第2溝のピッチ:20μm
なお、レーザ顕微鏡による断面撮影を利用した測定によると、第2溝の深さの平均値は、およそ5μmであった。
【0139】
次に、実施例1−5のサンプルと同様にして、第1溝構造のうちの第11部分を導電ペーストで充填して導電ペーストを硬化させた。これにより、導電ペーストから形成された第1配線パターンを第11部分の内部に有する実施例3−1のサンプルを得た。
【0140】
(実施例3−2)
第1溝および第2溝の深さがより大きくなるように、レーザ光の照射の条件のうちレーザ出力を0.6Wに変更したこと以外は実施例3−1のサンプルと同様にして、それぞれが第2方向に延びる複数の第2溝を第1溝に重ねて第12部分の底部に形成した。レーザ顕微鏡による断面撮影を利用した測定によると、形成された第2溝の深さの平均値は、およそ10μmであった。
【0141】
次に、実施例3−1のサンプルと同様にして、第1溝構造のうちの第12部分を導電ペーストで充填して導電ペーストを硬化させた。これにより、導電ペーストから形成された第1配線パターンを第12部分の内部に有する実施例3−2のサンプルを得た。
【0142】
(実施例3−3)
第1溝および第2溝の深さがより大きくなるように、レーザ光の照射の条件のうちレーザ出力を1.2Wに変更したこと以外は実施例3−1のサンプルと同様にして、それぞれが第2方向に延びる複数の第2溝を第1溝に重ねて第13部分の底部に形成した。レーザ顕微鏡による断面撮影を利用した測定によると、形成された第2溝の深さの平均値は、およそ25μmであった。
【0143】
次に、実施例3−1のサンプルと同様にして、第1溝構造のうちの第13部分を導電ペーストで充填して導電ペーストを硬化させた。これにより、導電ペーストから形成された第1配線パターンを第13部分の内部に有する実施例3−3のサンプルを得た。
【0144】
(実施例3−4)
第1溝および第2溝の深さがより大きくなるように、レーザ光の照射の条件のうちレーザ出力を2.4Wに変更したこと以外は実施例3−1のサンプルと同様にして、それぞれが第2方向に延びる複数の第2溝を第1溝に重ねて第14部分の底部に形成した。レーザ顕微鏡による断面撮影を利用した測定によると、形成された第2溝の深さの平均値は、およそ50μmであった。
【0145】
次に、実施例3−1のサンプルと同様にして、第1溝構造のうちの第14部分を導電ペーストで充填して導電ペーストを硬化させた。これにより、導電ペーストから形成された第1配線パターンを第14部分の内部に有する実施例3−4のサンプルを得た。
【0146】
(比較例3−1)
第1溝の形成において、第1溝の深さがより小さくなるようにレーザ光の照射の条件を変更したこと以外は実施例3−1のサンプルと同様にして、それぞれが第1方向に延びる複数の第1溝を有する第15部分を形成した。複数の第1溝の形成に際し、ここでは、0.2Wに変更して複数の第1溝の形成を実行した。なお、ここでは複数の第2溝の形成は行っていない。レーザ顕微鏡による断面撮影を利用した測定によると、第1溝の深さの平均値は、およそ1.5μmであった。
【0147】
次に、実施例3−1のサンプルと同様にして、第1溝構造のうちの第15部分を導電ペーストで充填して導電ペーストを硬化させた。これにより、導電ペーストから形成された第1配線パターンを第15部分の内部に有する比較例3−1のサンプルを得た。
【0148】
(比較例3−2)
比較例3−1のサンプルと同様に、実施例3−1のサンプルと比較して第1溝の深さがより小さくなるようにレーザ光の照射の条件を変更して、それぞれが第1方向に延びる複数の第1溝を有する第16部分を形成した。複数の第1溝の形成に際し、ここでは、0.2Wに変更して複数の第1溝の形成を実行した。
【0149】
次に、第1方向と交差する第2方向にレーザ光のビームを走査して、第1溝構造のうち第16部分の底部をレーザ光のビームで照射することにより、
図9に示す例と同様にそれぞれが第2方向に延びる複数の第2溝を、第1溝に重ねて第16部分の底部に形成した。なお、ここでも、第2方向として第1方向に直交する方向を選んでいる。このときのレーザ光の照射条件は、レーザ出力を0.2Wとし、第2溝のピッチが20μmとなるようにしたこと以外は、第1溝の形成時と共通である。なお、レーザ顕微鏡による断面撮影を利用した測定によると、第2溝の深さの平均値は、およそ3μmであった。
【0150】
次に、実施例3−1のサンプルと同様にして、第1溝構造のうちの第16部分を導電ペーストで充填して導電ペーストを硬化させた。これにより、導電ペーストから形成された第1配線パターンを第16部分の内部に有する比較例3−2のサンプルを得た。
【0151】
(比較例3−3)
第1溝の形成において、第1溝の深さがより大きくなるようにレーザ光の照射の条件を変更したこと以外は実施例3−1のサンプルと同様にして、それぞれが第1方向に延びる複数の第1溝を有する第17部分を形成した。複数の第1溝の形成に際し、ここでは、2.8Wに変更して複数の第1溝の形成を実行した。
【0152】
次に、レーザ出力を2.8Wとしたこと以外は比較例3−2のサンプルと同様にして、第1方向と交差する第2方向にレーザ光のビームを走査して、第1溝構造のうち第17部分の底部をレーザ光のビームで照射することにより、複数の第2溝を第1溝に重ねて第17部分の底部に形成した。レーザ顕微鏡による断面撮影を利用した測定によると、第2溝の深さの平均値は、およそ60μmであった。
【0153】
次に、実施例3−1のサンプルと同様にして、第1溝構造のうちの第17部分の内部への導電ペーストの充填を試みた。しかしながら、第17部分の内部に十分に導電ペーストが充填されず、導電ペーストを硬化させたものの、所期の形状の配線パターンが得られなかった。
【0154】
次に、実施例3−1〜実施例3−4、比較例3−1および比較例3−2の各サンプルについて、カッターを利用して、第1底面に達する溝をグリッド状に第1配線パターンに形成することにより、合計25個の矩形状の区画を形成した。このとき、およそ1mmのピッチで第1配線パターンに溝を形成した。
【0155】
次に、第1配線パターンに形成された複数の区画を覆うようにセロハンテープを第1配線パターンの表面に貼り付け、テープを貼付してから5分が経過する前に、第1配線パターンの表面の法線方向にテープを剥離した。このとき、第1配線パターンに形成された25個の区画のうち、テープ側に付着することにより樹脂板から剥離した部分の生じた区画の割合を調べることにより、第1配線パターンの密着性を評価した。
【0156】
実施例3−1のサンプルにおいては、25個の区画のうち剥離が確認された区画は、1つのみであり、実施例3−2〜実施例3−4の各サンプルについては、25個の区画のいずれも剥離が確認されなかった。他方、比較例3−1のサンプルおよび比較例3−2のサンプルでは、25個の区画のうち剥離が確認された区画は、それぞれ、12.5個および5個であった。
【0157】
図62は、実施例3−3のサンプルに関する、導電ペースト充填前の第1底面を拡大して示す顕微鏡画像である。
図63は、実施例3−3のサンプルに関する、テープ剥離後の第1配線パターンの外観を示す。
図64は、比較例3−1のサンプルに関する、導電ペースト充填前の第1底面を拡大して示す顕微鏡画像である。
図65は、比較例3−2のサンプルに関する、テープ剥離後の第1配線パターンの外観を示す。
【0158】
テープ剥離後の結果から、第2溝の形成によりアンカー効果による第1配線パターンの脱落防止の効果が得られ、特に、第2溝の深さが5μm以上であると、第1配線パターンの脱落防止により有利であることがわかった。また、第2溝が深くなるほど、より大きなアンカー効果が得られる傾向が得られるものの、第2溝の深さが60μmを超えない程度とすることが、所望の形状の第1配線パターンの形成に有利であることもわかった。