特許第6848977号(P6848977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6848977熱サイクル用作動媒体、熱サイクルシステム用組成物および熱サイクルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848977
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】熱サイクル用作動媒体、熱サイクルシステム用組成物および熱サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20210315BHJP
   F25B 1/00 20060101ALN20210315BHJP
【FI】
   C09K5/04 F
   C09K5/04 E
   C09K5/04 B
   C09K5/04 A
   !F25B1/00 396Z
【請求項の数】15
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2018-538419(P2018-538419)
(86)(22)【出願日】2017年9月5日
(86)【国際出願番号】JP2017031946
(87)【国際公開番号】WO2018047816
(87)【国際公開日】20180315
【審査請求日】2020年2月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-174940(P2016-174940)
(32)【優先日】2016年9月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 光
(72)【発明者】
【氏名】上野 勝也
(72)【発明者】
【氏名】大塚 哲央
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/178353(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/125885(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/140884(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/125880(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/125878(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/125877(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/005290(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/04、
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリフルオロエチレンおよびジフルオロメタンを含む熱サイクル用作動媒体であって、
さらに、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンから選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記熱サイクル用作動媒体の全量に対する、トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合計の含有割合が90〜100質量%であり、
前記熱サイクル用作動媒体に含まれるトリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合計含有量を1としたときの前記化合物の各々の含有割合(質量割合)は、下記式A〜式Eを全て満たし、かつ、
熱サイクル用作動媒体が非共沸混合物の場合は蒸発開始温度と蒸発完了温度の平均温度、熱サイクル用作動媒体が共沸混合物の場合は蒸発温度、が0℃、熱サイクル用作動媒体が非共沸混合物の場合は凝縮開始温度と凝縮完了温度の平均温度、熱サイクル用作動媒体が共沸混合物の場合は凝縮温度、が40℃、過冷却度(SC)が5℃、および過熱度(SH)が5℃である温度条件(T)で基準冷凍サイクルを運転した際の温度グライドが10℃以下である熱サイクル用作動媒体。
式A;
0 < −1.000×[HFO−1123]+1.179×[R32]+1.316×[1234yf]+1.316×[1234ze(E)]+3.831×[CO2]+2.632×[R152a]+2.390×[R161]+6.262×[プロパン]+2.237×[プロピレン]
式B;
10 > 3.426×[HFO−1123]+5.673×[R32]+2.193×[1234yf]−0.596×[1234ze(E)]−0.768×[CO2]+29.897×[R152a]+64.400×[R161]+118.965×[プロパン]+94.943×[プロピレン]
式C;
1.78 > 1.293×[HFO−1123]+1.029×[R32]+0.369×[1234yf]+0.354×[1234ze(E)]+3.807×[CO2]+0.229×[R152a]+0.406×[R161]+0.568×[プロパン]+0.719×[プロピレン]
式D;
0.91 < 1.214×[HFO−1123]+1.133×[R32]+0.402×[1234yf]+0.346×[1234ze(E)]+3.359×[CO2]+0.323×[R152a]+0.548×[R161]+0.588×[プロパン]+0.725×[プロピレン]
式E;
160 > 0.3×[HFO−1123]+675×[R32]+4×[1234yf]+6×[1234ze(E)]+1×[CO2]+124×[R152a]+12×[R161]+3.3×[プロパン]+1.8×[プロピレン]
(ただし、式A〜式Eにおいて、[HFO−1123]はトリフルオロエチレンの、[R32]はジフルオロメタンの、[R152a]は1,1−ジフルオロエタンの、[R161]はフルオロエタンの、[プロパン]はプロパンの、[プロピレン]はプロピレンの、[CO2]は二酸化炭素の、[1234yf]は2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの、[1234ze(E)]は(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの、トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合計含有量を1としたときの含有割合(質量割合)をそれぞれ示す。)
【請求項2】
トリフルオロエチレンおよびジフルオロメタンを含む熱サイクル用作動媒体であって、
さらに、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンから選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記熱サイクル用作動媒体の全量に対する、トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合計の含有割合が90〜100質量%であり、
前記熱サイクル用作動媒体に含まれるトリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合計含有量を1としたときの前記化合物の各々の含有割合(質量割合)は、下記式A2〜式Eを全て満たし、かつ、
熱サイクル用作動媒体が非共沸混合物の場合は蒸発開始温度と蒸発完了温度の平均温度、熱サイクル用作動媒体が共沸混合物の場合は蒸発温度、が0℃、熱サイクル用作動媒体が非共沸混合物の場合は凝縮開始温度と凝縮完了温度の平均温度、熱サイクル用作動媒体が共沸混合物の場合は凝縮温度、が40℃、過冷却度(SC)が5℃、および過熱度(SH)が5℃である温度条件(T)で基準冷凍サイクルを運転した際の温度グライドが10℃以下である熱サイクル用作動媒体。
式A2;
0 < −1.000×[HFO−1123]+1.033×[R32]+0.896×[1234yf]+0.896×[1234ze(E)]+2.891×[CO2]+1.955×[R152a]+1.410×[R161]+3.737×[プロパン]+1.520×[プロピレン]
式B;
10 > 3.426×[HFO−1123]+5.673×[R32]+2.193×[1234yf]−0.596×[1234ze(E)]−0.768×[CO2]+29.897×[R152a]+64.400×[R161]+118.965×[プロパン]+94.943×[プロピレン]
式C;
1.78 > 1.293×[HFO−1123]+1.029×[R32]+0.369×[1234yf]+0.354×[1234ze(E)]+3.807×[CO2]+0.229×[R152a]+0.406×[R161]+0.568×[プロパン]+0.719×[プロピレン]
式D;
0.91 < 1.214×[HFO−1123]+1.133×[R32]+0.402×[1234yf]+0.346×[1234ze(E)]+3.359×[CO2]+0.323×[R152a]+0.548×[R161]+0.588×[プロパン]+0.725×[プロピレン]
式E;
160 > 0.3×[HFO−1123]+675×[R32]+4×[1234yf]+6×[1234ze(E)]+1×[CO2]+124×[R152a]+12×[R161]+3.3×[プロパン]+1.8×[プロピレン]
(ただし、式A2〜式Eにおいて、[HFO−1123]はトリフルオロエチレンの、[R32]はジフルオロメタンの、[R152a]は1,1−ジフルオロエタンの、[R161]はフルオロエタンの、[プロパン]はプロパンの、[プロピレン]はプロピレンの、[CO2]は二酸化炭素の、[1234yf]は2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの、[1234ze(E)]は(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの、トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合計含有量を1としたときの含有割合(質量割合)をそれぞれ示す。)
【請求項3】
前記式Bに代わって下記式B2を満たす請求項1または2記載の熱サイクル用作動媒体。
式B2; 8 > 3.426×[HFO−1123]+5.673×[R32]+2.193×[1234yf]−0.596×[1234ze(E)]−0.768×[CO2]+29.897×[R152a]+64.400×[R161]+118.965×[プロパン]+94.943×[プロピレン]
【請求項4】
前記式Bに代わって下記式B3を満たす請求項1または2記載の熱サイクル用作動媒体。
式B3; 6 > 3.426×[HFO−1123]+5.673×[R32]+2.193×[1234yf]−0.596×[1234ze(E)]−0.768×[CO2]+29.897×[R152a]+64.400×[R161]+118.965×[プロパン]+94.943×[プロピレン]
【請求項5】
前記式Cに代わって下記式C3を満たす請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱サイクル用作動媒体。
式C3; 1.65 > 1.293×[HFO−1123]+1.029×[R32]+0.369×[1234yf]+0.354×[1234ze(E)]+3.807×[CO2]+0.229×[R152a]+0.406×[R161]+0.568×[プロパン]+0.719×[プロピレン]
【請求項6】
前記式Dに代わって下記式D3を満たす請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱サイクル用作動媒体。
式D3; 1 < 1.214×[HFO−1123]+1.133×[R32]+0.402×[1234yf]+0.346×[1234ze(E)]+3.359×[CO2]+0.323×[R152a]+0.548×[R161]+0.588×[プロパン]+0.725×[プロピレン]
【請求項7】
前記式Eに代わって下記式E3を満たす請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱サイクル用作動媒体。
式E3; 120 > 0.3×[HFO−1123]+675×[R32]+4×[1234yf]+6×[1234ze(E)]+1×[CO2]+124×[R152a]+12×[R161]+3.3×[プロパン]+1.8×[プロピレン]
【請求項8】
前記温度グライドが6℃以下である請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱サイクル用作動媒体。
【請求項9】
下記式(Y)で算出される相対成績係数(RCOPR410A)が0.9超である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱サイクル用作動媒体。
【数1】
(式(Y)中、R410Aは、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンの質量比1:1の混合物を示し、検体は相対評価されるべき作動媒体を示す。検体およびR410Aの成績係数は、検体およびR410Aを用いて前記温度条件(T)で基準冷凍サイクルを運転した際の出力(kW)を、それぞれ前記運転に要した消費動力(kW)で除した値である。)
【請求項10】
前記RCOPR410Aが0.95超である、請求項9に記載の熱サイクル用作動媒体。
【請求項11】
トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合計含有量に対するトリフルオロエチレンの含有割合が1質量%以上80質量%以下である請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱サイクル用作動媒体。
【請求項12】
トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合計含有量に対するジフルオロメタンの含有割合が1質量%以上24質量%以下である請求項1〜11のいずれか一項に記載の熱サイクル用作動媒体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の熱サイクル用作動媒体と、潤滑油とを含む熱サイクルシステム用組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の熱サイクルシステム用組成物を用いた、熱サイクルシステム。
【請求項15】
前記熱サイクルシステムが冷凍・冷蔵機器、空調機器、発電システム、熱輸送装置または二次冷却機である請求項14に記載の熱サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱サイクル用作動媒体およびこれを含む熱サイクルシステム用組成物、並びに該組成物を用いた熱サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍機用冷媒、空調機器用冷媒、発電システム(廃熱回収発電等)用作動媒体、潜熱輸送装置(ヒートパイプ等)用作動媒体、二次冷却媒体等の熱サイクルシステム用の作動媒体としては、クロロトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のクロロフルオロカーボン(CFC)、クロロジフルオロメタン等のヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)が用いられてきた。しかし、CFCおよびHCFCは、成層圏のオゾン層への影響が指摘され、現在、規制の対象となっている。
【0003】
このような経緯から、熱サイクルシステムに用いる熱サイクル用作動媒体としては、CFCやHCFCに代えて、オゾン層への影響が少ない、ジフルオロメタン(HFC−32)、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン(HFC−125)等のヒドロフルオロカーボン(HFC)が用いられるようになった。例えば、R410A(HFC−32とHFC−125の質量比1:1の擬似共沸混合冷媒)等は従来から広く使用されてきた冷媒である。しかし、HFCは、地球温暖化の原因となる可能性が指摘されている。
【0004】
R410Aは、冷凍能力の高さからいわゆるパッケージエアコンやルームエアコンと言われる通常の空調機器等に広く用いられてきた。しかし、地球温暖化係数(GWP)が2088と高く、そのため低GWP作動媒体の開発が求められている。この際、R410Aを単に置き換えて、これまで用いられてきた機器をそのまま使用し続けることを前提にした作動媒体の開発が求められている。
【0005】
最近、炭素−炭素二重結合を有しその結合が大気中のOHラジカルによって分解されやすいことから、オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が少ない作動媒体である、ヒドロフルオロオレフィン(HFO)、すなわち炭素−炭素二重結合を有するHFCに期待が集まっている。本明細書においては、特に断りのない限り飽和のHFCをHFCといい、HFOとは区別して用いる。また、HFCを飽和のヒドロフルオロカーボンのように明記する場合もある。
【0006】
HFOを用いた作動媒体として、例えば、特許文献1には上記特性を有するとともに、優れたサイクル性能が得られるトリフルオロエチレン(HFO−1123)を用いた作動媒体に係る技術が開示されている。特許文献1においては、さらに、該作動媒体の不燃性、サイクル性能等を高める目的で、HFO−1123に、各種HFCやHFOを組み合わせて作動媒体とする試みもされている。
【0007】
ここで、HFO−1123は、高温または高圧下で着火源があるといわゆる自己分解反応を起こす場合がある。そのため、HFO−1123を用いた作動媒体において、他の成分と組み合わせることでHFO−1123の自己分解反応を抑えた作動媒体を得る試みがなされている。例えば、特許文献2には、HFO−1123と、HFC−32と、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)とを所定の割合で混合することで、HFO−1123の自己分解反応を抑えた耐久性の高い作動媒体が得られることが記載されている。
【0008】
しかしながら、熱サイクルシステムに用いる作動媒体においては、より環境負荷が少なく、高性能かつ安全な作動媒体が求められており、例えば、特許文献2で記載された条件よりもさらに厳しい条件下において、HFO−1123の自己分解反応が抑えられた熱サイクル用作動媒体が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2012/157764号
【特許文献2】特許第5783341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、熱サイクルシステムに用いる作動媒体において、R410Aと代替が可能なサイクル性能を有するとともに、装置への負荷が小さく、燃焼性が低く、自己分解性が抑制され、さらに、地球温暖化への影響が低く、そのために漏洩しても安定した使用が可能である熱サイクル用作動媒体およびこれを含む熱サイクルシステム用組成物、ならびに該組成物を用いた熱サイクルシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の構成を有する熱サイクル用作動媒体、熱サイクルシステム用組成物、および熱サイクルシステムを提供する。
【0012】
本発明の第1の態様の熱サイクル用作動媒体は、トリフルオロエチレンおよびジフルオロメタンを含む熱サイクル用作動媒体であって、さらに、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンから選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記熱サイクル用作動媒体の全量に対する、トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合計の含有割合が90〜100質量%であり、
前記熱サイクル用作動媒体に含まれるトリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合計含有量を1としたときの前記化合物の各々の含有割合(質量割合)は、下記式A〜式Eを全て満たし、かつ、
熱サイクル用作動媒体が非共沸混合物の場合は蒸発開始温度と蒸発完了温度の平均温度、熱サイクル用作動媒体が共沸混合物の場合は蒸発温度、が0℃、熱サイクル用作動媒体が非共沸混合物の場合は凝縮開始温度と凝縮完了温度の平均温度、熱サイクル用作動媒体が共沸混合物の場合は凝縮温度、が40℃、過冷却度(SC)が5℃、および過熱度(SH)が5℃である温度条件(T)で基準冷凍サイクルを運転した際の温度グライドが10℃以下である熱サイクル用作動媒体である。
式A;
0 < −1.000×[HFO−1123]+1.179×[R32]+1.316×[1234yf]+1.316×[1234ze(E)]+3.831×[CO2]+2.632×[R152a]+2.390×[R161]+6.262×[プロパン]+2.237×[プロピレン]
式B;
10 > 3.426×[HFO−1123]+5.673×[R32]+2.193×[1234yf]−0.596×[1234ze(E)]−0.768×[CO2]+29.897×[R152a]+64.400×[R161]+118.965×[プロパン]+94.943×[プロピレン]
式C;
1.78 > 1.293×[HFO−1123]+1.029×[R32]+0.369×[1234yf]+0.354×[1234ze(E)]+3.807×[CO2]+0.229×[R152a]+0.406×[R161]+0.568×[プロパン]+0.719×[プロピレン]
式D;
0.91 < 1.214×[HFO−1123]+1.133×[R32]+0.402×[1234yf]+0.346×[1234ze(E)]+3.359×[CO2]+0.323×[R152a]+0.548×[R161]+0.588×[プロパン]+0.725×[プロピレン]
式E;
160 > 0.3×[HFO−1123]+675×[R32]+4×[1234yf]+6×[1234ze(E)]+1×[CO2]+124×[R152a]+12×[R161]+3.3×[プロパン]+1.8×[プロピレン]
(ただし、式A〜式Eにおいて、[HFO−1123]はトリフルオロエチレンの、[R32]はジフルオロメタンの、[R152a]は1,1−ジフルオロエタンの、[R161]はフルオロエタンの、[プロパン]はプロパンの、[プロピレン]はプロピレンの、[CO2]は二酸化炭素の、[1234yf]は2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの、[1234ze(E)]は(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの、トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合計含有量を1としたときの含有割合(質量割合)をそれぞれ示す。)
【0013】
本発明の第2の態様の熱サイクル用作動媒体は、トリフルオロエチレンおよびジフルオロメタンを含む熱サイクル用作動媒体であって、さらに、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンから選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記熱サイクル用作動媒体の全量に対する、トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合計の含有割合が90〜100質量%であり、
前記熱サイクル用作動媒体に含まれるトリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合計含有量を1としたときの前記化合物の各々の含有割合(質量割合)は、下記式A2および上記式B、式C、式Dおよび式Eを全て満たし、かつ、
熱サイクル用作動媒体が非共沸混合物の場合は蒸発開始温度と蒸発完了温度の平均温度、熱サイクル用作動媒体が共沸混合物の場合は蒸発温度、が0℃、熱サイクル用作動媒体が非共沸混合物の場合は凝縮開始温度と凝縮完了温度の平均温度、熱サイクル用作動媒体が共沸混合物の場合は凝縮温度、が40℃、過冷却度(SC)が5℃、および過熱度(SH)が5℃である温度条件(T)で基準冷凍サイクルを運転した際の温度グライドが10℃以下である熱サイクル用作動媒体である。
式A2; 0 < −1.000×[HFO−1123]+1.033×[R32]+0.896×[1234yf]+0.896×[1234ze(E)]+2.891×[CO2]+1.955×[R152a]+1.410×[R161]+3.737×[プロパン]+1.520×[プロピレン](ただし、式A2において、[HFO−1123]、[R32]、[R152a]、[R161]、[プロパン]、[プロピレン]、[CO2]、[1234yf]、[1234ze(E)]は、上記[1]と同じ意味である。)
【0014】
本発明は、本発明の第1の態様または第2の態様の熱サイクル用作動媒体と、潤滑油とを含む熱サイクルシステム用組成物を提供する。
本発明は、本発明の熱サイクルシステム用組成物を用いた、熱サイクルシステムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱サイクルシステムに用いる作動媒体において、R410Aと代替が可能なサイクル性能を有するとともに、装置への負荷が小さい作動媒体が得られる。また、燃焼性が低く、自己分解性が抑制され、さらに、地球温暖化への影響が低く、そのために仮に漏洩しても安定した使用が可能である熱サイクル用作動媒体およびこれを含む熱サイクルシステム用組成物が提供できる。
本発明の熱サイクルシステムは、装置に特別な措置を施すことなく、R410Aと代替可能であり、かつ地球温暖化への影響が少ない熱サイクルシステム用組成物が適用された熱サイクルシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の熱サイクルシステムを評価する基準冷凍サイクルシステムの一例を示す概略構成図である。
図2図1の冷凍サイクルシステムにおける作動媒体の状態変化を圧力−エンタルピ線図上に記載したサイクル図である。
図3】HFO−1123、R32、二酸化炭素およびR161からなる混合物(ただし、[R161]は0質量%でもよい。)における、R32を所定量としたときの、HFO−1123、二酸化炭素、R161組成(質量%)の三角座標図において、本発明の熱サイクル用作動媒体の一実施態様の組成範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
なお、本明細書において、ハロゲン化炭化水素については、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記すが、本明細書では必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。また、幾何異性体を有する化合物の名称およびその略称に付けられた(E)は、E体(トランス体)を示し、(Z)はZ体(シス体)を示す。該化合物の名称、略称において、E体、Z体の明記がない場合、該名称、略称は、E体、Z体、およびE体とZ体の混合物を含む総称を意味する。
本明細書において、数値範囲を表す「〜」では、上下限を含む。
【0018】
本明細書において、特に断りのない限り、[HFO−1123]はトリフルオロエチレンの、[R32]はジフルオロメタンの、[R152a]は1,1−ジフルオロエタンの、[R161]はフルオロエタンの、[プロパン]はプロパンの、[プロピレン]はプロピレンの、[CO2]は二酸化炭素の、[1234yf]は2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの、[1234ze(E)]は(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの、トリフルオロエチレン、ジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合計含有量を1としたときの含有割合(質量割合)をそれぞれ示す。
【0019】
本発明の第1の態様の熱サイクル用作動媒体を第1の作動媒体、第2の態様の熱サイクル用作動媒体を第2の作動媒体ともいう。また、本明細書において、単に作動媒体という場合は、第1の作動媒体および第2の作動媒体の両方を示す。
【0020】
第1の作動媒体および第2の作動媒体は、
トリフルオロエチレン(HFO−1123)と、
ジフルオロメタン(HFC−32またはR−32。R32ともいう。)と、
1,1−ジフルオロエタン(HFC−152aまたはR−152a。R152aともいう。)、フルオロエタン(HFC−161またはR−161。R161ともいう。)、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf。1234yfともいう。)および(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(E)。1234ze(E)ともいう。)から選ばれる少なくとも1種を、
それぞれ以下の含有割合で含有する。
【0021】
作動媒体におけるHFO−1123、R32、R152a、R161、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)の合計の含有割合は、作動媒体全量に対して90〜100質量%である。作動媒体における各化合物の含有割合は、これらの全ての化合物の作動媒体における合計含有量を1としたときの各化合物の含有割合(質量割合)であって、第1の作動媒体においては上記式A、式B、式C,式Dおよび式Eを全て満たす割合である。作動媒体における各化合物の含有割合は、第2の作動媒体においては、上記式A2、式B、式C,式Dおよび式Eを全て満たす割合である。
【0022】
また、本発明の作動媒体は、以下の温度条件(T)で基準冷凍サイクルを運転した際の温度グライドが10℃以下である。
[温度条件(T)]
作動媒体が非共沸混合物の場合は蒸発開始温度と蒸発完了温度の平均温度、作動媒体が共沸混合物の場合は蒸発温度;0℃
作動媒体が非共沸混合物の場合は凝縮開始温度と凝縮完了温度の平均温度、作動媒体が共沸混合物の場合は凝縮温度;40℃
過冷却度(SC);5℃
過熱度(SH);5℃
【0023】
第1の作動媒体における、上記式A〜式Eは、HFO−1123と、R32と、R152a、R161、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)から選ばれる少なくとも1種のみにより構成される作動媒体において、式A〜式Eにそれぞれ対応した以下の(A)〜(E)の特性をそれぞれ満たすための上記各化合物の含有割合(質量割合)の関係式である。以下、HFO−1123と、R32と、R152a、R161、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)から選ばれる少なくとも1種のみにより構成され、式A〜式Eを満たす組成の作動媒体を作動媒体(R1)という。
【0024】
(A)215℃、10MPaGで自己分解反応を起こさない。
(B)燃焼速度が10cm/sec未満である。
(C)下記式(Z)で示される相対圧力(RDPR410A)が1.78未満である。
【数1】
(式(Z)中、R410Aは、R32とペンタフルオロエタン(HFC−125またはR−125。R125ともいう。)の質量比1:1の混合物を示し、検体は相対評価されるべき作動媒体を示す。検体およびR410Aの圧縮機吐出ガス圧力は、検体およびR410Aを用いて、上記温度条件(T)で基準冷凍サイクルを運転した際の圧縮機吐出ガス圧力である。)
【0025】
(D)下記式(X)で示される相対冷凍能力(RQR410A)が0.91を超える。
【数2】
(式(X)中、R410Aは、式(Z)におけるのと同じであり、検体は相対評価されるべき作動媒体を示す。検体およびR410Aの冷凍能力は、検体およびR410Aを用いて、上記温度条件(T)で基準冷凍サイクルを運転した際の出力(kW)である。)
【0026】
(E)気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次報告による地球温暖化係数(100年)が160未満である。以下の説明において、上記地球温暖化係数を「GWP」ともいう。
【0027】
第1の作動媒体は、上記(A)〜(E)の特性を有する作動媒体(R1)を作動媒体全量に対して90〜100質量%含有することで、上記(A)〜(E)と同等の特性を有する。第1の作動媒体は、これらの特性に加えて上記温度グライドの特性を有し、これにより、R410Aと代替が可能なサイクル性能を有するとともに、装置への負荷が小さく、燃焼性が低く、自己分解性が抑制され、さらに、地球温暖化への影響が低く、そのために漏洩しても安定した使用が可能である。
【0028】
本発明においては、上記各特性を満足できるレベルに到達させるために、HFO−1123およびR32の組み合わせを選択し、さらに、R152a、R161、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)から選ばれる少なくとも1種を組み合せる構成を選択した。そして、HFO−1123と、R32と、R152a、R161、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)から選ばれる少なくとも1種とからなる混合物において、上記(A)〜(E)の特性を満足する組成の作動媒体(R1)を見出した。なお、作動媒体(R1)において、温度グライドは10℃以下が好ましく、温度グライドが10℃以下である作動媒体(R1)はそのまま第1の作動媒体としての使用が可能である。
【0029】
第2の作動媒体は、第1の作動媒体に比べて他の特性を維持しながら、より厳しい条件下で自己分解反応を起こさない特性を有するように、HFO−1123と、R32と、R152a、R161、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)から選ばれる少なくとも1種の含有割合が調整された作動媒体である。
【0030】
第2の作動媒体においては、HFO−1123と、R32と、R152a、R161、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)から選ばれる少なくとも1種のみにより構成され、式A2、式B、式C,式Dおよび式Eを満たす組成の作動媒体(以下、作動媒体(R2)という。)を、作動媒体の全量に対して90〜100質量%の含有割合で含有する。
【0031】
作動媒体(R2)は、上記(B)〜(E)の特性を有し、さらに、上記(A)より厳しい条件下で自己分解反応を起こさず、着火試験時の熱分解物が上記(A)より少ない特性(A2)を有する。
【0032】
第2の作動媒体は、上記(A2)、(B)〜(E)の特性を有する作動媒体(R2)を作動媒体の全量に対して90〜100質量%の含有割合で含有することで、上記(A2)、(B)〜(E)と同等の特性を有する。第2の作動媒体は、これらの特性に加えて上記温度グライドの特性を有し、これにより、R410Aと代替が可能なサイクル性能を有するとともに、装置への負荷が小さく、燃焼性が低く、自己分解性がより抑制され、さらに、地球温暖化への影響が低く、そのために漏洩しても安定した使用が可能である。なお、作動媒体(R2)自体についても、温度グライドは10℃以下が好ましく、温度グライドが10℃以下である作動媒体(R2)はそのまま第2の作動媒体としての使用が可能である。以下、作動媒体(R1)および作動媒体(R2)について説明する。
【0033】
表1に、R410Aの作動媒体としての特性とともに、HFO−1123、R32、R152a、R161、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)の単独化合物としての特性および各特性における上記(A)〜(E)の基準値および、本発明の作動媒体における温度グライドの基準値を示す。なお、表1に示すRCOPR410Aは、下記式(Y)で示されるR410Aに対する相対成績係数である。作動媒体において、RCOPR410Aは、0.9を超えることが好ましい。
【0034】
【数3】
(式(Y)中、R410Aは、式(Z)におけるのと同じであり、検体は相対評価されるべき作動媒体を示す。検体およびR410Aの成績係数は、検体およびR410Aを用いて、上記温度条件(T)で基準冷凍サイクルを運転した際の成績係数である。)
【0035】
【表1】
「−」;二酸化炭素は凝縮温度で超臨界状態になるため、RCOPR410A、RQR410A、RDPR410Aについては計算不可
【0036】
表1を用いて作動媒体(R1)、作動媒体(R2)が含有する各成分について説明する。なお、表1には(A2)の特性を示す欄がないが、(A2)の自己分解性の条件は(A)の条件より厳しいものである。(A2)の条件であっても、HFO−1123のみが自己分解性を有し、それ以外の成分は自己分解性を有しない。
【0037】
表1からR410Aと代替が可能なサイクル性能を有する成分として、HFO−1123とR32が挙げられる。しかしながら、HFO−1123は自己分解性を有し、R32はGWPが高い。ここで、HFO−1123とR32の組み合わせでは、いずれの組成においても、上記(A)、(A2)、(B)〜(E)および温度グライド、RCOPR410Aの特性のうち、自己分解性またはGWPを満足できない。
【0038】
そこで、本発明においては、GWPがR32より低く、HFO−1123の自己分解性を抑制でき、さらに他の特性を損なわない化合物またはそれらの組み合わせとして、R152a、R161、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)から選ばれる1種以上を選択し、HFO−1123とR32の組み合わせにおける適正な組成を見出した。上記特性(A)、(A2)、(B)〜(E)ついて式A、式A2、式B〜式Eとともに説明する。さらに、RCOPR410Aおよび温度グライドについて説明する。
【0039】
[自己分解性]
特性(A)、(A2)は自己分解性にかかる特性である。作動媒体(R1)、作動媒体(R2)が含有するHFO−1123は自己分解性を有する。HFO−1123とともに作動媒体(R1)、作動媒体(R2)を構成する成分の種類および各成分の含有割合(以下、「組成」という。)により自己分解は抑制できる。作動媒体の自己分解は、作動媒体として通常使用される温度や圧力範囲を超えて、高い温度および高い圧力条件下で抑制されることが求められる。
【0040】
作動媒体(R1)においては、組成が式Aを満たすことで、以下の方法で評価される自己分解性試験において、温度215℃、圧力10MPaGの条件下で自己分解反応を起こさない。なお、圧力の単位MPaGは、ゲージ圧でMPaであることを示す。
【0041】
式Aは、「0 < −1.000×[HFO−1123]+1.179×[R32]+1.316×[1234yf]+1.316×[1234ze(E)]+3.831×[CO2]+2.632×[R152a]+2.390×[R161]+6.262×[プロパン]+2.237×[プロピレン]」で示される。式Aにおいて、各化合物の含有割合に乗じられる係数は、負の係数が自己分解性の起こしやすさを、正の係数は自己分解性の抑制しやすさを示す。係数が大きい化合物ほど少量の含有でHFO−1123の自己分解を抑制することを意味する。
【0042】
作動媒体(R2)においては、組成が式A2を満たすことで、作動媒体(R1)に比べて、HFO−1123の含有割合がより少ない組成になり、自己分解性の条件がより厳しい条件下での使用が可能になる。組成が式A2を満たすことで、さらには、着火試験時の熱分解物が上記(A)より少なくなる。
【0043】
式A2; 0 < −1.000×[HFO−1123]+1.033×[R32]+0.896×[1234yf]+0.896×[1234ze(E)]+2.891×[CO2]+1.955×[R152a]+1.410×[R161]+3.737×[プロパン]+1.520×[プロピレン]
【0044】
<自己分解性試験>
自己分解性試験は、高圧ガス保安法における個別通達においてハロゲンを含むガスを混合したガスにおける燃焼範囲を測定する設備として推奨されているA法に準拠した設備を用い実施する。
【0045】
具体的には、外部より所定の温度に制御された内容積650cmの球形耐圧容器内に検体となる作動媒体を所定圧力まで封入した後、内部に設置された白金線を溶断することにより約30Jのエネルギーを印加する。印加後に発生する耐圧容器内の温度と圧力変化を測定することにより自己分解反応の有無を確認できる。圧力上昇が1MPaG未満の場合に、該温度、圧力条件下において自己分解反応なしと判断する。
【0046】
<着火試験>
着火試験は、上記自己分解性試験(温度215℃、圧力10MPaG)と同じ試験を行った後の検体となる作動媒体の熱分解物の量を測定して行う。熱分解物の量が、0=−1.000×[HFO−1123]+1.033×[R32]となるHFO−1123とR32の混合物を試験した際の熱分解物の量より少ない場合、(A2)の基準を満たすと判断する。
【0047】
[燃焼速度]
特性(B)は燃焼性にかかる特性であり、式Bを満たす組成とすることで作動媒体(R1)および作動媒体(R2)の燃焼速度は10cm/sec未満となる。表1からわかるように、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)は不燃または燃焼速度が小さく、R152a、R161、プロパンおよびプロピレンは燃焼速度が10cm/sec以上と大きい。燃焼速度の点では、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)を用いることが好ましいが、他の特性、例えば、二酸化炭素は、表1には示されないが圧縮機吐出ガス圧力が高いことで装置への負荷を高める傾向があり、1234yf、1234ze(E)は、RQR410Aが低く、さらに上記式A、式A2における係数が小さくHFO−1123の自己分解を抑制する能力が低い。
【0048】
式Bは、このような、二酸化炭素、1234yf、1234ze(E)、R152a、R161、プロパンおよびプロピレンをHFO−1123およびR32と組み合せて使用する場合に作動媒体の燃焼速度を10cm/sec未満とするための式である。
【0049】
式Bは、「 10 > 3.426×[HFO−1123]+5.673×[R32]+2.193×[1234yf]−0.596×[1234ze(E)]−0.768×[CO2]+29.897×[R152a]+64.400×[R161]+118.965×[プロパン]+94.943×[プロピレン]」で示される。式Bにおいて、各化合物の含有割合に乗じられる係数について、正の係数は燃焼のしやすさを、負の係数は燃焼の抑制効果を示す。
【0050】
作動媒体(R1)および作動媒体(R2)の燃焼速度は、8cm/sec未満が好ましく、6cm/sec未満がより好ましく、4cm/sec未満がさらに好ましい。この場合、式Bにおいて不等号の左の数字を、それぞれ8、6および4とする下記式B2、式B3、式B4を満足するように組成を調整すればよい。燃焼速度が低いほど、高い安全性を有する優れた作動媒体となる。なお、燃焼速度はISO817:2014に基づいて温度23℃で測定された燃焼速度である。
【0051】
式B2; 8 > 3.426×[HFO−1123]+5.673×[R32]+2.193×[1234yf]−0.596×[1234ze(E)]−0.768×[CO2]+29.897×[R152a]+64.400×[R161]+118.965×[プロパン]+94.943×[プロピレン]
【0052】
式B3; 6 > 3.426×[HFO−1123]+5.673×[R32]+2.193×[1234yf]−0.596×[1234ze(E)]−0.768×[CO2]+29.897×[R152a]+64.400×[R161]+118.965×[プロパン]+94.943×[プロピレン]
【0053】
式B4; 4 > 3.426×[HFO−1123]+5.673×[R32]+2.193×[1234yf]−0.596×[1234ze(E)]−0.768×[CO2]+29.897×[R152a]+64.400×[R161]+118.965×[プロパン]+94.943×[プロピレン]
【0054】
[RDPR410A]
特性(C)は、装置の負荷にかかる特性である。RDPR410Aは、作動媒体の装置に対する負荷を、代替の対象としてのR410Aの装置への負荷との相対比較により示す指標である。RDPR410Aは、上記式(Z)に示されるとおり、上記温度条件(T)の基準冷凍サイクルを、作動媒体(検体)を用いて運転した場合の圧縮機吐出ガス圧力(DP検体)の、R410Aで運転した場合の圧縮機吐出ガス圧力(DPR410A)に対する比の値で示される。
【0055】
圧縮機吐出ガス圧力は、上記温度条件(T)の基準冷凍サイクルにおける最高圧力を示し、この値をもとに、作動媒体を用いて実際に冷凍・冷蔵機器や空調機器等の熱サイクルシステムを稼働させたときの装置への圧力負荷の程度が想定できる。なお、RDPR410Aは、具体的には後述の方法で求められる。
【0056】
作動媒体の組成を、式Cを満たす組成とすることで、RDPR410Aが1.78未満である作動媒体(R1)および作動媒体(R2)が得られる。作動媒体(R1)および作動媒体(R2)は、RDPR410Aが1.78未満であることで、該作動媒体を使用して所定の条件下、所定の装置を用いて熱サイクルシステムを稼働させた場合に、R410Aを用いて同条件で同装置により熱サイクルシステムを稼働させた場合と比べて、装置への圧力負荷が大きく増加することがない。すなわち、作動媒体(R1)および作動媒体(R2)の組成が式Cを満たすことで、作動媒体としてR410Aを使用している装置に対して、大きな設計変更なしに該作動媒体(R1)および作動媒体(R2)を使用することが概ね可能である。
【0057】
式Cは「1.78 > 1.293×[HFO−1123]+1.029×[R32]+0.369×[1234yf]+0.354×[1234ze(E)]+3.807×[CO2]+0.229×[R152a]+0.406×[R161]+0.568×[プロパン]+0.719×[プロピレン]」で示される。
【0058】
式Cにおいて、各化合物の含有割合に乗じられる係数は、1よりも大きい係数はRDPR410Aが1超、すなわち圧縮機吐出ガス圧力がR410Aより大きいことを意味し、値が大きいほど該化合物は得られる作動媒体の装置に対する負荷を増大させる。1よりも小さい係数はRDPR410Aが1未満、すなわち圧縮機吐出ガス圧力がR410Aより小さいことを意味し、値が小さいほど該化合物は得られる作動媒体の装置に対する負荷を低減できる。
【0059】
作動媒体(R1)および作動媒体(R2)のRDPR410Aは、1.74未満が好ましく、1.65未満がより好ましく、1.4未満がさらに好ましく、1.2未満が最も好ましい。なお、作動媒体(R1)および作動媒体(R2)のRDPR410Aの下限については、特に制限されない。この場合、式Cにおいて不等号の左の数字を、それぞれ1.74、1.65、1.4および1.2とする下記式C2、式C3、式C4、式C5を満足するように組成を調整すればよい。
【0060】
式C2; 1.74 > 1.293×[HFO−1123]+1.029×[R32]+0.369×[1234yf]+0.354×[1234ze(E)]+3.807×[CO2]+0.229×[R152a]+0.406×[R161]+0.568×[プロパン]+0.719×[プロピレン]
【0061】
式C3; 1.65 > 1.293×[HFO−1123]+1.029×[R32]+0.369×[1234yf]+0.354×[1234ze(E)]+3.807×[CO2]+0.229×[R152a]+0.406×[R161]+0.568×[プロパン]+0.719×[プロピレン]
【0062】
式C4; 1.4 > 1.293×[HFO−1123]+1.029×[R32]+0.369×[1234yf]+0.354×[1234ze(E)]+3.807×[CO2]+0.229×[R152a]+0.406×[R161]+0.568×[プロパン]+0.719×[プロピレン]
【0063】
式C5; 1.2 > 1.293×[HFO−1123]+1.029×[R32]+0.369×[1234yf]+0.354×[1234ze(E)]+3.807×[CO2]+0.229×[R152a]+0.406×[R161]+0.568×[プロパン]+0.719×[プロピレン]
【0064】
[RQR410A]
特性(D)は冷凍サイクルシステムにおける冷凍能力(Q)にかかる特性である。作動媒体を熱サイクルに適用する際に必要とされるサイクル性能は、成績係数および能力で評価される。熱サイクルシステムが冷凍サイクルシステムの場合、能力は冷凍能力であり、冷凍能力(Q)は、冷凍サイクルシステムおける出力(kW)である。RQR410Aは、作動媒体の冷凍能力(Q)を、代替の対象としてのR410Aの冷凍能力(Q)との相対比較により示す指標である。なお、RQR410Aは、具体的には後述の方法で求められる。
【0065】
上記各化合物を含有する作動媒体において、式Dを満たす組成とすることでRQR410Aが0.91超となる作動媒体(R1)および作動媒体(R2)が得られるため、R410Aと比較して大きく冷凍能力が低下することはない。
【0066】
式Dは、「0.91 < 1.214×[HFO−1123]+1.133×[R32]+0.402×[1234yf]+0.346×[1234ze(E)]+3.359×[CO2]+0.323×[R152a]+0.548×[R161]+0.588×[プロパン]+0.725×[プロピレン]」で示される。
【0067】
式Dにおいて、各化合物の含有割合に乗じられる係数は、1よりも大きい係数はRQR410Aが1超、すなわち冷凍能力がR410Aより大きいことを意味し、値が大きいほど該化合物は得られる作動媒体の冷凍能力の向上に寄与できる。1よりも小さい係数はRQR410Aが1未満、すなわち冷凍能力がR410Aより小さいことを意味し、値が小さいほど該化合物は得られる作動媒体の冷凍能力を低下させる。
【0068】
作動媒体(R1)および作動媒体(R2)のRQR410Aは、0.95超が好ましく、1超がより好ましい。この場合、式Dにおいて不等号の左の数字を、それぞれ0.95および1とする下記式D2、式D3を満足するように組成を調整すればよい。なお、作動媒体(R1)および作動媒体(R2)のRQR410Aの上限については、特に制限されない。
【0069】
式D2; 0.95 < 1.214×[HFO−1123]+1.133×[R32]+0.402×[1234yf]+0.346×[1234ze(E)]+3.359×[CO2]+0.323×[R152a]+0.548×[R161]+0.588×[プロパン]+0.725×[プロピレン]
【0070】
式D3; 1 < 1.214×[HFO−1123]+1.133×[R32]+0.402×[1234yf]+0.346×[1234ze(E)]+3.359×[CO2]+0.323×[R152a]+0.548×[R161]+0.588×[プロパン]+0.725×[プロピレン]
【0071】
[GWP]
特性(E)は、作動媒体の地球温暖化への影響をはかる指標であるGWPにかかる特性である。式Eは、作動媒体におけるGWPが組成質量による加重平均であり、それにより求められるGWPが160未満を満たすことを示す式である。本発明の作動媒体が、代替を目指すR410AのGWPは2088であり地球環境への影響が大きい。一方、作動媒体(R1)および作動媒体(R2)のGWPは160未満であり、地球影響への影響が小さい。
【0072】
式Eは、「160 > 0.3×[HFO−1123]+675×[R32]+4×[1234yf]+6×[1234ze(E)]+1×[CO2]+124×[R152a]+12×[R161]+3.3×[プロパン]+1.8×[プロピレン]」で示される。
【0073】
上記のとおり式Eにおける各化合物の含有割合に乗じられる係数は、各化合物単独でのGWPである。式EからもR32が作動媒体のGWPを押し上げる要因であることがわかる。作動媒体(R1)および作動媒体(R2)においては、従来R410Aの代替作動媒体として性能に優れるとされたHFO−1123とR32を用いた作動媒体において、他の特性が良好であるがGWPの高いR32を部分的に他の化合物で置き換えることで、他の特性を維持しながらGWPを低減したものである。
【0074】
作動媒体(R1)および作動媒体(R2)のGWPは、150未満が好ましく、120未満がより好ましく、100未満がさらに好ましく、70未満が最も好ましい。この場合、式Eにおいて不等号の左の数字を、それぞれ150、120、100および70とする下記式E2、式E3、式E4、式E5を満足するように組成を調整すればよい。
【0075】
式E2; 150 > 0.3×[HFO−1123]+675×[R32]+4×[1234yf]+6×[1234ze(E)]+1×[CO2]+124×[R152a]+12×[R161]+3.3×[プロパン]+1.8×[プロピレン]
【0076】
式E3; 120 > 0.3×[HFO−1123]+675×[R32]+4×[1234yf]+6×[1234ze(E)]+1×[CO2]+124×[R152a]+12×[R161]+3.3×[プロパン]+1.8×[プロピレン]
【0077】
式E4; 100 > 0.3×[HFO−1123]+675×[R32]+4×[1234yf]+6×[1234ze(E)]+1×[CO2]+124×[R152a]+12×[R161]+3.3×[プロパン]+1.8×[プロピレン]
【0078】
式E5; 70 > 0.3×[HFO−1123]+675×[R32]+4×[1234yf]+6×[1234ze(E)]+1×[CO2]+124×[R152a]+12×[R161]+3.3×[プロパン]+1.8×[プロピレン]
【0079】
[RCOPR410A
作動媒体(R1)および作動媒体(R2)は、特性(D)を有することでサイクル性能がR410Aと同等とされる。通常、作動媒体のサイクル性能は、能力と成績係数による。成績係数(COP)は、出力(kW)を得るのに消費された動力(kW)で該出力(kW)を除した値であり、エネルギー消費効率に相当する。成績係数の値が高いほど、少ない入力により大きな出力を得ることができる。
【0080】
作動媒体(R1)、作動媒体(R2)、およびこれらのいずれかを90〜100質量%の割合で含有する本発明の作動媒体は、RCOPR410Aが0.9超であることが好ましく、0.95超がより好ましく、1超がさらに好ましい。
【0081】
[温度グライド]
本発明の作動媒体は、上記温度条件(T)で基準冷凍サイクルを運転した際の温度グライドが10℃以下である。また、作動媒体(R1)および作動媒体(R2)においても同様に温度グライドが10℃以下であることが好ましい。作動媒体として混合物を用いる場合、共沸またはR410Aのような擬似共沸の混合物であることが好ましい。非共沸組成物は、圧力容器から冷凍空調機器へ充てんされる際に組成変化を生じる問題点を有している。さらに、冷凍空調機器からの冷媒漏えいが生じた場合、冷凍空調機器内の冷媒組成が変化する可能性が極めて大きく、初期状態への冷媒組成の復元が困難である。一方、共沸または擬似共沸の混合物であれば上記問題が回避できる。
【0082】
作動媒体の性質を示す指標として、一般に「温度グライド」が用いられる。温度グライドは、熱交換器、例えば、蒸発器における蒸発の、または凝縮器における凝縮の、開始温度と終了温度が異なる性質、と定義される。共沸混合冷媒においては、温度グライドは0であり、R410Aのような擬似共沸混合冷媒では、温度グライドは極めて0に近い。
【0083】
温度グライドが大きいと、例えば、蒸発器における入口温度が低下することで着霜の可能性が大きくなり問題である。さらに、熱サイクルシステムにおいては、熱交換効率の向上をはかるために熱交換器を流れる作動媒体と水や空気等の熱源流体を対向流にすることが一般的であり、安定運転状態においては該熱源流体の温度差が小さいことから、温度グライドの大きい非共沸混合媒体の場合、エネルギー効率のよい熱サイクルシステムを得ることが困難である。このため、適切な温度グライドを有する非共沸混合媒体が望まれる。
【0084】
本発明の作動媒体に用いるHFO−1123とR32は、質量比で99:1〜1:99の組成範囲で共沸に近い擬似共沸混合物である。すなわち、HFO−1123とR32はいかなる組成で組み合わせても温度グライドは略0である。したがって、温度グライドを10℃以下に設定する場合、作動媒体に用いるHFO−1123に対するR32の含有割合は特に考慮しなくてよい。HFO−1123およびR32とともに用いるR152a、R161、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)について、温度グライドが10℃以下となるように、種類および組成を調整する。
【0085】
なお、本発明の作動媒体および作動媒体(R1)および作動媒体(R2)の温度グライドは、8℃以下が好ましく、6℃以下がより好ましく、4℃以下がさらに好ましい。
【0086】
上記RDPR410A、RQR410A、RCOPR410A、温度グライドの評価に用いる基準冷凍サイクルシステムとしては、例えば、図1に概略構成図が示される冷凍サイクルシステムが挙げられる。以下、図1に示す冷凍サイクルシステムを用いて、所定の作動媒体の冷凍能力および成績係数を求める方法について説明する。
【0087】
図1に示す冷凍サイクルシステム10は、作動媒体蒸気Aを圧縮して高温高圧の作動媒体蒸気Bとする圧縮機11と、圧縮機11から排出された作動媒体蒸気Bを冷却し、液化して低温高圧の作動媒体Cとする凝縮器12と、凝縮器12から排出された作動媒体Cを膨張させて低温低圧の作動媒体Dとする膨張弁13と、膨張弁13から排出された作動媒体Dを加熱して高温低圧の作動媒体蒸気Aとする蒸発器14と、蒸発器14に負荷流体Eを供給するポンプ15と、凝縮器12に流体Fを供給するポンプ16とを具備して概略構成されるシステムである。
【0088】
冷凍サイクルシステム10においては、以下の(i)〜(iv)のサイクルが繰り返される。
(i)蒸発器14から排出された作動媒体蒸気Aを圧縮機11にて圧縮して高温高圧の作動媒体蒸気Bとする(以下、「AB過程」という。)。
(ii)圧縮機11から排出された作動媒体蒸気Bを凝縮器12にて流体Fによって冷却し、液化して低温高圧の作動媒体Cとする。この際、流体Fは加熱されて流体F’となり、凝縮器12から排出される(以下、「BC過程」という。)。
【0089】
(iii)凝縮器12から排出された作動媒体Cを膨張弁13にて膨張させて低温低圧の作動媒体Dとする(以下、「CD過程」という。)。
(iv)膨張弁13から排出された作動媒体Dを蒸発器14にて負荷流体Eによって加熱して高温低圧の作動媒体蒸気Aとする。この際、負荷流体Eは冷却されて負荷流体E’となり、蒸発器14から排出される(以下、「DA過程」という。)。
【0090】
冷凍サイクルシステム10は、断熱・等エントロピ変化、等エンタルピ変化および等圧変化からなるサイクルシステムである。作動媒体の状態変化を、図2に示される圧力−エンタルピ線(曲線)図上に記載すると、A、B、C、Dを頂点とする台形として表すことができる。
【0091】
AB過程は、圧縮機11で断熱圧縮を行い、高温低圧の作動媒体蒸気Aを高温高圧の作動媒体蒸気Bとする過程であり、図2においてAB線で示される。後述のとおり、作動媒体蒸気Aは過熱状態で圧縮機11に導入され、得られる作動媒体蒸気Bも過熱状態の蒸気である。上記RDPR410Aの算出に用いる圧縮機吐出ガス圧力(吐出圧力)は、図2においてBの状態の圧力(DP)であり、冷凍サイクルにおける最高圧力である。なお、図2においてBの状態の温度は、圧縮機吐出ガス温度(吐出温度)であり、冷凍サイクルにおける最高温度である。
【0092】
BC過程は、凝縮器12で等圧冷却を行い、高温高圧の作動媒体蒸気Bを低温高圧の作動媒体Cとする過程であり、図2においてBC線で示される。この際の圧力が凝縮圧である。圧力−エンタルピ線とBC線の交点のうち高エンタルピ側の交点Tが凝縮温度(作動媒体が非共沸混合物の場合は凝縮開始温度と凝縮完了温度の平均温度)であり、低エンタルピ側の交点Tが凝縮沸点温度である。ここで、作動媒体が複数化合物からなる組成物である場合の温度グライドは、TとTの差として示される。
【0093】
CD過程は、膨張弁13で等エンタルピ膨張を行い、低温高圧の作動媒体Cを低温低圧の作動媒体Dとする過程であり、図2においてCD線で示される。なお、低温高圧の作動媒体Cにおける温度をTで示せば、T−Tが(i)〜(iv)のサイクルにおける作動媒体の過冷却度(SC)となる。
【0094】
DA過程は、蒸発器14で等圧加熱を行い、低温低圧の作動媒体Dを高温低圧の作動媒体蒸気Aに戻す過程であり、図2においてDA線で示される。この際の圧力が蒸発圧である。圧力−エンタルピ線とDA線の交点のうち高エンタルピ側の交点Tは蒸発温度(作動媒体が非共沸混合物の場合は蒸発開始温度と蒸発完了温度の平均温度)である。作動媒体蒸気Aの温度をTで示せば、T−Tが(i)〜(iv)のサイクルにおける作動媒体の過熱度(SH)となる。なお、Tは作動媒体Dの温度を示す。
【0095】
作動媒体のQとCOPは、作動媒体のA(蒸発後、高温低圧)、B(圧縮後、高温高圧)、C(凝縮後、低温高圧)、D(膨張後、低温低圧)の各状態における各エンタルピ、h、h、h、hを用いると、下式(11)、(12)からそれぞれ求められる。
機器効率による損失、および配管、熱交換器における圧力損失はないものとする。
【0096】
作動媒体のサイクル性能の算出に必要となる熱力学性質は、対応状態原理に基づく一般化状態方程式(Soave−Redlich−Kwong式)、および熱力学諸関係式に基づき算出できる。特性値が入手できない場合は、原子団寄与法に基づく推算手法を用い算出を行う。
【0097】
Q=h−h …(11)
COP=Q/圧縮仕事=(h−h)/(h−h) …(12)
【0098】
上記(h−h)で示されるQが冷凍サイクルの出力(kW)に相当し、(h−h)で示される圧縮仕事、例えば、圧縮機を運転するために必要とされる電力量が、消費された動力(kW)に相当する。また、Qは負荷流体を冷凍する能力を意味しており、Qが高いほど同一の熱サイクルシステムにおいて、多くの仕事ができることを意味している。言い換えると、大きなQを有する場合は、少量の作動媒体で目的とする性能が得られることを表しており、熱サイクルシステムの小型化が可能となる。
【0099】
ここで、作動媒体(R1)および作動媒体(R2)の具体的な組成としては、HFO−1123と、R32と、R152a、R161、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)から選ばれる1種または2種の、3成分または4成分からなり、上記条件を満たす組成が好ましく、4成分からなる組成がより好ましい。
【0100】
作動媒体(R1)および作動媒体(R2)は、HFO−1123と、R32と、R152a、R161、プロパンおよびプロピレンから選ばれる1種と、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)から選ばれる1種の4成分からなり、上記条件を満たす組成がより好ましい。
【0101】
作動媒体(R1)および作動媒体(R2)における、上記好ましい化合物の組み合わせの具体例を以下の(1)〜(12)に示す。ただし、以下の4成分の組成においては、R152a、R161、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)から選ばれる2種のうちの1種の含有量が「0」の場合、すなわち3成分組成になる場合を含んでもよいが、4成分からなる組成がより好ましい。
【0102】
(1)HFO−1123、R32、R152a、二酸化炭素
(2)HFO−1123、R32、R152a、1234yf
(3)HFO−1123、R32、R152a、1234ze(E)
(4)HFO−1123、R32、R161、二酸化炭素
(5)HFO−1123、R32、R161、1234yf
(6)HFO−1123、R32、R161、1234ze(E)
(7)HFO−1123、R32、プロパン、二酸化炭素
(8)HFO−1123、R32、プロパン、1234yf
(9)HFO−1123、R32、プロパン、1234ze(E)
(10)HFO−1123、R32、プロピレン、二酸化炭素
(11)HFO−1123、R32、プロピレン、1234yf
(12)HFO−1123、R32、プロピレン、1234ze(E)
【0103】
作動媒体(R1)および作動媒体(R2)がこのような4成分で構成される場合、該4成分の含有割合は、例えば、以下の例のようにして求められる。以下は、上記(4)の組み合わせにおいて、式A〜式Eを満たす組成を求める場合の例である。その他の4成分の場合、すなわち上記(1)〜(3)、(5)〜(12)についても同様にできる。さらに、式A2、式B〜式Eを満たす組成を求める場合も同様である。
【0104】
式A〜式Eを満足するHFO−1123、R32、二酸化炭素およびR161の組成は、例えば、図3に示す、R32を一定量(図3においては、HFO−1123、R32、二酸化炭素およびR161の全量(100質量%)に対してR32の割合が22質量%)とした際の、HFO−1123、二酸化炭素およびR161の三角座標図を用いて求められる。図3において「○」は式A〜式Eを全て満足する組成であり、「×」は式A〜式Eの少なくとも1つを満足しない組成である。
【0105】
図3においてはR161の含有量が0の直線、式Aを満たすための点線A、式Bを満たすための一点鎖線B、式Cを満たすための破線Cで囲まれた四角形の組成範囲内において、式A〜式Eを満たす。式Aを満たす組成範囲は点線Aから矢印Da方向の範囲であり、同様に式Bを満たす組成範囲は一点鎖線Bから矢印Db方向の範囲であり、式Cを満たす組成範囲は破線Cから矢印Dc方向の範囲であり、式Dを満たす組成範囲は二点鎖線Dから矢印Dd方向の範囲である。R32が22質量%であれば[R32]は0.22であり、式Eは、HFO−1123、二酸化炭素、R161の含有割合によらず達成される。矢印Deは式Eが三角座標図全域において達成されることを意味している。なお、便宜上、式Eによる境界線を二酸化炭素の含有量が0の直線上に示した。
【0106】
上記と同様の三角座標図をR32の上記と異なる含有割合、例えば、HFO−1123、R32、二酸化炭素およびR161の全量(100質量%)に対してR32の割合が15質量%の場合で作成すれば、R32の割合が15質量%のときの式A〜式Eを満たす組成範囲を三角座標図上に求めることができる。このようにしてHFO−1123、R32、二酸化炭素およびR161の全量(100質量%)に対するR32の含有量を変えて三角座標図を作成して、これらを統合することで、上記(4)のHFO−1123、R32、R161、二酸化炭素の4成分からなる、式A〜式Eを満たす作動媒体(R1)の組成が得られる。
【0107】
(本発明の作動媒体)
第1の作動媒体は、上記のとおり、HFO−1123と、R32と、R152a、R161、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)から選ばれる少なくとも1種を、式A〜式Eを満足する含有割合で、その合計含有量が、作動媒体全量の90〜100質量%となるように含有し、温度条件(T)で基準冷凍サイクルを運転した際の温度グライドが10℃以下である。
【0108】
また、第2の作動媒体は、上記のとおり、HFO−1123と、R32と、R152a、R161、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)から選ばれる少なくとも1種を、式A2、式B〜式Eを満足する含有割合で、その合計含有量が、作動媒体全量の90〜100質量%となるように含有し、温度条件(T)で基準冷凍サイクルを運転した際の温度グライドが10℃以下である。
【0109】
第1の作動媒体および第2の作動媒体における個々の成分の含有量は、それぞれ上記条件を満足する限り特に限定されない。第1の作動媒体および第2の作動媒体におけるHFO−1123の含有量は、安全性の観点から、HFO−1123、R32、R152a、R161、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)の合計含有量に対して1質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、1質量%以上24質量%以下がより好ましい。
【0110】
本発明の第1の作動媒体においては、式A〜式Eを満足することで上記(A)〜(E)の特性を有する作動媒体(R1)を作動媒体全量に対して90〜100質量%含有し、温度グライドにおける上記特性を満足するかぎり、必要に応じて上記各成分以外の、これら各成分とともに気化、液化する他の成分(以下、単に「その他成分」という。)を用いてもよい。ただし、その他の成分を含有することで、作動媒体(R1)の有する上記(A)〜(E)の特性を損なわないことが好ましい。
【0111】
本発明の第2の作動媒体においては、式A2、式B〜式Eを満足することで上記(A2)、(B)〜(E)の特性を有する作動媒体(R2)を作動媒体全量に対して90〜100質量%含有し、温度グライドにおける上記特性を満足するかぎり、必要に応じて上記各成分以外の、これら各成分とともに気化、液化するその他の成分を用いてもよい。ただし、その他の成分を含有することで、作動媒体(R2)の有する上記(A2)、(B)〜(E)の特性を損なわないことが好ましい。
【0112】
すなわち、本発明の第1の作動媒体においては、作動媒体(R1)が有する上記(A)〜(E)の特性を有することが好ましく、第2の作動媒体においては、作動媒体(R2)が有する上記(A2)、(B)〜(E)の特性を有することが好ましい。これらの本発明の作動媒体は、さらに、燃焼速度、RDPR410A、RQR410A、GWPについて、上記で作動媒体(R1)および作動媒体(R2)において好ましいあるいはより好ましいとした特性を有することが特に好ましい。本発明の作動媒体の温度グライドおよびRCOPR410Aについては、上記のとおりである。
【0113】
本発明の第1の作動媒体が作動媒体(R1)の他に、あるいは、第2の作動媒体が作動媒体(R2)の他に、その他成分を含有する場合、作動媒体におけるその他成分の合計含有量は、作動媒体100質量%に対して10質量%以下であり、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、含有しないことが最も好ましい。
【0114】
その他成分としては、HFC、HFO、炭化水素、クロロフルオロオレフィン(CFO)、ヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)等が挙げられる。その他成分としては、オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が小さい成分が好ましい。
【0115】
HFCとしては、1,2−ジフルオロエタン、トリフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、ペンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロパン、ヘプタフルオロプロパン、ペンタフルオロブタン、ヘプタフルオロシクロペンタン等が挙げられる。HFCは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
HFOとしては、1,2−ジフルオロエチレン(HFO−1132)、2−フルオロプロペン(HFO−1261yf)、1,1,2−トリフルオロプロペン(HFO−1243yc)、トランス−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(E))、シス−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(Z))、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)、(Z)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(Z))等が挙げられる。HFOは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
炭化水素としては、シクロプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン等が挙げられる。炭化水素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
CFOとしては、クロロフルオロプロペン、クロロフルオロエチレン等が挙げられる。作動媒体のサイクル性能を大きく低下させることなく作動媒体の燃焼性を抑えやすい点から、CFOとしては、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CFO−1214ya)、1,3−ジクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(CFO−1214yb)、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエチレン(CFO−1112)が好ましい。CFOは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
HCFOとしては、ヒドロクロロフルオロプロペン、ヒドロクロロフルオロエチレン等が挙げられる。作動媒体のサイクル性能を大きく低下させることなく作動媒体の燃焼性を抑えやすい点から、HCFOとしては、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HCFO−1224yd)、1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレン(HCFO−1122)が好ましい。HCFOは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
<熱サイクルシステム用組成物>
本発明の作動媒体は、熱サイクルシステムへの適用に際して、通常、潤滑油と混合して熱サイクルシステム用組成物として使用することができる。本発明の作動媒体と潤滑油を含む熱サイクルシステム用組成物は、これら以外にさらに、安定剤、漏れ検出物質等の公知の添加剤を含有してもよい。
【0121】
(潤滑油)
熱サイクルシステムでは、前記した作動媒体を潤滑油と混合して使用してもよい。潤滑油としては、熱サイクルシステムに用いられる公知の潤滑油を採用できる。潤滑油は、熱サイクルシステム用組成物に上記作動媒体とともに含有され熱サイクルシステム内を循環し、該熱サイクルシステム内の特に圧縮機において潤滑油として機能する。熱サイクルシステムにおいて、潤滑油は、潤滑性や圧縮機の密閉性を確保しつつ、低温条件下で作動媒体に対して相溶性が充分あるものが好ましい。このような観点から、潤滑油の40℃における動粘度は1〜750mm/secが好ましく、1〜400mm/secがより好ましい。また、100℃における動粘度は1〜100mm/secが好ましく、1〜50mm/secであることがより好ましい。
【0122】
潤滑油としては、エステル系潤滑油、エーテル系潤滑油、フッ素系潤滑油、炭化水素系合成油、鉱物油等が挙げられる。
【0123】
エステル系潤滑油は、分子内にエステル結合を有する油状の、好ましくは上記動粘度を有するエステル化合物である。エステル系潤滑油としては、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、コンプレックスエステル、ポリオール炭酸エステル等が挙げられる。
【0124】
二塩基酸エステルとしては、炭素数5〜10の二塩基酸(グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等)と、直鎖アルキル基または分枝アルキル基を有する炭素数1〜15の一価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、2−エチルヘキサノール、イソデシルアルコール、3−エチル−3−ヘキサノール等)とのエステルが好ましい。具体的には、グルタル酸ジトリデシル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジトリデシル、セバシン酸ジ(3−エチル3−ヘキシル)等が挙げられる。
【0125】
ポリオールエステルとは、多価アルコールと脂肪酸(カルボン酸)とから合成されるエステルである。
【0126】
ポリオールエステルとしては、ジオール(エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、ネオペンチルグリコール、1,7−ヘプタンジオール、1,12−ドデカンジオール等)または水酸基を3〜20個有するポリオール(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、グリセリン、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物等)と、炭素数6〜20の脂肪酸(ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、エイコサン酸、オレイン酸等の直鎖または分枝の脂肪酸、もしくはα炭素原子が4級である脂肪酸等)とのエステルが好ましい。
ポリオールエステルは、遊離の水酸基を有していてもよい。
【0127】
ポリオールエステルとしては、ヒンダードアルコール(ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスルトール等)のエステル(トリメチロールプロパントリペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート等)がより好ましい。
【0128】
コンプレックスエステルとは、数種のエステルを組み合わせた(コンプレックス化した)ものである。コンプレックスエステル油は、脂肪酸および二塩基酸から選ばれる少なくとも1種とポリオールとのオリゴエステルである。脂肪酸、二塩基酸、ポリオールとしては、例えば、二塩基酸エステル、ポリオールエステルで挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0129】
ポリオール炭酸エステルとは、炭酸とポリオールとのエステルまたは環状アルキレンカーボネートの開環重合体である。
ポリオールとしては、上記ポリオールエステルで挙げたものと同様のジオールやポリオール等が挙げられる。
【0130】
エーテル系潤滑油とは、分子内にエーテル結合を有する油状の、好ましくは上記動粘度を有するエーテル化合物である。エーテル系潤滑油としては、ポリアルキレングリコールやポリビニルエーテル等が挙げられる。
【0131】
ポリアルキレングリコールとは、オキシアルキレン単位を複数有する化合物、言い換えればアルキレンオキシドの重合体あるいは共重合体である。
【0132】
ポリアルキレングリコールとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)を、水、アルカンモノオール、前記ジオール、前記ポリオール等を開始剤として重合させる方法等により得られたポリアルキレンポリオールおよびそれらの水酸基の一部または全部をアルキルエーテル化したもの等が挙げられる。
【0133】
ポリアルキレングリコール1分子中のオキシアルキレン単位は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。ポリアルキレングリコールとしては、1分子中に少なくともオキシプロピレン単位が含まれるものが好ましく、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールのジアルキルエーテルがより好ましい。
【0134】
ポリビニルエーテルとは、少なくともビニルエーテルモノマーに由来する重合単位を有する重合体である。
【0135】
ポリビニルエーテルとしては、ビニルエーテルモノマーの重合体、ビニルエーテルモノマーとオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとの共重合体、ビニルエーテルモノマーとオキシアルキレン単位を複数有するビニルエーテルモノマーとの共重合体等が挙げられる。オキシアルキレン単位を構成するアルキレンオキシドとしては、ポリアルキレングリコールで例示されたものが好ましい。これらの重合体は、ブロックまたはランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0136】
ビニルエーテルモノマーとしてはアルキルビニルエーテルが好ましく、そのアルキル基としては炭素数6以下のアルキル基が好ましい。また、ビニルエーテルモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとしては、エチレン、プロピレン、各種ブテン、各種ペンテン、各種ヘキセン、各種ヘプテン、各種オクテン、ジイソブチレン、トリイソブチレン、スチレン、α−メチルスチレン、各種アルキル置換スチレン等が挙げられる。オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0137】
フッ素系潤滑油とは、分子内にフッ素原子を有する油状の、好ましくは上記動粘度を有する含フッ素化合物である。
【0138】
フッ素系潤滑油としては、後述の鉱物油や炭化水素系合成油(例えば、ポリα−オレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等)の水素原子をフッ素原子に置換した化合物、ペルフルオロポリエーテル油、フッ素化シリコーン油等が挙げられる。
【0139】
鉱物油とは、原油を常圧蒸留または減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、精製処理(溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、白土処理等)を適宜組み合わせて精製したものである。鉱物油としては、パラフィン系鉱物油、ナフテン系鉱物油等が挙げられる。
【0140】
炭化水素系合成油とは、分子が炭素原子と水素原子のみで構成される合成された油状の、好ましくは上記動粘度を有する化合物である。炭化水素系合成油としては、ポリα−オレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等が挙げられる。
【0141】
潤滑油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
潤滑油としては、作動媒体との相溶性の点から、ポリオールエステルおよびポリアルキレングリコールのいずれか一方または両方が好ましく、安定化剤によって顕著な酸化防止効果が得られる点から、ポリアルキレングリコールが特に好ましい。
【0142】
作動媒体と潤滑油を混合して用いる場合、潤滑油の使用量は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、用途、圧縮機の形式等によって適宜決定すればよい。熱サイクルシステム用組成物における潤滑油の総質量の割合は、作動媒体の総質量100質量部に対して、10〜100質量部が好ましく、20〜50質量部がより好ましい。
【0143】
(安定剤)
安定剤は、熱および酸化に対する作動媒体の安定性を向上させる成分である。安定剤としては、耐酸化性向上剤、耐熱性向上剤、金属不活性剤等が挙げられる。
【0144】
耐酸化性向上剤は、作動媒体が熱サイクルシステムにおいて繰り返し圧縮・加熱される条件において、主に酸素による作動媒体の分解を抑制することで作動媒体を安定化させる安定剤である。
【0145】
耐酸化性向上剤としては、N,N’−ジフェニルフェニレンジアミン、p−オクチルジフェニルアミン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、N−(p−ドデシル)フェニル−2−ナフチルアミン、ジ−1−ナフチルアミン、ジ−2−ナフチルアミン、N−アルキルフェノチアジン、6−(t−ブチル)フェノール、2,6−ジ−(t−ブチル)フェノール、4−メチル−2,6−ジ−(t−ブチル)フェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。耐酸化性向上剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0146】
耐熱性向上剤は、作動媒体が熱サイクルシステムにおいて繰り返し圧縮・加熱される条件において、主に熱による作動媒体の分解を抑制することで作動媒体を安定化させる安定剤である。
耐熱性向上剤としては、耐酸化性向上剤と同様のものが挙げられる。耐熱性向上剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0147】
金属不活性剤は、作動媒体および潤滑油に熱サイクルシステム内の金属材料が悪影響を及ぼさないように、あるいは作動媒体および潤滑油から該金属材料を保護する目的で用いられる。具体的には、金属材料の表面に被膜を形成する薬剤等が挙げられる。
【0148】
金属不活性剤としては、イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズチアゾール、2,5−ジメルカプトチアジアゾール、サリシリジン−プロピレンジアミン、ピラゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、2−メチルベンズイミダゾール、3,5−ジメチルピラゾール、メチレンビス−ベンゾトリアゾール、有機酸またはそれらのエステル、第1級、第2級または第3級の脂肪族アミン、有機酸または無機酸のアミン塩、複素環式窒素含有化合物、アルキル酸ホスフェートのアミン塩またはそれらの誘導体等が挙げられる。
【0149】
熱サイクルシステム用組成物における作動媒体の総質量(100質量%)に対する安定剤の総質量の割合は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0150】
(漏れ検出物質等の公知の添加剤)
漏れ検出物質とは、熱サイクルシステムから作動媒体等が漏れた場合に、臭いや蛍光等で検出しやすいようにする目的で添加される物質一般をいう。
【0151】
漏れ検出物質としては、紫外線蛍光染料、臭気ガスや臭いマスキング剤等が挙げられる。
紫外線蛍光染料としては、米国特許第4249412号明細書、特表平10−502737号公報、特表2007−511645号公報、特表2008−500437号公報、特表2008−531836号公報に記載されたもの等、公知の紫外線蛍光染料が挙げられる。
【0152】
臭いマスキング剤とは、芳香が好ましくない作動媒体や潤滑油、後述する可溶化剤について、それ自体の特性を維持しつつ芳香を改善する目的で添加される化合物や香料などの物質一般をいう。
臭いマスキング剤としては、特表2008−500437号公報、特表2008−531836号公報に記載されたもの等、公知の香料が挙げられる。
【0153】
漏れ検出物質を用いる場合には、作動媒体への漏れ検出物質の溶解性を向上させる可溶化剤を用いてもよい。
可溶化剤としては、特表2007−511645号公報、特表2008−500437号公報、特表2008−531836号公報に記載されたもの等が挙げられる。
【0154】
熱サイクルシステム用組成物における作動媒体の総質量(100質量%)に対する漏れ検出物質の総質量の割合は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、2質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
【0155】
[熱サイクルシステム]
本発明の熱サイクルシステムは、本発明の熱サイクルシステム用組成物を用いたシステムである。本発明の熱サイクルシステムは、凝縮器で得られる温熱を利用するヒートポンプシステムであってもよく、蒸発器で得られる冷熱を利用する冷凍サイクルシステムであってもよい。
【0156】
本発明の熱サイクルシステムとして、具体的には、冷凍・冷蔵機器、空調機器、発電システム、熱輸送装置および二次冷却機等が挙げられる。なかでも、本発明の熱サイクルシステムは、より高温の作動環境でも安定してかつ安全に熱サイクル性能を発揮できるため、屋外等に設置されることが多い空調機器として用いられることが好ましい。また、本発明の熱サイクルシステムは、冷凍・冷蔵機器として用いられることも好ましい。
【0157】
空調機器として、具体的には、ルームエアコン、パッケージエアコン(店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン等)、ガスエンジンヒートポンプ、列車空調装置、自動車用空調装置等が挙げられる。
【0158】
冷凍・冷蔵機器として、具体的には、ショーケース(内蔵型ショーケース、別置型ショーケース等)、業務用冷凍・冷蔵庫、自動販売機、製氷機等が挙げられる。
【0159】
発電システムとしては、ランキンサイクルシステムによる発電システムが好ましい。
発電システムとして、具体的には、蒸発器において地熱エネルギー、太陽熱、50〜200℃程度の中〜高温度域廃熱等により作動媒体を加熱し、高温高圧状態の蒸気となった作動媒体を膨張機にて断熱膨張させ、該断熱膨張によって発生する仕事によって発電機を駆動させ、発電を行うシステムが例示される。
【0160】
また、本発明の熱サイクルシステムは、熱輸送装置であってもよい。熱輸送装置としては、潜熱輸送装置が好ましい。
【0161】
潜熱輸送装置としては、装置内に封入された作動媒体の蒸発、沸騰、凝縮等の現象を利用して潜熱輸送を行うヒートパイプおよび二相密閉型熱サイフォン装置が挙げられる。ヒートパイプは、半導体素子や電子機器の発熱部の冷却装置等、比較的小型の冷却装置に適用される。二相密閉型熱サイフォンは、ウィッグを必要とせず構造が簡単であることから、ガス−ガス型熱交換器、道路の融雪促進および凍結防止等に広く利用される。
【0162】
なお、熱サイクルシステムの稼働に際しては、水分の混入や、酸素等の不凝縮性気体の混入による不具合の発生を避けるために、これらの混入を抑制する手段を設けることが好ましい。
【0163】
熱サイクルシステム内に水分が混入すると、特に低温で使用される際に問題が生じる場合がある。例えば、キャピラリーチューブ内での氷結、作動媒体や潤滑油の加水分解、サイクル内で発生した酸成分による材料劣化、コンタミナンツの発生等の問題が発生する。特に、潤滑油がポリグリコール油、ポリオールエステル油等である場合は、吸湿性が極めて高く、また、加水分解反応を生じやすく、潤滑油としての特性が低下し、圧縮機の長期信頼性を損なう大きな原因となる。したがって、潤滑油の加水分解を抑えるためには、熱サイクルシステム内の水分濃度を制御する必要がある。
【0164】
熱サイクルシステム内の水分濃度を制御する方法としては、乾燥剤(シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト等)等の水分除去手段を用いる方法が挙げられる。乾燥剤は、液状の熱サイクルシステム用組成物と接触させることが、脱水効率の点で好ましい。例えば、凝縮器12の出口、または蒸発器14の入口に乾燥剤を配置して、熱サイクルシステム用組成物と接触させることが好ましい。
【0165】
乾燥剤としては、乾燥剤と熱サイクルシステム用組成物との化学反応性、乾燥剤の吸湿能力の点から、ゼオライト系乾燥剤が好ましい。
【0166】
ゼオライト系乾燥剤としては、従来の鉱物系潤滑油に比べて吸湿量の高い潤滑油を用いる場合には、吸湿能力に優れる点から、下式(3)で表される化合物を主成分とするゼオライト系乾燥剤が好ましい。
【0167】
2/nO・Al・xSiO・yHO …(3)
ただし、Mは、Na、K等の1族の元素またはCa等の2族の元素であり、nは、Mの原子価であり、x、yは、結晶構造にて定まる値である。Mを変化させることにより細孔径を調整できる。
【0168】
乾燥剤の選定においては、細孔径および破壊強度が重要である。
熱サイクルシステム用組成物が含有する作動媒体の分子径よりも大きい細孔径を有する乾燥剤を用いた場合、作動媒体が乾燥剤中に吸着され、その結果、作動媒体と乾燥剤との化学反応が生じ、不凝縮性気体の生成、乾燥剤の強度の低下、吸着能力の低下等の好ましくない現象を生じることとなる。
【0169】
したがって、乾燥剤としては、細孔径の小さいゼオライト系乾燥剤を用いることが好ましい。特に、細孔径が3.5オングストローム以下である、ナトリウム・カリウムA型の合成ゼオライトが好ましい。作動媒体の分子径よりも小さい細孔径を有するナトリウム・カリウムA型合成ゼオライトを適用することによって、作動媒体を吸着することなく、熱サイクルシステム内の水分のみを選択的に吸着除去できる。言い換えると、作動媒体の乾燥剤への吸着が起こりにくいことから、熱分解が起こりにくくなり、その結果、熱サイクルシステムを構成する材料の劣化やコンタミナンツの発生を抑制できる。
【0170】
ゼオライト系乾燥剤の大きさは、小さすぎると熱サイクルシステムの弁や配管細部への詰まりの原因となり、大きすぎると乾燥能力が低下するため、粒度の代表値として約0.5〜5mmが好ましい。形状としては、粒状または円筒状が好ましい。
【0171】
ゼオライト系乾燥剤は、粉末状のゼオライトを結合剤(ベントナイト等。)で固めることにより任意の形状とすることができる。ゼオライト系乾燥剤を主体とするかぎり、他の乾燥剤(シリカゲル、活性アルミナ等。)を併用してもよい。
熱サイクルシステム用組成物に対するゼオライト系乾燥剤の使用割合は、特に限定されない。
【0172】
さらに、熱サイクルシステム内に不凝縮性気体が混入すると、凝縮器や蒸発器における熱伝達の不良、作動圧力の上昇という悪影響をおよぼすため、極力混入を抑制する必要がある。特に、不凝縮性気体の一つである酸素は、作動媒体や潤滑油と反応し、分解を促進する。
【0173】
不凝縮性気体濃度は、作動媒体の気相部において、作動媒体に対する容積割合で1.5体積%以下が好ましく、0.5体積%以下が特に好ましい。
【0174】
以上説明した本発明の熱サイクルシステムにあっては、本発明の作動媒体を用いることで、安全性が高く、地球温暖化への影響を抑えつつ、実用上充分なサイクル性能が得られる。
【実施例】
【0175】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。例1〜7、14〜16、22〜24、29〜31、36〜40、45〜51、56〜58、62〜64、69〜71、75〜77、80、81、85、86、91〜96、98〜101が実施例であり、例8〜13、17〜21、25〜28、32〜35、41〜44、52〜55、59〜61、65〜68、72〜74、78、79、82〜84、87〜90、97が比較例である。
【0176】
[例1〜101]
例1〜101において、HFO−1123と、R32と、R152a、R161、プロパン、プロピレン、二酸化炭素、1234yfおよび1234ze(E)から選ばれる1種以上を表2〜表6に示す割合で混合した作動媒体を作製し、上記の方法で、GWP、自己分解性、燃焼速度、RDPR410A、RQR410A、RCOPR410A、温度グライドを算出または測定した。結果を組成とともに表2〜表6に示す。
【0177】
【表2】
【0178】
【表3】
【0179】
【表4】
【0180】
【表5】
【0181】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明の熱サイクル用作動媒体、熱サイクルシステム用組成物および該作動媒体、該組成物を用いた熱サイクルシステムは、冷凍・冷蔵機器(内蔵型ショーケース、別置型ショーケース、業務用冷凍・冷蔵庫、自動販売機、製氷機等)、空調機器(ルームエアコン、店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン、ガスエンジンヒートポンプ、列車用空調装置、自動車用空調装置等)、発電システム(廃熱回収発電等)、熱輸送装置(ヒートパイプ等)に利用できる。
【符号の説明】
【0183】
10…冷凍サイクルシステム、11…圧縮機、12…凝縮器、13…膨張弁、14…蒸発器、15,16…ポンプ。
図1
図2
図3