(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項5に記載のエポキシ樹脂硬化剤がアミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、多価カルボン酸樹脂のいずれかから選ばれることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明のシリコーン変性エポキシ樹脂は、下記式(5A)
【化9】
(式中、R
5は直接結合又はエステル、エーテル結合を含有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基を表す。)
の末端アルケニル基を含有するエポキシ基含有化合物又は下記式(5B)
【化10】
(式中、R
5は上記と同じ基を表す。)
の末端水酸基を含有するエポキシ基含有化合物を、下記式(6)で表される化合物とそれぞれヒドロシリル化反応、脱水素カップリングすることで得られる。
【0007】
ここで、R
5は直接結合又はエステル、エーテル結合を含有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソプロピレン基、メチルエステル基、メチルエーテル基などである。
式(5A)で表される化合物としては下記式(7)〜(9)
【化11】
で表される末端アルケニル基を含有するエポキシ基含有化合物を挙げることができる。
【0008】
本発明のシリコーン変性エポキシ樹脂を得るには、下記式(6)の化合物を反応に用いる。
【化12】
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜6の一価脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜12の一価芳香族炭化水素基を、nは前記式(1)と同様の意味を表す。)
ここで、上記式(6)のRについて少なくとも1つ以上がフェニル基等の炭素数6〜12の一価芳香族炭化水素基であることが好ましい。
Aは炭素数1〜20のヘテロ環骨格、環式炭化水素骨格又は芳香環骨格を有しても良い有機基を表す。
【0009】
この場合、末端にSiH基を有する有機ケイ素化合物と、末端アルケニル基を有する化合物又は末端水酸基を有する化合物との反応割合としては、SiH基/(アルケニル基又は水酸基)のモル比(H/Vi)が0.1〜3.0、特に0.5〜1.5となる割合で反応させることが好ましい。なお、ヒドロシリル化反応又は脱水素カップリング反応は、従来公知の方法に従えばよい。
そして、上記式(6)で表される末端にSiH基を有する有機ケイ素化合物と、上記式(5A)で表される末端アルケニル基を有する化合物又は上記式(5B)で表される末端水酸基を有する化合物とを、白金やロジウム、パラジウムなどの貴金属触媒存在下、ヒドロシリル化反応及び脱水素カップリングによって製造することができる。
【0010】
ここで、上記式(6)で表される化合物について詳細に説明する。
【0011】
上記式(6)で表される化合物において、Aは炭素数1〜20のヘテロ環骨格、環式炭化水素骨格又は芳香環骨格を有しても良いアルキレン基等の有機基である。ここで、分子量を大きくする観点からヘテロ環骨格、環式炭化水素骨格又は芳香族骨格を有していることが好ましい。一方、分子量を小さく抑える観点からは、直鎖又は分岐鎖を有する鎖状の炭化水素基であることが好ましい。また、耐熱性を向上させる観点からは、環式炭化水素骨格を有していることが好ましく、強靭性を向上させる観点からはヘテロ環骨格を有するか、直鎖又は分岐鎖を有する鎖状の炭化水素基であることが好ましい。
ヘテロ環骨格としては、モルホリン骨格、テトラヒドロフラン骨格、オキサン骨格、ジオキサン骨格、トリオキサン骨格、トリアジン骨格、カルバゾール骨格、ピロリジン骨格、ピペリジン骨格等が挙げられる。中でも、オキサン骨格、ジオキサン骨格、トリオキサン骨格、モルホリン骨格が好ましい。
環式炭化水素骨格としては、ジシクロデカン骨格、トリシクロデカン骨格、アダマンタン骨格、シクロヘキサン骨格、シクロペンタン骨格、シクロヘプタン骨格等が挙げられる。中でも、トリシクロデカン骨格、シクロヘキサン骨格が好ましい。
芳香族骨格としては、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、カルバゾール骨格等が挙げられる。中でも、ベンゼン骨格が好ましい。
直鎖又は分岐鎖を有する鎖状の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等を挙げることができる。中でも、エチレン基が好ましい。
Aを構成する炭素数としては、通常1〜20であり、1〜15が好ましく、2〜12がより好ましい。
より具体的に好ましいAの有機基は、炭素数1〜10のアルキレン基、下記式(3)
【化13】
(上記式中、R
3は炭素数1〜6のアルキレン基を、R
4は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を、mは0又は1の整数を、kは1〜4の整数を表す。*は上記式(1)において隣接する酸素原子への結合を表す。)
又は下記式(4)
【化14】
(上記式中、R
3、R
4、k、*は前記式(3)と同様の意味を表す。)
のいずれかの有機基をそれぞれ表す。式中、複数存在するR
1〜R
3、はそれぞれ同一であっても異なってもよい。複数存在するR
2のうち少なくとも一つは炭素数6〜12の一価芳香族炭化水素基を表す。)である。
【0012】
Rにおける炭素数1〜6の一価脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜12の一価芳香族炭化水素基において、炭素数1〜6の一価脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基などの飽和一価脂肪族炭化水素基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基などの不飽和一価脂肪族炭化水素基などが挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘプチル基であり、更に好ましくはメチル基である。また、炭素数6〜12の一価芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基や、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基等のアラルキル基であり、好ましくはフェニル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基であり、更に好ましくはフェニル基である。
【0013】
R
3は炭素数1〜6のアルキレン基である。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシル基、エチレンエステル基、プロピレンエステル基、ブチレンエステル基、ペンチレンエステル基、イソプロピレンエステル基、イソブチレンエステル基、エチレンエーテル基、プロピレンエーテル基、ブチレンエーテル基、ペンチレンエーテル基、ヘキシレンエーテル基等が挙げられる。これらアルキレン基の中でも、硬化物の低ガス透過性、強度の観点からメチレン基、イソブチレン基が特に好ましい。
【0014】
R
4における水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。中でもエチル基が好ましい。
【0015】
nは平均値で0〜10であり、好ましくは0〜5、さらに好ましくは0〜2である。kは平均値で1〜10であり、硬化物の低ガス透過性の観点から好ましくは1〜2である。
【0016】
ここで、上記式(6)で表される化合物は、多価アルコール類とシラン化合物を反応させてえることができる。
即ち、本発明によれば、一般式(10)
【化15】
(式中、Aは炭素数1〜20のヘテロ環骨格、環式炭化水素骨格又は芳香環骨格を有しても良い有機基を表す。)で表される多価アルコール類と、一般式(11)
【化16】
(式中、Rは前記式(6)と同様の意味を表し、複数あるRは同一であっても異なっていても良い。)で表されるヒドロシラン類とを、パラジウム含有触媒の存在下、反応させることにより、上記一般式(6)で表される、前駆体ケイ素化合物が提供される。
ここで、炭素数1〜20のヘテロ環骨格、環式炭化水素骨格又は芳香環骨格を有しても良い有機基の例として、ヘテロ環骨格、環式炭化水素骨格又は芳香環骨格としては上記骨格を挙げることができる。そして、例として、Aは炭素数1〜10のアルキレン基、下記式(3)
【化17】
(上記式中、R
3は炭素数1〜6のアルキレン基を、R
4は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を、mは0又は1の整数を、kは1〜4の整数を表す。*は上記式(1)において隣接する酸素原子への結合を表す。)
又は下記式(4)
【化18】
(上記式中、R
3、R
4、k、*は前記式(3)と同様の意味を表す。)
のいずれかの有機基をそれぞれ表す。式中、複数存在するR
3、R
4、はそれぞれ同一であっても異なってもよい。)を挙げることができる。
【0017】
さらに、本発明に用いられる多価アルコール類は、それぞれ一種類のものである必要はなく、複数の種類の混合物を用いても良い。一般式(11)で表されるジヒドロシラン類も、一種類のものである必要はない。
【0018】
本発明の製造方法に用いられる多価アルコール類には、炭素数1〜20のヘテロ環骨格、環式炭化水素骨格又は芳香環骨格を有しても良いアルキレングリコール類を用いることができる。ヘテロ環骨格、環式炭化水素骨格、芳香環骨格としては上記の骨格を挙げることができる。又、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖を有するアルキレングリコール類を使用することもできる。
例としては、下記式(12)
【化19】
(上記式中、R
3は炭素数1〜6のアルキレン基を、R
4は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を、mは0又は1の整数を、kは1〜4の整数を表す。*は上記式(1)において隣接する酸素原子への結合を表す。)
で表されるジオール化合物、下記式(13)
【化20】
(上記式中、R
3、R
4、k、*は前記式(3)と同様の意味を表す。)
で表されるジオール化合物を挙げることができる。
【0019】
炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖を有するアルキレングリコール類としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、2,4−ジメチルペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等を挙げることができる。
【0020】
上記式(12)で表されるジオール化合物としては、R
3はメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ヘキセン基等が挙げられるが、メチレン基であることが好ましい。
mは1であることが好ましく、R
4は水素原子であることが好ましい。
特に、下記式(14)
【化21】
で表されるジオール化合物であることが好ましい。
【0021】
上記式(13)で表されるジオール化合物としては、R
3はメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、t−ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ヘキセン基等が挙げられるが、メチレン基、t−ブチレン基であることが好ましい。
R
4は水素原子であることが好ましい。
特に、下記式(15)
【化22】
で表されるジオール化合物であることが好ましい。
【0022】
本発明の製造方法に用いられるヒドロシラン類には特に制限はないが、これを例示すれば、ジメチルシラン、プロピルメチルシラン、ブチルメチルシラン、へキシルメチルシラン、ドデシルメチルシラン、ジブチルシラン、ジヘキシルシラン、ジシクロヘキシルシラン、フェニルシラン、フェニルメチルシラン、ナフチルメチルシラン、ベンジルメチルシラン、トリルメチルシラン、アニシルメチルシラン、トリフルオロメチルフェニルメチルシラン、ジフェニルシラン、ジトリルシラン、ジアニシルシラン、ビス(トリフルオロメチルフェニル)シラン、ジナフチルシラン、ジベンジルシラン等を挙げることができる。
中でも、フェニルシラン、ジフェニルシランが好ましい。
【0023】
本発明の製造方法においては、パラジウム含有触媒を用いる。パラジウム含有触媒としては種々のものを用いることができるが、これを例示すれば、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム、ビス(トリエチルホスフィン)ジクロロパラジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、トリス(トリエチルホスフィン)パラジウム、(テトラメチルエチレンジアミン)ジクロロパラジウム、アリルパラジウムクロリド二量体、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム、(1,5−シクロオクタジエン)ジクロロパラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、パラジウム黒、パラジウム炭素、、含窒素ヘテロ環カルベンパラジウム等を挙げることができる。ここで、分子量制御をしゲル化を抑制しやすいことから、パラジウム炭素を用いることが好ましい。
【0024】
本発明の製造方法は、多価アルコール類と、ヒドロシラン類とを、パラジウム含有触媒の存在下に反応させることにより達成される。有機ジオール類とヒドロシラン類とのモル比には特に制限はないが、1:5から5:1、さらに望ましくは、1:2から2:1の範囲のモル比が望ましい。ヒドロシラン類とパラジウム含有触媒におけるパラジウムとのモル比にも特に制限はないが、収率等を考慮すれば、10,000:1から2:1の範囲のモル比でこれを実施することができる。本発明における反応は、原料の一つが液体である場合には溶媒を用いずにこれを実施することができるが、ベンゼン、トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、THF、ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒を用いることができる。反応温度にも特に制限はないが、反応性と原料の安定性等を考慮すれば、0℃から150℃の範囲でこれを実施することができる。
【0025】
ここで、上記式(5)で表される化合物は、上記末端アルケニル基を有する化合物を前述したジオレフィン樹脂の酸化方法で酸化することにより、得ることができる。
即ち、下記式(16)
【化23】
(式中、R
5は直接結合又はエステル、エーテル結合を含有してもよい炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
で表されるオレフィン化合物を酸化して得ることができる。
【0026】
上記式(16)において、R
5は直接結合又はエステル、エーテル結合を含有してもよい炭素数1〜4のアルキレン基である。具体的には、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、エチレンエステル基、プロピレンエステル基、エチレンエーテル基、プロピレンエーテル基、ブチレンエーテル基、ペンチレンエーテル基、ヘキシレンエーテル基等が挙げられる。これらアルキレン基の中でも、硬化物の低ガス透過性、強度の観点からエチレン基、プロピレン基が特に好ましい。
【0027】
酸化の手法としては過酢酸等の過酸で酸化する方法、過酸化水素水で酸化する方法、空気(酸素)で酸化する方法などが挙げられるが、これらに限らない。
過酸によるエポキシ化の手法としては具体的には日本国特開2006−52187号公報に記載の手法などが挙げられる。使用できる過酸としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、安息香酸、m−クロロ安息香酸、フタル酸などの有機酸およびそれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも、過酸化水素と反応して有機過酸を生成する効率、反応温度、操作の簡便性、経済性などの観点からは、ギ酸、酢酸、無水フタル酸を使用するのが好ましく、特に反応操作の簡便性の観点から、ギ酸または酢酸を使用するのがより好ましい。
過酸化水素水によるエポキシ化の手法においては種々の手法が適応できるが、具体的には、日本国特開昭59−108793号公報、日本国特開昭62−234550号公報、日本国特開平5−213919号公報、日本国特開平11−349579号公報、日本国特公平1―33471号公報、日本国特開2001−17864号公報、日本国特公平3−57102号公報等に挙げられるような手法が適応できる。
他にも、非特許文献1(James V.Crivello and Ramesh Narayan、Novel Epoxynorbornane Monomers. 1. Synthesis and Characterization、Macromolecules 1996、29巻、433〜438頁)に記載されている方法も適用することができる。具体的には、オキソンを使用して、オレフィン基をエポキシ化して得ることができる。
【0028】
以下、前記式(5)で表される化合物を得るのに特に好ましい方法を例示する。
まず、前記式(16)で表されるジオレフィン化合物、ポリ酸類及び4級アンモニウム塩を有機溶剤と過酸化水素水との二層で反応を行う。
【0029】
本発明で使用するポリ酸類は、ポリ酸構造を有する化合物であれば特に制限はないが、タングステン又はモリブデンを含むポリ酸類が好ましく、タングステンを含むポリ酸類が更に好ましく、タングステン酸塩類が特に好ましい。
ポリ酸類に含まれる具体的なポリ酸及びポリ酸塩としては、タングステン酸、12−タングストリン酸、12−タングストホウ酸、18−タングストリン酸及び12−タングストケイ酸等から選ばれるタングステン系の酸、モリブデン酸及びリンモリブデン酸等から選ばれるモリブデン系の酸、ならびにそれらの塩等が挙げられる。
これらの塩のカウンターカチオンとしては、アンモニウムイオン、アルカリ土類金属イオン、アルカリ金属イオン等が挙げられる。
具体的にはカルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属イオン等が挙げられるがこれらに限定されない。特に好ましいカウンターカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオンである。
【0030】
ポリ酸類の使用量は本発明のジオレフィン化合物におけるオレフィン1モル(官能基当量)に対し、金属元素換算(タングテン酸ならタングステン原子、モリブデン酸ならモリブデン原子のモル数)で1.0〜20ミリモル、好ましくは2.0〜20ミリモル、さらに好ましくは2.5〜10ミリモルである。
【0031】
4級アンモニウム塩としては、総炭素数が10以上、好ましくは25〜100、より好ましくは25〜55の4級アンモニウム塩が好ましく使用でき、特にそのアルキル鎖が全て脂肪族鎖であるものが好ましい。
具体的にはトリデカニルメチルアンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、トリアルキルメチル(アルキル基がオクチル基である化合物とデカニル基である化合物の混合タイプ)アンモニウム塩、トリヘキサデシルメチルアンモニウム塩、トリメチルステアリルアンモニウム塩、テトラペンチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、ジセチルジメチルアンモニウム塩、トリセチルメチルアンモニウム塩、ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウム塩などが挙げられるがこれらに限定されない。
またこれら塩のアニオン種は、カルボン酸イオンを使用する。カルボン酸イオンとしては、酢酸イオン、炭酸イオン、ギ酸イオンが好ましい。また、特に酢酸イオンが好ましい。
4級アンモニウム塩の炭素数が100を上回ると、疎水性が強くなりすぎて有機層への溶解性が悪くなる場合がある。一方、4級アンモニウム塩の炭素数が10未満であると、親水性が強くなり、同様に有機層への相溶性が悪くなる場合がある。
4級アンモニウム塩には一般にハロゲンが残存する。本発明においては特に、1質量%以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは700ppm以下である。総ハロゲン量が1質量%を超える場合、生成物に多量にハロゲンが残存するため好ましくない。
タングステン酸類と4級アンモニウムのカルボン酸塩の使用量は使用するタングステン酸類の価数倍の0.01〜0.8倍当量、あるいは1.1〜10倍当量が好ましい。より好ましくは0.05〜0.7倍当量、あるいは1.2〜6.0倍当量であり、さらに好ましくは0.05〜0.5倍当量、あるいは1.3〜4.5倍当量である。
例えば、タングステン酸であればH2WO4で2価であるので、タングステン酸1モルに対し、4級アンモニウムのカルボン酸塩は0.02〜1.6モル、もしくは2.2〜20モルの範囲が好ましい。またタングストリン酸であれば3価であるので、同様に0.03〜2.4モル、もしくは3.3〜30モル、ケイタングステン酸であれば4価であるので0.04〜3.2モル、もしくは4.4〜40モルが好ましい。
4級アンモニウムのカルボン酸塩の量が、タングステン酸類の価数倍の1.1倍当量よりも低い場合、エポキシ化反応が進行しづらい(場合によっては反応の進行が早くなる)、また副生成物ができやすいという問題が生じる。10倍当量よりも多い場合、過剰の4級アンモニウムのカルボン酸塩の処理が大変であるばかりか、反応を抑制する働きがあり、好ましくない。
【0032】
カルボン酸イオンをアニオンとする4級アンモニウム塩は、市販品を使用してもよいし、例えば、原料4級アンモニウム塩を金属水酸化物やイオン交換樹脂で処理し、4級アンモニウムハイドロオキサイドに変換し、さらに各種カルボン酸と反応させるなどの方法により製造してもよい。原料4級アンモニウム塩としては、4級アンモニウムのハロゲン化物や各種金属塩等が挙げられる。また好適な4級アンモニウムハイドロオキサイドがあればそれを用いてもよい。
【0033】
緩衝液としてはいずれも用いることができるが、本反応においてはリン酸塩水溶液を用いるのが好ましい。そのpHとしてはpH4〜10の間に調整されたものが好ましく、より好ましくはpH5〜9である。pH4未満の場合、エポキシ基の加水分解反応、重合反応が進行しやすくなる。またpH10を超える場合、反応が極度に遅くなり、反応時間が長すぎるという問題が生じる。
特に本発明においては触媒であるタングステン酸類を溶解した際に、pH5〜9の間になるように調整された緩衝液が好ましい。
緩衝液の使用方法は、例えば好ましい緩衝液であるリン酸−リン酸塩水溶液の場合は過酸化水素に対し、0.1〜10モル%当量のリン酸(あるいはリン酸二水素ナトリウム等のリン酸塩)を使用し、塩基性化合物(たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等)でpH調整を行うという方法が挙げられる。ここでpHは過酸化水素を添加した際に前述のpHになるように添加することが好ましい。また、リン酸二水素ナトリウム又はリン酸水素二ナトリウム等を用いて調整することも可能である。好ましいリン酸塩の濃度は0.1〜60質量%、好ましくは5〜45質量%である。
また、本反応においては緩衝液を使用せず、pH調整無しに、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウムあるいはトリポリリン酸ナトリウム等(またはその水和物)のリン酸塩を直接添加してもよい。工程の簡略化、という意味合いではpH調整のわずらわしさが無く、直接の添加が特に好ましい。この場合のリン酸塩の使用量は、過酸化水素に対し、通常0.1〜5モル%当量、好ましくは0.2〜4モル%当量、より好ましくは、0.3〜3モル%当量である。この際、過酸化水素に対し、5モル%当量を超えるとpH調整が必要となり、0.1モル%当量未満の場合、生成したエポキシ樹脂の加水分解物が進行しやすくなる、あるいは反応が遅くなる等の弊害が生じる。
【0034】
本反応は過酸化水素を用いてエポキシ化を行う。本反応に使用する過酸化水素としては、その取扱いの簡便さから過酸化水素濃度が10〜40質量%の濃度である水溶液が好ましい。濃度が40質量%を超える場合、取扱いが難しくなる他、生成したエポキシ樹脂の分解反応も進行しやすくなることから好ましくない。
【0035】
本反応は有機溶剤を使用する。使用する有機溶剤の量としては、反応基質であるジオレフィン化合物1に対し、質量比で0.3〜10であり、好ましくは0.3〜5、より好ましくは0.5〜2.5である。質量比で10を超える場合、反応の進行が極度に遅くなることから好ましくない。使用できる有機溶剤の具体的な例としてはヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等のアルカン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられる。また、場合によっては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、アノン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、蟻酸メチル等のエステル化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物等も使用可能である。
【0036】
具体的な反応操作方法としては、例えばバッチ式の反応釜で反応を行う際は、ジオレフィン化合物、過酸化水素(水溶液)、ポリ酸類(触媒)、緩衝液、4級アンモニウム塩及び有機溶剤を加え、二層で撹拌する。撹拌速度に特に指定は無い。過酸化水素の添加時に発熱する場合が多いことから、各成分を添加した後に過酸化水素を徐々に添加する方法でもよい。
【0037】
反応温度は特に限定されないが0〜90℃が好ましく、さらに好ましくは0〜75℃、特に15℃〜60℃が好ましい。反応温度が高すぎる場合、加水分解反応が進行しやすく、反応温度が低いと反応速度が極端に遅くなる。
【0038】
また反応時間は反応温度、触媒量等にもよるが、工業生産という観点から、長時間の反応は多大なエネルギーを消費することになるため好ましくはない。好ましい範囲としては1〜48時間、好ましくは3〜36時間、さらに好ましくは4〜24時間である。
【0039】
反応終了後、過剰な過酸化水素のクエンチ処理を行う。クエンチ処理は、塩基性化合物を使用して行なうことが好ましい。また、還元剤と塩基性化合物を併用することも好ましい。好ましい処理方法としては塩基性化合物でpH6〜12に中和調整後、還元剤を用い、残存する過酸化水素をクエンチする方法が挙げられる。pHが6未満の場合、過剰の過酸化水素を還元する際の発熱が大きく、分解物を生じる可能性がある。
【0040】
還元剤としては亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヒドラジン、シュウ酸、ビタミンC等が挙げられる。還元剤の使用量としては過剰分の過酸化水素もモル数に対し、通常0.01〜20倍モル、より好ましくは0.05〜10倍モル、さらに好ましくは0.05〜3倍モルである。
【0041】
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等のリン酸塩、イオン交換樹脂、アルミナ等の塩基性固体が挙げられる。
その使用量としては水、あるいは有機溶剤(例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類等の各種溶剤)に溶解するものであれば、その使用量は過剰分の過酸化水素のモル数に対し、通常0.01〜20倍モル、より好ましくは0.05〜10倍モル、さらに好ましくは0.05〜3倍モルである。これらは水、あるいは前述の有機溶剤の溶液として添加しても単体で添加してもよい。
水や有機溶剤に溶解しない固体塩基を使用する場合、系中に残存する過酸化水素の量に対し、質量比で1〜1000倍の量を使用することが好ましい。より好ましくは10〜500倍、さらに好ましくは10〜300倍である。水や有機溶剤に溶解しない固体塩基を使用する場合は、後に記載する水層と有機層の分離の後、処理を行ってもよい。
【0042】
過酸化水素のクエンチ後(もしくはクエンチを行う前に)、この際、有機層と水層が分離しない、もしくは有機溶剤を使用していない場合は前述の有機溶剤を添加して操作を行い、水層より反応生成物の抽出を行う。この際使用する有機溶剤は、原料ジオレフィン化合物に対して質量比で0.5〜10倍、好ましくは0.5〜5倍である。この操作を必要に応じて数回繰り返した後に有機層を分離し、必要に応じて該有機層を水洗して精製する。
得られた有機層は必要に応じてイオン交換樹脂や金属酸化物(特に、シリカゲルやアルミナ等が好ましい)、活性炭(中でも特に薬品賦活活性炭が好ましい)、複合金属塩(中でも特に塩基性複合金属塩が好ましい)、粘度鉱物(中でも特にモンモリロナイト等層状粘度鉱物が好ましい)等により、不純物を除去し、さらに水洗及びろ過等を行った後、溶剤を留去し、目的とするエポキシ化合物を得る。場合によってはさらにカラムクロマトグラフィーや蒸留により精製してもよい。
【0043】
上述した反応を経由することにより、下記式(1)で表されるシリコーン変性エポキシ樹脂を得ることができる。
【化24】
(式中、R
2は水素原子、下記式(2A)
【化25】
(式中、R
1は直接結合又はエステル、エーテル結合を含有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基を、*は上記式(1)において隣接するケイ素原子への結合を示す。)
、下記式(2B)
【化26】
(式中、R
1、*は上記と同様の意味を表す。)
、炭素数1〜6の一価脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜12の一価芳香族炭化水素基を、Aは炭素数1〜20のヘテロ環骨格、環式炭化水素骨格又は芳香環骨格を有しても良い有機基を、nは平均値で0〜10をそれぞれ表す。式中、複数存在するR
1〜R
4はそれぞれ同一であっても異なってもよい。但し、複数存在するR
2のうち少なくとも一つは上記式(2A)又は(2B)を表す。)
このようにして得られた、上記シリコーン変性エポキシ樹脂において、分子量としては、各々下記の要件を満たすことが好適である。
数平均分子量(Mn)としては、200〜30000が好ましく、300〜10000が好ましく、300〜5000がより好ましい。
重量平均分子量(Mw)としては、200〜50000が好ましく、300〜30000が好ましく、300〜10000がより好ましい。この範囲にあることで、耐熱性、強靭性、操作性に優れたシリコーン変性エポキシ樹脂を得ることができる。
分子量分布(Mw/Mn)としては、1〜50が好ましく、1〜30が好ましく、1〜10がより好ましい。
【0044】
上記R
1は直接結合、エステル、エーテル結合を含有してもよい炭素数2〜6のアルキレン基である。具体的には、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシル基、エチレンエステル基、プロピレンエステル基、ブチレンエステル基、ペンチレンエステル基、イソプロピレンエステル基、イソブチレンエステル基、エチレンエーテル基、プロピレンエーテル基、ブチレンエーテル基、ペンチレンエーテル基、ヘキシレンエーテル基等が挙げられる。これらアルキレン基の中でも、硬化物の低ガス透過性、強度の観点からエチレン基、プロピレン基が特に好ましい。
【0045】
R
2における炭素数1〜6の一価脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜12の一価芳香族炭化水素基において、炭素数1〜12の一価脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基などの飽和一価脂肪族炭化水素基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基などの不飽和一価脂肪族炭化水素基などが挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘプチル基であり、更に好ましくはメチル基である。また、炭素数6〜12の一価芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基や、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基等のアラルキル基であり、好ましくはフェニル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基であり、更に好ましくはフェニル基である。
【0046】
さらに、得られたシリコーン変性エポキシ樹脂として、エポキシ当量は500〜20000g/eqであることが好ましく、500〜3000g/eqであることがより好ましく、500〜2000g/eqであることが特に好ましい。エポキシ当量が好適な範囲にあることで、高い耐熱性を確保できるためである。
さらに、溶媒の残存量は5%未満であることが好ましく、2%未満であることがより好ましい。溶媒の残存量が多いと、硬化時に揮発して硬化物に凹部を生じさせる不具合が生じる恐れがあるためである。
【0047】
上記式(1)で表される化合物において、Aは炭素数1〜20のヘテロ環骨格、環式炭化水素骨格又は芳香環骨格を有しても良いアルキレン基等の有機基である。耐熱性を向上させる観点からは、環式炭化水素骨格を有していることが好ましく、強靭性を向上させる観点からはヘテロ環骨格を有するか、直鎖又は分岐鎖を有する鎖状の炭化水素基であることが好ましい。
ヘテロ環骨格としては、モルホリン骨格、テトラヒドロフラン骨格、オキサン骨格、ジオキサン骨格、トリオキサン骨格、トリアジン骨格、カルバゾール骨格、ピロリジン骨格、ピペリジン骨格が挙げられる。中でも、オキサン骨格、ジオキサン骨格、トリオキサン骨格、モルホリン骨格が好ましい。
環式炭化水素骨格としては、ジシクロデカン骨格、トリシクロデカン骨格、アダマンタン骨格、シクロヘキサン骨格、シクロペンタン骨格、シクロヘプタン骨格が挙げられる。中でも、トリシクロデカン骨格、シクロヘキサン骨格が好ましい。
芳香族骨格としては、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、カルバゾール骨格が挙げられる。中でも、ベンゼン骨格が好ましい。
直鎖又は分岐鎖を有する鎖状の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等を挙げることができる。中でも、エチレン基が好ましい。
Aを構成する炭素数としては、通常1〜20であり、1〜15が好ましく、2〜12がより好ましい。
【0048】
<(B)硬化剤>
硬化剤としては、エポキシ基と反応性の官能基を有する硬化剤が使用される。例えば、酸無水物系硬化剤、多価カルボン酸樹脂、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、が挙げられ、そのうち酸無水物系硬化剤、多価カルボン酸樹脂が好ましい。酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸と4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、2,4−ジエチルグルタル酸無水物などを挙げることができ、これらのうち、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びその誘導体が好ましい。
【0049】
次に、多価カルボン酸樹脂について説明する。
多価カルボン酸樹脂(B)は少なくとも2つ以上のカルボキシ基を有し、脂肪族炭化水素基またはシロキサン骨格を主骨格とすることを特徴とする化合物である。本発明においては多価カルボン酸樹脂とは単一の構造を有する多価カルボン酸化合物だけでなく、置換基の位置が異なる、あるいは置換基の異なる複数の化合物の混合体、すなわち多価カルボン酸組成物も含包し、本発明においてはそれらをまとめて多価カルボン酸樹脂と称す。
多価カルボン酸樹脂(B)としては、特に2〜6官能のカルボン酸が好ましく、炭素数5以上の2〜6官能の多価アルコールまたはシロキサン構造を有する多価アルコールと酸無水物との反応により得られた化合物がより好ましい。さらには上記酸無水物が飽和脂肪族環状酸無水物であるポリカルボン酸が好ましい。
2〜6官能の多価アルコールとしてはアルコール類としては、アルコール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されないがエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,4−ジエチルペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1.3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、トリシクロデカンジメタノール、ノルボルネンジオール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2−ヒドロキシメチル−1,4−ブタンジオール等のトリオール類、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン等のテトラオール類、ジペンタエリスリトールなどのヘキサオール類等が挙げられる。
特に好ましいアルコール類としては炭素数が5以上のアルコールであり、特に1,6-ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、2,4−ジエチルペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、トリシクロデカンジメタノール、ノルボルネンジオール等の化合物が挙げられ、中でも2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2,4−ジエチルペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ノルボルネンジオール等の分岐鎖状構造や環状構造を有するアルコール類がより好ましい。高い照度保持率を付与する観点から、2,4−ジエチルペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノールが特に好ましい。
シロキサン構造を有する多価アルコールは特に限定されないが、例えば下記式で表されるシリコーンオイルを使用することができる。
【化27】
(式中、A
1はエーテル結合を介しても良い炭素総数1〜10アルキレン基を表し、A
2はメチル基又はフェニル基を表す。また、nは繰り返し数であり平均値を意味し、1〜100である。)
酸無水物としては特にメチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物等が好ましく、中でもメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物が好ましい。ここで、硬度を上げるためには、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物が好ましく、照度保持率を上げるためにはメチルヘキサヒドロ無水フタル酸無水物が好ましい。
付加反応の条件としては特に指定はないが、具体的な反応条件の1つとしては酸無水物、多価アルコールを無触媒、無溶剤の条件下、40〜150℃で反応させ加熱し、反応終了後、そのまま取り出す。という手法である。ただし、本反応条件に限定されない。
【0050】
このようにして得られるポリカルボン酸として特に下記式
【0051】
【化28】
(式中、複数存在するQは、水素原子、メチル基、カルボキシ基の少なくとも1種を表す。Pは前述の多価アルコール由来の炭素数2〜20の鎖状、環状の脂肪族基である。mは2〜4である。)
で表される化合物が好ましい。
【0052】
本発明のエポキシ樹脂組成物は酸無水物を含有することが好ましい。酸無水物としては具体的には無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、等の酸無水物が挙げられる。
特にメチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物等が好ましい。
特に好ましくは下記式
【0053】
【化29】
(式中、存在するSは、水素原子、メチル基、カルボキシ基の少なくとも1種以上を表す。)
で表されるヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物が好ましく、中でもメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物が好ましい。
【0054】
多価カルボン酸樹脂(B)と酸無水物は併用することが好ましく、併用する場合、その使用比率が下記範囲であることが好ましい。
W1/(W1+W2)=0.05〜0.70
ただし、W1は多価カルボン酸樹脂(B)の配合質量部、W2は酸無水物の配合質量部を示す。W1/(W1+W2)の範囲として、より好ましくは、0.05〜0.60、さらに好ましくは0.10〜0.55、特に好ましくは0.15〜0.4である。0.05を下回ると、硬化時に酸無水物の揮発が多くなる傾向がつよく、好ましくない。0.70を越えると高い粘度となり、取り扱いが難しくなる。酸無水物を含有させない(少量残存する場合は除く)場合、その形状は固形もしくは固形に近い状態、もしくは結晶となるため、問題はない。
多価カルボン酸樹脂(B)と酸無水物を併用する場合、多価カルボン酸樹脂(B)の製造時に過剰の酸無水物の中で製造し、多価カルボン酸(B)と酸無水物の混合物を作るという手法も操作の簡便性の面から好ましい。
【0055】
フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤は以下の化合物が具体的に挙げられる。
フェノール系硬化剤;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、テルペンとフェノール類の縮合物などのポリフェノール類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
アミン系硬化剤、アミド系硬化剤;ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂などの含窒素化合物
【0056】
(B)成分の硬化剤の配合量は、(A)成分中のエポキシ基の合計1モルに対して、エポキシ基と反応性を有する官能基(酸無水物系硬化剤の場合には−CO−O−CO−で表される酸無水物基)が0.3〜1.0モルとなる量、好ましくは0.4〜0.8モルとなる量である。エポキシ基と反応性を有する官能基が0.3モル以上であれば、硬化物の耐熱性、透明性が向上するため、望ましく、1.0モル以下であれば硬化物の機械特性が向上するため、好ましい。ここで、「エポキシ基と反応性を有する官能基」とは、アミン系硬化剤が有するアミノ基、フェノール系硬化剤が有するフェノール性水酸基、酸無水物系硬化剤が有する酸無水物基、多価カルボン酸樹脂が有するカルボキシ基である。
【0057】
<(C)硬化触媒>
硬化触媒としては、テトラブチルホスホニウム・O,O−ジエチルホスホロジチオエート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどの第四級ホスホニウム塩、トリフェニルフォスフィン、ジフェニルフォスフィン等の有機フォスフィン系硬化触媒、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン系硬化触媒、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7 フェノール塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7 オクチル酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7 p−トルエンスルホン酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7 ギ酸塩等の第四級アンモニウム塩、オクチル酸亜鉛、ナフチル酸亜鉛等の有機カルボン酸塩、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート等のアルミキレート化合物、2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などを挙げられ、望ましくは第四級ホスホニウム塩、第四級アンモニウム塩である。
【0058】
(C)硬化触媒の配合量は(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜3質量部、好ましくは0.05〜1.5質量部である。硬化触媒の配合量が前記下限値より少ないと、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進させる効果が十分ではないおそれがある。逆に、硬化触媒の配合量が前記上限値より多いと、硬化時やリフロー試験時の変色の原因となるおそれがある。
【0059】
<(D)酸化防止剤>
酸化防止剤としては、亜リン酸化合物、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系、イオウ系、リン系酸化防止剤等があり、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0060】
フェノール系酸化防止剤の具体例として、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、等のモノフェノール類;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスルホン酸エチル)カルシウム等のビスフェノール類;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類が例示される。
【0061】
イオウ系酸化防止剤の具体例として、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルル−3,3’−チオジプロピオネート等が例示される。
【0062】
リン系酸化防止剤の具体例として、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類などが例示される。
【0063】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜0.5質量部、好ましくは0.1〜0.3質量部である。酸化防止剤の配合量が前期上限値を超えると、残存した酸化防止剤が硬化後の樹脂の表面に析出するため好ましくなく、前期下限値未満では耐熱性、透明性が低下する。
【0064】
<その他の成分>
上記各成分に加えて、慣用の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、劣化防止剤、蛍光体、熱可塑剤、希釈剤などを必要に応じて併用してもよい。
【0065】
さらに本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて光安定剤を添加してもよい。
光安定剤としては、ヒンダートアミン系の光安定剤、特にHALS等が好適である。HALSとしては特に限定されるものではないが、代表的なものとしては、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’―ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、等が挙げられる。HALSは1種のみが用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0066】
さらに本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じてバインダー樹脂を配合することも出来る。バインダー樹脂としてはブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、NBR−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、樹脂成分100質量部に対して通常0.05〜50質量部、好ましくは0.05〜20質量部が必要に応じて用いられる。
【0067】
更に、本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じ、無機充填材、顔料、離型剤、シランカップリング剤、柔軟剤等を添加することができる。特に、不燃性無機充填材の添加は、さらに本組成物の難燃性を向上させる効果があり、作業性、硬化後の物性に支障がない限り、難燃性の点では、多く添加することが望ましい。不燃性無機充填材としては、水酸化アルミ、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の水酸化物。錫酸亜鉛、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、窒化アルミ、窒化珪素等が例示される。
【0068】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分および必要により各種の添加剤を配合して、溶解または溶融混合することで製造することができる。溶融混合は、公知の方法でよく、例えば、上記の成分をリアクターに仕込み、バッチ式にて溶融混合してもよく、また上記の各成分をニーダーや熱三本ロールなどの混練機に投入して、連続的にて溶融混合することができる。(C)硬化触媒は、(B)硬化剤に予め加熱溶解混合し、混合の最終段階で(A)成分、(D)成分等と分散混合することが好ましい。
【0069】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えばエポキシ樹脂と硬化剤を予め、100〜200℃ に加温し、少なくともエポキシ樹脂または硬化剤のどちらか一方を溶融させ、この溶融液に他方を溶解させた後、押出機、ロール、ニーダー等で必要により無機充填材、顔料、離型剤、難燃剤、シランカップリング剤等及び硬化促進剤を添加、混合することにより得ることが出来る。また、場合により溶融工程を経ずに上記各成分を押出機、ロール、ニーダー等で混合しても良い。得られたエポキシ樹脂組成物は通常トランスファー成型機等を用いて成型し、硬化させるが、更に80〜200℃ で2〜10時間後硬化を行うと性能が向上する。また、液状封止材とする場合には液状エポキシ樹脂を用い、本発明のエポキシ樹脂組成物を室温で混合し製造できる。
【0070】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は、DSCで40〜100℃が好ましい。硬化した樹脂組成物の質量が10%減少した時の温度(Td10)は380℃以上であることが好ましく、400℃以上であることがより好ましく、420℃以上が特に好ましい。上限は特に限定はないが、2000℃以下が通常である。
【0071】
本発明の硬化物は成型材料、接着剤、複合材料、塗料など各種用途に使用できる。他にも、IC封止材料、積層材料、電気絶縁材料等などの電気・電子分野に有用である。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を合成例、実施例により更に詳細に説明する。尚、本発明はこれら合成例、実施例に限定されるものではない。なお、合成例、実施例中の各物性値は以下の方法で測定した。ここで、部は特に断りのない限り質量部を表す。
○GPC:GPCは下記条件にて測定した。
GPCの各種条件
メーカー:ウォーターズ
カラム:SHODEX GPC LF−G(ガードカラム)、KF−603、KF−602.5、KF−602、KF−601(2本)
流速:0.4ml/min.
カラム温度:40℃
使用溶剤:THF(テトラヒドロフラン)
検出器:RI(示差屈折検出器)
○NMR:日本電子株式会社製 JNM−ECS400を用いて、重クロロホルム溶媒で測定した。
○エポキシ当量:JIS K−7236に記載の方法で測定した。
【0073】
実施例1:シリコーン変性エポキシ樹脂1の合成
撹拌装置、還流冷却管を備えたフラスコにトリシクロデカンジメタノール(20mmоl、3.93g)、キシレン200g、フェニルシラン(24mmоl、3.00ml)、10%担持パラジウム炭素0.51gを加え、140℃で24時間反応させた。室温まで降温させた後、1,2-エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(64mmоl、8.35ml)、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(5μmоl、4.63mg)を加え、再び140℃に昇温させ24時間撹拌した。反応終了後、濾過により10%担持パラジウム炭素を除去し、この反応液をトルエン−ヘキサンにて再沈殿をした。さらに、濃縮することでシリコーン変性エポキシ樹脂を得た。得られたシリコーン変性エポキシ樹脂1のエポキシ当量を確認したところ、616g/eqであった。
【0074】
実施例2:シリコーン変性エポキシ樹脂2の合成
撹拌装置、還流冷却管を備えたフラスコにトリシクロデカンジメタノール(20mmоl、3.93g)、キシレン200g、フェニルシラン(24mmоl、3.00ml)、10%担持パラジウム炭素0.51gを加え、140℃で24時間反応させた。室温まで降温させた後、グリシドール(64mmоl、4.27ml)を加え、再び140℃に昇温させ24時間撹拌した。反応終了後、濾過により10%担持パラジウム炭素を除去し、この反応液をトルエン−ヘキサンにて再沈殿をした。さらに、濃縮することでシリコーン変性エポキシ樹脂を得た。得られたシリコーン変性エポキシ樹脂2のエポキシ当量を確認したところ、705g/eqであった。
【0075】
実施例3:シリコーン変性エポキシ樹脂3の合成
撹拌装置、還流冷却管を備えたフラスコにトリシクロデカンジメタノール(20mmоl、3.93g)、キシレン200g、ジフェニルシラン(24mmоl、4.46ml)、10%担持パラジウム炭素0.51gを加え、140℃で24時間反応させた。室温まで降温させた後、1,2-エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(8mmоl、1.04ml)、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(5μmоl、4.63mg)を加え、再び140℃に昇温させ24時間撹拌した。反応終了後、濾過により10%担持パラジウム炭素を除去し、この反応液をトルエン−ヘキサンにて再沈殿をした。さらに、濃縮することでシリコーン変性エポキシ樹脂を得た。得られたシリコーン変性エポキシ樹脂1のエポキシ当量を確認したところ、1531g/eqであった。
【0076】
実施例4:シリコーン変性エポキシ樹脂4の合成
撹拌装置、還流冷却管を備えたフラスコにジオキサングリコール(20mmоl、4.36g)、キシレン200g、ジフェニルシラン(24mmоl、4.46ml)、10%担持パラジウム炭素0.51gを加え、140℃で24時間反応させた。室温まで降温させた後、1,2-エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(8mmоl、1.04ml)、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(5μmоl、4.63mg)を加え、再び140℃に昇温させ24時間撹拌した。反応終了後、濾過により10%担持パラジウム炭素を除去し、この反応液をトルエン−ヘキサンにて再沈殿をした。さらに、濃縮することでシリコーン変性エポキシ樹脂を得た。得られたシリコーン変性エポキシ樹脂1のエポキシ当量を確認したところ、1666g/eqであった。
【0077】
実施例5:シリコーン変性エポキシ樹脂5の合成
撹拌装置、還流冷却管を備えたフラスコにエチレングリコール(20mmоl、1.24g)、キシレン200g、ジフェニルシラン(24mmоl、4.46ml)、10%担持パラジウム炭素0.51gを加え、140℃で24時間反応させた。室温まで降温させた後、1,2-エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(8mmоl、1.04ml)、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(5μmоl、4.63mg)を加え、再び140℃に昇温させ24時間撹拌した。反応終了後、濾過により10%担持パラジウム炭素を除去し、この反応液をトルエン−ヘキサンにて再沈殿をした。さらに、濃縮することでシリコーン変性エポキシ樹脂を得た。得られたシリコーン変性エポキシ樹脂1のエポキシ当量を確認したところ、2343g/eqであった。
【0078】
比較例で使用したエポキシ樹脂は以下のとおりである。
[比較例1]
・3‘−4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業(株)社製、セロキサイド2021P)
[比較例2]
エポキシ変性シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング(株)社製、BY16839)。
【0079】
−組成物及び硬化物の特性評価−
実施例1、3〜5と比較例1、2で得られた樹脂に対し、カチオン系触媒(三新化学工業社製、サンエイドSI−150)を1質量%になるように加え、実施例2の樹脂については2−エチル−4−メチルイミダゾール)を1質量%になるように加えた。ガラス基板上に耐熱離型テープで40mm×25mm×1mmの型を作製し、本発明の硬化性樹脂組成物及び比較例の硬化性樹脂組成物をそれぞれ厚さ約800μmにまで注型し、80℃にて1時間、続いて150℃乾燥機にて3時間硬化し、本発明の硬化物を得た。得られた硬化物についてそれぞれ耐熱性、強靭性、耐着色性、寸法安定性を測定した。
得られた組成物及び硬化物の特性評価を以下の方法で行なった。硬化は、組成物を100℃で1時間、次いで150℃で4時間加熱して行なった。結果を表1に示す。
【0080】
脂組成物及び硬化膜についての評価方法及び評価基準は以下の通りであった。
(1)耐熱性:硬化した樹脂組成物の質量が10%減少したときの温度(Td10)を熱重量分析装置(TGADTA:メトラー(株)製)において、窒素雰囲気下10℃/minにて測定した。判定基準は以下の通りである。
◎:Td10が420℃以上
○:Td10が400℃以上419℃以下
△:Td10が380℃以上399℃以下
×:Td10が379℃以下
(2)強靭性:硬化した樹脂組成物の硬化膜の両端を手で固定し、中央部を押したときの 硬化膜の状態を観察した。判定基準は以下の通りである。
◎:強く押してもひびが入らず、割れない。
○:弱く押してもひびが入らず、割れないが、強く押すとひびが入る。
△:弱く押すとひびが入り、強く押すと割れる。
×:弱く押すと割れる。
【0081】
【表1】
【0082】
表1の結果から明らかなように実施例1〜5の組成物は耐熱性、強靭性に優れる。一方、比較例1の組成物は強靭性、耐熱性とも劣る。また、比較例2のエポキシ変性シリコーン樹脂は耐熱性は優れているものの、強靭性が劣る。
【0083】
また、本発明のシリコーン変性エポキシ樹脂の耐湿性について評価を行った。評価方法及び評価基準は以下の通りであった。
30℃70%RHに6時間放置した後、GPCにて放置前後のピークトップの保持時間を調べた。
【0084】
【表2】
【0085】
結果から明らかなように本発明のシリコーン変性エポキシ樹脂は耐湿性に優れている。