【文献】
SAAVEDRA, J.M. et al.,,Feeding of Bifidobacterium bifidum and Streptococcus thermophilus to infants in hospital for prevent,The Lancet,1994年,Vol.344,p.1046-9,ISSN 0140-6736
【文献】
中村吉孝,外2名,IgA分泌を促進する新規プロバイオティクス−Bifidobacterium bifidum OLB6378の選抜と作用機序−,細胞,2015年 2月20日,Vol.47,No.2,p.49-53,ISSN 1346-7557
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によれば、乳児、特に出生後間もない乳児において、ビフィズス菌に感染防御効果を有することを見出したことにより、ビフィズス菌を含む、副作用のない新しい乳児向けの感染防御剤又は乳児向けの感染防御用組成物を提供することが可能となる。
【0015】
<ビフィズス菌>
本発明に使用されるビフィズス菌は、ビフィドバクテリウム属に属する細菌であり、その種類や由来に制限がない。具体的には、例えば、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B.breve)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(B.adolescentis)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B.infantis)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(B.pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・テルモフィルム(B.thermophilum)等のビフィズス菌が挙げられる。
【0016】
具体的には、ビフィドバクテリウム・ビフィダムとしては、例えば、ビフィドバクテリウム・ビフィダムOLB6378菌株(Bifidobacterium bifidum、受託番号:NITE BP−31)が挙げられる。この菌株を使用することにより、本発明の乳児向けの感染防御剤を提供することが可能となった。
【0017】
本出願人は、これらの菌株を独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託した。以下に寄託を特定する内容を記載する。
【0018】
本出願人は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムOLB6378菌株(Bifidobacterium bifidum OLB6378)を下記の条件で寄託した。
(1)寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
(2)連絡先:〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8
(現:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 122号室)
電話番号0438−20−5580
(3)受託番号:NITE BP−31
(4)識別のための表示:Bifidobacterium bifidum OLB6378
(5)原寄託日:2004年10月26日
(6)ブダペスト条約に基づく寄託への移管日:2006年1月18日
【0019】
ビフィドバクテリウム・ビフィダムOLB6378株は、ヒト乳幼児糞便由来のグラム陽性偏性嫌気性桿菌である。BL寒天培地(栄研化学株式会社)平板上に本菌を塗布し、AnaeroPack・ケンキ(三菱ガス化学社製)使用による嫌気状態にて37℃48時間培養すると、不透明な円形半球状の光沢を有するコロニーを形成する。
【0020】
また、Bifidobacterium bifidumの特異的プライマー(腸内フローラシンポジウム8、腸内フローラの分子生物学的検出・同定、光岡知足、松本隆広)、具体的には、16S rRNA領域の種特異的プライマーである、BiBIF−1:CCA CAT GAT CGC ATG TGA TT(配列番号1)、及びBiBIF−2:CCG AAG GCT TGC TCC CAA A(配列番号2)を用いたPCRでPCR産物が認められる。また、ガラクトース、グルコース、フルクトース、ラクトース、ゲンチオビオースに対する発酵性を有する。
【0021】
本発明の菌株を培養するための培地としてはビフィズス菌の培地に通常用いられる培地を用いることができる。すなわち本発明に利用できる培地は特に限定されず、主炭素源のほか窒素源、無機物その他の栄養素を所定範囲の量で含有する培地であれば、いずれの培地も使用可能である。
【0022】
炭素源としてはラクトース、グルコース、スクロース、フラクトース、澱粉加水分解物、廃糖蜜などが使用菌の資化性に応じて使用できる。窒素源としてはカゼインの加水分解物、ホエイタンパク質加水分解物、大豆タンパク質加水分解物等の有機窒素含有物が使用できる。ほかに増殖促進剤として肉エキス、魚肉エキス、酵母エキス等が用いられる。
【0023】
培養は嫌気条件下で行うことが好ましく、炭素ガスを通気しながら培養する方法などの公知の手法を適用することができるが、通常用いられる液体静置培養などによる微好気条件や、あるいはバッチ培養条件下など他の手法を用いて培養することもできる。培養温度は25〜50℃、特に35〜42℃が好ましいが、本発明はこれに限定されず、菌が生育できる温度であれば他の温度条件でもよい。
【0024】
培養中の培地のpHは、6.0〜7.0に維持することが好ましいが、菌が生育することができるpHであれば他のpH条件であってもよい。培養時間は好ましくは3〜48時間、さらに好ましくは8〜24時間、特に好ましくは10〜20時間であるが、菌が生育することができる時間であれば他の培養時間であってもよい。
【0025】
得られた菌体は以下のような処理を行ったビフィズス菌処理物として感染防御剤又は感染防御用組成物に含有させることができる。ビフィズス菌処理物としては、培養終了後のままの培養物、培養終了後に遠心分離又は濾別等をおこなった培養物、それらの濃縮物、さらにペースト状に加工したもの、各種方法による乾燥物(噴霧乾燥物、凍結乾燥物、真空乾燥物、ドラム乾燥物など)、媒体に分散させた液状物、希釈剤による希釈物、加熱処理した加熱処理物(加熱処理菌体)、紫外線及び/又は放射線により処理した光照射処理物(光照射処理菌体)、薬剤(殺菌剤、抗菌剤、静菌剤)により処理した薬剤処理物(薬剤処理菌体)、乾燥物をミルなどで破砕した破砕物、などが含まれる。
【0026】
遠心分離、濾別、濃縮、及び破砕等は通常用いられている手法で行う。また、乾燥は、例えば真空乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、ドラム乾燥等により行うことができる。また、上記媒体、希釈剤、及び薬剤(殺菌剤、抗菌剤、静菌剤)等は、従来公知のものを適宜選択して用いることができる。
本明細書ではこれらを、「ビフィズス菌処理物」又は「処理物」と略記することがある。
【0027】
本発明においては、実施例において後述するように、ビフィズス菌に対し、例えば、80℃で10分間加熱処理を行って不活性化した菌体でも感染防御効果があることが分かった。従って、本発明の菌体を含む処理物は、その中の菌体が生菌体のみならず、加熱処理した菌体(例えば、加熱処理済みのビフィズス菌の懸濁(分散)液より0.1mlサンプリングし、これをビフィズス菌の生育できる培地を含むシャーレに塗沫し、嫌気条件下で培養してもビフィズス菌の集落(コロニー)が形成されない形態のもの)であっても有用である。
【0028】
上記の方法で得られたビフィズス菌及び/又はその処理物は、そのまま、生菌、又は加熱処理菌とした後、破砕あるいは未粉砕した処理物として、単独又は複数種の混合物として、本発明の乳児向けの感染防御剤に含有させることができる。
【0029】
生菌であれば、摂取後に体内(腸内)で増殖する等の効果が期待できる。また、加熱処理した菌体(例えば、加熱処理済みのビフィズス菌の懸濁(分散)液より0.1mlサンプリングし、これをビフィズス菌の生育できる培地を含むシャーレに塗沫し、嫌気条件下で培養してもビフィズス菌の集落(コロニー)が形成されない形態のもの)であれば、酸素の存在下で生存しづらいというビフィズス菌の特性を考慮する必要がなく、本発明の乳児向けの感染防御剤として応用範囲が拡がるため、好ましい。
【0030】
中でもビフィズス菌は、加熱処理し、死菌体とした加熱処理菌体であることが特に好ましい。ビフィズス菌を加熱処理することによって、ビフィズス菌の細胞の構造等が変化し、感染防御効果の原因となる物質が露出しやすくなることが推認される。
【0031】
さらに、ビフィズス菌は、培養などによって培地中で増殖したものから、遠心分離などで培地を除去したものを使用することができる。このとき、培地成分を洗浄せずに残った状態にすることで、ビフィズス菌による培養物も含まれることにより、本発明の乳児向けの感染防御効果をさらに高めることができる。本発明のビフィズス菌は、例えば、市販品のビフィズス菌末である、「明治ビフィピュア」(明治フードマテリア社)を購入して、用いることもできる。
【0032】
加熱処理の条件としては、例えば、加熱温度は通常60〜300℃、好ましくは60℃〜200℃、より好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは60〜140℃、さらに好ましくは60〜130℃、さらに好ましくは60〜120℃、さらに好ましくは60〜110℃、さらに好ましくは60〜100℃、さらに好ましくは70〜100℃、さらに好ましくは70〜90℃、特に好ましくは75〜85℃である。
【0033】
加熱処理の条件として60℃以上とすることで、ビフィズス菌の栄養細胞が殺菌されるため、好ましい。また、加熱処理の条件として300℃以下とすることで、ビフィズス菌が炭化せずに残存するため、好ましい。
【0034】
また加熱処理の時間は、通常0.01〜120分間、好ましくは0.015〜60分間、より好ましくは0.02〜40分間、さらに好ましくは0.025〜30分間、さらに好ましくは0.03〜25分間、さらに好ましくは0.03〜20分間である。5分間以上加熱することが特に好ましい。加熱処理の時間を5分間以上とすることで、ビフィズス菌の栄養細胞が殺菌される。また、加熱処理の時間を120分間以下とすることで、熱変性を抑えて栄養細胞の殺菌が効率よく行える点から好ましい。
【0035】
最適な加熱処理の時間を、低温域(60〜100℃)での加熱処理においては、例えば、0.2〜120分間、好ましくは0.2〜60分間、より好ましくは0.2〜40分間、さらに好ましくは0.2〜30分間、さらに好ましくは0.2〜25分間、特に好ましくは0.2〜20分間とすることができる。
【0036】
また、最適な加熱処理の時間を、高温域(100〜300℃)での加熱処理においては、例えば、0.01〜0.5分間、好ましくは0.015〜0.5分間、より好ましくは0.02〜0.5分間、さらに好ましくは0.025〜0.5分間、さらに好ましくは0.03〜0.5分間、特に好ましくは0.03〜0.5分間である。
【0037】
例えば、ビフィズス菌の加熱処理は、好ましくは80℃で10分間、もしくは90℃で15秒間の条件で行う。
【0038】
加熱処理方法は、特に限定されない。例えば得られた菌体をプレート式殺菌機、チューブラー式殺菌機、直接加熱式殺菌機、ジャケット付きタンク等の加熱殺菌装置を用いて、所定の条件で加熱することができる。
【0039】
本発明の乳児向けの感染防御効果を発揮するために、ビフィズス菌を摂取すべき量は、例えば、好ましい順に、一日当たり10
8個以上、10
8〜10
12個、5×10
8〜5×10
11個、10
9〜10
11個、5×10
9〜5×10
10個、6×10
9〜4×10
10個、7×10
9〜3×10
10個である。より好ましくは、8×10
9〜2×10
10個、さらに好ましくは9×10
9〜2×10
10個である。
【0040】
上記範囲であることによって実際に乳児向けの感染防御効果が奏されるからである。なお、本発明の乳児向けの感染防御剤は、予防及び治療の効果を奏する成分、すなわち有効成分、であることを見出しており、その効果を発揮できる形態であれば、その使用目的に制限は無い。
【0041】
また、本発明の感染防御剤(以下「本発明の剤」と称する)は、副作用が少ないため、乳児、特に出生後間もない乳児においても、連続して摂取することができる。乳児向けの感染防御効果を発揮するために、本発明のビフィズス菌の摂取期間は、例えば、好ましい順に、1ヶ月以上、1〜12ヶ月、1〜10ヶ月、1〜9ヶ月、1〜8ヶ月、2〜7ヶ月である。
【0042】
ビフィズス菌の摂取期間が上記範囲であることによって、実際に、乳児向けの感染防御効果が奏されるからである。特に、一日当たり10
8以上の菌数のビフィズス菌を1ヶ月以上連続して適用することが好ましく、一日当たり10
10以上の菌数のビフィズス菌を1ヶ月以上連続して適用することがより好ましい。
【0043】
本明細書において、乳児とは、出生から満1歳未満までの児のことをいい、例えば、0ヶ月齢時〜6ヶ月齢時までの児などである。さらに詳細には、健常乳児、未熟児、早産児及び低出生体重児を含む。本発明において、乳児の種には、特に断りがない限り、ヒトが含まれる。
【0044】
また、本発明の乳児向けの感染防御剤及び感染防御用組成物は、特に出生後間もない乳児に摂取(投与)を開始し、その後に継続して摂取(投与)させることで、感染防御の効果を実証した。具体的には、本発明の乳児向けの感染防御剤及び感染防御用組成物を摂取(投与)させない場合と比較して、糞便中IgA、血清IgA及び血清IgGを有意に増加させることを初めて実証した。
【0045】
すなわち、本発明の乳児向けの感染防御剤及び感染防御用組成物の摂取(投与)により、出生後間もない乳児に副作用等がない状態で、感染防御作用が付与され、その後の成長においても感染防御作用が期待でき、食事や生活環境から感染の要因を取り除く生活を強いられるという生活の不便を解消及び/又は緩和することができる。
【0046】
出生後間もない乳児は免疫機能が未発達な状態であり、この時に本発明の感染防御剤及び感染防御用組成物を摂取することで、早期に感染防御効果が奏されるため、特に感染やアレルギー疾患にかかりやすい低出生体重児において、感染防御作用が付与され、その後の成長においても当該感染防御作用が期待でき、食事や生活環境から感染の要因を取り除く生活を強いられるという生活の不便を解消及び/又は緩和することができる。
【0047】
ここでいう、出生後間もない乳児とは、例えば、生後0〜60日、0〜50日、0〜40日、0〜30日、0〜20日、0〜15日、0〜10日などである。また、ここでいう低出生体重児とは、ヒトの場合、出生体重が300〜3000g、350〜2900g、400〜2800g、450〜2700g、500〜2600g、500〜2500gである。
【0048】
本発明の剤は、剤単独での使用が可能であり、また、他の成分と混合して本発明の乳児向けの感染防御用組成物(以下「本発明の組成物」と称す)として使用することもできる。本発明の剤の上記組成物への配合量は、その目的、用途、形態、剤型、症状、及び体重等に応じて任意に定めることができる。また、組成物を剤と読み替えてもよい。
【0049】
本発明はこれに限定されないが、本発明の剤の含量としては、組成物全体量に対して、0.001〜90%(w/w)の含量で配合することができ、さらに好ましくは0.001〜50%の含量で配合することができる。前記範囲であることによって摂取(投与)しやすくなる。
【0050】
本発明の剤又は本発明の組成物は、経口投与又は非経口投与(筋肉内、皮下、静脈内、坐薬、及び経皮等)のいずれでも投与できる。また、本発明の剤又は本発明の組成物は、薬剤投与による副作用に影響されることなく、投与することができる。さらに、本発明の剤又は本発明の組成物は、下痢症の改善、便秘症の改善、腸内の有害細菌の増殖抑制、ビタミンB群の産生、乳糖の分解による消化吸収の促進しつつ、同時に、感染防御効果も奏する。
【0051】
具体的に本発明の剤又は本発明の組成物は、医薬品又は飲食品いずれの形態でも利用することができる。例えば、医薬品として直接投与することにより、又は特定保健用食品等の特別用途食品や栄養食品として直接摂取することにより、感染防御効果を発揮することが期待される。また、特別用途食品や栄養食品の例として、調製粉乳、流動食、病者用食品、乳児用調製粉乳、幼児用粉乳等食品、授乳婦用粉乳等食品、サプリメント、栄養強化食品などである。
【0052】
本発明の剤を医薬品として使用する場合は、形態としては、例えば錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、溶液、シロップ剤、乳液等の製剤による経口投与をあげることができる。これらの各種製剤は、常法に従って主薬である本発明の菌体及び/又は処理物に、分散剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤等の医薬の製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて製剤化することによって、感染防御用組成物を含有する経口用製剤とすることができる。
【0053】
中でも、本発明の剤は分散剤と混合した組成物として使用することが好ましい。分散剤としては、例えばカゼイン等の乳タンパク質、大豆タンパク質、ペプチド、アミノ酸、デンプン、デキストリン、キシラン、オリゴ糖、糖類(グルコース、ラクトース、スクロース、ガラクトース、マルトース)、糖アルコール(トレハロース、キシリトール、エリスリトール、パラチノース、トレハルロース、キシロース)等が挙げられる。分散剤の中でも特にデキストリンが好ましい。分散剤としてデキストリンを用いることによって、粉末を造粒することができ、分散溶解等の取扱いが容易で、かつ、長期保存も可能であるからである。
【0054】
分散剤、特にデキストリンの形状は顆粒であることが好ましい。顆粒であることにより、溶解性が高いだけでなく、充填性能が高いため、少量での分包が可能となるからである。また包装材料に落下させて分包するだけで質量分布にばらつきがなく正確な分包を可能にするという製造上の利点をも有するからである。
【0055】
本発明の組成物中、本発明の剤と分散剤との質量比は、1:100〜1:2であることが好ましく、より好ましくは1:100〜1:10、さらに好ましくは1:100〜1:20である。本発明の剤と分散剤との質量比を上記範囲にすることによって、本発明の感染防御剤が効率よく分散できるからである。
【0056】
例えば、本発明の剤とデキストリンとを含有する、本発明の組成物を経口投与する場合、本発明の組成物を所定量ずつ小分けにして、包材内に包装し包装体としてから、投与することができる。本発明において、1回使用量ずつ包装すること、及び複数個で1回使用量となるように包装することが好ましく、1回使用量を包装することが特に好ましい。
【0057】
本発明の剤及び組成物を副作用のない食品組成物に添加する場合には、各種飲食品(牛乳、清涼飲料、発酵乳、ヨーグルト、チーズ、パン、ビスケット、クラッカー、ピッツァクラスト、調製粉乳、流動食、病者用食品、乳児用調製粉乳、幼児用粉乳等食品、授乳婦用粉乳等食品、栄養食品等)に添加し、これを摂取してもよい。本発明の剤及び本発明の組成物をそのまま使用したり、他の食品ないし食品成分と混合したりするなど、通常の食品組成物における常法に従って使用できる。
【0058】
また、その性状についても、通常用いられる飲食品の状態、例えば、固体状(粉末、顆粒状その他)、ペースト状、液状ないし懸濁状のいずれでもよい。このような形態をとることで、本発明の剤を心理的な障害を感じることなく摂取することができる。
【0059】
また、本発明の剤又は組成物を、副作用のない水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等を混合した組成物として使用することもできる。
【0060】
タンパク質としては、例えば全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、ホエイ粉、ホエイタンパク質、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質分離物、α―カゼイン、β―カゼイン、κ−カゼイン、β―ラクトグロブリン、α―ラクトアルブミン、ラクトフェリン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質、これら加水分解物;バター、乳性ミネラル、クリーム、ホエイ、非タンパク態窒素、シアル酸、リン脂質、乳糖等の各種乳由来成分などが挙げられる。医薬品や飲食品として使用実績のある副作用のないものは全て適用可能である。また、これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
糖質としては、例えば、糖類、加工澱粉(デキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維などが挙げられる。
【0062】
脂質としては、例えば、ラード、魚油等、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の動物性油脂;パーム油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。
【0063】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられる。
【0064】
ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレンなどが挙げられる。
【0065】
有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸などが挙げられる。医薬品や飲食品として使用実績のある副作用のないものは全て適用可能である。また、これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
本発明の剤又は本発明の組成物を食品や薬剤として提供する場合、製造方法は当業者に周知の方法によって行うことができる。当業者であれば、本発明のビフィズス菌又は処理物を他の成分と混合する工程、成形工程、殺菌工程、発酵工程、焼成工程、乾燥工程、冷却工程、造粒工程、及び包装工程等を適宜組み合わせ、所望の食品や薬剤を製造することが可能である。
【0067】
さらに本発明の剤又は本発明の組成物を、保健機能食品や病者用食品にも適用することができる。保健機能食品制度は、内外の動向、従来からの特定保健用食品制度との整合性を踏まえて、通常の食品のみならず錠剤、カプセル等の形状をした食品を対象として設けられたもので、特定保健用食品(個別許可型)と栄養機能食品(規格基準型)の2種類の類型からなる。本発明の剤又は組成物を含有する特定保健用食品等の特別用途食品や栄養機能食品として直接摂取することにより、感染防御効果を発揮することが期待される。
【0068】
本発明の剤及び本発明の組成物を調製粉乳に添加する場合の形態として、例えば、乳児用調製粉乳、ペプチドミルク、フォローアップミルク、グローイングアップミルク、低出生体重児用調製粉乳、無乳糖粉乳、低ナトリウム特殊粉乳及び母乳添加用粉末などの乳児用の感染防御用の経口組成物が挙げられ、本発明の効果・効能を期待できるものであれば、特に制限されない。本発明の剤及び本発明の組成物は、調製粉乳以外に飲食品にも制限なく入れることができる。例えば、ヨーグルトや菓子類である。
【0069】
本発明の有効成分であるビフィズス菌を、医薬組成物、食習慣があり、副作用が少ないことを予想できる飲食品、もしくは感染防御の期待できる組成物に対して添加剤として使用してもよく、経口的又は経管的に摂取することが可能である。
【0070】
本発明の有効成分であるビフィズス菌は、ヒトに限られることなく、ほ乳動物(ほ乳類)に対しても、上述した優れた効果・効能を示すものである。したがって、本発明は、ビフィズス菌を有効成分として含有する飼料及び飼料添加剤でもあり、特に、ほ乳動物の飼育用の粉乳及び粉乳添加剤でもある。
【実施例】
【0071】
以下、本発明に係る実施例及び比較例による試験結果を示し、本発明を、さらに詳細に説明する。なお、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0072】
[実施例1](本発明の組成物(加熱処理)の調製)
a)加熱処理したOLB6378株の凍結乾燥粉末の調製
Bifidobacterium bifidum OLB6378株(受託番号:NITE BP−31)の原菌末(生菌数、3.9×10
11cfu/g、商品名「明治ビフィピュア(登録商標)」、明治フードマテリア社)350gを、45℃に調整した原料水3,500mlに撹拌しながら完全に懸濁させた。その後、撹拌しながら加温して、80℃10分間保持し、冷却した。得られた加熱菌体の懸濁液を凍結乾燥し、加熱処理したOLB6378株の凍結乾燥粉末300gを得た。また、得られたOLB6378株の凍結乾燥粉末300g中には、概算すると、1.37×10
14個の菌数のビフィズス菌が存在する(3.9×10
11(cfu/g)×350(g)=1.37×10
14cfu)。熱処理された菌の菌体数は、生菌数(cfu)から換算して示されている。
【0073】
b)本発明の組成物(加熱処理)の調製
加熱処理したOLB6378株の凍結乾燥粉末120gと顆粒デキストリン(松谷化学社)2880gを均一に混合し、各0.5gずつ分包し、本発明の組成物とした。この本発明の組成物には、概算すると、9.13×10
9個の菌数のビフィズス菌が存在する(1.37×10
14(cfu)×[120(g)/300(g)]×[0.5(g)/3000(g)]=9.13×10
9cfu)。熱処理された菌体数は、生菌数(cfu)に換算して示されている。
【0074】
[実施例2](本発明の組成物(生菌)の調製)
実施例1に示したOLB6378株の原菌末(生菌数、3.9×10
11cfu/g)120gと顆粒デキストリン(松谷化学社)2880gを均一に混合し、各0.5gずつ分包し、本発明の組成物とした。この本発明の組成物には、概算すると、9.13×10
9cfuの菌数のビフィズス菌が存在する。
【0075】
[試験例1]
試験例1では、実施例1の本発明の組成物(加熱処理)を摂取した被験者群を「組成物(加熱菌)摂取群」とし、実施例2の本発明の組成物(生菌)を摂取した被験者群を「組成物(生菌)摂取群」とし、介入を行わない被験者群を「対照(非投与)群」とした。被験者群としては、在胎期間30〜38週の低出生体重児(出生体重2500g以下)の中から、組成物(加熱菌)群24名、組成物(生菌)群29名、対照(非投与)群29名を選定した。組成物(加熱菌)群には実施例1のbの組成物(加熱菌)を、組成物(生菌)群は実施例2の組成物(生菌)をいずれも一日二回に分けて投与した。組成物(加熱菌)群、組成物(生菌)群はそれぞれ生後48時間以内に最初の摂取を開始し、摂取期間は6ヶ月間とした。なお、被験者の在胎期間と出生体重は
図1に示す通り、各群で差は見られなかった。
【0076】
各群とも、0ヶ月齢、1ヶ月齢、2ヶ月齢、6ヶ月齢において、被験者の血液を採取し、血清IgAを測定した。血清IgAの測定は、JCA−BM6070自動分析装置(JEOL社製)を用いたネフェロメトリー法により行った。
その結果を
図2に示す。
【0077】
[試験例2]
試験例2では、実施例1の本発明の組成物(加熱処理)を摂取した被験者群を「組成物(加熱菌)群」とし、実施例2の本発明の組成物(生菌)を摂取した被験者群を「組成物(生菌)群」とし、介入を行わない被験者群を「対照(非投与)群」とした。被験者群は在胎週数30〜38週の低出生体重児(出生体重2500g以下)を選択し、組成物(加熱菌)群30名、組成物(生菌)群30名、対照(非投与)群27名を選定した。組成物(加熱菌)群には実施例1のbの組成物を、組成物(生菌)群には実施例2の組成物をいずれも一日二回に分けて投与した。投与期間は生後6ヶ月間である。
【0078】
各群とも、0か月齢、1ヶ月齢、2ヶ月齢、6ヶ月齢において、被験者の糞便と血液を採取し、糞便中IgA及び血清IgGを測定した。
糞便中IgAの測定は、糞便を−20℃で急速に凍結し、ELISAキット(ヒトSIgA ELISA Quantitation Set,Bethyl Laboratories社製)を用いて行った。
血清IgA及び血清IgGの測定は、JCA−BM6070自動分析装置(JEOL社製)を用いたネフェロメトリー法により行った。
その結果を
図3及び4に示す。なお、
図3及び4のアスタリスクは非投与群からの有意差を示しており、アスタリスク1つがP<0.05を示し、アスタリスク2つがP<0.01を示す。
【0079】
図3に示すように、1および2ヶ月齢において、糞便中IgAは、組成物(加熱菌)群が対照(非投与)群と比較して有意に高い値を示した。また、
図4に示すように、1ヶ月齢において、血清IgGのレベル(1か月齢のIgG濃度/0ヶ月齢のIgG濃度)は、組成物(加熱菌)群および組成物(生菌)群が対照(非投与)群と比較して有意に高い値を示した。
【0080】
この結果から、本発明の組成物(特に本発明の組成物(加熱菌))2つの液性免疫(腸管IgA及び血清IgG)を同時に高めることにより、乳児、特に出生後間もない乳児の感染防御に有効であることがわかった。
【0081】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更及び変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお本出願は、2015年10月19日付で出願された日本特許出願(特願2015−205951)に基づいており、その全体が引用により援用される。