特許第6850237号(P6850237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6850237ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びその製造方法並びに固形製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850237
(24)【登録日】2021年3月9日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びその製造方法並びに固形製剤
(51)【国際特許分類】
   C08B 11/08 20060101AFI20210322BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C08B11/08
   A61K9/20
   A61K47/38
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-194879(P2017-194879)
(22)【出願日】2017年10月5日
(65)【公開番号】特開2018-62652(P2018-62652A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年10月24日
(31)【優先権主張番号】特願2016-199099(P2016-199099)
(32)【優先日】2016年10月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】横澤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】北口 太志
(72)【発明者】
【氏名】平間 康之
(72)【発明者】
【氏名】北村 彰
【審査官】 進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−532750(JP,A)
【文献】 特開2010−254756(JP,A)
【文献】 特開平08−041102(JP,A)
【文献】 特開昭57−092001(JP,A)
【文献】 欧州特許第00835881(EP,B1)
【文献】 特表2015−530443(JP,A)
【文献】 特表2014−510184(JP,A)
【文献】 特表2015−528315(JP,A)
【文献】 米国特許第06320043(US,B1)
【文献】 METHOCEL Technical Bulletin, Introducing METHOCELTM K200M Premium and Premium CR [online],[検索日: 2020.11.09], インターネット:<URL:https://www.colorcon.com/jp/products-formulation/all-products/download/777/2549/34?method=view>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 11/08
A61K 9/20
A61K 47/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式レーザー回折法による体積基準の平均粒子径が50〜100μmであり、動的画像解析法により全粒子を微粒子と球状粒子と繊維状粒子に分類すると、長繊維状粒子及び短繊維状粒子の合計である前記繊維状粒子の前記全粒子に対する体積分率が45〜70%であり、前記微粒子の前記全粒子に対する体積分率が2.0%未満であるヒドロキシアルキルアルキルセルロースであって、
前記微粒子が、繊維長が40μm未満の粒子であり、
前記球状粒子が、前記繊維長が40μm以上の粒子のうち、繊維径と前記繊維長の比率である伸長比が0.5以上の第1球状粒子と、前記伸長比が0.5未満であり、最大フェレー径と最小フェレー径の比率であるアスペクト比が0.5以上で、粒子の投影面積と同じ面積を有する円の周囲長(PEQPC)と実際の粒子の周囲長(Preal)の比率である円形度が0.7以上である第2球状粒子とからなり、
前記長繊維状粒子が、前記繊維長が200μm以上で前記伸長比が0.5未満である粒子のうち、前記アスペクト比が0.5未満である第1長繊維状粒子と、前記アスペクト比が0.5以上であり、前記円形度が0.7未満である第2長繊維状粒子からなり、
前記短繊維状粒子が、前記繊維長が40μm以上200μm未満で前記伸長比が0.5未満である粒子のうち、前記アスペクト比が0.5未満である第1短繊維状粒子と、前記アスペクト比が0.5以上であり、前記円形度が0.7未満である第2短繊維状粒子からなるヒドロキシアルキルアルキルセルロース。
【請求項2】
前記短繊維状粒子の体積分率が、15〜35%である請求項1に記載のヒドロキシアルキルアルキルセルロース。
【請求項3】
前記長繊維状粒子に対する前記短繊維状粒子の体積分率の比(短繊維状粒子/長繊維状粒子)が、0.60〜1.40である請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のヒドロキシアルキルアルキルセルロース。
【請求項4】
BET法で測定した比表面積が、0.35m/g以上0.50m/g未満である請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒドロキシアルキルアルキルセルロース。
【請求項5】
20℃における2質量%水溶液の粘度が、50〜200,000mPa・sである請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒドロキシアルキルアルキルセルロース。
【請求項6】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒドロキシアルキルアルキルセルロース。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒドロキシアルキルアルキルセルロースを少なくとも含む固形製剤。
【請求項8】
徐放性製剤である請求項7に記載の固形製剤。
【請求項9】
セルロースパルプをアルカリ金属水酸化物溶液に接触させてアルカリセルロースを得る工程と、
前記アルカリセルロースとエーテル化剤を反応させてヒドロキシアルキルアルキルセルロース生成物を得る工程と、
前記ヒドロキシアルキルアルキルセルロース生成物を洗浄、脱液して、第1の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得る工程と、
前記第1の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを造粒して造粒ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得る工程と、
前記造粒ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを乾燥させ、ふるい分け法による平均粒子径が2〜10mmであり、且つ含水率が6〜10質量%である乾燥ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得る工程と、
前記乾燥ヒドロキシアルキルアルキルセルロースと水を混合して第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得る工程と、
前記第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを乾燥、粉砕してヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得る工程
を少なくとも含み、製造されるヒドロキシアルキルアルキルセルロースが請求項1〜6のいずれか1項に記載のものである、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法。
【請求項10】
前記第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの含水率が6質量%を超えて47質量%以下であり、前記ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの20℃における2質量%水溶液の粘度が50〜10,000mPa・sである請求項9に記載のヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法。
【請求項11】
前記第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの含水率が47質量%を超えて65質量%以下であり、前記ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの20℃における2質量%水溶液の粘度が10,000mPa・sを超え200,000mPa・s以下である請求項9に記載のヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載のヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法の各工程と、
得られたヒドロキシアルキルアルキルセルロースを乾式直接打錠法又は乾式造粒打錠法を用いて打錠する工程とを少なくとも含む錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びその製造方法並びに固形製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
徐放性製剤は、血中に溶け込む薬効成分の濃度を一定値以下に制御したり、あるいは服用回数を減少させたりできることから、有用な製剤である。徐放性製剤は、大きくシングルユニット型とマルチプルユニット型に分類される。シングルユニット型は、消化管内で投与剤形が保たれたまま薬効成分を徐々に放出して徐放性を示すものであり、水溶性高分子やワックスと混合して打錠することにより製造されるマトリックス型が挙げられる。一方、マルチプルユニット型は、投与された錠剤やカプセル剤が速やかに崩壊して顆粒を放出し、薬物を高分子皮膜でコーティングした顆粒が徐放性を示す。
【0003】
マトリックス型の徐放性製剤は、製造方法が簡単であり、溶出制御が容易なことから、最も汎用される徐放性製剤の一つである。マトリックス型の徐放性製剤の中でも、例えばゲルマトリックス型の場合、水溶性高分子であるヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、「HPMC」とも言う。)が用いられる。
【0004】
HPMCを用いるマトリックス型の徐放性製剤の製造方法としては、薬物とHPMCを混合して、そのまま打錠する乾式直接打錠法(乾式直打法)と、薬物とHPMCと添加剤の混合物を適当な溶媒を用いて造粒し、これを乾燥した後に打錠する湿式造粒打錠法が挙げられる。乾式直打法では、薬物やHPMCの流動性が不足する場合において、ロール圧縮(乾式造粒)後に解砕して、打錠する方法(乾式造粒打錠法)等が採られることがある。また、湿式造粒打錠法では、撹拌造粒機を用いる場合と流動層造粒機を用いる場合がある。
【0005】
乾式直打法は、製造方法が簡単であることから、HPMCを用いるマトリックス型製剤の製造方法として汎用されているが、製剤中にHPMCを高含量で添加する必要があるため、HPMCの成形性が低い場合、十分な強度を有する錠剤が得られず、錠剤の割れや欠けが発生したり、打錠時等にキャッピング等の打錠障害が発生する可能性がある。
【0006】
高い成形性を有する添加剤としては、結晶セルロース(特許文献1)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(特許文献2)、打錠用ヒドロキシアルキルアルキルセルロース(特許文献3)が挙げられる。また、徐放性製剤に用いられるヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、平均粒子径が150〜800μmのセルロース誘導体(特許文献4)、特定の粒子形状を有する多糖類誘導体(特許文献5)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−316535号公報
【特許文献2】特開2010−254756号公報
【特許文献3】特開2015−166453号公報
【特許文献4】特表2010−523688号公報
【特許文献5】特表2014−510137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に示される結晶セルロースや特許文献2に示される低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、水不溶性高分子のため、表面が溶解してゲルマトリックを形成することができず、徐放性製剤を製造するための添加剤として用いることはできない。また、これらの添加剤は高い成形性を有するものの、併せて崩壊性も兼ね備えることが知られており、徐放性製剤中に添加する結合剤としては好ましくない。一方で、特許文献3には特定の比表面積を有する打錠用ヒドロキシアルキルアルキルセルロースが提案されており、高い成形性を有することが示されているものの、平均粒子径が50μm以上のものについては、徐放性製剤を製造する際の混合性や流動性について、更なる向上が求められていた。
特許文献4に記載のセルロース誘導体は、流動性に優れるものの、粒子径が150〜800μmと粗いため、成形性に劣るものであった。一方で、特許文献5においては、繊維状粒子の体積分率が1〜40体積%であるため、相対的に成形性は劣ると予想される。
本発明は、良好な流動性と高い成形性を示すヒドロキシアルキルアルキルセルロースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく、鋭意検討を行った結果、乾式レーザー回折法による体積基準の平均粒子径が50〜100μmであって、長繊維状粒子及び短繊維状粒子の合計である繊維状粒子の体積分率が45〜70%であり、微粒子の体積分率が2.0%未満であるヒドロキシアルキルアルキルセルロースが良好な流動性と高い成形性を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の一つの形態では、乾式レーザー回折法による体積基準の平均粒子径が50〜100μmであり、動的画像解析法により全粒子を微粒子と球状粒子と繊維状粒子に分類すると、長繊維状粒子及び短繊維状粒子の合計である前記繊維状粒子の前記全粒子に対する体積分率が45〜70%であり、前記微粒子の前記全粒子に対する体積分率が2.0%未満であるヒドロキシアルキルアルキルセルロースであって、
前記微粒子が、繊維長が40μm未満の粒子であり、
前記球状粒子が、前記繊維長が40μm以上の粒子のうち、繊維径と前記繊維長の比率である伸長比が0.5以上の第1球状粒子と、前記伸長比が0.5未満であり、最大フェレー径と最小フェレー径の比率であるアスペクト比が0.5以上で、粒子の投影面積と同じ面積を有する円の周囲長(PEQPC)と実際の粒子の周囲長(Preal)の比率である円形度が0.7以上である第2球状粒子とからなり、
前記長繊維状粒子が、前記繊維長が200μm以上で前記伸長比が0.5未満である粒子のうち、前記アスペクト比が0.5未満である第1長繊維状粒子と、前記アスペクト比が0.5以上であり、前記円形度が0.7未満である第2長繊維状粒子からなり、
前記短繊維状粒子が、前記繊維長が40μm以上200μm未満で前記伸長比が0.5未満である粒子のうち、前記アスペクト比が0.5未満である第1短繊維状粒子と、前記アスペクト比が0.5以上であり、前記円形度が0.7未満である第2短繊維状粒子からなるヒドロキシアルキルアルキルセルロースが提供される。
本発明の他の形態では、前記ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを少なくとも含む固形製剤が提供される。
また、本発明の他の形態では、セルロースパルプをアルカリ金属水酸化物溶液に接触させてアルカリセルロースを得る工程と、前記アルカリセルロースとエーテル化剤を反応させてヒドロキシアルキルアルキルセルロース生成物を得る工程と、前記ヒドロキシアルキルアルキルセルロース生成物を洗浄、脱液して、第1の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得る工程と、前記第1の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを造粒して造粒ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得る工程と、前記造粒ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを乾燥させ、ふるい分け法による平均粒子径が2〜10mmであり、且つ含水率が6〜10質量%である乾燥ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得る工程と、前記乾燥ヒドロキシアルキルアルキルセルロースと水を混合して第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得る工程と、前記第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを乾燥、粉砕してヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得る工程を少なくとも含むこのヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法が提供される。
本発明の他の形態では、前記ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法の各工程と、得られたヒドロキシアルキルアルキルセルロースを乾式直接打錠法又は乾式造粒打錠法を用いて打錠する工程とを少なくとも含む錠剤の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、良好な流動性と高い成形性を示すため、固形製剤に添加することにより、高い硬度を付与することができる。そのため、例えば、難成形性の主薬を含有する錠剤においても、十分な強度を有する錠剤が得られる。また、低い打錠圧で錠剤が製造可能となるため、キャッピング等の打錠障害が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの「全粒子」を、「微粒子」、「長繊維状粒子(LF1及びLF2)」、「短繊維状粒子(SF1及びSF2)」及び「球状粒子(S1及びS2)」の4種類の粒子に分類するフローチャートを示す。
図2】実施例7〜12及び比較例4〜6の徐放性錠剤について、アセトアミノフェンの溶出プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、「長繊維状粒子」、「短繊維状粒子」、「球状粒子」及び「微粒子」の4種類の粒子に分類される。図1は、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの「全粒子」を、「微粒子」、「長繊維状粒子(LF1及びLF2)」、「短繊維状粒子(SF1及びSF2)」及び「球状粒子(S1及びS2)」の4種類の粒子に分類する方法についてまとめたフローチャートを示す。
ヒドロキシアルキルアルキルセルロース中の前記各粒子の体積分率は、動的画像解析法により、以下の繊維長(LEFI)、繊維径(DIFI)、伸長比、アスペクト比及び円形度等の形状パラメータを測定することにより算出できる。動的画像解析法とは、気体又は溶媒等の流体に分散させた粒子の画像を連続的に撮影し、二値化・解析を行うことにより粒子径や粒子形状を求める方法である。例えば、動的画像解析式粒度分布測定装置QICPIC/R16(シンパテック社製)を用いて測定できる。
【0013】
全粒子Aは、繊維長(Length of Fiber:LEFI)が40μm以上の粒子Cと、40μm未満の微粒子Bに分けられる。LEFIは、粒子の両端間の長さとして定義され、粒子輪郭の中の片側から別の片側までで最も長い経路である。なお、M7レンズを搭載した場合のQICPIC/R16の検出限界は4.7μmであるため、4.7μm未満の粒子は検出されないが、4.7μm未満のLEFIを有する粒子の体積がヒドロキシアルキルアルキルセルロース全体に占める割合は極僅かであることから、本発明の目的上無視できる。
【0014】
LEFIが40μm以上の粒子Cは、繊維径(Diameter of Fiber:DIFI)とLEFIの比率(DIFI/LEFI)である伸長比(elongation)が0.5以上の第1球状粒子(S1)と、0.5未満の粒子Dに分けられる。DIFIは、粒子の短径として定義され、粒子の投影面積を繊維の分枝の全ての長さの合計で割ることにより算出される。
【0015】
LEFIが40μm以上で伸長比(elongation)が0.5未満の粒子Dは、最大フェレー径(Fmax)と最小フェレー径(Fmin)の比率(Fmin/Fmax)であるアスペクト比(aspect ratio)が0.5未満の粒子Eと、0.5以上の粒子Fに分けられる。いずれの粒子も、アスペクト比は0を超えて1以下の値となる。フェレー径は、粒子を挟む2本の平行接線間の距離のことであり、最大フェレー径(Fmax)は、粒子を挟む2接線間の距離で、0°から180°まで方向を変化させた時の最大径をいい、最小フェレー径(Fmin)は、粒子を挟む2接線間の距離で、0°から180°まで方向を変化させた時の最小径をいう。
【0016】
LEFIが40μm以上で伸長比(elongation)が0.5未満であり、かつアスペクト比(aspect ratio)が0.5未満の繊維状粒子Eは、LEFIが200μm以上の第1長繊維状粒子(LF1)と、200μm未満の第1短繊維状粒子(SF1)に分けられる。
【0017】
LEFIが40μm以上で伸長比(elongation)が0.5未満であり、かつアスペクト比(aspect ratio)が0.5以上の粒子Fは、円形度(circularity)が0.7以上の第2球状粒子(S2)と、0.7未満の繊維状粒子Gに分けられる。円形度(circularity)は、粒子の投影面積(A)と同じ面積を有する円における周囲長(PEQPC)と、実際の粒子の周囲長(Preal)の比率で、下記式により定義される。いずれの粒子も、円形度は0を超えて1以下の値となる。円形度が小さいほど、粒子の形はより不規則となる。EQPCは、面積円相当径(Diameter of a ircle of Equal rojection Area)、すなわち、粒子の投影面積と同等の面積を有する円の直径として定義され、Heywood径とも言う。
【0018】
【数1】
【0019】
LEFIが40μm以上、伸長比(elongation)が0.5未満でアスペクト比(aspect ratio)が0.5以上であり、かつ円形度(circularity)が0.7未満の繊維状粒子Gは、LEFIが200μm以上の第2長繊維状粒子(LF2)と、200μm未満の第2短繊維状粒子(SF2)に分けられる。
【0020】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロース中の微粒子の体積(V)は、微粒子を直径がEQPCの球であると仮定することにより、下記式により算出することができる。
=(π/6)×(EQPC)×N
ここで、Nは試料中の微粒子の数であり、EQPCは微粒子の個数基準の累積粒度分布曲線の50%累積値に相当するメジアンEQPCである。
【0021】
本明細書において、全粒子からLEFIが40μm未満の微粒子を除いた、40μm以上のLEFIを有する粒子は、上記の粒子の形状パラメータである、LEFI、伸長比、アスペクト比及び円形度に基づき「長繊維状粒子」、「短繊維状粒子」及び「球状粒子」に分類され、それぞれ区別される。
<長繊維状粒子>
以下の定義LF1又はLF2のいずれかを満たす粒子は、「長繊維状粒子」に分類される。
LF1:0.5未満の伸長比、0.5未満のアスペクト比、及び200μm以上のLEFI(繊維長)を有する粒子。
LF2:0.5未満の伸長比、0.5以上のアスペクト比、0.7未満の円形度及び200μm以上のLEFI(繊維長)を有する粒子。
【0022】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロース中の長繊維状粒子の体積(VLF)は、長繊維状粒子を、底面の直径をDIFI、高さをLEFIとする円柱と仮定することにより、下記式により算出することができる。
LF=(π/4)×(DIFI)×(LEFI)×NLF
ここで、NLFは試料中の長繊維状粒子の数であり、DIFIは長繊維状粒子の個数基準の累積粒度分布曲線の50%累積値に相当するメジアンDIFIであり、LEFIは長繊維状粒子の個数基準の累積粒度分布曲線の50%累積値に相当するメジアンLEFIである。
なお、上記LF1及びLF2の定義を満たす粒子のそれぞれについて上記式により体積を計算し、それらを合計した値がヒドロキシアルキルアルキルセルロース中の長繊維状粒子の体積である。
【0023】
<短繊維状粒子>
以下の定義SF1又はSF2のいずれかを満たす粒子は、「短繊維状粒子」に分類される。
SF1:0.5未満の伸長比、0.5未満のアスペクト比、及び40μm以上200μm未満のLEFI(繊維長)を有する粒子。
SF2:0.5未満の伸長比、0.5以上のアスペクト比、0.7未満の円形度及び40μm以上200μm未満のLEFI(繊維長)を有する粒子。
【0024】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロース中の短繊維状粒子の体積(VSF)は、上記の長繊維状粒子と同様に、短繊維状粒子を、底面の直径をDIFI、高さをLEFIとする円柱と仮定することにより、下記式により算出することができる。
SF=(π/4)×(DIFI)×(LEFI)×NSF
ここで、NSFは試料中の短繊維状粒子の数であり、DIFIは短繊維状粒子の個数基準の累積粒度分布曲線の50%累積値に相当するメジアンDIFIであり、LEFIは短繊維状粒子の個数基準の累積粒度分布曲線の50%累積値に相当するメジアンLEFIである。
なお、上記SF1及びSF2の定義を満たす粒子のそれぞれについて上記式により体積を計算し、それらを合計した値がヒドロキシアルキルアルキルセルロース中の短繊維状粒子の体積である。
【0025】
<球状粒子>
以下の定義S1又はS2のいずれかを満たす粒子は、「球状粒子」に分類される。
S1:0.5以上の伸長比及び40μm以上のLEFI(繊維長)を有する粒子。
S2:0.5未満の伸長比、0.5以上のアスペクト比、0.7以上の円形度及び40μm以上のLEFI(繊維長)を有する粒子。
【0026】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロース中の球状粒子の体積(V)は、球状粒子を直径がEQPCの球であると仮定することにより、下記式により算出することができる。
=(π/6)×(EQPC)×N
ここで、Nは試料中の球状粒子の数であり、EQPCは球状粒子の個数基準の累積粒度分布曲線の50%累積値に相当するメジアンEQPCである。
なお、上記S1及びS2の定義を満たす粒子のそれぞれについて上記式により体積を計算し、それらを合計した値がヒドロキシアルキルアルキルセルロース中の球状粒子の体積である。
【0027】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロース中の各種粒子の体積分率は、上記で定義した体積V、VLF、VSF及びVからそれぞれ下記式により算出できる。
微粒子の体積分率={V/(V+VLF+VSF+V)}×100
長繊維状粒子の体積分率={VLF/(V+VLF+VSF+V)}×100
短繊維状粒子の体積分率={VSF/(V+VLF+VSF+V)}×100
球状粒子の体積分率={V/(V+VLF+VSF+V)}×100
【0028】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの乾式レーザー回折法による体積基準の平均粒子径は、50〜100μm、好ましくは60〜90μm、より好ましくは65〜90μm、更に好ましくは65〜85μmである。
なお、体積基準の平均粒子径は、乾式レーザー回折法により測定できる。例えば、英国Malvern社製のマスターサイザー3000やドイツSympatec社のHELOS装置を用いた方法のように、圧縮空気で粉体サンプルを噴出させたものにレーザー光を照射し、その回折強度により体積換算平均粒子径を測定できる。
本願においては、体積基準の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置マスターサイザー3000(Malvern社製)を用いて、Fraunhofer回折理論により、分散圧2bar、散乱強度2〜10%の条件で、体積基準の累積粒度分布曲線の50%累積値に相当する径を測定した。
【0029】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの長繊維状粒子及び短繊維状粒子の合計である繊維状粒子の体積分率は、45〜70%、好ましくは47〜65%、より好ましくは49%〜60%である。乾式レーザー回折法による体積基準の平均粒子径が50μm〜100μmである範囲において、繊維状粒子の体積分率が45%未満であると成形性に劣る場合があり、70%を超えると打錠時の流動性や他の粉末との混合性に劣る場合がある。
【0030】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの微粒子の体積分率は、2.0%未満、好ましくは1.5%未満、より好ましくは1.3%未満である。上記微粒子の体積分率が2.0%以上であると良好な流動性を得られない場合がある。
微粒子は一般に比表面積が高いため、微粒子が多いと高い成形性を有すると考えられるが、流動性が悪化する。本発明においては、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの微粒子の体積分率が2.0%未満と少ないにも拘わらず、長繊維状粒子と短繊維状粒子の合計である繊維状粒子の体積分率が、45〜70%であるため、高い成形性を有することを見出した。
【0031】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの短繊維状粒子の体積分率は、良好な流動性と高い成形性を得る観点から、好ましくは15〜35%、より好ましくは15〜32%、更に好ましくは17〜32%、特に好ましくは20〜30%である。
【0032】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの長繊維状粒子に対する短繊維状粒子の体積分率の比(短繊維状粒子/長繊維状粒子)は、良好な流動性と高い成形性を得る観点から、好ましくは0.60〜1.40、より好ましくは0.60〜1.30、更に好ましくは0.60〜1.20である。
【0033】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの球状粒子の体積分率は、良好な流動性を得る観点から、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、更に好ましくは40%以上である。球状粒子の体積分率の上限は特に制限がないが、高い成形性を得る観点から、好ましくは60%未満である。
【0034】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースのBET法(BET多点法)により測定した比表面積は、良好な流動性と高い成形性を得る観点から、好ましくは0.35m/g以上0.50m/g未満、より好ましくは0.40〜0.49m/g、更に好ましくは0.41〜0.49m/gである。比表面積は、一般に大きいと高い成形性を有することが知られているが、本願発明のヒドロキシアルキルアルキルセルロースにおいては、0.30〜0.50m/gと小さいにも拘わらず、長繊維状粒子と短繊維状粒子の合計である繊維状粒子の体積分率が、45%〜70%であるため、高い成形性を有することを見出した。
比表面積は、粉体粒子表面に吸着占有面積の判る分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める、不活性気体の低温低湿物理吸着によるBET法(BET多点法)を用いて測定することができる。例えば、第17改正日本薬局方に記載の一般試験法の比表面積測定法の第2法:容量法に準じて測定可能で、自動比表面積/細孔分布測定装置TriStarII3020(micromeritics社製)を用いて測定できる。具体的には、ガス吸着法(吸着ガス:クリプトン、冷媒:液体窒素)にて、相対圧(P/P)(式中、Pは飽和蒸気圧を表し、Pは測定平衡圧を示す。)が0.05〜0.30の範囲にて測定した。なお、測定試料は105℃で2時間放置し、絶乾したものを用いた。サンプル量は測定試料により異なり、1.0〜2.0gにて測定することができる。
【0035】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの20℃における2質量%水溶液の粘度は、例えば徐放性製剤における薬物の溶出性を制御する観点から、好ましくは50〜200,000mPa・s、より好ましくは100〜170,000mPa・s、更に好ましくは4,000〜170,000mPa・s、特に好ましくは4,000〜100,000mPa・sである。
なお、20℃における2質量%水溶液の粘度は、粘度が600mPa・s以上の場合においては第17改正日本薬局方に記載の一般試験法の粘度測定法の回転粘度計法に従い単一円筒型回転粘度計を用いて測定することができる。一方、粘度が600mPa・s未満の場合においては第17改正日本薬局方に記載の一般試験法の粘度測定法の毛細管粘度計法に従い、ウベローデ型粘度計を用いて測定することができる。
【0036】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、セルロースのグルコース環の水酸基の一部をエーテル化した非イオン性水溶性高分子であり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースやヒドロキシエチルメチルセルロース等が挙げられるが、これらに限定されない。この中でも、例えば徐放性製剤における薬物の溶出性を制御する観点から、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)が特に好ましい。
【0037】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの置換度は、特に制限されない。例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースの場合、メトキシ基の置換度は、好ましくは16.5〜30.0質量%、より好ましくは19.0〜30.0質量%、更に好ましくは19.0〜24.0質量%であり、ヒドロキシプロポキシ基の置換度は、好ましくは3.0〜32.0質量%、より好ましくは3.0〜12.0質量%、更に好ましくは4.0〜12.0質量%、特に好ましくは8.5〜10.5質量%である。なお、これらの置換度は、第17改正日本薬局方に記載のヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)の置換度の測定方法に準拠した方法で測定できる。
【0038】
次に、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法について説明する。
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、まず、セルロースパルプをアルカリ金属水酸化物溶液に接触させてアルカリセルロースを得た後、アルカリセルロースとエーテル化剤を反応させるエーテル化工程により、反応生成物として粗ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを得ることができる。
セルロースパルプとしては、ウッドパルプやリンターパルプ等が挙げられ、その形状はシート状、チップ状、粉末状のいずれも良いが、反応器内での撹拌効率を高める観点から、チップ状又は粉末状が好ましい。また、セルロースパルプの固有粘度は、特に限定されないが、200〜2,500mL/gが好ましい。セルロースパルプの固有粘度は、JIS P8215による粘度測定法に準拠して測定することができる。
アルカリ金属水酸化物は特に制限されないが、経済的な観点から水酸化ナトリウムが好ましい。
エーテル化工程では、アルカリ金属水酸化物溶液とエーテル化剤を併存させてアルカリセルロースの生成と同時にエーテル化剤と反応させても良いし、アルカリセルロースの生成後にエーテル化剤を加えて反応させても良い。また、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース生成物(粗ヒドロキシアルキルアルキルセルロース)を製造するのに有用なエーテル化剤は特に制限されないが、例えば、塩化メチル等のハロゲン化アルキル、酸化エチレン、酸化プロピレン等の酸化アルキレンが挙げられる。
【0039】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロース生成物は、洗浄、脱液工程を経て第1の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとなる。洗浄、脱液工程は、洗浄と脱液を別々に行っても良いし、同時に行っても良い。例えば、洗浄後に濾過又は圧搾を行っても良いし、又は洗浄水を注ぎながら濾過又は圧搾を行っても良い。
洗浄、脱液は公知の技術を用いて行うことができる。例えば、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース生成物に、好ましくは水、より好ましくは熱水(好ましくは85〜100℃)を加え、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの濃度として好ましくは1〜15質量%のスラリーを形成させ、これを脱液し、必要に応じて圧搾する。
脱液するための装置としては、減圧濾過器、加圧濾過器、遠心脱水器、フィルタープレス等を用いることができる。圧搾するための装置は、脱液するための装置と同様の装置を用いることができる。必要に応じ、脱液物に引き続き熱水を通過させ更に洗浄したり、濾過物又は圧搾物を再度スラリー化して脱液、圧搾したりすることができる。
【0040】
得られる第1の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、撹拌羽根付き撹拌混合装置内において造粒される。撹拌混合装置内において、第1の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースと水を接触させても良いが、次工程である乾燥工程における負荷を低減する観点から、接触させる水の量は最小限の量[具体的には、(造粒後の造粒ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの含水率)−(造粒前の第1の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの含水率)が5質量%以下]もしくは接触させないことが好ましい。
撹拌羽根付き撹拌混合装置のジャケット温度は0〜20℃、造粒時の品温は0〜20℃、撹拌羽根の周速度は0.5〜20m/s、撹拌混合時間は1〜60分間であることが好ましい。
得られる造粒ヒドロキシアルキルアルキルセルロースのふるい分け法による平均粒子径が、所定の範囲(例えば、好ましくは2〜15mm、より好ましくは3〜10mm)に入るように撹拌混合される。例えば、一定時間ごとに撹拌混合装置から造粒ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを取り出し、必要に応じて撹拌混合時間を調整すればよい。なお、ふるい分け法による平均粒子径の測定は、JIS K0069化学製品のふるい分け試験方法の乾式機械ふるい分け法に準じて行うことができる。
【0041】
造粒ヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、乾燥され、乾燥ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとなる。乾燥ヒドロキシアルキルアルキルセルロースのふるい分け法による平均粒子径は、最終的に得られるヒドロキシアルキルアルキルセルロースの繊維状粒子の体積分率を調整し、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースに良好な流動性と高い成形性を付与する観点から、好ましくは2〜10mm、より好ましくは2〜8mm、更に好ましくは2〜6mmである。
なお、ふるい分け法による平均粒子径の測定は、JIS K0069化学製品のふるい分け試験方法の乾式機械ふるい分け法に準じて行うことができる。
【0042】
乾燥ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの含水率は、乾式レーザー回折法による体積基準の平均粒子径が50〜100μmであるヒドロキシアルキルアルキルセルロースに良好な流動性と高い成形性を付与する観点から、6〜10質量%、好ましくは6〜9質量%、より好ましくは6〜8質量%である。乾燥ヒドロキシアルキルアルキルセルロースに所定の水分を残すことにより、最終的に得られるヒドロキシアルキルアルキルセルロースの繊維状粒子、特に短繊維状粒子の割合を調整することができる。
乾燥ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの含水率は、{(乾燥ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの全質量−乾燥ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの絶乾質量)/(乾燥ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの全質量)}×100%で定義される。
ここで、「乾燥ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの全質量」とは、第17改正日本薬局方の「乾燥減量試験法」に従って乾燥ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを精密に量った場合の質量をいう。また、「乾燥ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの絶乾質量」とは、第17改正日本薬局方の「乾燥減量試験法」に従って乾燥ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを乾燥させた後の質量をいう。
【0043】
乾燥に用いられる装置は、例えば、流動層乾燥機、ドラムドライヤー、送風乾燥機等を用いることができるが、これに限定されない。得られる乾燥セルロースエーテルの変色を防止する観点から、乾燥温度は40〜100℃、乾燥時間は10時間以内であることが好ましい。
【0044】
乾燥ヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、撹拌混合装置内で、所定量の水を同時に接触させて撹拌混合される。第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの含水率は、最終的に得られるヒドロキシアルキルアルキルセルロースの20℃における2質量%水溶液の粘度によって異なる。具体的には、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの20℃における2質量%水溶液の粘度が50〜10,000mPa・sである場合(低粘度品の場合)には、最終的に得られるヒドロキシアルキルアルキルセルロースの繊維状粒子の体積分率の調整の観点から、好ましくは6質量%を超えて47質量%以下、より好ましくは10〜47質量%、更に好ましくは15〜47質量%である。一方、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの20℃における2質量%水溶液の粘度が10,000mPa・sを超え200,000mPa・s以下である場合(高粘度品の場合)には、最終的に得られるヒドロキシアルキルアルキルセルロースの繊維状粒子の体積分率の調整の観点から、好ましくは47質量%を超え65質量%以下、より好ましくは49〜63質量%、更に好ましくは48〜60質量%である。
第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの含水率は、{(第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの全質量−第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの絶乾質量)/(第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの全質量)}×100%で定義される。
ここで、「第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの全質量」とは、第17改正日本薬局方の「乾燥減量試験法」に従って第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを精密に量った場合の質量をいう。また、「第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの絶乾質量」とは、第17改正日本薬局方の「乾燥減量試験法」に従って第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを乾燥させた後の質量をいう。
【0045】
撹拌混合装置内において、乾燥ヒドロキシアルキルアルキルセルロースと混合する水は、得られる第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの粒子間の含水率の分布を均一にする観点から、撹拌混合装置内に連続的に供給されることが好ましい。水を連続的に供給する方法としては、例えば、撹拌混合装置の入口又は内部に滴下、スプレーする方法を用いることができる。滴下、スプレーする箇所は1箇所又は複数個所に分けて行っても良い。
【0046】
撹拌混合装置に供給される水の温度は、第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの溶解を促進する観点から、好ましくは0〜30℃、より好ましくは0〜20℃、更に好ましくは5〜20℃、特に好ましくは5〜15℃である。また、同様の観点から、撹拌混合装置のジャケットには、撹拌混合装置に供給される水の温度と同じ温度の流体(好ましくは水)が供給され、撹拌混合物が冷却されることが好ましい。
撹拌混合装置内における、第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの滞留時間は、第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの溶解を粒子の表面のみに留め、粒子内部に水が浸透しないようにして繊維状粒子の体積分率を調整する観点から、好ましくは1〜30分間、より好ましくは5〜25分間、更に好ましくは10〜20分間である。
撹拌混合装置の周速度は、特に制限されないが、好ましくは0.05〜150m/s、より好ましくは0.1〜20m/s、更に好ましくは0.2〜10m/sである。
このように、第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの粒子の内部はあまり溶解せず、表面のみ優先的に溶解するような状態にすることにより、最終的に得られるヒドロキシアルキルアルキルセルロースの繊維状粒子の体積分率を調整することができ、繊維状粒子と球状粒子がバランスよく存在するため、良好な流動性と高い成形性を付与するヒドロキシアルキルアルキルセルロースが得られる。
【0047】
撹拌混合装置は、公知のものを用いることができる。例えば、リボン型混合機、スクリュー混合機、ピン付きローター型混合機、パドル型混合機、複数パドル型混合機、プロシェア型混合機等である。
【0048】
第2の湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、公知の方法で乾燥を行った後に粉砕しても良いし、乾燥と同時に粉砕しても良い。例えば、加熱ガスを湿潤ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとともに衝撃粉砕機に導入して粉砕する方法が挙げられる。衝撃粉砕機としては、Ultra ROTOR(Altenburger Maschinen J&auml;ckering GmbH社製)、ターボミル(ターボ工業社製)、ビクトリーミル(ホソカワミクロン社製)等が挙げられる。
【0049】
次に、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを少なくとも含む固形製剤に関して説明する。
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、錠剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤等の固形製剤の添加剤として使用できる。特に、徐放性製剤における有効成分の溶出を制御可能であり、取り扱いが容易で最も汎用されている錠剤のマトリックス基剤もしくは賦形剤として特に有用である。錠剤は、乾式直接打錠法、湿式撹拌造粒打錠法、流動層造粒打錠法、乾式造粒打錠法等のいずれの製造方法によっても得ることができるが、特に、乾式直接打錠法又は乾式造粒打錠法は製造プロセスが単純で、湿式撹拌造粒打錠法等と比較して製造工程を簡略化でき、製造コストを大幅に削減できるため好適である。
なお、顆粒剤及び細粒剤は、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び薬物を少なくとも含む混合物を造粒して得られる造粒物のことを言う。また、顆粒剤又は細粒剤をカプセルに充填することにより、カプセル剤を製造できる。
【0050】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを用いて徐放性製剤を製造する際の固形製剤中のヒドロキシアルキルアルキルセルロースの含有量は、例えば徐放性製剤における薬物の溶出性を制御する観点から、好ましくは2〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%、更に好ましくは20〜40質量%である。
本願発明のヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、高い成形性を有するために、徐放性製剤中に含まれる薬物の成形性が低い場合や薬物含有量が多い場合に特に有用である。
【0051】
次に、得られたヒドロキシアルキルアルキルセルロースを少なくとも含有する固形製剤の製造方法に関して説明する。
固形製剤は、得られたヒドロキシアルキルアルキルセルロースを、薬物と、必要に応じて他の賦形剤、崩壊剤、結合剤、凝集防止剤、医薬化合物の溶解補助剤等、通常この分野で常用され得る種々の添加剤と共に混合して、打錠もしくは造粒等することによって得られる。
【0052】
本発明のヒドロキシアルキルアルキルセルロースを用いて固形製剤を製造する際に用いられる薬物は、経口投与可能な薬物であれば特に限定されるものではない。かかる薬物としては、例えば、中枢神経系薬物、循環器系薬物、呼吸器系薬物、消化器系薬物、抗生物質、鎮咳・去たん剤、抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛消炎剤、利尿剤、自律神経作用薬、抗マラリア剤、止潟剤、向精神剤、ビタミン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0053】
中枢神経系薬物としては、例えば、ジアゼパム、イデベノン、ナプロキセン、ピロキシカム、インドメタシン、スリンダック、ロラゼパム、ニトラゼパム、フェニトイン、アセトアミノフェン、エテンザミド、ケトプロフェン及びクロルジアゼポキシド等が挙げられる。
循環器系薬物としては、例えば、モルシドミン、ビンポセチン、プロプラノロール、メチルドパ、ジピリダモール、フロセミド、トリアムテレン、ニフェジビン、アテノロール、スピロノラクトン、メトプロロール、ピンドロール、カプトプリル、硝酸イソソルビト、塩酸デラプリル、塩酸メクロフェノキサート、塩酸ジルチアゼム、塩酸エチレフリン、ジギトキシン、及び塩酸アルプレノロール等が挙げられる。
【0054】
呼吸器系薬物としては、例えば、アムレキサノクス、デキストロメトルファン、テオフィリン、プソイドエフェドリン、サルブタモール及びグアイフェネシン等が挙げられる。
消化器系薬物としては、例えば、2−[〔3−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−ピリジル〕メチルスルフィニル]ベンゾイミダゾール及び5−メトキシ−2−〔(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジル)メチルスルフィニル〕ベンゾイミダゾール等の抗潰瘍作用を有するベンゾイミダゾール系薬物、シメチジン、ラニチジン、塩酸ピレンゼピン、パンクレアチン、ビサコジル並びに5−アミノサリチル酸等が挙げられる。
【0055】
抗生物質としては、例えば、塩酸タランピシリン、塩酸バカンピシリン、セファクロル及びエリスロマイシン等が挙げられる。
鎮咳・去たん剤としては、例えば、塩酸ノスカピン、クエン酸カルベタペンタン、クエン酸イソアミニル及びリン酸ジメモルファン等が挙げられる。
抗ヒスタミン剤としては、例えば、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン及び塩酸プロメタジン等が挙げられる。
解熱鎮痛消炎剤としては、例えば、イブプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、フルフェナム酸、スルピリン、アスピリン及びケトプロフェン等が挙げられる。
【0056】
利尿剤としては、例えば、カフェイン等が挙げられる。
自律神経作用薬としては、例えば、リン酸ジヒドロコデイン及びdl−塩酸メチルエフェドリン、硫酸アトロピン、塩化アセチルコリン、ネオスチグミン等が挙げられる。
抗マラリア剤としては、例えば、塩酸キニーネ等が挙げられる。
止潟剤としては、例えば、塩酸ロペラミド等が挙げられる。
向精神剤としては、例えば、クロルプロマジン等が挙げられる。
ビタミン類及びその誘導体としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB1、フルスルチアミン、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、パントテン酸カルシウム及びトラネキサム酸等が挙げられる。
【0057】
固形製剤には、必要に応じて他の賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、凝集防止剤、医薬化合物の溶解補助剤等の添加材を添加することができる。これらの添加材の含有量は特に制限されないが、薬物の溶出性を制御する観点から、1%以上98%未満が好ましい。
【0058】
他の賦形剤としては、白糖、乳糖、グルコース等の糖類、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコール類、でんぷん、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
結合剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、グルコース、白糖、乳糖、麦芽糖、デキストリン、ソルビトール、マンニトール、マクロゴール類、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、でんぷん、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0059】
崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース又はその塩、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、結晶セルロース及び結晶セルロース・カルメロースナトリウム等が挙げられる。
滑択剤、凝集防止剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、コロイダルシリカ、ステアリン酸、ワックス類、硬化油、ポリエチレングリコール類、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
医薬化合物の溶解補助剤としては、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸等の有機酸等が挙げられる。
【0060】
固形製剤の製造方法は、例えば錠剤の場合においては、乾式直接打錠法、乾式造粒打錠法、湿式撹拌造粒打錠法、流動層造粒打錠法等が挙げられる。この中でも、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを溶解せずに用いる、乾式直接打錠法又は乾式造粒打錠法が好ましい。
乾式直接打錠法は、乾式混合により得られる、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び薬物の他、必要に応じて賦形剤、崩壊剤、滑択剤等を含む混合物を打錠する方法であり、造粒工程がなく、製造工程を簡略化できるため、生産性の高い方法である。
一方、乾式造粒打錠法は、圧縮造粒により得られるヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び薬物造粒物の他、必要に応じて賦形剤、崩壊剤、滑択剤等を含む造粒物を打錠する方法であり、水や溶剤の影響を受けやすい薬物を用いる場合において有効な方法である。なお、圧縮造粒物は、例えば、ローラーコンパクター等の圧密造粒機等を用いてローラー圧縮することにより製造することできる。ロール圧力は粉体物性等により異なるが、好ましくは1〜30MPa、より好ましくは2〜12MPaであり、ロール回転数は、好ましくは1〜50rpm、より好ましくは2〜20rpmである。スクリュー回転数は、好ましくは1〜100rpm、より好ましくは2〜50rpmである。ローラー圧縮により得られた圧縮造粒物のフレークをコーミル、クイックミル、パワーミル、グラニュマイスター、ロールグラニュレーター等の粉砕機や解砕機で所定の粒度へ粉砕・整粒することで打錠末とすることができる。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1
内部撹拌機付き圧力容器内で、固有粘度が600mL/gである木材由来の粉末パルプ8.0kgに49質量%の水酸化ナトリウム水溶液を11.5kg加え、アルカリセルロースを製造した。これに、メトキシ基置換のために塩化メチル9.2kg、ヒドロキシプロポキシ置換のために酸化プロピレン2.4kgを加えて反応させ、HPMC生成物を得た。その後、HPMC生成物を温度90℃の熱水に分散させ、脱水洗浄により第1の湿潤HPMCを得た。
得られた第1の湿潤HPMCを、ジャケット温度が5℃、撹拌羽根の先端の周速度が1.6m/sで運転されている内部撹拌羽根付きプロシェア型ミキサー入れて撹拌造粒した。得られた造粒HPMCを80℃に設定した送風乾燥機で6時間乾燥させた。乾燥HPMCのふるい分け法による平均粒子径は、表1に示すように2.5mmであり、含水率は6質量%であった。
得られた乾燥HPMCを引き続きジャケット温度が5℃、撹拌羽根の先端の周速度が1.6m/sで運転されているスプレーノズル付きプロシェア型ミキサー内に導入し、同時にスプレーノズルより、含水率が18.0質量%になるように20℃の水を連続的に供給し、滞留時間が20分間になるように撹拌混合させて第2の湿潤HPMCを得た。
得られた第2の湿潤HPMCは、90℃の窒素ガスが供給され、粉砕刃の先端の周速度が108m/sで運転されている衝撃型粉砕機Ultra ROTOR IIS(Altenburger Maschinen J&auml;ckering GmbH社製)に導入され、乾燥粉砕された。
得られたHPMCは、メトキシ基の置換度23.5質量%、ヒドロキシプロポキシ基の置換度9.3質量%であり、20℃における2質量%水溶液の粘度は8,100mPa・sであった。
【0062】
次に、得られたHPMCについて、下記に示す各種物性を測定し、その結果を表2に示す。
<平均粒子径の測定>
平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置マスターサイザー3000(Malvern社製)を用いて、乾式法にて、Fraunhofer回折理論により、分散圧2bar、散乱強度2〜10%の条件で、体積基準の累積粒度分布曲線の50%累積値に相当する径を測定した。
<各種粒子の体積分率の測定>
各種粒子(長繊維状粒子、短繊維状粒子、球状粒子及び微粒子)の体積分率は、定量フィーダーVIBRI/L、気流式分散器RODOS/L及びM7レンズを搭載した動的画像解析式粒度分布測定装置QICPIC/R16(シンパテック社製)を用いて、フレームレート500Hz、インジェクタ4mm、分散圧1barの条件で測定を行い、撮像した粒子の画像を解析ソフトWINDOX5 Version:5.9.1.1により解析して各種粒子の個数基準のメジアンEQPC、個数基準のメジアンLEFI、個数基準のメジアンDIFI、伸長比、アスペクト比及び円形度を求め、その値を基に前述した計算式により算出した。なお、解析時の区分はM7を使用した。
<BET比表面積の測定>
BET法(BET多点法)による比表面積は、第17改正日本薬局方に記載の一般試験法の比表面積測定法の第2法:容量法に準じて、自動比表面積/細孔分布測定装置TriStarII3020(micromeritics社製)を用いて、ガス吸着法(吸着ガス:クリプトン、冷媒:液体窒素)にて、相対圧(P/P)(式中、Pは飽和蒸気圧を表し、Pは測定平衡圧を示す。)が0.05〜0.30の範囲にて測定した。なお、測定試料は105℃で2時間放置し、絶乾したものを用いた。サンプル量は測定試料により異なり、1.0〜2.0gにて測定した。
<2質量%水溶液の粘度の測定>
20℃における2質量%水溶液の粘度は、第17改正日本薬局方に記載の一般試験法の粘度測定法の回転粘度計法に従い、単一円筒型回転粘度計を用いて測定した。
<成形性の測定>
成形性は、HPMCを、飽和塩化マグネシウム水溶液を入れた25℃のデシケーター(相対湿度約33%)中に4日間保存して水分量を3〜4質量%に調湿後、直径12mmの円形平型杵をセットした卓上錠剤成形機HANDTAB200(市橋精機社製)を用いて、打錠圧力10kN(約88.5MPa)で圧縮成形して450mgの錠剤を製造し、その硬度を錠剤硬度計TBH−125(ERWEKA社製)を用いて、錠剤の直径方向に1mm/秒の速度で荷重をかけ、錠剤が破断したときの最大破断強度として測定した。
【0063】
実施例2
下記表1に示す製造条件に変える以外は、実施例1と同様の方法にてHPMCを得た。得られたHPMCについて、実施例1と同様の方法にて各種物性を測定し、その結果を表2に示す。
【0064】
実施例3
下記表1に示す製造条件に変える以外は、実施例1と同様の方法にてHPMCを得た。得られたHPMCについて、実施例1と同様の方法にて各種物性を測定し、その結果を表2に示す。
【0065】
実施例4
固有粘度が1,800mL/gである木材由来の粉末パルプを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて乾燥HPMCを得た。乾燥HPMCのふるい分け法による平均粒子径は3.5mmであり、含水率は7質量%であった。
乾燥HPMCに対して含水率が49質量%になるように20℃の水を連続的に供給して第2の湿潤HPMCを得た以外は、実施例1と同様の方法にてHPMCを得た。
得られたHPMCについて、実施例1と同様の方法にて各種物性を測定し、その結果を表2に示す。
【0066】
実施例5
下記表1に示す製造条件に変える以外は、実施例4同様の方法にてHPMCを得た。得られたHPMCについて、実施例1と同様の方法にて各種物性を測定し、その結果を表2に示す。
【0067】
実施例6
下記表1に示す製造条件に変える以外は、実施例4同様の方法にてHPMCを得た。得られたHPMCについて、実施例1と同様の方法にて各種物性を測定し、その結果を表2に示す。
【0068】
比較例1
下記表1に示す製造条件に変える以外は、実施例1同様の方法にてHPMCを得た。得られたHPMCについて、実施例1と同様の方法にて各種物性を測定し、その結果を表2に示す。
【0069】
比較例2
下記表1に示す製造条件に変える以外は、実施例3同様の方法にてHPMCを得た。得られたHPMCについて、実施例1と同様の方法にて各種物性を測定し、その結果を表2に示す。
【0070】
比較例3
下記表1に示す製造条件に変える以外は、実施例3同様の方法にてHPMCを得た。得られたHPMCについて、実施例1と同様の方法にて各種物性を測定し、その結果を表2に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
実施例1〜6のHPMCは、200Nを超える高い成形性を示したのに対して、比較例1〜2のHPMCは、成形性に劣るものであった。
【0074】
実施例7〜12及び比較例4〜6
実施例1〜6及び比較例1〜3で得られたHPMCを用いて、下記の錠剤組成のうち、ステアリン酸マグネシウムを除く成分をポリエチレン袋中で3分間混合し、次いでステアリン酸マグネシウムを加え30秒間混合したものを下記の打錠条件で乾式直接打錠法により打錠し、徐放性錠剤を製造した。製造した錠剤について、錠剤硬度測定装置(TM5−1、菊水製作所製)を用いて、下記条件にて錠剤質量、錠剤質量ばらつき(RSD)及び錠剤硬度を測定し、その結果を表3に示す。
また、製造した徐放性錠剤の溶出試験を溶出試験器(NTR−6400A、富山産業社製)を用いて、第17改正日本薬局方記載の溶出試験法(37℃、パドル法、50回転/分、溶媒900mLの精製水)により評価を行った。アセトアミノフェンの1時間後、2時間後、4時間後、8時間後の溶出率を表3に、アセトアミノフェンの溶出挙動を図2 に示す。
【0075】
<錠剤組成及び打錠条件>
錠剤組成
アセトアミノフェン微粉(山本化学工業社製) 10.0質量部
乳糖水和物(ダイラクトーズS、フロイント産業社製) 70.0質量部
HPMC 20.0質量部
ステアリン酸マグネシウム 0.5質量部
打錠条件
打錠機 ロータリー打錠機(VIRGO、菊水製作所製)
錠剤サイズ 200mg/錠、直径8mm、曲面半径12mm
打錠圧 7.5kN
打錠速度 40rpm
<錠剤物性の測定>
錠剤質量
TM5−1を用いて20錠の錠剤質量を測定し、その平均値を錠剤質量とした。
錠剤質量ばらつき
錠剤質量ばらつきを下記式により算出した。
錠剤質量ばらつき(%)=(錠剤質量の標準偏差/錠剤質量)×100
錠剤硬度
錠剤の直径方向に1mm/秒の速度で荷重をかけ、錠剤が破断したときの最大破断強度を錠剤硬度として測定した。
【0076】
【表3】
【0077】
実施例の錠剤は、良好な錠剤硬度である50N以上を示した。一方で、比較例4及び5の錠剤の錠剤硬度は実施例よりも低く、50N以下の錠剤硬度であった。また、実施例の錠剤の質量ばらつきは1%以下であり、良好な流動性を示した。一方で、微粒子が多いHPMCを用いて製造した比較例6の錠剤は、錠剤の質量ばらつきが大きく、流動性に劣るものであった。
また、図2に示すように、実施例の徐放性錠剤からのアセトアミノフェンの溶出プロファイルは、徐放性を示すことが確認された。
【符号の説明】
【0078】
A:全粒子
B:微粒子
C:LEFI(繊維長)が40μm以上の粒子
D:LEFIが40μm以上で伸長比(elongation)が0.5未満の粒子
E:LEFIが40μm以上で伸長比が0.5未満でアスペクト比(aspect ratio)が0.5未満の粒子
F:LEFIが40μm以上で伸長比が0.5未満でアスペクト比が0.5以上の粒子
G:LEFIが40μm以上で伸長比が0.5未満でアスペクト比が0.5以上で円形度(circularity)が0.7未満の粒子
S1:第1球状粒子
S2:第2球状粒子
LF1:第1長繊維状粒子
LF2:第2長繊維状粒子
SF1:第1短繊維状粒子
SF2:第2短繊維状粒子
LEFI:繊維長
elongation:伸長比
aspect ratio:アスペクト比
circularity:円形度
図1
図2