特許第6850448号(P6850448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6850448シート材押圧装置、シート材押圧方法、押圧ローラ及びシート材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850448
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】シート材押圧装置、シート材押圧方法、押圧ローラ及びシート材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/50 20060101AFI20210322BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20210322BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20210322BHJP
【FI】
   B29C70/50
   B29C70/54
   B29L9:00
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-560291(P2020-560291)
(86)(22)【出願日】2020年2月19日
(86)【国際出願番号】JP2020006495
(87)【国際公開番号】WO2020175266
(87)【国際公開日】20200903
【審査請求日】2020年10月26日
(31)【優先権主張番号】特願2019-31310(P2019-31310)
(32)【優先日】2019年2月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲田 直樹
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−076017(JP,A)
【文献】 特開平06−206232(JP,A)
【文献】 特開2004−099820(JP,A)
【文献】 特開2006−289819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00−70/88
B29B 11/16
B29B 15/08−15/14
C08J 5/04/ 5/10
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と繊維とが混在したシート材を押圧する複数のフリーローラと、前記複数のフリーローラを環状に配置し、前記複数のフリーローラを自転自在に固定支持するフリーローラ支持部とを含む押圧ローラと、
前記複数のフリーローラを公転させるために前記フリーローラ支持部を、第1回転方向に回転させる駆動制御部と、
前記シート材を載置し搬送するシート材搬送部と、を備え、
前記第1回転方向は、前記シート材の押圧位置にある前記フリーローラの移動方向が前記シート材の搬送方向に対して逆方向になる方向であり、
前記シート材搬送部で前記シート材を搬送しながら前記フリーローラ支持部を前記第1回転方向に回転させて、前記複数のフリーローラで前記シート材を押圧する、シート材押圧装置。
【請求項2】
前記シート材に同時に接触する前記フリーローラは、
前記シート材の上流側で接触している第1フリーローラと、前記シート材の下流側で接触している第2フリーローラとの少なくとも二つあり、
前記第1フリーローラと前記シート材搬送部との間隔が、前記第2フリーローラと前記シート材搬送部との間隔よりも大きくなるように、前記押圧ローラと前記シート材搬送部との間隔が設定されている、請求項1に記載のシート材押圧装置。
【請求項3】
前記押圧ローラに対向する位置に配置され、前記シート材を支持する受け台をさらに備え、
前記シート材は、前記押圧ローラと前記受け台との間を、前記押圧ローラに押圧されながら通過する、請求項1又は2に記載のシート材押圧装置。
【請求項4】
前記押圧位置にある前記フリーローラと前記シート材搬送部との間隔を調節する間隔調節部をさらに備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシート材押圧装置。
【請求項5】
前記フリーローラ支持部は円板形状である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシート材押圧装置。
【請求項6】
前記シート材に同時に接触する前記フリーローラは少なくとも二つあり、
前記少なくとも二つのフリーローラの表面には、それぞれ、自転軸を中心に巻回された溝を有し、
前記少なくとも二つのフリーローラのうち、互いに隣接配置されたフリーローラにおいて、各溝は前記自転軸の方向にずれて配置されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシート材押圧装置。
【請求項7】
前記フリーローラには、それぞれ、自転軸を中心に巻回された溝を有し、
前記溝は、前記自転軸を中心に螺旋状に巻回されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のシート材押圧装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の前記シート材押圧装置を前記シート材の仕様に応じて調整し、調整した前記シート材押圧装置で前記シート材を押圧する、シート材押圧方法。
【請求項9】
樹脂と繊維とが混在したシート材を押圧する複数のフリーローラと、
前記複数のフリーローラを環状に配置し、前記複数のフリーローラを自転自在に固定支持する支持機構と、を備える押圧ローラであって、
前記複数のフリーローラのうち、少なくとも二つのフリーローラの表面には、それぞれのフリーローラの自転軸を中心に巻回された溝を有し、
前記少なくとも二つのフリーローラのうち、互いに隣接配置されたフリーローラにおいて、各溝は前記自転軸の方向にずれて配置されている、ことを特徴とする押圧ローラ。
【請求項10】
前記溝は前記自転軸を中心に螺旋状に巻回されている、請求項9に記載の押圧ローラ。
【請求項11】
第1キャリアフィルムに第1マトリックス樹脂を塗布する第1塗布工程と、
第2キャリアフィルムに第2マトリックス樹脂を塗布する第2塗布工程と、
前記第1キャリアフィルムに塗布された第1マトリックス樹脂に、補強繊維材を堆積させる第1堆積工程と、
前記第1堆積工程及び前記第2塗布工程の後で、前記第1キャリアフィルム、前記第1マトリックス樹脂、前記補強繊維材、前記第2マトリックス樹脂及び前記第2キャリアフィルムが、この順に配置されるように、前記第1キャリアフィルムと前記第2キャリアフィルムとを積層し、シート材を形成する工程と、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のシート材押圧装置、又は請求項9若しくは請求項10に記載の押圧ローラを用いて、形成された前記シート材に含まれる前記第1マトリックス樹脂及び/又は前記第2マトリックス樹脂を前記補強繊維材に含浸させ、かつ、前記シート材から脱泡させる工程と、を含むシート材の製造方法。
【請求項12】
第1キャリアフィルムに樹脂が形成されている樹脂シートを供給する工程と、
炭素繊維束又は樹脂が含浸されている炭素繊維束を有して構成される炭素繊維シートを供給する工程と、
前記樹脂シートに前記炭素繊維シートを積層し、シート材を形成する工程と、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のシート材押圧装置、又は請求項9若しくは請求項10に記載の押圧ローラを用いて、形成された前記シート材に含まれる前記樹脂を前記炭素繊維束に含浸させ、かつ、前記シート材から脱泡させる工程と、を含むシート材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材押圧装置、シート材押圧方法、押圧ローラ及びシート材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維やガラス繊維等からなる繊維補強材に合成樹脂を混入させた複合材料は、繊維強化プラスチック(FRP)と呼ばれ、住宅設備、輸送用機器、工業製品等に幅広く使用されている。このような複合材料を高強度化するには、合成樹脂の繊維補強材への含浸性を高めることが重要である。
【0003】
含浸性を高める装置として、特許文献1には、シート状の成型材料であるSMC(シートモールディングコンパウンド)製造用の含浸装置が記載されている。同含浸装置は、コンベヤベルト押さえロール方式により、熱硬化性樹脂を含有する樹脂ペーストを繊維補強材に含浸させるための装置である。この装置は、繊維補強材が樹脂ペースト上に供給されたシート材を、水平方向に移動させて、第1のローラ〜第3のローラ計6本と各ガイドローラとの間を通過させる。第1のローラを構成する2本で、樹脂ペーストを繊維補強材に緩やかに含浸させる。第2のローラを構成する2本で、シート材から気泡を排出させる。第3のローラを構成する2本で、樹脂ペーストを繊維補強材に十分に含浸させる。
【0004】
この含浸装置において生産性を高めようとすれば、ライン速度、つまり、シート材の送り速度を上げなければならない。シート材の送り速度を上げると、ローラでシート材を押圧する時間が短くなる。シート材を押圧する時間が短くなると、含浸性が低下する。含浸性を維持するには、押圧時におけるローラとシート材との間隔を小さくしてシート材を多く絞る方法があるが、シート材を多く絞ると内部に気泡が残留しやすくなるという問題を生じる。他に、含浸性を維持するには、シート材の通過するローラの本数を増やす方法も考えられるが、ローラの本数を増やすと、装置自体が大きくなって装置導入費用や保守点検費用が増大してしまう。
【0005】
特許文献2には、回転するロールやベルトの表面に並ぶように小径の球状体を配置してシート材に接触させ、ロールやベルトとシート材とに挟まれた球状体がシート材を押圧して、シート材内のマトリックス樹脂を繊維に含浸させる装置が記載されている。特許文献3には、回転するロールの表面に並ぶように小径の含浸ロール群を配置して、含浸ロール群でシート材を押圧してシート材内のマトリックス樹脂を繊維に含浸させる含浸装置が記載されている。しかしながら、これらの含浸装置は、シート材内の気泡を排出する脱泡効果について考慮されていない。そして、特許文献2に記載の、球状体が、回転するロールやベルトの表面に固定されていない構成では、球状体を所望の速度で移動させ難い。そのため、所望の含浸効果を確保しつつ高い脱泡効果を得ることは難しい。また、特許文献3に記載の、含浸ロール群の公転方向がシート材の搬送方向と同方向である構成では、シート材の中の気泡を取り除く効果が小さい。そのため、所望の含浸効果を確保しつつ高い脱泡効果を得ることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−099820号公報
【特許文献2】特開平2−305829号公報
【特許文献3】特開平7−076017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
所望の含浸効果を確保しつつ高い脱泡効果を得るシート材押圧装置、シート材押圧方法、押圧ローラ及びシート材の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるシート材押圧装置は、樹脂と繊維とが混在したシート材を押圧する複数のフリーローラと、前記複数のフリーローラを環状に配置し、前記複数のフリーローラを自転自在に固定支持するフリーローラ支持部とを含む押圧ローラと、
前記複数のフリーローラを公転させるために前記フリーローラ支持部を、第1回転方向に回転させる駆動制御部と、
前記シート材を載置し搬送するシート材搬送部と、を備え、
前記第1回転方向は、前記シート材の押圧位置にある前記フリーローラの移動方向が、前記シート材の搬送方向に対して逆方向になる方向であり、
前記シート材搬送部で前記シート材を搬送しながら前記フリーローラ支持部を前記第1回転方向に回転させて、前記複数のフリーローラで前記シート材を押圧する。
【0009】
かかる構成によれば、複数のフリーローラの公転速度を上げて、シート材が押圧ローラを通過する間に、シート材に接触するフリーローラの本数を増やす。これにより、比較的短時間でも所望の含浸効果を確保することができる。また、フリーローラの公転方向は、シート材の押圧位置にあるフリーローラを、シート材搬送方向と逆方向に移動させる方向である。これにより、シート材の内部の気泡を押圧ローラの搬送方向上流側へと押出す脱泡効果を得ることができる。また、脱泡は、気泡が樹脂に置換されることにより行われるから、脱泡により含浸効果を高める。
【0010】
前記シート材押圧装置では、前記シート材に同時に接触する前記フリーローラは、
前記シート材の上流側で接触している第1フリーローラ(151)と、前記シート材の下流側で接触している第2フリーローラ(152;153)との少なくとも二つあり、
前記第1フリーローラと前記シート材搬送部との間隔(D1)が、前記第2フリーローラと前記シート材搬送部との間隔(D2;D3)よりも大きくなるように、前記押圧ローラと前記シート材搬送部との間隔が設定されていてもよい。
前記シート材と接触するフリーローラは、シート材の搬送方向と同じ方向に自由回転する。フリーローラはシート材との摩擦により回転する。
前記フリーローラ支持部に対し環状に配置されるフリーローラは、前記フリーローラ支持部の回転軸(フリーローラ公転軸)を中心に真円を形成するように配置されることが、好ましい。
【0011】
前記シート材押圧装置では、前記押圧ローラに対向する位置に配置され、前記シート材を支持する受け台(18;28)をさらに備え、
前記シート材は、前記押圧ローラと前記受け台との間を、前記押圧ローラに押圧されながら通過するようにしてもよい。
【0012】
前記シート材押圧装置は、前記押圧位置にある前記フリーローラと前記シート材搬送部との間隔を調節する間隔調節部をさらに備えてもよい。
【0013】
前記フリーローラ支持部は円板形状であってもよい。
【0014】
前記シート材押圧装置では、前記シート材に同時に接触する前記フリーローラは少なくとも二つあり、
前記少なくとも二つのフリーローラの表面には、それぞれ、自転軸を中心に巻回された溝を有し、
前記少なくとも二つのフリーローラのうち、互いに隣接配置されたフリーローラにおいて、各溝は前記自転軸の方向にずれて配置されていてもよい。
【0015】
前記シート材押圧装置では、前記フリーローラには、それぞれ、自転軸を中心に巻回された溝を有し、
前記溝は、前記自転軸を中心に螺旋状に巻回されていてもよい。
【0016】
本発明にかかるシート材押圧方法は、前記シート材押圧装置を前記シート材の仕様に応じて調整し、調整したシート材押圧装置で前記シート材を押圧する。
【0017】
本発明にかかる押圧ローラは、
前記シート材を押圧する複数のフリーローラと、
前記複数のフリーローラを環状に配置し、前記複数のフリーローラを自転自在に固定支持する支持機構と、を備える押圧ローラであって、
前記複数のフリーローラのうち、前記少なくとも二つのフリーローラの表面には、それぞれのフリーローラの自転軸を中心に巻回された溝を有し、
前記少なくとも二つのフリーローラのうち、互いに隣接配置されたフリーローラにおいて、各溝は前記自転軸の方向にずれて配置されている。
【0019】
前記押圧ローラでは、前記溝は前記自転軸を中心に螺旋状に巻回されているとよい。
【0020】
本発明のシート材(例えばSMC)の製造方法は、
第1キャリアフィルムに第1マトリックス樹脂(例えば、熱硬化性樹脂を含む第1樹脂ペースト)を塗布する第1塗布工程と、
第2キャリアフィルムに第2マトリックス樹脂(例えば、熱硬化性樹脂を含む第2樹脂ペースト)を塗布する第2塗布工程と、
前記第1キャリアフィルムに塗布された第1マトリックス樹脂に、補強繊維材(例えば、ガラス繊維)を堆積させる第1堆積工程と、
前記第1堆積工程及び前記第2塗布工程の後で、前記第1キャリアフィルム、前記第1マトリックス樹脂、前記補強繊維材、前記第2マトリックス樹脂及び前記第2キャリアフィルムが、この順に配置されるように、前記第1キャリアフィルムと前記第2キャリアフィルムとを積層し、シート材を形成する積層工程と、
前記積層工程の後で、上述のシート材押圧装置又は上述の押圧ローラを用いて、前記第1マトリックス樹脂及び/又は第2マトリックス樹脂を前記補強繊維材に含浸させ、かつ、
前記シート材から脱泡させる工程と、を含む。含浸させる工程と脱泡させる工程とは、同時又は部分的に重複して行われる。
【0021】
本発明のシート材(例えばプリプレグ)の製造方法は、
第1キャリアフィルムに樹脂が形成されている樹脂シートを供給する工程と、
炭素繊維束又は樹脂が含浸されている炭素繊維束を有して構成される炭素繊維シートを供給する工程と、
前記樹脂シートに前記炭素繊維シートを積層し、シート材を形成する工程と、
上記に記載の前記シート材押圧装置、又は上記に記載の前記押圧ローラを用いて、形成された前記シート材に含まれる前記樹脂を前記炭素繊維束に含浸させ、かつ、前記シート材から脱泡させる工程と、を含む。含浸させる工程と脱泡させる工程とは、同時又は部分的に重複して行われる。
【0022】
上記シート材搬送部は、前記シート材押圧装置に専用として設けられたものであってもよく、シート材押圧装置以外の製造装置と共有するものであってもよい。
前記駆動制御部は、前記フリーローラ支持部の回転軸(フリーローラ公転軸)周りに回転駆動させるための駆動装置(モータ、ギアなどを有して構成される)を制御するように構成される。また、前記駆動制御部は、前記押圧ローラと前記シート材搬送部とをそれぞれ駆動制御してもよい。さらに、前記駆動制御部は、シート材搬送の搬送速度に基づいて、フリーローラ支持部の回転速度を制御してもよい。
少なくとも2つのフリーローラが搬送されている状態のシート材と接触するように、フリーローラ支持部の回転軸の高さ位置と、シート材の搬送位置とを設定することが好ましい。フリーローラ支持部の回転軸の位置は、高さ方向位置の調整が可能に構成されていることが好ましい。シート材の種類やシート材の厚みに応じて、高さ方向位置を調整するとよい。
前記シート材搬送部は、その搬送方向において、フリーローラ支持部を間に挟むように上流側ガイドローラと下流側ガイドローラを有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のシート材押圧装置の一実施形態を含むSMC製造工程の模式図
図2】本発明のシート材押圧装置の一実施形態を示す図
図3図2のシート材押圧装置の要部拡大断面図
図4】受け台の他の実施形態を示す図
図5】シート材押圧装置の他の実施形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0025】
図1は、ガラス繊維をマトリックス樹脂に含浸させたシート状の成型材料であるSMCの製造工程を模式的に示している。巻出ロール1により引き出された10〜50μmの厚さのポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂フィルムを第1キャリアフィルム2としてコンベヤベルト3の上に載置する。
【0026】
コンベヤベルト3は駆動ローラ31によって駆動され、コンベヤベルト3に載置されたシート材13の原材料及びシート材13をT方向に搬送する。駆動ローラ31は不図示の制御手段により駆動速度を変更できる。コンベヤベルト3の内側には、適宜ガイドローラ32が配置される。本実施形態では、シート材搬送部としてベルトコンベヤを使用しているが、ローラーコンベヤやチェーンコンベヤなど、他の搬送機構を使用してもよい。
【0027】
次に、第1キャリアフィルム2上にマトリックス樹脂となる第1樹脂ペースト41をドクター5等の塗工手段により所定の厚さに塗工する。第1樹脂ペースト41は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分としたものに、充填剤や増粘剤、硬化用触媒、内部離型剤、低収縮化剤及び着色剤等を適宜混合して粘度を30〜600ポイズ程度としたペースト状物を使用するとよい。
【0028】
第1樹脂ペースト41に含浸させる補強繊維材9について、複数束のガラスストランド7を切断装置8に送り込み、1インチ前後の長さの切断片を多数形成する。そして、形成した切断片を第1樹脂ペースト41上に均一に分散するように振りかけて堆積させ、補強繊維材9として使用する。
【0029】
巻出ロール1により引き出された、10〜50μm厚さのポリエチレンフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムを第2キャリアフィルム11とする。第2キャリアフィルム11上に、第2樹脂ペースト42を、ドクター12等の塗工手段により所定の厚さに塗工する。そして、第1キャリアフィルム2上に堆積された補強繊維材9上に、第2樹脂ペースト42が内側となるように第2樹脂ペースト42の塗工された第2キャリアフィルム11を積層させて、シート材13を形成する。
【0030】
形成直後のシート材13は、第1キャリアフィルム2と第2キャリアフィルム11との間で、樹脂ペースト41、42と補強繊維材9とが混在した状態にある。しかしながら、樹脂ペースト41、42が補強繊維材9に完全に含浸しておらず、シート材13の内部に多くの気泡が残存している。そこで、シート材押圧装置14を使用して、樹脂ペースト41、42を補強繊維材9の中に含浸させるとともに、シート材13の内部に含まれる気泡を排出させる。シート材押圧装置14により押圧されたシート材13は、巻取られて巻取ロール20を形成する。
【0031】
本発明にかかるシート材押圧装置の一実施形態について、図2を参照しながら説明する。図2はシート材押圧装置14の斜視図である。シート材押圧装置14は、コンベヤベルト3と、押圧ローラ17と、押圧ローラ17及びコンベヤベルト3をそれぞれ駆動制御する駆動制御部(不図示)とを備える。当図では、シート材押圧装置14とともに、コンベヤベルト3の上に載置したシート材13(ハッチング領域)を示している。当実施形態では、コンベヤベルト3は、シート材押圧装置14以外の製造方法と共有されているが、コンベヤベルト3を、シート材押圧装置専用に設けてもよい。
【0032】
押圧ローラ17は、シート材13を押圧する複数のフリーローラ15と、複数のフリーローラ15を環状に配置し、複数のフリーローラ15を自転自在に固定支持する一対のフリーローラ支持部16とを含む。複数のフリーローラ15は、一対のフリーローラ支持部16の間に取り付け固定される。各フリーローラ15は、接触するシート材13との摩擦により回転(自転)する。また、複数のフリーローラ15は、押圧ローラ17の回転軸171を中心として第1回転方向Rへ回転(公転)する。この回転は不図示の駆動制御部により行われる。各フリーローラ15は、フリーローラ支持部16の回転にしたがって公転しつつ、シート材13に対して押圧力を与えながら、シート材13の搬送方向Tの下流側から上流側に移動していく。
【0033】
駆動制御部は、駆動装置及び制御部を含む。駆動装置には、モータ、ギアなどを有して構成され、モータには、エアモータや電動モータ等、駆動対象に応じて種々の駆動源が適用できる。押圧ローラ17を回転させるには、例えば、エアモータを使用するのが好ましい。制御部は、駆動部毎に設けられていてもよく、押圧装置全体として統合されていてもよく、SMC製造工程に使用される他の装置と統合されていてもよい。
【0034】
フリーローラ15により押圧力を与えられたシート材13は、シート材13の内部の樹脂ペースト41、42が補強繊維材9の中に含浸していく。フリーローラ15は公転するから、シート材13は複数のフリーローラ15により押圧される。押圧ローラ17の公転速度を高くするほど、シート材13を押圧するフリーローラ15の数が増える。これにより、フリーローラ15による押圧回数及び押圧時間が増加し、含浸性が向上する。押圧ローラ17の公転速度は、ライン速度に依存せず設定できるから、ライン速度を大きくした場合でも、所望の含浸性を得ることができる。さらに、押圧ローラ17は効果の異なるローラをそれぞれ準備し使用するよりも省スペースであるから、シート材押圧装置14を小型化できる。
【0035】
押圧ローラ17の第1回転方向Rは、シート材13の押圧位置にあるフリーローラ15、すなわちシート材13に接触しているフリーローラ15を、コンベヤベルト3によるシート材13の搬送方向Tと逆方向に移動させるような方向である。押圧ローラ17を第1回転方向Rに回転させると、フリーローラ15は、次々に、シート材13を押圧しながら搬送方向上流側に移動していく。これにより、シート材13の内部に存在する気泡を、押圧ローラ17の搬送方向上流へと押出し、脱泡していく。
【0036】
図3は、シート材搬送方向に沿う平面を断面とした、シート材押圧装置14の要部拡大断面図である。図3では、3つのフリーローラ15がシート材13に同時に接触している。3つのフリーローラ15は、シート材13の送り出し側である上流側から順に、第1フリーローラ151、第2フリーローラ152、及び第3フリーローラ153である。第1フリーローラ151とコンベヤベルト3との間隔D1は、第2フリーローラ152とコンベヤベルト3との間隔D2よりも大きくなるように設定されている。第2フリーローラ152とコンベヤベルト3との間隔D2は、第3フリーローラ153とコンベヤベルト3との間隔D3よりも大きくなるように設定されている。この間隔の設定は、下流になるほどフリーローラとコンベヤベルトとの間隔を小さくすることで、シート材13の押圧量を段階的に大きくすることを意図している。
【0037】
このように間隔D1〜D3を設定すると、次の効果が得られる。押圧量の小さな第1フリーローラ151では、主にシート材内に含まれる気泡を排出する脱泡効果を発揮する。押圧量の大きな第3フリーローラ153では、主に脱泡後のシート材を含浸させる含浸効果を発揮する。第1フリーローラ151と第3フリーローラ153の間にある第2フリーローラ152では、脱泡効果と含浸効果との両効果を発揮する。つまり、段階的な押圧により、主に搬送方向上流側では気泡を押圧ローラの上流側へ押出して脱泡を促進し、主に搬送方向下流側では所望の含浸性を得ることができる。
【0038】
シート材13に同時に接触するフリーローラ15の数が増えると、シート材13の押圧回数及び押圧時間が増え、含浸性が向上する。シート材13に同時に接触するフリーローラ15の本数は、フリーローラ支持部16の形状やシート材13の湾曲可能角度、及び押圧ローラ17に配置可能なフリーローラ15の本数などによって異なる。
【0039】
例えば、直径38mmのフリーローラが、直径200mmの円板形状のフリーローラ支持部の周方向に沿って、等間隔に12本配置されていた押圧ローラを使用する場合を考える。シート材13を、フリーローラ支持部16の円板周囲の120度(全周の1/3)に亘って沿うように配置するときは、最大5本のフリーローラ15がシート材13に常時接触し、含浸性が向上する。同じ押圧ローラを使用する場合において、シート材13を、フリーローラ支持部の円板周囲の90度(全周の1/4)に亘って沿うように配置するときは、最大4本のフリーローラがシート材13に常時接触し、含浸性が向上する。
【0040】
第1フリーローラ151〜第3フリーローラ153とコンベヤベルト3との間隔D1〜D3の調整には、押圧ローラ17とコンベヤベルト3との相対位置を調整する方法や、コンベヤベルト3を下方から支持する受け台を使用し、受け台18の位置を調整する方法がある。
【0041】
押圧ローラ17とコンベヤベルト3との相対位置を調整する方法について説明する。図3において押圧ローラ17の位置を低くすると、押圧ローラ17のコンベヤベルト3に対する相対位置が低下し、コンベヤベルト3に接触するフリーローラ15の数を増加させたり、フリーローラ15とコンベヤベルト3との間隔を小さくしたりできる。押圧ローラ17の位置を低くするには、押圧ローラ17自体の高さを調整する間隔調整部(不図示)を使用するとよい。
【0042】
押圧ローラ17自体の高さを調整する間隔調整部として、例えば、押圧ローラ17の回転軸(フリーローラ15の公転軸)を両サイドから軸支する押圧ローラ支持部と、前記押圧ローラ支持部の高さ方向位置を変更できる直動アクチュエータ等の駆動部と、前記押圧ローラ支持部と直動アクチュエータとが設けられる架台とを有してもよい。架台は、例えばレール上に設置され、シート材の搬送方向(又はコンベヤベルトの移動方向)に沿って移動可能に構成してもよい。
【0043】
また、コンベヤベルト3の位置を高くしても、押圧ローラ17のコンベヤベルト3に対する相対位置が低下する。コンベヤベルト3の位置を高くするには、押圧ローラ17の搬送方向上流側及び搬送方向下流側に配置されるガイドローラ32の高さを調整する間隔調整部(不図示)を使用するとよい。ガイドローラ32の高さを調整する間隔調整部として、シート材押圧装置14をシート材の搬送方向において間に挟むように上流側ガイドローラ321と下流側ガイドローラ322とを有し、上流側ガイドローラ321と下流側ガイドローラ322とはそれぞれ、上下移動可能に構成してもよい。
【0044】
例えば、搬送方向下流側のコンベヤベルト3の位置が上流側のコンベヤベルト3の位置よりも高い位置になるように、下流側のコンベヤベルト3を下流側ガイドローラ322等で下方支持する。これにより、搬送方向下流側の第2フリーローラ152及び第3フリーローラ153とコンベヤベルト3との間隔D2、D3を、搬送方向上流側の第1フリーローラ151とコンベヤベルト3との間隔D1よりも小さくすることができる。また、搬送方向下流側の第3フリーローラ153とコンベヤベルト3との間隔D3を、搬送方向上流側の第2フリーローラ152とコンベヤベルト3との間隔D2よりも小さくすることができる。また、押圧ローラ17を間に挟み、搬送方向に沿って同じ間隔だけ離れた、上流側ガイドローラ321の高さが下流側ガイドローラ322の高さよりも低くなるように設定してもよい。
【0045】
フリーローラ15とコンベヤベルト3との間隔を調整する手法として、押圧ローラ17と上流側ガイドローラ321との搬送方向における間隔、及び/又は、押圧ローラ17と下流側ガイドローラ322との搬送方向における間隔を調整する方法がある。上流側ガイドローラ321の高さと下流側ガイドローラ322の高さとが同じであっても、例えば、押圧ローラ17から上流側ガイドローラ321までの搬送方向における間隔が、押圧ローラ17から下流側ガイドローラ322までの搬送方向における間隔より大きくなるように設定することで、D1>D2及びD1>D3を満たすことができる。
【0046】
コンベヤベルト3を下方から支持する受け台を使用し、受け台の位置を調整する方法について説明する。図2図3には、受け台18が示されている。受け台18は、フリーローラ15に押圧されるシート材13を、コンベヤベルト3の下方から支持する。これにより、シート材13がフリーローラ15に確実に押圧されるようにする。受け台18のコンベヤベルト支持面181、182は、シート材13の押圧位置に位置される各フリーローラ151〜153とコンベヤベルト3との間隔を、所望の値とするように設計してもよい。受け台18を使用することで、シート材13を所望の厚みに制御しやすくなる。
【0047】
コンベヤベルト支持面181、182は、搬送方向下流になるほどフリーローラ151〜153とコンベヤベルト3との間隔を小さくするように設計される。図3はフリーローラ支持部が円形形状である場合の受け台18の一例を示している。フリーローラ支持部の回転軸(公転軸)のコンベヤベルト支持面181、182は、全体として凹形状に形成されており、コンベヤベルト支持面181、182との間に最低部183を含んでいる。
【0048】
図4は、フリーローラ支持部が円形形状である場合の受け台の別実施形態を示している。受け台19のコンベヤベルト支持面は、搬送方向側面視において3分割(例えば3等分割)され、上流から順に、第1支持面191、第2支持面196及び第3支持面192からなる。第1支持面191は上流端194を端に含み、第2支持面196は最低部193を中央領域に含み、第3支持面192は、下流端195を端に含む。
【0049】
第1支持面191は、搬送方向側面視において直線状であり、装置の設置面(あるいは水平)に対し第1傾斜角αで徐々に低下する。第3支持面192は、搬送方向側面視において直線状であり、装置の設置面(あるいは水平)に対し第2傾斜角βで徐々に上昇する。|α|<|β|の関係が成り立つ構成であってもよい。第2支持面196は、搬送方向側面視において円弧状であり、第1支持面191及び第3支持面192と滑らかに接続される。
【0050】
|α|=|β|の関係である場合に、押圧ローラ17の回転軸(フリーローラの公転軸)の中心を通り、コンベヤベルト3へ向かって垂直線を引いたときに、この垂直線が最低部193よりも搬送方向下流側を通る関係(言い換えれば、最低部193を通る垂直線が押圧ローラ17の回転軸(フリーローラの公転軸)の中心より搬送方向上流側を通る関係)であってもよい。
【0051】
受け台の各実施形態におけるコンベヤベルト支持面は、コンベヤベルト3がよく滑るように、摩擦係数の小さい平滑面で構成されているか、又は、ローラ等を並べた面で構成されているとよい。また、押圧ローラ17と受け台18(19)との間隔D1〜D3を調整できるように、受け台18(19)のコンベヤベルト支持面の高さや傾斜角度を調節する間隔調整部(不図示)を備えていてもよい。
【0052】
押圧ローラ17とコンベヤベルト3との相対位置とを調整する方法と、受け台18(19)を使用し受け台18(19)の位置を調整する方法とを上述したが、これら両方法を併用してもよい。
【0053】
図5は他の実施形態のシート材押圧装置を模式的に示している。このシート材押圧装置24は、フリーローラ支持部26がクローラ(無限軌道)で構成された押圧ローラ27を備えている。クローラで構成されたフリーローラ支持部26は、円板形状のフリーローラ支持部16よりも、シート材13に同時に接するフリーローラ25の数を増やすことができる。また、フリーローラ25の数を増やしても、押圧されるシート材13を平面形状に維持することも可能である。図5のシート材押圧装置24において、クローラの支持機構や駆動制御機構は省略している。
【0054】
シート材13に同時に接するフリーローラ25の数が増加すると、フリーローラ25がシート材13を押圧する回数とフリーローラ25の接触時間を増やすことができるため、含浸性がさらに向上する。また、多数のフリーローラ25を使用することにより、段階的に押圧量を大きくする際の「段階」を、多段に設定できる。これにより、気泡を押圧ローラ27の搬送方向上流へより押出し易くして、脱泡性をさらに向上させることができる。
【0055】
図5の実施形態でも、受け台28を備えていてもよい。受け台28におけるコンベヤベルト支持面281の形状は、フリーローラ25との間隔及びクローラの軌道によって調整される。この実施形態では、コンベヤベルト支持面281を平面で構成してもよい。このとき、クローラで構成されたフリーローラ支持部26を、上流側から下流側に向かってコンベヤベルト支持面281に近づくように傾斜させる。これにより、コンベヤベルト支持面281が平面であったとしても、フリーローラとコンベヤベルト3との間隔を上流側から下流側に向かって徐々に小さくすることができる。
【0056】
フリーローラについて詳述する。フリーローラの材質は、ステンレス等の金属が使用される他、特に制限されない。フリーローラの表面に、エラストマーなど、弾性力がある材料を使用した場合は、シート材表面のキャリアフィルムに生じたシワを伸ばす効果が得られる。
【0057】
フリーローラの少なくとも一つは、フリーローラの自転軸を中心に巻回された溝を有するとよい。フリーローラの自転軸を中心に巻回された溝とは、自転軸を中心に螺旋状となる溝や、自転方向に沿う方向に延びる溝を含む。溝はシート材内の気泡を誘導する効果がある。螺旋状に設けられた溝の場合は、気泡を螺旋状の溝に沿って移動させる効果がある。これにより、シート材の内にある気泡をシート材の外へ排出できる。
【0058】
押圧ローラ内の全てのフリーローラが溝を有していても良いし、溝有りフリーローラと溝無しフリーローラとを混在させてもよい。押圧ローラの周方向に沿って、溝有りフリーローラと溝無しフリーローラとを交互に配置してもよく、溝有りフリーローラと溝無しフリーローラとを2本おきに配置してもよい。
【0059】
シート材に同時に接触するフリーローラが少なくとも二つある場合において、該少なくとも二つのフリーローラが互いに隣接配置されているとき、互いに隣接配置されたフリーローラにおける各溝は、フリーローラの自転軸の方向に互いにずれるように配置されているとよい。例えば、隣り合う一方のフリーローラの溝の凹部と、その他方のフリーローラの凸部とが対向する配置であってもよく、凹部の内部に凸部の少なくとも一部が挿入していてもよい。互いに隣接配置されたフリーローラは、シート材上にある互いに隣接した局所領域を、交互に押圧できる。シート材上の局所領域を交互に押圧すると、マトリックス樹脂を移動させることで、シート材の内にある気泡をシート材の外へ排出するポンプ機能が働く。
【0060】
シート材の押圧方法について説明する。上述のシート材押圧装置を、シート材の仕様、すなわち、投入するシート材の材質や厚み、シート材の目標とする脱泡・含浸状態に応じて調整する。シート材押圧装置の調整項目には、押圧ローラの回転速度、シート材の送り速度、フリーローラとコンベヤベルトとの間隔D1〜D3などがある。
【0061】
押圧ローラの回転速度やシート材の送り速度は、シート材の含浸状態を調整するのに特に有効なパラメータである。フリーローラとコンベヤベルトとの間隔D1〜D3のバランスは、シート材の脱泡状態を調整するのに特に有効なパラメータである。これにより、上述のシート材押圧装置は、含浸効果と脱泡効果とを個別に調整できる。
【0062】
また、フリーローラの径、本数及び材質、フリーローラ支持部の機構や径などの押圧ローラの設計項目も含浸効果と脱泡効果とに影響を与える。よって、シート材の仕様に応じて調整するシート材押圧装置の調整項目として、好適な設計の押圧ローラを選択することを加えてもよい。また、1以上の前記押圧ローラ又は1以上の前記シート材押圧装置を用いてもよい。
【0063】
製造するシート材としては、例えば、SMC、プリプレグなどが挙げられる。上記実施形態では、シート材押圧装置をSMCの製造に適用し、ガラス繊維をマトリックス樹脂に含浸させつつ脱泡させる装置として使用する例を示した。他に、上記実施形態は、エポキシ樹脂等のマトリックス樹脂に補強繊維材として炭素繊維を含浸させて形成する、プリプレグの製造にも適用できる。例えば、炭素繊維を使用したプリプレグには、UD(Uni Derection)と呼ばれる一方向繊維材料にマトリックス樹脂を含浸させたものがある。UDへ樹脂を含浸させる場合、繊維の並ぶ方向と異なる方向に脱泡させることは難しい。そのため、上述のシート材押圧装置を、特に脱泡効果を重視した脱泡装置として使用することができる。そして、脱泡することで気泡が樹脂に置換されることで含浸効果も得られる。
【0064】
上述の前記シート材押圧装置及び前記押圧ローラを使用したSMCの製造方法は、第1キャリアフィルム2に熱硬化性樹脂を含む第1樹脂ペースト41を塗布する第1塗布工程と、第2キャリアフィルム11に熱硬化性樹脂を含む第2樹脂ペーストを塗布する第2塗布工程と、前記第1塗布工程で第1キャリアフィルムに塗布された第1樹脂ペーストに、ガラス繊維を堆積させる第1堆積工程と、前記第1キャリアフィルム、前記第1樹脂ペースト、前記ガラス繊維、前記第2樹脂ペースト、前記第2キャリアフィルムとがこの順に配置されるように、前記第1キャリアフィルムと前記第2キャリアフィルムとを積層する積層工程と、形成された前記シート材に含まれる前記第1マトリックス樹脂及び/又は第2マトリックス樹脂を前記補強繊維材に含浸させ、かつ、前記シート材から脱泡させる工程と、を含む。
【0065】
また、前記第1堆積工程と前記積層工程との間に、前記補強繊維材に第1又は第2マトリックス樹脂と同じ樹脂を塗布する中間塗布工程、及び、前記中間塗布工程で塗布された樹脂の上に、前記補強繊維材と同じ又は異なる補強繊維材を堆積する中間堆積工程と、をさらに含んでいてもよい。
【0066】
中間塗布工程と中間堆積工程とが組みとなって、1つ又は2つ以上実行されてもよい。
前記第1マトリックス樹脂と前記第2マトリックス樹脂は、同じ材料で構成されていてもよく、異なる材料で構成されていてもよい。
【0067】
上述の前記シート材押圧装置及び前記押圧ローラを使用したプリプレグの製造方法は、第1キャリアフィルムに樹脂が形成されている樹脂シートを供給する工程と、炭素繊維束又は樹脂が含浸されている炭素繊維束を有して構成される炭素繊維シートを供給する工程と、前記樹脂シートに前記炭素繊維シートを積層し積層シートを形成する積層工程と、前記押圧ローラ又は前記シート材押圧装置を用いて、形成された前記シート材に含まれる前記樹脂を前記炭素繊維束に含浸させ、かつ、前記シート材から脱泡させる工程と、を含む。
【0068】
本実施形態において、マトリックス樹脂、ガラス繊維、炭素繊維、樹脂、熱硬化性樹脂、キャリアフィルム(剥離紙を含む)などは、SMCの製造、プリプレグの製造に用いられるものであれば特に制限されず使用できる。
【0069】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
3 :コンベヤベルト
9 :補強繊維材
13 :シート材
14、24:シート材押圧装置
15、25:フリーローラ
16、26:フリーローラ支持部
17、27:押圧ローラ
18、19、28:受け台
151 :第1フリーローラ
152 :第2フリーローラ
153 :第3フリーローラ
図1
図2
図3
図4
図5