【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるシート材押圧装置は、樹脂と繊維とが混在したシート材を押圧する複数のフリーローラと、前記複数のフリーローラを環状に配置し、前記複数のフリーローラを自転自在に固定支持するフリーローラ支持部とを含む押圧ローラと、
前記複数のフリーローラを公転させるために前記フリーローラ支持部を、第1回転方向に回転させる駆動制御部と、
前記シート材を載置し搬送するシート材搬送部と、を備え、
前記第1回転方向は、前記シート材の押圧位置にある前記フリーローラの移動方向が、前記シート材の搬送方向に対して逆方向になる方向であ
り、
前記シート材搬送部で前記シート材を搬送しながら前記フリーローラ支持部を前記第1回転方向に回転させて、前記複数のフリーローラで前記シート材を押圧する。
【0009】
かかる構成によれば、複数のフリーローラの公転速度を上げて、シート材が押圧ローラを通過する間に、シート材に接触するフリーローラの本数を増やす。これにより、比較的短時間でも所望の含浸効果を確保することができる。また、フリーローラの公転方向は、シート材の押圧位置にあるフリーローラを、シート材搬送方向と逆方向に移動させる方向である。これにより、シート材の内部の気泡を押圧ローラの搬送方向上流側へと押出す脱泡効果を得ることができる。また、脱泡は、気泡が樹脂に置換されることにより行われるから、脱泡により含浸効果を高める。
【0010】
前記シート材押圧装置では、前記シート材に同時に接触する前記フリーローラは、
前記シート材の上流側で接触している第1フリーローラ(151)と、前記シート材の下流側で接触している第2フリーローラ(152;153)との少なくとも二つあり、
前記第1フリーローラと前記シート材搬送部との間隔(D1)が、前記第2フリーローラと前記シート材搬送部との間隔(D2;D3)よりも大きくなるように、前記押圧ローラと前記シート材搬送部との間隔が設定されていてもよい。
前記シート材と接触するフリーローラは、シート材の搬送方向と同じ方向に自由回転する。フリーローラはシート材との摩擦により回転する。
前記フリーローラ支持部に対し環状に配置されるフリーローラは、前記フリーローラ支持部の回転軸(フリーローラ公転軸)を中心に真円を形成するように配置されることが、好ましい。
【0011】
前記シート材押圧装置では、前記押圧ローラに対向する位置に配置され、前記シート材を支持する受け台(18;28)をさらに備え、
前記シート材は、前記押圧ローラと前記受け台との間を、前記押圧ローラに押圧されながら通過するようにしてもよい。
【0012】
前記シート材押圧装置は、前記押圧位置にある前記フリーローラと前記シート材搬送部との間隔を調節する間隔調節部をさらに備えてもよい。
【0013】
前記フリーローラ支持部は円板形状であってもよい。
【0014】
前記シート材押圧装置では、前記シート材に同時に接触する前記フリーローラは少なくとも二つあり、
前記少なくとも二つのフリーローラの表面には、それぞれ、自転軸を中心に巻回された溝を有し、
前記少なくとも二つのフリーローラのうち、互いに隣接配置されたフリーローラにおいて、各溝は前記自転軸の方向にずれて配置されていてもよい。
【0015】
前記シート材押圧装置では、前記フリーローラには、それぞれ、自転軸を中心に巻回された溝を有し、
前記溝は、前記自転軸を中心に螺旋状に巻回されていてもよい。
【0016】
本発明にかかるシート材押圧方法は、前記シート材押圧装置を前記シート材の仕様に応じて調整し、調整したシート材押圧装置で前記シート材を押圧する。
【0017】
本発明にかかる押圧ローラは、
前記シート材を押圧する複数のフリーローラと、
前記複数のフリーローラを環状に配置し、前記複数のフリーローラを自転自在に固定支持する支持機構と、を備える押圧ローラであって、
前記複数のフリーローラのうち、前記少なくとも二つのフリーローラの表面には、それぞれのフリーローラの自転軸を中心に巻回された溝を有
し、
前記少なくとも二つのフリーローラのうち、互いに隣接配置されたフリーローラにおいて、各溝は前記自転軸の方向にずれて配置されている。
【0019】
前記押圧ローラでは、前記溝は前記自転軸を中心に螺旋状に巻回されているとよい。
【0020】
本発明のシート材(例えばSMC)の製造方法は、
第1キャリアフィルムに第1マトリックス樹脂(例えば、熱硬化性樹脂を含む第1樹脂ペースト)を塗布する第1塗布工程と、
第2キャリアフィルムに第2マトリックス樹脂(例えば、熱硬化性樹脂を含む第2樹脂ペースト)を塗布する第2塗布工程と、
前記第1キャリアフィルムに塗布された第1マトリックス樹脂に、補強繊維材(例えば、ガラス繊維)を堆積させる第1堆積工程と、
前記第1堆積工程及び前記第2塗布工程の後で、前記第1キャリアフィルム、前記第1マトリックス樹脂、前記補強繊維材、前記第2マトリックス樹脂及び前記第2キャリアフィルムが、この順に配置されるように、前記第1キャリアフィルムと前記第2キャリアフィルムとを積層し、シート材を形成する積層工程と、
前記積層工程の後で、上述のシート材押圧装置又は上述の押圧ローラを用いて、前記第1マトリックス樹脂及び/又は第2マトリックス樹脂を前記補強繊維材に含浸させ、かつ、
前記シート材から脱泡させる工程と、を含む。含浸させる工程と脱泡させる工程とは、同時又は部分的に重複して行われる。
【0021】
本発明のシート材(例えばプリプレグ)の製造方法は、
第1キャリアフィルムに樹脂が形成されている樹脂シートを供給する工程と、
炭素繊維束又は樹脂が含浸されている炭素繊維束を有して構成される炭素繊維シートを供給する工程と、
前記樹脂シートに前記炭素繊維シートを積層し、シート材を形成する工程と、
上記に記載の前記シート材押圧装置、又は上記に記載の前記押圧ローラを用いて、形成された前記シート材に含まれる前記樹脂を前記炭素繊維束に含浸させ、かつ、前記シート材から脱泡させる工程と、を含む。含浸させる工程と脱泡させる工程とは、同時又は部分的に重複して行われる。
【0022】
上記シート材搬送部は、前記シート材押圧装置に専用として設けられたものであってもよく、シート材押圧装置以外の製造装置と共有するものであってもよい。
前記駆動制御部は、前記フリーローラ支持部の回転軸(フリーローラ公転軸)周りに回転駆動させるための駆動装置(モータ、ギアなどを有して構成される)を制御するように構成される。また、前記駆動制御部は、前記押圧ローラと前記シート材搬送部とをそれぞれ駆動制御してもよい。さらに、前記駆動制御部は、シート材搬送の搬送速度に基づいて、フリーローラ支持部の回転速度を制御してもよい。
少なくとも2つのフリーローラが搬送されている状態のシート材と接触するように、フリーローラ支持部の回転軸の高さ位置と、シート材の搬送位置とを設定することが好ましい。フリーローラ支持部の回転軸の位置は、高さ方向位置の調整が可能に構成されていることが好ましい。シート材の種類やシート材の厚みに応じて、高さ方向位置を調整するとよい。
前記シート材搬送部は、その搬送方向において、フリーローラ支持部を間に挟むように上流側ガイドローラと下流側ガイドローラを有していてもよい。