特許第6850786号(P6850786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6850786高純度錫の真空梱包方法および真空梱包された高純度錫
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850786
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】高純度錫の真空梱包方法および真空梱包された高純度錫
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/20 20060101AFI20210322BHJP
   B65D 77/00 20060101ALI20210322BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   B65D81/20 Z
   B65D77/00 B
   B65D77/00 C
   B65D85/50
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-501643(P2018-501643)
(86)(22)【出願日】2017年2月17日
(86)【国際出願番号】JP2017005973
(87)【国際公開番号】WO2017145947
(87)【国際公開日】20170831
【審査請求日】2019年9月4日
(31)【優先権主張番号】特願2016-31308(P2016-31308)
(32)【優先日】2016年2月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002332
【氏名又は名称】特許業務法人綾船国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100127133
【弁理士】
【氏名又は名称】小板橋 浩之
(72)【発明者】
【氏名】伊森 徹
(72)【発明者】
【氏名】竹本 幸一
(72)【発明者】
【氏名】福世 秀秋
(72)【発明者】
【氏名】塚本 志郎
(72)【発明者】
【氏名】内田 貴博
(72)【発明者】
【氏名】村上 昌臣
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−199877(JP,A)
【文献】 特開2001−240959(JP,A)
【文献】 特表2014−502235(JP,A)
【文献】 特開2004−059154(JP,A)
【文献】 特開2014−167167(JP,A)
【文献】 特開2005−298036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D81/20
B65D77/00
B65D85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度が真空梱包されてなる、高純度真空梱包品であって、
高純度の表面の少なくとも一部がフッ化炭素樹脂シートで覆われており、
フッ化炭素樹脂シートで少なくとも一部の表面が覆われた高純度が、真空梱包用フィルムによって真空梱包されてなる、高純度真空梱包品。
【請求項2】
フッ化炭素樹脂シートが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートである、請求項1に記載の高純度真空梱包品。
【請求項3】
フッ化炭素樹脂シートが、0.05〜5.0mmの厚みを有する、請求項1又は2に記載の高純度真空梱包品。
【請求項4】
真空梱包用フィルムとして、金属蒸着層又は金属酸化物蒸着層を有する積層フィルムが用いられ、金属蒸着層又は金属酸化物蒸着層が、高純度に接触することなく真空梱包された、請求項1〜3のいずれかに記載の高純度真空梱包品。
【請求項5】
真空梱包用フィルムとして、Al蒸着ポリエチレンフィルムが用いられ、
Al蒸着層が、高純度に接触することなく真空梱包された、請求項1〜4のいずれかに記載の高純度真空梱包品。
【請求項6】
高純度が、略円柱の形状である、請求項1〜5のいずれかに記載の高純度真空梱包品。
【請求項7】
高純度の表面粗さRaが、0.3〜5.0μmの範囲にある、請求項1〜6のいずれかに記載の高純度真空梱包品。
【請求項8】
高純度が、略円柱の形状であり、
略円柱の形状の高純度の側部曲面の表面が、フッ化炭素樹脂シートで覆われており、
側部曲面の表面がフッ化炭素樹脂シートで覆われた、略円柱の形状の高純度が、真空梱包用フィルムによって真空梱包されてなる、請求項1〜のいずれかに記載の高純度真空梱包品。
【請求項9】
高純度の表面の少なくとも一部を、フッ化炭素樹脂シートで覆う工程、
フッ化炭素樹脂シートで少なくとも一部の表面が覆われた高純度を、真空梱包用フィルムによって真空梱包する工程、
を含む、高純度を真空梱包する方法。
【請求項10】
高純度の表面の少なくとも一部を、フッ化炭素樹脂シートで覆う工程、
フッ化炭素樹脂シートで少なくとも一部の表面が覆われた高純度を、真空梱包用フィルムによって真空梱包する工程、
を含む、高純度が真空梱包されてなる、高純度真空梱包品の製造方法。
【請求項11】
真空梱包用フィルムとして、金属蒸着層又は金属酸化物蒸着層を有する積層フィルムが使用され、
金属蒸着層又は金属酸化物蒸着層が、高純度に接触することなく真空梱包される、請求項9〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
真空梱包用フィルムとして、Al蒸着ポリエチレンフィルムが使用され、
Al蒸着層が、高純度に接触することなく真空梱包される、請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
高純度の表面の少なくとも一部を、フッ化炭素樹脂シートで覆う工程が、
略円柱の形状の高純度の側部曲面の表面を、フッ化炭素樹脂シートで覆う工程であり、
フッ化炭素樹脂シートで少なくとも一部の表面が覆われた高純度を、真空梱包用フィルムによって真空梱包する工程が、
側部曲面の表面がフッ化炭素樹脂シートで覆われた、略円柱の形状の高純度を、真空梱包用フィルムによって真空梱包する工程である、請求項9〜12のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度錫の真空梱包方法および真空梱包された高純度錫に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化しやすい高純度金属の製品、例えば高純度錫の製品は、酸化や汚染を防ぐために真空梱包して出荷される。真空梱包用フィルムとしては、酸素透過度の低いポリエチレンやアルミニウム蒸着ポリエチレンフィルムが使用されている。
【0003】
真空梱包されて出荷された製品は、梱包を開いて使用される。真空梱包を開いた後に、エッチング等の洗浄操作を行うと、操作に伴って製品の酸化が進行してしまうために、酸化しやすい高純度金属の製品、例えば高純度錫の製品は、真空梱包を開いてそのまますぐに使用できる態様で出荷される。そして、例えば、すぐに溶融させてその後の精密加工に使用される。
【0004】
特許文献1は、梱包された高純度ターゲットに係る技術が記載されており、空気清浄度がクラス6以下のクリーンエアーを使用して成型して製造されたポリエチレン袋を用いて、高純度ターゲットを梱包すると、取り出されたターゲットは、スパッタリングでの使用開始時の安定性と長寿命特性が実現できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−240959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、高純度錫をさらに高純度化することを試みてきた。ところが、高純度化を進めても、出荷された高純度錫の製品を加熱溶融すると、しばしばその溶融液には、炭素不純物が混入して、望まれないパーティクル形成の原因となっていた。
【0007】
したがって、本発明の目的は、望まれない炭素不純物が含有されない、高純度錫製品を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討して、高純度錫をさらに高純度化することを試みてきたのであるが、炭素不純物のある程度の混入はどうしても回避することができなかった。ところが、研究開発の視点を全く変えて、加熱溶融する直前の高純度錫の表面を電子顕微鏡で観察すると、肉眼では観察されない微粒子が存在していること、この成分を解析すると炭素を含有するものであることを見出した。そして、高純度錫を真空梱包する際に、ポリエチレンシートと錫の間にフッ化炭素樹脂シートを介在させて真空梱包すると、梱包を開いた高純度錫製品では、炭素付着物が極めて低減されていることを見出して、本発明に到達した。
【0009】
したがって本発明は次の(1)以下を含む。
(1)
高純度金属が真空梱包されてなる、高純度金属真空梱包品であって、
高純度金属の表面の少なくとも一部がフッ化炭素樹脂シートで覆われており、
フッ化炭素樹脂シートで少なくとも一部の表面が覆われた高純度金属が、真空梱包用フィルムによって真空梱包されてなる、高純度金属真空梱包品。
(2)
フッ化炭素樹脂シートが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートである、(1)に記載の高純度金属真空梱包品。
(3)
フッ化炭素樹脂シートが、0.05〜5.0mmの厚みを有する、(1)又は(2)に記載の高純度金属真空梱包品。
(4)
真空梱包用フィルムとして、金属蒸着層又は金属酸化物蒸着層を有する積層フィルムが用いられ、金属蒸着層又は金属酸化物蒸着層が、高純度金属に接触することなく真空梱包された、(1)〜(3)のいずれかに記載の高純度金属真空梱包品。
(5)
真空梱包用フィルムとして、Al蒸着ポリエチレンフィルムが用いられ、
Al蒸着層が、高純度金属に接触することなく真空梱包された、(1)〜(4)のいずれかに記載の高純度金属真空梱包品。
(6)
高純度金属が、略円柱の形状である、(1)〜(5)のいずれかに記載の高純度金属真空梱包品。
(7)
高純度金属の表面粗さRaが、0.3〜5.0μmの範囲にある、(1)〜(6)のいずれかに記載の高純度金属真空梱包品。
(8)
高純度金属が、高純度錫である、(1)〜(7)のいずれかに記載の高純度金属真空梱包品。
(9)
高純度金属が、略円柱の形状であり、
略円柱の形状の高純度金属の側部曲面の表面が、フッ化炭素樹脂シートで覆われており、
側部曲面の表面がフッ化炭素樹脂シートで覆われた、略円柱の形状の高純度金属が、真空梱包用フィルムによって真空梱包されてなる、(1)〜(8)のいずれかに記載の高純度金属真空梱包品。
【0010】
(11)
高純度金属の表面の少なくとも一部を、フッ化炭素樹脂シートで覆う工程、
フッ化炭素樹脂シートで少なくとも一部の表面が覆われた高純度金属を、真空梱包用フィルムによって真空梱包する工程、
を含む、高純度金属を真空梱包する方法。
(12)
高純度金属の表面の少なくとも一部を、フッ化炭素樹脂シートで覆う工程、
フッ化炭素樹脂シートで少なくとも一部の表面が覆われた高純度金属を、真空梱包用フィルムによって真空梱包する工程、
を含む、高純度金属が真空梱包されてなる、高純度金属真空梱包品の製造方法。
(13)
フッ化炭素樹脂シートが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートである、(11)又は(12)に記載の方法。
(14)
フッ化炭素樹脂シートが、0.05〜5.0mmの厚みを有する、(11)〜(13)のいずれかに記載の方法。
(15)
真空梱包用フィルムとして、金属蒸着層又は金属酸化物蒸着層を有する積層フィルムが使用され、
金属蒸着層又は金属酸化物蒸着層が、高純度金属に接触することなく真空梱包される、(11)〜(14)のいずれかに記載の方法。
(16)
真空梱包用フィルムとして、Al蒸着ポリエチレンフィルムが使用され、
Al蒸着層が、高純度金属に接触することなく真空梱包される、(11)〜(15)のいずれかに記載の方法。
(17)
高純度金属が、略円柱の形状である、(11)〜(16)のいずれかに記載の方法。
(18)
高純度金属の表面粗さRaが、0.3〜5.0μmの範囲にある、(11)〜(17)のいずれかに記載の方法。
(19)
高純度金属が、高純度錫である、(11)〜(18)のいずれかに記載の方法。
(20)
高純度金属の表面の少なくとも一部を、フッ化炭素樹脂シートで覆う工程が、
略円柱の形状の高純度金属の側部曲面の表面を、フッ化炭素樹脂シートで覆う工程であり、
フッ化炭素樹脂シートで少なくとも一部の表面が覆われた高純度金属を、真空梱包用フィルムによって真空梱包する工程が、
側部曲面の表面がフッ化炭素樹脂シートで覆われた、略円柱の形状の高純度金属を、真空梱包用フィルムによって真空梱包する工程である、(11)〜(19)のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、望まれない炭素不純物が含有されない、高純度金属製品(高純度錫製品)を得ることができる。本発明の高純度金属真空梱包品(高純度錫真空梱包品)は、真空梱包を開封した後に洗浄等することなくすぐに使用することができ、例えばすぐに加熱溶融して高純度の金属(錫)の溶湯を調製して、LSI等の超微細加工装置に、本発明による高純度金属真空梱包品を溶湯として使用することができ、その溶湯は、炭素不純物が極めて低減されたものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1はナフロンシートを介して真空梱包された高純度錫の開封品の表面のSEM写真である。
図2図2はナフロンシートを介することなく直接にAl蒸着ポリエチレンフィルムによって真空梱包された高純度錫の開封品の表面のSEM写真である。
図3-1】図3−1はナフロンシートを介することなく直接にAl蒸着ポリエチレンフィルムによって真空梱包された高純度錫の開封品の表面の付着物付近を拡大したSEM写真である。
図3-2】図3−2はナフロンシートを介することなく直接にAl蒸着ポリエチレンフィルムによって真空梱包された高純度錫の開封品の表面の付着物付近を拡大したEDX写真である。
図4図4は旋盤によって切削加工した高純度錫の表面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明は以下に説明する実施の態様に限定されるものではない。
【0014】
[真空梱包方法]
本発明の高純度金属真空梱包品は、高純度金属の表面の少なくとも一部を、フッ化炭素樹脂シートで覆う工程、フッ化炭素樹脂シートで少なくとも一部の表面が覆われた高純度金属を、真空梱包用フィルムによって真空梱包する工程、を含む方法によって、高純度金属を真空梱包して製造することができる。
【0015】
[高純度金属]
本発明による真空梱包は、酸化しやすい高純度金属に好適に使用できる。このような高純度金属としては、例えば高純度の錫(Sn)、ビスマス(Bi)、銅(Cu)をあげることができる。好適には高純度のSnが使用される。このような高純度金属は、エッチング等の洗浄操作をさらに行うことなく、真空梱包を開いてそのまますぐに、例えば、すぐに溶融させて、LSI等の超微細加工装置に、本発明による高純度金属真空梱包品を溶湯として使用されるために、炭素不純物の低減が特に重要である。高純度金属の純度は、真空梱包が使用される程度の純度であれば、特に制限なく本発明の優位性を享受でき、例えば2N(99%)、3N(99.9%)、4N(99.99%)、5N(99.999%)、6N(99.9999%)といった純度の金属を使用できる。
【0016】
[高純度金属の形状]
高純度金属の形状は、本発明による真空梱包の操作が実施できる形状であれば、特に制限はない。好適な形状として、例えば、略円柱、円柱、直方体、立方体などの形状をあげることができる。好適には略円柱とすることができる。それぞれの形状に沿って、フッ化炭素樹脂シートを配置して少なくとも一部を覆い、真空梱包用フィルムによって真空梱包を行うことは、当業者がその形状に応じて、適宜実施することができる。
【0017】
[高純度金属の表面粗さ]
好適な実施の態様において、高純度金属の表面粗さRaは、例えば0.3〜5.0μmの範囲、0.3〜3.3μmの範囲、好ましくは0.5〜3.0μmの範囲とすることができる。本発明において表面粗さRaは、算術平均粗さとして求めることができる。表面粗さRaは、炭素付着量の低減の観点からは小さいほうが好ましいが、小さすぎるとその後の作業時にこすり傷がつきやすくなって外観を損ねる。
【0018】
[フッ化炭素樹脂シートで覆う工程]
フッ化炭素樹脂シートで覆う工程では、高純度金属の表面の少なくとも一部を覆う。高純度金属の表面の全部を覆ってもよい。作業性を維持しながら効果的に覆うためには、高純度金属の形状に応じて、真空梱包用フィルムが真空梱包時に強く圧着される表面部分を、覆うべき少なくとも一部として、選択する。例えば、高純度金属が略円柱状である場合には、略円柱の形状の高純度金属の側部曲面の表面を、フッ化炭素樹脂シートで覆う。この場合に、所望により、略円柱の形状の高純度金属の上面部及び/又は底面部をさらに覆ってもよく、結果として略円柱の形状の高純度金属の表面の全部を覆ってもよい。
【0019】
[フッ化炭素樹脂シート]
好適な実施の態様において、フッ化炭素樹脂シートとして、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド(2フッ化)、ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体シートなどを使用することできる。好適にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートとして、デュポン社製テフロン(登録商標)シートやニチアス社製ナフロンシート)が使用される。好適な実施の態様において、フッ化炭素樹脂シートの厚みは、例えば0.01〜6.0mmの範囲、0.05〜5.0mmの範囲、好ましくは0.02〜4.0mmの範囲、0.05〜3.0mmの範囲とすることができる。このような範囲とすることによって、炭素付着物を低減するための剛直さと、真空梱包時に真空梱包用フィルムを破断させないための柔軟さを両立することができる。
【0020】
[真空梱包用フィルム]
真空梱包用フィルムとしては、高純度金属の真空梱包のために従来から使用されている真空梱包用フィルムを、特に制限無く使用することができる。このように使用される真空梱包用フィルムとしては、酸素の透過性を低減したフィルム(酸素バリア性のフィルム)及び水蒸気の透過性を低減したフィルム(水蒸気バリア性のフィルム)をあげることができる。このような真空梱包用フィルムとして、例えば可撓性の大きな樹脂フィルム、金属層及び/又は金属酸化物層を蒸着等して設けた積層フィルムをあげることができる。このような積層フィルムに使用される樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム、PETフィルムをあげることができる。蒸着等して設けられる金属層の金属としては、例えばAl(アルミニウム)、Snをあげることができ、金属酸化物層の金属酸化物としては、例えばAl23(酸化アルミニウム)、SiO2(酸化ケイ素)をあげることができる。好適にはAl蒸着ポリエチレンフィルム、Sn蒸着ポリエチレンフィルムを使用することができる。真空梱包用フィルムとしては、このようなフィルムに対してさらに積層された積層フィルムを使用することができ、例えば金属層及び金属酸化物層の表面にさらにポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム、PETフィルムを積層した積層フィルムとすることができる。あるいは、輸送時の保護の確実や、さらに水蒸気バリア性を高める等の所望に応じて、複数枚のフィルム(積層フィルム)を適宜重ねて、真空梱包を行うことができる。
【0021】
[真空梱包]
真空梱包用フィルムを使用した真空梱包は、公知の手段及び条件下によって行うことができる。使用可能な真空梱包装置としては、例えば柏木式真空包装機(NPC社製)、GDP−400(タムラシール社製)をあげることができる。好適な実施の態様において、真空梱包は、パーティクルの少ない条件下で行うことができる。
【0022】
[高純度金属真空梱包品]
本発明の高純度金属真空梱包品(高純度錫真空梱包品)は、真空梱包を開封した後に洗浄等することなくすぐに使用することができる。例えば、LSI等の超微細加工装置に、本発明による高純度金属真空梱包品を溶湯として使用することができる。この溶湯は、炭素不純物が極めて低減されており、望まれないパーティクルの形成を抑制でき、微細な流路に目詰まりを起こすことがない。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例及び比較例をもって説明するが、これらは発明を理解し易いようにするためであり、本発明は実施例又は比較例によって限定されるものではない。
【0024】
[実施例1]
純度4N(99.99質量%、炭素、窒素、酸素、水素を除く。)の市販の塊状錫を用意した。
旋盤で50φ、長さ50mm、表面粗さRa3.0μmの円柱状に切削加工した。
この錫の円柱を厚さ0.3mmのナフロンシート(ニチアス株式会社製)で包み、さらに2枚のAl蒸着ポリエチレンフィルム(大日本印刷株式会社製、商品名DNPテクノパック)(Al蒸着厚12μm、ポリエチレン厚80μm)によって上下方向から、ポリエチレン面を内側に向けて挟んだ後に、シーラーで端部を加熱封止して袋を形成して包んだ後に、約−64kPaで真空吸引下で袋の開口部を加熱封止して、真空梱包をした。真空梱包装置として柏木式真空包装機を使用した。
真空梱包品を3時間放置した後に開封して、円柱形状物の側面の曲面表面をSEM/EDX観察を行った。結果を図1に示す。
【0025】
図1に示すように、ナフロンシートを介して真空梱包された高純度錫の開封品には、炭素の付着がないことが、SEM(走査型電子顕微鏡)及びEDX(エネルギー分散型X線分光法)の観察によって確認された。この結果を表1にまとめて示す。
【0026】
[実施例2、3]
実施例1におけるナフロンシートの厚さを変更した以外については、実施例1と同様に行った実験の結果を、実施例2(ナフロンシート厚さ0.05mm)及び実施例3(ナフロンシート厚さ3mm)として、表1にまとめて示す。
【0027】
[比較例1]
比較例1では、実施例1において、ナフロンシートを介することなく、すなわち直接にAl蒸着ポリエチレンフィルムによって、実施例1と同様に真空梱包した後に、真空梱包品を3時間放置した後に開封して、円柱形状物の側面の曲面表面をSEM/EDX観察を行った。この結果を図2図3−1及び3−2に示す。また、これらを表1にまとめて示す。
【0028】
【表1】
【0029】
図2図1(実施例1)と同条件で、SEM(走査型電子顕微鏡)によって観察した写真である。図2には写真の上部から下部に至る縦筋が多数観察されており、これらは旋盤加工によるものと思われる縦筋であり、線状に連続した突起部と思われる。これらの縦筋のうち、写真の左右方向の中央付近の縦筋には、縦筋に沿って染みのように広がるある横幅をもった付着物が観察される。これらはそれぞれの筋が線状に連続した突起部であるとした場合の頂部付近にあると見られる。また写真の中央付近には、この縦筋に沿った付着物とは形状の異なる塊状の付着物も観察される。図3−1は、その付着物付近を拡大したSEM写真であり、付着物が明瞭に観察される。図3−2は、図3−1と同視野のEDX写真であり、付着物が炭素含有付着物であることが明瞭に観察される。
【0030】
本発明者は、このような炭素付着物の起源となり得る候補を検討した結果、錫表面に圧着されたポリエチレンフィルムであると、結論した。高純度錫の表面は、マクロ的に観察した場合には十分に滑らかなものとなっているが、これをミクロ的に観察した場合には、切削加工等に由来して、山と谷とが形成されている。この山と谷とにポリエチレンフィルムが削られて、真空梱包時の圧着によって微小な断片が、付着すると本発明者は考えている。
【0031】
図4は、旋盤によって切削加工した高純度錫の表面を、図1(実施例1)と同条件で、SEM(走査型電子顕微鏡)によって観察した写真である。図4に示すように、マクロ的な観察では滑らかに見える高純度錫の表面は、ミクロ的な観察では山と谷とが形成されている。
【0032】
このような高純度錫の表面のミクロ的な山と谷は、おそらくは刃のようになっていて、真空梱包の際に柔軟なポリエチレンシートが錫表面の山と谷に圧着されて表面を擦る際に、発生すると考えている。これに対して、ナフロンシートは、剛直であってすべり性が良いため、ポリエチレンのように錫表面に付着することないと考えている。
【0033】
なお、実施例1と同様の条件での真空梱包を、厚さ10mmのナフロンシートを用いて行ったところ、Al蒸着ポリエチレン(Al蒸着厚12μm、ポリエチレン厚80μm)は、真空梱包後の作業時に、ナフロンシートの端部の突出部によって、Al蒸着ポリエチレンによって破れてしまった。したがって、炭素付着物の低減の観点では、使用できるナフロンシートの厚みには上限はないが、その外側に使用されるAl蒸着ポリエチレン等の梱包材の柔らかさに応じて、ナフロンシートの端部の突出部によってその外側の梱包材に破れが生じない程度の柔軟性が維持できる程度までの、ナフロンシートの厚みであるように選択されることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、望まれない炭素不純物が含有されない、高純度金属製品(高純度錫製品)を得ることができる。本発明は産業上有用な発明である。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4