(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、果汁を主成分として用いた調味料用の組成物について検討を行っている。果汁は液状である。そのため、果汁そのものを食品に加えると、果汁が食品に浸透し、食品本来の食感が損なわれる場合がある。例えば、揚げ衣を有する食品には、しばしばレモン果汁等が加えられるが、レモン果汁を加えると、揚げ衣がレモン果汁を吸収し、揚げ衣本来の食感が変化してしまう。
【0005】
本発明者は、保形性を有する形態で果汁を食品に添加することができれば、果汁が食品に浸透しにくくなり、有用であると考えた。尚、保形性を有する組成物として、ゲル状の組成物も考えられるが、ゲル状の組成物を用いた場合には、クラッシュゼリーの崩れた形状が残る場合がある。そのため、外観の観点から、ゲル状ではなくペースト状の組成物が好ましい場合もある。
そこで、本発明の課題は、保形性を有するペースト状の形態で果汁を食品に添加することができる、組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は以下の事項を含む。
[1]25℃で3000〜20000mPa・sの粘度を有し、ストレート換算で50質量%以上の果汁を含有する、ペースト状組成物。
[2]更に、澱粉を含有する、[1]に記載のペースト状組成物。
[3]前記澱粉が、加工澱粉を含む、[2]に記載のペースト状組成物。
[4]前記加工澱粉の含有量が、2〜8質量%である、[3]に記載のペースト状組成物。
[5]更に、食物繊維を含有する、[1]〜[4]のいずれかに記載のペースト状組成物。
[6]前記食物繊維が、馬鈴薯由来の食物繊維を含む、[5]に記載のペースト状組成物。
[7]更に、増粘多糖類を含有する、[1]〜[6]のいずれかに記載のペースト状組成物。
[8]前記増粘多糖類が、キサンタンガムを含む、[7]に記載のペースト状組成物。
[9]前記果汁が、柑橘類及びリンゴからなる群から選ばれる少なくとも1種の果汁を含む、[1]〜[8]のいずれかに記載のペースト状組成物。
[10]前記果汁が、濃縮果汁を含む、[1]〜[9]のいずれかに記載のペースト状組成物。
[11]可撓性容器に充填されている、[1]〜[10]のいずれかに記載のペースト状組成物。
[12]pHが2.9〜4.5である、[1]〜[11]のいずれかに記載のペースト状組成物。
[13]更に、pH調整剤を含む、[1]〜[12]のいずれかに記載のペースト状組成物。
[14]前記pH調整剤が、クエン酸三ナトリウムを含む、[13]に記載のペースト状組成物。
[15]調味料である、[1]〜[14]のいずれかに記載のペースト状組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、保形性を有する形態で果汁を食品に添加することができる組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係るペースト状組成物について説明する。
【0009】
本発明において、ペースト状とは、常温(25℃)において、力が加えられていない状態では流動せず形状を保持し、外部から力が加えられると変形し、変形後の形状が元に戻らない性状を意味する。また、ペースト状とは、ゲル状とは異なる性状を意味する。また、本発明におけるペースト状組成物は、力を加えた時に粘度が低下する、シュードプラスチック性を示すものであることが好ましい。
【0010】
本実施形態のペースト状組成物は、25℃で3000〜20000mPa・sの粘度を有する。このような粘度を有していることにより、食品の上にペースト状組成物を加えても、ペースト状組成物の形態が維持され、食品に染み込みにくくなる。また、外観(瑞々しさ)も損なわれにくい。従って、保形性を有する形態で、果汁を食品に加えることができる。すなわち、食品本来の食感を損なうことなく、果汁によって食品を味付けすることが可能になる。
ペースト状組成物の粘度は、好ましくは、25℃で3000〜15000mPa・s、最も好ましくは4500〜10000mPa・sである。
【0011】
本実施形態に係るペースト状組成物は、ストレート換算で50質量%以上の果汁を含有する。果汁の含有量は、ストレート換算で好ましくは60〜200質量%、より好ましくは70〜150質量%である。
果汁は、好ましくは、濃縮果汁である。濃縮果汁を用いることにより、高い果汁含有量を実現できる。
果汁の種類は、特に限定されるものではないが、繊維質の含有量が少ないか、または全く含まない果汁が好ましく用いられる。特に柑橘類及びリンゴからなる群から選ばれる少なくとも1種の果汁を含むことが好ましい。より好ましくは、果汁は、柑橘類の果汁を含む。柑橘類としては、レモン、ライム、ユズ、スダチ、カボス、ウンシュウミカン、ネーブルオレンジ、シークヮーサーが用いられ、レモン、ユズ又はスダチが好ましく用いられる。
【0012】
本実施形態に係るペースト状組成物は、好ましくは水分を含む。水分の含有量は、例えば30〜95質量%、好ましくは50〜90質量%である。
【0013】
本実施形態に係るペースト状組成物は、好ましくは、澱粉を含有する。ペースト状組成物中の澱粉の含有量は、例えば、0.5〜13.0質量%、好ましくは3.5〜8.5質量%である。
澱粉としては、加工澱粉及び未加工澱粉のどちらも使用可能である。
【0014】
本発明において、加工澱粉とは、リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム 酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉又はリン酸化澱粉を指す。加工澱粉としては、リン酸架橋澱粉及びヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉が好ましい。
加工澱粉は、例えば製造工程(加熱工程)の省略、製造ラインの簡素化、あるいは製造時間の短縮等の目的で、加熱工程が不要なα化処理したα化加工澱粉を使用してもよい。
加工澱粉の原料としては、特に限定されるものではないが、例えば、キャッサバ(タピオカ)、トウモロコシ、イモ、タピオカ、小麦及び米等が挙げられる。これらの中でも、キャッサバ及びトウモロコシが好ましい。
ペースト状組成物中の加工澱粉の含有量は、1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%である。
【0015】
好ましくは、ペースト状組成物は、キャッサバ由来のリン酸架橋澱粉を含む。キャッサバ由来のリン酸架橋澱粉を用いることにより、ペースト状組成物の保水性を向上させることができる。また、組成物に適度な粘性を付与することもでき、保形性が得られやすい。更に、耐酸性を向上させることができる。
ペースト状組成物中のキャッサバ由来のリン酸架橋澱粉の含有量は、例えば、1〜9質量%、好ましくは2〜6質量%である。
【0016】
また、好ましくは、ペースト状組成物は、トウモロコシ由来のヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉を含む。トウモロコシ由来のヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉を用いることにより、ペースト状組成物を老化させにくくすることができる。また、保水性を向上させることができる。また、ペースト状組成物に適度な粘性を付与することもでき、保形性が得られやすい。更に、耐酸性を向上させることができる。
ペースト状組成物中のトウモロコシ由来のヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉の含有量は、例えば、0.05〜1.5質量%、好ましくは0.1〜1.0質量%である。
【0017】
未加工澱粉としては、特に限定されるものではないが、例えば、α化澱粉等を用いることができる。未加工澱粉の原料としては、特に限定されるものではないが、例えば、小麦、コーン、米、タピオカ、イモ等に由来するものが挙げられ、好ましくはコーンである。
好ましい未加工澱粉は、コーンスターチのα化澱粉が好ましく用いられる。未加工澱粉として、コーンスターチのα化澱粉を使用することにより、ペースト状組成物に適度な粘性を付与し、保形性が得られやすくなる。また、保水性を向上させることができる。
ペースト状組成物中の未加工澱粉の含有量は、例えば、0.1〜5.0質量%、好ましくは0.5〜2.5質量%である。
【0018】
ペースト状組成物は、更に、食物繊維を含有することが好ましい。食物繊維を含有させることにより、保水性が向上する。また、食物繊維を使用することにより、ペースト状組成物に、保形性を付与しやすくなる。
食物繊維は、水溶性であってもよいし、不溶性であってもよい。好ましくは、食物繊維は、不溶性である。
食物繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば、馬鈴薯由来の食物繊維、難消化性デキストリン、粉末セルロース、および柑橘由来の食物繊維等が挙げられる。このうち、馬鈴薯由来の食物繊維及び難消化性デキストリンが好ましい。馬鈴薯由来の食物繊維又は難消化性デキストリンを用いれば、外観(瑞々しさ)及び口溶け(滑らかさ)を損なうことなく、保形性が得られやすくなる。最も好ましい食物繊維は、馬鈴薯由来の食物繊維である。
ペースト状組成物中の食物繊維の含有量は、例えば、0.1〜3.0質量%、好ましくは0.1〜1.0質量%である。
【0019】
ペースト状組成物は、更に、増粘多糖類を含有することが好ましい。増粘多糖類を加えることにより、ペースト状組成物の保水性を向上させることができる。
増粘多糖類としては、特に限定されるものではないが、例えば、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グァーガム、タラガム、ペクチン、カラギーナン、タマリンドシードガム、アラビアガム、プルラン、大豆多糖類、ゼラチン、寒天、プロピレングリコール、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられ、キサンタンガムを含むことが好ましい。
ペースト状組成物中の増粘多糖類の含有量は、例えば、0.05〜3.0質量%、好ましくは0.05〜1.0質量%である。
【0020】
ペースト状組成物のpHは、2.9〜4.5であることが好ましく、3.0〜4.0であることがより好ましい。
ペースト状組成物には、pH調整剤が含まれていてもよい。pH調整剤としては、特に限定されるものではないが、クエン酸三ナトリウムなどが好ましく用いられる。
【0021】
ペースト状組成物には、必要に応じて、その他の添加剤が含まれていてもよい。例えば、開封後の微生物の増殖を抑制するため、エタノールが添加されていてもよい。また、粉体原料の混合性(分散性)を向上させるため、ソルビトール等の糖アルコールが添加されていてもよい。風味や香味の向上のため、香料や果皮の破砕物もしくは粉砕物が添加されていてもよい。果皮破砕物としては、例えば、レモンピールの破砕物の乾燥品や冷凍品が挙げられる。その他には酸味料、醸造酢、塩、糖類、乳化剤、酸化防止剤、保存料、着色料あるいは香料などが適宜添加されていてもよい。
ペースト状組成物中のその他の添加剤の含有量は、例えば、0.1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%である。
【0022】
ペースト状組成物は、チューブ(可撓性容器)に充填されて提供されることが好ましい。
【0023】
本実施形態に係るペースト状組成物の製造方法は特に限定されるものではない。例えば、次に示す方法により、製造することができる。まず、水に粉体原料を投入し、分散させる。次いで、果汁、調味料等の液体原料を投入し、分散させる。次いで、必要により、分散物を加熱混合する。次いで、混合物を、チューブ式熱交換器等で加熱殺菌し、容器(チューブ)にホットパック充填し、密封する。あるいは、混合物を容器(チューブ)に充填し、密封し、その後にスチーム殺菌してもよい。
【0024】
本実施形態に係るペースト状組成物によれば、常温において保形性を有しているため、食品の上に載せても流れ落ちずに留まり、すぐには食品に染み込まない。そのため、食品の食感を損なうことなく、果汁を食品に加えることができる。例えば、食品が揚げ衣を有するものである場合には、揚げ衣を軟らかくすることなく、果汁の風味を加えることができる。従って、サクサクした食感を維持しつつ、果汁の風味を加えることができる。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明をより詳細に説明するため、本発明者によって行われた実施例について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施例に限定して解釈されるべきものではない。
【0026】
表1及び表2に示す組成にて、例1〜例18に係る組成物を得た。尚、表1及び表2における数値は、質量部を表す。具体的には、表1及び表2に示される組成にて、粉体原料(加工澱粉、未加工澱粉、増粘性多糖類、糖アルコール(ソルビトール・粉末)、pH調整剤)を水に分散させた。更に、液体原料(濃縮果汁、および香料等)を添加し、分散させた。次いで得られた混合物を、可撓性容器(チューブ)に充填し、密封した後、スチーム殺菌し、例1〜例18に係る組成物を得た。
【0027】
得られた組成物について、pH、水分量、および粘度を、それぞれ以下の方法により求めた。尚、粘度については、殺菌前後における粘度を測定した。
(pH)
ガラス電極法(HORIBA社pHメーターD-51)により、pHを測定した。
(水分量)
常圧105℃加熱16時間乾燥法(ADVANTEC社恒温槽FSP-450使用)により、水分量を測定した。
(粘度)
ビスコテスターVT-04(RION社)ローターNo.1若しくは2を使用し、粘度(25℃)を測定した。
【0028】
(絞り出しやすさ)
例1〜例18に係る組成物について、可撓性容器からの絞り出しやすさを評価した。絞り出しやすさは、以下の3段階の基準で評価した。
〇:強く絞り出さなくても出しやすく、絞り出し量の調整もしやすい。
△:やや緩いかまたはやや硬いが、許容できる。
×:軟らか過ぎて力を加えなくても出てきてしまう状態、または固過ぎてチューブから出てきにくいため、絞り出し量の調節が難しい。
【0029】
(保形性(垂れないか))
例1〜例18に係る組成物の保形性を、以下の3段階の基準で評価した。
〇:十分な保形性があり、絞り出さなければ容器の口から垂れてこない。
△:やや緩い物性ではあるが、保形性はあり許容できる。
×:物性が軟らか過ぎるため、絞り出したときにあるいは絞り出さなくても垂れてしまい、絞り出したペーストは形状を保持できない。
【0030】
(外観(瑞々しさ))
例1〜例18に係る組成物の外観を、以下の3段階の基準で評価した。
〇:艶があり、果汁らしい瑞々しさがある。
△:艶は弱く瑞々しさに欠けるが、ペースト状の果汁として許容できる。
×:艶がなく、瑞々しさがないため果汁らしさが感じられない。
【0031】
(口溶け(滑らかさ))
例1〜例18に係る組成物の外観を、以下の3段階の基準で評価した。
〇:口当たりが滑らかで、口内に留まらずすっと溶ける。
△:やや滑らかさに欠けるが、許容できる。
×:口に入れたときにねっとりとしていて口溶けが悪い。またはざらつきや粉っぽさがあり好ましくない。
【0032】
結果を表3及び表4に示す。
粘度が3000mPa・sに満たない例1及び例2に係る組成物は、保形性を有しておらず、求めるシュードプラスチック性を示すペースト状とは呼べなかった。また、絞り出しやすさも悪かった。
これに対して、粘度が3000mPa・s以上である例3〜例18に係る組成物は、保形性を有しており、シュードプラスチック性を示すペースト状の組成物であった。また、例3〜8、例10〜18に係る組成物は、例1及び例2に係る組成物に比べて、絞り出しやすさが改善していた。ただし、粘度が20000mPa・sを超える例8及び例9においては、外観(瑞々しさ)が失われていた。特に、例9に係る組成物は、硬過ぎて容器から絞り出しにくく好ましくなかった。
【0033】
詳細には、例3に係る組成物は、例1及び例2に係る組成物に対して、良好な絞り出しやすさ及び保形性を有していた。また、外観および口溶けも良好であった。すなわち、加工澱粉の含有量を増やすことによって、外観および口溶けを損なうことなく、絞り出しやすさ及び保形性が改善されることが判った。
【0034】
また、例4〜6に係る組成物も、例1及び例2に係る組成物に対して、良好な絞り出しやすさ及び保形性を有していた。また、外観および口溶けも良好であった。すなわち、馬鈴薯の食物繊維を加えることによって、外観および口溶けを損なうことなく、絞り出しやすさ及び保形性が改善されることが判った。
【0035】
例7に係る組成物は、例1及び例2に係る組成物に対して、良好な絞り出しやすさ及び保形性を有していた。また、外観および口溶けも良好であった。また、例7に係る組成物は、例3、例5及び例6に比べても、保形性という観点から、更に良好であった。すなわち、馬鈴薯の食物繊維に加えて、コーンスターチ(α化澱粉)を使用することにより、保形性を更に改善できることが判った。
【0036】
例8〜9に係る組成物は、例1及び例2に係る組成物に対して、良好な絞り出しやすさ及び保形性を有していた。しかしながら、例7に比べると、外観および口溶けは損なわれていた。言い換えれば、澱粉(トータル)の含有量が3.5〜7.5質量%の範囲内にある例7においては、外観および口溶けを損なうことなく、良好な絞り出しやすさ及び保形性が実現された。
【0037】
例10に係る組成物は、例1及び例2に係る組成物に対して、良好な絞り出しやすさ及び保形性を有していた。しかしながら、例7に比べると、口溶けが損なわれていた。言い換えれば、馬鈴薯の食物繊維とコーンスターチ(α化澱粉)とを併用した例7に係る組成物においては、口溶けを損なうことなく、良好な絞り出しやすさ及び保形性が実現された。
【0038】
例4〜例6、例11〜例12に係る組成物は、例13〜18に係る組成物に比べて、良好な口溶けが得られていた。このことから、食物繊維の中でも、馬鈴薯の食物繊維又は還元難消化デキストリンを使用すると、口溶けを損なうことなく、絞り出しやすさ及び保形性を改善できることが判った。
【0039】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】